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Page 1: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1229 解 説

UDC 537.521:681.3

解 説

放 電 研究 と シ ミ ュレー シ ョン

田 頭 博 昭

1. は し が き

最近,放 電現象を電算機 シ ミュ レー ションによって

理論解析す る試みが種々発表 されている。

一般的にい って,電 算機 シ ミュレー ションは方程式

による解析が複雑で困難 な場合 に威力を発揮 すると考

え られる。放電現象 はこれに影響を与え る因子が内部

的に も外部 的に も非常 に多数 あるうえ に,こ れを方 程

式解析 するのがむず か しい場合が多いの が一つの特徴

であ り,し たが って,解 析 に電算機 シミュレー ション

技術の利用が適 している現 象で あるということがで き

よ う。また,よ く知 られてい るよ うに放電現象 は ミク

ロな素衝突過程の膨大な集積か らな りた って いる。 ミ

クロな素過程の物理法則が巨視的な放電 の性質 に与 え

る影 響を,も し方程式解析 しようとす るな らば,位 相

空間 とい ったやや抽象的 な概念世界 におけ る操作を必

要 とするのに対 して,電 算機 シミュ レー ション解析に

おいては,た とえば,素 過程を そのまま シ ミュレー ト

し,こ れを多数回行 なって結果を見ればよい。 この意

味で電算機 シミュ レー ションは,複 雑 な問題に対 して

Straightfowardに 立 ち向 か うのを可能 とす る方 法 で

あるといえよ う。 さらに シミュ レー ションの途中にお

いて,実 測 がきわめて 困難 なパ ラメータを容易にサ ン

プルでき,有 用 な知見 を一つ の数値実験の結果 と して

得 ることができる場合が あるが,こ れ もこの方法の大

きな魅力 となって いる。

放電現象 に対す る電算機 シミュ レー ション応用の歴

史を簡単 にふ り返 って みると,1945年 にYarnold氏

が電界下 のモデ ルガス(完 全 剛体球)中 の電子運動解

析 にモンテカル ロ ・シミュ レー ションを適用 し,電 子

エネルギー分布 を求 め,こ れが ドリュベステイン分布

と異な ることを指摘 して いる。(1)しか し,電 算機 シ ミ

ュ レーシ ョンの本格的応 用が始 まったのは,何 といっ

て も現代のデ ィジタル計算機が普及 し,じ ゅうぶん な

計算速度 と記憶容量を持 つよ うにな ってか らで,そ の

意 味で,わ が国の伊藤 氏 と武者氏 による,電 界が印加

されたガス中にお いて運動する電子 の軌道計算法の創

案(2)は画期 的な ものであ った といえる。お も しろいこ

とに この研 究は直接の後継者を持たず,外 国において

基礎衝突過程 の研究者が実験装置のチェ ックなどに用

いていたよ うで ある。(3)

その後1969年 に イギ リスのThomas氏 兄弟が,

気体 中の放電現 象はあ くの一つの基礎単位 と もい うべ

き電子なだれの研究に,こ の軌道計算法を応 用 してそ

の有用性を示 し,(4)そ のころから電算機 シ ミコ レー シ

ョンによる研究論文が さかん に発表 され始めた。(5)~(8)

わが国で も慶応大学(9)や筆者 の研究室 などにおいて研

究が始め られ た。(10)~(12)

以上は,電 子 なだれまでの放電現象基礎の研究であ

るが,ア メ リカのKline氏 とSiambis氏 は,こ れを

平行平板ギ ャップのス トリー マ形成 の 研 究 に応 用 し

た。(13)

伊藤 ・武者両氏のよ うな電子軌道計算法を用 いる方

法 は,個 々の電子運動 を シミュ レー トし,そ の集積の

結果 と して 自然に電子 なだれや ス トリーマ形成 を描 き

出す という意味で,"ミ クロ"な シ ミュレー ションと

名づ けることができよ う。(14)これ に対 して,あ らかじ

め電子運動の集団的性質 を,い わゆ るSwarm para-

meter(移 動速度W,拡 散係数D,電 離 係 数 α な

ど)と して求めてお き,こ れ らを用 いて電子に対する

連続 の方程式をたてて数値 的に解 く方法 も,電 算機 シ

ミュ レーシ ョンと呼ばれ ることがある。この方法を こ

こで はSwarm parameterを 用いて いるという意味で

"マ クロ"な シ ミュレー ションと仮称す るこ とに す る

が,こ れ を用 いて平行平板 ギ ャップのス トリー マ形成田頭博昭:正 員,北 海道大学工学部電気工学科

Vol. 92, No. 12 <23>

Page 2: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1230 電気学会雑誌

を 論 じた も の に,い わ ゆ るDavies, Davies, Evans

氏 らの論 文 が あ る。(15)

な お,ミ ク ロ な シ ミュ レー シ ョ ンは,放 電 現 象 に本

質 的 に存 在 す る統 計 的 変 動 を 自然 に描 き出 す こ とが で

き るが,Davies氏 らの方 法 は これ が で きな い。 しか

しマ ク ロな方 法 で あ って も統 計変 動 の側 面 を 適 切 に 描

き 出す モデ ル を 採 用 す れ ば,こ れ が可 能 に な る もの と

考 え られ る。(16)(35)

放電現象の研究は長い歴史を もつが,一 方,常 に新

しい学 問であ りつづ けて きた ともいえるであろ う。タ

ウンゼ ン ドによる電離係数 α の提唱か ら数 えて さ え

すでに70年 余 が経過 してい るが,(17)その間,放 電現

象はその複雑 さを もってわれわれの理解を拒 みつづけ

て きた。このため,い つの時代 にお いて も新たな知見

を加 えるため に,わ れわれは"新 しい武器"を 用意 し

なければ ならなか った。実験的研究 についていえば,

現代の武器 は超高速度 オ シロスコープ(30)や イメージ

コ ンバ ータ ・カメラ(31)(32)などで 代表 さ れ る で あ ろ

う。理論的側面において,電 算機 シ ミュレー ションが

これ らに拮抗 し,こ れ らを こえ るものにな り得 るか否

かについては,な お多少の未 知の要素 があるが,適 切

な シ ミュ レー ション ・モデルの開発 が行 なわれ るな ら

ば,電 算機性能の向上は じゅうぶん約束 されてい ると

考 えて よいで あろうか ら,将 来 に向 けて大 きな可能性

を秘 めた ものであ るといえるで あろう。放電現象 を電

算機 シミュレー ションによって研究を している者 の1

人 と して,筆 者は長い研究の歴史に もかかわ らず,実

際 にはいまだほ とん ど解決 されていない ともみること

ので きる工学上 の問題-送 変電系統 や放電応用機器

の フラッシオーバ電圧や フラッシオーバ確率,動 作開

始電 圧や動作特性 などを,広 い条件範 囲にわた って理

論的に予測す る有効な手法を開発すること-の 解決

に,シ ミュ レー ションの方 法を役 だたせ たい もの と考

えて いるものである。

長 い前置 きとな ったが,以 下 において放電現象の電

算機 シ ミュ レー ションによる研究の現状を順を追 って

説明 したい。なお放電現象の研究 といえば,筆 者 が暗

に仮定 したような気体中の電気的絶縁 破壊 のほかに,

液体 や固体 中の破壊や定常放電 の研究 も含 まれ るわ け

で ある。 しか し筆者の興味の偏 りもあ ってか,液 体や

固体の破壊の シ ミュレー ション例 を見 いだす ことがで

きなか った。 この点 について読者 のお教 えをいただけ

れば幸いであ る。なお,半 導体 中の電子運動の シ ミュ

レー ションにつ いては文献 に記 してお く。(18)また,い

わゆ るプラズ マの シミュ レー ショ ンもここでは とり扱

ってい ない。 これについてはモ ンテカル ロ ・シ ミュ レ

ー シ ョ ンと そ の技 法 の全 体 像 的 紹 介 を 含 め て ,適 当 な

著 書(19)(20)を参 考 に され たい 。

第1図 電界中を運動する電子の軌道

2. 電 子 な だ れ の シ ミ ュ レー シ ョ ン

気体中に金属 平行平 板電極 をおき,こ れに じゅうぶ

んな直流電圧 を加えてお く。陰極 か ら1箇 の電子を,

光電効果 などによって気体 中に放出 すると,こ の電子

の運動は第1図 に示す よ うなものとなる。(2)すなわち,

自由行程(衝 突 と衡突 の間)中 に電子 は一定電 界下で

放物線運動を行 なうが,気 体分子 との衝突が起 こると

そ の確率的法則に従 って散乱 され,新 軌道 の方 向が定

まり,こ れに沿 って再び放物線運 動を開始する。この

くり返 しによ って電 子は一 見 ランダムな運 動を行 ない

なが ら,も う少 し大 きな眼 でみる と,電 界(と 逆)方

向に移動 してい くこ とがわかる。

図において,電 子 とガス分子 の衝突 が起 こった とこ

ろに衝 突の種類(弾 性 ・励起 ・電離)が 記 されてい る。

この詳細 は後述す ることと して,電 離衝突が起 こった

ところでは,実 は新 しい電子 が誕生 し,図 には示 され

て いない別 の軌道を描 いて運動 して いるはずである。

このよ うに して,電 子が電界方向に移動す るうちに多

数 の子電子や孫電子を従え るようにな る。 このよ うな

移動す る電子の集団が電子なだれ と呼ばれ るもので あ

る。また電子1個 あた り電界方向への移動1cmあ た

りの電離衝突回数の平均値が,電 子によ る衝突電離係

数 α にあた ることにな る。

このよ うに,電 子なだれのモ ンテ カル ロ ・シミュレ

ー ションを行な うときには,ま ず電 界のかかった気体

中を運動する電子 の軌道 を描 かなければな らない。

<2・1> 伊藤 ・武者両氏 による電子 軌道計算法

(1) 衝 突の判 定 第1図 のよ うな衝突 の確率的

な法 則に従 って 長さや方 向が変 わる電子軌道 を,伊 藤

氏 と武者 氏は次 のよ うな方法 で描 いた。

気 体中の電子 の平均 自由行程 を λ(ε)とお く。 電子

が距離l進 むとき分子 と衝突を起 こす確率pは1-

J.I.E.E.J. 12/'72 <24>

Page 3: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1231 解 説

exp∫l 0 dx/λ(ε)で あ るが,lが 小 さ い と き は

となる。 ここに,ε は電子 エネルギーで あって,λ(ε)

は一般に電子 エネルギーに依 存す る ことを示す。

(1)式 を もとに次のよ うに して軌道 を描 く。まず電

子を初期条件 で定め られた方 向にあ る小 さな距離lだ

け進め る。電 子は電界 中にあるが,lが 小 さいので こ

の間におけ る速度の変化やエネルギーの変化 はひとま

ず無視で きる。 したが って,λ(ε)もこの間 は一定の値

を保つ と考 え る。

l進 んだあ とで衝突 の起 こる確率 はpで あ る。 こ

れを表現 す るため表および裏 が出る確率 がそれぞれp

と1-pで ある"偏 った銅貨"を 投 げる。 もし表が出

れば衝突 は起 こ り,裏 が出 れば衡突 は起 こらなか った

ことに相 当す る。実際 には電算機 中で銅貨を投げ るわ

けではな く,0と1の 間 の値を ラ ンダムに とる,擬 似

一様乱数qを 発生 し,(19)も し0<q<pな ら衝突,

p<q<1な ら衝突 しない,と 判定す るわけで ある。

(2) 放物線軌道の計算法 衝突が起 こ らなかっ

たときの処置をまず考え る。l間 で速度や エネルギ ー

は不変 と仮定 したが,実 際には変わる。これ を考慮 し

て電子 エネルギー εと運動方 向を修正 する。この新 し

い方向 と速度で再びlだ け電子 を進 める。このように

衝突な しに進む ときの軌 道は,実 際 は放物線であ るも

のを折線 で近似 した ことになる。

数値関係を示す 。V:電 子 の速 さ,θ:電 子速度 と電

界 の逆方 向とのなす角,m:電 子質量,e:電 子電荷,

E:電 界強度,Δt:自 由時間 とおけば,

V'sinθ'=Vsinθ

mV'cosθ'=mVcosθ+eEΔt

となる。 ここに,'を つけた ものは衝突後 の軌道 に関

す る量である。 また,Δzは 電 界方 向 へ の 移動距離

で,折 線近似を行 なった ことか ら

Δz=lcosθ … …(2)

の関係があ る。 じゅうぶんに短い距離lを 飛行 後の電

子位置z'=z+Δz,時 刻t'=t+Δt,速 さV',運 動

方向cosθ'は,こ れ らの式を解 いて得 られる。

な お,Δtお よびcosθ'中 の()内 が負 値 を と る

とき は,cosθ の符 号 を か え,か え た後 と 同 じcosθ'の

符 号 を採 用 す る。(2)こ れ は放 物 線 の頂 点 で 起 こ る。l

が短 い ほ ど(1)式 が 厳密 に成 立 す るが,一 方,計 算 時

間 は長 くな る。 多 くは伊 藤 氏 と 武 者 氏 に 従 ってl=

λ(ε)/10す な わ ちp=1/10と と って い る よ うで あ る。

な お,折 線 近 似 に よ る軌 道 計 算 誤 差 は放 物 線 の頂 点 付

近 で 著 し くな るの で,|cosθ|が 小 さ い と こ ろ でlを

さ らに小 さ くす る こ とが 考 え られ る。(12)

(3) 衝突 の種類 と衝突時の処 置 衝突が起 こっ

た ときの処 置を説明す るために,電 子 と中性原子 ・分

子の衝突につ いて簡単に触 れて お く。

電子 と原子や分子の衝突 の種類 は,弾 性衝突(原 子

・分子 の内部状態の変化を伴 わない衝突)と 非弾性衝

突(内 部状態 の変化を伴 うもの)に 大別 され る。非弾

性衝突 はまた,励 起 ・解離 ・電離 ・電子付 着などの衝

突に分類 され る。原子の励起 は電子状態の励起 しかな

いが,分 子で は電子状 態のほかに振動状態 や回転状態

の励起があ る。また再結合や,電 子や原子 ・分子 と励

起原子 ・分子 との間 の第二種の衝突などがある。(22)

衝突が起 こったとき問題 とな るのは,

(i) 上記 のような種々の衝突 の発生割合の決定

(ii) 衝突時 の電子 エネルギー損失

(iii) 衝突後 の電子の運動方向 とその確率

(iv) 電離衝突の場合は,衝 突後 に存在す る2個 の

電 子へのエネルギーの配分割合 とその確率

などである。

この解答 は衝突の種類 とその衝突断面積を知 ること

によ ってなされ る。説明を簡単 にす るために,衝 突の

種類 として弾性衝突 と電子状 態の励起衡突および電離

衝突 しかない希 ガスの場合 を考 えよ う。 第2図 にAr

ガスの衝突断面積の大きさを電子 エネルギーの関数 と

して示す。(11)Qexは 励起断面積で,Arガ スの電子伏

態 の励起 は εex=11.5eVか ら始まるため,入 射電子

エネギルー ε<εexで はQex=0で あ る。Qiは 電離

断面積であ って,ε<εi(電 離 エネル ギ ー)=15.69eV

に対 しては値 は0で ある。

Qmは 運動量変換 断面積(23)と呼 ばれ るもの で あ る

が,さ しあた りあらゆ る衝突(弾 性 ・励起 ・電離)の

断面積 の和で あると考えてよい。

衝突断面積の単位 と しては種々の ものが考 えられ る

Vol. 92, No. 12 <25>

Page 4: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1232 電気学会雑誌

第2図 Arガ スの各種衝突断面積

が,第2図 では0℃,1TorrのAr中 を,1個 の電子

がエネル ギー εを失なわずに1cm進 んだ ときに経験

す るそれぞれの種類の衝突の回数(の 平均値)をcm-1

を単位 として示 して ある。 図 の値を0℃,1Torrの

ガス数密度N=3.54×1016cm-3で 割 ると原子1個 あ

た りの衝突断面積 となる。

平均 自由行程 λ と運動量変換断面積Qmの 関係は,

単位 の関係か らもわか るよ うに,

とな っている。θdは 原子1個 あた りの運動 量 変換 衝

突断面積である。

以上の ような準備 で(i)~(iv)項 までの問いにあ る

程度答 えてみ る。

まず,(i)の 衝突の種類 の決定法 を者 える。 さ しあ

た りQm=Qel+Qex+Qiと 考 えているので(Qel:

弾性衝 突断面積),(1)式 を この関係を用いて書 きな

おせば,

p=l/λ=lQm=lQel+lQex+lQi

=pel+pex+pi

となる。これか らわか るよ うに結局,確 率pをpel(弾

性衝突),pe=(励 起衝突),pi(電 離衝突)の 起 こる確

率幅に分割 して,衡 突 の判定に用いた[0,1]間 の一様

乱数qが,こ の分割 のどこに落 ち るか に 従 って衝突

の種類の判定を行 なえばよい。(たとえば,pexの 幅に

はいれば励起衡突が起 こったとする。)各分割幅 は各過

程の生起確率であ るか ら,こ れは容易 に理解で きる。

(il)の 各種 の衝突 において失 な うエネルギーは,次

のよ うになる。まず励起衝突,電 離衝突では,そ れに

必要 な一定 のエネルギー(た とえば,Arの 電 離衝突後

には εi=15.69eV)が 失 なわれ る。また弾性衝突で は

ガス原子質 量Mが 電子質量mよ り じゅ うぶ ん大 き

い ことを考 え,さ らに絶縁破壊 を考 えるよ うな換算電

界E/p0あ るいはE/N(E:電 界 強度,p0:ガ ス気

圧,N:ガ ス数密度)が 大 きな ところで は,ガ ス原子

の運動エネルギー≪電子 の運動 エネルギーを仮定 して

結局,衝 突電子 のエネルギー損失 は,

となる。β は電子の衝突前後の速 度の向きの間 の角度

で ある。m/M≪1な ので Δε/εの値はいずれにせ よ小

さ く,Δ εを無視 して シミュ レー シ ョンを 行 な って い

る例 も多 い。

次 に,(iii)の 衝突後 の電子運動 の方向 の決定には,

さらに多少の議論 が必要 となる。電子 が原子 と衝突後,

衝突前の運動方 向の記憶を全 く失 な うとい うこと,い

いかえれば,ど の方 向に も等 しい確率で散 乱され ると

い うこと(等方散乱)を,原 子か ら見 た単位立体角 あた

りの散乱確率が,電 子軌道が曲げ られた角度 βに関係

な く一定で あると表現で きる。 ところで,実 際の衝突

による電子 の散乱 は決 して この よ うに等方的でな く,

βによ って単位立体角 あた りの確率 は大 いに異なる。

一 般的にい って入射 エネルギーが大 きいと,電 子は

あま り直角方向に散 乱されず,前 方(β≒0°)か後方(β

≒180°)に著 しく散乱 されるよ うになる。

電子 なだれ中の電子軌 道をど こまで も忠実 に描 くと

なると,こ の非等方散乱を考慮 しな くて はな らない。

これ は衝突後 にも衝突前の電子運動の記憶が残 ってい

る場合 であ って,シ ミュ レー ションは必ず しも簡単で

はない。(9)(12)そこで等方散乱 に これを近似す る。その

かわ り,単 位長あた り電子が衝突によ って失 なう運動

量 が,非 等方散乱の ときと等 しくな るよ うな仮想的な

衝突断面積 を用 いる。これがすで に述べた運動量変換

断面積で ある。等方散乱 の場合 は,衝 突後の運動方向

に対す る電界方 向への方 向余弦cosθ'を

cosθ'=2q-1

ここに,q=[0,1]の 一様乱数によ って発生す れ ば よ

く,問 題が きわめて簡単 にな る。(4)(9)(12)

最後 の(iv)で は,電 離衝突後 のエネルギーの二つの

電 子への配分は,よ い測 定値 がなか ったため一様分布

を仮定 した例が多か ったが,量 近測定例が表われたよ

うで ある。(24)しか し多 くの場合,こ れは さほど大 きな

影響を与 える因子で はない ようで ある。(25)

(4) まとめ 伊藤 ・武者両氏 に基づ く電子軌道

追 跡法の考 え方 をま とめ ると次のよ うになる。

(イ) 初期 条性によ って決ま る方向に微 小距離lだ

け進 み,一 様乱数qを 発生 して衝突 の判定を行な

う。

(ロ) p<q<1な らば衝突は起 こらない。pは(1)

J.I.E.E.J. 12./'72 <26>

Page 5: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1233 解 説

式 で与 え られる。λ(ε)は(6)式 で与 え られ る。

衝突 が起 こらないので(2)~(5)式 を用いて新 し

い電子状態 を算 出 し,さ らにlだ け進む。

(ハ) 0<q<pな らば衝突 は起 こったことにな る。

この とき新 しい電子軌道 を(i)~(iv)項 に よって

決定 し,さ らにlだ け進む 。

(ニ) 以上 の過程 を必要 なだけ行 なう。

<2・2> Thomas氏 兄弟によ る電子 なだれの シミュ

レーシ ョン 伊藤氏 と武者 氏は,(2)上 述 のよ うな電

子軌道の追跡を,な だれを代 表す る1個 の電子 に対 し

て行 ない,電 離係数 α,電 子の移 動速 度Wな どを

Heガ スについて計算 した。Thomas氏 ら(4)はこれに

対 して,電 離増倍 によって生 じた子や孫の電子 すべて

を計算 にとり入れ るという,よ りRealisticな 計算を

Neガ スに対 して行ない,次 の点 において注 目された。

(1) 全電子を追跡 した結果か ら得 られ る電 離 係

数(4)は,一 電子 を追跡 して得 られ るもの(2)と,は っき

の と異 なる値 をもつ ことを明 らか に した。

(2) 陰極付近で電子 が後方散乱 され,陰 極に捕え

られて消滅する確率(二 次電 離係数算 出の重要 な因子

である(33))など,電 子 エネルギー非平衡の状態で生ず

る現象の解析 を行 ない,こ れが電算機 シミュ レー ショ

ンを有効 に利 用できる問題 である ことを示 した 。

実際,Thomas氏 ら以降の電子 なだれ のシ ミュ レー

ションに関する研究 は,す べてなだれ中の全電子を追

跡 してお り,(5)~(13)また電子 エネルギー非平衡時 にお

ける現象を調 べる 目的で用いている例が多 いよ うであ

る。(5)~(12)

第3図 にThomas氏 らによ るNeガ ス中の電子が

陰極において後方拡散 を逃 れる確率 を示す 。なお,上

記(1)は 学 問的にはたいへん興味 ある問題で あるが,

Thomas氏 らは並行 して行 な ったボルツマ ン方程式解

析の結果 などか ら,(25)一電子 を追跡 する場合 には,電

子の拡散 と電離後 に生 ずる遅 い電子 のなだれ中へ の注

入が適切 にと り入れ られて いないためで あると結論 し

て い る。

第3図 Neガ ス中において陰極への後方 拡散を逃れる確率TR

<2・3> パラメータのサンプ リング 伊藤 ・武者氏

らおよびThomas氏 らによ って,電 子 なだれの ミク

ロな シ ミュ レー ションの一方法が確立 された。実験的

に得 られ る値 と比較 するためには,こ うした方法を用

いて電子群 の運動を描 き なが ら,Swarm parameter

(電離係 数 α,移動速度Wな ど)を 正 しくサンプル し

なければな らないが,こ れ は必ず しも簡単で はない。

電離係数 のサ ンプ リングに関す る一 つの問題点につ

いて は,<2・2>節 の(1)項 で述べた。移 動速度Wの

サンプ リングについては,Wを どう定義 するか,と

い う問題がある らしいことを指摘 したい。(10)~(12)従来

の理論解析においては,移 動速度を電子群 に属す る各

電子 の速度の平均値 として求めて いた。(25)しか し多 く

の実験 においては,電 子群 の移動距離を移動 に要す る

時間で除 して これを求めて いる。後者 を電子群の重心

の速度で代表 させ るな らば,電 離が存在 する場合には

"前者<後 者"と な り,(10)(12)両者 は必ず しも等 しくな

いよ うで,実 験値 と理論値 の比較の さいに注意を要す

ると考え られる。(26)

実験 と シミュ レー ションとの対応に関する同様の問

題 と して,ど の ような 条件を設定 して電子 な だ れ を"観測"す るか とい う問題が ある

。電子なだ れ の観 測

条件 として よ く用い られるもの に,定 常タ ウンゼ ン ド

実験(SST)と,パ ルス ・タウ ンゼン ド実験(PT)が

ある。前者 は平行平板ギ ャップの陰極 に連続 的に初電

子 を供給 し,ギ ャップ中に定常的 な電子流を形成する

もので,電 離係数 α の測定によ く用い られ る。 後者

は陰極に時間的 にデル タ関数的 に初電子を与え,電 子

なだれ全体 の成長を時間の関数 として観測す るもので

ある。

筆 者 らはパ ラメータのサ ンプ リングの 際,SSTと

PTを 明確に区別 する必要があ るのを 見いだ した。(11)

F(ε,z,t)を,時 刻t=0に 陰極を出発 した電子が時刻

t,陰 極か らの距離zに つ くる電子エネルギー分布関

数 とす る。たとえば,平 均電子 エネルギー εをサンプ

ルす る場 合のPTとSSTの サ ンプル法 は,

PT

SST

Vol. 92, No. 12 <27>

Page 6: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1234 電気学会雑誌

第4図 平 行平板ギ ャップ内に定常 タウン

ゼ ン ド状態(SST)を 作 ったときの,

平均電子エネルギー εと電子移

動 速度Wの 変動(Arガ ス)

とな る。 シミュ レーションではいずれ も最後の表現で

サ ンプ リングを行 なう。Lは サ ンプル電子数,Δtjは

電子 がzとz+Δzの 間に滞在 する時間,t0は 陰極

に初電子 が発生す る時刻である。ギャ ップ間の全電子

の エネルギーの平均値を求 めるPTで は式が簡単で あ

るが,Δz内 にあ る電子 のエネルギーを平均するSST

で は Δz中 の滞在時間 の荷重を要す る。

第4図 にこの方法を適 用 して 求 め たAr中 のSST

に対す る平均電子 エネルギー εの変動を示す。(11)SST

により電離係数 α を求 めるときは,ギ ャップ 中 の電

子 エネルギー分布一定,し たが って εも一定を多 くの

場合に仮定 している。 しか し,実 際に は陰極 や陽極 の

近辺に εの大 きな変動 の存在が予想 され る。あま りp

×d(気 圧 ×ギ ャップの長 さ)の 値 の小 さな実験 条件 で

測定 された α の値 には疑問があ ることになる。

図には同 じサンプル法を適用 して求 めた電子 の移動

速度Wを 示す。Wは εと類 似の変動 を示す ことが

わかる。他 のパ ラメー タのサ ンプ リング も同様 に行な

うことがで きる。(12)

3. ス ト リ ー マ 進 行 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン

ア メ リカのKline氏 とSiambis氏 は,上 述 の よ う

な 電 子 な だ れ の シ ミュ レー シ ョン に,

(i) 光 電 離

(ii) 空 間電 荷 ひず み

を 加 え る こ とに よ って,N2中 の平 行 平 板 ギ ャ ップ に

お け る電 子 な だれ-ス トリー マ変 換 の シ ミュ レー シ ョ

ンを 行 な った 。

方 法 は基 本 的 に は第2章 で 述 べ た 方 式 で あ るか ら,

技法 上の相違点 だけを簡単 に記す 。

まず ス トリーマ進行 はTemporalな 現象 で あ る か

ら,独 立変数 として時 問を採用 している。す なわち,

時間を Δtご との等 間隔に区切 り,ε なるエネルギー

を もつ電子 の衝突確率を

p=1-exp{ν(ε)Δt}

によ って判断 して いる。ν(ε)は電子の全衝突周波数で

あ る。ν(ε)=V(ε)/λ(ε)の関係 があ るか ら,λ(ε)あ る

いはQmか らす ぐ求 め られ る。V(ε)は エネルギー ε

を もつ電子の速 さであ る。衝 突の種類の判定はν(ε)=

νel(ε)+νex(ε)+νi(ε)であることを考え れ ば,<2・1>

節に述 べた と同様 に行 なえることがわかる。

電界 ひずみの計算 は一次元 モデ ルを仮定 して いる。

ス トリーマは細 いフ ィラメ ン ト状 に光条が走 るところ

か ら命名 された もので あろうか ら,一 次元 モデルの採

用 は大 いに気 にな る点で はあるが,こ れは先覚者 の進

取 の気象を とるべ きであ ろう。平行平板を Δzご との

小区間に分割 し,あ る時刻 にそれぞれの小区間にはい

ってい る電子および正 イオ ン数を知 れば,ポ アソ ン方

程式をたてて一次元電界分布を知 る こ とが で き る。

なお,こ の とき各区間 中 で はdE/dz=一 定 を 仮 定

し,(13)また,ギ ャップ間印加電 圧 も一定 と仮定 してい

る。電 子や正 イオ ンの電荷 は,電 極面 と平行 な薄い シ

ー トであ ると仮定 されて いる。

この よ うな電 界計 算 を各 時 間 ス テ ップ Δtご とに行

な って シ ミュ レー シ ョンを 進 めて い く。 こ の と きか れ

らは無 衝突 プ ラズ マ の研 究 の経 験 か ら,

Δt<1/4ωpe

と と って い る 。 ωpeは 電 子 の プ ラズ マ振 動 の角 周 波数

で あ っ て,ωpe=(ne2/ε0m)1/2=5.6×104√n(s-1)で

与 え られ る。nは 電 子 密 度(cm-3)で あ る。(27)また Δz

は,

λD=(υ2/ωpe2)1/2

に よ って 与 え られ る デバ イ長 よ り短 くな る よ うに とっ

て い る 。υ2は 電 子 速 度 の 二 乗 平 均 値 で あ る 。

光電 離の計算 は,Penny氏 とHummert氏 による

測 定結果 を用いて いる。(28)これ はコロナ放電か らの光

による光電離係数 の測定で,電 子 エネルギー分布を考

えると,果 た して このよ うな電子 なだれ か らス トリー

マへの変換開始 の問題 に対 して適用 して よいか どうか

とい う問題が あると考 え られるが,電 子 による電離係

数 ほどの じゅうぶんな測定結果 がな く,や むをえない

もの と思 われる。放電半径Rを0.5cmと 仮定 し,

i番 目の区間で起 こった電離衝突でj番 目の区間に発

生 した光電子 ・正 イオ ン対を Δtpご とに計算 し,な だ

れ 中にと り入れてい る。この電子 ・イオン対 は相対的

J.I.E.E.J. 12/'72 <28>

Page 7: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1235 解 説

E/p=1.000V・cm-1・Torr-1,p:1Torr

ギ ャ ップ の長 さ:4cm

第5図 N2ガ ス中 の ス ト リー マ進 行 の

シ ミュ レー シ ョン

に数が少 ないので Δtp>Δtと している。ま た,電 子

数が電算機 メモ リー容 量を こえ るほど増大す るとSca-

lingを 行 ない,一 つの粒子に1個 以上 の電子 の役 目を

果たさせてい る。

このような計算の結 果の一 例を第5図 に示す 。最 も

明るい部分 に比べて10-2倍 の明 るさの前縁 と後縁(○

印)が それぞれ陽極向 きおよび陰極 向きス トリー マを

形成 して高速度 で走 っている。 もし光電離を加えない

と,こ のよ うな急速 に進 行する部分(ス トリーマ)の

発生 は見 られなか った と報告 して いる。

4. マ ク ロな シ ミ ュ レー シ ョ ン

Davies氏 らは電子 と正 イオ ンに対す る次の よ うな

連続方程式 を解 くことによって,Wagner氏 の電子な

だれ-ス トリーマ変換 の観測結果(29)の模擬を試 みた。

ここに,n:粒 子密度,W:移 動速度,e:電

子,p:正 イオ ン

これは単な る数値解法 とも見 られるが,か れ らの方

法上 の特長 は,

(i) 一次元電 界分布を仮定せ ず,電 荷分布 の双極

子性を考 慮 した独 自の電界計算法 を採用 した

(ii) Wagner氏 の実験 では数百個 の初期電子によ

って なだれを陰極 か ら出発 させて いるが,こ れ ら

初期電子発生 の時間幅(半 値幅~20ns)を 考慮 し

(iii) 初期電子発生面積 の半径は電子 なだれの拡散

半径よ り大きい ことか ら,拡 散を無視 した

(iv) 光電離 によ る気体中 の 二次電子発生 は無視

し,光 子二 次作用 による陰極における二次電子放

出を考慮 した

(v) (iii) に関連 して一定 の放電半径(た とえば,

0.25mm)を 仮定 し,電 荷 はこの中に一様 に詰 ま

っているもの とした

(vi) z-Wet=一 定,と い う線上で電子密 度 を 積

分 し計算時間を短縮 した

などで ある。N2中 のE/p0=62V・cm-1・Torr-1,p0

=91Torrで 行な った シミュ レーション結果 を,写 真

乾板 の光子に よる感光 の シミュレー ション技術 により"流 し写真"と して表現 したものを第6図 に示 す

。光

電 離を考慮 しな くて も陽極向 き,こ とに陰極 向きス ト

リーマが鮮明に"写 し出されてい る"の が見 られ る。

E/p=62V・cm-1・Torr-1,p:91Torr

ギ ャ ップ の 長 さ:3cm

第6図 N2ガ ス 中 の ス ト リー マ形 成 の

シ ミュ レー シ ョン

5. 放 電 現 象 シ ミ ュ レー シ ョンの今 後 の課 題

最近のデ ィジタル計算機 による放電現象 の シミュレ

ー ションの研究につ いて紹介 してきた。フ ラッシオー

バ電圧や フラッシオーバ確率の理論的定量的 な予測 と

いう目標か らみれば,こ の種の研究はまだ始 まったば

かりで あるといえるが,す でにい くつかの問題点が現

われ始めている。その二,三 を列挙 してこの稿を閉 じ

ることとしたい。

(1) 正確 な衝突断面積に対す る要 求 ミクロな

シ ミュ レー ションにとって正確な断面積 の知識が必要

であるが,SF6な どについて はデータの欠落 があ る。

基礎衝 突過程 の研究が進む ことが,シ ミュ レーシ ョン

による研究 を進 めるために欠 かせない条件で ある。

(2) シミュ レー ションモデルの開発 精密なモ

デルを 用いれば,一 般に大 きな計算費用を要す る。注

目する現象 の本質を適切に表現 し,か つ,経 済的合理

性 の側面を満足 させ るモデルの開発 な しには複雑な放

電現象 の解析はむずか しい。

(3) ダイナ ミックなポア ソン場 の高精度近似解 法

の開発 紹介 したよ うな シ ミュ レー シコンによ る研

Vol. 92, No. 12 <29>

Page 8: 解 説 - Nihon University...1229 解 説 UDC 537.521:681.3 解 説 放電研究とシミュレーション 田 頭 博 昭 1. は しが き 最近,放 電現象を電算機シミュレーションによって

1236 電気学会雑誌

究をよ りRealisticな 条件(長 ギ ャップ放電,沿 面放

電,ボ イ ド放電,プ ラズマ ・デ ィスプ レイ放電 など)

に適 用するた めには,計 算精 度 と経済 的合理性を備 え

たポアソン場の解法を要する。

(4) 必要 なパ ラメータの測 定 光電離 はス トリ

ーマ進展 と密接な関連がある といわれなが らじ ゅうぶ

ん な係数 の測定値がなか った。マク ロな シミュ レー シ

ョンにはこのよ うなパ ラメータの値 は不可欠であ る。

この ほか,ボ ル ツマ ン方程式 による解析 とシ ミュレ

ー ション解析 とを対比 的に行 なって,従 来の理論体系

との連系をで きるだけ明確に して お くことが望ま しい

ことであ ろうと考 え られる。

(昭和47年11月14日 受付)

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