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1/14 高炉セメントを使用したレディーミクストコンクリートの管理について 平成19年6月 秋田県生コンクリート工業組合 技術研修センター

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Page 1: 高炉セメントを使用したレディーミクストコンクリートの管 …a-kenkyo.or.jp/.../concrete_union_material.pdf2/14 1.背景 平成19年4月1日より、秋田県のレディーミクストコンクリート標準使用基準にお

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高炉セメントを使用したレディーミクストコンクリートの管理について

平成19年6月

秋田県生コンクリート工業組合 技術研修センター

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1.背景

平成19年4月1日より、秋田県のレディーミクストコンクリート標準使用基準にお

けるセメントの種類が高炉セメント(B 種)となった(使用期間は原則として4月1日

より10月31日)。いわゆる「地球環境への配慮」のグリーン購入法によるものであ

る。これより、高炉セメントを用いたレディーミクストコンクリートを使用するにあ

たっての注意事項をこの3月に刊行された「施工性能にもとづくコンクリートの配合

設計・施工指針(案)」(この指針は、来年度改定予定のコンクリート標準示方書に反

映される)にもとづいて従来のコンクリートと比較して説明します。 2.配合計画について

2.1 レディーミクストコンクリートの種類の選択

2.1.1 呼び強度 呼び強度は、「レディーミクストコンクリート標準使用基準」の設計基準強度及び最大水

セメント比により決定されていたが、「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工

指針(案)」では、以下のように提案されている。

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2.1.2 スランプ 荷卸し箇所の目標スランプを以下のようにして求め、決定する。 荷卸し箇所の目標スランプ=打込みの最小スランプ+場内運搬に伴うスランプの低下 +荷卸しの許容差 (1)打込みの最小スランプ 打込み最小スランプは、構造条件や施工条件を考慮し、下表の値を標準値とする。

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(2)場内運搬に伴うスランプの低下は、施工条件により下記の値を標準値とする。特に

暑中においての高炉セメント使用時はロスが大きいので考慮する必要がある。

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2.1.3 粗骨材の最大寸法 粗骨材の最大寸法は、構造条件を考慮して下表の値を標準とする。

2.1.4 セメントの種類 セメントの種類は、「レディーミクストコンクリート標準使用基準」をもとに構造物の種

類や施工(時期・方法)を考慮して定める。 2.2 配合の照査

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2.2.1 JIS 認証品の照査 (1)提出された配合報告書により、水セメント比や各材料の単位量を確認する。 (2)施工の時期(季節)や現場までの運搬時間の条件を考慮し、その条件に適するもの

であることを確認する。 ※練混ぜから打込みを終わる時間が、気温が 25℃を超えるときで 1.5 時間、25℃以下の ときは 2 時間を超えてはならない(示方書の規定)。工場の選定にあっては、打込みに要 する時間を考慮して 1.5 時間で打込みを終えられる距離にある工場を選定することが望 ましい。また運搬時間は、運搬経路の交通混雑状況や天候等により変動するので、これ らの変動も考慮して工場を選定することが重要である。加えて高炉セメントを使用した 場合は暑中においては運搬ロスが大きいので、できるだけ近い工場を選定して欲しい。 2.2.2 水セメント比 配合報告書の水セメント比が「レディーミクストコンクリート標準使用基準」に定める 最大水セメント比を満足することを確認する。 2.2.3 単位水量 配合報告書に示される単位水量が 175kg/m3以下であることを確認する。 ※ 満足できない場合は、別の配合を選択するか、高性能AE減水剤を用いるなどして

175kg/m3 以下となるようにする。高炉セメントを使用した場合は、乾燥収縮によるひ

び割れを抑制するためからもこの値を厳守して欲しい。 2.2.4 単位セメント量 (1)配合報告書に示される単位セメント量が、設定されたスランプに対応した材料分離

抵抗性や振動締固め性を確保できるものであることを確認する。 (2)配合報告書に示される単位セメント量が、ポンプ圧送に対して適切であることを確

認する。 (3)配合報告書に示される単位セメント量では所要の施工性能を満足できない場合は、

呼び強度のランクを変更して再び配合の選定・照査を行う。 2.2.5 細骨材率および単位粗骨材量 配合報告書に示される細骨材率および単位粗骨材量が、所要の施工性能を確保できるも のであることを確認する。

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3.施工管理について 3.1 施工に関する確認事項 3.1.1 施工中に想定される障害の例 発生時期 障害の種類 主なチェック内容 備考

早すぎるスランプの低下 混和剤の種類、量

交通渋滞 道路状況

故障 供給計画、ポンプ車、生コン車 運搬

予想以上の待機 打込み計画

現場の打込み計画に合

わせた運搬計画が必要。

渋滞や事故なども想定

に入れる必要がある。

ポンプ配管の閉塞 ポンプ車の能力

材料分離 試し練り、配合表

コールドジョイント 許容打重ね時間間隔 打込み

型枠の変形 型枠、支保工の剛性

コンクリートの品質変

化に対して余裕のある

計画とする。

不十分な締固め 内部バイブレータの能力や台数、要

浮き水の巻込み 排水の方法と排水装置 締固め

骨材沈降 締固め時間と間隔

内部バイブレータの使

用目的やかけ方・かける

位置を明確にし、作業員

に徹底する。

型枠表面のあばた 打上がり速度 仕上げ

沈下ひび割れ 打回し計画

仕上げが夜間に及ぶこ

とも想定し、準備する。

打継ぎ不良 打継ぎ面の処理方法 打継ぎ

打継ぎからの漏水 止水板の種類、位置、設置方法

打継ぎ目が漏水や劣化

の原因にならないよう

に計画する。

養生 強度不足 湿潤養生期間

養生は温度と湿潤期間

で、脱型は強度で管理す

る。

3.1.2 施工強度

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(N/mm2)

セメント 呼び

の種類 強度

21 2.6 7.7 12.8 19.1 25.5 31.9

24 2.9 8.6 14.3 21.4 28.5 35.6

27 3.2 9.5 15.8 23.6 31.5 39.4

30 3.5 10.4 17.3 25.9 34.5 43.4

21 1.1 5.3 10.1 14.7 21.0 26.7

24 1.2 6.0 11.5 16.8 24.0 31.1

27 1.4 6.8 13.0 18.9 27.0 33.8

30 1.5 7.5 14.4 21.0 30.0 37.8

21 0.4 4.1 8.6 12.7 19.5 24.6

24 0.5 4.7 9.9 14.6 22.5 28.2

27 0.5 5.4 11.2 16.6 25.5 31.2

30 0.5 6.0 12.5 18.5 28.5 35.1

21 3.8 10.7 16.8 21.7 25.5 29.3

24 4.3 12.0 18.8 24.2 28.5 32.8

27 4.7 13.2 20.8 26.8 31.5 36.3

30 5.2 14.5 22.8 29.3 34.5 39.7

21 1.6 6.8 12.4 18.0 22.5 25.9

24 1.8 7.7 14.0 20.4 25.5 29.3

27 2.0 8.9 15.7 22.8 28.5 32.8

30 2.2 9.5 17.1 25.2 31.5 36.2

21 0.9 4.9 10.1 16.1 21.5 24.7

24 1.0 5.6 11.5 18.4 24.5 28.2

27 1.1 6.3 12.9 20.6 27.5 31.6

30 1.2 7.0 14.3 22.9 30.5 35.1

コンクリートの圧縮強度発現性(例)

10℃

5℃

BB

14日

20℃

10℃

5℃

28日 91日

20℃

養生温度 1日 3日 7日

※上記強度は、水中養生の一例であり、運用に当たっては、生コン工場のデータあるいは、

現場の供試体で確認する。

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3.1.3 湿潤養生

※特にスラブは外気に接する面積が広いため、外気や日射、風の影響により、コンクリー

ト面が乾燥を受けやすい。このため、打込み終了後はプラスチック収縮ひび割れを防止す

るために散水や噴霧あるいは膜養生剤を散布するのがよい。また高炉セメントを用いたコ

ンクリートは、湿潤養生が不十分な場合には乾燥収縮が相当に大きくなることがあり、注

意を要する。 3.2 配合選定事例

事例1 部材の薄いスラブ 《検討条件》

・ 構造条件:版厚 28cm,最小鉄筋あき 109mm,鋼材量:134kg/m3 ・ 設計条件:(設計基準強度)24N/mm2 ・ 施工条件:ポンプ圧送距離 100m,環境気温 30℃,締固め作業高さ 0.28m ・ セメントの種類の指定:普通ポルトランドセメント ・ 耐久性から定まる水セメント比: 55%以下 ・ 生コン工場の骨材試験結果報告書より、粗骨材の表乾密度 2.65g/cm3, 粗骨材の実積率 58.0% ※ 設計基準強度および指定水セメント比から呼び強度を 27 とする。

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《レディーミクストコンクリートの種類の選択》

(1)打込み最小スランプの設定 表 2.4.1(3 頁)から、打込み最小スランプを 5cm と設定(締固め作業高さ 50cm 未満,

コンクリートは任意の箇所から投入可能) (2)荷卸し箇所の最小スランプの設定 表 2.4.6(4 頁)から、場内運搬によるスランプ補正値を 1cm と設定 ⇒5+1=6cm (3)荷卸し箇所の目標スランプの算出 荷卸し箇所の最小スランプに、スランプの許容差(この場合±1.5cm)を加算した荷卸

し目標スランプの算出 ⇒6+1.5=7.5cm (4)レディーミクストコンクリートの種類の選択 JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に荷卸し箇所の目標スランプ 7.5cm

が存在しないため、荷卸し箇所の目標スランプを 8cm と設定する。⇒27-8-20-N 《配合の照査》

解説 表 1 に配合例(27-8-20-N)を示す。 配合例の照査結果を以下に示す。

解説 表1 単位量(kg/m3) スランプ

(cm) W/C (%)

s/a (%) W C S G

混和剤 (kg/m3)

8 53.8 44.0 160 297 801 1035 0.743 ①水セメント比 53.8% < 55% ⇒ OK ②単位水量 160 kg/m3<175 kg/m3 ⇒ OK ③単位セメント量 ・材料分離抵抗性、振動締固め性に関する単位セメント量(解説図 2.5.4 より)⇒250 kg/m3 材料分離抵抗性、振動締固め性: 297 kg/m3>250 kg/m3 ⇒ OK ・ポンプ圧送性に関する単位セメント量(解説図 2.5.43 より)⇒290 kg/m3 ポンプ圧送性: 297 kg/m3>290 kg/m3 ⇒ OK ※ 解説図の打込みスランプには、打込みの最小スランプに、スランプの許容差を加算した 打込みの平均スランプを用いる。

④細骨材率(解説図 2.5.50 より) 44.0%≧42.5% ⇒ OK ⑤粗骨材かさ容積: 1035/(2.65×0.58)/1000=0.667m3/m3 0.667m3/m3 < 0.700m3/m3 (解説図 2.5.52 より)⇒ OK 《配合の照査結果》

27-8-20-Nを選定する。

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事例2 壁部材

《検討条件》

・ 構造条件:ボックスカルバート側壁,部材厚さ 50cm, 締固め作業高さ 4m,鋼材量:120kg/m3(D16@150),最小鉄筋あき 110mm

・設計条件:(設計基準強度)24N/mm2 ・ 施工条件:ポンプ圧送距離 50m(ブーム打設),日平均気温 25℃未満 ・ セメントの種類の指定:高炉セメント(B種) ・ 粗骨材の最大寸法:25mm 以下 ・ 耐久性から定まる水セメント比: 55%以下 ・ 細骨材の種類:砕砂 ・ 生コン工場の骨材試験結果報告書より、粗骨材の表乾密度 2.65g/cm3, 粗骨材の実積率 58.0% ※ 設計基準強度および指定水セメント比から呼び強度を 27 とする。 《レディーミクストコンクリートの種類の選択》

(1)打込み最小スランプの設定 表 2.4.4(4 頁)から、締固め作業高さ 4m,鋼材量:120kg/m3,最小鉄筋あき 110mm

であるため、打込み最小スランプを 10cm と設定する。 (2)荷卸し箇所の最小スランプの設定 表 2.4.6(4 頁)から、コンクリートポンプ圧送距離 50m,日平均気温 25℃未満のた

め、場内運搬によるスランプの補正を行わず、荷卸し箇所の最小スランプを 10cm と設定

する。 (3)荷卸し箇所の目標スランプの算出 荷卸し箇所の最小スランプに、スランプの許容差(この場合±2.5cm)を加算した荷卸

し目標スランプの算出 ⇒10+2.5=12.5cm (4)レディーミクストコンクリートの種類の選択 JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に荷卸し箇所の目標スランプ 12.5cm

が存在しないため、荷卸し箇所の目標スランプを 12cm と設定する。 ⇒27-12-20-BB

《配合の照査》

解説 表2に配合例(27-12-20-BB)を示す。 配合例の照査結果を以下に示す。

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解説 表2 単位量(kg/m3) スランプ

(cm) W/C (%)

s/a (%) W C S G

混和剤 (kg/m3)

12 54.0 46.0 165 306 829 991 0.765 ①水セメント比 54.0% < 55% ⇒ OK ②単位水量 165 kg/m3<175 kg/m3 ⇒ OK ③単位セメント量 ・ 材料分離抵抗性、振動締固め性に関する単位セメント量(解説図 2.5.30 より)

⇒260 kg/m3以上 材料分離抵抗性、振動締固め性: 306 kg/m3>260 kg/m3 ⇒ OK ・ポンプ圧送性に関する単位セメント量(解説図 2.5.43 より)⇒286 kg/m3 ポンプ圧送性: 306 kg/m3>286 kg/m3 ⇒ OK ※ 解説図の打込みスランプには、打込みの最小スランプに、スランプの許容差を加算した 打込みの平均スランプを用いる。

④細骨材率(解説図 2.5.50 より) 46.0%≧42% ⇒ OK ⑤粗骨材かさ容積: 991/(2.65×0.58)/1000=0.645m3/m3 0.645m3/m3 < 0.69m3/m3 (解説図 2.5.52 より)⇒ OK 《配合の照査結果》

27-12-20-BBを選定する。