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    独話聴解における中上級学習者の困難点母語話者との比較から

    田代ひとみ・中村則子・大木理恵

    【キーワード】・ 独話聴解、要約、学習者と母語話者との比較、量的分析、SCAT 分析

    1.はじめに 大学で学ぶ留学生の増加に伴い、講義や研究発表のような長い談話を理解する能力が求められるようになっている。発表や講義等の長い談話では、聞き手が話のポイントを理解し、些末な部分は切り捨て、話者の最も伝えたいことを把握することが必要とされるが、講義は一方的に話される談話を長時間聞き続ける活動であり、日本語学習者にとってこのような講義理解は容易ではない。また、水田

    (1995)は「読む」「話す」「書く」と異なり、「聞く」という言語行動は自分のペースで行うことが難しいと述べている。 Richards(1983)で指摘されているように、講義の聴解は会話聴解とは異なる活動である。Richards が挙げた 18 項目の聴解技能のうち、講義のテーマや展開を把握すること、無関係な内容を聞き分けることは特に重要である。片山(2002)も、情報の取捨選択と要点の構造化を行うことは欠かせないとしている。また、講義は聞いただけで終わるのではなく、それに後続する生産活動、すなわち答案作成・レポート作成等において理解したことが書けるように聞いておくことが必要とされる(平尾 1999)。こうした生産的な活動につなげるには、話を的確に理解できる能力を育成することが必要である。 そこで、筆者らは講義の聴解能力の向上につながるような、アカデミック・ジャパニーズ能力育成のための独話の聴解教材(東京外国語大学留学生日本語教育センター編著 2014)を開発し、実践を行ってきた。 本研究では、中上級レベルの独話教材から一つの談話を取り上げ、学習者がそれをどのように聞いて理解しているかを探った。そしてそこから浮かび上がってきた学習者の独話聴解における困難点を、日本語母語話者との比較を通じて明らかにする。また、学習者に対するインタビューからその困難点の原因を探る。

    東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 45:77~94,2019

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    2.先行研究 独話聴解の分野においては、水田(1995)、山下(2000)をはじめとするストラテジー研究が多く行われており、聞いた内容をどのように理解したかについての研究はあまり多くない。内容理解を実証的に分析する方法としては、再生法(読んだもの、または聞いたものをそのまま口にしたり書いたりする)と要約が用いられている。 尹(2000)、金庭(2001)、尹(2002)では、再生法が用いられている。再生法では、もとのテキストを idea・unit(ほぼ単文に相当する意味のある単位)に分け、実験後に被験者が再生した文の中で実験文の idea・unit と一致している部分を数え、得点を与える。尹(2000)では、再生文を学習者の理解度を数値データ化するために用いており、どのような再生文を書いたかは分析されていない。金庭(2001)では、5 つの文からなるニュースを聞かせ、どの文が再生されているかを分析している。尹(2002)では、学習者がパターン学習をすることにより、ニュースの形式スキーマを理解し、構造的に聞くことができるようになり、理解が促進したとしている。しかし、これらはニュースを聴解の材料としており、パターンが定型化しているため、講義とは異なる。 要約は、Rost(1994)が英語学習者の講義理解を測る方法として用いている。ビデオテープに収められた講義を見せ、話のまとまり(4 ~ 10 分)ごとにテープを止めて要約文を書かせるという方法を提案している。そして、要約は学習者が講義をどのように理解したかを反映し、学習者の誤解や混乱の原因を探るのに有効であると述べている。 一方、Riley・&・Lee(1996)は読解の再生文と要約文を比較した研究を行い、学習者が重要情報と詳細情報を判別する能力を測るのに、再生法より要約の方が有効であるとしている。この研究は読解に関するものであるが、独話聴解においても、応用できると考えられる。学習者が聞いた談話をもとに作成した要約を分析すれば、彼らがどのように談話を理解し、どのような部分を重要情報として選択しているかを明らかにすることができるのではないだろうか。そこで、本研究でも、要約は学習者が長い独話をどのように理解したかを知る手がかりとして有効であると考えた。 要約課題は、学習者の聞き方にも影響を与える可能性が考えられる。そこで、中村・田代(2017)では、独話聴解における要約課題の効果をインタビューを通じて検証した。その結果、学習者の要約経験の有無により聞き方が異なり、経験

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    がない学習者は、個々の単語の意味や未知語の存在にとらわれている様子が確認されたが、経験のある学習者は、自ら話の要点を探し,それらを論理的に関連付け一貫させるため,能動的な聞き方をするようになるということが明らかになった。しかし、学習者が聞いたテキストをどのように理解しているかはまだ解明されていない。 読解の要約においては、佐久間(1994)、小宮(1994)が、韓国語母語話者の書いた文章の要約文を分析している。そこでは日本語母語話者の要約文とは異なり、結論部分の結尾部を欠く類型の要約文が多いことを指摘しており、原因は読解力不足であるとしている。独話聴解においても同様の傾向が見られるかを検証する必要があると考えられる。 なお、日本語での講義要約の研究では、藤村・朴(2010)が、2 名の日本語母語話者の要約文について、全体の主題文と中心文の CU(情報伝達単位)を詳細に分析している。しかし、本研究では、学習者の多数のデータを用いて日本語母語話者と比較しながら困難点を探るため、話の全体ではなく、結論部分に焦点を絞り、具体的な出来事の説明部分と比較しながら分析を行うことにした。

    3.本稿の目的 本研究では、独話を聞いて作成された要約文の分析を通して、学習者と母語話者の内容比較を行う。また、インタビューを通じて要約内容に違いが起こる理由を探る。

    4.学習者と母語話者の要約の比較(量的分析)4.1 調査 1 学習者の要約分析4.1.1 調査方法 調査 1 では、東京外国語大学の留学生日本語教育センターの聴解授業の受講生49 名を調査対象者とした。日本語能力は中級後半(中上級)で、日本語能力試験N2 合格程度である。データ採集時は 2017 年から 2018 年(2017 年度春学期と秋学期)である。 期末テストの問題として、3 分程度(スクリプトは 978 文字)の独話を研究対象者に聞かせ、それに関する〇×問題、そして QA 問題に答えさせた後に、180 字程度の要約文を書かせた。QA 問題の内容は、店の本が売れなくなった理由は何か、店を続けようと思った理由は何か、話者の意見は何か等である。実際に音声

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    を聞かせたのは、合計 3 回である。辞書の使用は許可した。スクリプト全体の概要は以下の通りである。

    話者が、アメリカのある本屋の経営者に関する記事を紹介する。彼の書店は開店当時、順調だったが、その後、ネットで本を買う人やデジタルの本を買う人が増加したため、閉店を決意した。しかし、客の言葉に励まされ、別の場所で店を開くことにした。客の応援を経営者は嬉しく思った。この記事を読んで、話者は、ネットやデジタルの普及は便利だが、いくら便利でもなくしてはいけないものがあると考えた。

     学習者の書いた要約文の中で、話の中の 2 箇所を要約した部分を分析対象とした。この 2 箇所はどちらも内容の要点として要約に必要なポイントである。一つ目の箇所はスクリプトの中盤にあり、出来事の具体的な内容を語っている。二つ目の箇所は話の最後に語られる話者の意見であり、この話の結論部分である。 スクリプトでは、それぞれ以下のようになる。(文はスクリプトの原文通り)

     ①閉店の知らせを聞いた客の反応の部分(経営者は客に閉店を知らせた。)すると、400 人もの人から、「店をやめないで」というメールや電話が来ました。「これからはもっとこの店で本を買う」と約束する人や、「店のために、お金を出す」と言う人もいました。あるお客さんは、「本屋はただ本を売るための店じゃない。町の文化のために必要な場所なんだ」と言いました。

     ②記事に関する話者の意見の部分とまあ、こんな記事だったんですが、これを読んで、私も少し考えてしまいました。ネットで本を買ったりデジタルの本を読むのは本当に便利ですが、便利さだけを無邪気に喜んでいてもいいのでしょうか。いくら便利でも、私たちの生活から消えてもいいもの、消してはいけないものがあるのではないでしょうか。みなさんはどう思われますか。

     この 2 箇所について、学習者の書いた要約の中から該当する部分を取り上げた。

    4.1.2 結果 学習者の要約文の中で、4.1.1 にあげた 2 箇所を、筆者 3 名が「正しい要約」「不十分な要約」「誤解のある要約」「該当部分なし」の 4 つに分類した(表 1)。図 1 は、

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    同じ結果をパーセンテージで示したものである。

    表 1 学習者の要約に対する評価 客の反応部分と話者の意見部分(単位:人)

    正しい 不十分 誤解 なし 合計

    客の反応部分  46 3 0 0 49

    話者の意見部分 11 5 7 26 49

    図 1 学習者の要約に対する評価(客の反応部分と話者の意見部分の比較)

     一つ目の箇所(①客の反応部分)については「正しい要約」が 93.9 %、「不十分な要約」が 6.1 %、「誤解のある要約」及び、「該当部分なし」は 0 %で、全員の要約に記述があり、正しいものが 9 割以上を占めた。「正しい要約」に分類したのは、「その店が町のために大切な場所だと言い(S1)」「町の人々はそのことを聞くとすぐトムさんにメールを送って(S2)」のような要約である。「不十分な要約」に分類したのは、「町の文化のために(店をまた始めることにした)(S3)」「トムさんにお客さん達が激しく反応した(S4)」等である。 一方、二つ目の箇所(②話者の意見部分)は「正しい要約」が 22.4 %、「不十分な要約」が 10.2 %、「誤解のある要約」が 14.3 %、「該当部分なし」が 53.1 %と一つ目の箇所とは大きく異なる結果となった。こちらの箇所で「正しい要約」に分類したのは、「記事を読んだ人は、新しいものが便利だが、消してはいけないものがあるのを忘れてはいけないと思った。(S5)」等である。「不十分な要約」に分類したのは、「個人の便利だけではなく文化に考えたほうがいいである。(S3)」等で、「誤解のある要約」に分類したのは、「この状況を見ると、デジタル本は幾ら便利でも紙本は消してもよくない。(S6)」等である。前者は「文化に考えたほうがいい」という表現が曖昧であること、後者は、消してはいけないものは紙の本だと書かれ

    に語られる話者の意見であり、この話の結論部分である。 スクリプトでは、それぞれ以下のようになる。(文はスクリプトの原文通り) ①閉店の知らせを聞いた客の反応の部分

    (経営者は客に閉店を知らせた。)すると、400 人もの人から、「店をやめないで」というメールや電話が来ました。「これからはもっとこの店で本を買う」と約束する人や、

    「店のために、お金を出す」と言う人もいました。あるお客さんは、「本屋はただ本を

    売るための店じゃない。町の文化のために必要な場所なんだ」と言いました。

    ②記事に関する話者の意見の部分

    とまあ、こんな記事だったんですが、これを読んで、私も少し考えてしまいました。

    ネットで本を買ったりデジタルの本を読むのは本当に便利ですが、便利さだけを無邪

    気に喜んでいてもいいのでしょうか。いくら便利でも、私たちの生活から消えてもい

    いもの、消してはいけないものがあるのではないでしょうか。みなさんはどう思われ

    ますか。

    この 2 箇所について、学習者の書いた要約の中から該当する部分を取り上げた。

    4.1.2 結果

    学習者の要約文の中で、4.1.1 にあげた 2 箇所を、筆者 3 名が「正しい要約」「不十分な要約」「誤解のある要約」「該当部分なし」の 4 つに分類した(表 1)。図 1 は、同じ結果をパーセンテージで示したものである。

    表1 学習者の要約に対する評価 客の反応部分と話者の意見部分(単位:人)

    正しい 不十分 誤解 なし 合計

    客の反応部分 46 3 0 0 49

    話者の意見部分 11 5 7 26 49

    図1 学習者の要約に対する評価(客の反応部分と話者の意見部分の比較)

    22.4

    93.9

    10.2

    6.1

    14.3 53.1

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    話者の意見部分

    客の反応部分 正しい

    不十分

    誤解

    なし

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    ており、話者が言及しているものより範囲が狭い(話者は紙の本や本屋を消していけないものの例として出しており、さらに多くの消してはいけないものについて述べている)ことから、「誤解のある要約」と分類した。 一つ目の箇所は、前述したように時系列に具体的な内容を語っている部分で、難しい語彙もなく、談話の流れから比較的予測しやすい内容である。ここでは学習者もほぼ問題なく要約文に内容を記述することができたと考えられる。一方、二つ目の箇所は、一つ目の箇所と同じく難しい語彙が使用されているわけではないが、「該当部分なし」の割合が 53.1 %にも上る。話者の主張を含む結論部分がなぜ欠落するのかについては、4.3 で考察する。

    4.2 調査 2 母語話者の要約分析4.2.1  調査方法 調査 2 では、東京近郊の大学で日本語教育関連の授業を受講している学生(以後、母語話者)26 名を調査対象者とした。データ採集時は 2018 年である。データ採集は、テストではなく、授業の一環として行なったが、採集方法は 4.1.1 と同様である。

    4.2.2 結果 母語話者が書いた要約について、4.1.2 と同様に、筆者 3 名が「正しい要約」「不十分な要約」「誤解のある要約」「該当部分なし」の 4 つに分類した(表 2)。図 2 は、同じ結果をパーセンテージで示したものである。

    表 2 母語話者の要約に対する評価 客の反応部分と話者の意見部分(単位:人)

    正しい 不十分 誤解 なし 合計

    ①客の反応部分  23 0 0 3 26

    ②話者の意見部分 19 1 3 3 26

    4.2.2 結果

    母語話者が書いた要約について、4.1.2 と同様に、筆者 3 名が「正しい要約」「不十分な要約」「誤解のある要約」「該当部分なし」の 4 つに分類した(表 2)。図 2 は、同じ結果をパーセンテージで示したものである。

    表2 母語話者の要約に対する評価 客の反応部分と話者の意見部分(単位:人)

    正しい 不十分 誤解 なし 合計

    ①客の反応部分 23 0 0 3 26

    ②話者の意見部分 19 1 3 3 26

    図2 母語話者の要約に対する評価(客の反応部分と話者の意見部分の比較)

    一つ目の箇所(①客の反応部分)については「正しい要約」が 88.5%、「不十分な要約」及び、「誤解のある要約」が無し、「該当部分なし」が 11.5%と、ほぼ全員の要約に記述があり、正しいものが 9 割近くを占めた。 また、二つ目の箇所(②話者の意見部分)は「正しい要約」が 73.1%、「不十分な要約」が 3.8%、「誤解のある要約」及び、「該当部分なし」がそれぞれ 11.5%となった。これは、学習者の要約で二つ目の箇所(②話者の意見部分)の欠落が多かったことと比較すると、

    大きく異なる結果である。

    4.3 学習者と母語話者の比較

    4.3.1 結果

    客の反応部分については、学習者も母語話者も約 9 割が正しい要約を書いており、顕

    73.1

    88.5

    3.8 11.5 11.5

    11.5

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    話者の意見部分

    客の反応部分

    正しい

    不十分

    誤解

    なし

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    図 2 母語話者の要約に対する評価(客の反応部分と話者の意見部分の比較)

     一つ目の箇所(①客の反応部分)については「正しい要約」が 88.5 %、「不十分な要約」及び、「誤解のある要約」が無し、「該当部分なし」が 11.5 %と、ほぼ全員の要約に記述があり、正しいものが 9 割近くを占めた。 また、二つ目の箇所(②話者の意見部分)は「正しい要約」が 73.1 %、「不十分な要約」が 3.8 %、「誤解のある要約」及び、「該当部分なし」がそれぞれ 11.5 %となった。これは、学習者の要約で二つ目の箇所(②話者の意見部分)の欠落が多かったことと比較すると、大きく異なる結果である。

    4.3 学習者と母語話者の比較4.3.1 結果 客の反応部分については、学習者も母語話者も約 9 割が正しい要約を書いており、顕著な違いは無いことから、ここでは話者の意見部分について、学習者と母語話者の結果を比較する。

    表 3 学習者と母語話者の 話者の意見部分の要約に対する評価比較 (単位:人)

    正しい 不十分 誤解 なし 合計

    学習者 11 5 7 26 49

    母語話者 19 1 3 ・3 26

    4.2.2 結果

    母語話者が書いた要約について、4.1.2 と同様に、筆者 3 名が「正しい要約」「不十分な要約」「誤解のある要約」「該当部分なし」の 4 つに分類した(表 2)。図 2 は、同じ結果をパーセンテージで示したものである。

    表2 母語話者の要約に対する評価 客の反応部分と話者の意見部分(単位:人)

    正しい 不十分 誤解 なし 合計

    ①客の反応部分 23 0 0 3 26

    ②話者の意見部分 19 1 3 3 26

    図2 母語話者の要約に対する評価(客の反応部分と話者の意見部分の比較)

    一つ目の箇所(①客の反応部分)については「正しい要約」が 88.5%、「不十分な要約」及び、「誤解のある要約」が無し、「該当部分なし」が 11.5%と、ほぼ全員の要約に記述があり、正しいものが 9 割近くを占めた。 また、二つ目の箇所(②話者の意見部分)は「正しい要約」が 73.1%、「不十分な要約」が 3.8%、「誤解のある要約」及び、「該当部分なし」がそれぞれ 11.5%となった。これは、学習者の要約で二つ目の箇所(②話者の意見部分)の欠落が多かったことと比較すると、

    大きく異なる結果である。

    4.3 学習者と母語話者の比較

    4.3.1 結果

    客の反応部分については、学習者も母語話者も約 9 割が正しい要約を書いており、顕

    73.1

    88.5

    3.8 11.5 11.5

    11.5

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    話者の意見部分

    客の反応部分

    正しい

    不十分

    誤解

    なし

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    図 3 学習者と母語話者の 話者の意見部分の要約に対する評価比較

     上記の表と図からわかるように、結論である話者の意見について、学習者は要約に含まなかったものが 5 割以上あるのに対して、母語話者は正しく理解し要約に含めている割合がはるかに高い。 上記の評価比較について、「正しい要約」、「不十分な要約」、「誤解のある要約」、

    「該当部分なし」の割合に学習者と母語話者で差があるかを見るためχ2検定、及びフィッシャーの直接確率検定を行った。その結果、どちらの検定でも、母語話者と学習者の書いた要約における 4 つの分類の比率は、高度に有意差が認められた。(***p

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    い。読解における要約を分析した佐久間(1989:236)は、一般性の強い、抽象的な話題を示す表現や、問いかけを示す文末表現等が母語話者の要約文に多く残存する傾向があるとしているが、聴解でも同様な結果になったと言える。 以上のことから、話の結論で述べられている話者の意見部分は、母語話者には要点とみなされる割合が高いが、学習者には、語彙が難しくなくても、正確に解釈し、要約の要点として捉えるのが難しいことが明らかになった。

    5.学習者に対するインタビュー(質的分析) 4.3 で学習者、母語話者の要約文の量的分析を行った。その結果、学習者は母語話者と比較して、聞いた内容の要約に話の結論部分で述べられた話者の意見を含めない割合が多いことが明らかになった。そこで本章では、学習者にインタビューを行い、学習者がなぜ結論部分を要約に書くべき重要なポイントとして選択しなかったのかを明らかにする。

    5.1 分析方法 本研究では、Steps・ for・Coding・and・Theorization(以下 SCAT)(大谷 2008a:27-44,・2008b:340-354,・2011:155-160)の手法を用いて分析する。SCAT は、比較的小規模の質的データの分析にも応用可能とされる分析手法である。データを〈1〉データの中の着目すべき語句、〈2〉それを言い換えるためのデータ外の語句、〈3〉それを説明するための語句、〈4〉そこから浮かび上がるテーマ・構成概念という4 ステップに分けてコーディングし(資料参照)、さらにそこから得られた構成概念を「意味のつながりをもたせて、一筆書きのように一筋につないだ(大谷 2011:159)」ストーリーラインとして記述する。分析過程を明示化することにより省察可能性を高めることができ、妥当な結論を導くことができるとされる。

    5.2 対象とする学習者 インタビューの対象者は、2017 年度秋学期に本センター全学日本語コースの500 レベル(中上級クラス、日本語能力試験 N2 程度)の聴解クラスを受講した学習者の中の 9 名である。学習者は、漢字圏 1 名、非漢字圏 8 名である。本稿で分析するのは、9 名のうちの 4 名であり、そのうち、正しい結論部分を書いた学習者が 1 名、結論部分を書かなかった学習者が 2 名、結論部分を誤解した学習者が1 名である。なお、インタビューに応じた学習者 9 名のうち、結論部分を要約に

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    書いたのは 1 名だけであった。

    5.3 インタビューの手順 本稿で分析している課題は、期末試験に使われたものである。インタビューは、期末試験後に、個人面談方式、半構造化インタビューの形で行った。時間は一人約 20 分である。インタビュー開始から終了までを全て録音し、文字起こしを行ったものをデータとして使用した。主な質問項目は、以下の通りである。1)今までに要約を書いたことがあるか。2)要約は難しかったか。難しいとすれば、何が難しかったか。3)どのようにして要約のポイントを選択したか。4)この話の中のポイントは何だったか。5)質問 5(話者の意見を説明する問題)には何を書いたか。6)(質問 5 の答えを要約に入れた学生には)なぜこの部分を要約に入れたのか。(質問 5 の答えを要約に入れなかった学生には)なぜこの部分を要約に入れなかったのか。

    5.4 結果(学習者のストーリーライン) 以下に学習者 4 名(S7 ~ S10)のストーリーラインのうち結論部分に関する内容を、書かれた要約文を参照しながら検討する。

    S7 (話者の意見部分を書かなかった学習者)話のポイントは、理由や話者の意見であると考えているが、実際にはこの話では具体的な事実を重視した。なぜなら、話者の意見の部分はスピードが速く感じられ、理解が不十分だったからである。一方で具体的な出来事は理解が容易と実感している。教師の指摘があるまで話者の意見部分を要約に書かなかったことに気づかなかった。この話では話者の意見部分は重要ではないと思う。要約のポイントをどのように選択したかは言語化できない。

     S7 は、話を聞くときには、理由や話者の意見が大事なポイントであるという認識を持っているにもかかわらず、この話では、選択は無意識に行われ、話者の意見をポイントとして選択せず、要約に話者の意見を全く書かなかった。その理由は、話者の意見の部分のスピードについていけず、十分に理解できなかったか

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    らであると答えている。実際に質問 5 の答えも「確かにデジタル本は便利だが、生活のスタイルを簡単に変えるわけではない」というもので、言いたいことが不明瞭な答えであった。聞いた内容が未消化なままで答えを書いたと思われる。一方、具体的な説明の部分はよく理解できたため、要約に詳しく書いた。つまり、要約にはよく理解できたことを書き、内容理解に自信が持てない部分は、重要なポイントとして選択しなったということである。

    S8 (話者の意見部分を書かなかった学習者)自分は語彙力が足りないと思っており、聞き取り時には大事な言葉より新しい言葉に注目している。その理由は、辞書の利用で未知語がわかれば、内容がつかめると期待しているからだ。聞いている時は、因果関係とテーマが重要だと思いながら聞いている。このテキストでは話者の意見部分ではなく、出来事の因果関係がポイントだと思っていた。インタビューで教師から話者の意見部分が話の大切なポイントだということを聞き、驚いた。意見部分は、メモをとることができ、質問・5 には正確に答えを記述できたが、実はあまり理解できていなかった。自分の母語でわからないと具体的にイメージできない。自分は読書経験が少なく、以前から話をまとめることが苦手である。

     この学習者は、インタビューの中で「聴解のスピード?難しいテキストなら、スピードは速いだと思いますが、簡単なテキストなら、大丈夫だと思います。たぶん今も言葉が足らない。単語が。」と述べており、語彙が足りないために意味処理に時間がかかり、スピードに対処できないことがあるようである。そのため、いつも新しい言葉に注目しており、それがわかれば、内容がつかめると思っているので、辞書を使って言葉の意味を調べている。因果関係が大切であると思っていて、この話では、なぜ本屋を閉店しなければならないかという因果関係がこの話の重要な点だと思っていた。したがって、話者の意見がこの話の結論であるということは予想外のことであった。しかし、質問・5 には、正確な答えが書かれていたので、その答えの意味を説明するように求めると、実は意味がよくわからなかったが、メモに書かれていた言葉をそのまま書いたと述べた。実際、書かれた質問・5 の答えは、原文(聞いた文)とほぼ同じであったが、これは短期記憶に頼って書かれたメモによると推測される。また、質問・5 で書いた話者の意見を要約に書かなかった理由については、母語でわからないこと、つまり深い理解に至らな

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    いことは要約に書けないということであった。これは要約という作業においては、学習者は聞いた内容を一度自分の中に取り込み、それを再構築して要約文を書いていることを意味しており、単に質問に答えるより、さらに深い理解が求められると解釈できる。なお、この学習者は、日本語のみならず、母語においても話をまとめることが苦手であったと述べ、自らの読書経験の乏しさがまとめる力の欠如に影響していると自己分析している。

    S9 (話者の意見部分を誤解して書いた学習者)話のポイントは、順序の説明や話者の意見だと思っている。また、QA 問題を活用してポイントを選択する。結論部分に話者の意見があるというこの話の構成は理解していた。試験後の答え合わせで結論部分を反対の意味に誤解していたことに気づいた。その理由は複雑な文末表現があったからである。そのような複雑な表現を聞いて、「困った」と思ったが、後から、一生懸命に意味を考えた。しかし、うまくいかなかった。このような表現は、能力試験 N1 の準備のために勉強し、授業でも指導を受けたが、やはり理解が難しかった。

     この学習者は「最初にこの人が新聞記事についての話だから、その後は自分の意見を話して、何がいいなと(原文まま。どうしたらいいかを)たぶん私たちに伝えたい、伝えたいと思います。」と述べており、この話の構成を理解し、要約文には要約のポイントとして意見部分を選択している。しかし、意見を述べるときに使われる複雑な文末表現(~のだろうか、~のではないだろうか ~てはいけない ~てもいい 等)を正しく理解することができず、反対の意味に誤解してしまった。このような文末表現については、文法の授業で教師から丁寧な指導を受けたが、耳で聞いて瞬時に意味を理解することはできなかった。質問・5 の答えにも、「…ネットで本を買ったり電子たる本(原文まま。デジタル本の意味か)を読んだりすることが便利だが、無邪気によろこんでいてもよろしい。…」と、誤解した内容が書かれていた。インタビューの際に、再度、話者の意見はどのようなものであったか説明を求めると、自分の理解に自信が持てず、文末が肯定なのか、否定なのかはっきりしない曖昧な回答をした。 

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    S10 (話者の意見部分を正しく書いた学習者)

    読解要約と比較して聴解要約は困難であるが、読解要約の指導を受けた経験から、キーワードを決めるという意識がある。内容理解のために様々な資源(QA問題、タイトル、プレタスク、話し合い)を活用している。要約に慣れるとともに、ポイントの取捨選択が重要だと認識するようになった。多く選びすぎる場合もあるが、大事なポイントを逃すことはないという自信がある。この話では、話者の意見は要約に必須であると認識しており、簡略化してでも入れるべきだと思っている。その理由は、母語にもある同様な談話構造を想起しているからである。談話構造にはさまざまなものがあり、事実の説明だけで終わり、話者の主張を含まないものもあるが、この話については話者の意見が重要であると正しく理解した。なぜそう思ったかについては読書経験を活用している可能性があると内省している。

     この学習者は話を聞いて、母語でも見られる同様の談話構造を想起し、この話者の意見部分ははずせないポイントであると認識した。「この人は…自分の意見を説明するために、前の話を使ったと思います。」と述べている。そのため、字数に余裕はなかったが、最後に「本屋は消してはいけないものの一つだ」という一文を入れた。質問・5 の答えでは、もっと詳しく話者の意見を説明し、最後に「消えていいものはありますが、消してはいけないものもあります」と書いており、文末表現も正しく理解していた。

    5.5 考察 以上、SCAT 分析から抽出した 4 名のストーリーラインを検討した結果、要約に話者の意見部分を入れた S9、S10 には、本屋のエピソードを紹介した上で話者が意見を述べるという全体の構成への気づきがあった一方で、話者の意見部分を書かなかった S7、S8 からは全体の構成への言及はなかった。S7、S8 は、話の筋を追い、その中から因果関係を見つけようとする聞き方にとどまっている。一般に見られる談話の中には、「A だから B であった」「C なのは、D だからである」というように因果関係を説明することが話の主旨であるものもあるが、本研究で対象とした話は、因果関係を含む事例に対する話者の意見を述べるものであり、意見部分が話の結論である。談話構造に注目するかどうかが結論を正しく捉えられるかどうかに影響した可能性がある。

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     また、S7、S8 が述べたように、要約にはよくわかったことを書き、深い理解に至らなかったことは書かない傾向が見られ、学習者が話の主旨を捉えられたかどうかは要約を書かせることによって明らかになることが改めて示された。 S7 と S8 は話者の意見部分を述べるスピードが速すぎて、意味が十分に理解できなかったと述べた。S8 の場合は、質問・5 の答えに正しく答えているため、教師は意見部分の理解はできたと判断しがちであるが、意味がわからなくても質問には答えられるということである。一方、S9 も意見部分で使われる表現に苦手意識を持っており、自分の理解に自信が持てなかった。このように 3 名が意見部分の理解に困難を感じたことから、意見部分で使われる表現(特に文末表現)は、具体的な出来事を述べた部分に比べて、理解が難しいことがわかった。 しかし、S9 の場合は、談話構造への気づきがあったため、結果として誤った要約となったものの、話者の意見部分を要約に入れている。談話の主旨を把握するためには、談話構造への気づきが必要であると言える。ただし、それだけでは不十分で、そこで述べられる意見の文を正確に理解することも求められると言えよう。 さらに、要約に意見部分を含めなかった S8、要約に正しく意見部分を入れたS10 がインタビューでの内省の過程で、それぞれ読書経験の多寡が要約能力に影響する可能性に言及していたことは興味深い。

    6.おわりに 本研究では、独話を聞いて作成された中上級レベルの学習者と母語話者の要約文を比較した。その結果、学習者は、具体的な部分に関しては 93.9 %が要約に正しく記述できていたが、話の結論部分(話者の意見部分)に関しては 53.1 %が要約に書かなかった。一方、母語話者は話の結論部分を正しく要約に入れていた割合が 73.1 %であり、結論部分を正しく要約に入れられた 22.4 %の学習者と比較すると、はるかに多い。以上のことから、話の結論で述べられている話者の意見部分は、母語話者には要点とみなされる割合が高いが、中上級レベルの学習者には、要約の要点として捉えるのが難しく、要約に入れない割合が高いことが明らかになった。 本研究のインタビューの SCAT 分析からは、談話構造への気づきが話の主旨の把握につながる可能性が示唆された。また、内容が十分に理解できたものは要約のポイントとして選択されやすい一方で、理解が不十分である部分は要約のポ

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    イントに選択されにくいことがわかった。さらに、話者の意見部分の文末表現等が理解の困難さに影響していることが示された。 聴解教育への示唆としては、〇×問題や QA 問題に答えさせるだけでは内容理解の確認が不十分であり、要約のような活動を取り入れることによってより正確に学習者の理解が確認できることが挙げられる。また、中級から中上級レベルでは、日本語の談話の構造を意識させるために、さまざまな構造を持つものを聞かせることも必要であろう。さらに、意見を述べる際によく用いられる文末表現を、聞いて即座に理解できるように慣れさせる指導は、苦手意識を持っている学習者に役立つと考えられる。

    参考文献(1)・ 尹松(2000).「聴解における先行オーガナイザーの効果について―日本語を主専

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    (7)・ 金庭久美子(2001).「学習者は TV ニュースをどのように聞いているか―日本語教育における聴解能力の測定―」『横浜国大国語研究』19,・59-69.

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    資料 SCAT の 4 ステップコーディングの例

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    DifficultiesinListeningtoLecturesforMiddle-AdvancedLearners:ComparisonofsummariesbyLearnersofJapaneseandnativespeakersofJapanese

    TASHIRO Hitomi, NAKAMURA Noriko, OOKI Rie

    Key Words:listeningtolectures,summary,comparisonofthelearnersandthenativespeakers, quantitativeanalysis,SCATanalysis

    Inthisresearch,wecomparedsummarieswrittenbymiddle-advancedlevellearnersofJapaneseandJapanesenativespeakersaftertheyhadlistenedtoashortlecture.Theresultsshowedthatmostof the learnerscouldcorrectlyreport thefactualelementsofthelecture,whilehalfofthelearnerscouldnotwriteabouttheconclusions(thesectionconcerning thespeakerʼsopinion) in their summary.On theotherhand,70%of thenativespeakerscorrectlysummarizedtheconclusions.Fromtheabove,summarizingthespeaker’sopinionwasdifficultformiddle-advancedlevellearners,whereastheopinionsection in theconclusionwasregardedasan importantpart fornativespeakers. Weconductedinterviewswithsomelearnerswhowrotethesummariestofindoutwhytheywroteordidnotwrite theopinionsection. Fromtheanalysisof the interview, itwassuggestedthatitwasdifficulttosummarizepartswhichwerepoorlyunderstood,andthecomplicatedexpressionsusedat theendof theopinionpart increasedthedifficultyofunderstanding.

    Foreducation,toassesslearnersʼunderstandingitwouldbeusefulnotonlytouse“T/Fquestions”and“questionsaboutthecontent”butalsotoincludesummaries.


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