明日香村ふるさと投資の取組み

空き家とクラウドファンディングを活用してインバウンド推進

明日香村商工会（飛鳥ニューツーリズム協議会事務局） 経営指導員 下田正寿

明 日 香 村 の 概 要

明日香村は、奈良盆地の南東部に位置し、大阪から約40km、奈良市から約25kmの圏内にあります。北西部から北にかけては、畝傍山・耳成山・香久山の大和三山が連なる橿原市に接し、東は多武峰山系によって桜井市と吉野町に接し、南及び西は高取山系によって高取町に接しています。

面積は24.08km2で、南東部から北西部に傾斜しており、北部には飛鳥川、百貫川、中の川、戒外川により、南西部には高取川、平田川、檜前川による狭長な盆地が形成されているほか、飛鳥川、冬野川沿いの谷部を除き概ね傾斜地となっています。

１）位置と地勢

明日香村とその周辺は、飛鳥時代と呼ばれる6世紀末から7世紀にかけての約100年間、一時期を除いて都が営まれ、天皇という称号や日本という国号が初めて用いられ、律令が初めて制定されるなど、日本の古代国家体制が形成された地域であるとともに仏教その他大陸文化の影響を受けながら飛鳥文化が開花したところです。

村内には宮跡、古墳などの文化遺産が数多く存在し、万葉集にも詠われた自然環境と一体となって歴史的風土を形成しています。

２）沿革

高度経済成長期に相次いだ開発による景観問題を契機に、特に京都や奈良、鎌倉などの古都においてその歴史的景観を保全する必要性が全国的に認識されるようになりました。これを受け、昭和41年に「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法（古都保存法）」が制定されました。歴史的遺産、文化的遺産のひとつひとつについてではなく、それらと一体となった自然的環境のすべてを｢歴史的風土｣と捉え、その風土･環境を開発の波から守ろうとするのが、この法律の考え方です。明日香村は、古都保存法制定と同時に対象地区に指定されました。

しかし、それでも明日香村には都市化が押し寄せる一方、主要な産業である農林業は零細化と後継者不足が進み、村は苦境にたたされていました。開発を規制するだけでは歴史的風土は守れない、住民の暮らしを豊かにすること抜きに環境と一体となった風土を守ることはできないことが明らかとなったのです。

村民らは、このような危機に一体となって立ち向かい、全国に向かって声をあげました。また、全国からも明日香村の風土を守れという多くの声援が寄せられました。このような大きな国民的運動により、昭和55年、「歴史的風土の保存」と「住民生活の安定・向上」を2本の柱とする「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」が制定されたのです。

３）明日香村と明日香法

明日香村を訪れる観光客数は、昭和50 年代のピーク時は年間約180 万人を数えたが、近年は60～80 万人程度である。平成22 年（2010）の平城遷都1300 年祭には100 万人の訪れがあった。

明日香村では村の魅力を五感で感じることができる「明日香まるごと博物館づくり」の実現に向けて「見る・泊まる･食べる・買う・感じる」をキーワードに、さらに「つなぐ」「発信する」を加えて積極的な観光振興策を展開しているところである。具体的には平成24 年から観光資源などの情報案内システム「あすかナビ」の開始、各種オーナー制度、飛鳥ブランドの推進などを進めている。「あすかナビ」は携帯情報端末（スマートフォン、タブレット、携帯電話）やPCの普及に対応して、寺社・遺跡・観光施設、便益施設などの村内の主要施設の情報を提供するアプリケーションサービスである。平成25 年から奈良県が公開を開始した位置情報付きイラスト地図を配信できる「なら飛鳥京歴史ぶらり」とともに、GPS による位置情報を用いて来訪者の目的に応じた多様な情報を提供している。またMR による遺跡の360 度視点解説映像体験「バーチャル飛鳥京」の定期的開催による、最新技術と古代飛鳥の融合による新しい魅力の提供も行っている。

４）観光・交流

飛鳥地域は、6 世紀末から7 世紀末の約100 年間、わが国の国家基盤が形成された時代の歴代天皇の宮が置かれた地である。明日香村内には全域にわたって、政治、経済、文化の中心地であったことを示す多くの重要遺跡が所在する。すなわち、飛鳥板蓋宮、飛鳥浄御原宮など歴史上著名な舞台となった遺跡が重層する飛鳥宮跡（伝飛鳥板蓋宮跡）をはじめとして、飛鳥京跡苑池などの宮跡関連遺跡、日本最古の本格的寺院である飛鳥寺跡、川原寺跡などの寺跡、石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳などの古墳など、東アジア諸国との交流を示す歴史的文化的遺産群である。

これら遺跡のうち20 件が国の史跡に指定されており、うち石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳は特別史跡に指定されている。発掘調査によってその存在が明らかになった飛鳥京跡苑池では、日本庭園文化の源流を示すものとして、史跡とともに名勝にも指定されている。

有形文化財は22 件が重要文化財に指定されており、そのうち２件が国宝に指定されている。

これらの中には高松塚古墳壁画（国宝絵画）､須弥山石・石人像（重文彫刻）、牽牛子塚古墳出土品・高松塚古墳出土品（重文考古資料）などの発掘調査によって確認、出土したものも含まれている。岡寺の木心乾漆義淵僧正坐像（国宝彫刻）、飛鳥寺の飛鳥大仏とも呼ばれる銅造釈迦如来坐像（重文彫刻）、於美阿志神社石塔婆、岡寺書院・仁王門（建造物）など多くの文化財が長い歴史をもつ社寺に伝えられている。

平成19 年には「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」が世界遺産の暫定リストに掲載され、現在世界遺産登録を目指して奈良県、明日香村他関係市が連携して準備を進めている。

５）文化財

石舞台古墳と古代人のイメージ 日本最古とされる飛鳥寺と飛鳥大仏 彼岸花咲く稲渕棚田

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明日香村の風景

聖徳太子生誕の地・橘寺 石舞台古墳

日本最古の仏教寺院・飛鳥寺 日本の棚田百選・稲淵

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明日香村が抱える課題と私たちの取り組み

課題

• 宿泊施設開設に対する厳しい環境 法律で守られた日本国の生まれた地、そのため、ホテルはもちろんのこと、新しい宿泊施設を開設するには、多くの費用がかかり、そして制限があります。新しい施設を建てる場合の建ぺい率、歴史的風土保存地区（1種・2種）での建物制限などにより、開業がしにくい環境にあります。

• 誰もしなかった、外国人、若者へのおもてなし 史跡があれば人が来る。そのような時代が長く続きました。それ自体は決して悪いことではないのですが、もてなしのサービスが育まれない結果となりました。外国人や若者の来訪が増える中、新しい来訪者へのおもてなしは皆無に等しいかもしれません。

私たちの取り組み

• 古民家や歴史的風土等、今ある資産を活用し来訪者にとって魅力ある価値へ、地域一体となって取り組むおもてなし

• 若い人、そして外国人にも飛鳥、明日香を満喫してもらうおもてなし

古民家活用によるゲストハウス運営

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ここ数年の明日香村での新たな動き

【 飛鳥民家ステイ事業の立ち上げ 】 ※H23年～

①ホームステイ型民泊による国内教育旅行の受入

②インバウンドの受入増加（教育旅行、研修団体 他）

③各種体験プログラムの充実

→農業体験、歴史ガイドツアー、家業体験 他

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飛鳥民家ステイ事業の様子

農作業体験 インバウンド・草の根交流

受入家庭での団らん 涙の離村式

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飛鳥民家ステイの受入実績

平成23年 2団体 105泊

平成24年 11団体 348泊

平成25年 26団体 2,585泊

平成26年 50団体 3,229泊

平成27年 100団体 4,830泊

平成28年 116団体 6,296泊

平成29年 72団体 5,481泊（平成29年9月4日現在）

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飛鳥民家ステイの受入実績

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クラウドファンディング実施の背景

・年々増え続ける空き家

→空き家を宿泊施設など有効に活用できないか？

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・「通称：明日香法」の存在

国内唯一、村全体が歴史的風土特別保存地区に

指定。瓦屋根や建物高さ制限などの厳しい規制。

ゆえに100年後も「日本の原風景」が残る。

→大型ホテルや旅館は参入不可

・飛鳥民家ステイ事業によるインバウンド増加

→FIT（個人層）もターゲットにできないか？

資金調達はどうする？

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空き家をリノベーションした宿泊事業の立ち上げへ

・自己資金

・金融機関からの融資

・補助金

その他に、

クラウドファンディングもありかな・・・、程度に考え

ていました。

なぜクラウドファンディングを活用したか

・ファンド組成会社についての情報があった

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・共感型資金調達による顧客獲得に斬新さを感じた

しかし本音は・・・

→奈良県エリアマネジメント中間支援事業に採択

され、補助金活用によりクラウドファンディングが

導入しやすくなったから。

空き家活用の対象物件について

リノベーション前の施設外観 中庭

• 築110年の古民家

• 所在地：奈良県高市郡明日香村飛鳥659番地

• 地積：317.72 ㎡

• 床面積：68.59㎡、19.38 ㎡ 、37.19 ㎡

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施設の立地

• 日本最古の寺院と言われる「飛鳥寺」の創建当時の境内に位置しており、周辺には古代の迎賓館と言われる石神遺跡、日本最古の漏刻・水落遺跡、明日香村を一望できる国営飛鳥歴史公園甘樫丘地区など、歴史と自然にあふれる魅力的な環境にひっそりとたたずんでいます。

• 第2種歴史的風土保存地区

レンタサイクル

レンタサイクル

バス

バス

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事業の実施主体（クラウドファンディング）

㈱Ｊ‐roots（ジェイルーツ）

奈良県高市郡明日香村飛鳥659番地

平成26年2月14日設立

事業内容

・ゲストハウスの運営

・広告代理店業務

・超小型モビリティのレンタル事業 他

地域内の若手事業者が出資。

民間事業者による持続可能な取り組みとして実施

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クラウドファンディングの実施

ファンド名：『明日香村古民家活用おもてなしファンド』

募集期間 平成26年3月4日～平成27年8月31日

一口金額 31,650円

募集総額 15,000,000円

出資特典 1口につき無料宿泊券（2,800円）、

及び特産品（1,500円相当）のセット

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約13,000,000円（参加人数218人）の出資が集まる

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事業全体の資金繰り

ファンド以外にも、補助金と金融機関融資を活用

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・補助金

→総務省・地域経済循環創造事業交付金

１１，０００，０００円

・金融機関融資

→奈良県内の地方銀行（南都銀行）

１０，０００，０００円

アスカゲストハウスの概要

『アスカゲストハウス』

営業時間 IN/16：00 OUT/11：00

料金プラン ドミトリー素泊まり2,800円

個室1泊1室12,000円（4名まで）

収容人数 最大21名

従業員 4名（全て地域内出身の20代～30代）

ドミトリーは男女混合と女性専用があり、男女別にシャワー（各2）・トイレを備える。

プライベート重視ならば蔵個室がおすすめ。全館貸切のニーズもあり。

オプションで、朝食・昼食・夕食の提供可能。カウンターバーも併設し、奈良の地酒などが人気。英語対応・Wi-Fi等、外国人旅行者向けサービスも充実。

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アスカゲストハウス（玄関）

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アスカゲストハウス（共有スペース）

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アスカゲストハウス（ドミトリー）

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アスカゲストハウス（蔵個室）

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アスカゲストハウス（交流）

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アスカゲストハウス（食事）

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今後に向けた取り組み

①明日香村モデルの確立

古民家（空き家）を活用したスタートアップ事業において、事業

推進に関するノウハウの構築

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③住宅宿泊事業法（民泊新法）の活用

②明日香村のブランディング推進

「伝えたいのは日本国始まりの空気感」、この地だけが持つ

この独特の雰囲気の価値をあげる

上記の取り組みを進める上での一つのツールとしてクラウドファンディングを取り入れる事も有り得る

クラウドファンディングの役割

・資金調達と顧客獲得を同時に遂行できる。しかし、ファ

ンディングの特徴をよく理解した上で活用する事が重要

と思います（一度は失敗してもいいぐらいの気持ちで・・）

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・あくまでも資金調達、及び広告宣伝等販促活動の中

の一つのツールであり、それ以上でも以下でもない。目

的を明確にして活用する事が大事。

・コストが高い（投資型）。話題性だけで取り掛かると、事業推進が困難になる可能性が高い。

ご静聴ありがとうございました。

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