Download - 数値シミュレーションmse/uploads/2014/09/4438b035dad...4 空間の離散化 19 位置 温度T x 空間をΔxで離散化. 微小区間の温度を 代表点の温度で近似.
1
数値シミュレーション
2014年度 第2回
2014年10月2日
永野 (熱流体システム研究室)
本日の講義及び演習
• 偏微分方程式の偏微分項をコンピュータで扱えるようにする
– 離散化(差分化)
• テイラー展開の利用
– 1階微分項に対する差分式
– 2階微分項に対する差分式
• 1次元熱伝導方程式に適用して差分式を導出
• Excelを利用した温度変化シミュレーション
2
熱の伝わり方(伝熱モード)
熱伝導・・・物質(固体・流体)内の熱移動
3
重要!
熱伝達(対流)・・・流体と物体間の熱移動
輻射(放射)・・・電磁波として移動する熱移動
流体
電磁波
1次元(x方向のみ)を考える
温度差と温度勾配
熱移動量の表現
]J[dQ :熱移動量
]W[J/s][ Qd :単位時間当たり
]mW[ 2
dAQdq
:単位時間 単位面積当たり
熱流束(heat flux)
]K[12 TTdT :温度差
]K/m[dxdT
:温度勾配=単位距離当たりの温度差
熱伝導方程式の導出
4
重要!
x
1T
dx
2T
距離
面積dA
熱の移動方向はx方向を正とする熱移動量dQ
フーリエの法則熱流束(単位時間 単位面積当たりの熱移動量)は温度勾配に比例する
dxdTq
比例係数λを 熱 伝導 率(thermal conductivity)と呼ぶ
熱がxの正方向に流れるのはT1 > T2の時,すなわちT2-T1 < 0となる時である.よって負記号が付く.
①
フーリエの法則
5
復習
x
1T
dx
2T
距離
面積dA
熱移動量dQ
温度勾配 熱流束
温度勾配 と 熱流束 の正負
6
1T
2T
x
0dxdT 0q
0dxdT
0q
q
1T
2T
q
1T
2Tq
0dxdT 0q
q0
dxdT 0q
+
+
-
-
2T1T
復習
2
フーリエの法則
dxdTq
より,熱伝導率λの単位は W/(m・K) となる
]K/m[dxdT
温度勾配
]mW[ 2
dAQdq
熱流束
熱伝導率の単位
7
復習 熱伝導率の影響
• 物質を挟んだ点1と点2の間にある温度差があったとする.
熱伝導率が大きいと移動する熱量は【大きくなる】
熱伝導率が小さいと移動する熱量は【小さくなる】
8熱伝導のしやすさ(熱の流れやすさ)の指標
dxdTq
(※大きいか小さいかを問うているので、スカラー量すなわち絶対値で考えよ!)
1T
2Tq q+ +
2T
1T
復習
記入せよ
熱の出入りと温度変化の関係
9
・熱を与えられるとそれに比例して温度が上昇・熱を奪われるとそれに比例して温度が下降
• 温度変化の基本原理
TmcQ もらった
熱量質量 比熱
温度上昇
・すべてはこの原理に基づいている
・「温度」という物理概念と、「熱量」という物理概念を結び付ける法則=原理
復習 熱の出入りがある棒の温度変化を考えてみる
10
この棒には,左からq12の熱量が入り,右からq23の熱量が出ていく
熱量収支
2312 QQQ
この熱量収支により棒の中点の温度がΔT2変化する
2TmcQ
23122 QQTmc ③
ある時点の温度T1, T2, T3が与えられたとき、Δt秒後の温度T2’を求めよ
Δx
1T 2T 3T
12Q 23Q
T2’=T2+ΔT2 なので,
ΔT2が分かればよい
復習
熱の出入りをフーリエの法則を使って表す
11
dxdTq
①式を変化量で表すと
xT
AtQ
dAQdq
xTAtQ
xTTAtQ
1212
xTTAtQ
2323
④
⑤
Δx
1T 2T 3T
12Q 23Q
復習
W/m2W = J/s
m2 s
J
①
温度変化を求める
12
④式と⑤式を③式に代入
xTT
xTTAtQQTmc 2312
23122
x
TTTAtx
TTTAt 123123 22 ⑥
棒を三次元的に考えると
Δy
Δx
Δz
A zyA
棒の質量は【密度ρ】×【体積】
⑦
⑧zyxm
復習
3
温度変化を求める
⑦式と⑧式を⑥式に代入
x
TTTtTcx 1232
2
2123
22
xTTTtTc
⑨
2123
22
xTTT
ctT
Δx
1T 2T 3T
12Q 23Q
復習
x
TTTzytTczyx 1232
2
棒の中点の温度変化を知ることができた!
13
一次元熱伝導方程式の導出
14
⑨式を変形すると
2123
22
xTTT
ctT
21232 2
xTTT
ctT
⑩
2123
22
2 2x
TTTxT
⑨
tT
tT
2
復習
温度は一般的に位置と時間の関数なので, 0
limt
温度の二階偏微分項を表す
0limx
一次元熱伝導方程式の導出
15
結果、⑩式は以下の様な偏微分方程式となる
2
2
xT
ctT
一次元熱伝導方程式
⑪
温度Tの時間tによる微分→ 温度の時間変化
温度Tの空間xによる2階微分→ 「温度の勾配」の勾配
比例する
復習
つまり、温度勾配が大きく変化する場所では温度の時間変化が大きい… ということ!
式を比較してみよう
16
21232 2
xTTT
ctT
⑨
連続式(熱伝導方程式)
離散式(温度変化)
極限化
0,0lim
xt
2
2
xT
ctT
⑪
Δx
1T 2T 3T
12Q 23Q
離散化(隣点の温度と分割幅Δx,時間刻みΔtを利用)
復習
数値シミュレーションの実際
• 対象となる現象を定式化
– 常微分方程式
– 偏微分方程式
方程式に現れる物理量は空間および時間に対して連 続 的
コンピュータ上では物理量の 離 散 的(デジタル的)な値しか扱えない
17
変換(離散化)が必要
復習 時間の離散化
18
実現象では温度が連続的に変化
0ttt
tt 2tt 3
シミュレーションでは,時間的に離散(とびとび)
時間
連続する時間をΔtで離散化.
5℃(固定)5℃(固定)
時間ステップ
時間t の変化によって…温度T
位置
復習
4
空間の離散化
19
位置
温度T
x
空間をΔxで離散化.微小区間の温度を代表点の温度で近似.
実現象では温度が連続的に分布
シミュレーションでは,空間的に離散(とびとび)
5℃(固定)5℃(固定)
節点
時間t=0 のとき
復習 数値シミュレーションの限界
• とびとびの値を使って変化を模擬しても、極限的には連続的な空間変化・時間変化へ近づけることが出来る
– 空間間隔を無限小にする・・・・・
– 時間分割を無限小にする・・・・・
0limx
0limt
・ 実際には限度がある・コンピュータの計算能力・ディスク容量・メモリ容量・計算時間の制限
20
偏微分方程式を離散的な式へ変換
• コンピュータで扱えるように,「連続的な」式(偏微分法方程式)を「離散的な式」(差分方程式)に変換する
– 微小変量 → 有限の(具体的な)小さな値の変量
– 微分演算 → 割り算 に変換
– 積分演算 → 掛け算 & 足し算 に変換
• 変換は「近似」であるから,連続的な式との「誤差」が生ずる
• 離散的な式を使うと,プログラム上の四則代数演算で解くことが出来る
21
2
2
xT
ctT
変換対象は微分項
• 熱伝導方程式
22
時間tに関する一階偏微分項
空間xに関する二階偏微分項
偏微分項を離散的に表したい
時間的・空間的な隣接点で表現できないか?
コンピュータでは扱えない
・・・ 一次元熱伝導方程式
n1n t1nt t
偏微分方程式の差分化3次の項2次の項1次の項
テイラー展開
• 偏微分の差分化は「テイラー展開」を用いて行う
• テイラー展開 (Taylor expansion) とは・・・
– ある関数の従属変数の微小変量に対する関数の値の変化を、その関数の微係数の級数で表すこと
24
jjj
jj xux
xux
xuxuu 3
33
2
22
1 )(!3
1)(!2
1
33
32
2
2
!31
!21 dx
xudx
xudx
xuxudxxu
• 微小変量 dx → 有限変量 x に置き換えると
重要!
5
テイラー展開
25
• テイラー展開は、高次の項を考慮するほど漸近していく
jj uu 1
jjj x
uxuu
1
jjjj x
uxxuxuu 2
22
1 )(!2
1
jjjjj x
uxxux
xuxuu 3
33
2
22
1 )(!3
1)(!2
1
・・・高精度の近似
高次の項ほど小さな値を取る
粗い近似近似
テイラー展開の直観的な意味
• テイラー展開の直観的な意味
26
j 1jx
jux
u:連続分布変量 u3次の項2次の項1次の項
jjjjj x
uxxux
xuxuu 3
33
2
22
1 )(!3
1)(!2
1
1ju
節点番号・・・ 1j
xu
2
2
xT
ctT
偏微分の差分化
27
時間tに関する一階偏微分項
空間xに関する二階偏微分項
3次の項2次の項1次の項
jjjjj x
uxxux
xuxuu 3
33
2
22
1 )(!3
1)(!2
1• テイラー展開
• 熱伝導方程式
テイラー展開を用いて、偏微分項を離散的な値で近似したい!
一階の差分式の作り方 (その1)
隣接する点で偏微分項を近似する
テーラー展開より、
jjj
jj xux
xux
xuxuu 3
33
2
22
1 )(!3
1)(!2
1
)( 21 xO
xuxuu
jjj
28
隣接する点
1次精度の差分法(First-order accurate difference scheme)
2次以降の項を無視
近似によって生じる誤差項 28
一階の微分項を近似できた!
2
2
xT
ctT
)(1 xOx
uuxu jj
j
一階の差分式の作り方 (その2)
29
jjjj x
uxxuxuu 2
22
1 )(!2
1
)(1 xOxuu
xu jj
j
)( 21 xO
xuxuu
jjj
ΔxのかわりにマイナスΔxを用いれば…
前進差分 (Forward difference)隣り合う離散的な点の
物理量によって,一階の微分項を近似
j1j x1jx x
前進後退
後退差分 (Backward difference)
)(1 xOx
uuxu jj
j
一階の差分式の作り方 (その3)
– 前進差分と後退差分の差を取る
30
jj
jj xux
xuxuu 2
22
1 )(!2
1
jj
jj xux
xuxuu 2
22
1 )(!2
1
正方向
負方向
差を取る
)(2
211 xOxuu
xu jj
j
3次以降の項を無視
2次精度の差分法(Second-order accurate difference scheme)
2次の項まで考慮!(但し相殺してゼロ)
j1j x1jx x
中心中心差分 (Central difference)
6
一階の差分式の作り方 (まとめ)
• 3種類の一階差分法
31)(
2211 xO
xuu
xu jj
j
中心差分 2次精度
)(1 xOxuu
xu jj
j
1次精度
1次精度前進差分
後退差分
)(1 xOx
uuxu jj
j
j 1j1j
)(xuu
x
前進差分
後退差分
中心差分
31312
2
xT
ctT
2
2
xT
ctT
二階の差分式の作り方
• 二階の差分式
– 一階の前進差分と後退差分の和を取る
正方向
負方向
jj
jj xux
xuxuu 2
22
1 )(!2
1
jjjj x
uxxuxuu 2
22
1 )(!2
1和を取る
)()(
2 22
112
2xO
x
uuu
xu jjj
j
3次以降の項を無視
2次精度の差分法
近似できた!
j1j x1jx x
前進後退
時間に関する差分式
33
前進差分
後退差分
)(1
tOt
uutu nnn
)(1
tOtuu
tu nnn
n は現在の時間ステップn+1 は次の時間ステップn-1 は前の時間ステップΔt は微小時間間隔
)(tuu
n1n 1n
nu 1nu
t時間
t
時間ステップ (※ 次数 ではない)
0t tt tt 2
tt 3
位置
時間
x
• 時間の差分化
– 「時間的に隣接」する点との差分を考える
時間
温度
温度
時間的空間的に連続な温度分布
34
温度T
時間t
位置x
温度Tは場所xと時間tに依存する関数 T(x,t)
2
2
xT
ctT
1次元熱伝導の差分方程式(その1)
• 熱伝導方程式を差分化する場合
– 時間に関しては・・・前進差分
– 空間に関しては・・・二階差分
35t
TTtT n
jnj
1
211
2
2 2x
TTTxT n
jnj
nj
前進差分 二階差分
n1n t1nt t
j1j x1jx x
近似 近似
時間ステップ (※ 次数 ではない)節点番号(空間分割)
2
2
xT
ctT
1次元熱伝導の差分方程式(その2)
• シミュレーションに用いる差分式
36
tTT
tT n
jnj
1
211
2
2 2
x
TTT
xT n
jnj
nj
211
1 2x
TTTct
TT nj
nj
nj
nj
nj
・・・・・・・・・・ 各項の差分化
・・・・・・・・・・ 微分方程式の差分化
・・・・・・・・・・ 未知数の分離
現時点 時間ステップn(既知)
次の時間ステップn+1(未知)
n
jnj
nj
nj
nj TTT
xt
cTT 112
1 2
7
現時点 時間ステップn(既知)
2
2
xT
ctT
時間はΔtで離散化次の時間ステップn+1に対して前進差分
n1n t1nt t
1次元熱伝導の差分方程式(まとめ)
• シミュレーションに用いる差分式
37
次の時間ステップn+1(未知)
n
jnj
nj
nj
nj TTT
xt
cTT 112
1 2
コンピュータで扱える式になった!現時点での値がわかれば未来の値を計算できる!
空間はΔxで離散化両隣の節点j-1, j+1を用いて中心差分
j1j x1jx x
コンピュータで扱えない…
演 習 課 題
現在の時間ステップn(既知)
次の時間ステップn+1
(未知)
演習1: 1次元熱伝導
• 初期(t=0,n=0)において下図の様な温度分布で
あったとする.左右端の温度は変化しないとして,真ん中の点の温度変化をExcelを用いて時間ステップn=100 (時間 t=1.00) まで求めよ.
– 時間ステップ: Δt = 0.01– 節点間の距離: Δx = 1– 1 c 5℃ 5℃
20℃
Δx
jj-1 j+1
39
壁の温度(固定)
壁の温度(固定)
n
jnj
nj
nj
nj TTT
xt
cTT 112
1 2
時間ステップ 位置x の温度Tx [℃]n Tj-1 Tj Tj+1
0 5 20.00 51 5 ? 52 5 ? 53 5 ? 5
… … …
演習1: Excelでの計算のやりかた
5℃ 5℃
20℃
Δx
jj-1 j+1
壁の温度(固定)
壁の温度(固定)
40時間
位置
下方向に時間軸、左方向に空間軸をとったときの各位置の温度Tjをまとめる
計算対象であるTjは、過去時点の温度Tj-1, Tj, Tj+1を用いて算出する
n
jnj
nj
nj
nj TTT
xt
cTT 112
1 2
演習1: データのまとめかた
41
• 見やすくまとめること
– 他の人が見ても理解できるように、重要な情報を記載する
– 誰がいつ作ったのか? 何のためのデータか?
– 計算条件はどれか? 解(結果)はどれか?
• 後で容易に変更できるように作ること
– 将来、計算式や条件を変更することを事前に想定し、
容易に変更できるよう工夫して作成する
– Excelでは絶対参照/相対参照などを有効に活用する
本講義・本課題のみの注意事項ではなく、今後のあらゆるデータ整理・プログラムコード作成の際に気をつけておくべきこと
重要!
時間ステップ 時間 [sec] 位置x の温度Tx [℃]n t Tj-1 Tj Tj+1
0 0.00 5 20.00 51 0.01 5 19.85 52 0.02 5 19.70 53 0.03 5 19.55 54 0.04 5 19.41 55 0.05 5 19.26 56 0.06 5 19.12 57 0.07 5 18.98 58 0.08 5 18.84 59 0.09 5 18.70 5
10 0.10 5 18.57 5…100まで … … … …
演習1: Excelシートの例
解析条件
支配方程式 熱伝導方程式
差分法前進差分(時間)中心差分(空間)
節点間距離Δx 1時間ステップΔt 0.01比熱 c 1密度 ρ 1熱伝導率 λ 1
数式も載せておけば、見直しが容易(必須ではない)
1次元熱伝導の解析 ←1番上の行にタイトルを入れる習慣をつけよう(Sheet名にも)
境界条件
左端 j-1 温度固定
5右端 j+1 温度固定
5
n
jnj
nj
nj
nj TTT
xt
cTT 112
1 2
??????????
…
計算させるセルでは解析条件セルを参照する
8
演習1: グラフも書いてみよ
0
5
10
15
20
25
0 0.5 1 1.5 2
X
Tem
per
atu
re,℃
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.00
熱伝導の特性(温度の平滑化)が再現できる 44
時間
壁の温度(固定)
壁の温度(固定)
初期温度
節点間の線は、近似曲線で表示
時間的空間的に連続な温度分布
45
温度T
時間t
位置x
温度Tは場所xと時間tに依存する関数 T(x,t)
一次元熱伝導方程式
46
2
2
xT
ctT
温度Tの時間tによる微分→ 温度の時間変化
温度Tの空間xによる2階微分→ 「温度の勾配」の勾配
遅い
速い
ある場所における温度の時間的な変動量は,その場所における2階微分値(とんがり具合・凹凸具合)に比例している
演習2: 差分法
• 正方向および負方向のテイラー展開より以下を求めよ
– 空間一階偏微分項に対する前進差分
– 空間一階偏微分項に対する後退差分
– 空間一階偏微分項に対する中心差分
– 空間二階偏微分項に対する二次差分
(講義中に説明した内容の復習)
• A4レポート用紙.手書き.来週授業開始時に提出
47
本日のまとめ 【答案用紙に書いて提出】
48
• 微分方程式中の微係数を隣接する点で近似することを 化という
• ①化には 展開を利用する
• 位置j点における物理量uのxに関する微分を以下の3つの方式により表せ
– uj+1とujを用いて
– ujとuj-1を用いて
– uj+1とuj-1を用いて
• ③,④,⑤をそれぞれ, 差分, 差分, 差分とよぶ
④
①
②
jxu
jxu
③
jxu
⑤
⑥ ⑦ ⑧