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分類や相関図・系統樹などを作成するための基礎資料
2018年12月8日にアップロードしたこれらの真空管の比較試聴の原稿と密接に関係がありますので、それも参照してください。
真空管の歴史は、実に栄枯盛衰があり、まずは1904年には実用になる二極管が完成し、さらに1907年には三極管の特許が米国で取られています。第一次世界大戦では、電気通信用に真空管技術が進歩し、大戦終了後にはラジオ放送用として大きく発展しました。そして次々と新しい製造会社や新しい真空管が登場して、真空管大量消費時代へと突入するのでした。その後、トランジスターの発明と普及により、次第に主役の座を奪われ、ついに短小軽便なソリッドステートの時代となり、真空管製造会社はほとんどが製造を中止して、今日に至っておりますが、オーディオマニアなどは、真空管の良さを理解し、現在では徐々に真空管がリバイバルしてきております。そして今や真空管アンプが熱いことになっています。ただし絶対数はしれています!現在でも真空管を製造している国は、わずかに中国、ロシア、スロバキアの三国のみとなってしまったようです。
真空管アンプの前段のプリ管としては、12AX7(欧州名:ECC83)が最も多く使用されておりますが、この真空管は往時のヴィンテージ管、新古管、中古管がよく使われております。しかしながら、最も人気のあるダイヤマーク付きのテレフンケンの真空管は、製造装置一式とともにEI社に移行されたり、テレフンケンに限らずOEMとか色々とあり、真空管にプリントされているブランド名が全く別でも、製造元が全く同じで、実は本体は同一ということもあり、それを知らずにブランドイメージだけで音も判定するいい加減な聴力の人もいて、製造元は同じで、本体は全く同じなのに、A社の音は素晴らしいが、B社のはあまり良くないなんてコメントをすることがあるのです。もっとも何事でも同様ですが、ブランドイメージは大切で、同じような音をしていても、ダイヤマーク付きの真空管と中国製の真空管とどちらが好まれるかと言えば、間違いなく前者でしょう。現実は、オーディオは耳よりも眼が重要なのでは!?しかし、
とにかくこの真空管の系譜は、とても難しくてややこしいのですが、全体を系統的にきちんとまとめたものはないように思いますので、それをするための手始めに、まずは各真空管のディメンジョンなどを計測し、見ただけで容易にすぐにわかる外観についてもまとめてみました。今後さらに増やしてやってみます。真空管は、奥が深くて非常に面白いので、『玉ころがし』は止められません。
今回の真空管の直径と高さの計測部位
高さ
直径
☚ この位置が厳密には決めにくいので、高さの値はmm単位の1の位までしか表記していません。
ノギスで真空管の直径を細かく計測
精密デジタル化学天秤で真空管の質量を細かく計測
今回計測した12AX7 と ECC83の一覧
1. 一番人気の♢付テレフンケンのECC83
2. ♢マークなしのテレフンケンのECC83
3. 中国の曙光電子の12AX7B
4. ロシアのElectro-Harmonixの12AX7EH
5. 東芝の12AX7A
6. 旧ユーゴスラビアのEi社 (Elektrinski Industrijia) のECC83
7. スロバキアのJJ (Jan Jurco) ELECTRONICのECC83の
高信頼管のECC803S
8. アメリカのGE (General Electric) の12AX7
9. アメリカの会社Tung-Sol (Monitoradio) の12AX7
10. イギリスのMullardの12AX7
11. 12AX7Aの開発元・元祖であるアメリカのRCA (Radio
Corporation of America) の12AX7
12. 日本のナショナルの12AX7 T ( T は低雑音型)
13. NECの12AX7
14. ロシアのSOVTEKの12AX7WXT
15. Mesa Boogie (ロシア) の12AX7-A
16. TEN (日本) の12AX7 (NHK用)
17. Golden Dragon (中国) の12AX7
18. Sylvania (アメリカ) の12AX7
19. Siemens (ドイツ) のECC83
20. Matsusita (日本) の12AX7 T ( T は低雑音型)
21. Westinghouse (アメリカ) 12AX7
22.CBS Hytron (テレビ局や録音スタジオ用の高品質管で
製造元はアメリカRCA)
23. Marshall (England) ECC83
24. International (Yugoslavia) ECC83/12AX7A
25. National Electronics (Yugoslavia) ECC83/12AX7A
26.日立 12AX7
27. Ei Elites (Yugoslavia) ECC83/12AX7E
28. Pro/Comm ECC83/12AX7DCA
29.Raytheon (USA) 12AX7
Tube
L-ch 用Tube R-ch 用Tube
No. 直径 (mm) 高さ (mm) 質量 (g) 直径 (mm) 高さ (mm) 質量 (g)
1 20.3 48 9.53 20.3 48 9.4
2 20.5 48 9.28 20.1 48 9.44
3 21.7 48 11.45 21.8 43 11.49
4 22 49 14.14 22.9 50 13.72
5 20 46 8.27 20.1 46 8.24
6 20.4 49 9.84 20.3 48 9.69
7 21.6 49 10.58 21.5 49 10.47
8 20.8 47 9.99 20.9 47 9.76
9 20.5 47 8.77 20.5 47 9.13
10 23 48 12.94 22.2 49 12.6
11 20.5 47 9.15 20.5 47 9.26
12 20.4 47 8.77 20.4 47 8.93
13 20.5 47 9.1 21.4 47 9.04
14 21.8 49 12.47 21.6 48 12.17
15 21.7 48 12.77 21.5 47 12.04
16 20.4 47 8.83 20.4 47 8.89
17 22 47 12.38 22 49 12.47
18 20.5 47 9.33 20.5 47 9.4
19 20.3 47 9.18 20.4 47 9.3
20 20.3 47 8.76 20.2 47 9.05
21 20.3 47 8.88 20.6 48 9.11
22 20.5 47 9.14 20.3 47 9.11
23 20.2 47 9.53 20.2 47 9.71
24 20.2 47 9.75 20.4 47 9.86
25 20.3 47 9.62 20.4 47 9.55
26 20.5 45 9.02 20.4 45 9.08
27 20.1 48 9.7 20.6 47 9.82
28 20.5 47 10.1 20.4 47 9.63
29 20.4 47 9.1 20.5 47 8.99
表1. 各真空管のディメンジョンなどの計測結果一覧表
Tube No. は、前ページの真空管番号と同じ。さらにそれらの真空管の写真は、私のHPに18-12-8にアップしたものと同じですので、参照してください。次ページも同様。
L-Ch.用とかR-Ch.用とかは、自分で試聴などをする時に常に同じものをアンプの左右用のソケットに挿入するための単なる目印。次ページも同様。
Tube
No. 管頂Seam プレートRibプレート短1 ○
2 ○
3 ○
4 ○ ○
5 ○ ○
6 ○
7 ○
8 ○
9 ○
10 ○
11 ○ ○
12 ○ ○
13 ○
14 ○ ○特に短い15 ○
16 ○ ○
17 ○
18
19 ○
20 ○ ○ ○
21 ○ ○
22 ○
23 ○
24 ○
25 ○
26 ○ ○
27 ○
28 ○
29 ○
表2.各真空管の外観の違いの一覧表 (○印は該当することを示す)
SeamSeam
プレートにRibなし (Flat Plate)
プレートにRibあり(Ribbed Plate)
【注】Rib とは、肋骨のこと
【注】Seam とは、継ぎ目のこと
★一般的な長いプレートの例 (左)★所有品の中で最短のプレートの例 (右)
内部構造が他のとかなり違うもの(ステンレスの金属片がある)
ここに実例を示すように、同じ型番の真空管でも、一見してすぐにわかる内部構造に大きな違いがあるのに、その特性は全てほぼ同じなのは不思議な気がします。
現時点で表1と表2のみから、類似のものをグループ化すると以下のようになります。すなわち直径が20mm程度か22mm程度か、Seamの有無、Ribの有無でのグルーピングです。下記の真空管No.の数字は、上述の真空管番号と同じです。
★グループA: 真空管No. 1, 8, 9, 13, 22, 29
★グループB:真空管No. 2, 6, 19, 23, 24, 25, 27, 28
★グループC:真空管No. 5, 11, 12, 21, 26
★残りの真空管No. 3, 4, 7, 10, 14, 15, 16, 17,18, 20 は、
それぞれに類似のものはなく、グループ化はできず
テレフンケン社は、1984年に真空管製造を止め、その製造装置一式をユーゴスラビアのEI社に売却し、技術者も派遣して真空管製造を指導したとのことですが、両社の真空管には類似点がなく、今回の私の分類では別グループに入っているのが不思議なことです。すなわち真空管No.1の♢マーク付きのテレフンケンと、それに対するNo.1と27のEIです。
http://www.geocities.jp/sweethome203jp/tube/tube.htmlの<特集No.27真空管特集>
の原稿の最初に書いてあることは: 『ギターアンプのプリ管として使用されることの多い12AX7
(米国)/ECC83(欧州)に的を絞ってご紹介させて頂きます。』とあり、その原稿の最後に、まとめと
して書いてあることをそのまま転記させていただきますと以下のようです。
現在販売されている真空管にはFakeが多いと言われますが、販売しているお店に聞いても
Fakeとは言いませんし、よく調べてみると一概にFakeとは呼べないということが判ります。1970
年代に入ると各メーカー間でのOEM供給が盛んに行われるようになり、イギリスのMullard製の
真空管をアメリカのRCAブランドで販売していたり、またその逆もありますし、イギリスのMullard
製の真空管をドイツのTELEFUNKENブランドで販売していたり、極めつけは日本製の真空管が
アメリカ製として販売されていますから、70年代以降に生産された真空管には何があっても不
思議ではないというのが実情です。
まあ何の疑いも無くプリントされているブランド名を信じれば、なんとなく良い音がするような
気がするので、本物なのかFakeなのかは大きな問題では無いのかも知れませんね。
以上の私の原稿は、肉眼的に簡単に区別できるグループ化ですが、今後さらに色々な情報を集めて、グループをさらに細分化したり、歴史的変遷や系統樹などを明らかにしていきたいと思っていますが、かなり面倒な作業になりそうです。