波面制御による 半導体ナノ粒子への 光アドレッシング
東大院総合
竹内誠,豊浜弘海,久我隆弘
19pAK-3
【背景】 半導体ナノ粒子について 半導体ナノ粒子
(コロイド状量子ドット)
コロイド状量子ドット1個からの蛍光は単一光子 [P. Michler et al., Nature 406, 968 (2000), B. Lonis et al., Chem. Phys. Lett. 329, 399 (2000).]
直径 6nm程度
• 室温動作 ⇔ エピタキシャル量子ドット • 蛍光波長可変 (波長400nm~20μm, 通信波長帯もカバー) ⇔ イオン、原子、分子、NV中心
• 低光強度動作( ~1 kW/cm2 @波長532nm) ⇔非線形光学結晶
640nm 532nm
蛍光 吸収
波長
試料の作成方法
直角プリズム
ピペット
トルエンは揮発
ドット
ドットがドープ されたPMMA 薄膜が完成
g (重力方向)
50μm
蛍光の動画
1. ドットのトルエン溶液 2. PMMA(アクリル樹脂)の粉末
3. トルエン
光るON状態と光らないOFF状態の行き来 (ブリンキング)から、これらの発光点がドット1個だと確認できる
【これまで】 簡便な単一光子源の開発
3軸 ステージ
シングルモード ファイバー 励起光:
波長532nm, CW 2mW
He-Neレーザー (波長633nm)
対物 レンズ
SPCM-a
SPCM-b
時間デジタル変換器(TDC)
• 市販の顕微鏡を利用 • 蛍光をシングルモードファイバーに導入
BS CCD カメラ
簡便な単一光子源を開発した
【今回】 波面制御による光アドレッシング 「簡便な単一光子源」の改良として、光学系に液晶面を利用したブレーズド回折格子を組み込んだ
ブレーズド構造の場合は、 回折光が1次に集中
Φ 𝑥, 𝑦 = 2𝜋𝑥
Λ𝑥+
𝑦
Λ𝑦 回折光
𝜃𝑑 強めあう干渉の一般式
Λ sin 𝜃𝑑 = 𝑚𝜆
m=+1 2𝜋
0
入射光
位相 シフト
Λ
改良により、格子の間隔と方向を変えて光路調整を行える
• 可動機構を減らせる(機械的安定性) • 観測するドットを切替可能にする(褪色対策)
実験配置図
PBS
PBS PC
• 光学テーブル上に配置。 • LCD(液晶ディスプレイ)の透過率分布をPCで与え、LD光の強度分布を変調→光で液晶面(OALCD) での位相シフト量を変調
λ/4
CCD カメラ
励起光: 波長593nm, CW 10mW (強度10kW/cm2)
対物レンズ f = 2.0mm
He-Ne レーザー (波長 λ=633nm)
LD LCD
空間光変調器(SLM) Hamamatsu X8267
SPCM カウンタ
OALCD
シングルモード ファイバー
空間光変調器(SLM)の動作
0
2π
15μm
• 平面上の任意の位置にアドレス可能 • 複数の回折格子を重ね合わせるとスポットを分割できる [ 顕微鏡に導入する光をSLMで操作(光ピンセット):
J. Liesener, M. Reicherter, T. Haist, and H. J. Tiziani, Opt. Comm. 185, 77(2000).]
Φ 𝑥, 𝑦 = arg exp 𝑖Φ1 𝑥, 𝑦 + exp 𝑖Φ2 𝑥, 𝑦
He-Neレーザー光の試料表面での散乱を、CCDカメラで観測
SLMはアナログRGB信号のGの値で操作
x
y
Φ2 𝑥, 𝑦 Φ1 𝑥, 𝑦
𝑃1
𝑃2
SLMを介したドットの蛍光集光 1. 先程のように、あらかじめ用意した様々なSLM用画像の中から、ドットの位置に回折する画像を選び出す。
2. シングルモードファイバーの終端をHe-NeレーザーからSPCMにつなぎかえ、蛍光を光子計数測定。
光子計数の時間変化
0次回折
1次回折
2.5 μm
227 arb.unit
w = 1.5 μm
0次に対する1次の 回折効率=0.63
ピーク強度: 225 arb.unit
強度1/e2半径: w = 1.9 μm
ON状態-OFF状態の行き来(ブリンキング)を確認できる
カウントレートの分布
対物レンズの透過率 0.90
PBSによる分岐比 0.50
SLMの反射率 0.53
0次に対する1次の回折効率 0.63
ファイバー結合効率(推定) 0.80
伝搬効率 : T= 0.15
立体角 : Ω = 2𝜋 1 − cos 𝜃
広がり角度: 𝜃 =𝜆
𝜋𝑤= 0.13 rad
2𝜃
見積もられるカウントレート
𝑅 = 𝑌Γ
2
Ω
4𝜋𝑇𝜂 = 7 × 103 c/s
ドットの量子収率(推定):Y=0.5
励起準位の寿命 : Γ=2π×10 MHz
SPCMの量子効率 : η=0.7
7 × 103 c/s
• SLMを介してコロイド状量子ドット1個からの蛍光を観測した • 簡便な単一光子源に形状可変ブレーズド回折格子を組み込んだ
波面制御による集積・多重化(構想)
1. 蛍光波長が異なるドットを用意
2. パルス励起 3. 波長-タイミング変換を行う
回折格子を重ね合わせてスポットを分割
SLM
多数の経路で鍵を生成
変調 復調
逆に用いて、複数のドットからの蛍光を同時に集光
波長変換による光子の不可識別化
差周波 発生
Ti:Sレーザー (周波数可変)
波長分割
波長多重
まとめ
1. 我々はこれまでに、コロイド状量子ドットを用いた、簡便な単一光子源を開発した。
2. その改良として、空間光変調器(SLM)を利用した形状
可変ブレーズド回折格子を組み込み、光路調整を行えるようにした。
3. SLMを介して、コロイド状量子ドット1個の蛍光を集光し、光子計数測定した(~104 c/s)。
4. この手法で複数ドットからの蛍光を同時集光すれば、容易に、単一光子源を集積・多重化できる。