病院5S改善の進め方(指導者用資料)
内部指向5S改善編-その1(ホップ)
制作:QCD革新研究所 所長 中村茂弘
1,ヒューマン・エラー・ゼロの病院環境づくりへ向けて①内外を含めた事例の把握、②5S改善:職場に潜む問題の解析、③ 「安全・確実で楽で早い仕事」を求めて自職場への展開法を決める。
2,科学的手法を使い、ムダを排除してゆとりづくりを!①ムダの発掘手法の理解~効果把握の方法を習得、②工程分析・ビデオを駆使して職場を改善、③やってみよう置き場、職場レイアウト、掲示
3,目に見にくい問題の列挙と対策の進め方①各階層、関係者から「困っていること」を聴取して集めるには?②テーマ・ポケット解析の習得、③グループ討論最適案創出へ
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内部指向5S改善編-その1(ホップ)
はじめに
5S改善は①整理、②整頓、③清掃、⑤清潔、⑤躾(しつけ)の
5項目の頭文字を取り、付けられた病院における改善手法です。では、誰のため?何を目的として進めるのか?その要点と、意義、活用方法を解説願う内容を例示します。
以下、簡単な説明の後、リーダーの皆様がご関係者に5S改善を説明される内容を解説して行くことにします。第一段階(ホップ)→第二段階(ステップ)→第三段階(ジャンプ)という三段階で進めていただくわけですが、各段階とも、クイズ式で解説する方式と共に、各段階とも、次の3段階でご指導される方式を推奨します。
研修を受ける皆様に求めるアウトプット(期待する成果)
①気づき「なるほど、これは、重要だ!やってみたい!」というご理解を得る努力を図る。
②問題解決手法5S改善を具体的に進める進め方と適用事例の理解を得る。
③自職場への展開~実践「ここへ適用すれば必ず良くなる」という対象を挙げていただき、実施に移る。
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内部指向5S改善編-その1(ホップ)1,ヒューマン・エラー・ゼロの病院環境づくりへ向けて
①内外を含めた事例の把握
設問1 この事例は何が問題で起きたのでしょうか?
1999年1月~3月に多発した「医療事故」の例
患者取り違え~手術のミス :横浜市の大学付属病院:1月11日
①心臓の手術をすべき方から肺の一部を切除した。逆に、肺の手術をすべき方ぁら心臓弁の一部を切り取ってしまった事件
②取り違え発生の経過(横浜市医療事故委員会の報告書の要点):
2人の男性患者は1人の看護婦により病室→手術室へ運び、交換ホールで別の看護師に引き渡しをした。
I
H I
H
カルテは別の窓口より連続して提供された
取り違えが起きた状態で手術室へ
【一般人から見た疑問】① 識別の方法は?例:色やテープ番号で分けるはず
② チェックの方法は?例:看護師の責任とチェック項目は?
医者の責務とチェック項目は?
③ ベットの置き場とカルテNo.は?
メモ欄
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内部指向5S改善編-その1(ホップ)1,ヒューマン・エラー・ゼロの病院環境づくりへ向けて
①内外を含めた事例の把握
解答例1 この事例は何が問題で起きたのでしょうか?
1999年1月~3月に多発した「医療事故」の例
患者取り違え~手術のミス :横浜市の大学付属病院:1月11日
①心臓の手術をすべき方から肺の一部を切除した。逆に、肺の手術をすべき方ぁら心臓弁の一部を切り取ってしまった事件
②取り違え発生の経過(横浜市医療事故委員会の報告書の要点):
2人の男性患者は1人の看護婦により病室→手術室へ運び、交換ホールで別の看護師に引き渡しをした。
I
H I
H
カルテは別の窓口より連続して提供された
取り違えが起きた状態で手術室へ
【一般人から見た疑問】① 識別の方法は?例:色やテープ番号で分けるはず
② チェックの方法は?例:看護師の責任とチェック項目は?
医者の責務とチェック項目は?
③ ベットの置き場とカルテNo.は?
メモ欄 5S改善の視点: ①識別の明確化、②十分なゆとり、③確実なチェック①患者さんの識別が患者さんとベッドにあり、明確な区別がつけば起きない。②指差確認・ダブルチェックを確実に行えば防げる内容だった。
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設問2 点滴液を間違えた事件
1999年1月~3月に多発した「医療事故」の例
点滴後に血液凝固を防ぐ注射後、2時間で死亡 :2月11日
① 58歳の女性が、注射後に「胸が熱い」と苦しみ、2時間足らずで死亡!
② 内容は消毒薬の注射だった。
J看護師がヘパリンナトリウムを整理食塩水で薄め、注射器5~6本を用意増えるとペンで「へパ生」と書き、保存庫へ
K看護師が別の患者に使う外科用消毒液に「ヒビグル」と書きもう一方に「へパ生」を用意処置台に置いた
無色透明
消毒薬を点滴チューブに注入した。
メモ欄
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解答例2 点滴液を間違えた事件
1999年1月~3月に多発した「医療事故」の例
点滴後に血液凝固を防ぐ注射後、2時間で死亡 :2月11日
① 58歳の女性が、注射後に「胸が熱い」と苦しみ、2時間足らずで死亡!
② 内容は消毒薬の注射だった。
J看護師がヘパリンナトリウムを整理食塩水で薄め、注射器5~6本を用意増えるとペンで「へパ生」と書き、保存庫へ
K看護師が別の患者に使う外科用消毒液に「ヒビグル」と書きもう一方に「へパ生」を用意処置台に置いた
無色透明
消毒薬を点滴チューブに注入した。
メモ欄
5S改善の視点: ①識別の明確化、②置き場の整備、③確実なチェック
① 急いで見た時に間違え易い薬剤、危険な薬品などは明確な置き場と表示の区別がつけば起きない。
②指差確認・ダブルチェックを確実に行えば防げる内容だった。
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被害者と問題発生の状況:28歳の主婦A子さん、切迫流産の恐れがあり2週間の入院治療の後、自宅療養を経て産婦人科外来を訪れた。待合室で20名程の患者たちと共に順番を待っているとき、同姓で中絶手術を受けにきたBさんと間違った。たまたまBさんがトイレに行っていたとき、Aさんが自分が呼ばれたと勘違いして診察室に入ってしまった。
① 医師は患者の氏名を確かめなかった。② 中絶の意思をA子さんに確かめなかった。③ A子さんが診療室に入った時、看護師もA子さんを
フルネームで確かめなかった。医師も確かめなかった。④ 中絶手術の前に行うべき、血圧・麻酔に対するアレルギー反応検査、
胎児の心音・発育状態の検査もしなかった。
全く機械的に手術してしまった。
ヒューマンエラー対策?難問だ?
1987年9月 福島県いわき市私立総合病院設問3 人違い中絶手術
メモ欄
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被害者と問題発生の状況:28歳の主婦A子さん、切迫流産の恐れがあり2週間の入院治療の後、自宅療養を経て産婦人科外来を訪れた。待合室で20名程の患者たちと共に順番を待っているとき、同姓で中絶手術を受けにきたBさんと間違った。たまたまBさんがトイレに行っていたとき、Aさんが自分が呼ばれたと勘違いして診察室に入ってしまった。
① 医師は患者の氏名を確かめなかった。② 中絶の意思をA子さんに確かめなかった。③ A子さんが診療室に入った時、看護師もA子さんを
フルネームで確かめなかった。医師も確かめなかった。④ 中絶手術の前に行うべき、血圧・麻酔に対するアレルギー反応検査、
胎児の心音・発育状態の検査もしなかった。
全く機械的に手術してしまった。
ヒューマンエラー対策?難問だ?
1987年9月 福島県いわき市私立総合病院解答例3 人違い中絶手術
メモ欄
① 指差確認は?② 各工程毎の
管理・チェック体制?③ ダブルチェックは?
どうなっている!
患者さんはじめ、一般市民の見解
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2016年千葉県がんセンターガン手術取り違え事故も似た現象では?
設問4 受精卵取り違え事件Aさん 夫
卵子 ① 精子
②対外受精
③培養
④子宮に 08年9月もどす 中旬
Bさんの受精卵
⑤着床 ?
妊娠中絶 08年11月中旬
① 40代の女性のシャーレを培養器から取り出して作業。
②シャーレには40代の女性を示す色着きシールが貼られていたが、蓋を捨てた。
③ 作業準備時、20代のシャーレを1個取り出し準備
廃却
40代女性用
40代の 対象である女性用 20代の女性用
④ K医師は作業時に2個とも20歳女性用と勘違いしたまま処置⑤発育の良い40歳の
受精卵を使った。⑥ 受精卵の発育が女性の経過順調にリンクしていない
ため、疑いを持ち検証→ミスを発見謝罪(妊娠9週では正確にミスを判定できず、15週になればDNA鑑定で可能だが、中絶は母胎への負担が増すため謝罪)
⑦ 訴訟が18日になされ、19日に報道謝罪劇となった。
K県立中央病院で2008年9月中旬頃発生。女性は慰謝料など2千万円の支払いを要求。
メモ欄
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解答例4 受精卵取り違え事件Aさん 夫
卵子 ① 精子
②対外受精
③培養
④子宮に 08年9月もどす 中旬
Bさんの受精卵
⑤着床 ?
妊娠中絶 08年11月中旬
① 40代の女性のシャーレを培養器から取り出して作業。
②シャーレには40代の女性を示す色着きシールが貼られていたが、蓋を捨てた。
③ 作業準備時、20代のシャーレを1個取り出し準備
廃却
40代女性用
40代の 対象である女性用 20代の女性用
④ K医師は作業時に2個とも20歳女性用と勘違いしたまま処置⑤発育の良い40歳の
受精卵を使った。⑥ 受精卵の発育が女性の経過順調にリンクしていない
ため、疑いを持ち検証→ミスを発見謝罪(妊娠9週では正確にミスを判定できず、15週になればDNA鑑定で可能だが、中絶は母胎への負担が増すため謝罪)
⑦ 訴訟が18日になされ、19日に報道謝罪劇となった。
K県立中央病院で2008年9月中旬頃発生。女性は慰謝料など2千万円の支払いを要求。
メモ欄 【原因と対策】 シャーレ―の蓋では無く底か横に、対象とした患者さんの印があれば起きなかった事件(ヒューマン・エラーは頭の良さや、資格経験、人格や経歴などに関係なく起きることに注意!)
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リンゲルマン効果(組織事故)この種の現象を『リンゲルマン効果』と言います。この現象は,約100年前,ドイツの
心理学者リンゲルマンが発表した内容ですが、『社会的手抜き効果』の名で世界に広がった一種の法則ですが、日本では『もたれ合い』と言われる行為です。
個人←(何が違ってくるか?) → 集団
実験によると、1人で引っ張った場合を100とすると、2人では期待値の93%、3人では85%、8人になると49%と、人数が増えると増すと思われがちな綱引きで、責任感の拡散という現象と共に力の発揮度合いが低下する状況だった結果に由来した内容。
人間の心理① 共同作業を行う時、「どうせ、だれかがやって
くれる」という心理が自然に生まれる傾向が発生する。
② 歯車の一員として活動する場合、「自分の努力は認めてくれない」と思う心理が作用する。
③ 問題があっても誰かが責任を持ちやってくれるというもたれ合いが生まれる。
集団に対する対策① リスクとウエイトを
明確にする。② 業務を分割し、責任分担を明確にする。
③ ①+②を管理する管理者を定め規則を完全に守らせる。
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設問5-1 指差確認の効果病院では、指差確認とダブル・チェックは絶対に必要な技術となっています。では、その
行為を履行する効果を数値で示して下さい。
メモ欄
設問5-2 確認を確実に行うための“ゆとり”の重要性
メモ欄
人は大脳の指令で活動します。では、大脳生理学的に、多忙やゆとりがヒューマン・エラーとどのような関係を持つのか?数値と共に説明して下さい。
次ページで詳しく解説します。
設問5-3 ハインリッヒの原則
メモ欄
事故やヒューマン・エラーの下にはヒヤットがあり、これが、問題発生の元になるわけですが、この解説を明確に行ってきたハインリッヒの法則を解説してください。
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指差確認の効果旧国鉄(明治)時代、鉄道の機関士・運転手が考え出した方法である
(HE対策に対する「現場の知恵」)であり「指差喚呼」の名がつけられ自然に広まった方式。「指差」の方は昭和の初期に東京近郊の乗務員が自発的に信号喚呼に指差を併用したものが広がっていった。これを見て、1980年代から中央労働災害防止協会が「ゼロ災運動」に
取り入れ、一気に全国展開していった経緯を持つ。万能ではないが、確実な活動は効果大!
ヒューマンエラーが防止へ向かう理由
1,注意の方向づけ旧国鉄・鉄道労働科学研究所室長だった故・橋本邦衛博士によると、
脳波のパターンがフェーズⅢという短時間だが、最も脳が活発でエラーしない領域に持ち込む効果が認められた。
2,多重確認効果人間の感覚が総動員されるため、集中して確認が進む。
3,脳の覚醒口や腕、手の運動を音声の発生に加えると、覚醒レベルが飛躍的に増す。発生に伴う咬筋(顎の筋肉)の運動が大脳全体の覚醒レベルをつかさどる「脳幹網様体」という部位に直接に信号を送るので、このような作用となる。ちなみに、ガムを噛むと眠気が収まるのはこの現象による。
4,焦燥反応の防止刺激の知覚と反応の間に指差呼称をはさむと、習慣的動作エラーの防止にチェックがかかるため、「釣り込まれエラー:ついうっかり意識なく動いてしまう」自分の行動の制御となる。
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指差確認の意義と重要性①指差確認ひとつでHEは、1/6となる
②ダブルチェックの効果
1500
Aさん:1
500Bさん:
1250,000
エラー率
2名で同じ内容をチェックした場合に発生するミスの発生頻度
③指差し確認+ダブルチェックの効果
(1/6)×(1/250,000) =1/1,500,000という脅威的な発生比率となる。
人名、処置、計測器の種別、機器の操作など、注意事項や記載事項や、状態を確実に読みとるため(再確認を含め)
これから操作したり、インプット、ボタン押しする内容が他の間違った内容でないことを確実にするため
操作、記載、指示した内容が計画、意図や指示に従った内容であることを確かめるため
作業や行動を起こす前に決めたこと、指示や数値に間違えがないことをしっかり記憶に留めるため(頭にたたき込み、確実性を確信するため)
①指差確認ひとつでHEは、1/6となる
注意数秒、怠ると、時には、患者さんへ多大な障害が発生!
病院における指差し確認の対象(例として記載)
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人が活動するフェーズとエラー発生状況フェーズ 各フェーズの解説 表面化する状況や問題の例
Ⅰ 疲労が激しい時、単調な状態で意識がぼける現象が起きやすい状況。
①目の前の信号を見落とす。②面倒である!という感情で点検や確認をやらない。③目前の用件に結果を考えずに手を出す(場面行動)。④感情的になり乱暴に振る舞う。⑤早々仕事を打ち切る
Ⅱ 家でリラックスしている状態や休息時の状況。思考などのソフトウエアは働くが前頭葉のソフトウエアは休眠した状態。
①予測機能が休止のため、予測しなければならない 事項に注意を働かさず、見逃す。②確認する目でもないと信じて、チェックを怠る。③読み違い、早合点、早のみこみをする。④前にも経験があると考えて行動する。⑤割り込み用件に気を集中し、やるべきことをしない。など、反射的に手を出す。近道反応をするまで。
Ⅲ 明快な意識、つまり前頭葉が活発に働き、積極的に行動をしている状況である。従って、ミスは1,000,000回に1回以下の状況。
①時間の切迫、状況の急変があると即断する内容 に迷いが出ることがある。②一方の問題や注意点に集中した結果、他の対象 に注意が行き届かないことがある。③作業の課題が複雑だとチェックや判断を誤る
Ⅳ 緊急事態ですくんでしまう状況。大脳がパニック状態になる。大脳のエネルギー水準は高いのだが、過度の緊張や情動による興奮が関係し目前の事態だけに集中するに留まる。
①目前の出来事にびっくりしてただ見つめるだけ。
②課題緊張のためあらぬ判断や行動をとる。指示さ れたことや訓練して身につけたこと全てを忘れる。
③怒りや恐怖のため、日頃は取るであろう冷静な行 動とは全くかけ離れた行動をとる。
④パニック状態に陥り無意味な行動をとる。
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心理的トラブル環境
★疲れた ★だるい ★足腰が重い ★やる気がない ★調子が悪い
★リズムに乗らない ★嫌になった ★イライラする
★何となく
しゃくにさわる
★同僚と一緒にやる気がない
★自分がのけ者にされているようでやるのが嫌だ
★何となく仕事に自信がない
主な心身の訴えの例
ヒューマンエラーを招く個人的環境(大脳生理学から)
© QCD Shigehiro Nakamura 16
毎日、仕事に追われる人の特性
共通語:忙しい仕方ない
① 仕事をかかえ過ぎていることに気づかない(能力オーバー状態)
② 時間意識がうすい(時間分析はしない) ③ 仕事術をしらない
(自己流、反省や研究なし)
④ インプットすれば成果が期待できると信じて活動する(アウトプット、期限からインプット逆算計画策定をしない
⑤ 人に頼りにされると、断れない(意味の薄い仕事や会議に安易におつきあい)
⑥ 仕事の優先順位が乱雑である
(どのような仕事も馬鹿丁寧、全力で)
⑦ 自己育成感覚、自分の夢と目標達成管理を行っていない
(自分の人生は他人と会社任せ)
⑧ 働くと動くの区分を知らない
(付加価値生産性の意識欠如)
仕事は3年で半減、残業ゼロ、1割のゆとりを狙うと良い
© QCD Shigehiro Nakamura 17
人間の情報処理過程とヒューマンエラー
感知反応
知覚反応
認識反応
判断
意思決定
動作計画
活動開始
外部情報
活動結果
入力エラー・認知のミス・確認のミス
翻訳エラー・判断ミス・決定ミス
出力エラー・指示のミス・動作のミス
フィードバック
光を感じる
黄色と判る
注意と思う(認識する)
まわりを確認する
OK?
感知~活動の例
ブレーキを踏む安全確保
まだ大丈夫と判断する
危険事態発生事故
© QCD Shigehiro Nakamura 18
ハインリッヒの法則による問題発生原理
発生する1件:ヒューマンエラー設備故障や交通事故・・・ 不良品の発生
基準
重大事故につながる
30のヒヤットこの中の1件が顕在化し、残りは29件
300の小さな不安
問題ゼロの状態
崩落
1件
29件
この法則は保険会社の技術・調査部に勤務していたH.ハインリッヒ氏の調査結果が基になり、世界に有名になった法則である。要点は、1件の下に位置するヒヤットの要因を取り除くことが決め手となるが、この対策を進め、ヒューマンエラーゼロを実現させた例は多数ある。このため、医療ミス防止に重視して使われてきた。
© QCD Shigehiro Nakamura 19
設問6-1 当・病院で5S改善を進める意義
では、知る範囲で結構ですが、あなたが知っている範囲で結構ですが、病院で何を目的に5S改善を進めてきたか?について要点をまとめて下さい。
メモ欄
設問6-2 5S改善で得た効果についてあなたが関与する職場で、過去、5S改善を進めてきて改善された事例を挙げて下さい。
メモ欄
© QCD Shigehiro Nakamura 20
病院で5S改善を進めるガイドより(著名な例)
病院で5Sを導入~成果をあげている例を見れば判る!① ヒューマンエラーは人間が持つ諸特性と、人間を
取り巻く間違えやすい職場環境が関係する。② 医療システムには多くの方々が関与する。また、
忙しい中では誤解や、ミスが発生する環境がヒューマンエラーを誘発しすい。
③ そこで、うちでも、次の方式で5Sを展開します。
整理:いらないものといるものをハッキリ分けていらないものは捨てる。
整頓:いるものを使いやすいようにきちんと置き誰でもわかるように明示すること
清掃:常に掃除をし、美化を維持すること清潔:汚れの無い綺麗な状態を維持するしつけ:決められたことを、決められた通りに実行できる
ように、習慣づける
潜在的ヒューマンエラー1,よくない書類や機材の保管 → 間違える。2,必要な書類や機材を探す → 忙しさがミス誘発へ3,院内に不要な物が残存 → 患者の転倒~病原体の巣にもなる4,使用してはいけない機材、薬剤の残存 → 治療ミスや薬剤誤投与の危険5,乱雑な書類や物の置き方 → 心の乱れが仕事の乱れ、さらには
病院の管理や活動に多くの疑問を感じる状況を誘発する。
・不安全性の撲滅
・ミス・トラブルの減
・効率向上が期待される!
© QCD Shigehiro Nakamura 21
岩手県立中部病院で5S運動取り組みの背景
経営直結型5Sの作用 : ムダ排除+HEゼロ対策で個々人の技量向上
医療機能評価の局面
ヒヤリハットゼロの医療環境整備~お手本になる管理体制の構築(誰が見てもお手本になる日々活動)
関係者の仕事
① 患者さんの満足② 病院で働く方々の
技量向上+ゆとり増強
③ 融和と連携強化
医療の質の局面
クリニカル・インディケーターの向上
ダントツ活動モデルを世に示す!
病院の概要
© QCD Shigehiro Nakamura 22
なぜ病院では、5S改善が必要か?
機器の故障のムダ
一流を追求する!
ヒューマン・エラーミスするムダ
応援~連携体制のムダ
仕事の手順動作のムダ
準備不足のムダ
対応技量差のムダ
力量 改善する
仲間
個人
病院の発展のため 高める
患者さんのため
家族と自分のため
一体化して活動
仕事を見直す
自らゆとりを増大
© QCD Shigehiro Nakamura 23
学会発表資料「外来業務」
5S運動が医療安全につながる取り組みとして有効であるという実感を得た事例
2段の踏み台を使い無理な姿勢で1検体ずつ尿検体を回収していた
泌尿器科外来尿検査室
カップから検体をこぼしてしまうことを回避1回の作業で10秒短縮年間13時間短縮
Before After
代表事例1
© QCD Shigehiro Nakamura 24
学会発表事例(つづき)
【A病院5S運動理念】心通う5S運動を通じて、
患者・職員・環境の安全を守ります
【外来5S運動目標】楽しく5S運動を進め、働きやすくゆとりと笑顔あふれる外来にする
© QCD Shigehiro Nakamura 25
②5S的問題の解析
設問7 一般的な5Sと、今回の5S改善の差
ここまで5S改善について解説してきました。5Sは①整理、②整頓、③清掃④清潔、⑤躾の5つの文字の頭文字を取ったものですが、では、この、各用語は何を意味する内容(定義について)なのか?知る範囲で結構ですが、説明をお願いします。
5S 5Sの意味解説記入欄
改善の際に使う手法
整理
整頓
清掃
清潔
躾
© QCD Shigehiro Nakamura 26
よく見る病院の「清掃5S活動」の例
早く脱皮を願う清掃5S活動と、そこに見る定義とは?
整理:不要になった薬剤、医療機材、書類などを定期的に一斉廃却の繰り返し
整頓:単に綺麗に並べて置く美化対策清掃:掃除の徹底繰り返し(発生源対策無し)清潔:除菌、着装の乱れ防止~
患者さんに対する応対~マナーシツケ=仕付け
(理由なく訓練・徹底教育)!
【解説】上に記載した定義は掃除を中心とした5Sであり、
今回行う5S改善とは、多少異なります。その意味は、例えば、不要物の撤去を繰り返すより、発生源対策を進めて、そのような仕事の繰り返しを無くすことを進めたいためです。以下、シツケ=仕付けも、文字も意味も異なります。では、今回進める5S改善の解説をします。
© QCD Shigehiro Nakamura 27
解答例7 今回行う「5S改善」の定義と適用手法
5S 対象と活用の狙い 適用手法
整理 今、必要な医療用具、機器、医療材料、医薬品や
指示、チェックすべき情報を必要なだけ必要な場所に配備する。
JITの適用
整頓 「段取り上手は仕事上手」の名のもと、仕事の準備と効率化を追求する。
動作経済則
清掃 「清掃は点検なり」と、HE発生などの基を絶つ対策。問
題が起きない仕事の環境整備~ホウ・レン・ソウ活動(報告・連絡・相談)の実施を図る。
QTAT(発生時点問題対策)
清潔 問題発生リスクを嗅ぎわけ(予知して)、問題発生の潜在問題の予知・予防~未然防止対策を図る。
PPA(リスク対策手法)
躾 常に仕事に疑問を持ち、一流の仕事を追及しつつ改善を図る・日々自律的な改善・努力を図る活動の実践!
ノウ・ホアイ活動
注釈: QTAT:Quik Turn Around Time , PPA:Potential Problem Analysis解説:5S改善とは?
適用手法の解説は後でさせていただくことにして、今回行う5S改善は、「対象と活用の狙い」の欄に解説したように、まず、仕事をしながら改善点に気づきをもとめる躾=自分自身、一流の仕事を進める上で何が必要か?を常に求めながら、上の4項目の改善対策を進める行為を意味します。整理+整頓はムダ排除、清掃+清潔は問題を発生させない予防策を進めるという活動です。
© QCD Shigehiro Nakamura 28
設問8-1 「清掃5S」と「5S改善」の違い「清掃5S」も「5S改善」も、評価対象が美化の程度とされる例が
多い状況です。では、「清掃5S」と、岩手県立中部病院で行ってきた「5S改善」にどのような活動の差があるのでしょうか?美化を得る方法の違いを整理して下さい。
メモ欄
仕事を進めるあるべき姿へ
設問8-2 「5S改善」で得る効果について病院の仕事だけでなく、個人の生活でも、改善=日々、良い内容に改めるという活動は、「考えながら
常に工夫と改善を進め、人生の価値を高める」という意味で、人生上も重要な活動です。「では、0.1%/日という日々改善を3年間続けた場合、その効果はどのような数字になるか?」を計算して下さい。
メモ欄
© QCD Shigehiro Nakamura 29
「清掃5S」 「5S改善」
【掃除5Sの問題点】1,掃除は従業員を性悪説
でみた、マナー習慣づけ2,投入工数と成果の計算
はしない(ムダな投資)3,美化とゴミ処理を最終
結果とする。(再発時には日を決めた掃除の繰り返しに終始)
脱皮
【ムダ排除5S】1,美化は改善の
結果であり目的ではない。
2,掃除より発生源対策を重視!
3,科学的改善手法を駆使
【5S教育で仕付けが狙い】1, 規則の順守の押しつけ2, 言い訳なしで決まった
仕事の履行、習慣づけ3, 中身は無いが病院の
5S努力を外部PRに使うイベントが目的
【目標を持った自己育成】1,各人、各職場で一流を求めて2,理想-現実
=改善ギャップとする活動3,仲間と共に誇れる職場づくり
解説:「清掃5S」と、「5S改善」の違いについて「清掃5S」と、今回進めている「5S改善」の差は上の図のようになります。「美化という見た目は似た
形に見える例も、その中身が違っている」というわけです。「では、美化以外に、改善でどのような成果を得るか?」という内容を解説して行くことにします。
© QCD Shigehiro Nakamura 30
改善の意義:3年で2倍の仕事力づくり
練習
試合
改善
医療活動
(0.1%/日の改善)×(25日/月)×12ヶ月=30%/年の向上
1.3×1.3×1.3 > 2倍3年間で2倍の実力!
努力と無駄の差異
現状
目標
達成=努力が実る!
ムダ
解説:「5S改善」で得る効果についてスポーツの練習と改善は似ています。病院で「良い医療活動」を進めるためには、改善が必要になる
わけですが、「5S改善」では、左下に記載したように、小さい改善だが、大きな効果を求め、活動します。
© QCD Shigehiro Nakamura 31
③ 自職場への展開法を決める。
設問9-1 ムダの把握
設問9-2 置き場とムダな移動
医療機材置き場
手術台
医療機器の置き場
「手洗い励行!」は病院で常に欠かせない対策のひとつです。また、5S改善における改善手法は後で紹介しますが、右図に示したような状況で手洗いをしている場合、「大腸菌はどこへいったのでしょうか?」そうなると、何がムダとなるのでしょうか?
メモ欄
右の図は点滴の準備を進める、ある看護師の仕事を分析した例です。「置き場を決め手美化を徹底!」ということが、この病院の5Sということですが、ムダを下のメモ欄に記入して下さい。
メモ欄
© QCD Shigehiro Nakamura 32
手洗いとバイ菌大腸菌)除去の状況は?
No. 作 業 手 順 正味
○
移動
→手待
▽
検査
□
問題点と改善内容
1 用を足した後、トイレットペーパーでお尻を処理する
トイレットペーパーで処理、しかし、
数秒で手に大腸菌が付着
2 パンツをあげる 大腸菌はまずパンツへ
3 ズボンをあげる 次にズボンの触ったところへ
4 チャックをあげる 更にチャックへ大腸菌搭載
5 バンドをしめる バンドにも多少付着
6 白衣を正す 大腸菌は白衣にも付着
7 ドアーを開ける ドアーのノブへ付着
8 ドアーをしめる ドアーのノブへ付着
9 手洗い所に移動する
10 手を洗う~拭く 大腸菌除去?手洗いは完全?
11 作業場へ移動する
12 食品に触る(作業開始) どこに大腸菌がいるの?
子供でも判るムダの多発!
【解説】後で、この工程分析は詳しく紹介しますが、この
例は手洗いは無意味に近いことが判ります。なおこの解析手法は後で詳しく紹介します。
© QCD Shigehiro Nakamura 33
【参考資料】 手洗いを例とした標準化徹底対策イメージ
悩み:手洗い励行教育するが
徹底が今ひとつ
汚染が
問題を
拡大
不備が
及ぼす
重大問題
Know Why理由と意義を知る
現場観察~徹底を考える
目で見る標準化対策必要な指示情報は
必要なところへ必要なだけ、分割して示し守る。
標準化の要点
①なぜ?の明示標準手順が必要か?を示す。
+②標準手順を
示す。→徹底へ+
③禁止事項とペナルティの明示
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仕事と時間、改善のとらえ方
改善すべきムダ50%
正味50%
① ムダを省く対策を「改善」と言う
ムダ取り
②やるべきことをやらない行為を「手抜」きと言う!
③改善しないで、無理を押し込む行為は時に「労働強化」~ ヒューマンエラーを誘発!
技術の高さ
改善前の時間
ムリ
ムダ
ムダ ムリ
ムダ
改善の結果
改善対象は①技術向上と②仕事の手順
です。
ムラ
解説:「5S改善」における改善のとらえ方5S改善では、改善と共に、ヒューマン・エラー防止と“ゆとり”増という時間短縮を狙いますが、その
要点は、左図の仕事における①技術向上と、②ムダ排除です。また、その進め方は右上の①に示した改善の考え方で行います。
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工程分析による改善
○:正味(付加価値を生む仕事)◇:再チェックや確認(正しい仕事なら不要)→:移動は無駄(出来るだけ省略、短縮)▽:待ちや意味の無い長期保管は無駄!
改善はE,C,R,SでE(省略)
C(結合・統合) R(置き換え)
S(単純化→自動化)
例: 改善:当然必要な医療用具などはオペ室や病棟の近くへ整理・整頓
【置き場の改善】書でよく見る事例です。5Sということで、工具を
通路側へ立て看板と共に、目で見る管理、というわけですが、職場で写真やビデオを撮れば、ムダはすぐに判ります。歩く=移動のムダ!を見つければ、工具の置き場は職場の近くになるためです。
改善手法
仕事は4つの記号で把握
動作分析を用いた改善
医療機材置き場
手術台
医療機器の置き場
美観は良いがなぜ?毎回機材を持参しなければいけないの?
注釈:工程分析と、それを使った改善の進め方は後で詳しく解説します。
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まとめ、誰でも知っている病院の活動と個人、改善の必要性
設備故障のムダ
医療とサービスで一流を追求する!
ヒューマンエラーのムダ
使用しない機材や資材などのムダ
動作のムダ
事前検討不足立ち上げのムダ
経費のムダ
力量 改善する仕事を見直す
仲間
個人
病院発展・地域貢献と仲間のため
高める
患者さんのため
家族と自分のため
一体化して活動
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