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 新入生の皆さんには、言語学という言葉は初耳かも知れませんね。言語は日本語にせよ英語にせよ、普段何気なく使っていますが、色々調べてみると興味深い事柄が見えてきます。このコーナーではそれを出来るだけ分かり易くお伝えして、更に調べてみたい方には本学図書館所蔵の参考文献をご紹介しています。なお、過去の掲載分は図書館のホームページで読むことが出来ます。

Q:いよいよ新学期が始まりました。この連載も今回から新しいテーマに入るということですが。

A:今回から言語の歴史についてお話ししようと思いますが、最初ですので軽い話題からにしましょう。普段日本語を話していて、何か変化に気づくことはありますか?

Q:そうですね、「全然大丈夫です」のように「全然」を肯定文で使うことには違和感を覚えます。

A:「全然」という副詞は「全然~ない」というように否定表現と呼応するのが普通ですからね。ただ夏目漱石の『坊ちゃん』の中で「いったい生徒が全然わるいです」という表現が出てくるので、明治の頃は「全面的に」という意味で肯定表現でも使われていたようです。『広辞苑』の「全然」の項にも「(俗な用法で、肯定的にも使う)全く。非常に。「―同感です」」という記載があります。しかし、私の直観でもやはり「全然大丈夫です」という表現には抵抗がありますね。この表現を正しいとするか間違っているとするかは、世代によっても差があるでしょう。若い世代の人たちの多くは「全然大丈夫です」は全

・然・

問・

題・

な・

い・

と感じるかもしれません。そうすると何十年か後には正用法として定着する可能性はあります。

Q:レストランで隣にいた中学生くらいの女の子が「これ普通においしい」と言うのを聞いたときは、「並み程度の味で、特別おいしいわけではない」という否定的な意味だと思いましたが、よく聞いてみるとどうやら肯定的な意味で使っていたのです。

A: 「食べる前はどんな味か想像がつかなかったけど、食べてみたら並みの水準に達した味で、不味くはない」と言うことなのでしょう。「普

通においしい」という表現は誤用かもしれませんが、言おうとしていることは理解できますね。

Q:まったく理解できないのが新語とか流行語ですね。2015年の新語・流行語大賞で大賞を獲得した「爆買い」はなかなかうまい表現だなと感心しましたが、候補に挙がっていた「ラブライバー」とか「フレネミー」という語は聞いたこともなかったですし、意味も推測できませんでした。

A: 新語も幅広い世代で理解、使用されるものでなければ定着するのは難しいでしょう。ちなみに『三省堂国語辞典』の第6版(2008年)と第7版(2014年)をざっと見比べると、第7版で新しく登場した語には「ツイッター」「フェイスブック」「スマートフォン」などの情報通信用語や「TPP」「一丁目一番地」など政治経済に由来する語、また流行語から定着した「アラサ―」「アラフォー」「婚活」「育メン」などがあります。その他「iPS細胞」「朝ドラ」「イベリコ豚」などが新たに加わった語です。反対に第7版で姿を消した語には「iモード」「Gコード」「ウォッシャブル」「ワン切り」などがあります。

Q: 辞書の見出し語を見比べるだけで時代の流行り廃りが感じ取れますね。では参考文献をお願いします。

A: 新語の話で終わりましたので、『見やすいカタカナ新語辞典』、三省堂編修所編、三省堂(2014年)です。

 現代は情報化社会ですから、まさに溢れんばかりのカタカナ語が出回ります。そのような中で指針となるのが本書です。言語の元の綴りやABC略語も載っていて便利に使えるので、日頃から気になっている用語を調べてみてはいかがでしょうか。なお、本書は貸出が出来ませんので、館内でご利用下さい。請求記号:813.7 || Miya 資料ID:599322

 にゅうがく なおや(福井工業大学准教授・英語学・英語史)

ふじい たつや(司書・課長補佐・アジア関係図書館)

入学直哉、藤井達也

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図書館員の文献紹介と

     資料の活用

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