中学校英語科における表現力を育成する指導 -...
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アクションリサーチ実習Ⅰ
中学校英語科における表現力を育成する指導
英語文化教育学専修久保 貴之
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1. テーマ設定の背景
思考力 判断力 表現力
・学習指導要領の改訂
・中学校学習指導要領 外国語編
「書くこと」に関する言語活動の内容は大幅に改定された(新たに3項目が追加された)
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・立川(2008)
「自己の思いや感情・経験などを、読み手を意識しながら、互いにつながりのある複数の文で表現する」
ような書く活動が授業に必要
・特定の課題に関する調査(英語:「書くこと」)(2012)
文と文のつながりを工夫してまとまりのある文章を書く力を育成する指導が今後求められる
自分の考えを読み手にわかりやすく伝えるための書く力を育てるための指導法が必要
1. テーマ設定の背景
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〇「書くこと」に関する意識調査
・肯定的な意識を持っている生徒の割合の比較
「話すこと」「書くこと」 < 「聞くこと」「読むこと」
(特定の課題に関する調査(英語:「書くこと」), 2012)
発信的な学習 受容的な学習
・「第1回中学校英語に関する基本調査(生徒調査)」
英語の文を書くのが難しい・・・72.0%
(ベネッセ教育開発研究センター, 2008)
1. テーマ設定の背景
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1. テーマ設定の背景
・どのような指導を行えば、自分の考えを相手に伝えるためのまとまりのある文を書く力を育てることができるか?
〇疑問点
・どのような指導を行えば、「書くこと」に対する肯定的な態度を高められるか?
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2.仮説①の設定・特定の課題に関する調査(英語:「書くこと」)(2012)
文章において、語や文がどのように関係し合い、構成されていくかを考えさせながら読ませ、関係性を図示させるような活動が必要
⇒ マッピング が役に立つのでは??
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2.仮説①の設定〇「マッピング」とは? ~マッピングの有用性~
・考えや構造の段階を視覚化する手段
・アイデアや情報を処理、再構築する際に有用
・自分の言いたいことを言語として表す際に、
―不足している部分を見つけて埋め合わせることに役立つ-自分の考えを誰かに理解してもらうことを容易にする
(Kang, 2004)
・マッピングを使った実践(立川, 2008)
⇒マッピングを用いた作文の事前プランニングが有効
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2.仮説①の設定
仮説①
ライティングの事前プランニングとして
自分の考えをマッピングで整理することによって、自分の考えを相手に伝えるためのまとまった文を書くことができるだろう。
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2.仮説②の設定〇「ピア・フィードバック」とは?
・「作文プロセスの中で学習者同士の少人数グループ(ペア、あるいはグループ)でお互いの作文について
書き手と 読み手 の立場を交換しながら検討しあう
作文学習活動」
(池田, 2002)
読み手
・
具体策:ピア・フィードバック
(大井, 2008)
「読み手」を意識して書く 「説得力を持って書く」
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2.仮説②の設定〇「ピア・フィードバック」を用いたライティングの実践
三枝(2007) 上杉(2007)
ピア・フィードバックを実践
「友達の作文を読む」「友達と文を読み合う」
肯定的〇
「友達からのコメント」
意欲向上
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2.仮説②の設定
仮説②
ピア・フィードバックを取り入れることによって、「書くこと」に対する肯定的な態度を養うことができるだろう。
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3.研究計画
・研究対象 : 広島大学附属三原中学校2年生
(2クラス 82名)
・使用教材 : Program 3 “Charity Walk”
SUNSHINE ENGLISH COURSE 2 (開隆堂)
・指導時間 : 全8時間
・データ収集方法 :
プレテスト / ポストテスト(仮説①)
プレアンケート / ポストアンケート(仮説②)
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4.授業実践(マッピング)時間 段階 テーマ
第1時 Step1 広島について
第2時Step2
三原中学校のきまり
第3時 今週末のしなければならないこと
第4時 My favorite 〇〇第6時 Step3 広島について勧める文
第7時 Step4 沖縄について勧める文
4.授業実践(ピア・フィードバック)7、8時間目(全8時間)
・生徒が書いた作文を班内で回してピア・フィードバック
・指導上の留意点
形式上の誤り < 内容が伝わるか(文法ミス、スペルミス等)
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5.結果、仮説の検証〇検証方法・仮説①・・・事前テスト(マッピングなし)と
事後テスト(マッピングあり)の比較
採点規準:「テーマと関連性のある理由の個数」「理由の関連性」「各理由間の重複の有無」「テーマと関連性のある文か否か」以上の4点を主な項目として、A,B,C三段階評価のルーブリックを作成
⇒ルーブリックに即して評価
・仮説②・・・4件法によるアンケート調査15
プレテスト:43% ポストテスト:88%
1%
42%57
%
A
B
C
5.結果、仮説の検証(仮説①)
作文の評価(プレテスト) 作文の評価(ポストテスト)
29%
59%
12%
A
BC
通過率(B, Aの割合)(%)
〇全体の結果
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プレテスト:43% ポストテスト:88%
1%
42%57
%
A
B
C
5.結果、仮説の検証(仮説①)
作文の評価(プレテスト) 作文の評価(ポストテスト)
29%
59%
12%
A
BC
通過率(B, Aの割合)(%)
約9割の生徒が今回の評価規準において「おおむね満足(B)」を満たしている。
〇全体の結果
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5.結果、仮説の検証(仮説①)〇プレテストでC評価を取った生徒の経過
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0人
39人46人
7人
プレ ポスト
B or AC
5.結果、仮説の検証(仮説①)〇マッピングに対する意識
41%
46%
10% 2% 1%そう思う
どちらかという
とそう思う
どちらかという
とそう思わない
そう思わない
Q:マッピングを使って英語の文を書くことはあなたにとって役に立ちましたか?
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5.結果、仮説の検証(仮説①)〇マッピングに対する意識
41%
46%
10% 2% 1%そう思う
どちらかという
とそう思う
どちらかという
とそう思わない
そう思わない
Q:マッピングを使って英語の文を書くことはあなたにとって役に立ちましたか?
全体の87%の生徒がマッピングに対して肯定的な回答
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5.結果、仮説の検証(仮説①)〇マッピングに対する意識
87%
10% 3%
肯定
否定
未記入
・プレテスト:C⇒ポストテスト:B / Aに改善した生徒の持っているマッピングに対する意識
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5.結果、仮説の検証(仮説①)〇マッピングに対する意識
87%
10% 3%
肯定
否定
未記入
・プレテスト:C⇒ポストテスト:B / Aに改善した生徒の持っているマッピングに対する意識
Cから改善した生徒の内、87%がマッピングに対して肯定的な回答
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5.結果、仮説の検証(仮説②)〇ピア・フィードバック活動に関する意識調査
以下の質問をポスト・アンケートとして行った。(回答数79)
③友達からのコメントをもらった後に、英語の文を頑張って書こうという気になりましたか?
④友達の作文を読むことで、自分も英語の文を書いてみようという気持ちになりましたか?
※4件法:「そう思う」、「どちらかというとそう思う」、「どちらかというとそう思わない」、「そう思わない」で回答
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5.結果、仮説の検証(仮説②)〇ピア・フィードバック活動に関する意識調査の結果(質問③、④の結果をもとに)
65%11%9%
15% どちらにも肯定的
③にのみ肯定的
④にのみ肯定的
どちらにも否定的
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5.結果、仮説の検証(仮説②)〇ピア・フィードバック活動に関する意識調査の結果(質問③、④の結果をもとに)
65%11%9%
15% どちらにも肯定的
③にのみ肯定的
④にのみ肯定的
どちらにも否定的
85%の生徒がピア・フィードバック活動を通して意欲が向上したと回答
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5.成果と課題
成果
・マッピングを用いることによって、内容的に関連性のある項目をまとめて、まとまりのある文を書けるようになった⇒自分の考えをつながり、まとまりのある文で書けるようになった
・ピア・フィードバックを用いることによって、文章を書こうという意欲を引き出すことができた
+α 総語数が増えた
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5.成果と課題
課題
〇ポストテストでもC評価を取った生徒への支援
・作成したマッピングのピア・フィードバック・文レベルで書く力の育成・個に応じた丁寧な指導
〇ピア・フィードバックでのコメントに関する指導・成長につながるコメントを書けるようになる必要性あり
例)「遠慮していたのか、次につながるコメントがなかった」
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5.成果と課題
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課題
〇作文の質の改善(今回は形式的な正確さをほとんど配慮していないため)
・「正確さ」の向上・語順の定着・各品詞の結びつきについて(例)動詞と目的語、主語と動詞など
・日本的事物の説明(「日本のもの」を英語で伝えるときには、その説明が不可欠)
6.主要参考文献・Kang, S. (2004). Using visual organizers to enhance EFL instruction. ELT Jounal, vol.58. pp.58-
67.・池田玲子. (2002). 「第二言語教育でのピア・レスポンス研究-ESLから日本語教育に向けて
-」. 『言語文化と日本語教育』. 2002年5月増刊特集号. pp.289-310. ・上杉美恵子(2007) 「思いや考えを適切に書くことへの意欲を高める学習指導の工夫」. 『平成
18年度1か年及び6か月長期研修員研究報告書』. pp.71-78. 岡山県教育センター.・大井恭子( 編). (2008). 『パラグラフ・ライティング指導入門-中高での効果的なライティング指
導のために』. 大修館書店.・国立教育政策研究所教育課程研究センター. (2012). 「特定の課題に関する調査(英語:「書く
こと」)調査結果(中学校)」.・三枝ゆかり. (2007). 「中学校英語科において表現する能力を高める指導の工夫」. 山梨県
総合教育センター.・立川研一. (2011). 「中学生のパラグラフ・ライティングにおける事前プランニングとしてのマイ
ンドマップの有効性」. 『STEP BULLETIN』volume23. pp.94-109.・ベネッセ教育開発研究センター. (2008). 「第1回中学校英語に関する調査報告書[ 教員調
査・生徒調査]」.・森岡久美子. (2007). 「書くことへの意欲を高め、表現を学び合う工夫~書く活動から話す活動
へ~」. 『英語教育』. Vol. 59-3. pp.8-9. 開隆堂・文部科学省. (2008). 『中学校学習指導要領 外国語編』開隆堂.
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ご清聴ありがとうございました
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