欧州議会における ヒトクローニングの規制 - …...14 欧州議会における...

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14 14 欧州議会における 欧州議会における ヒトクローニングの規制 ヒトクローニングの規制 1997 1997 クローン羊ドリー誕生の報道 クローン羊ドリー誕生の報道 1997 1997 決議: 決議: ヒトクローニングは目的のいかん ヒトクローニングは目的のいかん を問わず、認容されるべきでない を問わず、認容されるべきでない 1998 1998 ES ES 細胞研究目的でのヒトクローニング 細胞研究目的でのヒトクローニング 研究計画の提示 研究計画の提示 1998 1998 追加議定書: 追加議定書: 生殖目的のクローニング 生殖目的のクローニング のみを禁止 のみを禁止 2000 2000 決議: 決議: 体性幹細胞研究推進 体性幹細胞研究推進 のための のための 「最大限の努力」を要請 「最大限の努力」を要請

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Page 1: 欧州議会における ヒトクローニングの規制 - …...14 欧州議会における ヒトクローニングの規制 《1997 クローン羊ドリー誕生の報道》

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欧州議会における欧州議会におけるヒトクローニングの規制ヒトクローニングの規制

《《19971997 クローン羊ドリー誕生の報道クローン羊ドリー誕生の報道》》19971997 決議:決議:ヒトクローニングは目的のいかんヒトクローニングは目的のいかん

を問わず、認容されるべきでないを問わず、認容されるべきでない《《19981998 ESES細胞研究目的でのヒトクローニング細胞研究目的でのヒトクローニング

研究計画の提示研究計画の提示》》19981998 追加議定書:追加議定書:生殖目的のクローニング生殖目的のクローニング

のみを禁止のみを禁止20002000 決議:決議:体性幹細胞研究推進体性幹細胞研究推進のためののための

「 大限の努力」を要請「 大限の努力」を要請

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国連「ヒトクローニングに関する宣言」国連「ヒトクローニングに関する宣言」:ヒトクローニングの全面禁止(:ヒトクローニングの全面禁止(20052005))

賛成賛成 8484 :: 米国,ドイツ,イタリア,スイス,米国,ドイツ,イタリア,スイス,

オーストリアなどオーストリアなど

反対反対 3434 :: 英国,フランス,オランダ,英国,フランス,オランダ,

中国,韓国,日本など中国,韓国,日本など

棄権棄権 3737 :: イラン,イスラエル,イラン,イスラエル,

インドネシアなどインドネシアなど

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ⅡⅡ.異論に対する反論.異論に対する反論

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A.A. 科学的事実科学的事実をめぐる異論をめぐる異論

R.マコーミック(ジョージタウン大学ケネディ研究所倫R.マコーミック(ジョージタウン大学ケネディ研究所倫理神学教授,米保健省倫理諮問委員会委員)(理神学教授,米保健省倫理諮問委員会委員)(19791979););A.マクラーレン(英ウォーノック委員会委員)(A.マクラーレン(英ウォーノック委員会委員)(19841984););

““prepre--embryoembryo”” 概念の導入概念の導入「受精後「受精後1414日目まで,胚(日目まで,胚(embryoembryo)は存在しない」)は存在しない」

N.フォード(N.フォード(19881988):):1414日目までの胚は一卵性双生児を生ずる可能性があ日目までの胚は一卵性双生児を生ずる可能性があるから,ヒトの個体ではなく,「細胞の塊」にすぎないるから,ヒトの個体ではなく,「細胞の塊」にすぎない英ドナルドソン・レポート英ドナルドソン・レポート ((20002000):ヒト胚は「潜在的な):ヒト胚は「潜在的な人」(人」(potential human beingspotential human beings)にすぎない)にすぎない米国産婦人科医大倫理委員会(米国産婦人科医大倫理委員会(20062006););国際幹細胞研究協会(国際幹細胞研究協会(ISSCRISSCR)()(20072007):):

1414日目までのヒト胚は,器官発生を始めた胚とは日目までのヒト胚は,器官発生を始めた胚とは「生物学的に著しく異なる細胞組織」にすぎない「生物学的に著しく異なる細胞組織」にすぎない

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《《反論反論》》

明らかな科学的誤謬。明らかな科学的誤謬。現在,現在,prepre--embryoembryoという語は発生学では用いられていない。という語は発生学では用いられていない。

一卵性双生児は,すでに確立した個体が一卵性双生児は,すでに確立した個体が何らかのアクシデントでもう一つの個体を何らかのアクシデントでもう一つの個体を引き起こしたと考えられる。引き起こしたと考えられる。

人(ヒト,人(ヒト,human beinghuman being)は,接合子の段)は,接合子の段

階からすでに人である。階からすでに人である。

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BB..人の倫理的地位(人格概念)人の倫理的地位(人格概念)

をめぐる異論をめぐる異論

「人格」とは,「理性的な,自意識のある存在」で「人格」とは,「理性的な,自意識のある存在」である。したがって,ある。したがって,自意識または「人格性」を示自意識または「人格性」を示す他の外面的行為,態度,能力を持たない人す他の外面的行為,態度,能力を持たない人は「人格」ではないから,尊厳と人権も持たないは「人格」ではないから,尊厳と人権も持たない(=(=「パーソン」論)「パーソン」論)。。

1414日目までの初期胚は,知覚能力を司る神経日目までの初期胚は,知覚能力を司る神経

細胞の元である原始線条がまだ発生していな細胞の元である原始線条がまだ発生していないから,当然「人格」ではない。いから,当然「人格」ではない。

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《《反論反論》》

パーソン論は,心理学的意識,理性的能力,パーソン論は,心理学的意識,理性的能力,社会的コミュニケーション能力を偏重し,知的障社会的コミュニケーション能力を偏重し,知的障害者や植物状態患者の人格を否定する。害者や植物状態患者の人格を否定する。本来の人格概念は,本来の人格概念は, 自己支配,人格的責任,自己支配,人格的責任,真理と道徳秩序のうちに生きる能力を意味する。真理と道徳秩序のうちに生きる能力を意味する。それは,年齢,身体,心理状態,自然的素質にそれは,年齢,身体,心理状態,自然的素質によるものではなく,存在に関わるものよるものではなく,存在に関わるもの((existentialexistential)であり,)であり,精神と身体の実体的統一精神と身体の実体的統一である人間の本質を構成する精神的霊魂:である人間の本質を構成する精神的霊魂:spiritual soulspiritual soul(=物質的な身体に生命を与える(=物質的な身体に生命を与える精神的原理)精神的原理)によるによるものである。ものである。

((R.R. グァルディーニ)グァルディーニ)

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ベネディクトベネディクトXVIXVI世世「カトリック教会の教え・綱要」(「カトリック教会の教え・綱要」(20052005))

「受精時からの,あらゆる個人の譲ること「受精時からの,あらゆる個人の譲ることのできない生きる権利は,市民社会と法のできない生きる権利は,市民社会と法制度を構成する基本要素である。国家が制度を構成する基本要素である。国家が全ての者の権利,特に弱者全ての者の権利,特に弱者ーー受胎された受胎された未出生児も含むーの権利を保障しないな未出生児も含むーの権利を保障しないなら,まさに法治国家の土台そのものが堀ら,まさに法治国家の土台そのものが堀り崩される」り崩される」 ((472472))

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ⅢⅢ.科学者における.科学者におけるヒト胚の破壊の非倫理性意識ヒト胚の破壊の非倫理性意識の浸透と,代替策の模索の浸透と,代替策の模索

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その個別的な生命がすでに始まっているその個別的な生命がすでに始まっているとき,生きているヒト胚を作成し,使用し,とき,生きているヒト胚を作成し,使用し,その発達のその発達の66--77日目頃にそれを破壊する日目頃にそれを破壊する

ことは善か悪か,正か不正か。ことは善か悪か,正か不正か。この倫理の論争は解決されなければならこの倫理の論争は解決されなければならない。ない。

M. M. PeraPera, Human , Human PluripotentPluripotent Stem Cells: Stem Cells: A Progress Report, 2001.A Progress Report, 2001.

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ヒトヒトESES細胞を特定の細胞に分化させる研究は,細胞を特定の細胞に分化させる研究は,ゴールに到達するまでに,なお様々な障害ゴールに到達するまでに,なお様々な障害 ーー腫瘍の形成,動物の細胞による汚染,遺伝的腫瘍の形成,動物の細胞による汚染,遺伝的不一致,移植に適した型の細胞の作成と選択,不一致,移植に適した型の細胞の作成と選択,胚の破壊なしに胚の破壊なしにESES細胞系を作成する新しい方細胞系を作成する新しい方法,研究資金法,研究資金etc.etc. ーー を克服しなければならなを克服しなければならない。幹細胞研究に従事する科学者は,自らのい。幹細胞研究に従事する科学者は,自らの仕事の倫理的,科学的正当性を提示しなけれ仕事の倫理的,科学的正当性を提示しなければならない。倫理委員会の側からも,胚研究のばならない。倫理委員会の側からも,胚研究のすべての段階について,その倫理的正当性をすべての段階について,その倫理的正当性を明らかにし,明確に表明する必要がある。明らかにし,明確に表明する必要がある。

L.L. GruenGruen=L.=L. GrabelGrabel, Concise Review:, Concise Review: Scientific Scientific and Ethical Roadblocks to and Ethical Roadblocks to hESchESc Therapy, 2007.Therapy, 2007.

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2727

ヒト胚の生物学上の事実の知識と,その存在ヒト胚の生物学上の事実の知識と,その存在論的地位についての倫理的考察は,「どのヒト論的地位についての倫理的考察は,「どのヒト胚の研究利用も不道徳で受け入れがたい」と胚の研究利用も不道徳で受け入れがたい」という結論に導く。それは,理性によって,すなわいう結論に導く。それは,理性によって,すなわち自分自身と自己の行為について考察し,そこち自分自身と自己の行為について考察し,そこから自己の責任を引き出す人間によって,教示から自己の責任を引き出す人間によって,教示される立場である。される立場である。

ESES細胞研究ではなく体性幹細胞研究;細胞研究ではなく体性幹細胞研究;

分子の再プログラミングの研究の推進を。分子の再プログラミングの研究の推進を。

A. A. SerraSerra,, Le Cellule Le Cellule StaminaliStaminaliEmbrionaliEmbrionali,, 20072007