自然換気機能を備えた高機能換気部材の開発と その適用に...

23
研究期間:平成 19~20 年度(終了) 研究区分:民間等共同研究 自然換気機能を備えた高機能換気部材の開発と その適用に関する研究 24. 0 24. 0 25. 0 25. 0 26. 0 26. 0 27. 0 27. 0 28. 0 28. 0 29. 0 29. 0 30. 0 30. 0 31. 0 31. 0 32. 0 32. 0 (100.0) (-20.0) 0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 中間 必要換気量 新鮮外気量(m 3 /h) 西室 東室 寝室 便所 ホール 洋室 LDK 平成 12 年のシックハウス新法の施行により、新築 住宅には機械換気の設置が義務付けとなりました。強 制排気と自然給気を組み合わせた第 3 種換気が普及 していますが、一般の自然換気口では、寒さの原因と なるため、連続的な換気に支障の出る例が少なくあり ません。対象となる自然換気口は、特殊な形状により、 冷気の室内環境に及ぼす影響を緩和し、機械換気が機 能しない場合にも最低限の換気量を継続して確保で きる特性も持っています。 この研究は、昨今の住宅デザインに適した換気パー ツの新たなデザイン開発を行うとともに、当該換気口 の特性を生かした換気計画の提案を目的としていま す。 対象の換気口 一般換気口 写真1 換気フード シンプルでシャープな住宅デザインに適した薄型 のフードを開発し(写真1)、通気特性や防風雨性な どの機能性を明らかにしました。また、自然換気性能 や室内環境に及ぼす影響を外部環境シミュレータ室 において実測評価しました。写真2は、自然給気時、 暖房室の換気口周りのサーモカメラ映像です。研究対 象の換気口は、暖房室でも、一般的な換気口に比べて の換気口下方の壁面の温度低下が小さく、冷気が壁に 沿って流れ落ちにくいことが分かりました。図 1 は、 中気密住宅を対象に換気口を季節によって開閉した 場合の各室の換気量です。当該換気口を開閉すること で、年間を通じて適切な換気を実現できることを示し ました対象の換気口 一般換気口 写真 2 換気口周りの温度低下(暖房室) 図1 中気密住宅の換気量計算結果 シンプルでシャープなデザインの住宅に適したステンレス製の薄型換気フードを開発し、通気特性 や防風雨性能を測定した結果、住宅の換気口として十分な性能があることが分かりました。また、冷 外気の取り入れ時、取り入れ外気がうまく拡散し、壁面に沿って冷気の流れができず、周辺壁面の温 度を低下させることもないことが分かりました。また、常時開放に適した特性を生かし、温暖地の中 気密な住宅で、年間を通じて良好な換気を確保する手法を提案しました。 北方建築総合究所担当居住科学部人間科学科 共同研究機(有)グッドマン、(株)日浦、(株)ポラス暮し科学研究所(H19 年度のみ) 8

Upload: others

Post on 26-Jan-2021

5 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 研究期間:平成 19~20 年度(終了)研究区分:民間等共同研究

    自然換気機能を備えた高機能換気部材の開発と その適用に関する研究

    24. 0 24. 0 25. 0 25. 0

    26. 0 26. 0

    27. 0 27. 0

    28. 0 28. 0

    29. 0 29. 0

    30. 0 30. 0

    31. 0 31. 0 32. 0 32. 0(100.0)

    (-20.0)

    0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    冬 中間 夏 必要換気量

    新鮮

    外気

    量(m

    3/h) 西室

    東室

    寝室

    便所

    ホール

    洋室

    LDK

    平成 12 年のシックハウス新法の施行により、新築

    住宅には機械換気の設置が義務付けとなりました。強

    制排気と自然給気を組み合わせた第 3 種換気が普及

    していますが、一般の自然換気口では、寒さの原因と

    なるため、連続的な換気に支障の出る例が少なくあり

    ません。対象となる自然換気口は、特殊な形状により、

    冷気の室内環境に及ぼす影響を緩和し、機械換気が機

    能しない場合にも最低限の換気量を継続して確保で

    きる特性も持っています。

    この研究は、昨今の住宅デザインに適した換気パー

    ツの新たなデザイン開発を行うとともに、当該換気口

    の特性を生かした換気計画の提案を目的としていま

    す。

    対象の換気口 一般換気口

    写真1 換気フード

    シンプルでシャープな住宅デザインに適した薄型

    のフードを開発し(写真1)、通気特性や防風雨性な

    どの機能性を明らかにしました。また、自然換気性能

    や室内環境に及ぼす影響を外部環境シミュレータ室

    において実測評価しました。写真2は、自然給気時、

    暖房室の換気口周りのサーモカメラ映像です。研究対

    象の換気口は、暖房室でも、一般的な換気口に比べて

    の換気口下方の壁面の温度低下が小さく、冷気が壁に

    沿って流れ落ちにくいことが分かりました。図 1 は、

    中気密住宅を対象に換気口を季節によって開閉した

    場合の各室の換気量です。当該換気口を開閉すること

    で、年間を通じて適切な換気を実現できることを示し

    ました。

    対象の換気口 一般換気口

    写真 2 換気口周りの温度低下(暖房室)

    図1 中気密住宅の換気量計算結果

    シンプルでシャープなデザインの住宅に適したステンレス製の薄型換気フードを開発し、通気特性

    や防風雨性能を測定した結果、住宅の換気口として十分な性能があることが分かりました。また、冷

    外気の取り入れ時、取り入れ外気がうまく拡散し、壁面に沿って冷気の流れができず、周辺壁面の温

    度を低下させることもないことが分かりました。また、常時開放に適した特性を生かし、温暖地の中

    気密な住宅で、年間を通じて良好な換気を確保する手法を提案しました。

    北方建築総合研究所(担当科)居住科学部人間科学科

    共同研究機関(有)グッドマン、(株)日浦、(株)ポラス暮し科学研究所(H19 年度のみ)

    8

  • 調査研究報告 No. 240

    RESEARCH REPORT 2009. 3

    自然換気機能を備えた高機能換気部材の開発と

    その適用に関する研究

    Development and Adaptation of High

    Performance Natural Vent Opening

    北海道立北方建築総合研究所

    Hokkaido Northern Regional Building Research Institute

  • 概 要

    自然換気機能を備えた高機能換気部材の開発とその適用に関する研究

    福島 明 1)、村田さやか 2)、斉藤武夫 3)、日浦明典 4)

    キーワード : 自然換気、気密性能、防水性能、室内環境

    平成 15 年のシックハウス新法の施行により、新築住宅には機械換気の設置が義務付けとなった。強制排

    気と自然給気を組み合わせた第 3 種換気が普及しているが、一般の自然換気口では、寒さの原因となるため、

    連続的な換気に支障が出る例が少なくなかった。(有)グッドマンが開発した自然換気口は、特殊な形状によ

    り、冷気の室内環境に及ぼす影響を緩和し、機械換気が機能しない場合にも最低限の換気量を継続して確保

    できる特性も持つ換気口である。賃貸や公営住宅を中心に既に 1 万台以上の販売実績を持つが、今後道外へ

    の販路拡大を目指す中で、ハウスメーカー等が求める高いデザイン性と機能性を両立した換気部材の開発と、

    道外の環境に適した換気システムへの適用が必要になっている。

    本研究では、本州の住宅デザインに適した換気パーツの新たなデザイン開発を行うとともに、本州で一般

    的な中気密住宅において、優れた機能性を同等以上に発揮する部材開発と、その活用による換気システムの

    大幅な効果向上を図った。

    Abstract

    Development and Adaptation of High Performance Natural Vent Opening

    Akira.Fukushima1), Sayaka.Murata 2), Takeo.Saito3), Akinori.Hiura4)

    Keywords : Natural ventilation, Airtight, Waterproofing, Indoor climate

    It has been obligation to install the mechanical ventilation system in new construction house

    from 2003 in Japan. The forced exhaust only ventilator, which has been mostly installed, has a problem

    of the cold down draft from the natural supply opening. The vent opening developed by Goodman co.,

    which has a unique shape, can make the influence of the cold down draft on indoor climate less than

    ever. And it has a merit that it can keep the minimum required airflow volume by natural ventilation

    when the mechanical ventilator mightn’t work. In order to sell it in all of Japan, it has a subject in

    terms of good design and adaptation for the environment in the area besides Hokkaido.

    In this study, we developed new shapes of the vent parts that were adapted for familiar house

    design in the main island of Japan and that have high performance more than or equal to ever ones.

    And we improved the efficiency of the ventilation system by using the developed vent parts.

    1) 居住科学部長 2) 居住科学部人間科学科研究職員 3) (有)グッドマン 4) ㈱日浦

    1) General Res. Manager of Residential Planning Dep. 2) Researcher of Usability and Utility Design Sec.

    3) Goodman co. 4)Hiura Co., Ltd.

  • 目 次

    1. 研究の目的 …………………………………1

    2. 研究の概要 …………………………………1

    3. デザイン性の検討 …………………………………1

    4. 機能性の検証 …………………………………4

    5. 自然換気口形状による室内環境の計算 …………………………………10

    6. 中気密住宅における 3 種換気シミュレーション …………………………………15

    7. まとめ …………………………………17

  • 1. 研究の目的

    平成 12 年のシックハウス新法の施行により、新築

    住宅には機械換気の設置が義務付けとなった。強制

    排気と自然給気を組み合わせた第 3 種換気が普及し

    ているが、一般の自然換気口では、寒さの原因とな

    るため、連続的な換気に支障が出る例が少なくなか

    った。 (有)グッドマンが開発した自然換気口を写真

    1 に示す。特許を持つ特殊な形状により、冷気の室

    内環境に及ぼす影響を緩和し、機械換気が機能しな

    い場合にも最低限の換気量を継続して確保できる特

    性も持つ換気口である。賃貸や公営住宅を中心に既

    に 1 万台以上の販売実績を持つが、今後道外への販

    路拡大を目指す中で、ハウスメーカー等が求める高

    いデザイン性と機能性を両立した換気部材の開発と、

    道外の環境に適した換気システムへの適用が必要に

    なっている。

    本研究は、本州の住宅デザインに適した換気パー

    ツの新たなデザイン開発を行うとともに、本州で一

    般的な中気密住宅において、優れた機能性を同等以

    上に発揮する部材開発と、その活用による換気シス

    テムの大幅な効果向上を図ることを目的とする。

    写真 1 既存製品

    2. 研究の概要

    (1) 外部フードのデザイン性の検討 本道の新築住宅は北海道スタイルと言えるほど、

    アメリカ的なスタイルを確立しつつあり、当該換気

    部材の、外部フード・室内エレメントともに、あま

    り違和感なく採用されてきた。しかし、本州地域で

    は、本州地域、特に首都圏では30代の購入層が多

    く、シンプルデザインのサイジングを使用したシャ

    ープなデザインの住宅が多く販売されており、既存

    の換気部材では、デザインの違和感がぬぐえない状

    況にある。そこで、フラットパネルタイプを基本と

    して、機能性を損なわないデザイン開発を行った。 (2) 機能性の検証

    当該換気部材の、自然換気性能や室内環境に及ぼ

    す影響の評価は、これまで実住宅での実測をもとに

    示されているが、広く販売促進を図るためには、設

    計性能として定量的なデータを示す必要がある。こ

    うした性能は実測方法や評価方法が確立されていな

    いため、まず測定法・評価法を確立する必要がある。

    その上で、既存換気部材との比較検討を行うほか、

    本州向けに耐風性や逆流防止性など更に機能性を高

    める改良を行った。

    (3) 温暖地の換気システムへの適用手法の検討 本州の木造戸建て住宅は、気密化に配慮した場合

    でも中気密(相当隙間面積 2~5cm2/m2)レベルが一般的である。しかし、中気密住宅では、建物隙間

    の開口面積と換気口の開口面積の比率が 5:1 と圧倒的に隙間換気の影響が大きくなるため、換気経路

    のコントロールが困難な場合が多い。当該換気部材

    は、既存の自然換気部材に比べて最大級の開口面積

    を確保しており、その割合を高気密住宅並みの 1:1近くに維持することが可能となる。開口を大きくす

    ると、最も大きな問題が給気口からの冷気侵入によ

    る寒さの問題で、これを解消できることが当該換気

    部材の最も優れた特性である。換気口の適正配置や

    排気装置の運転制御など、新たなシステム構築を行

    い、住宅全体の開口面積を大きくした条件で、良好

    な換気を実現する手法を明らかにした。

    3. デザイン性の検討

    (1) フードデザインの検討 写真 2 は従来品の正面写真である。三角の断面を

    持ち、外側に飛び出したデザインとなっており、コ

    ンクリート系の住宅などには、マッチングは悪くな

    い。しかし、木造住宅で一般的な窯業系サイジング

    写真 1 従来品

    1

  • に対しては、形状がシャープすぎて、突出感がぬぐ

    えない。そこで、機能性の考え方はそのままに、正

    面からはフラットパネル、横からは薄型の角型形状

    とし、僅かなアールを採用することになった。

    (2) 試作と最終デザイン 写真 3 は試作モデルである。サイズや形状を検討

    したうえで、フラットパネルのデザインを数種検討

    し、最終的にサイドに縦線を加えてシャープさと柔

    らかさのバランスを取った。100mmφと 150mmφ用の

    2 機種を想定して、小型の検討を行ったが、外側パ

    ネルを 150mmφ兼用とすることで、一回りサイズア

    ップした。また、外側パネルに強度保持を兼ねて縦

    溝を設け、最終的な開発製品として写真 4 に示す形

    状となった。最終製品の寸法等を図 2 に示す。

    写真 3 試作モデル

    写真 4 開発モデル

    断面図 平面図 図 1 最終製品の寸法

    4. 機能性の検証

    (1) 必要性能の検証

    (2) 有効開口面積の検証 1) 有効開口面積の測定方法 測定装置の概要図と試験体取付状況を図 2 と写真5 に示す。

    風量Q(風速)

    差圧ΔP

    テストトンネル(風洞)

    ファン整流器

    試験体設置部

    図 2 測定装置の概要

    写真 5 測定装置(試験体取付)

    試験方法は、以下の手順で行った。 一般に換気口の基本性能として、①有効開口面積、②防風雨性能は必須用件である。これに加えて、グ

    ッドマンの特徴である、③外部フードの自然排気性

    能と④外気取り入れに伴う、冷気流の影響緩和性能

    について検証した。

    ①試験装置に、給気方向の場合は室外側となる面を

    テストトンネルの外側となるように、排気方向の場

    合は室内側となる面をテストトンネルの外側となる

    ように試験体を設置する。 試験体設置部から流入する向きにテストトンネル

    2

  • 小屋裏換気フード、強制排気用フードの有効開口

    面積はいずれも、他社同等品に比べて十分な有効開

    口面積を示している。各部材の詳細データは資料に

    記載する。

    内の送風機(ファン)で空気を送り、そのときの風

    量(m3/h)と試験体設置部内外の圧力差 (Pa) を測定し、風量-圧力曲線を求める。 ②それら結果を用いて、下式より気密箱内外の圧力

    差 1.0Pa 当たりの通気量 a((m3/h)・Pa)及び隙間特性値 n、有効開口面積αA を算出する。

    Q:通気量 (m3/h) a:気密箱内外の圧力差 1.0Pa 当たりの通気量

    ((m3/h)・Pa) n:隙間特性値(1~2) Δp:換気口前後の圧力差 (Pa) αA:有効開口面積(cm2) γ:空気比重≒1.2(kg/ m3) ζ:圧力損失係数 g:重力加速度≒9.8 v:風速(m/s)

    =風量(m3/s)/ダクトの実質断面積(m2) 2) 測定結果と考察

    表 1 に、居室用の自然換気口について、有効開口面積の測定結果を示す。従来、自然換気口の有効開

    口面積は、10(cm2)前後が多数を占めていたが、3 種換気の給気用に販売されている昨今の自然換気口は、

    15~20(cm2)程度の有効開口面積のものが増えている。開発品は、18~22(cm2)程度と、100mmφの自然換気口としては、最大レベルの有効開口面積を確

    保できた。 表1 開発した換気口の有効開口面積

    用 途 型 番 有効開口面積 cm2

    給 気 排 気

    居室用

    フード+室

    内換気口

    GMS-100 19.0 19.6

    GMS-100# 18.1 17.0

    GMS-150 29.7 36.2

    GMS-150# 27.7 33.1

    小屋裏用

    フードのみ

    GMSK-100 27.8 28.7

    GMSK-150 35.2 40.7

    強制用

    フードのみ

    GMSA-100 31.8 34.2

    GMSA-100# 30.5 31.5

    (3) 防風防水性能の検証 1) 防風雨性能の検証方法 防風雨性能の検証は、図 3 に示す装置を用い、風と雨を吹き付けて、雨水の侵入状況を確認する試験

    方法で行った。試験装置に試験体を設置し、図 4 に示すとおり上方及び下方から水と風を吹き付ける。

    測定状況を写真に示す。試験体内部への水の侵入状

    況はアクリル板部分から目視で観察するとともに、

    侵入した水は裏面に設置したポリ袋で捕集し量を測

    定する。

    #:防虫網付き

    700mm換気口

    ①上方から噴霧の場合

    ②下方から噴霧の場合

    40°

    40°

    噴霧幅(高さ)約 1,000mm噴霧量 8 リットル/min

    VU 管(100φ及び 150φ)長アクリル板(漏水確認窓)

    ポリ袋(漏水捕集用)

    上部開放

    500mm

    風速測定位置

    風速測定位置

    図4試験方法の概要

    試験体は図 5 に示すとおり試験体枠の中央付近に

    2体設置する。試験体内外の差圧は自然換気口を想

    定し成り行きとした。試験水量は 8 リットル/min で一定とし、風速は 5,10,18m/s の 3 段階とした。噴霧時間は各風速 10 分間とした。なお、試験体2体の風速及び噴霧水量はイニシャル測定により同じことを

    確認した。

    試験体

    加減圧用ファ

    噴 霧

    水ポンプ 流量計

    総合制御装置

    図 3 試験装置概要

    試験体

    npaQ1

    Δ⋅=

    )211(

    278.2

    −⋅⋅⋅= ngaA γα

    203.4⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛⋅

    Δ=

    vgPζ

    3

  • 300mm 300mm 300mm 300mm

    1,500mm

    噴霧ノズル5本

    175 mm

    175mm

    試験体枠試験体設置位置

    換気口 A 正面 換気口 A 裏面

    図 5 試験体の設置位置とノズル位置

    2) 検証結果と考察

    換気口 B 正面 換気口 B 裏面 ① 試験体

    試験体は、以下の 4 体である。試験体を写真 6 にまとめて示す。

    A:丸型フード 100mmφ用

    B:丸型フード 150mmφ用

    C:グッドマン自然換気フード 100mmφ用

    D:グッドマン小屋裏用フード 150mmφ用 換気口 C 正面下部 換気口 C 正面上部

    換気口 C 裏面

    換気口 D 正面下部 換気口 D 正面上部

    接続管径の異なる丸型フード 2 体と、グッドマン換気フード 2 体である。グッドマン換気口は、C が自然換気用、D は小屋裏用である。表 2 にそれぞれの有効開口面積を示す。100mm、150mmφ共に、開口面積に大きな差はない。 表 2 試験体フードの有効開口面積

    試験体 有効開口面積 cm2

    給 気 排 気

    A 22.6 26.8 B 34.2 43.5 C:グッドマン居室用 24.3 27.4 D:グッドマン小屋裏用 56.7 59.8 ② 試験結果

    表 3 に試験結果の一覧を示す。上方からの吹き付け条件では、強風時の内部のしぶきは見られるもの

    の、ほとんど漏水は観測されなかった。換気フード

    D、グッドマンの小屋裏用では、測定できる量の水滴が観測されたが、流下するような漏水は観測され

    ず、上部からの漏水防止性能はいずれも高井雨水防

    止性が観測された。 換気口 D 裏面 一方、強風時に発生しやすい下方からの吹き付け

    条件では、大きな差がみられ、A,B の丸型フードでは、相当量の漏水が観測され、接続した管内を流下

    写真 6 試験体写真

    4

  • する状況が観測されたのに対して、C,D のグッドマンフードでは、フード内部や管内に水滴がわずかに

    観測されたものの、流下は全く生じなかった。 図 6、は、漏水量をグラフに示したものである。

    丸型フードでは、風速が 5m 程度の条件でも相当量の漏水を生じ、風速の増大に伴って漏水量が大幅に

    増大することがわかる。一般に水抜きなどの漏水対

    策は講じられている場合もあるが、漏水量が増大す

    れば、排水処理が間に合わず、外壁損傷の原因とな

    るリスクは少なくない。これに対してグッドマンの

    換気フードは、強制排気用のフードで上部からの漏

    水が多少みられるものの、ほとんど漏水の恐れがな

    いことが分かる。

    表3 風雨防水試験結果 上方からの噴霧の結果 5m/s 10m/s 18m/s

    換気口 A 変化なし 変化なし 内部にしぶきが生じている

    漏水量 0cc 漏水量 0cc 漏水量 0cc

    試験体 B 変化なし 変化なし 内部にしぶきが生じている 漏水量 0cc 漏水量 0cc 漏水量 0cc

    試験体 C ダクト内部にしぶき

    が生じている ダクト内部にしぶき

    が生じ濡れている ダクト内部にしぶきが生じ濡れて

    いる 漏水量 0cc 漏水量 0cc 漏水量 0cc

    試験体 D ダクト内部にしぶき

    が生じている ダクト内部にしぶき

    が生じ濡れている ダクト内部にしぶきが生じ濡れて

    いる 漏水量 0cc 漏水量 40cc 漏水量 20cc

    下方からの噴霧の結果

    5m/s 10m/s 18m/s

    換気口 A 換気口内部に強いしぶきが上

    がりダクトを水が流れてくる 同左 同左

    漏水量 288cc 漏水量 421cc 漏水量 709cc

    換気口 B 換気口内部に強いしぶきが上

    がりダクトを水が流れてくる 同左 同左

    漏水量 542cc 漏水量 844cc 漏水量 1059cc

    換気口 C ダクト内部にしぶきあり 同左 同左

    漏水量 0cc 漏水量 8cc 漏水量 10cc

    換気口 D ダクト内部にしぶきあり 同左 同左

    漏水量 0cc 漏水量 0cc 漏水量 5cc

    0 0 0 00 0 0 400 0 0 200

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    換気

    口A

    換気

    口B

    換気

    口C

    換気

    口D

    換気口種類

    漏水

    量[c

    c] 5

    10

    18

    風速[m/s]

    0 08 0

    709

    1059

    10 5

    288

    542421

    844

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    換気

    口A

    換気

    口B

    換気

    口C

    換気

    口D

    換気口種類

    漏水

    量[c

    c]

    5

    10

    18

    風速[m/s]

    上方からの噴霧の場合の漏水量比較 下方からの噴霧の場合の漏水量比較

    図 6 漏水量の試験結果

    5

  • (4) 自然排気性能の検証 1) 自然排気性能の検証方法 自然通風換気時の、排気性能について、グッドマ

    ン換気フードと他社製フードを比較した。写真 7 は、測定を行った(有)グッドマンの本社ビルである。3階建てコンクリートブロック造の事務所併用住宅で、

    3 階上部のロフト、壁面に換気を取り付け、比較実験を行った。

    写真 7 実験建物(グッドマン本社)

    ① 測定方法

    測定状況を写真 8 に示す。壁面に 2 個のスリーブが設けられており、この 2 箇所に、グッドマンと比較実験用の換気口を取り付けた。室内側に塩ビ管を

    延長し、その中心風速を測定した。絶対的な風量は

    不明だが、比較風量としては評価が可能である。

    写真 8 風速計の設置状況 スリーブ室内側に塩ビ管を設置しその中央に熱線

    微風速計を設置した。スリーブと塩ビ管のみの条件

    で測定した結果を図 7 に占めす。測定は 2 秒間隔で行い、1 回の測定は約 1 時間程度である。併設した2 つのスリーブがほぼ同様な性能となっていること

    がわかる。また、50 分間平均値で、左右それぞれ、2.18 および 2.15m/s であった。

    図 7 2 か所のスリーブの風速比較

    ② 評価対象部材

    評価に利用した部材の一覧を表 4 に示す。室内側レジスターは、丸型ガラリ、プッシュ型、および拡

    散型の 3 機種、外部フードは、丸型および深型フード、グッドマン製品と同様の防風型のフード 1 機種による比較である。 表 4 試験一覧

    種類 部材 有効開

    口面積

    室内換気口

    のみ

    丸型ガラリ 23

    プッシュ式レジスター 20

    拡散型レジスター 15

    グッドマン 27

    外部フード

    のみ

    深型フード 36

    丸型フード 27

    防風型フード 35

    グッドマン 27

    室内プッシュ

    式レジスター

    と外部フード

    深型フード 17

    丸型フード 16

    防風型フード 17

    グッドマン 19 *比較は全てグッドマンの新タイプ 2) 検証結果と考察 試験結果を表 5 に示す。いずれも、2 秒間隔 50分間の平均値で整理した。測定期間は、2009 年 1月 8 日~10 日の 3 日間で行った。外気条件は穏やかで、風速の影響等は少ない条件である。設置場所が

    実質 4 階部分となるため、地上からの高さは約 10mである。各階に自然換気口が設置され、自然換気状

    態であったことから、スリーブ内の温度も同時に測

    6

  • 定したが、いずれも室内温度とほぼ等しく、全て排

    気条件となっていることが確認された。 ① 室内側レジスターのみ

    グッドマン以外のレジスターの有効開口面積は、

    カタログ資料によるが、グッドマン換気口の有効開

    口面積は、最大クラスである。この結果、排気風速

    は、2~3 倍になっている。この差は、有効開口面積の差だけでは説明できず、自然排気の場合、単純開

    口に近いグッドマンと、隙間を通って空気が流れる

    形状のものでは、大きく排気効率が異なる可能性が

    ある。 ② 外部フードのみ

    フード部分は、グッドマン換気口の有効開口面積

    は、比較的小さく、丸型フードと同等である。しか

    し、排気風速では、有効開口の大きな、深型フード

    より小さい。同じ排気効率を示すのは、グッドマン

    と同様な機構を有する防風タイプのフードのみであ

    る。この結果、防風タイプは、丸型や深型フードに

    比べて、排気効率が高いと推察される。 ③ 内外セット

    グッドマン以外のフードについては、室内側にプ

    ッシュ式レジスターを合わせた場合である。測定結

    果から、グッドマンは、他の方式に比べて排気効率

    が高い結果になった。有効開口面積では、10%程度グッドマンは大きいが、それ以上の違いが見てとれ

    る。 表 5 風速の測定結果 室内側レジスターのみ

    風速(m/s)

    比率試験品 グッドマン

    丸型ガラリ 0.63 1.27 0.49

    プッシュ式レジスター 0.76 1.23 0.62

    拡散型レジスター 0.40 1.26 0.32

    換気フードのみ

    風速(m/s)

    比率試験品 グッドマン

    深型フード 1.38 1.06 0.77

    丸型フード 0.79 0.51 0.64

    防風型フード 1.09 1.12 1.03

    室内側レジスターと複合 室内側プッシュ式レ

    ジスター

    風速(m/s) 比率

    試験品 グッドマン

    深型フード 0.96 0.58 0.61

    丸型フード 0.55 0.20 0.36

    防風型フード 0.98 0.76 0.77

    (2) 室内温度環境に及ぼす影響 自然換気口の形状が室内の温度環境に及ぼす影響

    を、実験により検討する。

    1) 実験の概要 実験建物の概要を図 8 に示す。約 10 ㎡の実験室と隣室からなり、隣室と実験室を個別に温度制御可

    能である。外部環境シミュレータ室に当該実験室を

    設置し、自然換気口からの給気による室内温度環境

    への影響を検討する。 図 9 は、実験建物の気密性能の測定結果である。総隙間相当面積は、13.5cm2 と算定された。床面積が 13.0m2 なので、C 値は約 1.0 cm2/m2と高い気密性を有することがわかる。この結果、自然換気口の

    有効開口面積が約 20 cm2 なので、換気口を開放した場合、換気口の有効開口面積が全開口に対して約

    60%を占める条件となり、第 3 種換気では、換気口からの給気が支配的な影響を持つと考えられる。

    図 9 測定室の気密測定結果

    室内換気量は、CO2をトレーサーガスとした濃度減衰法により測定した。各部の温度は、T 熱電対および、サーミスタにより測定した。また、自然換気

    口からの例気流による影響を明らかにするため、赤

    外線カメラを用いて、壁面の表面温度を測定した。 室内温度環境への影響は、室内側の換気口の形状

    に大きく影響を受けるため、室内側の換気口をグッ

    ドマン換気口の他、丸形ガラリと、拡散型の計 3 種類設定して行った。 換気は、第三種換気方式とし、室内から直接ファン

    で排気した。風量は、風速測定装置と濃度減衰で確

    認し、約 17m3/h に設定した。 測定条件は、非暖房室と暖房室を設定し、非暖房

    室条件では、隣室のヒーターのみを運転して隣室温

    度をサーモスタット付きの電気ラインヒーターで

    20~22℃に制御し、測定室内は成り行きとした。

    7

  • CO2 ボンベ

    CO2 濃度測定器

    温度測定点

    CO2 濃度測定点

    自然給気

    外気温度

    攪拌ファン

    表面温度測定点

    ヒーター

    温度測定点

    CO2 濃度測定点 冷気

    CO2 ボンベ

    CO2 濃度測定器

    ファン 又は 自然

    外気

    攪拌ファン

    床下

    ヒーター

    断面図 外部環境 -10℃

    平面図

    図 8 実験室と測定の概要

    強制排気 約

    /h

    表面温度測定点

    小屋裏

    測定室

    隣室室

    強制排気 約

    /h

    測定室 隣室

    8

  • 次に、室内の温度分布について、表 6 に、各条件における上下温度分布を示す。いずれも建物内外温

    度が安定したのち、2 時間の平均温度である。

    また、暖房室条件では、測定室内の温度を 20~22℃に制御し隣室は無暖房とした。 2) 実験結果

    非暖房室条件でも、暖房条件でも室内の温度分布

    には、換気口の違いによる差がほとんど生じていな

    い。この結果、冷気流による室内の温度分布への影

    響は、実大モデルで明確に検知できるような差を生

    じないことが分かった。換気口の違いによる室内環

    境への影響については、CFD 解析で詳細検討することとした。

    暖房時と非暖房時の換気口の違いによる換気口周

    りの赤外線カメラによる測定結果を図 9 に示す。比較したのは、丸型ガラリタイプと拡散板付きタイプ

    である。拡散板付きタイプは、左右と上方に吹き出

    すタイプである。 非暖房時、暖房時ともに、丸型ガラリの場合には、

    壁面に沿って、大きな低温部が生じており、冷気流

    の下降が見られるが、グッドマン換気口では、換気

    口周囲を除いて低温部が小さく、下降気流が現れな

    い。非暖房時の比較では、拡散板付きのタイプでも、

    壁に沿って大きな冷気の広がりが観測され、壁面温

    度の低下要因となっている。グッドマン換気口の形

    状が、換気冷気流の性状に大きく影響していること

    が明らかになった。

    表 6 換気口の違いと室内の温度分布

    外気 床上

    10 ㎝

    床上

    1.2m

    非暖房室 グッドマン -0.3 13.2 13.4

    丸型ガラリ゙ -0.5 13.1 13.4

    暖房室 グッドマン -9.4 20.1 21.3

    丸型ガラリ゙ -9.8 20.1 22.1

    9. 9 9. 9 10. 6 10. 6

    11. 3 11. 3

    12. 0 12. 0

    12. 7 12. 7

    13. 4 13. 4

    14. 1 14. 1

    14. 8 14. 8 15. 5 15. 5(100.0)

    (-20.0)

    グッドマン 拡散板 丸型ガラリ

    非暖房室条件(室内 15℃、外気-5℃)

    24. 0 24. 0 25. 0 25. 0

    26. 0 26. 0

    27. 0 27. 0

    28. 0 28. 0

    29. 0 29. 0

    30. 0 30. 0

    31. 0 31. 0 32. 0 32. 0(100.0)

    (-20.0) グッドマン 丸型ガラリ 暖房条件(室内 23℃、外気-10℃)

    図 9 換気口周りの赤外線カメラの測定結果

    9

  • 10

    5. 自然換気口形状による室内環境の計算

    (1) 計算概要

    自然換気口からの冷気流は、居住者が換気口を閉

    じる原因となる。そこで、自然換気口の室内側の拡

    散板(バッフル)の形状によって、室内温度分布や

    気流に与える影響の CFD(気流解析)を行った。

    1) 計算モデル

    図 10 に計算対象とした空間のモデルを示す。表 7

    に、解析モデル、境界条件等を示す。放熱器で加熱

    することで気流が変わることが考えられるので、放

    熱器がある暖房室と非暖房室の 2 室を計算した。な

    お、自然換気口からの外気流入による影響を見るた

    めに、隙間等からの流入はないものとしている。

    2) 換気口の形状

    図 11 に、自然給気口の室内側の形状の計算パタ

    ーンを示す。拡散板なし(開口のみ)と拡散板の開

    きが異なるもので、全部で 3 パターンとした。自然

    換気口の開口は直径 100mm の円形、拡散板は正方

    形である。

    図 10 計算対象空間

    表 7 解析条件

    計算コード STAR-LT

    乱流モデル 標準κ-εモデル

    アルゴリズム SIMPISO(定常)

    差分スキーム QUICK

    境界条件 壁・床・窓 壁面境界 対数則

    自然給気口 圧力境界

    室内排気口 簡易ファン(排気)

    暖房室 非暖房室

    放熱器発熱量[W] 600 なし

    換気量[m3/h] 18 18

    境界温度

    [℃]

    外気 0 0

    床下 5 5

    隣室 16 20

    上階室 20 20

    熱伝導率

    [W/m2K]

    外壁 0.35 0.46

    窓 2.33 2.91

    床 0.34 0.39

    上階床 3.85 2.23

    天井 4.35 4.35

    間仕切壁 2.36 2.50

    図 11 自然換気口の形状パターン(立断面)

    外壁

    間仕切壁

    間仕切壁

    床 放熱器

    自然換気口

    室内排気口

    (吸込口)

    2 階床

    天井

    外壁

    3,640

    2,4

    50

    3,640

    (a)拡散板なし (b)拡散板 4 周あき (c)拡散板 45 度

    φ100mm

    25

    132

    136

  • 11

    (2) 暖房室計算結果

    1) 温度分布

    図 12 に、自然換気口位置の部屋の断面の温度分

    布を示す。部屋中央では、床と天井で 3~4℃差の温

    度層になっている。この温度分布には換気口形状に

    よる大きな差はない。

    自然換気口周辺の温度分布をみると、(a)拡散板

    なしでは、低温部分が水平に向かってから下に広が

    っている。(b)拡散板 4 周あきでは、低温部分が壁

    面に沿って薄く下に広がっている。(c)拡散板 45

    度では、拡散板の向きに沿って上方に向かってから

    下に広がっていることがわかる。

    (a)拡散板なし

    (b)拡散板 4 周あき

    (c)拡散板 45 度上あき

    図 12 自然換気口位置断面の温度分布

    2) 流速分布

    図 13 に、温度分布と同断面の流速分布を示す。

    自然換気口の周辺では、温度同様、(a)では水平落

    下の方向、(b)では壁面に沿って下方向、(c)では

    拡散板に沿って巻き込むように、風速の速い部分が

    広がっている。

    自然換気口のある壁際を除くと部屋の風速はいず

    れも 0.1m/s 以下であり、気流を感じるところはな

    いと考えられる。下降流のある壁際の部屋中央位置

    の半分までの高さ(人がいる高さ)の風速をみると、

    拡散板のある(b)と(c)では 0.2m/s 以下である

    のに対し、(a)拡散板なしでは一部 0.3m/s 程度の

    ところがあり、(b)と(c)より僅かに速い。

    (a)拡散板なし

    (b)拡散板 4 周あき

    (c)拡散板 45 度上あき

    図 13 自然換気口位置断面の温度分布

    [℃]

    25<

    24

    23

    22

    21

    20

    19

    18

    17

    16

    15

    14

    13

    12

    11

    10

    [m/s]

    0.50

    0.45

    0.40

    0.35

    0.30

    0.25

    0.20

    0.15

    0.10

    0.05

    0.0

  • 風向・流線

    図 14 に同断面の流れ方向(ベクトル)を示す。図 15 に自然換気口からの流線を示す。ただし、流線は面に衝突すると消失する。(a)拡散板なしでは、自然換気口から吹き出してから落下していることが

    わかる。(b)拡散板 4 周あきでは、壁面に沿って広がって下に流れている。また、落下した気流の一部

    は放熱器にあたり、そこから上昇している。(c)拡散板 45 度では、自然換気口から斜め上に向かい、下降しているが、一部は拡散板の横から漏れるよう

    に下に流れている。(a)は下降流が壁からやや離れ

    ており、拡散板のある(b)と(c)は壁面に近い。 4) 暖房室計算結果のまとめ

    暖房室の計算の結果、以下が得られた。 ・部屋中央の温度は、上下温度差 3~4℃で換気口形状による違いはほとんどない。

    ・拡散板があること換気口からの流入の速度が若干

    弱くなり、また、壁面に沿って流れやすい。拡散

    板がないと壁から離れたところで下降流がある。 以上から、拡散板の形状にもよるが、拡散板があ

    ることで、室内に流れる風速が弱く、また、気流が

    人にあたるところに流れにくくなっていると言える。

    (a)拡散板なし (a)拡散板なし

    (b)拡散板 4 周あき (b)拡散板 4 周あき

    (c)拡散板 45 度上あき (c)拡散板 45 度上あき

    図 14 自然換気口位置断面の流速ベクトル 図 15 自然換気口位置断面の温度分布

    12

  • (3) 非暖房室計算結果 1) 温度分布 図 16 に自然換気口位置の部屋の断面の温度分布を示す。放熱器がないため、暖房している想定の隣

    室と上階との境界面、つまり間仕切壁(自然換気口

    の対面)と天井は 20℃近い温度で、外壁側(自然換気口のある面)の温度が低くなる。その外壁側の低

    温部分が、(a)拡散板なしでは斜め下向きに広がっていることがわかる。(b)拡散板 4 周あきでは、壁面に沿って下に広がっている。(c)拡散板 45 度では、拡散板を回るようにして下へ広がっている。拡散板

    がないときが最も低温部分は斜めに部屋中央側に広

    がっているように見える。 部屋中央の温度層は、暖房室のときよりは大きく、

    5℃程度になっているが、自然換気口形状による温度差の違いはほとんどない。 2) 流速分布

    図 17 に、温度分布と同断面の流速分布を示す。温度同様に、(a)では斜め下方向に広がっている。暖房室(図 5-4)よりも室内側に流れているようである。(b)では壁に沿って下へ、(c)では斜め上に向かってから壁に沿って下へ風速の速い部分が広が

    っている。いずれも、換気口周辺を除き、室内の流

    速は 0.1m/s 以下である。

    [℃] 20< 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9

    (a)拡散板なし

    (b)拡散板 4 周あき

    (c)拡散板 45 度上あき 図 16 自然換気口位置断面の温度分布

    (a)拡散板なし

    8 7 6 5

    [m/s]

    0.50

    0.45

    0.40

    0.35

    0.30

    0.25

    0.20

    0.15

    0.10

    0.05

    0.0

    (b)拡散板 4 周あき

    (c)拡散板 45 度上あき 図 17 自然換気口位置断面の温度分布

    13

  • 3) 風向・流線 図 18 に、同断面の流れベクトルを示す。図 19 に

    自然換気口からの流線を示す。(a)は、暖房室のとき(図 14、15)より吹出し方向がより室内側に向かっている。(b)(c)の吹出し向きは暖房室のときと大きな違いはない。しかし、流線をみると、いずれ

    も暖房室のときより気流が消失してない。非暖房室

    では、流入空気の温度と室温の差が暖房室より小さ

    いため、密度差も小さく、冷気流の下降の勢いが弱

    いと推察される。

    4) 非暖房室計算結果のまとめ 非暖房室の計算の結果、以下が得られた。

    ・部屋中央の上下温度差は暖房室のときより大き

    いが、換気口による温度の違いはほとんどない。 ・拡散板がないと、冷気流が斜めに室内側に流れ

    込む。拡散板があると、壁面に沿って流れる。 ・暖房室よりも室温と冷気流の温度差が小さいた

    め、冷気流の下降の勢いは弱いと推察される。 非暖房室と暖房室では、上下温度差、気流の向き

    は若干異なるが、気流が人にあたりにくいという拡

    散板の効果の点では同じである。

    (a)拡散板なし (a)拡散板なし

    (b)拡散板 4 周あき

    (b)拡散板 4 周あき

    (c)拡散板 45 度上あき

    図 19 自然換気口位置断面の温度分布 (c)拡散板 45 度上あき 図 18 自然換気口位置断面の流速ベクトル

    14

  • 15

    6. 中気密住宅における3種換気シミュレーション

    (1) シミュレーションの目的と概要 中気密住宅(相当隙間面積 2~5 cm2/m2)における効率的な 3 種換気システムの提案行う。 自然換気口の有効隙間面積相当値が 2~3cm2/m2、

    建物の隙間相当面積が 3 cm2/m2とし、住宅全体の換気バランスが季節ごとにどう変化するかをシミュレ

    ーションにより明らかにし、季節ごとの運転制御方

    法を検討した。 季節毎の温度設定および換気口の開閉条件は以下

    の通りである。 夏季:室温 25℃、外気 20℃、内外温度差 5℃、すべての自然換気口開放+排気装置(強運転)

    春・秋:室温 20℃、外気 10℃、内外温度差 10℃、換気口1階居間のみ閉鎖+排気装置(中運転)

    冬:室温 20℃、外気 5℃、内外温度差 15℃、換気口1階すべて閉鎖+排気装置(弱運転)

    (2) 計算モデルと条件 計算モデル住宅の床面積と気積を表 8 に、表 9 に

    外皮及び室内の隙間面積を、図 20に平面図を示す。住宅の気密性能は、相当隙間面積 C=3cm2/m2 としている。 換気量の計算には、換気回路網計算ソフト

    VentSim Ver.3 を用いた。 (3) 換気のパターン

    換気方式は、1階便所からの集中排気とし、換気

    装置の排気能力は、強中弱それぞれ 220、150、100 m3/h 程度になるよう、換気装置を設定した。 換気口 1 か所の有効開口面積を 20cm2とし、各室

    の換気口設置数および季節毎の開閉条件を表の通り

    設定した。換気口は 1 階 2 階それぞれ 6,4 か所設置し、全体では、約 200cm2 の開口面積となる。住宅の有効開口面積は、約 370cm2 なので、換気口の有効開口面積は、住宅の総開口面積の約 35%である。これを、夏期は全て開放、中間期は 1 階の 1 か所を除いて閉鎖、冬季は一階の換気口をすべて閉鎖する

    条件である。冬季の総開口面積は夏季に対して

    120cm2、約 20%小さくなる。1 階のみを閉鎖することで 2 階の開口面積を 1 階に対して大きくすることで、中性帯を 2 階部分に引き上げ、2 階の換気改善を図った。

    LDK

    ホール

    洋室A

    洗面室浴室

    便所

    9100

    2730 1820 2730

    1820

    910

    1820

    3640

    8190

    寝室 洋室C

    洋室B

    ホール

    吹抜

    6370

    2730

    910

    273

    0

    9100

    5460 3640

    2階

    1 階 図 20 計算住宅モデル

    表 8 床面積と気積 部屋名 床面積[m2] 気積[m3]

    1 LDK 33.1 79.442 洋室 A 12.4 29.763 ホール 33.7 80.834 便所 1.7 3.975 寝室(2F) 18.2 43.686 洋室 B(2F) 11.2 26.837 洋室 C(2F) 11.2 26.83

    合計 121.4 291.3

    部屋名 換気口数(個)

    開閉条件 夏 中間 冬

    11

    LDK 3 開 閉 閉2 洋室 A 1 開 閉 閉3 ホール 1 開 開 閉4 便所 1 開 閉 閉5

    寝室 2 開 開 開6 洋室 1 開 開 開7 洋室 1 開 開 開

    開放開口数 1階 6 1 02階 4 4 4

  • 表 9 隙間面積 相当隙間

    面積[cm2] 隙間特性値

    n 隙間分割・位置

    外表面 外壁 129.18 (C=3) 1.50 各面に周長で分配し、さらに階高5 分割でして与える。

    室内

    65 /箇所 開き戸注 1) 建具周囲 1.61 建具周囲長さで分配し、横枠は各

    上下端高さ、縦枠は中央に与え

    る。 2.00 アンダーカット 102 /箇所 床面高さ

    ふすま・引き戸注

    1) 建具周囲 69 /m2 1.54 開き戸建具周囲と同じ

    ガラリ付開き戸

    (浴室)注 1) 建具周囲 1.40 14 /箇所 開き戸建具周囲と同じ ガラリ 48 /箇所 2.00 床上 30mm

    注 1) 文献 1)の測定値。室内側からホール等へ流れる向きの値。開き、引き戸は高さ 1.9m×幅 0.8m、ふすまは幅 1.6m×高さ 1.9m のサイズとした。

    文献 1) 清水則夫,鎌田元康,小峰裕己,倉渕隆,千田義孝,桑沢保夫:住宅用部品の通気抵抗について,空

    気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集,pp.609-612,1995.10

    0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    冬 中間 夏 必要換気量

    新鮮

    外気

    量(m

    3/h

    ) 西室

    東室

    寝室

    便所

    ホール

    洋室

    LDK

    (4) シミュレーション結果 図 21 に各室の換気量を、季節ごとに示したもの

    である。夏季は、暖房負荷が無いため、換気風量を

    換気回数 0.75 回/h、約 220m3/h に設定した結果、各室の新鮮外気導入量は、全ての居室で必要換気量

    を満たしている。一方、中間期は、換気回数 0.5 回/h に相当する 150m3/h に設定したが、トータルでは必要換気量を満たしているものの、2 階の充足率は50-60%にとどまっている。また、冬季は自然換気を考慮して、排気量を約 100m3/h に設定した。全体換気量としては、この設定で、必要換気量を満足し

    ている。しかし、中間期と同様 2 階の各室の新鮮外気量は、必要換気量の 30-50%程度となる。

    図 22 は、冬季の各室の換気量を比較したものである。2 階居室は冬季、ホールからの室間換気があるため、これを加えると、必要換気量の 70-80%を確保できることが分かる。

    次に、図 23 は、冬季換気口を全て開放した場合と、2 階のみ、閉鎖した場合の比較である。2 階の換気口を閉鎖した条件では、全体換気量が必要換気

    を満たしている他、2 階の居室にも相当量の新鮮外気導入が見込めるのに対して、換気口を開放した条

    件では、全体換気量が必要換気量を 10%以上上回り、2 階への新鮮外気の導入量は更に少なくなる。換気口の開閉によって、年間を通じて適切な換気量を確

    保しながら、冬季のバランス改善の効果が見込める

    ことが明らかになった。

    図 21 季節ごとの換気量の計算結果

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    40.0

    50.0

    60.0

    LDK 洋室 ホール 便所 寝室 東室 西室

    新鮮

    外気

    量(m

    3/h) 新鮮外気量

    含室間換気

    必要換気量

    図 22 冬季の各室の換気量

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    180

    2階換気口閉鎖 2階換気口開放 必要換気量

    新鮮

    外気

    量(m

    3/h)

    西室

    東室

    寝室

    便所

    ホール

    洋室

    LDK

    図 23 2 階換気口の開閉による影響

    16

  • 7. まとめ 本州の住宅デザインに適した換気パーツの新たな

    デザイン開発を行うとともに、本州で一般的な中気

    密住宅において、優れた機能性を同等以上に発揮す

    る部材開発と、その活用による換気システムの効果

    向上を図る手法を明らかにした。

    研究結果を以下にまとめる。

    (1) 外部フードのデザイン性の検討 昨今の木造住宅に違和感無く採用されることを目

    的に、三角の特異なデザインの既存換気フードの機

    能性を確保しながら、角型で薄型の換気フードを開

    発した。 (2) 機能性の検討 有効開口面積、防風雨性、排気性能、室内温度環

    境への影響を実験およびシミュレーションにより明

    らかにした。 1) 有効開口面積 開発したフードと室内換気口の組み合わせによる

    有効開口面積は20cm2程度を確保しており、100mmφの自然換気口としては最大クラスの性能であった。 2) 防風雨性 一般の換気フードに対して、圧倒的な防水性を示

    すことがわかった。防風雨の環境下でも、換気口か

    らの漏水のリスクは極めて低いと言える。 3) 排気性能 自然排気時の排気性能は、室内換気口とフードそ

    れぞれ単体でも、そして組み合わせても、他の部材

    に比べて高いことが明らかになった。 4) 室内温度環境 室内換気口周りの温度低下の防止効果が大きいこ

    とが明らかになった。室内温度環境に及ぼす影響は、

    実測、シミュレーションとも明快な差は見出せなか

    った。一般の防風板と同様な拡散効果を持ちながら、

    壁周りの温度低下を防止できることことが、当該室

    内換気口の利点といえそうである。 (3) 中気密住宅における 3 種換気シミュレーション 中気密住宅(相当隙間面積 2~5 cm2/m2)における効率的な 3 種換気システムの構築を目的に、シミュレーションを行った。この結果、有効開口面積の

    大きな自然換気口を、季節によって開閉することで、

    年間を通じて、換気量と換気バランスを調整するこ

    とが可能なことを示した。

    17

  • 8. 資料 新型グッドマン換気口、換気性能 用 途 データ PQ 曲線 備 考

    居室用

    フード

    屋内

    換気口

    型 番 GMS-100

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150風量 Q [ m

    3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    屋外フード

    室内換気口

    種 類 自然換気口

    防虫網なし

    有効開

    口面積

    αA

    [cm2]

    給気 19.0

    排気 19.6

    型 番 GMS-100#

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150風量 Q [ m

    3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 自然換気口

    防虫網あり

    有効開

    口面積

    αA

    [cm2]

    給気 17.0

    排気 18.1

    型 番 GMS-150

    0

    50

    100

    0 50 100 150風量 Q [ m

    3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 自然換気口

    防虫網なし

    有効

    開口

    面積

    αA

    [cm2]

    給気 29.7

    排気 36.2

    型 番 GMS-150#

    0

    50

    100

    0 50 100 150風量 Q [ m3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 自然換気口

    防虫網あり

    有効

    開口

    面積

    αA

    [cm2]

    給気 27.7

    排気 33.1

    18

  • 用 途 データ PQ 曲線 備 考

    小屋裏

    換気用

    フード

    型 番 GMS-100

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150風量 Q [ m

    3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 自然換気口

    防虫網なし

    有効開

    口面積

    αA

    [cm2]

    給気 27.8

    排気 28.7

    型 番 GMS-150

    0

    50

    100

    0 50 100 150風量 Q [ m3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 自然換気口

    防虫網あり

    有効開

    口面積

    αA

    [cm2]

    給気 35.2

    排気 40.7

    強制

    換気用

    フード

    型 番 GMS-100A

    0

    50

    100

    0 50 100 150風量 Q [ m

    3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 強制用

    防虫網なし

    有効

    開口

    面積

    αA

    [cm2]

    給気 31.8

    排気 34.2

    型 番 GMS-100A#

    0

    50

    100

    0 50 100 150風量 Q [ m

    3/h ]

    圧力

    損失

     H

    [ P

    a ]

    排気

    給気

    種 類 自然換気口

    防虫網あり

    有効

    開口

    面積

    αA

    [cm2]

    給気 30.5

    排気 31.5

    19