J-REIT市場の概況・基礎データ
一般社団法人不動産証券化協会
2012/05/18
金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」説明資料
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(参考)投資法人(Jリート)の仕組み
出所:平成24年3月7日金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第1回)資料
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■J-REIT市場の基礎データ
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J-REITマーケットの推移(サマリー)
◆ 2001年9月にスタートしたJ-REIT市場は、昨年創設10年目を迎えた。
◆ 2007年まで順調に拡大したJ-REIT市場(時価総額約7兆円、42銘柄)は、リーマンショックによる破綻等もあり、投資口価格は大きく調整局面を迎えた。
◆ 資金調達手段の制約が多く、金融市場の収縮に脆弱であった面が露呈したが、不動産市場安定化ファンドによる信用補完や、法制度の整備により合併等の再編が進展した(42⇒33銘柄まで再編が進んだ)。
◆ 公募増資は着実に実施され、不動産投資市場の買い手として機能。2010年第2四半期に分配金の累積額が1兆円を突破。
◆ 日銀の資産買入基金の買入対象となり(3度の増枠)、国内外の投資家の安心感もあり、市場の安定化に寄与している。
◆ 賃貸市場の底打ち感から、投資口価格は回復局面にあったが、東日本大震災・原発問題(J-REIT保有物件の影響は軽微)や 欧州債務危機の影響を受け、やや低迷。本年2月の日銀金融緩和以降、投資口価格は持ち直し傾向。2012年4月のIPO銘柄(約4年半ぶり)を加え、現在34銘柄となり、時価総額は約3.5兆円。
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2003/3/31 2004/3/31 2005/3/31 2006/3/31 2007/3/31 2008/3/31 2009/3/31 2010/3/31 2011/3/31
東証REIT指数 TOPIX
世界金融危機による
大幅な調整・低迷
※ NCR:ニューシティ・レジデンス投資法人。2008年11月 東京地裁に民事再生法の適用を申請。
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J-REIT市場のこれまでの10年
海外資金の流入
リーマン・ショック
NCR(*)の破綻
官民ファンド合併制度改善
リート間合併進展
米サブプライム問題
金商法施行
日銀買入基金創設
東日本大震災
投資信託の資金流入
← 2001/9初上場から順調に市場規模が拡大→ ←回復局面?→
2010/6分配累計1兆円
地銀・投信の資金流入
(出所)公表資料よりARES作成
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J-REITの資産規模・時価総額・銘柄数の推移
2012年4月のIPO銘柄(約4年半ぶり)を加え、現在34銘柄となり、時価総額は約3.5兆円。
(出所)公表資料よりARES作成
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2002/1 2003/1 2004/1 2005/1 2006/1 2007/1 2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1
J-REITの資産規模・時価総額等の推移(兆円:左軸)
その他
商業・店舗
住宅
オフィス
時価総額
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J-REIT市場全体の累積分配金と利回り
J-REITは、創設以来、安定した配当を行い、投資家の資産形成に寄与している。
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2001Q12002Q12002Q22002Q32002Q42003Q12003Q22003Q32003Q42004Q12004Q22004Q32004Q42005Q12005Q22005Q32005Q42006Q12006Q22006Q32006Q42007Q12007Q22007Q32007Q42008Q12008Q22008Q32008Q42009Q12009Q22009Q32009Q42010Q12010Q22010Q32010Q42011Q12011Q22011Q32011Q42012Q1
累積分配額(百万円・右軸)
簿価分配金利回り(年率・左軸)
2010年第二四半期には累積分配金が1兆円を突破
(出所)公表資料より
AR
ES作成
(※)
※簿価分配金利回り=四半期の分配金合計/分配に対応する出資総額合計(簿価)
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J-REITが投資・運用する不動産のリターン推移
■ J-REITの保有不動産は、市場競争力のある良質な物件であり、安定的なインカムゲインを獲得してきている。
■ キャピタルリターンは多様な要因により変動するが、安定的なインカムがトータルリターンの変動を抑えることが不動産投資の特徴
-5.0%
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Income Capital Totalインカムリターン キャピタルリターン トータルリターン
(出所)ARESが提供するJ-REITの保有不動産のパフォーマンスを示した指数(四半期ベース)
ARES J-REIT Property Index
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J-REITの運用資産にかかる稼働率推移
■J-REITの運用資産は、市場平均を上回る安定的な稼働率等により、強固なキャッシュフローを生み出し、安定的な配当につながっている。
85.0%
90.0%
95.0%
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200204
200210
200304
200310
200404
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200504
200510
200604
200610
200704
200710
200804
200810
200904
200910
201004
201010
201104
物件稼働率(J-REIT VS 市場平均) 東京
市場平均稼 率(東京都心5 )J-REIT物件稼働率(東京23区)
85.0%
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200405
200410
200503
200508
200601
200606
200611
200704
200709
200802
200807
200812
200905
200910
201003
201008
201101
201106
物件稼働率(J-REIT VS 市場平均) 大阪
市場平均稼働率(大阪ビジネスエリア)
J-REIT物件稼働率(大阪市)
(出所) 三鬼商事公表空室率データ及びJ-REIT開示データよりARES作成
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日本の不動産投資市場におけるJ-REIT
J-REIT35銘柄8兆円
私募ファンドその他25兆円
不動産投資・証券化市場 33兆円
法人所有不動産490兆
大手不動 会社 連結B/S賃貸等不動 (億円)
時価 簿価
三菱地所 45,493 26,158三井不動産 28,276 19,869住友不動産 24,581 18,985野村不動産 7,044 6,920東京建物 4,993 4,379東急不動産 3,932 3,453
114,319 79,764
…
大手不動産会社賃貸物件時価11兆円
生損保その他
その他法人
(出所)国民経済計算年報、国土交通省推計、プルデンシャルリアルエステートインベスターズ推計、開示資料等をもとにARES作成
収益不動産約 210兆円
■ J-REITは、市場創設10年で日本の収益不動産の約4% (約8兆円)を保有■ 大手不動産会社の保有賃貸不動産(11兆円)と比較しても、遜色ない規模に成長しつつある
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J-REITの物件取得実績と取引シェア
■J-REITは、不動産売買市場の継続的な買い主体として、高いシェアを有しており、資産デフレ防止にかかる重要な役割を担っている。
1,314 1,927
5,6286,995
12,088
19,489
14,662
10,087
2,466
5,3767,1449%
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2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
J-REITの物件取得額(億円:左軸)と取得割合(%:右軸)
取得額 上場企業買主に占めるJ-REITの割合
※ 「上場企業買主に占めるJ-REITの割合」:開示されている上場企業の固定資産「取得」金額等に占めるJ-REITの取得金額等の割合(出所)都市未来総研「不動産売買実態調査」、投資法人開示資料を基にARES作成
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J-REITの資金調達推移と資産取得推移
■J-REITの資金調達は、借入や投資法人債等に限定され、金融資本市場の変調の影響を受けやすく、投資法人債償還や資産取得等に支障をきたす可能性がある。
1,311 765 1,599 1,2532,578
5,964
666309
1,375 2,580
4,489
3,938
3,974
1,333 631 1,2152,237
951
559
1,142 22585
10680 250
400620
2,100
755
3,226
50
1351,795
670
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4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ~2012/3
J-REIT資本市場調達の推移(億円)
IPO PO Others Bond
1,314 1,9275,628 6,995
12,088
19,48914,662
10,087
2,4665,376 7,144
-5,000
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
J-REITの物件取得・譲渡額の推移(億円)
譲渡額 取得額
(※)売買実行日ベース. 合併による資産の受入れは含まない (出所)投資法人開示資料を基にARES作成
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■各国のREIT市場・制度等
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世界のREIT 国別シェア、市場の時価総額及び銘柄数の推移
■世界24か国がREIT制度を導入。 J-REITは時価総額で4位だが、後発の英国やシンガポール等の追い上げをうけている。
Global REIT Markets SummaryNumber of
Since External Internal REITs Oku-JPY % of Total RankAsia-Pacific
Japan J-REIT 2000 35 35,366 5.3% #4Australia A-REIT 1971 56 67,530 10.1% #2Singapore S-REIT 2002 24 24,125 3.6% #7Hong Kong HK-REIT 2003 7 10,378 1.6% #9Malaysia M-REIT 1989 14 2,970 0.4% #14New Zealand PIE 2006 9 2,552 0.4% #15Thailand PFPO 1997 31 2,381 0.4% #16Taiwan T-REIT 2003 8 1,726 0.3% #18South Korea K-REIT 2001 6 165 0.0% #24
AmericasU.S. US-REIT 1960 157 355,589 53.4% #1Canada C-REIT 1994 34 30,347 4.6% #6Brazil FIBRAS 1993 50 3,776 0.6% #13Mexico FII 2004 1 548 0.1% #22
EMEA: Europe, Middle East, and AfricaFrance FR-REIT 2003 43 60,436 9.1% #3UK UK-REIT 2007 25 34,357 5.2% #5Netherlands NL-REIT 1969 6 10,934 1.6% #8Turkish REIC 1995 21 6,876 1.0% #10Belgium SICAFI 1995 15 6,484 1.0% #11South Africa PUT 2002 5 4,483 0.7% #12Italy SIIQ 2007 2 2,203 0.3% #17Germany G-REIT 2007 3 1,163 0.2% #19Bulgaria BG-REIT 2003 60 835 0.1% #20Greece REIC 1999 3 552 0.1% #21Israel REIF 2005 2 220 0.0% #23
24 617 665,996 100.0%
March 31, 2011Mgmt. Market Capitalization
(出所)公表資料よりARES作成
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各国REIT制度の比較
■各国のREITでは、 J-REITと異なり、海外不動産の運用資産への組入れを通じて、多様な投資機会を提供している。また多様な資金調達・資本政策にかかる制度が整備され金融資本市場の状況により適切な資金調達・資本政策が実施されている。
日本 米国 豪州 フランス 英国 シンガポール
香港
時価総額(注1)
3.5兆円 35.6兆円 6.8兆円 6.0兆円 3.4兆円 2.4兆円 1.0兆円
銘柄数 35 157 56 43 25 24 7
SPC等を通じた不動産の取得
制限有(注2)
可 可 可 可 可 可
ライツオファリング(注3)
不可 可 可 可 可 可 可
転換社債(注4)
不可 可 可 可 可 可 可
自己株(投資口)取得
不可 可 可 可 可 可 可
主要各国のリート制度の比較
注1: 時価総額、銘柄数は、2011年3月末時点。 注2:投信法上、同一法人の発行する株式の投資法人による取得割合の制限(50%超の取得不可)がある(投信法第194条、投信法施行規則第221 条)。投資法人にかかる税務上の導管性要件により、他の法人の発行済株式又は出資の総数等の百分の五十以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有することができない(租税特別措置法第67 条の15 第1項第2号へ)。 注3:新株(投資口)予約権無償割当増資 注4:新株 換社債型新株(投資口)予約 付社債
(出所)ARES「不動産証券化ハンドブック」、「J-REIT と世界のREIT 市場・制度の比較」新日本有限責任監査法人四釜宏吏
(補足)各国のREIT制度について:米国では、州法等に準じて設立された法人・トラスト等が税法上の要件を満たすことで、導管性を享受する。米国には、税法以外にREIT特有の法律はない。オーストラリアのA-REIT制度は、税法・会社法・トラスト法等により横断的に規制されている。A-REITは、トラストを器とするクローズドエンド型のファンドであり上場・非上場が認められている。フランスでは予算法(11条)に基づき、SIIC制度が導入されている。SIICは株式会社に上場する通常の不動産会社のうち、一定の要件を満たすものがSIICに転換することにより税務上導管性要件を享受できる。イギリスのUK-REIT制度は、財政法により創設され、上場が義務付けられたクローズエンド・法人型である。シンガポールのS-REIT制度は、集団投資スキーム法、会社法等により、規制される。S-REITは、法人・トラスト双方の形態がとり得るが、現行すべてトラスト形態のREITとなっている。香港のHK-REIT制度は、特別法規として不動産投資信託規則に基づいており、信託型クローズエンドファンドである。
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日米REITの用途別割合の比較 (多様な投資機会の提供)
■米国リートは、商業不動産や住宅に加えて、ヘルスケア・倉庫・森林等様々な資産を運用しており、多様な投資機会を投資家に提供している。
■各国のリートでは国内不動産のみならず、海外不動産を運用資産に組み込み、アジア等の成長を取り込みたいといった投資家ニーズにこたえている。■こうした取組みが、リート時価総額等拡大の要因となっている。
(出所)ARES「Jリート市場拡大策と東京市場のアジア拠点化に関する研究会報告書」
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■(参考)投資信託・投資法人法制の見直しに係る一般社団法人不動産証券化協会からの要望事項
(平成24年3月7日金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第1回)資料より抜粋)
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(参考)投資信託・投資法人法制の見直しに係る一般社団法人不動産証券化協会 要望事項
投資信託・投資法人法制の見直しに係る一般社団法人不動産証券化協会 要望事項
1.投資対象資産の多様化■他法人の株式の取得割合制限の撤廃海外不動産・インフラ等への投資等の障害となることが想定される投信法上の株式の取得割合制限の撤廃が必要。
2.資金調達手法の多様化等■コミットメント型新投資口予約権投資主割当増資(ライツ・オファリング)を可能とする改正ライツ・オファリングは、既存投資主の公平な取扱いに配慮した増資手法として、また、信用収縮時等の増資を可能とする手法として、株式会社等では急速に制度整備が進んでいる。
■自己投資口取得を可能とする改正自己投資口取得により、投資口価格の安定性向上等が期待され、結果として、国内外の資金の不動産投資市場への円滑な導入が図られる。
■減資制度の導入Jリートの場合、運用資産にかかる売却損失・減損損失計上等を起因とする欠損を、減資により填補することができないため、配当ができず、株価が低迷することにより増資等の障害となるおそれがある。なお、株式会社には減資制度がある。
■転換社債型新投資口予約権付投資法人債(CB)の発行を可能とする改正
3.法制に関連が想定される税制改正事項■税務と会計との取扱いの差異に起因する二重課税を防止する手法の導入■一定程度の内部留保を可能とするための措置等の導入(投資法人が買換特例等を適用した場合の導管性要件の見直し措置)
4.その他■届出事務手続き等にかかる規制緩和等
(*)平成24年3月7日金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第1回)資料