製品品質の保証 - jx金属 · 63 jx金属株式会社...

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61 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019  JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 62 当社グループでは、品質管理レベルの底上げを図ると ともに、問題の原因を論理的に推定して自ら課題を見つ け解決する問題解決能力の向上と、業務品質の向上を目 的として、全従業員を対象とした品質管理教育を実施して います。 入門コースから上級コースまで受講者のレベルに応じ た各種研修プログラムを用意しており、職能レベルや入社 年度に応じて計画的な受講を進め、社員教育の一つとし て定着しています。研修では、コース別に基礎的な考え 方、QC 1 手法の習得、統計的手法によるデータ解析な ど、グループ討議を交えながら学習しています。 当社グループでは、経営層が出席する「品質管理委員 会」が設置されており、品質改善活動の状況をレビューし、 活動計画を策定しています。最近の品質管理委員会では、 全グループで取り組んでいる検査自動化の進捗状況をはじ め、すでに起きてしまった課題への取り組み(守りの品質 管理)から、これから起きるかもしれないリスクと機会へ の取り組み(攻めの品質管理)への進化が議論されました。 また、品質マネジメントに関する情報共有の場として、 「品質担当者会議」を毎年 2 回開催しています。ここでは、 品質の向上という共通の目標に向けて、品質管理委員会 で決定された活動計画を伝達するとともに、各現場で抱 える課題や優れた実践を共有し、担当者同士の交流を行っ ています。 CSR 安心な社会をつくるために 品質管理部の取り組み VOICE 有効な品質監査を目指して 品質管理部では、事業から独立した立場で全事業所を対象に品質監査を実施していますが、 監査を行うにあたっては、適合性の評価に加え、改善点や優れた実践を特定し、現場の当事者 意識を高め、気づきと改善活動の活性化につながる有効性監査の実現を目指しています。 私は、品質マネジメントシステムを運用する上で、品質監査を通じたシステムの維持・継続的 改善が、特に重要な活動であると考えています。その実現に向け、品質監査員に必要なコミュニ ケーション能力、観察力、判断力などのスキルアップを、今後の課題として取り組んでいきます。 JX金属(株) 品質管理部 吉田 直衛 品質管理部では、当社グループ全体の幅広い製品にお ける品質検査業務の信頼性向上、効率化、およびヒュー マンエラーの防止を目的として、品質検査の自動化システ ムの導入を推進しています。本活動では、測定データの 基幹システムへの自動取り込み化に向けて、最新自動化 対応検査機器の導入、既設検査機器の運用変更、基幹 システムの改良などを実施しており、海外拠点も含めて 2020 年度内の展開を目指しています。 すでに品質検査の自動化システムの導入を完了してい る拠点もあり、導入に伴って作業効率が向上しているとの 声もあがっています。引き続き、当社グループ全体の計画 実現に向けて活動を推進していきます。 Overview Strategy CSR Information 特集 最新自動化対応検査機器 品質担当者会議の様子。品質担当者が一堂に会して情報の共有を図る 「なぜなぜ分析」研修の様 子。グループで役割分担を 決め、対策を導き出す 基本的な考え方 製品品質の保証 AI・IoT 社会の進展に伴い、製品供給先であるお客さまからの要求事項は、ますま す高度化・多様化・厳格化されています。製品の安全性および品質の担保がこれまで 以上に重要になる中、当社グループでは品質管理部を中心に、さらなる品質管理体 制の強化に取り組んでいます。 品質検査の自動化システム導入 品質に関する人材育成の推進 品質改善活動のレビューと計画策定、情報共有 1 品質管理(Quality Control

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Page 1: 製品品質の保証 - JX金属 · 63 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 64 CSR 安心な社会をつくるために

61 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019  JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 62

 当社グループでは、品質管理レベルの底上げを図ると

ともに、問題の原因を論理的に推定して自ら課題を見つ

け解決する問題解決能力の向上と、業務品質の向上を目

的として、全従業員を対象とした品質管理教育を実施して

います。

 入門コースから上級コースまで受講者のレベルに応じ

た各種研修プログラムを用意しており、職能レベルや入社

年度に応じて計画的な受講を進め、社員教育の一つとし

て定着しています。研修では、コース別に基礎的な考え

方、QC※1 手法の習得、統計的手法によるデータ解析な

ど、グループ討議を交えながら学習しています。

 当社グループでは、経営層が出席する「品質管理委員

会」が設置されており、品質改善活動の状況をレビューし、

活動計画を策定しています。最近の品質管理委員会では、

全グループで取り組んでいる検査自動化の進捗状況をはじ

め、すでに起きてしまった課題への取り組み(守りの品質

管理)から、これから起きるかもしれないリスクと機会へ

の取り組み(攻めの品質管理)への進化が議論されました。

 また、品質マネジメントに関する情報共有の場として、

「品質担当者会議」を毎年 2 回開催しています。ここでは、

品質の向上という共通の目標に向けて、品質管理委員会

で決定された活動計画を伝達するとともに、各現場で抱

える課題や優れた実践を共有し、担当者同士の交流を行っ

ています。

CSR 安心な社会をつくるために

品質管理部の取り組み

VO I C E

有効な品質監査を目指して

品質管理部では、事業から独立した立場で全事業所を対象に品質監査を実施していますが、

監査を行うにあたっては、適合性の評価に加え、改善点や優れた実践を特定し、現場の当事者

意識を高め、気づきと改善活動の活性化につながる有効性監査の実現を目指しています。

私は、品質マネジメントシステムを運用する上で、品質監査を通じたシステムの維持・継続的

改善が、特に重要な活動であると考えています。その実現に向け、品質監査員に必要なコミュニ

ケーション能力、観察力、判断力などのスキルアップを、今後の課題として取り組んでいきます。JX金属(株)品質管理部吉田 直衛

 品質管理部では、当社グループ全体の幅広い製品にお

ける品質検査業務の信頼性向上、効率化、およびヒュー

マンエラーの防止を目的として、品質検査の自動化システ

ムの導入を推進しています。本活動では、測定データの

基幹システムへの自動取り込み化に向けて、最新自動化

対応検査機器の導入、既設検査機器の運用変更、基幹

システムの改良などを実施しており、海外拠点も含めて

2020 年度内の展開を目指しています。

 すでに品質検査の自動化システムの導入を完了してい

る拠点もあり、導入に伴って作業効率が向上しているとの

声もあがっています。引き続き、当社グループ全体の計画

実現に向けて活動を推進していきます。

Overview Strategy CSR Information

特集

最新自動化対応検査機器

品質担当者会議の様子。品質担当者が一堂に会して情報の共有を図る

「なぜなぜ分析」研修の様子。グループで役割分担を決め、対策を導き出す

基本的な考え方

製品品質の保証AI・IoT 社会の進展に伴い、製品供給先であるお客さまからの要求事項は、ますま

す高度化・多様化・厳格化されています。製品の安全性および品質の担保がこれまで

以上に重要になる中、当社グループでは品質管理部を中心に、さらなる品質管理体

制の強化に取り組んでいます。

■品質検査の自動化システム導入

■品質に関する人材育成の推進

■品質改善活動のレビューと計画策定、情報共有

※ 1 品質管理(Quality Control)

Page 2: 製品品質の保証 - JX金属 · 63 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 64 CSR 安心な社会をつくるために

63 JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019  JX金属株式会社 サステナビリティリポート2019 64

CSR 安心な社会をつくるために Overview Strategy CSR Information

1. 社会とお客様のニーズを正しく捉え、お客様に信頼され、満足して頂ける製品・サービスを提供する。

2. 安全性・環境保全性に配慮し、開発・設計から納入に至る全てのプロセスにおいて、品質を向上し維持する。

3. 品質マネジメントシステムを構築し、継続的改善と人材育成を行う。

4. 国内外の関連法令や規制を遵守し、社会とお客様に品質に関する正確な情報を提供する。

※当社グループの品質基本方針は、JX 金属企業行動規範に則り、定められたものです。

JX金属グループ 品質基本方針私たちJX金属グループは、社会の持続可能な発展に貢献するため、

非鉄資源と素材を安定的に供給することが社会的使命であると認識し、

本品質基本方針を定めて行動します。

品質基本方針

 当社グループでは、品質基本方針の実現に向けて、品

質マネジメントシステム(QMS:Quality Management

System )を構築・運用しています。QMSの運用にあたっ

ては、より良い品質の実現を目指して、PDCAサイクルを

着実に回し、継続的な改善活動に取り組んでいます。な

お、QMS 第三者認証(ISO9001 等)を国内・海外を

問わず取得しています。

品質マネジメントシステム

国内

磯原工場、北茨城精密加工(株)、倉見工場、JX金属コイルセンター(株)(倉見事業所、川崎事業所)、日立事業所(銅箔製造部)、一関製箔(株)、パンパシフィック・カッパー(株)(日比製煉所、佐賀関製錬所、日立精銅工場)、日比共同製錬(株)(玉野製錬所)、日本鋳銅(株)(佐賀関工場)、JX金属商事(株)(高槻工場)、JX金属プレシジョンテクノロジー(株)(館林工場、江刺工場、那須工場、掛川工場)、エイチ・シー・スタルク(株)(水戸工場)、東邦チタニウム(株)(本社・茅ヶ崎工場、日立工場、八幡工場、若松工場、黒部工場)

海外

日鉱金属(蘇州)有限公司、無錫日鉱富士精密加工有限公司、JX金属製品(東莞)有限公司、台湾日鉱金属股份有限公司(龍潭工場、観音工場)、JX Nippon Mining & Metals Philippines, Inc.、JX Nippon Mining & Metals USA, Inc.、JX Nippon Mining & Metals Korea Co., Ltd. 、H.C. Starck Tantalum and Niobium GmbH(Goslar)、H.C. Starck Smelting GmbH & Co. KG(Laufenburg)、H.C. Starck Co. Ltd.(Thailand)、Materials Service Complex Malaysia Sdn. Bhd.、Materials Service Complex Coil Center (Thailand) Co., Ltd.

QMS第三者認証取得の製造拠点

■ 品質管理部の役割

■ お客さまからの表彰

品質に関する人材育成の推進

■ 機能材料・薄膜材料関連製品の品質管理

製品開発段階 物性分析、表面解析、純度分析、特性分析などの品質評価体制を確立(評価機器の導入や評価手法の整備など)。要求される品質の確保が確認された段階で、量産へ移行。

製造工程設計段階 トラベルシートおよびSPCシステムなどを導入し、原材料の受入から製品の出荷に至るまできめ細かな品質管理体制を構築。

量産段階 分析システムの整備により、継続的かつ厳格な検査体制を構築。製品ごとに設定した内部規格の管理を徹底するとともに、検査データをSQCシステムによって開発・製造部門にフィードバックすることで、品質や信頼性の維持・向上を実現。

高品質と信頼性確保に向けた取り組み

 当社グループでは、品質を担っているのは直接部門か

ら間接部門に至るすべての従業員であるという考えのも

と、品質に関する人材育成を推進しています。具体的に

は、新入社員から基幹職までの全従業員を対象に、独自

の教育マニュアルに基づき、専門の部署が年間を通して

品質管理教育を実施しています。

【当社品質管理教育の特長】● 仕事の役割に応じ、研修コースを選択できる教育体系● 実際の現場で品質管理手法を活用できるよう工夫した内容● 問題解決の考え方やアプローチを実際の改善活動を通し

て習得

統計的手法・個別手法 実践手法 上級手法 品質意識

部長職レベル

課長職レベル

係長・総括職レベル

主任・指導職レベル

指導職・実務職レベル

新入社員

必修

導入

入門

品質管理

初級

なぜなぜ

分析コース

作業改善コース

品質管理 中級

新QC7つ道具

(N7)コース

BSCコース

タグチメソッド

実験計画法

データ・マイニング

失敗学と未然防止

実践問題解決セミナーマネージャーコース

係長・主任のための品質保証・品質管理セミナー

職能レベル

選択

品質管理教育の体系

 高品質で安定的な製品の供給、事業継続計画(BCP※1)

の推進などが評価され、毎年お客さまから表彰をいただい

ています。2018 年度は3 件を受賞しました。国名 顧客名 表彰名

米国Texas Instruments 社 2018 年 Supplier Excellence

Award

Western Digital 社 Best Supplier award 2018

韓国 サムスン電子社 BEST CONTRIBUTION AWARD 2018

2018年度の表彰

 品質管理部は、当社グループ全体における製品品質の

維持・向上のために、グループ全体の品質管理の強化に

係る企画・立案・推進およびその総括に関する業務を担っ

ています。その業務の一環として、「品質管理が確実に実

行されているか」を確認する品質監査を、全事業所を対象に

実施しています。

 なお、2018 年度において、当社グループ製品の欠陥が

原因で生じた人的・物的損害に対して、製造物責任法に

基づく賠償責任発生の事例は0件でした。

※ 1 BCP:Business Continuity Plan