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An explanation of Digital Smart Technology for Amateur Radio Page 1 Copyright C 2005 The Japan Amateur Radio League, Inc. 今回募集する D-STAR レピータ局及びアシスト局の無線設備について レピータ局は,従来のアナログ(FM)方式によるも のと,D-STAR 規格によるデジタル方式によるものがあ ります。 さらに D-STAR 規格によるデジタル方式のレピータ は,デジタル音声用(以下,DV モードという)のレピ ータ装置とデジタルデータ用(以下, DD モードという) のレピータ装置の2種類があります。また,これらの DV モードと DD モードのレピータ装置に接続してデジ タル音声やデジタルデータの信号を多重化して中継する アシスト局があります。したがって, D-STAR の規格は, レピータ局,アシスト局及びこれを利用する端末(トラ ンシーバー)で構成され,これら3つのものが統一され た規格に基づいて作られています。 これまでのアナログ(FM)方式によるレピータ局(以 下,FM レピータという)とはシステムが大きく異なり ますので,その設置方法,インターネットとの接続等に ついて D-STAR の規格にそって具体的にシステムにつ いて説明します。 ■システムの構成■ D-STAR システムは,レピータ局,アシスト局,ゲー トウェイ(GW)等を通してインターネットにも接続で き,広範囲なアマチュア局とデータ通信や音声通信がで きるシステムです。 ●レピータ局 レピータ局の装置は,デジタル音声(Digital Voice DV)モード)とデジタルデータ(Digital Data DDモード)の2種類の装置があります。具体的にこれらの 装置を使ってレピータ局を開設する場合の基本的な構成 は,次のように4種類の方法があります。 (1)DV モードのみによるレピータ局(第1図(2)DD モードのみによるレピータ局(第2図(3)DV モード+DD モードによるレピータ局(第3図第1装置として DV モード,第2装置として DD ードのレピータ装置で構成しています。 (4)DV モード+DD モード+FM レピータ(第4図●同一周波数帯で同時に送信できる周波数の数の制限 FM レピータでは,「同一周波数帯では,2 以上の周波 数を同時に送信するものではないこと」という制限があ りますが,デジタル方式については次のようになります。 (1)単独のレピータ局の場合 第4図に示すように,同一周波数帯で最大 3 周波数ま で同時に送信することができます。 しかし,この周波数のうち 1 周波数は FM レピータで なければなりません。デジタルのみの場合は,第3図基本的な構成となりますが,この構成を第1装置,第2 装置とも DV モードまたは DD モードで構成することも できます。また,この構成に第3装置を増設する場合は, FM レピータ装置を増設しなければなりません。 (2)レピータ局がアシスト局と接続している場合 レピータ局にアシスト局が接続している場合は,同一 周波数帯で最大4周波数まで同時に送信することができ 注:アシスト局は,第1図~第4図に示す構成にも接続することができます。

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An explanation of Digital Smart Technology for Amateur Radio

Page 1 Copyright ○C 2005 The Japan Amateur Radio League, Inc.

今回募集する D-STAR レピータ局及びアシスト局の無線設備について レピータ局は,従来のアナログ(FM)方式によるも

のと,D-STAR 規格によるデジタル方式によるものがあ

ります。 さらに D-STAR 規格によるデジタル方式のレピータ

は,デジタル音声用(以下,DV モードという)のレピ

ータ装置とデジタルデータ用(以下,DD モードという)

のレピータ装置の2種類があります。また,これらの

DV モードと DD モードのレピータ装置に接続してデジ

タル音声やデジタルデータの信号を多重化して中継する

アシスト局があります。したがって,D-STAR の規格は,

レピータ局,アシスト局及びこれを利用する端末(トラ

ンシーバー)で構成され,これら3つのものが統一され

た規格に基づいて作られています。 これまでのアナログ(FM)方式によるレピータ局(以

下,FM レピータという)とはシステムが大きく異なり

ますので,その設置方法,インターネットとの接続等に

ついて D-STAR の規格にそって具体的にシステムにつ

いて説明します。

■システムの構成■

D-STAR システムは,レピータ局,アシスト局,ゲー

トウェイ(GW)等を通してインターネットにも接続で

き,広範囲なアマチュア局とデータ通信や音声通信がで

きるシステムです。 ●レピータ局

レピータ局の装置は,デジタル音声(Digital Voice

(DV)モード)とデジタルデータ(Digital Data(DD)

モード)の2種類の装置があります。具体的にこれらの

装置を使ってレピータ局を開設する場合の基本的な構成

は,次のように4種類の方法があります。 (1)DV モードのみによるレピータ局(第1図) (2)DD モードのみによるレピータ局(第2図) (3)DV モード+DD モードによるレピータ局(第3図)

第1装置として DV モード,第2装置として DD モ

ードのレピータ装置で構成しています。 (4)DV モード+DD モード+FM レピータ(第4図) ●同一周波数帯で同時に送信できる周波数の数の制限

FM レピータでは,「同一周波数帯では,2 以上の周波

数を同時に送信するものではないこと」という制限があ

りますが,デジタル方式については次のようになります。 (1)単独のレピータ局の場合

第 4 図に示すように,同一周波数帯で最大 3 周波数ま

で同時に送信することができます。 しかし,この周波数のうち 1 周波数は FM レピータで

なければなりません。デジタルのみの場合は,第3図が

基本的な構成となりますが,この構成を第1装置,第2

装置とも DV モードまたは DD モードで構成することも

できます。また,この構成に第3装置を増設する場合は,

FM レピータ装置を増設しなければなりません。 (2)レピータ局がアシスト局と接続している場合

レピータ局にアシスト局が接続している場合は,同一

周波数帯で最大4周波数まで同時に送信することができ

注:アシスト局は,第1図~第4図に示す構成にも接続することができます。

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ますが,このうち1周波数はアナログ方式のレピータで

なければなりません。 したがって,基本的な構成として第5図から第8図のよ

うな組合せが考えられます。 (3)FM レピータ

第 4 図から第 8 図までの FM レピータは,デジタル方

式ではありませんので,通常の FM トランシーバーによ

る折り返し通信しかできません。 しかし,D-STAR 規格では,アナログからデジタルへ

の変換(AD 変換),デジタルからアナログへの変換(DA変換)ができるアダプターを想定しており,将来これら

のアダプターが開発された折りには,FM レピータ及び

FM トランシーバーに接続することにより,D-STAR シ

ステムとの互換性が可能となり,アシスト局との接続や

DV モードの局との通信が可能となります。 ●アシスト局

アシスト局は,レピータ局の中継を援助するための中

継局です。レピータ局からの音声及びデータ信号を受け

取り,これを多重化して目的とするレピータ局まで中継

するものです。アシスト局は,最大 4 局まで連続して中

継回線を構成することができます。そのためその設置は,

第9図に示すようにレピータ局と同一の設置場所に設置

するものと,中継ポイントに設置するものとで構成され

ることになります。 第9図は,最大数の4局までのアシスト局で中継回線

を構成している例です。 このほか,第 10 図及び第 11 図のように構成すること

ができますが,中継回線は単一回線経路に制限されてい

ます。 したがって,第 10 図及び第 11 図の「- - - - - - -」の

区間は,中継回線を構成することはできませんので設置

計画にあたってご注意ください。 ●インターネットとの接続

D-STAR システムは,レピータ局またはアシスト局に

ゲートウェイ(以下,GW という)を設置してインター

ネットに接続できます。インターネットに接続すること

により,レピータ局を利用するアマチュア局(端末局)

同士がデータ及び音声通信による広範囲な通信や,イン

ターネット網からの情報を得ることができます。レピー

タ局及びアシスト局とインターネットを接続した場合の

例を第 12 図に示します。 ここで D-STAR システムの全体的な構成の一例を,次

ページの第 13 図に示します。 図に使用している主な用語の定義は,次のとおりです。 (1)レピータエリアとは,一つのレピータ局がカバーでき

る範囲,領域をいいます。 (2)レピータサイトとは,レピータ局,アシスト局等を設

置した場所をいいます。 (3)ゾーンとは,複数のレピータ局をアシスト局で接続し

た範囲,領域をいいます。

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(4)ゾーンレピータとは,一つのゾーンの中でインターネ

ットと接続するレピータ局をいいます。 (5)ゲートウェイ(GW)とは,ゾーンレピータ局とイン

ターネットとを接続する装置をいいます。 (6)管理サーバーとは,国内の D-STAR システムのイン

ターネットへの接続とそのログを管理する 1 台だけの

サーバーをいいます。管理は JARL がおこないます。 図中,ゾーン A はレピータエリア1と2をアシスト

局で回線を結んでおり,ゾーン B もレピータエリア3

と4をアシスト局で結んでいます。また,ゾーン A と

ゾーン B は,インターネットで結ばれています。 ここで簡単にそのシステムの DV モードによる動作を

説明します。詳細は,トランシーバー等の取り扱い説明

書をご覧ください。

●レピータを使用した通信の種類

(1)レピータエリア内での通信

①特定したアマチュア局との通信

たとえば,第 13 図のレピータエリア 1 のアマチュ

ア局 a とアマチュア局 b は,レピータを利用して通信

をおこなうことができます。この場合は,あらかじめ

お互いのトランシーバーにコールサインを設定して

通信をおこなうことになります。 ②不特定の相手局との通信(CQ 呼出)

アマチュア局 a がエリア内の不特定のアマチュア局

を呼び出す場合は,トランシーバーの CQ 呼出の機能

が利用できます。 (2)ゾーンA内の通信

レピータエリア1のアマチュア局 a がレピータエリア

2のアマチュア局 c と通信する場合は,次のようになり

ます。 第 13 図で,アマチュア局 a は,レピータエリア 1 の

レピータ局及びアシスト局のコールサインとレピータエ

リア 2 のアシスト局及びレピータ局のコールサインをト

ランシーバーにそれぞれ設定するとともに,アマチュア

局 c のコールサインを設定します。

▲発売開始予定のレピータ装置(左)とアシスト局(右)装置

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第 14 図 ゾーンレピータとインターネットの接続にはゲートウェイが必要

この場合,レピータエリア1のレピータ局からアシス

ト局を経由して 10GHz(5.6GHz)帯のマイクロ波でレ

ピータエリア 2 のアシスト局まで中継して,レピータエ

リア 2 のレピータ局を経由してアマチュア局cを呼び出

すことになります。レピータエリア 2 の不特定のアマチ

ュア局を呼び出す場合は,トランシーバーの CQ 呼出の

機能が利用できます。 (3)ゾーン A とゾーン B 内の通信

ゾーンAとゾーンB内のアマチュア局が通信をおこな

う場合は,GW を介してインターネットに接続されてい

るゾーン A 内のレピータエリア 2 のレピータとゾーン B内のレピータエリア 3 のレピータを通しておこないます。 また,ゾーン A 及びゾーン B 内のそれぞれのレピータ

はアシスト局で結ばれていますから,レピータエリア 1のアマチュア局 a とレピータエリア 4 のアマチュア局 gとの交信も可能となります。 ●ゲートウェイ(GW)と管理サーバー

ゾーンレピータをインターネットに接続する場合は,

第 14 図の GW を設置する必要があり,その利用には事

前に JARL に登録が必要です。 JARL では,管理サーバーを設置して登録していただ

いた方のコールサイン及び貸与した IP アドレスを管理

し,GW を通るアマチュア局が利用登録されているか否

かを GW の機能により管理サーバーに照会し,登録を確

認の上インターネットに接続します。 また,管理サーバーは,ログの機能を有し,インター

ネットを利用するアマチュア局のコールサイン,日時な

どを自動的に記録します。 また管理サーバーでは,登録しているアマチュア局の

位置情報も管理できますので,携帯電話と同様に相手方

のコールサインがわかっていれば,その局の属するゾー

ンのレピータを経由してその局との通信も可能とします。 (1)GW の機能

GW は,D-STAR システムをインターネット等の外部

ネットワークに接続する際の境界部分に NAT(Network Address Translation)ルーター等と共に設置され,イン

ターネットアクセスやゾーン間通信に必要な処理をおこ

なうなど,次のような機能があります。 ①レピータ局,アシスト局とインターネットとの接続。 ②管理サーバーへコールサインと IP アドレスの問い

合わせをおこなう。 ③ユーザーのコールサイン,IP アドレス,日時などの

ログ情報の一時的な記録とその記録を管理サーバ

ーに送る。 ④管理サーバーとの間でユーザーのエリア情報(位置

情報)の交換をおこなう。 ⑤GW 間で音声情報及びデータ情報を転送する。

(2)管理サーバーの機能

管理サーバーは,JARL に設置し,GW との情報の交

換をおこなうことによってインターネットとの接続によ

るセキュリティの確保,ユーザーのエリア情報など次の

ような管理機能があります。 ①D-STAR システムのゾーン間通信で必要とされるコ

ールサイン,IP 情報の登録等の管理をおこなう。 ②GW からコールサイン,IP 情報の問い合わせに関す

る回答をおこなう。 ③GW からのエリア情報に基づくユーザーのエリア情

報等管理とルート情報の提供及び更新をおこなう。 ④GW で一時記録された通信ログの情報を集めて記録

する。 (3)管理サーバーへの登録

①IP アドレス 一般のアマチュア局(ユーザー)がレピータ局また

はアシスト局に接続されているインターネットを利

用して通信などをおこなう場合は,事前に JARL に登

録手続きをおこない IP アドレスの貸与を受ける必要

があります(インターネットを利用しない場合は,登

録手続きをおこなう必要はありません)。 IP アドレスの主な役目は次のとおりです。

ア 個人情報の管理 イ 音声,データ,映像等の情報の種類の把握 ウ インターネット上におけるセキュリティの確保 エ 位置情報の確保

②IP アドレスの貸与

IP アドレスは,専用のローカル IP アドレスを貸与

します。IP アドレスの貸与を希望されるユーザーは,

あらかじめ JARLに登録手続きをおこなう必要があり

ます。手続きの方法については,別に定めています。 JARL では,登録申し込みがあった場合は,その受

付けをおこない IPアドレス(1ユーザー最大 8個まで)

を貸与します。また管理サーバーにコールサインとと

もに貸与した IP アドレスを登録して管理します。 なお,登録の有効期間は 1 年間です。有効期間が満

了し,さらに継続を希望する場合は,再度,登録手続

きをおこなっていただく必要があります。この場合,

自動的に新しい IP アドレスが貸与されることになり

ますが,引き続き先に貸与された IP アドレスを希望

される場合は,その IP アドレスが貸与されます。 (4)登録手数料

JARL では,受益者負担の考えから管理サーバーの運

営などに係る経費の補填として,将来 D-STAR システム

が普及した段階で,登録手続きの際,手数料を納めてい

ただく予定です。手数料の額及びその徴収の方法につい

ては,改めてお知らせします。