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Vol. 29 No.149 電波研究所 季 報 February 19回pp.39-53

2. 周波数と時聞の計測法

小宮山牧児*

1. まえがき

1秒がセシウム(Cs)133原子の基底状態の二つの超

微細準位聞の遷移に対応する放射波の9192631 770周期

の継続時間で定義されているように,周期の逆数である

周波数の計測と時間(間隔)の計測は全く同じ意味をも

っているといえよう.

11.1 (3)式にあるように,周波数の瞬時値 ν(t)は時間

tの関数として次式で与えられる.

ν(t)=ν。[l+y(t)]

乙乙で, ν。は公称周波数, y(t)は規格化周波数変動分

である. ν(t)は y(t)のために ν。の周りにゆらいでお

り,周波数の測定値は常にある不確定部分を有してい

る. y(t)は不規則変数であるため周波数の不健定さは,

11.1で述べている周波数安定度という統計的尺度で示さ

れる.

乙のように,周波数と時間の精密計測は ν(t)の変動

部分として観測される y(t)をいかに精度よく測定する

かということになる.したがって,ここでは周波数(時

間)の精密計測=周波数安定度の測定としてとらえ,主

として周波数安定度の測定法について議論している.

11.1で述べられているように,発振器の周波数安定度

の尺度として周波数領域では y(t)のパワースペクトラ

ム密度品(/),時間領域では Allan分散 σ刊のがそ

れぞれ定義されている.乙こで, f, T はそれぞれフー

リエ周波数及びサンプル時間である.

周波数領域では一般IC初診分析器でスペクトラム密度

を測定する.fのすべての領域で Sy(/) が測定できる

ならば, y(t)の統計的性質は全部求まる乙とになるが,

f<IHzでの変動成分を波形分析器で測定することは,

時聞がかかる等で現実的でなく, Sy(/) の測定は通常

fミlHzでなされることが多い.

内•(r)は一般に,周波数カウンタで測定される抗

内2(-r〕も Tのすべての領域で測定できるわけではな

く,高精度の測定は r;;;;lmsでなされることが多い.

したがって, 現実に測定される Sy(/) は y(t)の比

較的早い変動成分の評価に有効な尺度となり,現実に測

定される内2(-r〕は y(t) の比較的ゆっくりした変動成

分の評価に有効な尺度であるといえよう.このため,目

*周波数標準部標準値研究室

39

的に応じてら(/), σ世代τ)を単独で, あるいは併用し

て周波数安定度を評価することが必要となる.

AM雑音を無視できる場合は, 波形分析器で RFパ

ワースペクトラム密度を測定することにより位相雑音ス

ペクトラム密度品(/)を推定できるが(次節で述べて

いるように実際測定しているのは通常 Sy(/) でなく

ら(/)である),波形分析器のダイナミックレンジは80

dB程度である.また,周波数カウンタによる周波数の

測定精度は,最も性能のよいものでも τ=lsで 10-10

程度が限度である.

一方,高品位の水品発振器では, S9(/=lkHz)~

-170dB,内(r=ls)~10-13 といった高安定性を有し

ている.また,水素メーザでは内(r)の noisefloor

が~10-凶にも達する.乙のため,測定精度を上げるた

めの技術がいろいろ開発されている.

乙こでは,主としてこれらの高安定発振器の周波数及

びその安定度の測定法について報告する.2.では,周波

数領域における測定法, 3.では,時間領域における測定

法について述べている.周波数や周波数安定度測定で

は,増幅,周波数分周,周波数逓倍等の信号処理をする

ことがしばしばあるが, 4.では信号処理による付加雑音

について論じている.

なお,距離的IC離れた地点聞における周波数,時間の

計測法として標準電波,衛星等を利用した電波による計

測法があるが,乙乙では触れていないので興味のある読

者は,本特集号 v.を参照されたい.

周波数安定度の測定法については,既iζ文献(1)で安田

らにより広範囲にわたり詳細に報告されているが,乙こ

では比較的よく用いられる測定法について測定原理,測

定限界を明確にすることに重点をおいて報告するととも

に,著者らが実際利用している測定法については,当室

での測定システムの一部を紹介した.

2. 周波数領域における測定法

2. 1概要

周波数安定度を測定しようとする発振器の出力電圧

V(t)を時間 tの関数として次式で表す.

V(t)= v;。[1+m(t)] sin [2iτνot十。(t)]…ー・(1)

乙乙で, Vo, ~o はそれぞれ電圧振幅及び周波数の公称

値である.また, m(t)は振幅変動成分,。(t)は位相の

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40 JI.周波数と時間の計測 電波研究所季報

変動成分を示しており,ともにゆっくり変化する関数で

ある.m(t)《1であれば(通常満足されている), m(t)

は引t)の測定に直接影響を及ぼさない.。(のの無限

時間平均<針。>は零と仮定する.

y(t)は次式で定義されている.

1 d<j>(t) y(t) =一一一一一- ・・・・・・(2)

2πνo dt

周波数領域での周波数安定度の尺度はらCf)で定義さ

れているが, y(t)を高精度iζ直接測定できる装置は通

常ないので(周波数弁別器は周波数変動分を電圧に変換

する装置であるが一般的でない),実際はゆ(t)を測定

する乙とが多い.このため, 乙れ以降はおCf)の測定

法について論ずる.らCf)は次の関係式から求めること

ができる.

SvCf) =(寸)2s?CJ) ・・・(3)

らCf)の単位は[rad2/Hz]である.10 log [SφCf)]と

して dB表示で示すとともある.また, 低域の遮断周

波数 foIC対して

J7o S~(f')df' ~1 (rad)2 ・・・(4)

が満足されているときは, f>foで, 11.1,3で定義さ

れているスクリプト(script)よ(/)で位相雑音スペク

トラム密度を表すととができる.乙のとき,

工ω寸S~(f) 同である...£:(/)の単位は Hz→であるが, lOlog[よCf)]

として普通 dBで示す. (4)式の条件は, 高安定発振器

では十分満足されている.周波数合成器の仕様等で位

相雑音を示す尺度として, lHz帯域l隔における SSB

(Single Side Band)位相雑音(単位: dBc/Hz)がし

ばしば用いられるが,とれは 11.1(4司式のよCf)の定

義から明らかなように ..£:(!) の dB表示と全く等価な

量である.

とのほかに, lHz隷;域幅の rms周波数推移 <of2>1ノ2/=/m (マイクロ波帯でよく用いられる)や, (NJC)

dB で y(f)のスペクトラム密度を表示することがある

が,乙れらの尺度と SuCf)の関係、については II.I,3を

参照されたい.

_[Cf)の定義からわかるように,波形分析器で RFパ

ワースペクトラム密度を測定すればらCf)を計算でき

るが,波形分析器のダイナミックレンジが 80dB程度

と小さいとと,また,キャリア近傍の測定が難しいとと

から Sバf)の測定には適当でない. ζのため, 2.2で

述べているように被測定信号の位相と,被測定信号と周

波数が同じ基準信号の位相を位相検出器で比較し,。(t)

の成分だけを取り出すととによりダイナミックレンジの

問題及びfの低い領域での測定の問題を解決している.

2.3では,被測定信号と基準信号の位相関係を適当に保

つため位相ロックをかけたときの S;(f)の測定法につ

いて論じている.2.4では, 2.2,2.3の測定系における

測定限界すなわちシステムノイズについて検討してい

る.

乙こで述べている周波数領域の測定では,すべて波形

分析器によりスペクトラム密度を測定しているが,波形

分析器で測定可能な最小のフーリエ周波数は通常 1Hz

程度であるので, S世Cf〕の測定は/~lHz で行われる

ととが多い.

スペクトラム密度を測定するには,上述の波形分析器

のほかに,。(t) の時間領域のデータから Blackman

and Tukeyの方法(I)や II.I,3で述べられている Ha-

damard 分散により S~(f) を推定する方法がある.こ

れらの方法はとりわけ J<lHzでの測定に有効である

が,ことでは紹介だけにとどめておく.なお, 超 LSI,

7 イクロプロセッサの出現により,最近では時間領域の

データからスペクトラム密度を測定する波形分析器も商

品として出ており, J<lHzでの測定も可能となってい

る.

2.2 位相検波器を用いた S;(f)測定の原理問

{1)式で示される被測定信号の位相変動分を検出するに

は,一般に周波数の同じ基準信号 VR(t)の位相とゆ(t)

を位相検波器(PDS)により比較する. VR(t) を次式

で表す. Vr,φ(りは,振幅の公称値,位相変動分をそ

れぞれ示す.

VR(t)= v,γsin [2irνot+φ(t)]

第1図に位相比較のブロック図を示す.移相器によ

り, VR(t)の位相がのだけ縫移されている.同図に

あるように PSDとして,低雑音とバランスの良さから,

ショットキダイオードを用いた二重平衡混合器(DBM)

が一般に用いられている.以下, PSDとして DBMを

用いるものとする.

OSCILLATOR UNDER TEST

j¥) V(t)

REFERENCE OSCILLATOR

第l図位相雑音測定プロック凶

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Vol. 29 No.149 February 1983

DBMが線形動作をしている場合は,低周波出力

Vx(t)は次式のように正弦波で与えられる.

Vx(t)= Vd cos [ゆ(t)-¢r(t)-¢s]

。・=π/2I乙設定すると, 。x(t)三ゆ(t)-¢r(t)キO ゆ

え,

Vx(t)= Vd sin [¢x(t)]……(6)

=亨 Vd¢x(t) ……(7)

(7)式は, DBM出力の零交差点の土π/6の範囲では

5%以下の誤差内で Vx(t)の近似式となる.

PSDの感度 Kd(V/rad)は,

Kn.-dVx I a -lft.石\中X=、 ・・・(8)

と定義される.乙の場合,(6)式にあるように, Kd=Vd

なので, のを変化,若しくは一方の発振器の局波数を

少し離調させて,出力正弦波の振幅を測定する乙とによ

りKdを求めることができる. vdの値は, DBMへの

入力信号レベルと, DBMの変換損失によって決まる.

。(t)と φ(t)は独立なので,(7)式より

S¢x(f) =Kd-2Svx(f)

=S~(f) +S~r(f) ……(9)

となる.通常,次の(i ), (ii)の条件を満足するように基準

発振器を選ぶ乙とが多いので,

(i) S;(f)=::S;rC/)のとき,

S¢C/)=::Kd-2Svx(/)/2 ・…・側

(ii) S.p(f)》S;rC/)のとき,

S;(f)=::Kd-2Svx(f) ……an となり, Svx(f)を測定するととによりら(/)を求め

る乙とができる.

Svx(f)は,波形分析器で測定される.波形分析器で

は,設定された帯域|隔 B〔Hz]での電圧の実効値 Vrms

を測定する. 帯域幅内で Svx(/) が一定であると仮定

すると, f=fmでのスペクトラム Svx(/m)は,

SvxCfm)= Vr附 2;B V2JHz ……U2l

となる.

いま,例として S¢x(f心=-150 dBの位相雑音を測

定するものとする。 Kd=0.15V/rad,B=lOHzとする

と,(9),(12)式より Vrms=15nVとなる.一方,波形分

析器の入力感度は, μV程度なので,通常 DBMの後

K,低雑音増幅器が必要となる.

2.3 位相ロ ・1クループによる 89の測定問

前節で述べたように, S;(f)を測定するときは, DBM

出力の零交差点の士r.:/6の範囲になるように, 2台の

発振器の位相差を保つ必要がある. いま, νo=5 MHz

の発振器の S9(f)を測定する場合を考えてみよう.基

準発振器との周波数差を b とし,測定に要する時閣を

15minとする. ±π/6を満足するためには,

41

|会J~l. sx 10-11

となる.このように測定時間中, 2台の発振器の周波数

差を10-11台IC保つ必要がある. ν。が大きくなると,乙

の条件は吏に厳しくなる.

以上のような理由により,位相ロックループ(PLL)

で2台の発振器の位相差を π/2に保つ方式が通常用い

られている.第2図に,そのブロック図を示す.乙の場

合,基準発振器は電圧制御発振器(VCO)である.PLL

の関係式により(ペ

μKd[ゆ(s)-</>o(s)-tj>γ(s)]=Vx(s) ……凶)

stf>o(s)=KoF(s) Vx(s) ……凶が成り立つ.ただし, <Poet): vcoの電圧により制御さ

れる位相, μ:増幅器の電圧利得, K。: VCOの FM変

調感度[rad・s-1 • V-1], F (s):フィルタの伝達関数であ

る.そのほかの変数は, 2.2と同じである.ただし, 乙

乙で Vxは増幅後の DBM出力を示している.また,

sはラプラス変数である.

(13), U4J式より,

Vx(s) μKdS [ゆ(s)-</>r(s)]……回s十μKoKdF(s)

=μKdE(s)[ゆ(s)一φ(s) ] ・ …・・a日ただし, E(s)は誤差応答で,

E(s)= ーとー,、S十 μ

である. sが次の条件を満足していると,

Isl》μKoKdlF(s)I

E(s)=::lと近似できるので,

Vx(s)竺 μKa[ゆ(s)一φ(s)]

となる.。(t)と φ(t)は独立なので,

・・a百

・・・・U8l

・・・(!骨

Svx(/)=::μ2Kd2[おCf)+S,ir(/)] ・・…側

したがって, 2.2と同様に, Svx(f)を測定することに

よりお(/)を求めることができる.

K。

第2凶 PLL による位相雑貨測定!反E童図

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42 II.周波数と時間の計調lj 電波研究所季報

R

叫吋I:。 1 F(s)=一l一+一s一r

-10ト / (a)

(b)

( ) ・昌胸、s'+Z~wns

凶E(s)= ジ+2~由s+wn'

2010 I

(でwとn) 10° 10

m3図 RCフィ Jレタ(a)及び C=l/ゾ2としたときの誤

差応答(b)

例として, F(s)が第3図(叫にある簡単なフィ Jレタの

場合について E(s)を計算してみる. F(s)は次式で与

えられる.

F(s)=ーユーl+sr

... (21)

ただし, r=RCである.間式を(!司式に代入すると,

s2+21:wns E(s)= 円 2 ・・…凶

2+2Cwns+wn

となる.自然角周波数 Wn(=2πfn),減衰率 Cは

ω戸(_E_苧 y12

C=l_し_!__γ2 ¥ μK0Kdr I

.. ・(23)

・....(24)

である.C=l/ ./2としたときの !E(jw)Iの周波数特

性を第3図(耐と示す.f孟3/nのフーリエ周波数H:::対し

ては, ldB以下の誤差で /E(jw)/ 手1と近似できる.

したがって, fnの値を,測定する最小のフーリエ周波

数の 1/3 以下に設定すれば, ldB 以下の誤差内で S~(f)

を測定できる.

ぬCf)は通常, f註lHzで測定されているが,第3

図の例では上述の理由tとより, fnを 0.3Hz程度に設

定する必要がある.一方,第2図の PLLでロックが安

定にかかるために2台の発振器It:許容される最大の周波

数変動(holdin range)は fn 程度であるので, ν。が大きく, かつ fの小さい領域まで測定するときは,

それぞれの発振器に相当の周波数安定度が要求されるこ

とがわかる.

2台の発振器lζdν の周波数差があると, velocity

errorれは次式で与えられる附.

。 2πdν旬 μK0KdF(O)

・・・凶

したがって,仇;£7r/6となるように b を調整する必要

がある.通常,第3図(乱), あるいは F(s)=lのような

フィルタで十分であるが,。旬を常に Ol乙保つために

F(s)として二次のアクティプフィルタを用いることが

ある(5).

第2図の PLLでは, fη を小さく,すなわち hold

in rangeを小さく設計しているので, “loose phased

lock,,と呼ばれている.

当研究室でのら(/)測定システムを第4図に示す.

基準発振器は, 5MHz水晶発振器である.PLLの各定

数を同図に示しである.ここで用いられている波形分析

器の最小測定周波数は20Hzなので, fn=5Hzk設定

している.

2.4 デバイスの位相雑音測定及びシステム雑音

増幅器やフィルタのようなデバイスの付加位相雑音の

測定は, 2.2で述べた方法を直接応用できる.第5図

l乙そのプロック図を示す. DBMの両チャネルに同一

の信号が入力しているので, DBMの平衡が完全であれ

osc. UNDER TEST

,.0.06μF REFERENCE T VCO mア

K0=0.29 (rad・s '・V-1)

第4図 PLLによる位相雑音測定システム. PADは可

変減衰穏を示す.

第5図増幅器やフィノレタのようなデバイスの付加位相雑-J;t'を測定する場合の測定系

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43

ME』Jと壬〕

ω凶E-。ν富一gm』必』四-aE剖

Uロ

a

、POO

H

nu l

。: 5MH7. Ccystal osc;Jlatoc phase 『IOISC

o Sv叫 cmno;sc

x : DC ampl;f;ec equivalent input noise voltage, Rs=SO!l

、、J、、、「コ、、ノf→PM

、J吋司J、、一、円、-X x x x xx';; ~、三 x x x x xχx x x x

0

0 O f'PM . ・• • _ o _o __ o_-E>-ιー仔σ・..・..・.・..-・.-.

JO"

JO 日

JO"

" :r \

も JU" ・6" 〕

~ 10-凶

1983

ば基準信号の位相雑音の影響は相殺される.移相器は十

分低雑音である必要があるので,第6図にあるように同

軸ケー7•ルを用いた移相器が好ましい山.

システム雑音は,第5図でデバイスのところを短絡す

ることにより同様に測定できる.DBM出力での等価雑

音を en(t)とすると,片チャネルあたりのシステム雑音

February No.149 Vol. 29

JO "

『〔H7.〕

第8図 5阻 iz水品発振器位相雑音の測定及びシステム雑音.また, 第7図にある直流士割高器をsonで終

端したときの等価入力雑音も示しである.

雑音電圧は,現在報告されている最も良いもので lnV/

JHz程度なので川(ちなみに, 50il抵抗の発生する

熱雑音は室温で~0.9nV/J Hz である),上述の計算

例からわかるように,システム雑音は十分でない.この

ため, Kaを大きくしてシステム雑音を下げる試みがな

されている.文献(8)では, DBMの各アームにショット

キバリアダイオードを2個直列に接続し,動作電力レベ

Jレを上げたり, DBMを定格以上の電力で駆動して Ka

を大きくしている.乙の場合, DBMの出力はもはや正

弦波でなくなるので,実際の出力波形から(8)式に従って

Kaを求める必要がある.

システム雑音及びデバイスの位相雑音の測定では,基

準発振器の位相雑音は相殺されるものとして無視してい

るが,実際の DBMの平衡性は完全でないので,基準発

振器は十分低位相雑音のものを使用すべきである但) (10).

これまで述べてきたように,位相雑音の測定では微小

電圧を測定しているので,ハムの誘導による悪影響がし

ばしば問題になる.したがって,測定系のグランドの設

計には,十分注意する必要があるuu.

のスペクトラム S向(/)は,

S~o(/) =Ka-2Seη(/)/2 …・・伽)

となる.en(t)は, DBMの雑音と増幅器入力換算雑音

の和として与えられる. 白色雑音領域では, Sen(t)は

ほとんど増幅器の雑音によるものである.乙のため増幅

器の低雑音化は大変重要である.第7図IC当研究室で用

いている低雑音増幅器を示す附.初段のトランジスタの

電流は最も雑音が小さくなるように設定している.入力

を50ilで終端したときの, との増幅器の入力換算雑音

電圧は~2.2nV/J Hz である. DBMを線形動作さ

せているときは, Ka ::::::0. 15 V /rad程度となるので,

向。(/)は 160dBとなる.第8図iζ,第4図の測定系

で測定した 5MHz水晶発振器の位相雑音とシステム雑

音を示す.また,同図には,増幅器のみの入力換算雑音

電圧も示しである.

最近の高品位水晶発振器では白色位相雑音レベルが

~ 170 dB ICも達している.一方,増幅器の入力換算

JO' 10' 。υI

nu I

第6図 500同制lケープノレを使用した可変位相推移探.文献(3)より引用

時間領域における測定法

3. 1概要

(1)式で示される信号の時間領域における周波数安定度

の尺度内2(r)は,次式で与えられている.

Yk+1-Yk)2 y2(r)=<一一言一一ー> ・--・・・白骨

3.

Ykはy(t)の T 秒平均

... (28)

・・・側

< >は無限時間平均を示す.

値で

、Bノ-

-R

a’h

v

r,‘、-一一

TO

、,,-UV

IT--

π

+一

2ER

2Tau

Yk=-H~:+'y(のQ,~Q, : 2SCl637

第7図低雑音直流増幅器.トランジスタ Qi.Qz のコレクタ電流は, Q3のエミッタ抵抗を可変してj法適

備に設定できる.とこでは約420μAlζ設定しである.

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44 JI.周線数と時聞の計測 電波研究所季報

ER

t-

rE

、一X

一、J一TT

一ムT

一Lez

az--- rz

、-X

一・・・(30)

である.ただし, tk+1=tk+T,k=0,1,2,…であり, T

は以下に示されるように r秒測定の繰り返し周期であ

る.また, X(のは時間の変動分を示しており, 次式で

定義されている.

X(t)=卓立..,,.ν。 ・・・!3D

周波数領域と同様に,時間領域でも y(t)を直接測定

する測定器は一般になく,位相差若しくは時間差を測定

して閥,側式より九を求めている.時間差(位相差)

を測定して Ykを求める方法は二つに大別できる.

第 1の方法は,周波数カウンタで周波数測定(3.2で

述べるように高精度測定では周期測定をして局波数を求

めている)をして Ykを求めるもので, 乙のとき周波数

カウンタが表示する周波数は T 秒平均の周波数 Eで,

ii=ν。(1+Yk) H ・H ・曲目

となる.いま,変動分だけに着目すると,このとき周波

数カウンタが計測しているのは第9図(酬と示すように時

間軸上で r秒離れている点の時間差 JX(k)で, T秒

どとに測定している.ただし,

JX(k)=X(tk+"l")-X(tk)

Yk= JX, k τ

・・・側

・・・(34)

X(。

.dX1.2(k +2)

.dX,,,(kH) X(t) I .dX,,,(k)

(b)

第9図時閉鎖域における周波数の測定法.(叫周波数カウンタによる弘の測定.Y•=dX(k)/r. (防二つの信号の時間差測定による周波数変動の測定..Yi. 2. •= [dXi. 2(k+l)-dXi. 2(k)]/r.

である. 3.2で述べるように, T>"l"となり必ず空き時

間(deadtime)が生じる. 乙の測定法は簡便なζ とか

ら最も頻繁に用いられており,周波数カウンタによる直

接計測から高精度測定まで広く利用されている.

第2の方法は被測定信号の位相と,被測定信号と周波

数の同じ基準信号の位相の差を,タイムインタパルカウ

ンタ(T.I.カウンタ)若しくは位粗計で測定し九を求

めるもので,第9図(酬と変動叶だけに着目したときの二

つの信号源 osc.れ,帯2の位相を示している.T.I.

カウンタで測定しているのは, t=tk における時間差

JX1ぷめで T 秒どとに測定している.位相計では時間

差が連続的lζ記録されているが, Ykを求めるという点

では, T.I.カウンタと全く同じである. JXi.2(めは

次式で与えられる.

JX1,2(k)=X1(t心-X2(t.心……闘

添字は osc.者I,非2にそれぞれ刻応している.いま,

Yi.2,kを次式で定義する.

Yi.2,k=Yi.k-Y2.k

ととで Yi.k,Y2.kはそれぞれ, 0⑤c.書1,帯2の規格化

周波激変動分の T 秒平均値である.側,闘式より

Y1.2,k= JXi.2(k+ 1)-JX1ぷk) ......側"l"

となる.したがって,隣り合う JX1ぷめの測定値から

Y1.2,kを求めるととができる.一方, Yi.k,Y2,kは統計

的に独立なので, Yi.2,kの値から osc.書I,書2のアラ

ン分散を推定できる.との測定では,二つの信号源の位

相差を時閣の関数として測定しているととから T=τと

なり空き時間性じない.との測定法は必ず被測定信号

と基準信号の周波数が等しい必要があるが(周波数が等

しくなければいけない理由は3.5で述べる)乙のととは

逆K,発振器閣の周波数差が必要ないという有利な点で

もある.との方法は通常の周波数測定には用いられない

が,高安定信号源の周波数較正や長期安定度の高精度測

定等に適しているとされている.最近では,空き時聞が

ない乙と等に注目して短期安定度の高精度測定にも応用

されでいる.

倒,側式からわかるように,いずれの測定法でも時間

差の測定精度により九の測定精度が決まo.エレクト

ロニックカウンタの時間差の測定精度は lOOps程度が

限度であるが, "l"=lsとするととのときの h の測定精,

度は 10-10となる.また,位相計では, ν。=5MHzで

1.5。程度(一般に入力周波数により異なる)の精度の

ものが市販されているが, ?"=lsとするとζのときの

hの測定精度は 8.3×10-10 となる.

乙乙では,まず3.2で時閉鎖域の測定で最もよく使用

されるエレクトロニックカウンタの動作原理を述べ,

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Vol. 29 No.149 February 1983

3.3以降では,上述の二つの測定法を高精度化したとれ

までによく知られている測定法について述べている.

3.3のビート法, 3.4の位相ロックループを利用した計

測法は,第1の周波数測定法を高精度化したものであ

り, 3.5の時間差法, 3.6の DMTD法は第2の時間差

測定法を高精度化したものである.

3.2 エレクトロ::.'1クカウンタの動作原理

時閉鎖域における周波数安定度測定では,エレクトロ

ニックカウンタ(以下カウンタと略す)により直接周波

数測定する乙とが最も簡便な方法である.

カウンタの機能は年々向上しているが,現時点での最

高技術では,

(i)周波数レンジ 40GHz

(ii) タイムインタルパル(T.I.)分解能 ±20ps

の測定が可能となっている.

乙とでは,周波数安定度測定の際しばしば用いられる

周波数測定,周期測定, (T. I.)訊!!定の機能について,

主と d て文献聞に従って簡単に説明する.

(1)周波数測定

第10図(乱)にあるように,カウンタ上で設定されたゲ

ート時間 T の聞に入力信号が何回繰り返したかを測定

し,その回数を N とすると平均周波数 Eは,

v=N.-1 ・…・・聞

で与えられる.周波数測定の基本的なブロック図を第

10図(b)に示す. 同図での基本要素として次の五つが挙

GATE

PULSE

INPUT

SIGNAL

Gし j八 lハケ!.I v v I

INPUT & TRIGCER

CIRCUITS

(b)

第 10図周波数カウンタ周波数測定モード.(州言号波形(b)基本プロック図

45

げられる.

(イ)入力回路とトリガ回路;入力信号を増幅器とシュ

ミットトリガ回路を通して,カウンタの内部回路の動作

に適合するように波形整形する.

(吋タイムベース発振器;閉式にある時間 τの発生

部である. 1 MHz, 5 MHz, 10 MHz等の水晶発振器

が用いられている.

付 デイケード・デパイダ;タイムベースで発生され

る信号を入力として, 10進ステップで変化できるパル

ス列を出力し,これが測定時間 rを決定する.

(斗主ゲート;主ゲートが開いているときに,増幅

器/トリガ回路から供給されるパルス列が通過する.主

ゲートの開聞は,デイケード・デパイダによって制御さ

れる.

(ホ) デイケード・カウンテイング・アセンブリ(DCA);

主ゲートを通過してきたパルスを積算する部分である.

例えば,主ゲートが正確に ls開いていた場合の積算値

はそのまま Hzの単位で表示される.

(2)周期測定

第 11図(叫に示すように,入力信号の N 周期と等しい

間隔を有するゲートパルスを作り, その間隔でをカウ

ンタ内蔵のクロックパルス(10MHzのタイムベースの

場合0.1μs)で測定する.したがって,平均周期ρは

ρ=τN-1 ……(38)

となる.第11図(紛に周期測定のブロック図を示す.(34)

式の '1X(k)はこの図lとあるように,実際は T の変動

分として測定される.

(3) T.I.測定

INPUT SIGNAL

GATE PULSE

CLOCK PULSE

!NPげr~'. GNAL

(¥ (¥ f……(' ~ v v メ

(a)

(b)

第11図周波数カウンタ周期測定モード.(吋信号波形(b)プロック図

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電波研究所季報JI.周波数と時聞の計測

10-•

Period measurement

Time base frequency =lOMHz

τ= 1 s

10 8

10 7

io-•

10→3

10-1

10 5

10 •

10 2

向。一言一omOLZωEE2ωSE

L1t

li 1111・ | | !

_Jl

46

START

PULSE

STOP PULSE

GATE

PULSE

CLOCK PULSE

10'

Measurement frequency 〔Hz〕

第 13図周波数測定と周期測定の分解能の比較.タイムベース JOMHz,測定時間 r=lsとしている.

10' 10' 10' 10' 10' 10' 10' 10

T.I.測定第 12図

ックパルスの 1周期が土 1カウントの要因であるのに対

し,周波数測定では入力信号がクロックパルスの役割を

しており,入力信号の l周期が土 1カウント誤差を与え

ている.第13図IC,τ=ls,タイムベース lOMHz,す

なわち, tc=O.1 μsのときの周期測定,周波数測定の測

定分解能を示す.乙の図にあるように周期測定では入力

信号の周波数によらず測定分解能は一定で,また,入力

信号の周波数がタイムベース周波数より低い場合は,常

IC周期測定の方が周波数測定より分解能が高い.

周期測定の方が分解能が高いととから, IC技術の発

展とともに周期測定をして周波数表示をするカウンタ

(レシプロカルカウンタと呼ばれている)が主流となっ

てきている.このため以下に述べる周波数安定度の測定

では,常に周期測定lとより周波数を求めている.また,

特別な技術により±1カウント誤差を除去したカウンタ

も市販されている.

11.1で述べられているように, 内(r〕を計算する際,

測定の空き時間は常に考慮しておく必要があるが,カウ

ンタでは第 10図(司, 11図(司, 12図に示されている測定

の終了の後,次の測定が開始するまでに必ず空き時聞が

ある.

・・・旧日)

周期測定の場合;

測定確度=土 1カウント誤差±トリガ誤差土タイムベ

ースの確度)

となる.第11図(州とあるようにN周期の平均測定して

いる場合は,

第 12図に示すように,ゲートパルスの間隔が, スタ

ートパルスとストップパルスにより決定される. dtが

周期測定と同様にクロックパルスで測定され表示され

る.

(4)測定誤差

カウンタの誤差の原因として,土 1カウント誤差,タ

イムベースの確度, トリガ誤差の三つがある.周波数測

定,周期測定の総合の誤差は,結論的lというと次のよう

iζなる.

周波数測定の場合;

測定確度=±1カウント誤差土タイムスペースの確

度)

となる.第 10図(乱)の測定条件では

±1カウント誤差=す=士(÷)1・

平均周期測定確度=土 1カウント予±トリガ誤差

土タイムベースの確度

となる.乙の場合の±1カウント誤差は,クロックパル

スの周期を tcとすると,次のように与えられる.

士一 1カウント誤差N =±(tc)/r

ビート法(21(!3)

ビート法は内測定の精度を高める最も簡便な方法で

ある.第14図iとそのプロック図を示す.供試発振器の

公称周波数,位相変動分をそれぞれ νo,ゆ(t),基準発振

器の公称周波数,位相変動分をそれぞれ !.Jr, r/>r(t) と

する. ν。>νγ とするとビート信号の周波数 νB及び位相

変動分拘(t)は,

3.3

... (40)

信号の S/N(信号/雑音)が良く, トリガ誤差を無

視できる場合,タイムベースの影響が現れるまでは,

±1カウント誤差によりカウンタの測定確度が決まる.

側,仰)式を比較するとわかるように,周期測定ではクロ

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Vol. 29 No.149 February 1983

OSCILLATOR UNDER TEST

ν。,世(t)

第14図 ビート法のプロック図.シュミットトリガはカウンタのトリガ誤発を避けるために掃入している.

νB=ν。一一νγ。B(l)=ゆ(t)-r/>r(t) ・・・・(41)

となる. ただし, u《ν。とする.定義iとよりビート信

号の規格化周波数変動分 YB(t〕は,次式で与えられ

る.

ーの(t)YB(t) ----,;一一L,πνB

宇」L[y(t)-yr(t)]VB

...,悩

ただし,

ゆ(t) φ(t)ム φ(t)y(t) =三石τ’yγ(t)=三五-;:--:-宝石「

は,それぞれ供試,基準発振器の規格化周波数変動分で

ある.幽式は,ビート法により周波数測定精度が ν。/νB

だけ改善されることを示している. y(t)とYr(t)は独

立であるので(42)式から,

内 B2(τ)=(す)2c内 2(r)十州r)J ・(43)

となる. 2.2と同様に,

( i)σy(r)》σy,(r)のとき,

、,ノ「\B

仰伊σ

B一oν一レ一一ーノT

f,‘、”ug σ

・・・(4~

(ii)σ官(τ)宇σvr(r)のとき,

σν(r) =___!___ヱ互σYR(r) …"・( 45) g 、12 ν0 ,,

となり内B(r)を測定することにより内(r)を求める

乙とができる.

ビート法の測定精度は大変優れており,現在あるほと

んどの発振器の σy(r)を測定できる.この方式の欠点、

は, T の短い領域での測定が困難なことと,空き時聞が

大きくなることである.例えば, 5MHz高品位水晶発

47

振器では 1Hz以上周波数を離調することが難しい.一

方,周波数カウンタの測定時間は,入力信号の 1周期以

上となるので, T の下限は 1/叩となる.したがって,

いまの例ではす>lsにおける内しか測定できないと

とになる. ただし, 11.1第 13図にあるように両方の信

号を逓倍したり,逓倍後周波数合成器の信号と混合する

と任意の νBを設定できる. しかし, 乙の場合, 4.で

述べるように逓倍器や周波数合成器の付加位相雑音が元

の信号純度を劣化させる可能性があるので注意を要す

る.また,周波数カウンタでは,信号処理(datasequ-

ence)において入力信号の 1周期以上の空き時聞がある

ので,データ処理には注意を要する.

3.4 位相ロ '1クループを利用した計測法問

この方式は, 2.3で述べた PLLでループノぜンド幅を

大きくし,ループバンド幅内の周波数成分をもっ信号を

取り出し周波数安定度を測定するものである.この方式

は T孟lsの測定IC適しており, 空き時間をほとんど無

視できるとと,測定バンド幅を容易に可変できる点に特

徴がある.

(15)式で F(s)=lとする 1次ループは,可変できる変

数がループ利得 (μKoKd)しかないので通常それほど用

いられないが円周波数安定度測定のときは,ループバ

ンド幅を大きくする目的で, F(s)=lとしている.よっ

て, U5l式より,

Vx(s)っ議お[ゆ(s)州)] 附)

である. Isl《μKoKap::対しては,

V x(s) =Ko-1s[ゆ(s)-r/>r(s)] ・・・・(4百

時間表示で表すと,

Vx(t)=2πν0Ko-1[y(t) Yr(t)] ……(側

となる. y(t), Yr(t)はそれぞれ,供試発振器,基準発

振器の規格化周波数変動分である. (19)式の場合 Vx(t)

は位相変動に比例しているが,(制式では周波数変動iζ比

例している. したがってこの場合, PLLは周波数弁別

器として動作している. y(t)とyγ(t)は独立なので(48)

式より

σy2(τ)+σνγ2(の=(寸/&-12σd、t:. ν0 I

となり, σvx(r)を測定することにより内(のを求め

る乙とができる. Vxの変動は, 電圧一周波数変換器

(VFC)で周波数iζ変換し, 周波数カウンタで測定され

る. 乙のため, Vx(t)の測定値はやはり聞式にあるよ

うに周波数変動分の T 秒平均値に比例している.

との方式で~1014の測定精度を得ることはそれほど

難しくない.第15図に当研究室での測定系を示す111!.

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電波研究所季報

OSC#2

TIME INTERVAL COUNTER

OSC# 1

Il.周波数と時間の計測48

一九一四川

第 15図 PLLを利用した周波数安定測定システム.混皮による影響を避けるため, ととでは器準 vco及

び測定系を恒温槽fr:収納している.

第16図 T.I.測定による周波数安定度の測定法

クパルスより短い時間間隔は測定できないので, ζの意

味においても分周信号の位相差が1サイクル以上変化す

るのは都合が悪い.とのため, 3. Iで述べたように時間

差測定による周波数測定では2台の発振器の周波数が等

しくなればいけない.

STOP

いま, r=S.6×104s (1日)とし, T.I.カウンタの

測定精度が 0.1μsとすると師団式より九2,k の測定精

度は 1.2×10-12となる.当所では測定精度 lOOps の

T.I.カウンタiとより Cs標準器からの秒パルスを毎日

測定し,同標準器の時間変動を監視している.乙のとき

の .Yi.2,kの測定精度は 1.2×15-15となり, Cs標準器

のルーチン測定には十分な精度である.

ただし,との測定では分周器の jitter による位相ゆ

らぎが十分小さくなるように注意しなければならない.

3. 6 Dual Mixer Time Di宜erenee

(DMTD) 041 11s1法

との方式は比較的最近 NBSで開発されたもので,

3. Iで述べている第2の時間差測定による周波数測定法

を高精度化し,短期安定度の測定にまで拡張した点に特

徴がある.第17図にそのブロック図を示す.とのような

考えによる測定精度の改善は古くから行われていて円

当所でもそrvカラーサプキャリアの位相比較や lOOps

の測定精度をもっ T.I.カウンタの普及以前の Cs時計

データ集録装置に採用されていたが川,いずれも位相計

と組み合わせて長期の周波数及び周波数安定度測定に利

用されている.

乙こで用いている 5MHz電圧制御水晶発振器では,

Ko/2πν。キ8×10-0cv-つである. したがって, ~10-u

の測定精度を得るには VFCの安定度が~10-sである

ことが要求される.VFC(HP 2212 B使用)内蔵の較正

電圧を入力として等価的局波数変動を測定した結果,

r=40 msで内(τ)=4×I0-14,rの大きいととろ(ただ

し 90s以下)では σ〆r)=l×10-14と十分な精度が得

られている山.

F(s)=lの PLLは原理上無条件に安定であるが,実

際はループ内の素子が周波数特性を有しているためルー

プバンド幅(乙の場合Jレーフ。利得に等しい)を無制限に

大きくできない.このため, との方式では r~ls の領

域での測定が妥当である. 第 15図の VFCはプルスケ

ールで lOOkHz(1 V フルスケールのレンジを使用)

のパルスが出る.また,との VFCの応答時間は IOOμs,

使用した周波数カウンタの空き時聞は 3ms程度である

ので, r~l sでは空き時間を無視できる.測定バンド幅

は VFCの前段にある RCフィルタで容易に可変でき

る.

との PLLでは,ループバンド幅を大きく設計してい

るので“verytight phase-lock,,と呼ばれている.

3.5 時間差法(1)(1剖

この測定法は, (3日式で T を1日のように長くして測

定精度を上げているもので,長期安定度が重要となる発

振器(例えば時計)の安定度測定iζ適している.

第 16図IC示すように,周波数の等しい2台の発振器

osc非1,osc非2の出力を M 分局して両パルス(例

えば秒パルス)の時間間隔 Llt(i)を T.I.カウンタで T

秒ごとに測定する.とこで分周しているのは測定精度に

は直接関係せず, 2台の発振器のわずかな周波数差によ

って両分周信号の位相差が1サイクル以上ずれるのを防

ぐためである. T.I.カウンタはカウンタ内蔵のクロッ

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Vol.29 No.149 February 1983

DBM2

~- -"2 -., .・ 0 1•1 -•ol lv2 -v01

第 17図 DMTD法のプロック図. XFER OSCは共通発振器, LPFは低域通過フィルタをそれぞれ示す.LPF lとより測定帯域隔が決定される.文献(14)より引用.

1対の発振器を時計として動作させ, その時間差を

T.I.カウンタで測定する方法については,前節にその例

を挙げているが,現在得られる最高機種のカウンタでも

測定確度が lOOps程度であるため,短期安定度の測定

には十分な精度が得られない.しかし, DMTD法では,

O. lpsの確度を有しており,更に 0.01 psの確度に達

する可能性を有している.乙のため, T孟~msの領域で

空き時間なしに高精度の周波数安定度測定ができる.

第 17図で osc非1を供試発振器, osc非2を基準

発振器とする.osc非I,非2の出力は,それぞれ DBM

で希望の周波数だけ osc書l,非2からずれている周波

数を有する共通発振器と混合され,ほぼ同じ周波数を有

しているビート信号を発生する.

いま,

osc非1の瞬時位相を 2irν,t+仇(t)

osc非2の瞬時位相を 2πν2t+仇(t)

共通発振器の瞬時位相を 2πνct

とする.共通発振器の位相ゆらぎは,以下IC述べるよう

に相殺されるものとして無視してある.また, h宇ν2=ν。とする. DBM からの低周波信号の瞬時位相は ν。>vc

とすると

DBMlの出力 2π(v1ーνc)t十仇(t)+r/>s

DBM2の出力 2π(ν2-vc)t+仇(t)

で支えられる.r/>sは移相器の位相である.併を適当に

調整することにより,共通発振器の雑音が相殺されるよ

うな状態を作る乙とができる.この移相器は,共通発振

器が十分低雑音である場合は必要ない.図にあるよう

に, DBMlの出力の i番目の零交差点の時間 ti1は,

ti.= -rj>,(t臼〉+仇+2n1ir•• 2π(ν1一νc)

-'--r/>1(ti1) +φs+2n1π 2πνB

・・・・・6日

49

DBM2の出力の零交差点 ti2は,

ti,ニ二<hf/i2)+ 2n2ir土仇(t;2〕+2n2π”“ 2ir(ν2 レc) 2πνB

伊旧

となる.ただし, νBはビート周波数で,

νB=Vo-ーνc

また, n.,n2は整数である.

間,削式より, i番目の時間差 .dt(i)I志

.dt(i)=li2一仏= ef>1Cti1)妙子心掛s+2nπ<:πνB

...... 152)

n=n2-n1

となる.ただしととでは T.J.カウンタを DBMl出力

がスタートさせ, DBM2出力がストップさせているも

のとしている.したがって, osc者1と非2の t番目

の測定時の時間差 .di,2X(i)は,

.d.,2x (i) if>, (ti1)ー ef>2Cti2)一一茄7一一五Jー

ム仇(tれ)-r/>Cti2〕ア 2irν。

=立Lit(i)-....;h..-+土……(53)ν0 L,πν。 ν。

=皇位---:h-+_!!_ ……同Tν0 .::irν。 ν。

となる.乙乙で T はビート信号の周期である.間式は

時間差の測定精度が ν。/νBだけ改善されている乙とを示

している.”は絶対時間差を知るときだけ必要である.

一連の測定中に二つのビート信号が1サイクル以上ずれ

ないときは,周波数,周波数安定度,時間ゆらぎの測定

には, nをOとしてよい.

Yi,h>r),を osc非l,非2の規格化された周波数変

動分の T 秒平均九(i,r), Y2(i, •)の差とすると,

J1,2(i, r)=J1(i, •)-J2Ci,。

.di,2X(i+ l)-.di.2X(i)

' -.dt(i+l〕-Lit(の

ν.,2 ・・・(55}

となる.'の整数倍のサンプル時間の規格周波数変動は

次式で与えられる.

l B

炉内W

. . . . . .

、Bノ一

z一f

、一2一,- 1

X

一du

一、町一附

+一-Z一,,‘、-X

一2一,- 1

du

一一一ーノT

m

z

f

、z , l

-旬J

ただし, m は正の整数である.

osc非1と非2は独立であるので,回式から

σ;,, 2= σ;.C•)+ σ;2(•)

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50 II.周波数と時間の計i.lll] 電波研究所季報

同引り

伊円W

2 刀

2

il

『tlJ

ee\、‘,

J

:・1

d

γ

k

F

〕。

ι’

i

・1

・1

1

ff\

lL

2

1言

1一ju

一一一一

となる. f.:_tごし,

.J(i) =Llt(i+ 1〕-Llt(i) ・・・・旧日)

である.

との測定法では,共通発振器の周波数を変えて句を

大きくすると, T が~msのような短いサンプル時聞か

らの測定ができる.また,セシウム, Jレビ‘ジユウム,水

素メーザのような原子標準では周波数をあまり可変でき

ないので,前節で述べたビート法では測定が難しいが,

との方式は原子標準のような周波数の同じ発振器の測定

には極めて有効である.

DMTD法は,現在ある最も高安定の発振器の安定度

を測定するのに十分精度を有している.例えば, 5MHz

発振器で νn=0.5Hzとし, T.I.カウンタの確度を0.1

mとすると, T=均一1=2s Ii'.:対して測定精度は 10-1•

となる.

共通発振器が周波数合成器の場合, T を自由に変える

ことができる.しかし,満足すべき測定精度を得るため

には,周波数合成器は十分低利f音である必要がある.第

17図で,同一発振器の信号を分割して, osc非I,書2

の入力lζ置き換えるとシステム雑音を測定できる.第18

図lζ, NBSで測定された低雑音周波数合成器を共通発

振器として使用した場合のシステム雑音を示す.

DMTD法は,他の方式に比較するとシステムが複雑

・3・1・

.. 1

3

・121・

-1’ FIACTIGU』l10 ’H・圃・CYSYA・lllTY・-(τ} ’ ・1・

1・・u

3・・1‘,。

・l71・,.・] 10・2 10・3

である.低周波ビート信号が含まれているため,グラン

ドループの問題に注意する必要がある.これらの問題を

避けるため絶縁トランスや緩衝増幅器が使われている

が,詳しい設計については文献116)を参照されたい.

4. 信号処理による付加雑音

これまで述べてきたように,周波数安定度測定の精度

を高めるため被測定発振~と基準発振器の周波数を同

ーにすることが多い. このため増幅, 混合, 周波数逓

倍,分周等の信号処理によって周波数変換することがし

ばしばある.第19図にそのブロック図を示す.周波数

変換前の信号の公称周波数,位相変動分を fL,ゆL(f),

変換後の公称周波数,位相変動分を Is,が(t)とする

と,出力信号の位相パワースペクトラム密度SふCf)は

一般に,

S<ft,(f) = (去)2S<ftL(f) +S~(J) 側

となる. とこでゆは信号処理の過程で生じる付加位相

FREQUENCY SYNTHESIS

AMPLIFYING MULTIPLYING MIXING DIVIDING

S仇(f) Si6s (f)

第19図周波数変換による付加位相雑音

・.・.

2 J ・’. 10 10 10 1・u .. u H同.マ f・}

第四図 DMTD法のシステム雑音.共通発振器として周波数合成穏を使用している.最初の3点の測定帯域幅 Cf.)は300Hz,次の2点では 18Hz,次の 1点では,3Hzで,残りはん=l.8 Hzである. ~10-11の noisefloorは毎日の温度変動によるものと恩われる.文献(15)より引用

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51

いる.REはエミッタ抵抗,また,使用トランジスタは

2SC31である. RE=40 nで約 18dB改善されてい

る.同図で, REミ30!1における入力レベルが増加して

いるが,次図にあるように入力レベルの変化は/-1PM

雑音に影響を及ぼさない.第21図に, 同じ増幅器にお

ける/0,/-1PM雑音の入力レベル{衣存性を示す.IE,

Vcbはそれぞれエミッタ電流,コレクタベース間電圧で

ある./-1PM雑音は入力レベJレを 15dB変化させて

も一定である.J-1PM雑音はとのように入力信号レベ

ルに依存しないため,増幅器を多段接続するときはその

段数に比例して増加することになるので注意する必要が

ある.

4.2 周波数逓倍器の付加位相雑音

逓倍器の低位相雑音化は,周波数安定度の精度向上の

ため円 セシウム標準器の確度向上のため(211, 更に光

周波数測定において高次の逓倍次数を得るため等間,

種々の分野で大変重要な役割を担っている.逓倍器の位

相雑音スペクトラムは逓{音次数の二乗に比例して増加す

るので,高次の逓倍では初段の逓倍器の低雑音化が大切

である.

逓倍器の位相雑音の解析はいろいろ行われている

が凶削,ほとんどが狭帯域雑音モデルにより f0PM

雑音の発生機構を扱っている.J-1PM雑音に関しての

理論的検討はほとんどなされていないのが現状である

が, D.Halfordらはトランジスタ逓倍器では,増幅器の

場合と同様にエミッタ抵抗による負帰還のみが/-1PM

雑音を軽減できることを予測し,典型的には 30dB以上

J-1PM雑音を改善できたことを報告している(251. 5

MHz→10 MHz トランジスタ逓倍器の帰還抵抗依存性

は,文献(6)に与えられている.

文献側では, リミッタとして動作するエミッタ結合電

1983

雑音である ら(/)は,一般にフリッカ Cf')と白色

(JO)雑音成分を含んでおり,短期安定度を劣化させる.

乙とでは増幅器と周波数逓倍器の付加位相雑音につい

て簡単に説明する.

4. 1 増幅器の付加位相雑音

増幅器は周波数安定度を測定するときの緩衝増幅器と

して,あるいは周波数合成等における同調増幅器,緩衝

増幅器として極めて頻繁に使用される.これらの場合は

通常,付加的i乙1-1と f0PM(位相)雑音が加わり,

元の信号の位相スペクトラムを劣化させる.一方,増幅

器が線形帰還発振器のループ内に使われる場合は,増幅

器の 1-1,fOPM雑音レベJレと,帰還フィルタの Q値

で発振器の PM雑音が決まる (18)(191. したがって低位

相雑音増幅器の設計は極めて重要である.

増幅器で発生する f0PM雑音は,能動素子の雑音と

RF駆動電力iζよって決まるため,通常初段の増幅器を

低雑音化すればよい.

J-1PM雑音について,その発生機構を解析した例は

少ない.著者らはトランジスタ増幅器の/-1PM雑音

は, トランジスタ個有の 1-1雑音によるパラメータ変

調の結果生じるとして解析を行い,(iiJ-1PM雑音は,

トランジスタ個有の 1-1雑音と電気的特性から計算で

きること, (ii)エミッタ抵抗の負帰還による/-1PM雑

音の改善には限度があること,凶)/-1PM雑音は入力信

号レベルに依存しないことを明らかにし,実験との比較

を行った1201. 第20図は,エミッタ接地5MHz同調増

幅器における J-1PM雑音の負帰還による改善を示して

-110 入力レベル

Ri;(n), (into 500)

o 0 -29.7d8m

6 10 -26.7

ロ 20 -26.7

'<7 30 -21.7

・孟40 -21.7

February

r'slo日e

No.149 Vol.29

-120

ノ(20)F1PM

-110

-120

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-140

(白百)(\)、

-130

-140

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X

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一150

-150 恒久

ても-50

ー160

ー170

10 -20

;:(! 21 I事I2 SC 31 (fr=3 mA, Vム=11v. RE=O) PM 雑音の入力レベノレ依存性1201

-30

入力レベル(dBm)into 500

-40 10'

第20図 1-1PM雑背の負帰還による改普!20>.使用トランジスタ, 2SC31

103

I (Hz)

102

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52 JI.周波数と時聞の計測 電波研究所季報

流スイッチによる lMHz→35MHz逓倍器を試作し,

入力換算の S;(f)が,

Sバf)=lQ-17・'+ 10-14・•j-1 [rad2/Hz]

という大変優れた結果を得ている.乙の逓傍器は,位相

の情報は零交差点に含まれているので,入力信号の零交

差点が逓倍器の出カ信号の位相においても密接に保たれ

ているような逓倍器は,低位相雑音であるはずであると

いう予測のもとに設計されている.

文献闘では, トランジスタ,パラクタ,ステップリカ

バリダイオードを非直線素子とする逓傍器のそれぞれに

ついて, AM-PM変換係数を測定している.そして,

C級動作トランジスタ増幅器を変形した 25MHz-1お

MHz逓倍器を試作し,良好な結果を得ている捌.

逓倍器の温度等による長期の位相変動は,文献側,側

で検討されている.

5. まとめ

周波数と時閣の精密計測はほとんどの場合周波数安定

度の測定に還元される.乙乙では周波数領域,時間領域

における比較的よく利用されている周波数安定度測定法

について述べた.また,信号処理によって発生する付加

雑音の例として増幅器,周波数逓倍器をとりあげ,位相

雑音の発生機構を簡単に説明し,低雑音化に必要と思わ

れる文献を紹介した.

周波数安定度測定では,実際に測定している量は何で

あるかという乙とを明らかにし,測定原理についてはな

るべくわかりやすいように書いたつもりである.また,

とれらの測定法は主として周波数標準の安定度を測定す

るために開発されてきたものなので,扱っている周波数

は5MHzが中心となっているが, DBM等の構成要素

を変更すれば同じ測定法を他の周波数帯にも容易に拡張

できょう.

原子周波数標準器をはじめとする高確度,高安定信号

源は通信,測地,航法,物理現象の解明等広い分野にお

いて利用されているが,周波数・時聞の精密計測法は乙

れら高確度,高安定信号源の開発,維持,利用に欠かせ

ぬ重要な技術であり今後もその重要性は増すものと恩わ

れる.

最後に,本報告をまとめるにあたり有益な討論をして

いただいた当研究所の吉村室長,安田部長,佐藤係長に

深謝いたします.

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