Download - 気象庁における取り組み 気象庁数値予報課長 隈 健一
気象庁
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1. 数値予報とは
気象サービスと数値予報
気象庁
秒後
初期の状態から次々に予測0
1
2
34
秒後
なぜ予測ができるのか数値予報の原理
• 最初の状態がわかり• 現象を支配する法則がわかれば
原理的に予測可能
しかしボールの軌道計算のようには簡単ではない
気象庁
数値予報モデルの計算量( 20km メッシュ全球モデル)
• 格子数 8000 万• 計算量 240 兆回 /24 時間予報• 積分時間間隔 10分• 計算時間(84時間予報=
約500ステップ) 約25分 • 必要な計算機資源 60 ノード
( 960CPU )
膨大な計算量
高速なスーパーコンピュータが必要
↓
気象庁( 平成 21 年 7 月 28 日 21 時 )
地上観測 (観測所・船舶・ブイ )高層観測 (ゾンデ・航空機・ウィンドプロファイラ・ドップラーレーダー )
静止衛星観測 極軌道衛星観測
観測データ分布図
気象庁
全球通信システム(GTS)
大気現象は地球規模で起っているため、正確な予報のためには地球全体の情報を短時間に集める必要がある。 そのため、世界気象機関 (WMO)の枠組みの元、世界の主要地域を結ぶ GTSを通じて気象情報を迅速に収集できる体制を整備している。 図の青線が主要な通信網を表す。
気象庁
九州北部の豪雨の予測( 7 月 26日)
解析雨量 7/25 18UTC 初期値 7/25 12UTC 初期値 ( 7/26 00-03UTC ) FT=06-09 FT=12-15
メソモデル(格子間隔5km)による
気象庁
全球予報の精度向上
上空約 5000m の大気の流れ( 500hPa 高度)についての、数値予報の誤差(平方根平均2乗誤差)を北半球全体で平均した後に1ヶ月平均したもの(短い横線は年平均)
最近の3日先予報は1980年代半ばの1日先予報にほぼ匹敵する精度を有する。
3 日予報誤差
1 日予報誤差
2 日予報誤差
気象庁
世界の数値予報
国名またはセンター名
全球モデル 全球アンサンブル予報モデル
領域モデルの格子間隔・鉛直層数
格子間隔鉛直層数
予報期間
格子間隔鉛直層数
メンバ
数
予報期間
日本 20km60 層 9 日間 60km60 層 51 9 日間 5km50 層欧州中期予報センター( ECMWF)
25km91 層 10 日間 50km62 層80km62 層
5151
10 日間+5 日間
なし
イギリス( Met Office)
40km50 層 6 日間 90km38 層 24 3 日間 12km70 層、4km60 層
フランス 37km60 層 4 日間 55km55 層 11 2.5 日間 2.5km60 層
ドイツ 40km40 層 7 日間 なし 7km40 層、2.8km50 層
米国( NCEP)52km64 層105km64
層
7.5 日間
16 日間160km28
層 45 16 日間 12km60 層、4km50 層
カナダ 35km58 層 10 日間 100km28層 20 16 日間 10km58 層
気象庁
2.衛星観測の数値予報への利用
• 衛星で測っているのは、電波(赤外線、マイクロ波など)の強さ(「放射強度」という)など
• 放射強度は、気温、水蒸気等の鉛直分布によって決まる
数値予報で必要な格子点における気温、水蒸気等を直接観測しているわけではない
変分法という仕掛けが必要
気象庁
変分法による衛星観測の利用
「解析値」を一発で求めるのでなく、「解析値の候補」を少しずつ変えて最適な値を求める
放射強
度解析値候補
の
放射強
度
比湿比湿比湿比湿比湿比湿比湿比湿
観測演算
子
観測
比較
比較に基づく「候補」の修正
繰り返し計算
観測演算子:モデル物理量から観測物理量への変換
気象庁衛星データの利用衛星データの利用
GOES(GOES(米米 ) ) 75W75W GOES(GOES( 米米 ) )
135W135W
GMS(GMS(日日 ) )
140E140E
METEOSAT(METEOSAT(欧欧 ) ) 0E0E
NOAA(NOAA( 米米 )) ;;2機2機極軌道極軌道
METEOSAT(METEOSAT(欧欧 ) ) 63E63E
GOS; Global Observing System
WMOホームページから
気象庁
観測種類 衛星 /センサ 全球解析 メソ解析①①
可視・赤外可視・赤外イメージャイメージャ
MTSAT-1R, Meteosat-7,9, GOES-11,12
風 AMV 風 AMV
輝度温度 CSR X
Aqua,Terra/MODIS 風 AMV X
②②散乱計散乱計
QuikSCAT/SeaWinds 海上風 海上風Metop/ASCAT 海上風 (海上風 )
③③GPSGPS 掩蔽掩蔽(GRACE/Black Jack ) (屈折率 ) X
(Metop/GRAS) (屈折率 ) X
③③GPSGPS 地上地上 地上受信機 X (可降水量)
④④
マイクロ波マイクロ波イメージャイメージャ
DMSP13/SSMI 輝度温度 可降水量、降水量TRMM/TMI 輝度温度 可降水量、降水量
Aqua/AMSR-E 輝度温度 可降水量、降水量DMSP16,17/SSMIS 輝度温度 ( 可降水量、降水
量 )
⑤⑤サウンダサウンダ
NOAA15-17/AMSU-A,-B 輝度温度 気温NOAA18,(19),Metop/AMSU-A,MHS 輝度温度 気温
Aqua/AMSU-A 輝度温度 X
DMSP16,(17)/SSMIS 輝度温度 X
(Aqua/AIRS, Metop/IASI) (輝度温度 ) X*AMV: Atmospheric Motion Vector 大気追跡風*CSR: Clear Sky Radiance 晴天輝度温度
数値予報に利用されている(一部予定)衛星データ数値予報に利用されている(一部予定)衛星データ
気象庁
衛星観測データの分布
⑤ サウンダ AMSU-A (気温)
⑤ サウンダ AMSU-A (気温)
④ マイクロ波イメージャ
④ マイクロ波イメージャ
② 散乱計② 散乱計 ①CSR①CSR
⑤ サウンダ AMSU-B,MHS (水蒸気)
⑤ サウンダ AMSU-B,MHS (水蒸気)
① 大気追跡風 AMV① 大気追跡風 AMV
⑤ サウンダ SSMIS (気温)
⑤ サウンダ SSMIS (気温)
気象庁
3. EarthCARE への期待• 大気モデルの中でよくわかっていない部
分の科学的な裏づけ(雲・降水過程、雲・エーロゾル相互作用等)
• 雲について、モデルと観測との比較• 黄砂予報への利用
気象庁
どの雲が本当なのか?気象庁で使っているモデル
イギリスで使われていたモデルに近いモデル
965hPa
630hPa
270hPa
90S 90N
1992年 1月の一ヶ月積分。帯状平均。
55hPa
赤道どっちが正しいのだろう?普通は、熱帯の上層雲に隠されていて観測できない…。
EarthCARE を使えばわかる
気象庁
雲物理過程の比較
• 台風のレインバンド、集中豪雨をもたらす線状降水帯等、メソ降水システムの組織化には雲物理過程が重要
• 雲物理・雲放射過程が対流の維持にも寄与
モデル結果から雲レーダー観測相当量を計算し(シミュレータ)、観測結果と比較
Alejandro Bodas-Salcedo & Mark Webb, Hadley Centre
気象庁
データ同化のインパクト
NASA/MODIS によって観測された光学的厚さ
気象研究所関山剛氏より
CALIPSO衛星のライダーデータの同化により、黄砂予測が改善できる可能性を調査
衛星データを使わないと 衛星データを使うと
●は黄砂を観測した、●は黄砂を観測しなかった、観測点 ダスト地表面濃度
気象庁
エーロゾルの様々な影響• 放射過程を通じて影響
– 大気加熱による大循環への影響• 特に砂漠付近で顕著
– 大規模火山噴火による寒冷化• 雲物理過程を通じて天気、降水に影響
– 小さな雲粒が増加– 海陸の降水過程の違い
• エーロゾルと航空機運航– 火山灰でエンジン障害→火山灰予測業務– エーロゾル→視程(直接的な効果、凝結核と
して霧を強化)→離発着の制限
エーロゾル解析の結果を数値予報に反映
雲物理・エーロゾル相互作用のプロセス研究