工芸品原材料確保事業...
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工芸品原材料確保事業
先進地調査報告書(台湾)
平成 31年度工芸品原材料確保事業
成果報告書添付資料:先進地調査報告
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日 時:2019年9月 26日~28日
視察先:・自然色手作坊の藍畑、泥藍製造設備(台中)
・卓也小屋(藍畑、泥藍製造施設)(苗栗県)
・國立臺灣工藝研究發展中心(南投県)
参加者:(泥藍製造事業者)Kitta 澤野 孝
琉球藍嵐山製造所 加藤 直也
(沖縄県商工労働部ものづくり振興課 工芸・ファッション産業班 主任技師)冝保 秀一
(沖縄TLO)又吉、金城
台湾における琉球藍関連調査
台湾では、明治から大正期にかけて藍が栽培され、沖縄と同じ沈殿藍(泥藍)を利用して藍染を行っ
ていたが、合成染料の普及により沈殿藍を用いた藍染は衰退し、一度廃れてしまった。1990 年代から「社
区総体営造」と呼ばれる地域おこしの一環として、国をあげた藍の復興に向けた取り組みが行われた。
沖縄をはじめ、日本における藍葉の栽培技術や泥藍の製造方法、藍建技術を導入し、近年では藍関連の
産業が少しずつ広がってきている。現在では、藍の栽培や藍染の技術も高く、事業としても成功してい
る事例もあることから、①台湾の藍染産業に関する事業者や行政の取り組みについて現状を把握し、琉
球藍原材料確保に寄与する情報を収集すること、②泥藍製造者 2 名に本調査に同行してもらい、事業者
の視点から台湾の現状を視察し、事業の参考にしてもらうこと、③琉球藍だけではなく、沖縄県の糸芭
蕉、苧麻などにおける工芸現場の担い手不足の解決に参考となる情報を得るために國立臺灣工藝研究發
展中心、自然色手作坊、卓也小屋を視察した。
※別添 先進地調査報告書(台湾)参照
①國立臺灣工藝研究發展中心
台湾における藍関連技術の確立と普及は國立臺灣工藝研究發展中心が担ってきた。1994 年から琉球藍
とインド藍の栽培を始め、翌年には泥藍製造の復元に成功し、2000 年からは泥藍製造技術の人材育成を
開始したとのことであった。人材育成によって技術を習得した方の中には、今回の視察先である、自然
色手作坊や卓也小屋など、事業として成功している例があり、現在の台湾における藍産業に大きく貢献
した取り組みと言える。國立臺灣工藝研究發展中心では、今後、これまでの取り組みに加え、複数素材
を使用した新しい工芸品の開発や、藍染工程の改善研究などに取り組んでいくとのことであった。
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台湾(國立臺灣工藝研究發展中心)における藍関連の取り組み
■技術の復元
1994 年 山藍(リュウキュウアイ)と木藍(インド藍)の栽培を開始
1995 年 沈殿法による藍染技術の復元に成功(約 100kg の泥藍を製造)
■人材育成
2000 年 「沈殿法製藍技術」の短期セミナー開始
2001、2003、2004 年 「青は藍から 藍染の糸染、絞り染技法セミナー」を開催
2005 年 「上級者向け藍染と製品セミナー」
2006、2007 年 「經緯梭織藍染技藝」を開催
2008~2010 年 「型染め卓越人材養成計画」を開催
■発展と宣伝
2009~2013 年 「台湾藍染研究会援助計画」を実行
2016~現在 「天然染織人材養成計画」、「繊維工芸創作ゼミ」を開催
これまでの成果と今後の取り組み
■様々な取り組みの成果
・天然藍染教育の知識を普及した
・120 人以上の藍染講師を育成した
・台湾全土の藍(リュウキュウアイ、インド藍)の栽培面積が 4.85 ヘクタールを超え、
毎年 2000kg 以上の泥藍が生産されている
・2014 年ユネスコ国際天然染織フォーラムを請け負うことにつながった
■今後の取り組み予定
・複数の材質を使用した工芸品の開発
・環境にやさしいファッション産業の促進
・藍染の特性と材質を研究し、製藍の工程を改善
・国際交流に積極的に参加し、国内の工芸技術、デザイン力の向上
・工芸産業自体の価値を高め、人材の投入を図る
②自然色手作坊
自然色手作坊は、國立臺灣工藝研究發展中心の人材育成で藍葉生産、泥藍製造、藍建、藍染技術を得
て、泥藍の販売や藍染体験教室などを行っている。自然色手作坊では琉球藍とインド藍、タデアイを栽
培している。琉球藍は遮光ネットで覆った施設の中で栽培されており、マルチ、スプリンクラーを使用
するなど、沖縄の琉球藍栽培環境とは異なる部分があった。
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琉球藍栽培の様子 琉球藍
自然色手作坊の泥藍製造
自然色手作坊で行っている泥藍製造条件を教えていただき、以下にまとめた。消石灰は台湾産ではな
く、日本産の食品用水酸化カルシウムを使用していた。台湾産より純度が高く質の良い泥藍が造れると
のことであった。
③卓也小屋
卓也小屋も前述の自然色手作坊と同様に、國立臺灣工藝研究發展中心の人材育成で藍葉生産、泥藍製
造、藍建、藍染技術を得て、自社のホテル内で泥藍の販売や藍染体験などを行っている。卓也小屋では
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琉球藍を栽培しており、遮光ネット、マルチ、スプリンクラーが使用されていた。
琉球藍栽培の様子
藍葉栽培に関する比較
自然色手作坊の畑 卓也小屋の畑
藍葉生産量 1,000kg/年(泥藍 100kg) 20,000kg/年(泥藍 2,000kg)
収穫時期 5 月と 11 月 6 月と 11 月
収穫方法 ・朝 5 時半に収穫
9 時過ぎたら収穫しない
・朝 6 時半から収穫
・お茶の収穫用の機械を使用
肥料 3 か月に 1 回(内容未確認) 肥料入れている
散水 スプリンクラー
11 月の雨が少ない時期
スプリンクラー
質の良い藍葉 ・色が濃い葉 ・葉に艶がある
・色が濃い(黄色が少ない)
・大きい
卓也小屋の泥藍製造
卓也小屋では自然色手作坊と同じく、純度が高く質の良い泥藍が造れるという理由から、日本産の食
品用水酸化カルシウムを使用していた。また、製造した泥藍は見た目で品質を判断したうえで、お酒で
満たされた容器で保管していた。良いものほど容器のふたに記載されている星の数が多い。
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保管されている泥藍。星の数が多いほど品質が高い。
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卓也小屋の藍建
卓也小屋では藍建時の pH が 12 と高いことから醗酵建てではなく、糖による還元と考えられた。