6. エントロピー 6.1. 自然界の変化の方向
すなわち、特定の方向に変化するのが自然界である。ではどちらの方向へ? 圧力が高いところから低い方向に働く.圧力が高い方が内部エネルギーが大
きいからだ.熱は熱いところから冷たいところへ流れるこれも同じである. 高いところにあるものは低いところへ落ちる。引力にひかれるからだ。別の
言い方をしよう。高いところにあるものは大きな位置エネルギーをもち、低い
ところにあるものは小さい位置エネルギーを持つ。だから、エネルギーが大き
い状態からエネルギーが小さい状態へと変化するといえる。しかし本当だろう
か? 質問する.エネルギーは保存されるから,全体で考えれば,エネルギー
は変わっていないはず.だったら,エネルギーが高い方から低い方に動くとい
うのは変ではないか? 実際振り子を考えてみよう.高いところにあったおも
りは確かに低いところへ行くが,又再び高いところに戻ってくる.行ったり来
たりしているではないか? でも高い温度のほうから熱が低い方に流れる場合
はどうか? これは,再び高いところに戻ってこない. 断熱壁で覆われた部
屋の半分に理想気体を閉じ込めておこう。しきりの壁を取り去り,反対側に自
然に広がらせる。このときに外界に対して仕事も熱のやりとりもしなければ、
内部エネルギーの変化はなく、温度は一定であるから、エネルギーは部屋の半
分にいようが、全体にひろがろうが同じである。エネルギーが一定であるにも
かかわらず、全体に自然に広がる。先の熱の移動も同じである.全体のエネルギ
ーが一定であるにもかかわらず、熱は自然に動くのである。では何が変化する
のだろうか? 変化の方向はエネルギ-だけがきめているのではないのだ.
問問問問 6.1-1 52 枚のトランプを用意しよう。全部裏にしておいて、さいころをふり、偶数がでた枚のトランプを用意しよう。全部裏にしておいて、さいころをふり、偶数がでた枚のトランプを用意しよう。全部裏にしておいて、さいころをふり、偶数がでた枚のトランプを用意しよう。全部裏にしておいて、さいころをふり、偶数がでた
ら表、奇数が出たら裏という風に一枚ずつ変えていこう。ら表、奇数が出たら裏という風に一枚ずつ変えていこう。ら表、奇数が出たら裏という風に一枚ずつ変えていこう。ら表、奇数が出たら裏という風に一枚ずつ変えていこう。52 枚の札に一回やったときに、どう枚の札に一回やったときに、どう枚の札に一回やったときに、どう枚の札に一回やったときに、どう
なっているだろうか。なっているだろうか。なっているだろうか。なっているだろうか。10 回繰り返したら、どうなるか?回繰り返したら、どうなるか?回繰り返したら、どうなるか?回繰り返したら、どうなるか? (思考実験でもよい思考実験でもよい思考実験でもよい思考実験でもよい) こたえよ。こたえよ。こたえよ。こたえよ。
上の問いでずっと裏であることはあり得るだろうか?
問問問問 6.1-2 確率を考えよう。確率を考えよう。確率を考えよう。確率を考えよう。52 枚がすべて裏である確率は?枚がすべて裏である確率は?枚がすべて裏である確率は?枚がすべて裏である確率は?
そう 52 枚が裏であるなんてあり得ないのだ。ではなぜ?
問問問問 6.1-3 では、では、では、では、26 枚が裏である確率は?枚が裏である確率は?枚が裏である確率は?枚が裏である確率は?
問問問問 6.1-4 では、では、では、では、n 枚が裏である確率は?枚が裏である確率は?枚が裏である確率は?枚が裏である確率は?
こうして、ある数(ここでは裏である枚数)を変数として、その変数が出る確
率を確率分布関数といい。上の確率分布関数は 2 項関数である。 分子一つ一つがカードと思ってみよう。部屋を多くの区画に分けて、分子には
大きさがあって、同じ場所には入れないと考えれば、そこに分子がいるかどう
かでカードが表になったり裏になったりすると考えてればよいことになる。す
ると、どこかに特定の場所に集中するだろうか? いやばらばらになるだろう。
これが確率が一番大きいからである。講義室を見渡して見よう.部屋の片方に
かたよりますか、全体に広がっていますか? 全体に広がっているほうが確率
が大きい。 したがって、一般則として、 自然界は確率の大きな状態になろうとする。自然界は確率の大きな状態になろうとする。自然界は確率の大きな状態になろうとする。自然界は確率の大きな状態になろうとする。 ということが理解できる。 いやまて、ここでこういう疑問が生じる。
問問問問 6.1-5 あるカードのめくり方は確率として皆同じである。全部裏になろうと、一つ筒表裏をあるカードのめくり方は確率として皆同じである。全部裏になろうと、一つ筒表裏をあるカードのめくり方は確率として皆同じである。全部裏になろうと、一つ筒表裏をあるカードのめくり方は確率として皆同じである。全部裏になろうと、一つ筒表裏を
繰り返そうと皆確率が同じである。なのに、確率に差がつくのはなぜか繰り返そうと皆確率が同じである。なのに、確率に差がつくのはなぜか繰り返そうと皆確率が同じである。なのに、確率に差がつくのはなぜか繰り返そうと皆確率が同じである。なのに、確率に差がつくのはなぜか?
上の答えは、表と裏の出る場所を特定しなければ、やはり、表が 26 枚が確率
が大きくなる。2 項分布の係数
が大きな役割を果たしている。 すなわち、この場合には、2 項係数が最大になるように分布するのである。別
の言葉で言えば、もっとも場合の数が多いように状態は実現するということに場合の数が多いように状態は実現するということに場合の数が多いように状態は実現するということに場合の数が多いように状態は実現するということに
なる。なる。なる。なる。 この場合の数を Ωであらわそう。
6.2. エントロピー では、具体的に考えてみよう。先に片方に閉じ込められた気体と全体に広が
った気体を考えた。 片側には気体がない。そうなる確率はどうだろうか?
今理想気体が一個しかなかったとする。すると左のように左のみにある確率は
1/2 である。だから、たまには起こってよい。次に、2 個、3 個と増やして、こ
れが片側だけに集まる確率を考えてみると、(1/2)2,(1/2)3 とどんどん少なくなる。
アボガドロ数個あると、どうだろうか ほとんど 0 だろう。 次の量を定義する
( 6.2-1)
すべての気体が片側になっている。1 通りだから S=0 に対して、両方にあるの
は、S=Rln2 となる。この S をエントロピーと呼ぶ。
図図図図 6.1-1 左だけに理想気体が詰まっている場合都全体に広がっている場合。左だけに理想気体が詰まっている場合都全体に広がっている場合。左だけに理想気体が詰まっている場合都全体に広がっている場合。左だけに理想気体が詰まっている場合都全体に広がっている場合。
nCr
Ω= lnRS
自然界は何もしないと、エントロピーの増大する方向に動くという法則がこう
して導かれる。 一般論として、状態が決まれば、エントロピーも決定される。したがって、何
か変化するかどうかを知るには、その前後でエントロピーがどう変化するかを
調べればよい。それを求めるには、場合の数を数えればよいわけであるが、簡
単に場合の数を知ることができないこともある。そのときは以下のような熱の
授受を調べると、エントロピーを知ることができる。 6.3. エントロピーと乱雑さ エントロピーを乱雑さとする定義がある。自然界は自発的に乱雑な方向にす
すむということ風に定義することもある。乱雑であるということは、いろいろ
な状態を取り得るということで、とくに乱雑であるということをいっているの
ではない。だから、乱雑さということを言い出すエントロピーはわかりにくい
が、確率が最も多い状態、場合の数が最も多い状態というと当たり前になって
くる。 いろいろな状態をとることができるということで,秩序だっていないあるいは無
秩序だ、乱雑だということになっているだけである。液体と気体とでどっちが
乱雑か考えると気体の方が乱雑であるという説明がある。これを状態の数とい
うことで考えてみると、同じ量の液体と気体とを比べて、液体のしめる体積が
小さい。気体は広い体積をしめることができる。すなわち、気体の方が多くの
場合の数、確率が大きいことになる。だからエントロピーも大きくなるという
風にも理解できる。 6.4. 可逆変化、不可逆変化 熱力学的にエントロピーを考える前に重要な可逆変化ということを考えてみ
る。 可逆変化可逆変化可逆変化可逆変化とは、A からBへ変化し、B から同じ経路を通って A に戻ったとき、
外界にいっさい変化を残さない変化を言う。こういう変化においては、その変
化の過程一点一点では、変化の方向はつねにどちらにも動きうる。 たとえば、温度が高いところから、温度の低いところに熱が流れるときでも、
温度の高いものと低いものをいきなり接触させてしまっては、熱はただただ、
低い方に流れるだけである。こうした過程を不可逆過程不可逆過程不可逆過程不可逆過程と呼ぶ。温度が一定に
なってしまってから、逆の過程をやろうとすると、たとえば、片方にクーラを
つけ、電気を流して、そこの温度を下げ、その際に放熱する熱の一部を使って、
冷やす。すなわち、外界から電気エネルギーの供給をうけ、熱エネルギーとし
て戻すことになり、外界では、電気エネルギーから熱エネルギーへの変換とい
う変化が残る。 最初の過程は外界に変化を生まず,戻す過程は変化を有む.
すなわち,不可逆になる.ところが、温度が少しずつ変わるチューブでつない
で、熱を移送するとする。すると、チューブの一端と高熱源および逆の一端と
低熱源とは等温度であるとする。この時には、熱はどちらにも流れうることに
なる。このように、可逆的に変化させると言うことは、少しずつ、状態を変化
させることにより実現する。こういう少しずつ変化させる過程を準静的過程準静的過程準静的過程準静的過程と
いう(静的とは変化しないと言うことであるが、変化しないと困るので、見か
けは変化していないのに、実は変化するという誠に非現実的な過程である。)
もう諸君は気づいていると思うが,ちょっとずつ温度の違うチューブて存在す
るのというと,存在しない.したがって,可逆過程は存在しない.可逆過程は存在しない.可逆過程は存在しない.可逆過程は存在しない. 現実はす
べて、不可逆である。 ここが問題である. エントロピーをわからない言葉
にしているのは,可逆過程という非現実過程を考えないといけないからだ.で
もこれを考えることができれば,これほど大切な量ができあがる. 6.5. エントロピーと熱 ここで、もうひとつのエントロピーS の定義を紹介する。ある状態 A から可逆可逆可逆可逆
過程過程過程過程でででで状態 B に変化したとき、その状態の間におけるエントロピーの変化は流
入した熱量を T で割ったものに等しい。このときに流入したのだから、-qrev自
身マイナスだから、全体にマイナスをつけることを忘れない。
T
qS rev−=∆
( 6.5-1)
もしも発熱過程であれば、∆S は減少する。吸熱過程であれば、エントロピーは
増大する。ここでしっかり覚えてほしいのは、 ““““可逆的な変化可逆的な変化可逆的な変化可逆的な変化に伴ってに伴ってに伴ってに伴って吸熱される熱量吸熱される熱量吸熱される熱量吸熱される熱量“を“を“を“を T で割ったものをエントロピーとで割ったものをエントロピーとで割ったものをエントロピーとで割ったものをエントロピーと
呼ぶ。呼ぶ。呼ぶ。呼ぶ。可逆過程でなければ、直接はエントロピーを定義できない。また、吸熱
したときにエントロピーは増大する。この二つをしっかり覚えてほしい。 気体と液体を比べてみよう。気体の方がエントロピーが大きい。気体にするに
は熱を与えないといけないので、エントロピーは吸熱と思っていてよい。 蒸発に伴うエントロピーは1気圧での吸熱する熱量(エンタルピー変化と等し
い)をその温度で割ったものに等しい。すなわちエンタルピーの増加を温度で
割るとエントロピーが出てくる。
T
HS
∆=∆
(前にエントロピーの定義はどれだけ多くの状態をとることができるかあるい
はその状態の確率の大きさであった。エントロピーが大きいとはその場合の数
が大きいということである。ここでは厳密にはこの関係を導かない。しかし、
以下の過程を考察し二つが等しいことを確かめよう。 6.6. 等温可逆過程 それでは、最初に( 6.2-1)式を使ってみる。まず、体積を倍にすることを考える
と、前にやったように Rln2 がエントロピーの増大量になる。次に、( 6.5-1)を使ってみよう。温度一定で圧力を半分の P2 下げる。でもいきなり下げてしまっては可
逆的にはならない。元に戻すには今度は P1の圧力をかけないといけないからだ。では、どう
するか? 答えは、外部の圧力を過ごし下げて、少し膨張させ、また少し下げ
て、温度を常に一定にしながら、変化させたらどうなるであろうか? ほんの少しだけ、圧力を上げて、ほんの少し体積を下げ、PV=nRT が満たされ
るようにする。 このときの仕事と熱の出入りと、内部エネルギーの変化を見てみよう。 仕事は、P,V の状態から P+dP,V+dV の状態にした時のものである。dP も dVも
小さいとする。この仕事の両極端として、P 一定で V を V+dV にし、後で P を
上昇させたときの仕事と V 一定で P を P+dP にしてから、V+dV へ膨張させた
ときの仕事を比べてみる。体積膨張のときに仕事をするから前者は、P∆V,後者は(P+dP)(dV) = PdV + dPdV となるが、dPdV は小さいものと小さいも
のの積だから無視できるくらい小さくなり、どちらも PdV とかける。すなわち、
この過程において、圧力をどう変化させて、仕事をしてもこの両極端の間にな
るはずであり、その両極端が等しいのであるからどの過程を通っても PdV が仕
事になる。 ここまでの論理を整理してみると、ものすごく小さい変化を考え
てやると経路によらず、仕事量は一定で PdV になるということになる。 少しずつ圧力を変えて、この PdV を足し合わせていく。 P1dV+P2dV+P3dV+-------+PndV ここで、dV を全体の変化を n等分したものとすると∆V=(Vf-Vi)/n さて、数学の重要な公式を思い出してほしい。
∫∑ → ∞→ PdVn
nn Vi)/n-(VfPiml
これに理想気体の式を入れると
∫ = )/ln( if VVRTdVV
RT
( 6.6-1)
となる。もし倍になったのであれば、RTln2 となり、T で割ると Rln2 が出てき
て、見事に一致する。 さて、ここで、重要な概念が出てきた。すなわち、可逆的な変化とは圧力をほ
んの少し減らして、変化させることであり、それを足しあわせることである。 熱力学では、このように細かく分けて、足し合わせ、それを積分に変えるといこのように細かく分けて、足し合わせ、それを積分に変えるといこのように細かく分けて、足し合わせ、それを積分に変えるといこのように細かく分けて、足し合わせ、それを積分に変えるとい
う手法が多用されるので、その思考形態になれるようにしよう。う手法が多用されるので、その思考形態になれるようにしよう。う手法が多用されるので、その思考形態になれるようにしよう。う手法が多用されるので、その思考形態になれるようにしよう。 もう一つ大切なことは、( 6.2-1)は過程を考えずに求めることができるが、熱
の出入りで考える場合には、可逆過程を仮定する必要があることである。 なぜだろうか? 前者は考えている系は外界とつながっていない。後者は外界
とつながっている。後者の場合には、外界のエントロピー変化を考えるとちょ
うど-Rln2 になる。
問問問問 6.6-1 なぜ、外界の変化も同なぜ、外界の変化も同なぜ、外界の変化も同なぜ、外界の変化も同じになるのか?じになるのか?じになるのか?じになるのか?
そう大事なことは、可逆過程では、内部のエントロピー増加と外部のエントロ
ピー増加は一致するということで、全体のエントロピーの変化はない。
もし、外界と切り離して、不可逆に変化させると、外界のエントロピー変化は
ないままで、内部だけのエントロピーが変化する。プリゴジンという人がいた。
かれは、常にエントロピーは生み出されていると行った。すなわち、不可逆過
程はエントロピーを生み出す過程である。可逆過程は全体としてエントロピー
が保存される。熱のやりとりはエントロピーのやりとりという風に考えること
ができる。外から入ってきたエントロピーに温度をかけたものが熱の流入と考
えることができる。逆に可逆過程での熱の授受がエントロピーを与えることに
なる。 6.7. 仕事をグラフで求める。 横軸を V縦軸をPとして、上の変化を考えてみよう。 図 6.7-1 にしめすように、P と V は変化する。上の積分は、下の曲線の斜線部
分になる。
0.0 0.5 1.0 1.5 2.00.0
0.5
1.0
1.5
2.0
V
P
図図図図 6.7-1 P-V 曲線曲線曲線曲線 P=P=P=P=nRT/V
温度一定だから、内部エネルギーは変化しない。 したがって、大事な式 wqdU rev δ−δ−= より
PdV
wq rev
−=δ−=δ
( 6.7-1)
入ってきた熱量がすべて、仕事に変わる。
したがって、全過程において、入る熱-q は行った仕事 w に等しい。
i
frev V
VnRTq ln−=
さて、エントロピーはどうなるか?可逆的な変化だから、エントロピーを考え
ることができる。 今度は、等温変化であるから、温度は一定でよい。
i
frev
V
VnR
T
qS ln=−=∆
( 6.7-2)
6.8. 等積可逆過程とエントロピー 今度は体積一定で温度を上げていくことを考えてみよう。 ( 6.2-1)をつかって、考えてみよう。体積を一定としているから、温度が上がっ
ても何も変化しないように思える。しかし、実際には温度が上がり,気体の速
度が増すと,その分速度の分布が大きくなり,状態の数が増すので,エントロ
ピーは増大する.どれだけ上がるかを( 6.5-1)で求めよう. 温度をすこしあげる。このときに、内部と外部とが異なるということを気がつ
かないくらい小さく変化させる。すると、内部の温度も等しくなるように少し
ずつ上がる。ほとんど温度が等しいから熱はどちらにも流れてよいのだが、外
の方がほんのちょっと高いから、外から流れ込む。逆にちょっと温度が低いと、
熱が流れ出し,逆の過程でもだんだん温度を下げていける。したがって、可逆
となる。 すると、PV=nRT より、T も上昇させる必要がある。可逆的にということだか
ら、ほんの少しほんの少しほんの少しほんの少し、温度を上昇させ、圧力をほんの少し増す。 このときに、外部へ放出した熱と仕事を考えてみる。 温度がちょっと上昇し
たのだから、内部エネルギーが増えたことになるが、体積が一定だから、内部
エネルギーの増加量と入ってきた熱-q は等しい。(熱が入ってきたから、q自
身はマイナスになる。それにマイナスをつけたから-q はプラスの量。)
qdU δ−= (d とδはちょっとという意味する。状態量の前は d をつかい、熱量
や仕事などの経路に依存する量の前はδを使って区別する)となる。1mol の理想
気体の場合、 RTU2
3= であるから、
RdTdU2
3= )0( >dT となる。したがっ
て、入ってきた熱量は、 RdTq2
3=− δ
である。
P,T,V Q
T
問問問問 6.8-1 さて、さて、さて、さて、dTj 上昇したときの圧力上昇上昇したときの圧力上昇上昇したときの圧力上昇上昇したときの圧力上昇 dP を調べてみよう。を調べてみよう。を調べてみよう。を調べてみよう。
問問問問 6.8-2 圧力を一定にして、膨張させるときには、どうなるであろうか?圧力を一定にして、膨張させるときには、どうなるであろうか?圧力を一定にして、膨張させるときには、どうなるであろうか?圧力を一定にして、膨張させるときには、どうなるであろうか? 温度の上昇と体積温度の上昇と体積温度の上昇と体積温度の上昇と体積
の増加、熱のやりとりを考えてみよう。特にエンタルピーを考えると、上の議論がかなり使えの増加、熱のやりとりを考えてみよう。特にエンタルピーを考えると、上の議論がかなり使えの増加、熱のやりとりを考えてみよう。特にエンタルピーを考えると、上の議論がかなり使えの増加、熱のやりとりを考えてみよう。特にエンタルピーを考えると、上の議論がかなり使え
ることに気がついてみよう。ることに気がついてみよう。ることに気がついてみよう。ることに気がついてみよう。
それでは、この過程のエントロピーの変化を調べてみよう。上の定義に従って、
T
qS rev−=∆ を計算すればよいのだが、温度はどれに取ればよいのか? 上の可
逆過程の考察から、熱が入ってくるに従い、温度も変化させるのであるから、
T は絶えず変化する。そこで、外部の温度をほんの少し上げる。するとほんの
ちょっと熱が入ってくるが、ほとんど温度は一定と見なしてやれる。その後、
ほんの少し温度をあげる。これをみんな足し合わせてしまうという考え方をし
よう。 今温度を T として考えを始める。 ほんの少し熱-δqrev が入ってきたとする。ほんの少しだから、温度は上がらない。 したがって、 TqdS rev /δ−= とかける。さて、足し合わせるときに積分に変える。
このときに入ってきた熱量が温度の関数であればよい。 つまり revqdU δ−= となる関係を使い、ここまでくれば、後は内部エネルギーと
温度の関係 dTnCdU V= を使えばよい。
∫ ∫ ===∆1
2ln2
3
2
3
T
TR
T
dTRdSS
( 6.8-1)
となる。 6.9. 断熱可逆膨張
次に温度一定ではなく、熱が入らない状態で、P2 から P3 にさらに膨張させ
たとしよう。しかも可逆的に膨張させる。熱が入らない状態で、膨張させるの
だから、内部エネルギーと仕事、熱の関係式 wqU −−=∆ において、 wUq −=∆= ,0 となる。可逆的に変えるときには、少し
ずつ、仕事を外にして、少しずつ温度を下げていかないといけないであろう。 (準静的過程でということ)少しずつということで、dU,δw と書く。
wdU δ−= この少しずつの変化は可逆であると仮定する。(温度や圧力の違いは全くない
という意味と思っていてよい。でもちょっとある。) dTnCdU V=
PdVw =δ PdVdTnCV −=
( 6.9-1)
一方理想気体だから、 nRTPV = でもある。
dVV
nRTdTnCV −=
( 6.9-2)
これは、微分方程式である。
V
dVR
T
dTCV −=
∫ ∫ −=3
12
3
2
T
T
P
PV V
dVR
T
dTC
2
3
2
3 lnlnV
V
T
T
R
CV −=
これを整理すると、
constTV RCV =/22
( 6.9-3)
というとても大切な断熱可逆過程の式をえる。理想気体であれば、必ず成り立
つ。 さらに CV/R=3/2 であるから、
constTV =2/322
( 6.9-4)
0 20 40 60 80 100
0
2
4
6
8
10
Adiabatic
T=constant
P
V
図図図図 6.9-1 断熱過程と等温過程(横軸、縦軸は任意)断熱過程と等温過程(横軸、縦軸は任意)断熱過程と等温過程(横軸、縦軸は任意)断熱過程と等温過程(横軸、縦軸は任意) Adiabatic とは断熱過程のことである。とは断熱過程のことである。とは断熱過程のことである。とは断熱過程のことである。
問問問問 6.9-1 この断熱可逆過程におけるエントロピー変化は0である。説明せよ。この断熱可逆過程におけるエントロピー変化は0である。説明せよ。この断熱可逆過程におけるエントロピー変化は0である。説明せよ。この断熱可逆過程におけるエントロピー変化は0である。説明せよ。
では、( 6.2-1)で考えてみよう。 温度の下降によるエントロピーの変化は、 であり、体積によるエントロ
ピーの増加は である。これを足しあわせると、ちょうど 0 になる。だ
からエントロピーの増加はない。
問問問問 6.9-2 これを証明せよ。これを証明せよ。これを証明せよ。これを証明せよ。
6.10. カルノーサイクル さて、上で、等温で膨張するとすべての熱が仕事に変換された。(摩擦熱等は
無視している理想型です。)しかし、このままでは、一回きりとなる。自動車
のエンジンはピストンが行ったり来たりして車を回すわけだが、そのまま戻し
たのでは、可逆過程だから、せっかくした仕事がそのまま熱に変わってしまう
だけで、つまらない。そこで、( 6.6-1)をじっと見ていると、仕事の量が温度に仕事の量が温度に仕事の量が温度に仕事の量が温度に
比例していることに気づくと思う。比例していることに気づくと思う。比例していることに気づくと思う。比例していることに気づくと思う。温度がさがれば、圧縮過程のあいだに外か
らされる仕事量は小さくなる。したがって、この二つの温度を可逆的に結びつ
けてあげればよい。温度の下げ方として、二通りある。等積可逆過程と断熱可
逆過程である。ここでは、断熱可逆過程で変化させるカルノーサイクルを考え
てみる。カルノーサイクルは等温膨張過程、断熱膨張過程、等温圧縮過程、断
熱圧縮過程の4つからなって、一回りし、熱を仕事に変換する。
1
2lnT
TR
図 6.10-1 カルノーサイクル 1.V1,TH,P1 とする。V2 まで等温で膨張させる。このときの仕事、熱、内部エネ
ルギーの変化は、
内部エネルギーの変化=0(温度一定だから)内部エネルギーの変化=0(温度一定だから)内部エネルギーの変化=0(温度一定だから)内部エネルギーの変化=0(温度一定だから) した仕事wした仕事wした仕事wした仕事w1=入ってきた熱量=入ってきた熱量=入ってきた熱量=入ってきた熱量-qH
1.等温可逆膨張
等温可逆膨張
2.断熱可逆膨張
断熱可逆膨張
3.等温可逆圧縮 4.断熱可逆圧縮
断熱可逆圧縮
等温可逆圧縮
圧
力
TH
1
2211 ln
V
VnRTPdVw H
VV == ∫
( 6.10-1)
2211 PVPV =
( 6.10-2)
2. 次に熱の授受をなくし、断熱膨張させる。仕事は、内部エネルギーの変化
に等しい。このときに温度を TLまで下げたとする。
内部エネルギーの変化∆U=nCV(TL-TH) 仕事量 w2=-∆U 熱の出入り=0
2/3
2
112/3
23
2/33
2/32
=
=
=
L
H
L
H
LH
T
T
P
PV
T
TVV
TVTV
( 6.10-3)
)()(2/3
)(2/3
/
3/22
3/23
3/22
3
2
3/53/22
LHvLH
H
V
V H
TTnCTTnR
VVTnRV
VdVTnRVPdVw
−=−=+−=
==
−−
∫∫
(6.10-4)
問問問問 6.10-1 式式式式(6.10-4)を自分で導いてみよう。を自分で導いてみよう。を自分で導いてみよう。を自分で導いてみよう。
このように、仕事と内部エネルギーの減少は一致する。 3. 次に TL 一定で収縮させる。この時外部からする仕事-w は
3443 /ln VVnRTPdVw L
VV ==− ∫
ただし、V4はこのあと可逆的な断熱圧縮で、もとの状態にもどるということ
で決まる量である。
2/314
2/31
2/34
)(L
H
HL
T
TVV
TVTV
=
=
( 6.10-5)
問問問問 6.10-2 ( 6.10-3) とととと( 6.10-6)から、から、から、から、V3/V4=V2/V1 となることを示せ。となることを示せ。となることを示せ。となることを示せ。
4. 最後に断熱可逆過程でもとの戻す。このときにされた仕事は、内部エネル
ギーの増加分になるから、
)( LHV TTnCwU −=−=∆
である。 それでは、この1周の過程で、どれだけの熱が仕事に変わっただろうか? 断熱過程では、膨張と圧縮で仕事は等しいので正味 0 である。 等温過程では、
1
2ln)(V
VTTnRw LH −=
入ってきた熱量-q は
1
2lnV
VnRTq
H=−
従って、熱の仕事への変換率ηは
H
LH
T
TT
q
w −=−
=η
( 6.10-6)
となる。
問問問問 6.10-3 熱のままで放出される熱量は熱のままで放出される熱量は熱のままで放出される熱量は熱のままで放出される熱量は1
2ln
V
VnRTL であることを示せ。であることを示せ。であることを示せ。であることを示せ。
さて、このカルノーサイクルでエントロピーはどう変化しただろうか?断熱過
程では、エントロピーの変化は 0 である。では、等温膨張過程ではどうだろう。
( 6.7-2)にしたがい、膨張過程では1
2lnV
VnR である。圧縮過程では
1
2lnV
VnR− であ
る。すなわち、元に戻る。カルノーサイクルでエントロピーは変化しない。
6.11. エントロピーは状態量 任意の可逆過程で状態Αから状態Βに変化させたとき、その二つの過程に伴うエ
ントロピー変化は等しいことを証明しよう。 この二つの過程を一緒にして2番目の過程を逆に動かすとサイクルを作る。可
逆だから、逆に動かしても同じはずである。
図図図図 6.11-1 任意のサイクルをカルノーサイクルに分割する。任意のサイクルをカルノーサイクルに分割する。任意のサイクルをカルノーサイクルに分割する。任意のサイクルをカルノーサイクルに分割する。
このとき、このサイクルは図 6.7-1 のように小さなカルノーサイクルに分割で
きる。したがって、このサイクルにおいてもエントロピーは0であり、2つの
過程でエントロピーは同じことになる。 エントロピーはどういう径路で変化したかによらないすなわち状態量であるこ
とがわかる。
A
B