1

第 1章 研究の背景

第１節 開発動機

携帯電話におけるアプリケーションは年々増加中である．プログラムをダウ

ンロードして実行することにより，通信費の削減やいつでも使用できるといっ

た利点がその理由として挙げられる．(斉田 2001)

現在，NTTDoCoMo の携帯電話において様々なⅰアプリが開発されていると同時

に，ほとんどの NTTDoCoMo の携帯電話がⅰアプリに対応している．そんな中，

教育用のⅰアプリも年々増えている．計算ドリルや漢字ドリル，地理や日本史

や科学の暗記に使う単語帳など，多数存在する．その中でも特に多く開発され

ていたのは，英単語ドリルと英単語帳である．ドリルというのは短い時間で繰

り返し何度も学習するもので，携帯電話のアプリケーションは電車での移動中

などの持て余した時間で行うものである．これに加えて，日本人は英語が苦手

であることが，英単語ドリルのアプリケーションが多く存在する理由であると

考えられる．

そこで筆者は，ⅰアプリによる英単語ドリルを開発しようと考えた．サーバ

で学習状況データを共有できるようにすれば，他の利用者と競うこともできる．

既存のⅰアプリの英単語ドリルを探した結果を表１に示す．その中でも，多く

の機能を持つ制覇！英単語(楽習館 2001)に注目した．このｉアプリの問題点を

洗い出し，改善すればさらに効果的な教材ⅰアプリとなるのではないかと考え

たことが本研究の動機である．

2

↓アプリ名　　　項目→ 著作者 分類 問題数常時通信

問題ダウンロード

学習者による単語登録得点

時間制限

順位表示

成績履歴

苦手問題の生成等

英和・和英切り替え

単語使用例

単語の注釈 料金

携単語600 T2 ドリル 600 手動 有 有 有 有 有 フリー携単語730 T2 ドリル 730 手動 有 有 有 有 有 フリー携熟語600 T2 ドリル 600 有 有 有 有 フリー携スペル600 T2 ドリル 600 有 有 フリー携単語　すし T2 ドリル 30 有 有 フリー

制覇！英単語 ロゴスウェアドリル 2800 有 自動 有 有 有 有 有シェア（１４日間）

問題集ⅰαppli（有）テクノスクエア ドリル 2300 手動 有 フリー

AppliLearning（注１）GBWSystems株式会社ドリル 不明 手動 有 有 不明不明不明 不明 有 不明

フリー（現在お試し期間）

淡々語々 seriometra ドリル 不明 手動 有

シェア（一部問題のダウンロードには支払

ⅰ単語帳（注２） くわぞう ドリル 不明 不明不明 有 不明不明不明不明有 不明 不明 不明 フリー

ゲーテの書斎 T2 単語帳 400 フリーMOBILE単語帳T1～15 Sum Soft 単語帳 2400 有 フリー中学英単カード Tak 単語帳 300 有 フリー英会話（～編）(注３) 西村誠一 単語帳 不明 有 フリー単語帳(注３) Kenshi 単語帳 不明 手動 有 フリー

英語DEことわざ 武田ぱん その他 50 有 有 フリー英語DEいろは 武田ぱん その他 48 有 有 フリーシネマDE英語 T2 その他 有 有 フリー（2004/07/01現在） *ここで言うフリーは無料で使えることを示す。(注１)自分の持つ505iには未対応だった。 *空白部分はその機能が無いことを示す。(注2)実行するとエラーが発生。(注3)起動はできるが操作時にエラー発生。

表１．英単語学習アプリの持つ機能

3

第２節 push 型教材について

push 型とは，教材側から学習者へ学習を促すような手法である．学習者が積

極的でない場合，教材から積極的に学習者へメッセージを送る等，学習者の意

欲を持続させるなどの工夫が必要である(中原ら 2002)．

ⅰアプリは，待ち受け画面でも起動できる機能や，ⅰアプリからメールを送

る機能を持っている．それを利用すれば push 型の教材として携帯電話の利用の

幅が大きくなる．

そこで，既存の学習向けⅰアプリの中から，待ち受け画面を利用した push 型

教材を探してみたが，push 型と呼べるような機能を持つものは見つからなかっ

た．なので，自分の作成する教材にその機能を取り入れることによって，学習

者のやる気を持続させることができるⅰアプリを開発できるのではないかと考

えた．

第３節 本研究の目的

本研究では，制覇！英単語の画面表示や push 型機能，復習する機能などを変

更・改善し，ユーザビリティを向上させ，学習者の学習意欲を持続させるｉア

プリを開発することを目的とする．使い勝手が悪いと学習効果が伸び悩み、冊

子ドリルの方が、学習効果があるという結果になってしまう(石塚ら 2003)。

4

第２章 ⅰアプリ英単語教材「制覇！英単語」

第１節 「制覇！英単語」とは

制覇！英単語とは，高校で学習する英単語を難易度別に 2800 語収録した英単

語ドリルである．英単語を表示し，その和訳を４つの選択肢から選ぶ形式で，

１度のドリルで５問出題される．単語を連続で正解するとその単語は制覇され

たとみなされ出題されなくなり，間違えた単語を繰り返し学習できる．さらに，

制覇した数が増えると難易度の高い単語が出題される．

「制覇！英単語」のユーザ登録をして利用した結果，制覇！英単語には，英

単語のドリルと，サーバ通信による成績保管機能，ランキング機能が設けられ

ていた．しかしこの i アプリは無料期間が１４日間だけで，それ以降は料金を

払わなければならない．かつ，ⅰアプリ使用中は常にインターネットに接続し

てなければならないので通信料がかかり，さらに，動作が遅くなっている．

このアプリケーションは本来，PC の Web 上で学習する事が目的で開発された

ため，ⅰアプリ版は付属機能である．だが，出題方法等や成績データの構造は

ほぼ同じなのでⅰアプリ版を基準に解説する．図１に実際の制覇！英単語の画

像イメージを示す．

5

図１．「制覇！英単語」のイメージ図

右を押す

挑戦を押す

正解 不正解

起動

５問回答

6

第２節 「制覇！英単語」の機能

ソースファイルは配布されていないので、「制覇！英単語」を何度も利用して

機能を分かる範囲で洗い出した。以下にその内容を示す。

2.2.1 「制覇！英単語」の特徴

まず、単語が 2800語登録されている。他のⅰアプリ英単語教材では多くても

700語程度なので、この収録語数はかなり多いと言える。ⅰアプリ実行中は常時

インターネットに通信するので、起動中は常に通信費がかかる。さらに、１問

毎にサーバから問題をダウンロードするので、1問解く毎に時間がかかる。ログ

イン機能でユーザ毎に成績管理や他の利用者との順位付けができる。そして苦

手問題の再出、憶えた単語を忘れそうになったころ再出という機能などがある。

2.2.2 レベルと制覇の概念

このドリルは１～４のユーザレベルに分かれている（レベル１中学復習…600

語，レベル２高校初級…760 語，レベル３高校中級…710 語，レベル４高校上級

…730 語）．ユーザレベル１から始まり，同じ問題に何回か正答し続けるとその

単語を制覇したとみなされ，出題されなくなる．レベル１単語には，600 語の単

語があり，その 7 割の単語を制覇すると次のユーザレベルに移り，レベル１単

語とレベル２単語の単語が出題されるようになる．ユーザレベル１では１問解

けば制覇したとみなされる．ユーザレベル２では，レベル２単語を連続２問解

けば制覇である．ユーザレベル１で制覇したレベル１単語はそのユーザレベル

の間は出題されないが，ユーザレベル２になるとレベル２単語と併せてまた出

題されるようになる．制覇済のレベル１単語を，ユーザレベル２の状態でもう

7

１度解けばそのユーザレベルでは出題されなくなる．その際制覇した単語を間

違えると未制覇に戻ってしまう．

ユーザレベル１の出題単語が 600 語と述べたが，その中から 5 問ずつ回答し

ていったのでは効率が悪く，次のユーザレベルに移行するまで時間がかかる．

さらに，ユーザレベルが上がると，それまで制覇して出題されなくなった単語

がまた出題され，まだ制覇してない単語や間違えた単語を集中して学習できな

くなる．

2.2.3 パラメータについて

登録されている各単語は，イニシャル，和訳，レベル，当たりの選択肢，３

つのはずれの選択肢，回答数，正答数，正答率，平均回答時間，制覇 or未制覇，

連続正答数，という情報を持っている．ドリルは，１回のドリルでの各レベル

に於ける制覇数の増減，出題単語の正答誤答の記録，１回のドリルのスコアの

情報を持ち，PC 版に限り，ドリル終了後に正誤表示をまとめて行う．システム

は，全ユーザの総制覇数，ユーザのレベル，ユーザの各レベルの制覇数と制覇

率と回答数，順位，ユーザ名，パスワードの情報を持っていると考えられる．

8

図２．制覇！英単語の学習方法

ドリルの内部構造は図２のようにプログラムされていると考えられる．ドリ

ルの回答時，まず回答数が１増える．もしそれが正答だったら正答数も１増え

る．ここで正答数÷回答数で正答率も出せる．さらに

（（平均回答時間×（回答数－１））＋回答時間）÷回答数

で平均回答時間も出せる．正答の場合，未制覇の単語は，レベル１の連続正答

数の値が０で制覇済になり，レベル２は連続正答数の値が１で制覇済となる．

誤答の場合，その間違えた単語が制覇済だったら，未制覇に戻る．

さらに，主にドリル部分についてのフローチャートを図３に示す．

レベル１…600単語レベル２…760単語レベル３…710単語レベル４…730単語

レベル１単語の制覇数70％

単語の持つパラメータ□回答数□正答数□平均回答時間□制覇済・未制覇□連続正答数

ユーザレベル４

レベル１単語

レベル２単語

レベル３単語

レベル４単語

ユーザレベル３

レベル１単語

レベル２単語

レベル３単語

ユーザレベル２

レベル１単語

レベル２単語

ユーザレベル１

レベル１単語

レベル２単語の制覇数70％

レベル３単語の制覇数70％

ユーザレベル持つのパラメータ□ユーザレベル内の回答数□ユーザレベル内の正答数□ユーザレベル内の制覇数

9

開始

ユーザレベル

出題＆開始

平均回答時間＝（平均回答時間＋回答時間）÷回答数

出題された単語とレベルの回答数＋１

単語を未制覇に戻す

出題された単語とレベルの正答数＋１

出題された単語の連続正答数＋１

出題されたレベルの制覇数＋１

単語を制覇済にする

正答率＝正答数÷回答数×１００

終了

正解？

単語は制覇済？

単語は制覇済？

５回出題した？

単語のレベル＝１

yes

yes

yesyes

no

no

no

no

no

yes

1 4

レベル１単語群から連続正答数１の単語を取り除く

取り除かれた単語群からランダムに５問を出題用に抽出する

レベル１、２単語群から連続正答数２の単語を取り除く

連続正答数＝２

単語のレベル＝２

yes

no

単語のレベル＝３

単語のレベル＝４

連続正答数＝？

連続正答数＝？

yes

yes

yes

yes

yes

no

no

no

no

no

レベル１、２、３単語群から連続正答数？の単語を取り除く

レベル１、２、３，４単語群から連続正答数？の単語を取り除く

2 3

図３．現行版「制覇！英単語」のフローチャート

10

第３節 「制覇！英単語」の問題点

「制覇！英単語」は次の 5点に改善の余地がある．

(１)学習者が次のレベルの単語を学習したいと感じた場合，今のレベルを終わ

らせなければならないという無駄がある．

(２)レベルが上がると新しい単語の他に，制覇して出題されなくなった単語も

再出され，未回答の単語の出題割合が減る．簡単な単語を何度も解く時間

で未回答の単語を学習した方が学習効果としても有効であるし，学習者の

意欲もなくなってしまう．

(３)時間制限があり，正答をゆっくり思い出しながら学習できない，かつ正誤

表示画面も約２秒で移るので確認もじっくりできない．

(４)間違えた単語が次に出題されるまでに何百問も解かなければならない時も

あり，憶えづらい．

(５)600～700 問から 5 問ずつ出題という形では，効率よく学習できないという

理由から，やる気が続かない．

11

第３章 改善版「制覇！英単語」の設計

既存の「制覇！英単語」を改善するための設計を行った。以降、既存の「制

覇！英単語」を現行版、今回改善したものを改善版として説明する。

第１節 改善案

まず，前の章で述べた問題点に対応させた改善案を以下に挙げる．レベルの

概念や，制覇数のカウント方法は既存システムのままとする．

(１)事前テストによる適切なレベルからの開始

学習者が現在のユーザレベルを終わらせない限り，次のユーザレベルに移行

することができないが，ユーザレベル１では出題単語数が 600 語もあるので，

次のユーザレベルに移るのにかなりの時間を要するという問題点に対して，事

前テストをすることによってテストの成績から自分に合ったユーザレベルから

始められるようにする．方法は，レベル１単語からレベル 4 単語までの単語を

順に 10問ずつ，計 40問出題していく．10問解く毎に，その 10問の正答率が 8

割を切った時点で事前テストを終了し，8 割以上だったなら，次の 10 問を出題

する．10 問で終了もしくは 20 問で終了した場合はユーザレベル１から始まる．

30 問で終了した場合はユーザレベル２から始まり，40 問解いた時，最後の 10

問の正答率が 8割より少なければユーザレベル３から，8割以上ならユーザレベ

ル４から始まる．

こうすることによって学習者に学習するスタート地点を選ばせることができ，

学習者の能力にあったユーザレベルから学習することが出来る．

12

(２)習得済み単語を再出しない

ユーザレベルが上がった時，１度制覇して出題されなくなったはずの単語が

また出題され，「未制覇単語の出題の割合が減る」，「既に習得済みで忘れること

はない単語を何度も解く」，という無駄があるが，その無駄を省くために，ドリ

ル中にバックグラウンドで時間を計り，それぞれの単語において，連続で２回

正答したとき，その２回の回答時間の平均が３秒以内だったなら，その問題は

たとえユーザレベルが上がったとしても出題されないようにする． 尚，これは

既に制覇した単語に限る．

こうすることによって，学習者に効率の良い学習環境を与える．

(３)落ち着いて学習させる

時間制限があることによって正答を思い出しながらゆっくりと回答できない，

かつ正誤表示をする画面が自動で切り替わって回答画面に移ってしまうという

問題に対して，時間制限を取り除き，個人のペースで問題を解けるようにし，

途中で中断できるようにすることによって，学習者の自由度を高める．さらに，

１問ごとに正誤表示の画面を表示し，キーを押すまで画面が移らないようにす

る．

そして，正解した場合は正誤表示の画面において，偶然に正解したり正解し

たが自信がないのに制覇したとみなされ，その単語が出題されなくなる事を防

ぐために，不安であれば単語にチェックを入れられるようにする．

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(４)誤答問題集を作成

それぞれのユーザレベルのアイテムプールが 600 語や 760 語などと多いので，

もし単語を間違えた場合，その単語が次に出題されてくるまでに何百問と別の

単語を解答しなければならない時もあり，その間違えた単語が出題された時に

は学習者が間違えた単語であることを認識できないかもしれない．これでは間

違えた単語を憶えるというドリルとしての機能を発揮できない．

そこで，ドリル中間違った問題はリストしておき，その間違えた単語が 10問

溜まった時点で，その 10問を誤答問題集としてメイン画面に用意する．この問

題集は全問正解しないと消えないようにし，制覇数や連続正答数はカウントす

る．

こうすることによって間違えてた単語を，集中的に繰り返し学習することが

でき，効率よく単語を覚えることができる．

(５)push 型機能

総合的に，効率よく学習できないので学習者のやる気が続かない，という問

題があるが，ここまでに挙げた改善案によってそれは解消できると考えられる．

しかし，ここで１章２節で挙げた push 型機能を用いることにより，さらに学習

者の意欲を促す．

具体的にはⅰアプリの待ち受け機能を使う．利用者が１日の間にドリルを１

回以上行ったかを判定し，もし３日間行われていなかったら利用者に利用を促

すメッセージを待ち受け画面に表示させつつ，バイブレーション機能を用いて

気づかせる．その後ドリルを１回以上行うまで，１時間おきに待ち受け画面に

メッセージを表示させる．

この待ち受け機能は携帯電話の設定でオンオフを切り替えることができる．

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第２節 現行版と改善版の機能の違い

ここで，表２に改善前後の機能の違いをここまでに挙げなかったものも

含めて示す．以下に挙げなかったものを解説する。

常時通信とは、ⅰアプリ起動中は常にインターネットに接続する状態の

ことで、現行版では常時通信となっていたが、改善版ではそれは無くした。

だが、問題のダウンロードに関しては現行版では１問解く毎にサーバと

通信してダウンロードするのに対し、改善版では問題をある程度携帯電話

に保存しておき、必要になったときだけサーバからダウンロードする。つ

まり改善版は常時通信ではないが、問題を取得するときだけインターネッ

トに通信する。

それと、１回のドリルにおける出題数が現行版では 5 問だが、それでは

あまりにも少ないと感じたので、改善版では 10問とした。

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表２．改善前後の機能の違い

現行版 改善版 変更理由

時間制限

１０秒（回答が遅い

と苦手単語とされ

る）

無し

時間制限があると

ドリルではなくテス

トとなる

正誤表示 自動で次の画面に

移る

キーを押すまで表示

される

常時通信 実行中は常にイン

ターネットに接続 無し

問題ダウンロード １問毎自動に 必要な時だけ手動

一回の出題単語

数 ５問 １０問

次 の ユ ーザ レ ベ

ルへの制覇率 一律７０％

それぞれのレベル単

語全体の正答率が

良いと下がる

簡単な範囲を長々

と取り組むのは無

駄

スタート地点 ユーザレベル１から

事前テストの成績に

よって開始時のユー

ザレベルが変化

個人の実力に合っ

た範囲から学習し

たほうが効率がい

い

単語の復習機能 全単語均一に出題

される

・連続正答数２の時

点で平均回答時間

が３秒以内の単語は

以後出題されない

・回答後の正答表示

時に自信のない単語

にチェックを付け，間

違い扱いとして再出

題されるようにする

・誤答単語が１０問溜

まる毎に作成され，メ

イ ン 画 面 に 表 示 さ

せ，１０問正解しない

と消えないようにする

簡単な単語が何度

も出題されると学

習者のやる気減

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第４章 システムの開発

第１節 開発環境

ⅰアプリを作成するにあたって，NTTDoCoMo から提供されている iαppli

Development Kit for Doja3.5 というツールを用いる．このツールは PC 上でⅰ

アプリの動作を確認できるエミュレータや，ソースコードをコンパイルする機

能を持っている．開発言語は Java である．ⅰアプリを開発できる言語は現時点

では Java だけである．図４はこのツールのエミュレータ画面である．

このツールを用いてjavaで作成したソースファイルをコンパイルすると，jam

形式のファイルと jar 形式のファイルが作成される．それらのファイルをサー

バに置き，携帯電話からサーバにアクセスしてダウンロードすることにより，

初めてその携帯電話で作成したⅰアプリを実行することが出来る．

現行版では単語のパラメータやユーザ情報などのデータはサーバに保管して

いたが、改造版ではデータの保存は全て携帯電話のスクラッチパッドという記

憶領域で行う。

17

図４．Doja のエミュレータ

18

第２節 現行版「制覇！英単語」の開発

比較評価をするために，まずは現行版の「制覇！英単語」を再現することに

した．概ね２章１節の通りに機能やパラメータなどを開発した．図５にエミュ

レータ上の動作画面を示す．

図５．現行版の画面

対応 対応

センターキー

残り時間メーター

19

第３節 改善版「制覇！英単語」の開発

次に現行版を改善したものを開発する．起動するとサーバと通信し，問題デ

ータをダウンロードして事前テストがはじまり，スタート時のユーザレベルを

決定させてから教材が始まるようにする．ⅰアプリを終了するときに，スクラ

ッチパッドというデータ保存領域に問題データやユーザデータを保存し，次回

起動時からはサーバ通信をしないで始めるようにする．その他に誤答が 10問溜

まると，メイン画面に誤答問題集のメニューを表示させることや，正誤表示画

面の停止，ドリルの結果画面などを追加した．

図６－１．事前テスト

図６－１はⅰアプリを初めて起動したときに表示される事前テストを開始す

る画面である．ここで指定されたキーを押すことによって事前テストが開始す

る．事前テストが始まるとサーバからレベル１単語をダウンロードして 10問出

題する．もし正答率が 8割以上で次の 10問に挑戦する状態になったら，今度は

サーバからレベル２単語をダウンロードして同じように 10問出題する．

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図６－２．事前テスト結果画面

図６－２は事前テストが終了した時の画面である．３章１節で述べた動作で，

事前テストが終了した時点でのユーザレベルが決定し，この結果画面でそのユ

ーザレベルが通知される．ここで指定されたキーを押すことによって，メイン

画面に移行する．

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図６－３．ドリル画面

図６－３はドリルの画面である．現行版と違うのは時間制限を示すメータが

ないことである．そして回答をするとこの図の画面で止まる．これは正答した

場合で，間違えたときは「チェックをつける」の表示がない．この「チェック

をつける」で指定されたキーを押すことによってこの正答した単語を誤答扱い

として，偶然の正答などを防ぐ．そして「次へ」で指定されたキーを押せば次

の出題に移る．

ここで「始へ」に対応するキーを押すと，現行版ではⅰアプリが終了してし

まっていたが，この改善版ではメイン画面に移行する．

22

図６－４．ドリル結果画面

図６－４はドリルで 10問解いた後の結果画面である．10問中何問正解したか

と，それぞれの英単語について回答した和訳と正答の和訳を表示する．１つの

画面には３つの英単語分まで表示し，右と左に相当するキーで回答した全単語

を参照できる．青色で表示される単語は正解した単語で，赤色で表示されるの

は間違えた単語である．「始へ」に対応するキーでメイン画面に戻る．

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図６－５．ワーストランキング

図６－５は正答率の悪い単語を順に表示する画面である．メイン画面で右に

対応するキーを押すと表示される．

最高 30単語まで表され，上と下に対応するキーを押すことによって全て参照

できる．表示される情報は英単語，和訳，正答率，正答数／回答数，平均回答

時間である．

正答率を優先して順位づけられるが，正答率が同じ単語同士では回答数が多

い単語の順位が高くなる．さらに回答数も同じであった場合は，平均回答時間

が多いものが上位となる．

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図６－６．誤答問題集出現時のメイン画面

図６－６はメイン画面である．２回目以降の起動ならば，この画面から始ま

る．ユーザレベルやそれぞれのレベル単語の制覇数や問題数を表示する．

ドリル中に誤答が 10問溜まったら図のように誤答問題集の表示をし，対応す

るキーを押すことによって誤答問題集を解くことができる．

図の左下の「挑戦」に対応するキーを押すことによってドリルを開始し，

右下の「終了」に対応するキーを押すとⅰアプリを終了する．右に対応するキ

ーを押せば正答率の悪い単語を参照でき，左に対応するキーを押すとボタンの

説明などを表示した画面に移る．

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第５章 評価

第１節 評価方法

正誤表示や結果表示の見易さ，一連の操作性などが現行版より向上している

かを見るために，ユーザビリティテストを行った．ⅰアプリは著者の携帯電話

にダウンロードし，ユーザビリティテストではその携帯電話を用いる．

被験者は３人で，それぞれ現行版と改善版のⅰアプリを一通り使用してもら

い，アンケートをとった．何をして欲しいかは口で説明したが，どのように動

かせばよいかは質問されるまで説明しなかった．アンケートでは現行版と改善

版を比較した使い易さについてなどをアンケート用紙に書いてもらった．

質問内容は次ページの通りである．

26

○ドリルについて

・回答中や正誤表示中の時間制限の有無についてどう思いましたか．

・正誤表示の方法はどちらが良かったですか．その理由も書いてください．

・その他ドリル部分について思ったことはありますか．

○push型について

・待ち受けアプリとして，一定時間毎に利用を進めることについてどう思いま

したか．その理由も書いてください．

・どのようにすれば，さらにやる気が出ると思いますか．

○最後に

・総合的に見てどちらが使い易いと感じましたか．その理由も書いてください．

・思ったことや意見などを，既に書いたことでも良いので自由に書いてくださ

い．

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第２節 評価結果と考察

アンケートの回答には，改善版の方が正誤表示を見る余裕がある，待ち受け

画面でドリルを行うことを催促されるのは面白いと思う，時間制限が無い方が

自分のペースできる，などの好意的な回答のほかに，ドリル中の英単語の字が

小さい，待ち受けアプリは人によってはいらないと思う，というような意見も

あった．字が小さいという意見に対しては，英単語の字を大きくしたことで解

決した．待ち受けアプリについては，オプションとしてオンオフができるので

設定はユーザ任意とし，機能は残した．

そして，「現行版と改善版どちらが使いやすいか」という質問に対して，３人

中３人が改善版の方が使い易いと回答したので，本研究の目的の，使いやすい

システムを開発することには成功したと言える．

今回のユーザビリティテストは短い時間で実施したので，間違えた単語を集

中して学習できることや，完璧に憶えた単語は再出しない機能などに対しての

有意性は，評価することが出来なかった．これは学習者の学習意欲の持続と，

学習効果の評価に値するので，今後は長い期間でこのⅰアプリの評価を行い，

学習者の学習意欲の持続と，学習効果に対する有意性を示していかなければな

らない．

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第６章 終わりに

本研究では，携帯電話を用いて英単語を学習するⅰアプリドリル「制覇！英

単語」を改善したⅰアプリドリルを開発した．ユーザビリティテストを行い，

その結果現行版に比べて使い易いことが分かった．今後は，現行版と改善版の

学習効果の差について評価を行う必要がある．

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参 考 文 献

斉田裕二，鈴木克明：携帯電話における教育用 Java アプリケーションの実態調

査と試作，岩手県立大学ソフトウェア情報学部卒業論文(2001).

楽習館 制覇！英単語：http://www.gakushukan.com/

(最終アクセス：2004/11/22).

中原淳、久松慎一、八重樫文、山内祐平：ポケットの中の学習コミュニテ

ィ－携帯電話を活用した学習コミュニティ活性化ソフトウェアの開発、日

本教育工学会第 18回大会講演論文集 (2002)

石塚丈晴、堀田龍也、小川雅弘、山田智之：小学生を対象とした PDA を用

いた漢字ドリル学習システムの開発，日本教育工学会論文誌（2003）