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株式会社 日立ソリューションズ技術統括本部 技術開発本部ユーザエクスペリエンスデザインセンタ
2012年11月22日
柳生大介
日立ソリューションズのUX向上施策
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1. 自己紹介
2. UXに取組み始めた経緯
3. 当社が考えるUX
日立ソリューションズのUX向上施策
Contents
5. 参考情報
4. 当社のUX向上施策
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1-1 略歴
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1997年独立系のソフト開発会社に入社⇒コールセンタ関連業務のプログラム作成に従事
1999年当社(当時は日立システムエンジニアリング)に転職⇒流通業・製造業担当SEを経験
2005年支援系の部門に異動⇒生産性の向上を目的として,SEをサポートする
業務に従事
2007年UXに取り組み始める⇒UXの社内啓発活動とUX向上施策の適用支援
に従事
2010年 人間中心設計専門家として認定される
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1-2 人間中心設計専門家
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人間中心設計(Human Centered Design)の専門家として必要な知識とスキルを備え,それを実践する能力があることを認定する資格
HCD-Netの認定制度(222名の認定者)
2009年度 119名2010年度 60名2011年度 43名
http://www.hcdnet.org/certified/
HCD-Netは,人間中心設計を日本国内に広めることを目的に活動しているNPO法人
配布資料のため,写真は掲載しておりません。スクリーンをご覧ください。
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2-1 当社が抱えていた課題
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使いにくいという評価
手戻りの発生
機能中心の考え方
使いにくいシステムを作ろうとしていないのに…
「使いにくいねぇ,コレ」
要求どおりに作ったはずなのに…
「これじゃ使えないよ!」
機能がたくさんあれば良いと思ったけど…
「何を使えばいいの?」
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2-2 課題を解決するために
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使いにくいという評価
手戻りの発生
機能中心の考え方
使いやすいシステムを作る手法
要求を的確に把握しよう
人間中心の考え方へ
UXで解決しよう!
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3-1 当社が考えるUX
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User Experience (UX)
ユーザーの体験に着目するその体験を豊かにすることを考える結果として,付加価値の高いモノやサービスが作れる
缶コーヒー
シアトル系カフェ
ホテルのラウンジ
¥120
¥350
¥1,100
くつろぎながら
行き届いたサービス
コーヒーを飲む
例:コーヒーの価値
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3-1 当社が考えるUX
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UXに関連する概念
人間中心設計
使いやすいように
モノとそのユーザー
使えるように
ユーザーの体験
心地良いように
ユーザビリティ特定のユーザーにとっての使いやすさ
アクセシビリティ障がい者や高齢者にとっての使いやすさ
ユーザーエクスペリエンス使いやすさだけでなく,嬉しさや心地良さも
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3-2 なぜUXなのか?
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電子政府の問題
“世界一便利で効率的な電子政府”を目指したが・・・
⇒2007年度の実績で,全手続きの内20.5%のみ
パスポート申請については,2年間でたった133件⇒1冊あたりの発行コストは約1,600万円!!
電子政府ユーザビリティ・ガイドラインを作成(2009年7月)各省庁の一般向けのシステムが対象
出典:「電子政府評価委員会 平成20年度報告書」 参考資料3http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ithyouka/houkoku/2008/den_huzoku2.pdf
「財務省 予算執行調査(57)事業概括表(18年度)」 P.5http://www.mof.go.jp/budget/topics/budget_execution_audit/fy2006/sy180704/1807c.pdf
電子申請するためには,住基カードとカードリーダーが必要…
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3-2 なぜUXなのか?
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UXが不可欠に
最近の動向
社内システムは使いにくいものという認識⇒見た目や操作性が悪くてもかまわない?
マニュアルを見て操作を覚えれば使える⇒業務の効率を向上させたくても限界がある
慣れれば問題ないか?
スマートフォンやタブレット端末など,直感的で使い勝手の良いUIが普及
⇒このようなUIに慣れた人が増えている使いやすさと見た目の良さがより重要に
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4-1 人間中心設計プロセス
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ISO 9241-210
As-Is調査
To-Be検討
適宜反復
ユーザー要求を満たす解決策の作成
解決策がユーザー要求を満たす
要求に対する設計の評価
ユーザー要求の明示
利用状況の理解と明示
人間中心設計の計画
1
2
3
4
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4-2 メリット&デメリット
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真のユーザーニーズを把握できる問題点を早期に発見し,対策できる
⇒下流工程での手戻りを抑止できるユーザーの満足度を向上できるマニュアルを簡素化できる導入教育や問い合わせ対応の工数を低減できる
期待される効果
実施するための期間と費用が必要となる⇒一般的に上流工程で2割程度増加する
費用対効果が示しにくい⇒理解してもらうのが難しい…
懸念事項
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4-3 推奨施策
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当社で推奨しているUX向上施策
ユーザー要求を満たす解決策の作成
解決策がユーザー要求を満たす
要求に対する設計の評価
ユーザー要求の明示
利用状況の理解と明示
人間中心設計の計画
製造
詳細設計
基本設計
要件定義
エスノグラフィ調査グループ・インタビューペルソナ/シナリオ法
プロトタイプデザイン
インスペクション評価ユーザビリティ・
テスティング
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4-4 エスノグラフィ調査
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業務を行っている現場を観察する気づきから,ユーザーが抱える課題を見つける先入観を捨て,ありのままの現象を受け入れる(可能なら)疑問に思った事をその場でユーザーに確認する(可能なら)ビデオカメラで撮影し,繰り返し見直す
目的:現場・ユーザーを知る,課題や要望を明らかにする
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4-4 エスノグラフィ調査
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難易度:高⇒観察する能力が必要
ユーザー自身が気づいていない課題や要求が見つかる⇒言葉よりも行動に表れやすいため
観察
分析
仮説構築
観察により,多くの情報(気づき)を得る
得られた情報を親和図法で分析する
分析した結果から仮説を構築する
ポイント
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4-5 グループ・インタビュー
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対象となる業務やシステムのユーザーから直接意見を聴く収集した意見を分析し,潜在ニーズを抽出する
目的:ユーザーを知る,課題や要望を明らかにする
配布資料のため,写真は掲載しておりません。スクリーンをご覧ください。
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ポイント
4-5 グループ・インタビュー
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確認
マニュアルは読みません
マニュアルを読まないのは,どうしてですか?
分厚くて,読む気がしないんですよね
分厚いと読む気がしないのは,どうしてですか?
こんなに読まなきゃいけないと思うと気が滅入って…
簡単で分かりやすいマニュアルだったらいいのに
マニュアルは不要?事前にマニュアルを読みますか?
なぜ①
なぜ②
マニュアルは必要!
もう少し深く質問するとどうなるか?
なぜそう思うのか,ユーザーに理由を確認すると,ユーザーの潜在ニーズが見えてくる。
“なぜ”を2回程度聞くのが目安。多すぎたり,聞き方がきついと詰問と誤解されるので注意が必要。
ここでインタビューを終えると「ユーザーはマニュアルを必要としない」という結論になる。
“なぜなぜ”
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4-5 グループ・インタビュー
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ポイント
難易度:低「なぜ?」と思う観点を持つ
⇒深堀の質問“なぜなぜ”を心がける聴き方に注意
⇒弟子が師匠に教えを請う感じで親和図法で分析潜在ニーズを抽出したら,ブレストで実現案も検討
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4-6 ペルソナ/シナリオ法
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神田景子(30歳,独身)所沢市に在住勤務地は西新宿職業はSEアジャイル開発の達人読書とテニスが趣味…
各種調査で得たターゲットユーザーの情報から「ニーズ」「課題」「価値観」を抽出し,人物像としてまとめる
•エスノグラフィ調査•グループ・インタビュー•アンケート
ターゲットユーザー群 ペルソナ
架空の人物像を作り,設計者・開発者で共有する架空とはいえ,あたかも実在する人物のように定義する設計者・開発者が「この人のために」と思うことが大事
目的:ターゲットユーザーを明確にして理解する
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4-6 ペルソナ/シナリオ法
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神田景子さんの一日(平日)
時刻 項目 解説
8:30 出社 比較的電車が空いている時間帯に通勤するため,朝は早い
9:00 ミーティング スタンドアップミーティングで,チームメンバ全員の作業状況を確認する
9:15 ペアプロ 計画に従い,ペアプログラミングを行う
12:00 昼食
… … …
ポイント
難易度:低⇒作り方と活用方法がわかれば
「この人のために」という想いを共有することが重要⇒同じ目的に向かう
シナリオ(行動パターン)もまとめる
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4-6 ペルソナ/シナリオ法
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事例
論文公開サイトの改善案件でペルソナを作成して活用⇒論文の投稿,検索,閲覧ができるWebサイト
サイト利用者からのアンケート結果(約200件)を利用し,4名のペルソナを作成論文を参照・投稿する人(3名)論文を管理する人(1名)
また,ペルソナ毎にシナリオを作成論文を検索する論文を投稿する
「この人のため」という共通の想いを持ち,ペルソナの視点で仕様を検討したため,仕様がぶれなかった
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4-7 インスペクション評価
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次のドキュメント等をレビュー画面仕様書画面遷移図プロトタイプ
ユーザビリティの専門家がユーザーの視点で仕様を検証し,見た目や操作で気になる点を抽出する抽出した問題点への対策案を検討する仕様を確認できるドキュメント等があれば実施できる
目的:使いやすさを向上する,仕様の妥当性を評価する
配布資料のため,写真は掲載しておりません。スクリーンをご覧ください。
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4-7 インスペクション評価
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ポイント
難易度:高⇒ユーザビリティのノウハウ,専門家としての経験が必須
専門家がいれば,比較的コストをかけずに実施できる一般的なユーザビリティの観点が基準
⇒ユーザーに関する情報があるとなお良い例:ペルソナとシナリオ
他の施策と組合わせて実施することが多い⇒事前に問題となりそうな点を確認する等
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4-8 ユーザビリティ・テスティング
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プロトタイプ等を利用して使いやすさを検証する操作のシミュレーションを通じて問題点を抽出するビデオカメラで撮影し,後で見直すユーザーの様子を観察する(感情やしぐさ,行動等)
目的:使いやすさを向上する,仕様の妥当性を評価する
配布資料のため,写真は掲載しておりません。スクリーンをご覧ください。
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4-8 ユーザビリティ・テスティング
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会議室① 会議室②
インタビュアー
ユーザー
検証用PC
モニター
(ビデオ)
ビデオ
記録者 記録者
見学者
モニター
(検証用PC)
(検証ルーム) (モニタールーム)
簡易ラボ
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4-8 ユーザビリティ・テスティング
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ポイント
難易度:中⇒観察する能力が必要となる
簡易的にでも実施する方が良い(第3者の視点が重要)
手書きの絵や画面仕様書でも実施できる⇒紙芝居のイメージでユーザーに操作してもらう
5人のユーザーを対象に実施することで,約80%の問題を抽出することができる(byヤコブ・ニールセン)
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4-8 ユーザビリティ・テスティング
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事例
ハードディスク暗号化製品のペーパープロトタイプ
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4-9 成果と課題
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開発者の意識が変わった(機能中心から人間中心へ)⇒「ユーザー視点の重要性がよく理解できた」
操作性を改善できた下流工程の工数を削減できたお客様から「使いやすい」との評価
成果
定性的な評価だけではなく,定量的な評価も必要UX関連ノウハウの横展開UX施策を実践できる人財の育成
課題
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5-1 ITpro連載
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http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090521/330351/
使いやすいシステムの作り方 検索
「使いやすいシステムの作り方」
第1回 なぜ使いにくいシステムができるのか?第2回 ユーザビリティを高める開発プロセスとは?第3回 潜在ニーズを掘り起こすグループ・インタビューとは?第4回 要件の正しさはどうやって確認すればよい?第5回 使いにくさはどうやってあぶり出せばよい?第6回 アクセシビリティを高めるには?
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株式会社 日立ソリューションズ技術統括本部 技術開発本部ユーザエクスペリエンスデザインセンタ
日立ソリューションズのUX向上施策
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柳生大介
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