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論文公表実態調査報告 2019 年度 (公開版) 大学図書館コンソーシアム連合 JUSTICE2020 2 28

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論文公表実態調査報告 2019 年度 (公開版)

大学図書館コンソーシアム連合

(JUSTICE)

2020 年 2 月 28 日

- 1 -

本報告について

Clarivate Analytics 提供の国立情報学研究所向け Web of Science 論文メタデータ

ファイルを基に独自データを付加して分析した調査です。 調査結果については,Clarivate Analytics から許諾を得た上で公開しています。 JUSTICE 会員館には,詳細データの EXCEL 等を配布していますので,詳しく

は会員館限定版の報告書をご覧ください。 本報告における用語の定義

本報告における主な用語の定義は,以下の通りです。 APC

Article Processing Charges の略。論文出版加工料,論文掲載加工料,論文処理費用,

オープンアクセス出版料,などと訳される。論文をオープンアクセスにするための出版

費用として,著者が負担する。学会誌では,学会員と非会員とで APC の金額に差を設

けたり,また出版社によっては,機関のパッケージ契約金額に応じて APC の割引サー

ビスを行ったり,途上国の研究者に対し APC を免除したりするところもある。 1 フル OA 論文

すべての論文をオープンアクセス(以下,「OA」)で掲載する学術雑誌(Full Open Access Journal:フル OA 誌)に掲載された論文。 ハイブリッド OA 論文

フル OA 誌ではなく購読料を支払うことによって電子ジャーナルが利用できる学術雑

誌(購読型雑誌)に掲載された論文で,著者の意思で(主に APC を支払うことによっ

て)OA で公開されている論文。

フル OA 論文や,ハイブリッド OA 論文をまとめて「ゴールド OA 論文」と呼ぶ。 なお,ハイブリッド OA 論文を掲載する購読型雑誌のことを,特に「ハイブリッド誌」

(Hybrid Open Access Journal)と呼ぶ場合がある。 ブロンズ OA 論文

購読型雑誌に掲載された論文で,著者の意思とは関係なく出版社のサイトで無料公開

されているが,OA ライセンスが付与されていない論文。ブロンズ OA 論文には,掲載

後一定期間を経て OA となる遅延型の OA 論文なども含む。

1 JUSTICE「電子資料契約実務必携」,2018 年 10 月改訂,p.132(会員館限定).

https://www.nii.ac.jp/content/justice/(最終アクセス 2020.1.31)

- 2 -

1. 調査の概要 大学図書館コンソーシアム連合(以下「JUSTICE」)では,これまで購読条件に関

する出版社との交渉に注力してきたが,APC 支払によるゴールド OA の進展を踏ま

え,購読料と APC による包括的な交渉が必要であるとの認識に至った。そこで,国立

情報学研究所(NII)の国際学術情報流通基盤整備事業(SPARC Japan)運営委員会

(2019 年度から学術情報流通推進委員会に改称)と合同で,2015 年度に「論文公表

実態調査チーム」を発足させ,日本の研究機関に所属する研究者の公表論文数,OA 率

および APC 支払推定額の調査を行うこととした。 2016 年度に実施した調査結果は,2016 年度の JUSTICE 総会の第 2 部において,

当時 JUSTICE 作業部会委員であった砂押久雄氏 2によって報告された。 2017 年度に実施した調査結果は,当時 JUSTICE 事務局長であった小陳左和子氏お

よび事務局員であった矢野恵子氏により報告されている 3。 2018 年度に実施した調査結果は,2019 年 5 月 10 日に「論文公表実態調査報告:

2018 年度(会員館限定版)」4(詳細な EXCEL データを添付した報告書)と「論文公

表実態調査報告:2018 年度(公開版)」5(EXCEL データを添付しない簡略な報告書)

とをウェブサイトに掲載するとともに,会員館毎に抽出した個別データの提供を開始

した。また,2019 年 6 月には公開版の英語版要約「Open Access Publication and Article Processing Charges (APCs) in Japan : Report on the FY2018 Survey (Summary in English)」 6をウェブサイトに掲載した。

本調査報告は,これらを引き継ぎ,2019 年度に実施した調査結果を報告するもので

ある。

2 砂押久雄. 大学図書館コンソーシアム連合 2016 年度総会資料「国内研究者による論

文公表に関する実態調査報告」(会員館限定) 3 小陳左和子, 矢野恵子. ジャーナル購読からオープンアクセス出版への転換に向け

て:欧米の大学および大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)における取り組

み. 大学図書館研究. 2018, no.109, 15p. https://doi.org/10.20722/jcul.2015(最終ア

クセス 2020.1.31) 4 JUSTICE. 論文公表実態調査報告 2018 年度(会員館版). 2019,(会員館限定) 5 JUSTICE. 論文公表実態調査報告 2018 年度(公開版). 2019,

https://www.nii.ac.jp/content/justice/documents/2018_ronbunchosa.pdf(最終アク

セス 2020.1.31) 6 JUSTICE. Open Access Publication and Article Processing Charges (APCs) in

Japan : Report on the FY2018 Survey (Summary in English). 2019, https://www.nii.ac.jp/content/justice_en/documents/OA_Pub_Japan_FY2018.pdf (最終アクセス 2020.1.31)

- 3 -

2. 調査方法 調査にあたっては,JUSTICE の外部から購入したデータと JUSTICE が独自に調

査して作成したデータの 2 種類のデータを用いた。 (1) 外部データ

・ Clarivate Analytics(調査を開始した 2015 年当時は Thomson Reuters)の学術文献データベース Web of Science(以下「WoS」)に収録されている

論文(2012 年~2017 年)を抽出したデータを用いる。なお,2017 年に 2012から 2015 年のデータ,2018 年に 2016 年のデータ,2019 年に 2017 年のデ

ータを抽出している。なお,OA フラグに関しては,2019 年に全て再抽出し

ている。 ・ 対象ドキュメントは,”Article”,”Review”とする。 ・ WoS におけるデータ項目”Reprint Author”(別刷り請求先の著者)を,当該

論文の APC を支払った著者とみなし,日本の機関に所属する Reprint Author の論文データを抽出する。なお,著者が日本の機関に所属するか否か

の判定は,WoS におけるデータ項目”COUNTRY”(国/地域)を使用した。 (2) 作成データ

① APC 価格リスト 各出版社のウェブサイトに掲載されている APC の価格を調査し,タイト

ル単位での APC 価格リストを作成した。過去に収集した APC 価格リストに

掲載されているタイトルはできるだけ出版年に近い APC 価格を用いた。 APC 価格については,出版社のウェブサイトの価格表を基本とし,DOAJ

サイト 7のデータ,などを参考にした。それでも価格が不明なタイトルにつ

いては,一律 2,000 ユーロ(MPDL の白書 8で試算に使用されている APC額)とした。

② 所属機関名寄せリスト WoS の所属機関名に揺れがあることから,所属機関名を名寄せするリスト

を作成した。併せて,国内の大学かどうか,JUSTICE 会員館かどうか,等の

判定のデータも追加した。 ③ 出版社名寄せリスト

WoS の出版社名に揺れがあることから,出版社名を名寄せするリストを作

成した。 ④ 為替レートリスト

三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングのサイト(https://www.murc.jp/)の外国為替相場のデータを参考に各年の通貨毎の平均為替レートのリストを

7 DOAJ : Directory of Open Access Journals. https://doaj.org/(最終アクセス

2020.1.31) 8 Schimmer, Ralf et al. Disrupting the subscription journals’ business model for the

necessary large-scale transformation to open access. Max Planck Digital Library, 2015-04-28, 11p. http://dx.doi.org/10.17617/1.3(最終アクセス 2020.1.31) 田村香代子訳.(訳)オープンアクセスへの大規模な転換のための購読型ジャーナルのビ

ジネスモデルの破壊 : マックスプランクデジタルライブラリ オープンアクセス白

書. 大学図書館研究. 2018, 109, 9p. https://doi.org/10.20722/jcul.2012(最終アクセ

ス 2020.1.31)

- 4 -

作成した。 ⑤ 主題分類リスト

WoS の主題を 13 の主題とその他に集約する分類のリストを作成した。 (3) データ加工

・ WoS データの各論文に付されていた OA フラグと,APC 価格リストを基に,

データを加工した。 ① OA フラグに「Gold_DOAJ 9」が付された論文:フル OA 誌掲載のフル

OA 論文とした。 ② OA フラグに「Gold_Other 10」が付された論文:ハイブリッド誌掲載の

ハイブリッド OA 論文とした。 ③ OA フラグに「Bronze 11」が付された論文:購読型雑誌掲載のブロンズ

OA 論文とした。 ④ それ以外の論文:購読型雑誌掲載の非 OA 論文とした。

なお,複数の OA フラグが付されている論文については,①から順に優先し

て判断を行っている。 ・ 各論文の APC 額は,APC 価格リストを基に算出した(論文出版時点の APC

価格が不明なタイトルが多いため,論文出版年に設定されていた APC の価

格とは異なる)。原価から円価への換算は,論文出版年の年間平均為替レート

を用いた。 ・ APC の価格がページ数で決まるタイトルについては,WoS の掲載ページの

データからページ数を算出した(一部 WoS からページ数が提供されている

論文がある)。掲載ページから単純にページ数が算出できない論文について

は,ページ数を 10 ページとした。 (4) 集計方法

・ 出版年が 2012 年以降の論文データを,1 年単位で集計した。 ・ 公表論文数,OA 論文数および APC 支払推定額について,出版社別,雑誌別,

著者所属機関別,主題別に集計した。

なお,本調査の 2012~2016 年のデータの集計結果に関しては,2018 年度の調査結

果と値の差異がみられる。この原因の大部分を占めるのが(1)の外部データに付与され

た OA フラグの仕様変更によるものである。2018 年度調査では,OA フラグは一種類

「Gold_OA」しかなかったが,2019 年度調査では「Gold_DOAJ」「Gold_Other」「Bronze」

9 Web of Science Core Collection ヘルプ

(https://images.webofknowledge.com/WOKRS514B4/help/ja/WOS/hp_results.html(最終アクセス 2020.1.31))の定義では,「Directory of Open Access Journals (DOAJ)収録誌に掲載された論文」となっている。

10 Web of Science Core Collection ヘルプの定義では,「その他のゴールドは、

Impactstory によりクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスを持つと判定され、非

DOAJ 収録誌に掲載されたオープンアクセス論文です。その他のゴールド OA 論文

の多くは、ハイブリッドジャーナル掲載の論文です。」となっている。 11 Web of Science Core Collection ヘルプの定義では,「Impactstory により、ライセ

ンスが不明、または CC ライセンスを持たないと判定された論文です(出版社サイト

で無料公開されている論文等)。」となっている。

- 5 -

と細分化された。これにより,APC が支払われないブロンズ OA 論文を APC 支払推

定額から除外することが可能となり,より実際に近い推計ができることとなった。

- 6 -

3. 集計結果 (1) 概要

① 公表論文数,OA 論文数の推移

この図は,国内機関所属の著者が Reprint Author となった論文を抽出し,

種別ごとの OA 論文数と OA 論文でない論文数(非 OA 論文)を出版年別に

集計したものである。論文数の推移に関しては以下のような状況であると考

えられる。 ・ 国内研究者が Reprint Author となった公表論文数は 7 万件前後であり,

2012 年から 2017 年の 6 年間でほぼ横ばいである。 ・ フル OA 論文数は,2012 年は 5,806 件であるが,2017 年は 12,788 件で

あり,2 倍以上の伸びとなっている。 ・ ハイブリッド OA 論文数は,2012 年は 1,479 件であるが,2017 年は 3,279

件であり,こちらも 2 倍以上の伸びとなっている。なお,WoS でハイブ

リッド OA 論文と判定されるにはタイムラグがある 12ため,データ抽出

時に近い出版年であるほど,ハイブリッド OA 論文数は実際より少なく

なっている可能性がある。2016 年から 2017 年のハイブリッド OA 論文

数の減少は,このことが原因のひとつであると考えられる。 ・ ブロンズ OA 論文数は,2012 年の 13,827 件に対し,2017 年は 11,287 件

12 Web of Science Core Collection ヘルプの定義では,「ハイブリッドゴールドの OA

論文が「その他のゴールド」と判定されるまでにはタイムラグがあることにご注意く

ださい(特に新しく出版された論文について)。」となっている。

5,806 7,241 8,796 10,066 10,784 12,788 1,479 2,041 2,989 3,329 3,869 3,279 13,827 12,973

12,361 11,660 11,425 11,287

49,618 50,219 47,484 45,490 46,015 46,397

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

フルOA論文 ハイブリッドOA論文 ブロンズOA論文 非OA論文

- 7 -

であり,約 2 割減となっている。OA フラグは抽出時(2019 年)の判定

であるため,掲載後一定期間を経て OA となっているブロンズ OA 論文

が,データ抽出時より遡るほど増加することが原因のひとつとであると

考えられる。 ・ 公表論文数に占める OA 論文数の割合は 6 年間で上昇している。

② APC 支払推定額の推移,および各年の内訳

この図は,国内機関所属の著者が Reprint Author となった論文を抽出し,

フル OA 論文,ハイブリッド OA 論文の APC 支払推定額を出版年別に集計

したものである。APC 支払推定額の推移に関しては以下のような状況である

と考えられる。 ・ APC 支払推定額(フル OA 論文とハイブリッド OA 論文の合計)は 2017

年には 32 億円であり,2012 年の 10 億円から 3 倍以上に増加している。

しかしながら,フル OA 論文の 2015 年から 2016 年にかけての若干の減

少など,毎年の増減には外国為替の変動(円高/円安)も影響していると

考えられる。 ・ フル OA 論文への APC 支払推定額は,2012 年には 7.6 億円であるが,

2017 年には 23 億円であり,3 倍以上の伸びとなっている。 ・ ハイブリッド OA 論文への APC 支払推定額も増加傾向にある。なお,

2016 年から 2017 年にかけての減少は,(1)①のとおりハイブリッド OA論文数の減少が影響していると考えられる。

756,228 1,213,572

1,553,601 1,997,206 1,956,870

2,341,086

274,874

477,068

836,704

1,012,201 1,055,509

870,211

0

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

3,500,000

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

(千円)

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

- 8 -

(2) 出版社別集計 ① 公表論文数(2017 年, 上位 10 社)

順位 出版社名 公表

論文数

OA 論文数

(ブロンズ OA

含)

OA 率

(ブロンズ

OA 含)

1 ELSEVIER 14,453 1,622 11.2%

2 SPRINGER 8,702 1,334 15.3%

3 JOHN WILEY & SONS 7,220 2,335 32.3%

4 TAYLOR & FRANCIS INC 2,786 284 10.2%

5 NATURE PUBLISHING GROUP (NPG) 2,543 2,153 84.7%

6 AMER CHEMICAL SOC (ACS) 2,288 211 9.2%

7 IOP PUBLISHING LTD (IOP) 1,954 473 24.2%

8 OXFORD UNIV PRESS (OUP) 1,587 1,086 68.4%

9 ROYAL SOC CHEMISTRY (RSC) 1,493 354 23.7%

10 AMER PHYSICAL SOC (APS) 1,293 139 10.8%

その他 29,432 17,363 59.0%

合計 73,751 27,354 37.1%

国内からの公表論文は上位 10 社で約 60%を占めている。

② フル OA 論文への APC 支払推定額(2017 年, 上位 10 社)

順位 出版社名 公表

論文数

フル OA

論文数

APC 支払

推定額(円)

1 NATURE PUBLISHING GROUP (NPG) 2,543 1,994 493,716,066

2 BIOMED CENTRAL LTD (BMC) 1,258 1,252 314,078,777

3 PUBLIC LIBRARY SCIENCE (PLoS) 1,123 1,123 195,488,214

4 MDPI AG 1,176 1,176 188,314,632

5 FRONTIERS MEDIA SA 494 494 154,306,086

6 JOHN WILEY & SONS 7,220 852 137,505,208

7 ELSEVIER 14,453 878 124,312,334

8 SPRINGER 8,702 631 81,392,673

9 HINDAWI PUBLISHING CORPORATION 450 447 76,416,948

10 LIPPINCOTT WILLIAMS & WILKINS 1,095 223 68,280,732

その他 35,237 3,718 507,274,447

合計 73,751 12,788 2,341,086,117

BMC,PLoS,MDPI,Frontiers などの新興のオープンアクセス出版社が

上位にランキングされている。

- 9 -

③ ハイブリッド OA 論文への APC 支払推定額(2017 年,上位 10 社)

順位 出版社名 公表

論文数

ハイブリッド

OA

論文数

APC 支払

推定額(円)

1 ELSEVIER 14,453 735 188,258,458

2 SPRINGER 8,702 492 185,743,858

3 JOHN WILEY & SONS 7,220 303 118,427,598

4 IMPACT JOURNALS LLC 227 224 86,182,656

5 SPANDIDOS PUBL LTD 680 232 36,936,490

6 BAISHIDENG PUBLISHING GROUP INC 171 163 36,923,468

7 NATURE PUBLISHING GROUP (NPG) 2,543 57 21,326,134

8 IOP PUBLISHING LTD (IOP) 1,954 93 20,737,886

9 ASSOC RESEARCH VISION

OPHTHALMOLOGY INC

86 75 12,730,500

10 ROCKEFELLER UNIV PRESS 22 22 12,447,600

その他 37,693 883 150,496,248

合計 73,751 3,279 870,210,896

④ ブロンズ OA 論文数(2017 年, 上位 10 社)

順位 出版社名 公表

論文数

ブロンズ

OA 論文数

1 JOHN WILEY & SONS 7,220 1,180

2 OXFORD UNIV PRESS (OUP) 1,587 718

3 PHARMACEUTICAL SOC JAPAN (日本薬学会) 509 504

4 JAPAN SOC INTERNAL MEDICINE (日本内科学会) 507 500

5 SPANDIDOS PUBL LTD 680 432

6 IEICE-INST ELECTRONICS INFORMATION

COMMUNICATIONS ENG (電子情報通信学会)

855 420

7 IOP PUBLISHING LTD (IOP) 1,954 342

8 JAPAN INST METALS (日本金属学会) 262 259

9 JAPAN SOC VET SCI (日本獣医学会) 245 245

10 SPRINGER 8,702 211

その他 51,230 6,476

合計 73,751 11,287

日本の学会が上位にランキングされている。

- 10 -

⑤ 主要出版社別 論文数の推移,および各年の内訳

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2012年2013年2014年2015年2016年2017年

ELSEVIER

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

ブロンズOA論文 非OA論文

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

SPRINGER

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

ブロンズOA論文 非OA論文

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2012年2013年2014年2015年2016年2017年

JOHN WILEY & SONS

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

ブロンズOA論文 非OA論文

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

TAYLOR & FRANCIS INC

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

ブロンズOA論文 非OA論文

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2012年2013年2014年2015年2016年2017年

NATURE PUBLISHING GROUP (NPG)

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

ブロンズOA論文 非OA論文

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2012年2013年2014年2015年2016年2017年

AMER CHEMICAL SOC (ACS)

フルOA論文 ハイブリッドOA論文

ブロンズOA論文 非OA論文

- 11 -

2017 年論文数上位 6 社の論文数の推移と,各年の内訳をグラフにした。 Nature 社のフル OA 誌への掲載割合が上昇している点が顕著である。 Elsevier 社は過去分にブロンズ OA 論文が多い傾向にある。ハイブリッド OA 論文

およびフル OA 論文の割合は増加している。 Wiley 社および Taylor & Francis 社はブロンズ OA 論文が常に一定数あり,OA 論

文のうちブロンズ OA 論文の割合が最も高い。 ACS は OA 率が上位 6 社のうち最も低くなっている。 なお,BioMed Central は Springer 社が 2000 年に買収,Springer 社と Nature 社

は 2015 年 5 月に合併が完了しているが,WoS の記載を基に,別出版社として集計

を行っている。

- 12 -

(3) 雑誌別集計

① APC 支払推定額(2017 年,上位 10 誌)

位 雑 誌 名

公表

論文数

ゴールド

OA

論文数

APC 支払

推定額(円)

ゴールド

OA 率

1 SCIENTIFIC REPORTS 1,697 1,697 337,977,914 100.0%

2 PLOS ONE 1,062 1,062 179,662,788 100.0%

3 NATURE COMMUNICATIONS 202 202 118,863,264 100.0%

4 ONCOTARGET 225 224 86,182,656 99.6%

5 MEDICINE 149 149 50,582,520 100.0%

6 INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR

SCIENCES

195 195 40,308,840 100.0%

7 OPTICS EXPRESS 166 166 36,479,662 100.0%

8 CELL REPORTS 59 59 33,382,200 100.0%

9 SCIENCE ADVANCES 59 59 30,043,980 100.0%

10 WORLD JOURNAL OF GASTROENTEROLOGY 97 90 27,090,540 92.8%

その他 69,840 12,164 2,270,722,649 17.4%

合計 73,751 16,067 3,211,297,013 21.8%

② APC 支払推定額推移(2012-2017 年,上位 5 誌)

2012 年から 2017 年の間に APC 支払推定額で上位 5 誌となった雑誌について,

2012 年からの変遷をみた。Scientific Reports,Oncotarget,Medicine が上昇傾向

にあり,特に Scientific Reports の伸びが大きい。なお,SpringerPlus は 2016 年

に廃刊になっている。

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年SCIENTIFIC REPORTS PLOS ONE

NATURE COMMUNICATIONS ONCOTARGET

MEDICINE OPTICS EXPRESS

WORLD JOURNAL OF GASTROENTEROLOGY SPRINGERPLUS

(千円)

- 13 -

(4) 著者所属機関別集計 ① 公表論文数(2017 年,JUSTICE 会員館上位 20 機関)

フル OA ハイブリッド OA ブロンズ OA

機関名

(日本語)

公表

論文数 論文数

APC 支払

推定額(円) 論文数

APC 支払

推定額(円) 論文数

東京大学 3,902 721 148,007,720 164 42,343,940 524

京都大学 3,167 503 95,862,834 90 23,864,091 417

大阪大学 2,388 401 78,221,615 101 26,721,794 297

東北大学 2,301 367 66,612,221 74 17,380,966 362

九州大学 2,051 331 60,432,897 78 20,334,536 269

北海道大学 1,901 333 60,373,897 57 16,527,301 256

名古屋大学 1,843 282 52,284,670 61 15,774,134 244

慶應義塾大学 1,202 264 53,113,694 48 13,015,396 169

東京工業大学 1,202 133 24,386,535 16 3,768,302 169

広島大学 1,096 191 31,941,586 37 10,130,540 142

筑波大学 1,047 189 32,747,713 39 10,806,815 145

神戸大学 1,019 151 25,685,095 40 9,887,022 131

岡山大学 845 163 26,020,240 27 5,817,793 122

千葉大学 821 177 30,654,075 48 14,042,652 109

早稲田大学 719 91 13,872,857 20 5,366,068 61

金沢大学 685 125 24,844,935 32 10,068,844 108

日本大学 610 91 15,802,979 17 4,160,390 128

東京医科歯科大学 568 127 25,386,160 27 6,487,410 97

東京理科大学 524 48 8,111,640 14 4,173,918 88

信州大学 519 84 13,771,868 16 4,542,900 68

その他会員館 28,393 5,039 898,433,199 1,300 336,479,862 4,529

会員館以外 16,948 2,977 554,517,687 973 268,516,222 2,852

合計 73,751 12,788 2,341,086,117 3,279 870,210,896 11,287

- 14 -

(5) 主題別集計 ① 公表論文数主題別比率

② ゴールド OA 論文数主題別比率

2012 年から 2017 年に出版された論文を主題別に集計し,主題別の比率の推移を

みた。①は公表論文数の主題別比率,②は公表論文数のうちゴールド OA 論文数の

主題別比率を表したグラフである。医学は公表論文数でも 30%以上と 1 位だが,ゴ

ールド OA論文数ではさらに 50%近くを占める。生物学は公表論文数では 3位だが,

ゴールド OA 論文数では 20%近くと工学,物理学よりも比率が高くなっている。

35.3%

35.0%

36.0%

32.0%

32.0%

37.6%

14.0%

14.2%

13.4%

14.8%

15.1%

13.9%

13.2%

13.6%

13.7%

14.4%

14.1%

12.8%

13.1%

12.9%

12.8%

11.8%

11.9%

11.1%

9.8%

9.6%

9.4%

12.2%

11.7%

8.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

医学 工学 生物学 物理学 化学

農学 社会科学 数学 地球科学 コンピュータ科学

天文学 人文学 心理学 その他

47.1%

47.4%

47.1%

42.9%

43.3%

51.1%

7.9%

6.3%

7.5%

10.1%

10.0%

7.4%

21.2%

22.6%

20.6%

20.7%

20.0%

17.4%

10.3%

9.7%

10.5%

9.4%

9.8%

8.5%

3.2%

3.4%

3.6%

6.5%

6.8%

5.1%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

医学 工学 生物学 物理学 化学

農学 社会科学 数学 地球科学 コンピュータ科学

天文学 人文学 心理学 その他

- 15 -

③ 主題別ゴールド OA 論文率推移

2012 年から 2017 年の論文について,主題ごとのゴールド OA 論文率(公表論文

数に占めるゴールド OA 論文数の割合)の推移を見た。心理学,医学,生物学,地

球科学でゴールド OA 論文率の伸びが大きくなっている。 なお,WoS の主題については,ひとつの論文に主題を複数付与していた時期と主

題をひとつだけ付与していた時期がある。そのため,主題別の論文数,APC 支払推

定額を合計すると,3(1)概要で示した論文数,APC 支払推定額を上回る場合がある。

また,年代別の推移を見る際にもご注意願いたい。 4. 調査結果の活用について

各会員館においては,より正確な APC 支払額の把握ができるまでの間,これらの情

報を活用して,APC の支払状況について規模感の把握ができるのではないかと期待す

る。 また,APC の支払額や現在の雑誌の購読額を把握することにより,今後の新たな契

約モデルの検討が可能になるのではないかと考えている。

0%

10%

20%

30%

40%

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

心理学

医学

生物学

地球科学

物理学

化学

工学

社会科学

人文学

コンピュータ科学

農学

数学

天文学

- 16 -

5. 調査における課題および今後の計画 今後の課題としては,次のことが挙げられる。 APC 不明タイトルを減らし,より正確な価格の把握に努めること。そのために

も定期的に APC 価格を取得し,過去の時点の APC 価格を保存していきたいと

考えている。また,APC 不明タイトルの APC を一律 2,000 ユーロに設定して

いるが,OpenAPC 13などの APC 価格の推移を見守りながら,適切な価格を設

定していきたいと考えている。 データの収集・分析方法の簡易化・定型化,交渉に必要な分析方法の確立。加

えて,本データの活用方法の提示も検討したいと考えている。

このように様々な課題があるが,国内の OA 論文公表状況の概況把握のためには,

現在の調査は有用であるため,2020 年度以降も継続して外部データの購入,独自のデ

ータ作成を行い,調査を行う予定である。 各会員館でも会計システムを基にした APC の実態調査も進んでいると思われる。

本調査との比較を行い,フィードバックを頂けると,本調査をより充実したものにで

きると考えている。

以上

13 OpenAPC. https://www.intact-project.org/openapc/ (最終アクセス 2020.1.31)