ふりかえりの時間...ふりかえりの時間 【評価項目の設定】 a...

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教育効果の検証 子供の学びを支える評価の工夫 ふりかえりの時間 【評価項目の設定】 A ACTIVE2016の根幹である構想図(P.2参照)にあるよう に、「ねばり強く取り組み、主体的に生き抜く力」を育成する ためには、3つの力「①かかわる力 ②感じる力 ③見つめ る力」が大切だと考えた。この3つの力を、プログラムの特 性と照らし合わせ、子供の姿を想定し、それぞれの力に3観 点の評価項目、全 9 観点の評価項目(以下「付けたい力」)を 設定した。 【自由記述欄】 C ふりかえりカードに、「自由に感想を書いてみよう」では、 その日一日の感想文になり、自分自身にどのような成長が見 られたか実感することは難しい。そこで、自由記述の欄には、 チャート図から感じたことを書くようにした。そうすること で、具体的にどのようなことがあったのか、事実に基づいて 記述するようになるのではないかと考えたからである。特に 書く量に指定はなく、書きたいことがある場合は、裏面に書 いてもよいことにした。また、「明日の自分へのメッセージ」 を書く欄を設け、明日の自分の目当てをもてるようにした。 【チャート式評価】 B 付けたい力について、5段階で自己評価し、チャート図に表すようにし た。9つの点を線で結び、評価全体の様子を視覚的に捉えやすくすること で、観点間の比較ができるようにした。また、日ごとのチャート図を図形的 に比較することで、前の自分から今日の自分 がどのように変化したかが見て取れるように した。 【ファイル管理】 毎日書き溜めていく「ふりかえりカード」 は、一人につき一冊のファイルに保管する ようにした。そのことにより、前の自分が どのような評価をしたのかをフィードバッ クしながら、今日の自分を振り返る姿を期 待した。 「自己肯定感」とは、自分に対して肯定的な評価 を抱いている状態である。 「自尊感情」とも言う。 また、他人の役に立った、他人に喜んでもらえた 等、相手の存在なしには生まれてこない感情を 「自己有用感」と言う。自分のよさを見つけること は容易ではない。むしろ、他者との関わりから自 分を認めてもらえることで自己有用感を獲得し 自己肯定感をもつことにつながると言える。 このキャンプは、11日間チームで活動するこ とを大切にしている。それだけに仲間の存在をよ り意識するための手立てが必要になる。そこで、 評価項目を見直し、昨年の「⑥成長できた自分を 感じることができたか」を「⑥仲間の存在の大切 さを感じることができたか」と変更し、より仲間を 意識した言葉を入れ込み、振り返るようにした。 自己肯定感について考える! 【ふりかえり】 日々の活動によって得た「学び」を文字にして残す。 「学び」とは、その時に感じたことや考えたこと、新しく知ったこと等、 全ての事柄である。 とりわけ、 ACTIVE2016で目指す「ねばり強く取り組み主体的に生き抜く子供」を育成するため、自分自身に強く働きかけ、 変化していこうとする子供自身のエネルギーとなる「学び」を残したい。評価で大切なことは、子供が真摯に自分自身と向き 合い、自己の成長を実感することである。そのためには、事業全体を通して、統一性のある評価をする必要があると考えた。 この振り返りの手法は昨年度から行っている。昨年の長期キャンプ「全力キャンプ」では、ふりかえりの検証から、次の 2 点 が課題として残った。 ①全日程を通じて、「自分自身のよいところを見つける」項目が比較的低い得点(平均で3.8ポイント)であった。全力を出 し切る行程であり、 各ステージの盛り上がりで達成感を感じていることが、必ずしも自己肯定感につながるとは言えな い。支援のあり方について検討する必要がある。 ②「自分で考えて行動する」項目は一番低い4.2ポイントとなるだけでなく、事業全体の上昇率が 0.4ポイントにとどまっ た。 プログラムに、子供が自ら考え判断して行動する要素を取り入れる必要がある。 ※②についてはP22、23「自ら判断し行動する力の育成」でその解明について取り上げる。 昨年度の課題を生かす! <子供の意識(例)> 今日は、自分から進んで話せたし、あきらめないでがんば れた。でももっと友達と励まし合うことを明日は意識しない といけないな。 5 4 2 4 3 4 3 5 3 <評価点> ◆評価点を下のチャート図に表そう! 12345【参加者に提示したふりかえりカード】 C A B 14

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Page 1: ふりかえりの時間...ふりかえりの時間 【評価項目の設定】 a active2016の根幹である構想図(p.2参照)にあるよう に、「ねばり強く取り組み、主体的に生き抜く力」を育成する

教育効果の検証 子供の学びを支える評価の工夫

ふりかえりの時間

【評価項目の設定】 A ACTIVE2016の根幹である構想図(P.2参照)にあるように、「ねばり強く取り組み、主体的に生き抜く力」を育成するためには、3つの力「①かかわる力 ②感じる力 ③見つめる力」が大切だと考えた。この3つの力を、プログラムの特性と照らし合わせ、子供の姿を想定し、それぞれの力に3観点の評価項目、全9観点の評価項目(以下「付けたい力」)を設定した。

【自由記述欄】 C ふりかえりカードに、「自由に感想を書いてみよう」では、その日一日の感想文になり、自分自身にどのような成長が見られたか実感することは難しい。そこで、自由記述の欄には、チャート図から感じたことを書くようにした。そうすることで、具体的にどのようなことがあったのか、事実に基づいて記述するようになるのではないかと考えたからである。特に書く量に指定はなく、書きたいことがある場合は、裏面に書いてもよいことにした。また、「明日の自分へのメッセージ」を書く欄を設け、明日の自分の目当てをもてるようにした。

【チャート式評価】 B 付けたい力について、5段階で自己評価し、チャート図に表すようにした。9つの点を線で結び、評価全体の様子を視覚的に捉えやすくすることで、観点間の比較ができるようにした。また、日ごとのチャート図を図形的に比較することで、前の自分から今日の自分がどのように変化したかが見て取れるようにした。

【ファイル管理】 毎日書き溜めていく「ふりかえりカード」は、一人につき一冊のファイルに保管するようにした。そのことにより、前の自分がどのような評価をしたのかをフィードバックしながら、今日の自分を振り返る姿を期待した。

 「自己肯定感」とは、自分に対して肯定的な評価を抱いている状態である。「自尊感情」とも言う。また、他人の役に立った、他人に喜んでもらえた等、相手の存在なしには生まれてこない感情を「自己有用感」と言う。自分のよさを見つけることは容易ではない。むしろ、他者との関わりから自分を認めてもらえることで自己有用感を獲得し自己肯定感をもつことにつながると言える。 このキャンプは、11日間チームで活動することを大切にしている。それだけに仲間の存在をより意識するための手立てが必要になる。そこで、評価項目を見直し、昨年の「⑥成長できた自分を感じることができたか」を「⑥仲間の存在の大切さを感じることができたか」と変更し、より仲間を意識した言葉を入れ込み、振り返るようにした。

自己肯定感について考える!

【ふりかえり】 日々の活動によって得た「学び」を文字にして残す。「学び」とは、その時に感じたことや考えたこと、新しく知ったこと等、全ての事柄である。 とりわけ、ACTIVE2016で目指す「ねばり強く取り組み主体的に生き抜く子供」を育成するため、自分自身に強く働きかけ、変化していこうとする子供自身のエネルギーとなる「学び」を残したい。評価で大切なことは、子供が真摯に自分自身と向き合い、自己の成長を実感することである。そのためには、事業全体を通して、統一性のある評価をする必要があると考えた。

 この振り返りの手法は昨年度から行っている。昨年の長期キャンプ「全力キャンプ」では、ふりかえりの検証から、次の2点が課題として残った。①全日程を通じて、「自分自身のよいところを見つける」項目が比較的低い得点(平均で3.8ポイント)であった。全力を出し切る行程であり、各ステージの盛り上がりで達成感を感じていることが、必ずしも自己肯定感につながるとは言えない。支援のあり方について検討する必要がある。

②「自分で考えて行動する」項目は一番低い4.2ポイントとなるだけでなく、事業全体の上昇率が0.4ポイントにとどまった。プログラムに、子供が自ら考え判断して行動する要素を取り入れる必要がある。※②についてはP22、23「自ら判断し行動する力の育成」でその解明について取り上げる。

─ 昨年度の課題を生かす!─

<子供の意識(例)> 今日は、自分から進んで話せたし、あきらめないでがんばれた。でももっと友達と励まし合うことを明日は意識しないといけないな。

542434353

<評価点>◆評価点を下のチャート図に表そう!

①②

⑤⑥

12345

【参加者に提示したふりかえりカード】

C

A

B

14

Page 2: ふりかえりの時間...ふりかえりの時間 【評価項目の設定】 a active2016の根幹である構想図(p.2参照)にあるよう に、「ねばり強く取り組み、主体的に生き抜く力」を育成する

<かかわる力>❶ 「励まし合う」の評価点が、竹細工・流しそうめんプログラム(8/4)に大きく下がっている。それまでの登山行程に比べて、励まし合う場面が少なかったことに対し、きちんと評価している子供の真摯な姿だと捉える。その姿が、子供に大きな負荷をかけたサイクリング行程で意識化され、チーム内で必死に頑張る仲間と励まし合う姿となり、それ以降の評価点の上昇につながったのではないかと考える。<感じる力>❷ 今年の新観点「仲間の存在の大切さを感じることができたか」は、事業全般を通して高い数値を推移している。チーム力の向上を目指したキャンプの構想が、仲間を意識し、そのよさを実感する子供の姿につながったと言える。

❸ 「友達のよいところを見つけることができたか」の評価点は、登山行程やサイクリング行程で上昇しているが、友達との関わりが少ないプログラムでは下がっている。また、その推移の仕方は「励まし合う」の評価点の推移の仕方と似ている。子供にとって励まし合う仲間がいることが友達のよさを感じることにつながっているのだと考える。<見つめる力>❹ 「自分のよいところを見つける」の評価点は、事業前は3.3ポイントだったが、事業終盤に大きく数値を上げ、4.6ポイントとなり、上昇率は1.3ポイントと9観点のうちで一番大きく向上した。これは、困難なキャンプをやり抜いたことが自信となり、達成できた自分自身への自信の表れだと考える。長期のキャンプであるからこそ、継続的な自己評価の場を設定することができる。そして、自分自身をじっくりと見つめることによって、自己肯定感を高めていくことにつながったと言える。 

 チームとして目指していく形を残す。ステージの区切りで目標や大切にしたい言葉を書き綴った。最終日、フラッグの中心には「チームにとって一番大切な言葉」を書いた。

ふりかえりの検証①

チームフラッグの作成

5

4.5

4

3.5

37/17 7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5 8/6 8/7 8/8 8/9

●❶●❷

●❹

●❸

かかわる力感じる力見つめる力

進んで話す友達のよいところ自分のよいところ

相手の立場に立つ自然を感じる最後まであきらめない

励まし合う仲間の存在の大切さ考えて行動する

出会い チームづくり チャレンジ 旅立ち

【統計による検証】 ここでは、子供たちが、日々の「ふりかえりカード」に記載した付けたい力の評価点を集計することで、事業全体の子供の変容を見取る。調査は、最終日を除き、毎日実施した。下のグラフは、3つの力・9つの観点の評価項目が11日間どのように変化したか、各観点の平均の推移を表したグラフである。

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