自動車と ict 技術の融合 · のapple,googleも自動車連携の仕組みを相次い...

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自動車と ICT 技術の融合 -スマートフォンの自動車への活用動向- Integration of Information and Communication Technologies with Automobiles -Utilization of smartphones in automobiles- 伊藤 * 1 Hiroshi ITO 1. はじめに 近年のスマートフォンの普及は目覚しく, 2014 4月に発表された内閣府経済社会総合研究所の 消費動向調査によれば,平成25年度のスマートフ ォンの普及率は全世帯数に対して54.7%(携帯電 話全体では93.2%)に達している.この傾向は, 今後も続くと見られ, (株) MM総研の予測によれ ば,2019年のスマートフォン契約数は国内で1台を超えると予想されている 1) スマートフォンは,アプリケーションをインス トールすることで,様々な機能を持たせることが 可能である. WiFi,ブルートゥース, USB等のイ ンタフェースを持ち,車載機器との接続・連携が 可能なこと等の優れた特長を持ち,既に道路交通 情報の受信,ナビゲーション,各種リモートサー ビスを初めとする自動車向けアプリケーションが 普及している.これに加えて,自動車保険に走行 距離や,運転方法を反映させるサービスも提供さ れている. これらの自動車向けサービスに加えて,自動車 を走るセンサーと見立てて,情報収集をするアイ デアも提案されており,そのための仕組みの提供, 標準化活動も活発に行われている.今後も,こう したサービス/ システムが次々と発表されると見 られる. こうした背景を受け,現在のサービスの状況を 報告すると共に,標準化動向を報告する. 2. スマートフォンを活用した自動車向けサービ スの動向 自動車向けサービスには,スマートフォン単独 で実現できるサービスと,自動車との連携で実現 するサービスがある.これらについて,以下紹介 する. 2.1 スマートフォン単独のサービス スマートフォン単独で提供されるサービスとし ては,道路交通情報提供や,ナビゲーションが良 く知られている(図1).この他,スマートフォン のカメラを利用した車間距離警告アプリ(図23)も提供されている. 1 スマートフォンナビの表示例 2) 交通情報としては, Google交通情報が良く知ら れている(図4). Google2013年に買収したイス ラエルのWaze(図5)は渋滞情報を会員のコミュ JARI Research Journal 20140901 【解説】 1 一般財団法人日本自動車研究所 ITS研究部 JARI Research Journal (2014.9) 1

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  • 自動車と ICT 技術の融合 -スマートフォンの自動車への活用動向-

    Integration of Information and Communication Technologies with Automobiles -Utilization of smartphones in automobiles-

    伊藤 寛 *1 Hiroshi ITO

    1. はじめに 近年のスマートフォンの普及は目覚しく,2014年4月に発表された内閣府経済社会総合研究所の消費動向調査によれば,平成25年度のスマートフォンの普及率は全世帯数に対して54.7%(携帯電話全体では93.2%)に達している.この傾向は,今後も続くと見られ,(株)MM総研の予測によれば,2019年のスマートフォン契約数は国内で1億台を超えると予想されている1). スマートフォンは,アプリケーションをインス

    トールすることで,様々な機能を持たせることが

    可能である.WiFi,ブルートゥース,USB等のインタフェースを持ち,車載機器との接続・連携が

    可能なこと等の優れた特長を持ち,既に道路交通

    情報の受信,ナビゲーション,各種リモートサー

    ビスを初めとする自動車向けアプリケーションが

    普及している.これに加えて,自動車保険に走行

    距離や,運転方法を反映させるサービスも提供さ

    れている. これらの自動車向けサービスに加えて,自動車

    を走るセンサーと見立てて,情報収集をするアイ

    デアも提案されており,そのための仕組みの提供,

    標準化活動も活発に行われている.今後も,こう

    したサービス/システムが次々と発表されると見られる. こうした背景を受け,現在のサービスの状況を

    報告すると共に,標準化動向を報告する.

    2. スマートフォンを活用した自動車向けサービスの動向 自動車向けサービスには,スマートフォン単独

    で実現できるサービスと,自動車との連携で実現

    するサービスがある.これらについて,以下紹介

    する.

    2.1 スマートフォン単独のサービス スマートフォン単独で提供されるサービスとし

    ては,道路交通情報提供や,ナビゲーションが良

    く知られている(図1).この他,スマートフォンのカメラを利用した車間距離警告アプリ(図2,図3)も提供されている.

    図1 スマートフォンナビの表示例 2)

    交通情報としては,Google交通情報が良く知られている(図4).Googleが2013年に買収したイスラエルのWaze(図5)は渋滞情報を会員のコミュ

    JARI Research Journal 20140901 【解説】

    *1 一般財団法人日本自動車研究所 ITS研究部

    - - JARI Research Journal (2014.9)

    1

  • ニティでシェアするカーナビアプリである.ユー

    ザの端末位置情報・イベント通知情報から交通情

    報或いは地図までも作ってユーザに提供している.

    図2 車間距離警告例(ドライブメイト)3)

    図3 白線認識による車間距離精度の向上例(セーフティサイト)4)

    図4 Google交通情報の例 5)

    図5 Wazeのナビ表示 6)

    2.2 自動車(車載機器)との連携サービス (1) インフォテイメント 自動車の車内画面で提供するサービスは,運転

    の妨げにならない安全面での配慮が求められる.

    このため,自動車のディスプレーにスマートフォ

    ンの画面を表示する際には工夫が必要である.さ

    らには,自動車には,様々な情報があるために,

    これを活用するサービスもある.こうしたサービ

    スには,情報をつくる場所や,表示の制御を何処

    で行うか,等を含めて様々なタイプが存在する. 表1は,スマートフォンと, IVI( In Vehicle Infotainment;ナビ等の車載情報システム)の統合の方法・アプリケーションの所在を分類したも

    のである.

    表1 スマートフォンとIVI統合の分類 7) 8)

    表中,最上段の「組み込み」には,車載ナビ等

    が該当する.2段目のテザリングは,スマートフォンの通信機能を利用するもので,ユーザ携帯端

    末をコネクティビティ(通信機)として利用する

    タイプのテレマティックスサービスが該当する. クラウドサービスとしては,音声認識をクラウ

    ド(サーバ)側で実施するサービスが実用化され

    ている.例えば富士通テンは,2013年からCarafLというアプリで,センター側で処理を実施するこ

    とで,膨大な認識辞書データベースを活用した,

    自然発話形式での音声認識や,高度な意味理解,

    推論エンジンを用いて,話者の発話内容や意図の

    推定による自然な対話を実現している(図6).

    アプリ所在:主なアプリケーションが動作している場所 ユーザインタフェース UI制御 :画面上に実際に表示する形態を決める部分 操作 :選択,On/Offなどの操作を行うタッチパネルや コントローラ,スイッチの場所 表示 :表示先(全て車載画面)

    - - JARI Research Journal (2014.9)

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  • 図6 クラウド(サーバ)型音声対話の例 9)

    ターミナルモードは,現在,MirrorLinkと呼ばれ,Car Connectivity Consortiumが規格を定めている(図7).アプリ機能,HMI,通信機能はスマートフォン側にある.対応アプリケーションは,

    機能,表示の車載ガイドラインへの適合状況に関

    して予め認証を受ける.満たした要件によって,

    標準,停車,あるいは走行中に利用することが可

    能な走行モード対応アプリ等に分類される.

    MirrorLinkの仕様は2013年末の段階でバージョン1.1である.無線接続対応のバージョン1.2は2014年中に公開予定となっている.

    図7 MirrorLinkのソフトウェア構成 10)

    現在,自動車メーカではトヨタ,ホンダ,VW,PSA等が採用ている.ナビメーカとしてはPanasonic,パイオニア,富士通テン等が製品を販売している(図8).

    図8 MirrorLink表示イメージ例(パイオニア) 11)

    MirrorLinkは,携帯電話メーカのNokia社を中心に進められてきたが,最近、同じ携帯電話業界

    のApple,Googleも自動車連携の仕組みを相次いで発表している. Appleは2014年3月にiPhoneと自動車の連携の仕組みとして、ナビ,音声認識,音楽再生などの

    機能を持つCarPlay(図9)を発表した12).メルセデスベンツ,ホンダ,ボルボ,ヒュンダイ,フェ

    ラーリ等が製品を出すことを表明しており,複数

    の日本メーカも対応製品発売を予定している.

    図9 CarPlayのイメージ

    Googleは,2013年にAndroid OSの自動車への適用に向けて,Open Automotive Allianceを設立した13).現在,自動車メーカ,ナビメーカ,ICメーカ等40社以上が参加している.また,2014年6月には,Android携帯と接続して,ナビ,音声機能 , メ ッ セ ー ジ 送 受 信 な ど を 実 現 す る

    AndroidAuto(図10)を発表している14) .

    図10 AndroidAutoのナビ画面イメージ

    MirrorLink,CarPlay,AndroidAuto共に,多くの自動車メーカ・ナビメーカ等が参加しており,

    今後の対応や,車に対する機能の進展の動向が注

    目される.

    - - JARI Research Journal (2014.9)

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  • また,以上紹介したスマートフォンとIVI/カーナビの連携以外にも,スマートフォンで取得し

    た目的地をナビに送信する例(図11)や,スマートフォンでダウンロードした専用アプリをナビに

    転送して利用する(図12)等,多様な接続形態の製品が販売されている.

    図11 目的地をナビに転送するイメージ例(日産)15)

    図12 アプリをナビに転送して利用するイメージ例

    (G-Book ARPEGGiO)16)

    (2) リモートサービス 自動車メーカのテレマティックスサービスには,

    従来から遠隔で自動車の状態を確認したり,オペ

    レータを介して操作する機能が提供されていた.

    これに対して,スマートフォンの登場で,専用ア

    プリによる操作が可能になっている. 電気自動車等の充電を必要とする車は,電池管

    理・充電管理の関係で,遠隔からの情報確認,操

    作ニーズが高いため,スマートフォンを使った管

    理サービスが各社から提供されている. 図13は日産リーフ,図14はトヨタのプラグイン・ハイブリッド車の例である.いずれも,充電

    開始,冷房のON/OFF操作が可能である.

    図13 電気自動車のリモート管理画面例(日産リーフ) (電池状況(左),充電開始(中央),エアコン操作(右))17)

    図14 eConnectのリモート管理例(トヨタPHV)

    (充電,エアコン)18 )

    GMでは,エンジン始動,ドアロックの制御といったリモートキーの機能をスマートフォンアプ

    リに持たせるOnstar Remote Link Key Fob というサービスを提供している(図15).これは,通常のワイヤレスキーのように直接自動車と通信す

    るのでは無く,携帯電話網によるOnStarセンターとの通信で操作が行われるものである.

    図15 リモート管理例(GM OnStar) (左からEVバッテリー、燃料、エンジン始動)19 )

    富士通テンもリモートスタートの仕組みを

    2013年から提供している(図16).こちらも操作機能は,クラウド(サーバ)側で制御している.

    - - JARI Research Journal (2014.9)

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  • 図16 クラウド活用のスマートフォン連携 リモートエンジンスタートシステム 20)

    2.3 車両情報を利用する仕組みの動向 2.2節では,スマートフォンの機能を車載機に連携させたり,車載システムの操作に使う例を紹介

    した.本節では,自動車の中にある情報を利用す

    る際の仕組みや,情報の種類,情報活用で実現さ

    れるサービス等を紹介する. 2.3.1 自動車情報の取得 車両情報をスマートフォンで利用するための製

    品が市販されている.図17は,診断用のOBD-Ⅱポートに接続して取得した情報から燃費などを表

    示する例である.

    図17 ドライブメイトコネクト21)

    車両情報の活用のための仕組みとしては,米国

    のFordが提供しているOpen XCもある(図18).操舵角,エンジン回転数,車速,オドメータ,燃

    料計,ヘッドライト,緯度・経度等,19項目もの

    情報が提供される.

    図18 Open XCのアーキテクチャ(機器接続)22)

    2.3.2 自動車情報の活用(自動車・運転者) 自動車の情報を活用する例としては,10年程度前から,自動車プローブ情報があり,道路交通情

    報以外にも,降雨情報,規制情報,新しい道など

    の情報収集に活用されている. 近年,保険の料率に運転距離や,運転方法を反

    映させる保険が販売されている.前者はPay as you drive(PAYD),後者はPay how you driveと呼ばれている.いずれも,走行距離,速度,加速

    度等を計測できる機器を自動車に装着し,走行情

    報を収集する.スマートフォンアプリと連携して,

    走行方法の評価の状況を知らせる例もある(図19).

    図19 英国AAのDriveScore アプリの表示例23)

    米国のProgressive社では,2012-2013年で50%増の15 億ドルに達するPAYD保険契約を達成している.OBDポートに接続して利用する専用の端末が用意されている(図20)24). 米国では,車両情報,とりわけ故障診断情報を

    無線で基地局等に送信する仕組みの標準化も進ん

    でいる.SAEでは,J3005という遠隔情報取得のためのリモートOBDの仕様が策定されている25).

    - - JARI Research Journal (2014.9)

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  • 図20 ProgressiveのPAYD用端末「スナップショット」26)

    3. 自動車情報の活用のための技術と標準化 自動車の情報を外部で活用しようとする動きは

    各方面で活発である.方法として,2.3.1で紹介したOpenXCのような仕組み以外に,今後のWebブラウザーの自動車への活用を見越して,車両情報

    を扱えるように必要なAPIを規定する動き,さらには,車両情報をスマートフォン等を介して活用

    するための標準化の動き等,様々な動きがある.

    以下にそれぞれの概要・最近の状況を紹介する.

    3.1 Webブラウザ用車両情報API 規格策定 W3C(World Wide Web Consortium)では,2013 年 2 月に Automotive and web platform business groupを発足させ,Webブラウザを介して,車両情報を取得するためのAPI(Application Interface)の規格化に着手した.規格化に向けては,QNXといった個社,GENIVI,TIZENといったコンソシアム,Webinosといった研究開発プロジェクトから仕様案が持ち寄られ,Vehicle Information APIとVehicle Data Interfaceの規格原案が出来ている27).Vehicle Data Interfaceでは,7つのカテゴリー,50項目余りのデータを規定している.今後,ビジネスグループの手を離れ,W3Cの会員で組織されるWGで,規格化の手続きが進められることになると見られる.

    3.2 車載ゲートウェイ標準化の動向 ISO TC204で2008年からISO 13185 Vehicle Interface for provisioning and support of ITS services の策定作業が進められて来た.これは,車載LANとスマートフォン等のNomadicデバイスの間のゲートウェイ機能を規定する規格である.

    当初,4パート(一般情報,プロトコル,構成要件,適合性評価)のISO化が予定されていたが,この内,一般情報はTR(技術報告書)として発行,

    プロトコルは,DIS投票を終え,FDIS投票に進むことになっている.これに対して,構成要件(ユ

    ーザへのアクセス権限,データIDの変換等)については,自動車の標準化を担当するTC22との合同WGが設置され,2013年9月から議論が始まっている.

    3.3 その他の関連標準化動向 ITU-Tや,通信系の国際標準化団体では,通信,或いはネットワークの観点から標準化を進めてい

    る.ITU-TではSG16で,Vehicle Gatewayの標準化を進めている28).また,M2M(Machine to Machine)のためのプラットフォーム標準化においても,対象分野として自動車が想定されており,

    今後,検討が進められると見られる. 4. まとめ スマートフォンの急速な普及は,自動車のナ

    ビ・インフォテイメントに対して,大きな影響を

    与えている.今後,スマートフォンの普及率が上

    昇することに伴い,自動車の中でスマートフォン

    アプリの使い勝手が益々向上することが予想され

    る.併せて,Nokia,Apple,Googleといった携帯電話関連会社との連携も活発になってきており,

    こうした連携が,インフォテイメントに留まるの

    か,車の安全や制御に関わっていくのかが今後の

    注目点である.その一方で,ISO,ITU,W3C等で,自動車とのインタフェースや,車両データ,

    APIの標準化を目指す動きも活発である.このように,車のオープン化が進むことにより,ビジネ

    ス構造の変化への対応に加え,外部システムとの

    接続に伴う,情報セキュリティの確保が益々重要

    になると考えられる.

    参考文献

    1) MM 総研,スマートフォン市場規模の推移・予測(2014年 4 月)

    2) ナビタイム Web ページ

    http://products.navitime.co.jp/service/carnavitime/android_sp.html (2014.7.16)

    3) カーメイト ドライブメイト Web ページ

    - - JARI Research Journal (2014.9)

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  • http://www.drivemate.jp/ (2014.7.16) 4) 損保ジャパン Web ページ

    http://www.sompo-japan.co.jp/safetysight/index.html (2014.7.16)

    5) Google Map,https://www.google.co.jp/maps/

    @35.7261056,139.7192438,11z/data=!5m1!1e1?hl=ja 6) Waze Google Play https://play.google.com/store/apps/details?id=com.waze

    &hl=ja (2014.7.16) 7) Andy Gryc, QNX ホワイトペーパー,スマートフォンと

    自動車の不協和音に対応するには

    http://www.qnx.co.jp/download/group.html?programid=11454&sort=byname (2014.7.16)

    8) Johnson(QNX),Keeping the Car Relevant & Up to Date Through Device Connectivity,The Fully Networked Car Workshop, 2011,

    https://www.itu.int/dms_pub/itu-t/oth/06/41/T06410000100002PDFE.pdf

    9) 富士通テン プレスリリース

    http://www.fujitsu-ten.co.jp/release/2013/10/20131008_03.html

    10) Jorg Brakensiek, MirrorLink Next-Generation Technology for In-car Connectivity, Octber 2013

    11) パイオニア Web ページ

    http://pioneer.jp/carrozzeria/splink/appli_unit/control.php#group4 (2014.7.16)

    12) Apple Web ページ

    https://www.apple.com/jp/ios/carplay/ (2014.7.16)

    13) Open Automotive Alliance Web ページ http://www.openautoalliance.net/#about(2014.7.16)

    14) Android Web ページ http://www.android.com/auto/ (2014.7.16) 15) 日産 Web ページ

    http://www.nissan.co.jp/OPTIONAL-PARTS/NAVI_AUDIO/NISSAN_CONNECT/ (2014.7.16)

    16) G-Book ARPEGGIO Web ページ

    http://www.d-arpeggio.com/gbook/pc/index.html 17) 日産 Web ページ http://ev.nissan.co.jp/LEAF/EVIT/ (2014.7.16) 18) トヨタ Web ページ http://toyota.jp/priusphv/ 001_p_003/drivesupport/econnect/ (2014.7.16) 19) Onstar Remote Link Web ページ

    http://www.chevrolet.com/onstar-remotelink.html (2014.7.16)

    20) 富士通テン Web ページ http://www.fujitsu-ten.co.jp/

    release/2013/03/20130312.html 21) Drive mateWeb ページ http://www.drivemate.jp/ drivemate-connect-dx500/ (2014.7.16) 22) OpenXC Web ページ http://openxcplatform.com/

    (2014.7.16) 23) AAWeb ページ http://www.theaa.com/ apps/drivescore.html (2014.7.16) 24) Michelle V. Rafter

    http://www.edmunds.com/auto-insurance/pay-as-you-drive-insurance-goes-into-high-gear.html

    25) SAE J3005 Web ページ http://standards.sae.org/wip/j3005/ (2014.7.16)

    26) ProgressiveWebページ http://www.progressive.com/ auto/snapshot/ (2014.7.16)

    27) W3C Automotive and web platform BG http://www.w3.org/community/autowebplatform/ 28) ITU-T SG16 Q27/16

    http://www.itu.int/en/ITU-T/studygroups/2013-2016/16/Pages/q27.aspx (2014.7.16)

    - - JARI Research Journal (2014.9)

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    JARI Research Journal 20140901【解説】1. はじめに近年のスマートフォンの普及は目覚しく,2014年4月に発表された内閣府経済社会総合研究所の消費動向調査によれば,平成25年度のスマートフォンの普及率は全世帯数に対して54.7%(携帯電話全体では93.2%)に達している.この傾向は,今後も続くと見られ,(株)MM総研の予測によれば,2019年のスマートフォン契約数は国内で1億台を超えると予想されている1).スマートフォンは,アプリケーションをインストールすることで,様々な機能を持たせることが可能である.WiFi,ブルートゥース,USB等のインタフェースを持ち,車載機器との接続・連携が可能なこと等の優れた特長を持ち,既に道路交通情報の受信,ナビゲーション,各種リモートサービスを初めとする自動車向けアプリケーションが普及している.これに加えて,自動車保険に走行距離や,運転方法を反映させるサービスも提供されている.これらの自動車向けサービスに加えて,自動車を走るセンサーと見立てて,情報収集をするアイデアも提案されており,そのための仕組みの提供,標準化活動も活発に行われている.今後も,こうしたサービス/システムが次々と発表されると見られる.こうした背景を受け,現在のサービスの状況を報告すると共に,標準化動向を報告する.2. スマートフォンを活用した自動車向けサービスの動向自動車向けサービスには,スマートフォン単独で実現できるサービスと,自動車との連携で実現するサービスがある.これらについて,以下紹介する.2.1 スマートフォン単独のサービススマートフォン単独で提供されるサービスとしては,道路交通情報提供や,ナビゲーションが良く知られている(図1).この他,スマートフォンのカメラを利用した車間距離警告アプリ(図2,図3)も提供されている.図1 スマートフォンナビの表示例 2)交通情報としては,Google交通情報が良く知られている(図4).Googleが2013年に買収したイスラエルのWaze(図5)は渋滞情報を会員のコミュニティでシェアするカーナビアプリである.ユーザの端末位置情報・イベント通知情報から交通情報或いは地図までも作ってユーザに提供している.図2 車間距離警告例(ドライブメイト)3)図3 白線認識による車間距離精度の向上例(セーフティサイト)4)図4 Google交通情報の例 5)図5 Wazeのナビ表示 6)2.2 自動車(車載機器)との連携サービス(1) インフォテイメント自動車の車内画面で提供するサービスは,運転の妨げにならない安全面での配慮が求められる.このため,自動車のディスプレーにスマートフォンの画面を表示する際には工夫が必要である.さらには,自動車には,様々な情報があるために,これを活用するサービスもある.こうしたサービスには,情報をつくる場所や,表示の制御を何処で行うか,等を含めて様々なタイプが存在する.表1は,スマートフォンと,IVI(In Vehicle Infotainment;ナビ等の車載情報システム)の統合の方法・アプリケーションの所在を分類したものである.表1 スマートフォンとIVI統合の分類 7) 8)表中,最上段の「組み込み」には,車載ナビ等が該当する.2段目のテザリングは,スマートフォンの通信機能を利用するもので,ユーザ携帯端末をコネクティビティ(通信機)として利用するタイプのテレマティックスサービスが該当する.クラウドサービスとしては,音声認識をクラウド(サーバ)側で実施するサービスが実用化されている.例えば富士通テンは,2013年からCarafLというアプリで,センター側で処理を実施することで,膨大な認識辞書データベースを活用した,自然発話形式での音声認識や,高度な意味理解,推論エンジンを用いて,話者の発話内容や意図の推定による自然な対話を実現している(図6).アプリ所在:主なアプリケーションが動作している場所ユーザインタフェースUI制御 :画面上に実際に表示する形態を決める部分操作 :選択,On/Offなどの操作を行うタッチパネルやコントローラ,スイッチの場所表示 :表示先(全て車載画面)図6 クラウド(サーバ)型音声対話の例 9)ターミナルモードは,現在,MirrorLinkと呼ばれ,Car Connectivity Consortiumが規格を定めている(図7).アプリ機能,HMI,通信機能はスマートフォン側にある.対応アプリケーションは,機能,表示の車載ガイドラインへの適合状況に関して予め認証を受ける.満たした要件によって,標準,停車,あるいは走行中に利用することが可能な走行モード対応アプリ等に分類される.MirrorLinkの仕様は2013年末の段階でバージョン1.1である.無線接続対応のバージョン1.2は2014...図7 MirrorLinkのソフトウェア構成 10)現在,自動車メーカではトヨタ,ホンダ,VW,PSA等が採用ている.ナビメーカとしてはPanasonic,パイオニア,富士通テン等が製品を販売している(図8).図8 MirrorLink表示イメージ例(パイオニア) 11)MirrorLinkは,携帯電話メーカのNokia社を中心に進められてきたが,最近、同じ携帯電話業界のApple,Googleも自動車連携の仕組みを相次いで発表している.Appleは2014年3月にiPhoneと自動車の連携の仕組みとして、ナビ,音声認識,音楽再生などの機能を持つCarPlay(図9)を発表した12).メルセデスベンツ,ホンダ,ボルボ,ヒュンダイ,フェラーリ等が製品を出すことを表明しており,複数の日本メーカも対応製品発売を予定している.図9 CarPlayのイメージGoogleは,2013年にAndroid OSの自動車への適用に向けて,Open Automotive Allianceを設立した13).現在,自動車メーカ,ナビメーカ,ICメーカ等40社以上が参加している.また,2014年6月には,Android携帯と接続して,ナビ,音声機能,メッセージ送受信などを実現するAndroidAuto(図10)を発表している14) .図10 AndroidAutoのナビ画面イメージMirrorLink,CarPlay,AndroidAuto共に,多くの自動車メーカ・ナビメーカ等が参加しており,今後の対応や,車に対する機能の進展の動向が注目される.また,以上紹介したスマートフォンとIVI/カーナビの連携以外にも,スマートフォンで取得した目的地をナビに送信する例(図11)や,スマートフォンでダウンロードした専用アプリをナビに転送して利用する(図12)等,多様な接続形態の製品が販売されている.図11 目的地をナビに転送するイメージ例(日産)15)図12 アプリをナビに転送して利用するイメージ例(G-Book ARPEGGiO)16)(2) リモートサービス自動車メーカのテレマティックスサービスには,従来から遠隔で自動車の状態を確認したり,オペレータを介して操作する機能が提供されていた.これに対して,スマートフォンの登場で,専用アプリによる操作が可能になっている.電気自動車等の充電を必要とする車は,電池管理・充電管理の関係で,遠隔からの情報確認,操作ニーズが高いため,スマートフォンを使った管理サービスが各社から提供されている.図13は日産リーフ,図14はトヨタのプラグイン・ハイブリッド車の例である.いずれも,充電開始,冷房のON/OFF操作が可能である.図13 電気自動車のリモート管理画面例(日産リーフ)(電池状況(左),充電開始(中央),エアコン操作(右))17)図14 eConnectのリモート管理例(トヨタPHV)(充電,エアコン)18 )GMでは,エンジン始動,ドアロックの制御といったリモートキーの機能をスマートフォンアプリに持たせるOnstar Remote Link Key Fob というサービスを提供している(図15).これは,通常のワイヤレスキーのように直接自動車と通信するのでは無く,携帯電話網によるOnStarセンターとの通信で操作が行われるものである.図15 リモート管理例(GM OnStar)(左からEVバッテリー、燃料、エンジン始動)19 )富士通テンもリモートスタートの仕組みを2013年から提供している(図16).こちらも操作機能は,クラウド(サーバ)側で制御している.図16 クラウド活用のスマートフォン連携リモートエンジンスタートシステム 20)2.3 車両情報を利用する仕組みの動向2.2節では,スマートフォンの機能を車載機に連携させたり,車載システムの操作に使う例を紹介した.本節では,自動車の中にある情報を利用する際の仕組みや,情報の種類,情報活用で実現されるサービス等を紹介する.2.3.1 自動車情報の取得車両情報をスマートフォンで利用するための製品が市販されている.図17は,診断用のOBD-Ⅱポートに接続して取得した情報から燃費などを表示する例である.図17 ドライブメイトコネクト21)車両情報の活用のための仕組みとしては,米国のFordが提供しているOpen XCもある(図18).操舵角,エンジン回転数,車速,オドメータ,燃料計,ヘッドライト,緯度・経度等,19項目もの情報が提供される.図18 Open XCのアーキテクチャ(機器接続)22)2.3.2 自動車情報の活用(自動車・運転者)自動車の情報を活用する例としては,10年程度前から,自動車プローブ情報があり,道路交通情報以外にも,降雨情報,規制情報,新しい道などの情報収集に活用されている.近年,保険の料率に運転距離や,運転方法を反映させる保険が販売されている.前者はPay as you drive(PAYD),後者はPay how you driveと呼ばれている.いずれも,走行距離,速度,加速度等を計測できる機器を自動車に装着し,走行情報を収集する.スマートフォンアプリと連携して,走行方法の評価の状況を知らせる例もある(図19).図19 英国AAのDriveScore アプリの表示例23)米国のProgressive社では,2012-2013年で50%増の15 億ドルに達するPAYD保険契約を達成している.OBDポートに接続して利用する専用の端末が用意されている(図20)24).米国では,車両情報,とりわけ故障診断情報を無線で基地局等に送信する仕組みの標準化も進んでいる.SAEでは,J3005という遠隔情報取得のためのリモートOBDの仕様が策定されている25).図20 ProgressiveのPAYD用端末「スナップショット」26)3. 自動車情報の活用のための技術と標準化自動車の情報を外部で活用しようとする動きは各方面で活発である.方法として,2.3.1で紹介したOpenXCのような仕組み以外に,今後のWebブラウザーの自動車への活用を見越して,車両情報を扱えるように必要なAPIを規定する動き,さらには,車両情報をスマートフォン等を介して活用するための標準化の動き等,様々な動きがある.以下にそれぞれの概要・最近の状況を紹介する.3.1 Webブラウザ用車両情報API 規格策定W3C(World Wide Web Consortium)では,2013年2月にAutomotive and web platform business groupを発足させ,Webブラウザを介して,車両情報を取得するためのAPI(Application Interface)の規格化に着手した.規格化に向けては,QNXといった個社,GENIVI,TIZENといったコンソシアム,Webinosといった研究開発プロジェクトから仕様案が持ち寄られ,Vehicle Information APIとVe...3.2 車載ゲートウェイ標準化の動向ISO TC204で2008年からISO 13185 Vehicle Interface for provisioning and support of ITS services の策定作業が進められて来た.これは,車載LANとスマートフォン等のNomadicデバイスの間のゲートウェイ機能を規定する規格である.当初,4パート(一般情報,プロトコル,構成要件,適合性評価)のISO化が予定されていたが,この内,一般情報はTR(技術報告書)として発行,プロトコルは,DIS投票を終え,FDIS投票に進む...3.3 その他の関連標準化動向ITU-Tや,通信系の国際標準化団体では,通信,或いはネットワークの観点から標準化を進めている.ITU-TではSG16で,Vehicle Gatewayの標準化を進めている28).また,M2M(Machine to Machine)のためのプラットフォーム標準化においても,対象分野として自動車が想定されており,今後,検討が進められると見られる.4. まとめスマートフォンの急速な普及は,自動車のナビ・インフォテイメントに対して,大きな影響を与えている.今後,スマートフォンの普及率が上昇することに伴い,自動車の中でスマートフォンアプリの使い勝手が益々向上することが予想される.併せて,Nokia,Apple,Googleといった携帯電話関連会社との連携も活発になってきており,こうした連携が,インフォテイメントに留まるのか,車の安全や制御に関わっていくのかが今後の注目点である.その一方で,ISO,ITU,W3C等で,自動車とのインタフェースや,車両データ...参考文献