Download - lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp - 2011年度数学IA演習第12第12 回解答 2 1 2変数関数における微分と積分の順序交換 1.1 微分と積分の入れ替えに関する定理
2011年度数学 IA演習第 12回理 I 16, 17, 18, 19, 20, 21組
1月 16日 清野和彦
問題 1. 指定されたように定数を t と見なすことにより、t による微分と x による積分の入れ換え
を用いて次の積分を計算せよ。
(1)∫ π
2
0
log(9 cos2 x + 4 sin2 x)dx (9を t2 と見なします。)
(2)∫ π
0
log(
1 − cos x +14
)dx (log の中身を 1 − 2t cos x + t2 と見なします。)
(3)∫ π
2
0
1(√3 cos2 x +
√2 sin2 x
)2 dx (√
3 を t と見た計算と√
2 を t と見た計算を合わせます。)
(4)∫ π
0
1(2 − cos x)2
dx (2を t と見なします。)
問題 2. 2変数関数 f(x, t) を
f(x, t) =x2
x2 + t2ただし f(0, 0) = 0
と定義する。
(1) f(x, t) は (0, 0) においても t で偏微分可能なことを示し、∂f
∂t(x, t) を求めよ。
(2) (1) で計算した偏導関数に t = 0 を代入してできる x の関数を φ(x) と書くことにする。∫ 1
0
φ(x)dx を計算せよ。
(3) t の関数 F を F (t) =∫ 1
0
f(x, t)dx で定義する。F を求めよ。(t = 0 のとき f(x, 0) は x = 0
で不連続になりますが、1点だけなので無視して大丈夫です。)(4) F ′(0) を計算してみよ。(つまり定義に従って F ′(0) を求めようとしてみよということです。t → +0 と t → −0 の二つの極限がポイントです。)
問題 3. 次の 2重積分を極座標変換 x = r cos θ, y = r sin θ によって計算せよ。
(1)∫∫
D
(x + y)2dxdy D = {(x, y) | x2 + y2 ≤ 1}
(2)∫∫
D
ydxdy D = {(x, y) | x2 + y2 ≤ 1, 0 ≤ x ≤ y}
(3)∫∫
D
√xdxdy D = {(x, y) | x2 + y2 ≤ x}
(4)∫∫
D
log(x2 + y2)dxdy D = {(x, y) | 1 ≤ x2 + y2 ≤ e2}
(5)∫∫
D
xydxdy D = {(x, y) | 1 ≤ x2 + y2, 0 ≤ y ≤ x ≤ 1}
(6)∫∫
D
xy
(x2 + y2)(1 + x2 + y2)2dxdy D =
{(x, y)
∣∣ (x2 + y2)2 ≤ x2 − y2, 0 ≤ x, 0 ≤ y}
(7)∫∫
D
1√x2 + y2
dxdy D ={
(x, y)∣∣∣∣ (x2 + y2)2 − 2x(x2 + y2) − y2 ≤ 0,
14≤ x2 + y2
}
問題 4. 次の 2重積分を指定された変数変換を利用して計算せよ。
(1)∫∫
D
(y2 − x2)2dxdy D = {(x, y) | |x + y| ≤ 1, |x − y| ≤ 1} u = x + y, v = x − y
(2)∫∫
D
(x2 + y2)dxdy D ={(x, y)
∣∣ (x − 1)2 + (y − 1)2 ≤ 1}
x = 1 + r cos θ, y = 1 + r sin θ
(3)∫∫
D
x2dxdy D ={(x, y)
∣∣ 0 ≤ x, 0 ≤ y,√
x +√
y ≤ 1}
x = u2, y = v2
(4)∫∫
D
x2dxdy D ={(x, y)
∣∣ 0 ≤ x, 0 ≤ y,√
x +√
y ≤ 1}
x = r cos4 θ, y = r sin4 θ
(5)∫∫
D
x2 + y2
(x + y)3dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x, 0 ≤ y, 1 ≤ x + y ≤ 2} x = u − uv, y = uv
(6)∫∫
D
(x + 1) cos(2x − x2 + 2y)dxdy
D ={
(x, y)∣∣∣ 0 ≤ x, 0 ≤ y − x2 ≤ π
6≤ 2x + y ≤ π
3
}u = 2x + y, v = y − x2
(7)∫∫
D
y2ex2y2dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x ≤ y ≤ 3x, 1 ≤ xy ≤ 2} u = xy, v =
y
x
問題 5. 次の広義 2重積分を指定された変数変換を利用して計算せよ。
(1)∫∫
D
ey−xy+x dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x, 0 ≤ y, 0 < x + y ≤ 1} x = u − uv, y = uv
(2)∫∫
D
1√x2 − y2
dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ y ≤ x, y ≤ 1 − x, x = y } u = x + y, v = x − y
(3)∫∫
D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x ≤ y, xy ≤ 1} u = xy, v = x2 + y2
(4)∫∫
D
11 − x2y2
dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1, (x, y) = (1, 1)} x =sin θ
cos φ, y =
sin φ
cos θ
問題 6. 次の 3重積分を計算せよ。
(1)∫∫∫
D
xy5z7dxdydz D ={
(x, y, z)∣∣∣ 0 ≤ x ≤ y ≤ z ≤
√2}
(2)∫∫∫
D
ex+y+zdxdydz D = {(x, y, z) | 0 ≤ x ≤ y + z, 0 ≤ y ≤ z ≤ log 2}
(3)∫∫∫
D
e(1−x)3dxdydz D {(x, y, z) | 0 ≤ x, 0 ≤ y, 0 ≤ z, x + y + z ≤ 1}
(4)∫∫∫
D
x2dxdydz D ={(x, y, z)
∣∣ x2 + y2 + z2 ≤ 1}
問題 7. (1) Γ(
12
)= 2
∫ ∞
0
e−x2dx を証明せよ。
(2) ガウス積分∫ ∞
−∞e−x2
dx =√
π を、(∫ ∞
0
e−x2dx
)2
=π
4を示すことによって証明せよ。
(3) ガンマ関数とベータ関数の関係 B(x, y) =Γ(x)Γ(y)Γ(x + y)
を、Γ(x)Γ(y) = Γ(x + y)B(x, y) を示す
ことで導け。
(4)∫∫
R2e−(3x2−2xy+3y2)dxdy を計算せよ。
(5)∫∫∫
R3e−(3x2+3y2+5z2+2xy−2yz−2zx)dxdydz を計算せよ。
2011年度数学 IA演習第 12回解答理 I 16, 17, 18, 19, 20, 21組
1月 16日 清野和彦
計算問題の答
問題 1 (1) π log52
(2) 0 (3)π
4 4√
6
(1√3
+1√2
)(4)
2π
3√
3
問題 2 (1) ft(0, 0) = 0, ft(x, t) =−2x2t
(x2 + t2)2(2) 0 (3) 1 − t tan−1 1
t(4) 微分不可能
問題 3 (1)π
2(2)
13√
2(3)
815
(4) π(e2 + 1
)(5)
116
(6)18
(1 − log 2) (7)23π +
√3
問題 4 (1)29
(2)52π (3)
184
(4)184
(5)23
(6)2 −
√3
4(7)
e4 − e
2
問題 5 (1)14
(e − 1
e
)(2) 1 (3)
π
8log(2 +
√5)
(4)π2
8
問題 6 (1) 1 (2)58
(3)e − 1
6(4)
415
π 問題 7 (4)π
2√
2(5)
√π
3
6
目 次
1 2変数関数における微分と積分の順序交換 2
1.1 微分と積分の入れ替えに関する定理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21.2 定理 1の応用:パラメタを利用した計算 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41.3 問題 1の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41.4 定理 1の運用に関する注意 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 81.5 問題 2の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
2 重積分の変数変換公式 11
2.1 一般の変数変換公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 112.2 「扇形分割」によるリーマン和と極座標変換公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12
3 重積分の変数変換に関する一般的な注意 15
3.1 変換した後の変数の積分範囲について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 153.2 変数変換が逆変換で与えられている場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 173.3 広義重積分と変数変換 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
4 解答 17
4.1 問題 3の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 174.2 問題 4の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 204.3 問題 5の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 254.4 問題 6の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 294.5 問題 7の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30
第 12 回解答 2
1 2変数関数における微分と積分の順序交換
1.1 微分と積分の入れ替えに関する定理
フビニの定理を解釈しなおすと、2変数関数における積分と微分の入れ換えに関する次の定理になります。� �定理 1. f(x, t) が [a, b] × [c, d] において連続で、t では偏微分可能であり、しかも偏導関数
ft(x, t) も [a, b] × [c, d] で連続であるとする。このとき、t の 1変数関数 F (t) を
F (t) =∫ b
a
f(x, t)dx
で定義すると、F (t) は [c, d] において C1 級であり、
dF
dt(t) =
∫ b
a
∂f
∂t(x, t)dx
が成り立つ。� �注意. 変数を表す文字として x と y を使うとどちらの変数についても同じであるような議論に見
えてしまいやすいので、「積分する変数 x」と「微分する変数 t」というように y ではなく t を使
うことにしました。★
証明. f(x, t) の t による偏導関数 ft(x, t) は [a, b]× [c, d] で連続だと仮定しているので、フビニの定理により、
ft(x, t) は x で先に積分する累次積分も t で先に積分する累次積分も可能で、∫ d
c
(∫ b
a
∂f
∂t(x, t)dx
)dt =
∫ b
a
(∫ d
c
∂f
∂t(x, t)dt
)dx
が成り立つ。
となります。
ここで、d の代わりに [c, d] に属する任意の s をとっても同じ式が成り立つことに注意しましょ
う。つまり、 ∫ s
c
(∫ b
a
∂f
∂t(x, t)dx
)dt =
∫ b
a
(∫ s
c
∂f
∂t(x, t)dt
)dx c ≤ ∀s ≤ d (1)
です。
まず、式 (1)の左辺を s で微分してみましょう。ft(x, t) が 2変数関数として連続であることから、式 (1)の左辺の被積分関数である
∫ b
aft(x, t)dx は t の連続関数です。実際、∣∣∣∣∣
∫ b
a
∂f
∂t(x, t1)dx −
∫ b
a
∂f
∂t(x, t0)dx
∣∣∣∣∣ ≤∫ b
a
∣∣∣∣∂f
∂t(x, t1) −
∂f
∂t(x, t0)
∣∣∣∣ dx
となりますが、ft(x, t) が 2変数関数として連続であることから有界閉区間 [a, b] × [c, d] では一様連続でもあり、任意に与えられた正実数 ε に対し正実数 δ を上手く選べば (x, t1) と (x, t0) の距
第 12 回解答 3
離 |t1 − t0| が δ より小さいとき、∣∣∣∣∂f
∂t(x, t1) −
∂f
∂t(x, t0)
∣∣∣∣ < ε
b − a
が成り立ちます。よって、|t1 − t0| < δ ならば∫ b
a
∣∣∣∣∂f
∂t(x, t1) −
∂f
∂t(x, t0)
∣∣∣∣ dx <
∫ b
a
ε
b − adx = ε
が成り立つことになり、∫ b
aft(x, t)dx は t の連続関数です。被積分関数が連続なので、微積分の基
本定理により、式 (1)の左辺については
d
ds
∫ s
c
(∫ b
a
∂f
∂t(x, t)dx
)dt =
∫ b
a
∂f
∂t(x, s)dx (2)
が成り立ちます。
次に、式 (1) の右辺を s で微分しましょう。ft(x, t) が 2 変数関数として連続なのですから、[a, b] に属する x0 を決めるごとにできる t の 1変数関数 ft(x0, t) も連続関数です。ft(x0, t) とはg(t) = f(x0, t) と定義したとき g′(t) のことですので、微積分の基本定理により、∫ s
c
∂f
∂t(x0, t)dt =
∫ s
c
g′(t)dt = g(s) − g(c) = f(x0, s) − f(x0, c)
となります。x0 は [a, b] 内の任意の実数でよいのですから、結局、∫ s
c
∂f
∂t(x, t)dt = f(x, s) − f(x, c)
が得られました。これを式 (1)の右辺に戻すと、∫ b
a
(∫ s
c
∂f
∂t(x, t)dt
)dx =
∫ b
a
(f(x, s) − f(x, c)
)dx (3)
となりますが、今 f(x, t) は連続と仮定しているので、特に任意の t に対して f(x, t) は x で積分
可能です。よって、式 (3)の右辺の積分と引き算を入れ替えることができます。つまり、∫ b
a
(∫ s
c
∂f
∂t(x, t)dt
)dx =
∫ b
a
f(x, s)dx −∫ b
a
f(x, c)dx (4)
が成り立ちます。c は定数ですので、式 (4)の右辺の二項目の積分は定数です。よって、式 (4)をs で微分したものは右辺の一項目だけを微分したものと一致します。つまり、
d
ds
∫ b
a
(∫ s
c
∂f
∂t(x, t)dt
)dx =
d
ds
∫ b
a
f(x, s)dx (5)
が成り立ちます。
式 (2)と式 (5)の左辺同士は等しいのですから、∫ b
a
∂f
∂t(x, t)dx =
d
dt
∫ b
a
f(x, t)dx
が得られます。(s を t と書き直しました。)これが示したい等式でした。 □
第 12 回解答 4
1.2 定理 1の応用:パラメタを利用した計算
前節の定理 1を使うと、一見計算できそうもない積分が計算できる場合があります。被積分関数の中の適当な定数をパラメタと思うことで、まずパラメタで微分してから積分し、そのあとでパラ
メタで積分し直してやるわけです。
もう少し具体的に書いてみましょう。計算したい積分を∫ b
aφ(x)dx とします。φ(x) の中のどれ
かの定数をパラメタ t だと思うなどして無理矢理 φ(x) を 2変数関数と思おうというのですが、思い方にパターンが二つあります。
その 1
φ(x) を 2変数関数 f(x, t) と思い、∫ b
a
f(x, t)dx =∫ (∫ b
a
∂f
∂t(x, t)dx
)dt
として計算する方法です。この場合、各 t において ft(x, t) の x による積分が計算できることの
他に、右辺の不定積分の積分定数の値を決めるために、∫ b
af(x, t0)dx の値が計算できる t0 が存在
しなければなりません。問題 1の (1)と (2)がこのパターンです。
その 2
φ(x) を 2変数関数と思ったものを ft(x, t) だと見る方法です。この場合、もしこの ft(x, t) を持つ f(x, t) が見つかり、(つまり、各 x について ft(x, t) を t で積分することができ、)その上、そ
の f(x, t) を x で積分できるなら∫ b
a
ft(x, t)dx =d
dt
∫ b
a
(∫ft(x, t)dt
)dx
というようにして求める積分を計算することができるというわけです。問題 1の (3)と (4)がこのパターンです。
このように一般的に説明してもわかりにくいものですので、あまり気にせずに問題 1の解答に進んでください。
1.3 問題 1の解答
(1) 被積分関数を
f(x, t) = log(t2 cos2 x + 4 sin2 x)
の t = 3 のときの値 f(x, 3) だと思おうというわけです。だから f(x, t) の定義域としては、x に
ついては積分範囲の [0, π2 ]、t については 3を含めばなんでもよいので、例えば [2, 4] とでも思っ
ておけば十分です。
F (t) =∫ π
2
0
f(x, t)dx
と置きます。求めたい積分の値は F (3) です。
第 12 回解答 5
f(x, t) を t で微分してみると
∂f
∂t(x, t) =
2t cos2 x
t2 cos2 x + 4 sin2 x
となり、分母が 0になりませんので (x, t) の 2変数関数として連続です。よって、定理 1により、
F ′(t) =∫ π
2
0
2t cos2 x
t2 cos2 x + 4 sin2 xdx
となります。y = tanx と置換してこれを具体的に計算しましょう。
t = 2 のときは、
F ′(t) =∫ ∞
0
2t
t2 + 4y2
11 + y2
dy =2t
t2 − 4
∫ ∞
0
(1
1 + y2− 4
t2 + 4y2
)dy
=2t
t2 − 4
(∫ ∞
0
11 + y2
dy − 4t2
∫ ∞
0
1
1 +(
2yt
)2 dy
)
=2t
t2 − 4
([tan−1 y
]∞0
− 4t2
t
2
[tan−1 2y
t
]∞0
)=
2t
t2 − 4
(π
2− π
t
)=
π
t + 2
となります。F (t) が C1 級であること、つまり F ′(t) が連続関数であることはわかっているのですから、t が 2でも 2でなくても
F ′(t) =π
t + 2であることになります。
F (t) はこれの原始関数の一つですので、t で不定積分して、
F (t) = π log(t + 2) + C
となります。(欲しいのは t = 3 のときの値なので、t + 2 > 0 としてかまいません。)積分定数 C の値を決めるために、t = 2 のときの値 F (2) を直接計算してみましょう。
F (2) =∫ π
2
0
f(x, 2)dx =∫ π
2
0
log(22 cos2 x + 4 sin2 x)dx =∫ π
2
0
log 4dx = π log 2
となります。よって、
C = F (2) − π log(2 + 2) = −π log 2
であることがわかります。
以上より、
F (t) = π log(t + 2) − π log 2 = π logt + 2
2であり、 ∫ π
2
0
log(9 cos2 x + 4 sin2 x)dx = F (3) = π log52
が得られました。
(2) f(x, t) をf(x, t) = log(1 − 2t cos x + t2)
と置くと、∂f
∂t(x, t) =
−2 cos x + 2t
1 − 2t cos x + t2
第 12 回解答 6
は(例えば −1 < t < 1 で)連続な 2変数関数です。よって、定理 1が使えて、
F (t) =∫ π
0
log(1 − 2t cos x + t2)dx
と置くと、
F ′(t) =∫ π
0
−2 cos x + 2t
1 − 2t cos x + t2dx
が成り立ちます。求めたい積分値は F ( 12 ) ですが、それを F ′(t) を不定積分することによって計算
しましょう。
まず F ′(t) を具体的に計算します。
F ′(t) =∫ π
0
1t
−2t cos x + 2t2
1 − 2t cos x + t2dx =
1t
∫ π
0
1 − 2t cos x + t2 − 1 + t2
1 − 2t cos x + t2dx
=1t
∫ π
0
(1 +
t2 − 11 − 2t cos x + t2
)dx =
π
t+
t2 − 1t
∫ π
0
11 − 2t cos x + t2
dx
となります。ここで、y = tan x2 と置換すると、最後の積分は∫ π
0
11 − 2t cos x + t2
dx =∫ ∞
0
1
1 − 2t 1−y2
1+y2 + t22
1 + y2dy
=∫ ∞
0
21 + y2 − 2t + 2ty2 + t2 + t2y2
dy =2
(1 − t)2
∫ ∞
0
2
1 +(
1+t1−ty
)2 dy (6)
となり、今、|t| < 1 であることに注意すると、
=2
(1 − t)2
[1 − t
1 + ttan−1 1 + t
1 − ty
]∞0
=π
1 − t2
となります。よって、
F ′(t) =π
t+
t2 − 1t
π
1 − t2= 0
となります。ということは、F (t) は定数関数です。その値を決めるために t = 0 のときに具体的に積分して F (0) の値を計算すると、
F (0) =∫ π
0
log 1dx = 0
となります。よって、F (t) は t によらずに値が 0の定数関数ですので、求めたかった積分値 F ( 12 )
も 0です。
(3) まず√
3 のところを t とした関数
1(t cos2 x +
√2 sin2 x
)2を考えます。これそのものを f(x, t) と置くのではなく、
f(x, t) =1
t cos2 x +√
2 sin2 x
と置きましょう。すると、∂f
∂t(x, t) =
− cos2 x(t cos2 x +
√2 sin2 x
)2
第 12 回解答 7
となります。この関数は(例えば t > 0 とすれば)連続な 2変数関数です。よって、定理 1により、∫ π2
0
− cos2 x(t cos2 x +
√2 sin2 x
)2 dx =∫ π
2
0
∂f
∂t(x, t)dx =
d
dt
∫ π2
0
f(x, t)dx
が成り立ちます。
同様に、√
2 を t と見なして、
g(x, t) =1√
3 cos2 x + t sin2 x
と置くと、∂g
∂t(x, t) =
− sin2 x(√3 cos2 x + t sin2 x
)2となりますので、定理 1によって∫ π
2
0
− sin2 x(√3 cos2 x + t sin2 x
)2 dx =∫ π
2
0
∂g
∂t(x, t)dx =
d
dt
∫ π2
0
g(x, t)dx
が成り立ちます。
よって、
F (t) =∫ π
2
0
1t cos2 x +
√2 sin2 x
dx G(t) =∫ π
2
0
1√3 cos2 x + t sin2 x
dx
と置くと、求めたい積分は∫ π2
0
1(√3 cos2 x +
√2 sin2 x
)2 dx = −F ′(√
3)− G′
(√2)
と表せることが分かりました。
F (t) と G(t) を具体的に求めるために、∫ π2
0
1a cos2 x + b sin2 x
dx a > 0, b > 0
を計算しましょう。y = tanx と置換すれば、
=∫ ∞
0
1 + y2
a + by2
11 + y2
dy =∫ ∞
0
1a
1
1 +(√
bay
)2 dy =1a
[√a
btan−1
√b
ay
]∞0
=π
2√
ab
と計算できます。よって、
F (t) =π
2 4√
2√
tG(t) =
π
2 4√
3√
t
です。
以上より、求める積分値は
−F ′(√
3)− G′
(√2)
=π
4 4√
2 4√
33 +
π
4 4√
3 4√
23 =
π
4 4√
6
(1√3
+1√2
)です。
第 12 回解答 8
(4) f(x, t) を
f(x, t) =1
t − cos x
とおくと、∂f
∂t(x, t) =
−1(t − cos x)2
となり、(例えば t > 1 で)連続な 2変数関数です。よって、定理 1が使えて、
F (t) =∫ π
0
f(x, t)dx =∫ π
0
1t − cos x
dx
とおくと、
F ′(t) =∫ π
0
∂f
∂t(x, t)dt = −
∫ π
0
1(t − cos x)2
dx
となります。求めたい積分値は −F ′(2) です。F (t) を具体的に計算しましょう。y = tan x
2 と置換すると、
F (t) =∫ ∞
0
1
t − 1−y2
1+y2
21 + y2
dy =2
t − 1
∫ ∞
0
1
1 +(√
t+1t−1y
)2 dy
=2
t − 1
[√t − 1t + 1
tan−1
√t + 1t − 1
y
]∞0
=π√
t2 − 1
となります。よって、
F ′(t) = − πt√
t2 − 13
となり、求める積分値は
−F ′(2) =2π
3√
3
となります。 □
1.4 定理 1の運用に関する注意
定理は f(x, t) の x についての積分と t についての微分という、互いに無関係な変数についての
操作の入れ換えなので、「ft(x, t) が 2変数関数として連続」という条件は実は要らないのではないかと思いがちなのですが、そうは行かない、というのが問題 2です。問題 2の関数のような例がある以上、定理を使うときには ft(x, t) が連続であることを必ず確認しなければなりません。
注意. たとえ ft(x, t) が連続であっても、x についての積分が広義積分の場合には定理 1に当たることは一般には成り立ちません。微分が t についての極限、積分が x についての極限、広義積分
が x の積分範囲(例えば b)についての極限なので、x についての積分が広義積分の場合の「微分
と積分の入れ換え」は、
x についての極限の b についての極限の t についての極限
と
t についての極限の x についての極限の b についての極限
なので、普通の積分の場合のように等しくはならないのです。★
第 12 回解答 9
1.5 問題 2の解答
(1) t によらずに f(0, t) = 0 なので、f は (0, 0) において t では偏微分可能で、
∂f
∂t(0, 0) = 0
です。また、f は単なる有理式ですので、(x, t) = (0, 0) のときは商の微分法により
∂f
∂t(x, t) =
−2x2t
(x2 + t2)2
となります。
(2) (1)より φ(x) := ft(x, 0) は恒等的に 0ですので、∫ 1
0
φ(x)dx = 0
です。
(3) f(x, t) で t を定数だと思った x の関数は、t = 0 なら連続だし t = 0 でも x = 0 では連続なので、x による積分は存在し F (t) は問題なく定義されます。積分を計算しましょう。
t = 0 のときは x = 0 では f(x, 0) = 1 ですので F (0) = 1 です。t = 0 のときは
F (t) =∫ 1
0
x2
x2 + t2dx =
∫ 1
0
(xt )2
(xt )2 + 1
dx =∫ 1
t
0
y2
y2 + 1tdy = t
∫ 1t
0
(1 − 1
y2 + 1
)dy
= 1 − t tan−1 1t
となります。
(4) 定義に従って F ′(0) を計算してみましょう。
limt→0
F (t) − F (0)t
= limt→0
(− tan−1 1
t
)ですが、 1
t が入っているので t → +0 と t → −0 で分けて考えた方が安全です。t → +0 のときは
limt→+0
F (t) − F (0)t
= − limt→+0
tan−1 1t
= − lims→+∞
tan−1 s = −π
2
です。
一方、t → −0 のときは
limt→−0
F (t) − F (0)t
= − limt→−0
tan−1 1t
= − lims→+∞
tan−1(−s) =π
2
となります。
よって、いわゆる右微分と左微分が一致しないので、F (t) は t = 0 で微分できません。 □
ただし、この ft は (0, 0) 以外では 2変数関数として連続ですので積分と微分の交換ができます。つまり積分してから微分しても(偏)微分してから積分しても同じ関数が得られます。正確には、
第 12 回解答 10
0でない任意の t0 に対して
d
dt
∫ 1
0
f(x, t)dx
∣∣∣∣t=t0
=∫ 1
0
∂f
∂t(x, t0)dx
が成り立つ
ということです。実際、例えば t0 > 0 とすると、f(x, t) は [0, 1] × ( t02 , 3 t0
2 ) では定理の仮定を満たすので定理を適用できるわけです。
この f(x, t) についてはこのことを計算で直接確かめることもできます。やっておきましょう。
F (t) =∫ 1
0
x2
x2 + t2dx =
∫ 1
0
(1 − t2
x2 + t2
)dx = 1 − t tan−1 1
t
なので、
F ′(t) =t
1 + t2− tan−1 1
t
となります。一方、∂
∂t
x2
x2 + t2= − 2x2t
(x2 + t2)2
ですので、∫ 1
0
∂f
∂t(x, t)dx = −
∫ 1
0
2x2t
(x2 + t2)2dx = t
∫ 1
0
x−2x
(x2 + t2)2dx = t
([x
1x2 + t2
]10
−∫ 1
0
1x2 + t2
dx
)
=t
1 + t2− tan−1 1
t
となります。一致しましたね。
F (t) のグラフを書いておきましょう(図 1)。 F (t) は t = 0 でとがってしまっているのでそこ� �
O t
1
F (t) = 1 − t tan−1 1t
図 1: 問題 2の F (t) のグラフ� �では微分できないわけです。しかし、先に f(x, t) を t = 0 で偏微分しておいてから x で積分する
と、そのとんがりがならされて値だけは存在するという状況になっています。
第 12 回解答 11
2 重積分の変数変換公式
この節では、重積分の変数変換公式を紹介し、2変数関数の極座標変換の場合に限り「なぜそのような公式になるのか」を説明します。
2.1 一般の変数変換公式
まず、2変数に限らない一般の変数変換に対する重積分の変数変換公式を紹介しましょう。n 個
の実数 t1, t2, . . . , tn に n 個の実数 x1, x2, . . . , xn を対応させる写像 Φ を
(x1, x2, . . . , xn) = Φ(t1, t2, . . . , tn) =(ξ1(t1, t2, . . . , tn), ξ2(t1, t2, . . . , tn), . . . , ξn(t1, t2, . . . , tn)
)とします。このとき、f(x1, x2, . . . , xn) の重積分は
f ◦ Φ(t1, t2, . . . , tn) = f(ξ1(t1, t2, . . . , tn), ξ2(t1, t2, . . . , tn), . . . , ξn(t1, t2, . . . , tn)
)にどのように手を加えたものの重積分で表されるのか、それを与えてくれるのが重積分の変数変換
公式です。
1変数関数の場合には ∫ b
a
f(x)dx =∫ β
α
f ◦ ξ(t) · ξ′(t)dt
でした。つまり、f(x) の積分は f ◦ ξ(t) · ξ′(t) の積分に変換されるわけです。n 変数の場合の結論は、∫· · ·∫∫
D
f(x1, . . . , xn)dx1dx2 · · · dxn =∫· · ·∫∫
E
f ◦ Φ(t1, . . . , tn)|JΦ(t1, . . . , tn)|dt1dt2 · · · dtn
となります。ただし、E は Φ によって D に 1対 1に写る (t1, . . . , tn) の領域です。また、JΦ は
JΦ(t1, . . . , tn) = det
∂ξ1∂t1
∂ξ1∂t2
· · · ∂ξ1∂tn
∂ξ2∂t1
∂ξ2∂t2
· · · ∂ξ2∂tn
......
. . ....
∂ξn
∂t1
∂ξn
∂t2· · · ∂ξn
∂tn
という t1, . . . , tn の関数です。(見た目をすっきりさせるために、右辺では (t1, . . . , tn) を省略しました。)JΦ を写像 Φ のヤコビアンと言います。このことから分かるように、写像 Φ、すなわち n 個の n 変数関数 ξ1, . . . , ξn は少なくとも偏
微分可能でなければなりません。また、JΦ が連続なら変換後の重積分も可能になります。だから、
Φ すなわちすべての ξi が C1 級であることは変数変換公式が成り立つための十分条件です。
n 変数の場合の公式はごちゃごちゃして見にくいので、2変数関数の場合に変数変換公式を書き下ろしておきましょう。2変数関数 f(x, y) に二つの C1 級関数 ξ(s, t), η(s, t) を合成します。このとき、変数変換公式は∫∫
D
f(x, y)dxdy =∫∫
E
f(ξ(s, t), η(s, t)
) ∣∣∣∣∣det
(ξs(s, t) ξt(s, t)ηs(s, t) ηt(s, t)
)∣∣∣∣∣ dsdt
=∫∫
E
f(ξ(s, t), η(s, t)
) ∣∣∣∣∂ξ
∂s(s, t)
∂η
∂t(s, t) − ∂ξ
∂t(s, t)
∂η
∂s(s, t)
∣∣∣∣ dsdt
第 12 回解答 12
となります。
特に、極座標変換
ξ(r, θ) = r cos θ, η(r, θ) = r sin θ
の場合、この変換のヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣∣det
(ξr ξθ
ηr ηθ
)∣∣∣∣∣ =∣∣∣∣∣det
(cos θ −r sin θ
sin θ r cos θ
)∣∣∣∣∣ = |r|
ですので、極座標変換に対する重積分の変数変換公式は∫∫D
f(x, y)dxdy =∫∫
E
f(r cos θ, r sin θ)|r|drdθ
となります。
次の節ではこの場合に「なぜ |r| を掛けるのか」を説明します。
2.2 「扇形分割」によるリーマン和と極座標変換公式
1変数関数の場合、微分積分の基本定理によって積分の話を微分の話に置き換えることができました。置換積分の公式も、そのように考えて合成関数の微分法から導きました。しかし、重積分に
ついては微分積分の基本定理に当たるものがないので、重積分の定義に従って考えなければなりま
せん。重積分の定義とは「リーマン和の極限」です。だから、まず
xy 平面でのリーマン和と rθ 平面でのリーマン和の関係
を明らかにする必要があります。� �
x
y
0
Dij
a bα
β
図 2: 扇形の分割。� �さて、本来の重積分では積分範囲が扇形であっても x 軸と y 軸に平行な直線だけで積分範囲を
切り刻まなければならないわけですが、「軸に平行」にこだわらなければ図 2のように分割してもリーマン和に当たるものを考えることはできます。直感的には明らかだと思いますが、このような
第 12 回解答 13
分割を使ったリーマン和の極限もちゃんと重積分の値と一致することを証明しなければなりませ
ん。しかし、証明は(重要ではあるのですが、)ここでは省略します。次回の講義における一般論
で学んでいただくということで、申し訳ありませんがご了承ください。
一方、xy 平面における図 2の分割は、「rθ 平面(という仮想的な平面)における軸に平行な分
割(図 3)」を x = r cos θ, y = r sin θ で 1対 1に写したものになっています。だから、図 2に関する f(x, y) のリーマン和を図 3に関する「g(r, θ) に手を加えたもの」のリーマン和で表すにはどのように「手を加えればよいか」がわかれば、極座標変換すると重積分の式がどう変わるかがわか
ることになります。
図 3 の長方形 Eij が図 2 の Dij に写されているとし、Eij の中に代表点 (ρij , ϑij) を取り、ξij = ρij cos ϑij , ηij = ρij sinϑij とすることでDij の代表点 (ξij , ηij) を決めましょう。すると、
g(ρij , ϑij) = f(ξij , ηij)
ですので、Eij を底面とし g(ρij , ϑij) を高さとする直方体の体積と Dij を底面とし f(ξij , ηij) を高さとする「一切れのバームクーヘン」のようなものの体積との違いは、高さが同じなのですから
底面積の違いだけに依存しています。目標の重積分の値に収束する方のリーマン和は「バームクー
ヘン」の方の和ですから、Eij を底面とする直方体の体積に
Dij の面積Eij の面積
を掛けてからすべての Eij についての和を取ってやれば、g(r, θ) を使った式で目標の重積分の値の近似値が得られることになります。� �
r
θ
Eij
0 a bri−1 ri
α
β
θj−1
θj
図 3: 扇形の分割に当たる分割。� �Eij を [ri−1, ri] × [θj−1, θj ] とすると、
Dij の面積 =12(ri
2 − ri−12)(θj − θj−1) =
12(ri + ri−1)(ri − ri−1)(θj − θj−1)
=ri + ri−1
2× Eij の面積
となります。(E を r > 0 の範囲に取ったので ri2 > ri−1
2 となっています。)リーマン和で書けば∑i,j
f(ξij , ηij)“Dk の面積” =∑i,j
g(ρij , ϑij)ri + ri−1
2(ri − ri−1)(θj − θj−1)
第 12 回解答 14
です。これで分割を細かくした極限を取ると、左辺は目標の重積分の値∫∫D
f(x, y)dxdy D は図 2の扇形
に収束するわけですから右辺も同じ値に収束します。
しかし、右辺は「r と θ の関数のリーマン和」という形になっていません。まずいのは ri+ri−12
の部分です。ここが ρij , ϑij の関数(h(ρij , ϑij) と書くことにします)になっていれば右辺は
g(r, θ)h(r, θ)
という関数のリーマン和なので、分割を細かくすれば∫∫E
g(r, θ)h(r, θ)drdθ
に収束します。そこで、分割を細かくしたときの極限値が右辺のもとの一致するような関数 h(r, θ)を探してみましょう。分割が細かいと ri と ri−1 はどちらも ρij に近いことから、
ri+ri−12 を ρij
で置き換えれば、つまり
h(r, θ) = r
とすればよいのではないかと考えられるでしょう。(今は r > 0 の範囲に E をとってあるので絶
対値記号はついていませんが、r < 0 の範囲に E を選ぶことまで考慮に入れるなら、h(r, θ) = |r|とすることになります。)
このことくらいは証明しておきましょう。つまり、分割を細かくしたとき、∑i,j
g(ρij , ϑij)ri + ri−1
2(ri − ri−1)(θj − θj−1) (7)
と ∑i,j
g(ρij , ϑij)ρij(ri − ri−1)(θj − θj−1) (8)
の極限値が一致することを証明しておこうというわけです。今、上の式 (7)が重積分の値∫∫
Df(x, y)dxdy
に一致することは認めているので、式 (7)の極限値は存在するわけですから、式 (7)と (8)の差の極限値が 0であることを示せばよいことになります。
|ri − ρij | < |∆|, |ri−1 − ρij | < |∆|
ですので、∣∣∣∣ri + ri−1
2− ρij
∣∣∣∣ = |ri − ρij + ri−1 − ρij |2
≤ |ri − ρij | + |ri−1 − ρij |2
<|∆| + |∆|
2= |∆|
です。よって、∣∣∣∣∣∣∑i,j
g(ρij , ϑij)ri + ri−1
2(ri − ri−1)(θj − θj−1) −
∑i,j
g(ρij , ϑij)ρij(ri − ri−1)(θj − θj−1)
∣∣∣∣∣∣=
∣∣∣∣∣∣∑i,j
g(ρij , ϑij)(
ri + ri−1
2− ρij
)(ri − ri−1)(θj − θj−1)
∣∣∣∣∣∣≤ |∆|
∑i,j
|g(ρij , ϑij)|(ri − ri−1)(θj − θj−1)
第 12 回解答 15
という不等式が導かれます。ここで、f(x, y) は積分可能な関数であり、ξ(r, θ) = r cos θ, η(r, θ) =r sin θ は連続関数ですので、合成関数 g(r, θ) やその絶対値 |g(r, θ)| も積分可能です。よって、
|∆|∑i,j
|g(ρij , ϑij)|(ri − ri−1)(θj − θj−1)|∆|→0−−−−→ 0 ×
∫∫E
|g(r, θ)|drdθ = 0
となります。� �
rr0
θ0
θ
O
y
x
h
ϕ
r0
hr0ϕ
ϕ
図 4: 極座標変換で [r0, r0 + h] × [θ0, θ0 + ϕ] を xy 平面に写すと、面積はほぼ r0 倍になる。� �以上により、 ∫∫
D
f(x, y)dxdy =∫∫
E
g(r, θ)rdrdθ, E = [a, b] × [α, β]
が成り立つこと、すなわち f(x, y) の重積分は g(r, θ) := f(r cos θ, r sin θ) に「局所的な底面積の比」の近似値である r を掛けるという「手を加えたもの」の重積分になることが示せました。
結局、g(r, θ) = f(r cos θ, r sin θ) に「r を掛ける」ということの内容は、関数 f(x, y) に由来するのではなく、
rθ 平面での図形の面積と xy 平面での図形の面積が x = r cos θ, y = r sin θ によって
どのように関係しているか、
その局所的な面積の比の値を g(r, θ) の方に押しつけることだということがわかりました。全く同様に、はじめに証明抜きで紹介した一般の変数変換の公式においても、一般の変数変換ではヤコ
ビアンの絶対値 |JΦ(t1, . . . , tn)| が写像 Φ(t1, . . . , tn) による ‘体積’変化の「局所的な ‘体積’比」になっているのです。
3 重積分の変数変換に関する一般的な注意
3.1 変換した後の変数の積分範囲について
変数変換 x = ξ(s, t), y = η(s, t) によって x と y に関する重積分を s と t に関する重積分に変
換する場合、x と y に関する積分範囲 D にもれなく「ほぼ」1対 1に写る s と t に関する積分範
囲 E を見つけなければなりません。すぐに E を見つけられない場合には、次のように考えてみて
ください。
第 12 回解答 16
1. (ξ(s, t), η(s, t)) ∈ D となる (s, t) をすべて見つける。(それを E とする。)
2. E の部分集合で D に 1対 1に写されているもののうち積分を計算しやすそうなものを見つけて E とする。
1対 1という条件は多少は守られていなくても大丈夫です。どのくらい守られていなくてもよいかというと、「1対 1に写されていない E の部分がゼロ集合」なら O.K.です。例えば、D が単位円で x = r cos θ, y = r sin θ の場合で考えてみましょう。(r cos θ, r sin θ) ∈ D
となる (r, θ) の全体 E は
E = {(r, θ) | − 1 ≤ r ≤ 1, θは何でもよい }
です。そして、θ1 = θ0 + 2nπ のとき (r, θ0) と (r, θ1) は同じ点に写り、r1 = −r0 かつ θ1 =θ0 + (2n + 1)π のとき (r0, θ0) と (r1, θ1) 同じ点に写ります。また、r = 0 の点は θ が何であって
もすべて原点に写っています。これらのことから、E として、例えば
[0, 1] × [0, 2π], [0, 1] × [−π, π], [−1, 1] × [0, π]
などいくらでも選びようがあることになります。これらの中から、自分で好きなものを E に選べ
ばよいわけです。
これらはどれを選んでも単位円に 1対 1には写っていません。そうであっても変数変換の公式が成り立つことを見ておきましょう。例として E = [0, 1] × [0, 2π] とします。このとき、(0, θ) は任意の θ について (x, y) = (0, 0) に写り、また、任意の r について (r, 0) と (r, 2π) は xy 平面上の
同じ点に写りますので 1対 1ではありません。そこで、積分範囲を適当に狭めて、極座標変換が 1対 1になるようにしましょう。十分小さな二つの正実数 δ と ε に対して E の部分集合 Eδε を
Eδε = [δ, 1] × [ε, 2π]
とし、D の部分集合 Dδε を極座標変換による Eδε の像とします。極座標変換は Eδε から Dδε へ
の 1対 1の上への写像になっているので、ここでは重積分の変数変換公式が成り立ちます。すなわち、 ∫∫
Dδε
f(x, y)dxdy =∫∫
Eδε
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
が成り立っています。ここで、f が D で重積分可能な関数ならば、
limδ,ε→0
∫∫Dδε
f(x, y)dxdy =∫∫
D
f(x, y)dxdy
が成り立ちます。このことは f は D で有界であることと D から Dδε を除いた部分の面積が 0に収束することからわかります。実際、|f(x, y)| < M とすると、∣∣∣∣∫∫
D
f(x, y)dxdy −∫∫
Dδε
f(x, y)dxdy
∣∣∣∣ ≤ ∫∫D−Dδε
f(x, y)|dxdy ≤ M ×「D − Dδε の面積」
という不等式で右辺は 0に収束します。同様に、
limδ,ε→0
∫∫Eδε
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ =∫∫
E
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
が成り立ちます。以上により、極座標変換は E では 1対 1ではありませんが、∫∫D
f(x, y)dxdy =∫∫
E
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
は成り立ちます。
極座標変換に限らず、一般の場合にも以上の議論が成り立つので、変数変換の写像が 1対 1でなくとも、ゼロ集合を除いて 1対 1でさえあれば変数変換の公式を使うことができるのです。
第 12 回解答 17
3.2 変数変換が逆変換で与えられている場合
x と y に関する重積分を s と t に関する重積分に変換するには、x = ξ(s, t), y = η(s, t) に関するヤコビアンが必要ですが、逆変換の s = σ(x, y), t = τ(x, y) しか得られなかったり与えられていなかったりすることがあります。しかし、逆変換を x と y について解かなくても、ξ(s, t) とη(s, t) についてのヤコビアンを得ることができます。(ただし、ヤコビアンは x と y の関数として
しか得られません。)なぜなら、ヤコビ行列が互いの逆行列になっている、つまり(∂σ∂x
∂σ∂y
∂τ∂x
∂τ∂y
)(∂ξ∂s
∂ξ∂t
∂η∂s
∂η∂t
)=
(1 00 1
)
という関係があるので、ヤコビアン(すなわち行列式)は互いの逆数になっているからです。つ
まり、
欲しい変換のヤコビアン =1
逆変換のヤコビアン
という関係があるわけです。
3.3 広義重積分と変数変換
講義では広義重積分をとりたてて扱いませんでしたが、1変数関数の定積分で積分範囲の極限をとることを広義積分と呼んだように、重積分においても積分範囲の極限をとる操作を広義重積分と
言います。
1変数関数の広義積分では積分範囲の広げ方が事実上一つしかなかったので議論は明快でしたが、2変数以上になると積分範囲の広げ方が無数にあるのでとたんに状況が複雑になってしまいます。ただし、関数の値が定符号なら普通の重積分のように計算して問題ないことが証明できます。今回
の問題に出てくる広義重積分はすべて負にならない関数の積分ですので、普通の重積分の場合と完
全に同じように広義でない重積分のように計算することができます。
4 解答
4.1 問題 3の解答
(1) (r, θ) に関する積分範囲 E は、例えば
E = {(r, θ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ 2π}
を取れます。よって、∫∫D
(x + y)2dxdy =∫∫
E
(r cos θ + r sin θ)2rdrdθ =(∫ 1
0
r3dr
)(∫ 2π
0
(1 + 2 sin θ cos θ)dθ
)=[r4
4
]10
[θ + sin2 θ
]2π
0
=π
2となります。
(2)極座標変換によって D に写る集合として、例えば
E ={
(r, θ)∣∣∣ 0 ≤ r ≤ 1,
π
4≤ θ ≤ π
2
}
第 12 回解答 18
を取ることができます。よって、∫∫D
ydxdy =∫∫
E
r sin θ rdrdθ =(∫ 1
0
r2dr
)(∫ π2
π4
sin θdθ
)=
13√
2となります。
(3) D の条件式 x2 + y2 ≤ x を極座標で表すと r2 ≤ r cos θ となるので、極座標変換によって D
に写る集合として、例えば
E ={
(r, θ)∣∣∣ 0 ≤ r ≤ cos θ, −π
2≤ θ ≤ π
2
}を取ることができます(図 5)。 よって、� �
x
y
1
図 5: 問題 3(3)の積分範囲 D。� �∫∫
D
√x dxdy =
∫∫E
√r cos θ rdrdθ =
∫ π2
−π2
√cos θ
(∫ cos θ
0
r32 dr
)dθ =
∫ π2
−π2
25
cos3 θdθ
=25
∫ π2
−π2
(cos θ − sin2 θ cos θ
)dθ =
25
[sin θ − 1
3sin3 θ
]π2
−π2
=815
となります。
(4) 極座標変換によって D に写る集合として、例えば
E = {(r, θ) | 1 ≤ r ≤ e, 0 ≤ θ ≤ 2π}
を取ることができます。よって、∫∫D
log(x2 + y2)dxdy =∫∫
E
log(r2)rdrdθ =(∫ 2π
0
dθ
)(∫ e
1
2r log r dr
)= 2π
([r2 log r
]e1−∫ e
1
r2 1rdr
)= π
(e2 + 1
)となります。
(5) 積分範囲は、三角形
D1 = {(x, y) | 0 ≤ y ≤ x ≤ 1}
から扇形
D2 ={
(x, y)∣∣∣ x = r cos θ, y = r sin θ, 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π
4
}を取り除いたものです。よって、∫∫
D
xydxdy =∫∫
D1
xydxdy −∫∫
D2
xydxdy
第 12 回解答 19
です。D1 での重積分はそのまま累次積分によって∫∫D1
xydxdy =∫ 1
0
(∫ x
0
xydy
)dx =
∫ 1
0
[x
y2
2
]x
0
dx =∫ 1
0
x3
2dx =
[x4
8
]10
=18
と計算できます。D2 での重積分は極座標変換を利用して計算しましょう。極座標変換によって D
に写る集合として、例えば
E ={
(r, θ)∣∣∣ 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π
4
}を取ることができます。よって、∫∫
D2
xydxdy =∫∫
E
(r cos θ)(r sin θ)rdrdθ =(∫ 1
0
r3dr
)(∫ π4
0
cos θ sin θdθ
)
=[r4
4
]10
[12
sin2 θ
]π4
0
=116
となります。以上より ∫∫D
xydxdy =18− 1
16=
116
です。
(6) D の条件式に x = r cos θ, y = r sin θ を代入すると、x ≥ 0 と y ≥ 0 は合わせて r ≥ 0 と0 ≤ θ ≤ π
2 となり、(x2 + y2)2 ≤ x2 − y2 は
r4 ≤ r2(cos2 θ − sin2 θ
)すなわち r2 ≤ cos 2θ
となります(図 6)。 以上より、(r, θ) についての積分範囲 E は� �
O
y
x
図 6: 問題 3(6)の積分範囲 D。� �E =
{(r, θ)
∣∣∣ 0 ≤ r ≤√
cos 2θ, 0 ≤ θ ≤ π
4
}となります。よって、∫∫
D
xy
(x2 + y2)(1 + x2 + y2)2dxdy =
∫∫E
r2 cos θ sin θ
r2(1 + r2)2rdrdθ
=∫ π
4
0
cos θ sin θ
(∫ √cos 2θ
0
r
(1 + r2)2dr
)dθ =
∫ π4
0
cos θ sin θ
[− 1
2(1 + r2)
]√cos 2θ
0
dθ
=12
∫ π4
0
cos θ sin θ
(1 − 1
1 + cos 2θ
)dθ =
14
∫ π4
0
sin 2θ
(1 − 1
1 + cos 2θ
)dθ
第 12 回解答 20
ここで cos 2θ = t と置換して、
=14
∫ 0
1
(1 − 1
1 + t
)(−1
2
)dt =
18
[t − log |1 + t|
]10
=18
(1 − log 2) となります。
(7) D を極座標で表示するために、D を表す不等式に x = r cos θ, y = r sin θ を代入しましょう。
すると、一つ目の不等式は
r2(r2 − 2r cos θ − sin2 θ
)≤ 0
となります。
r2 − 2r cos θ − sin2 θ = r2 − 2r cos θ − (1 − cos2 θ) = (r − 1 − cos θ)(r + 1 − cos θ)
ですので、r ≥ 0 であることに注意すると、これを満たす (r, θ) は
0 ≤ r ≤ 1 + cos θ
であることがわかります。一方、二つ目の方程式は
r2 ≥ 14
であり、やはり r ≥ 0 であることを考慮すると、
r ≥ 12
となります。よって、問題の積分範囲 D は極座標では
12≤ r ≤ 1 + cos θ
を満たす (r, θ) ということになります。このような r が存在するための θ の条件は
12≤ 1 + cos θ すなわち − 2
3π ≤ θ ≤ 2
3π
です。以上より、D に写る rθ 平面の集合 E として
E ={
(r, θ)∣∣∣∣ 1
2≤ r ≤ 1 + cos θ, −2
3π ≤ θ ≤ 2
3π
}をとれることがわかりました(図 7)。一方、
√x2 + y2 = r ですので、計算したい重積分は重積分の極座標変換の公式を使って∫∫
D
1√x2 + y2
dxdy =∫∫
E
1rrdrdθ =
∫ 23 π
− 23 π
(∫ 1+cos θ
12
1dr
)dθ
=∫ 2
3 π
23 π
(12
+ cos θ
)dθ =
[θ
2+ sin θ
] 23 π
− 23 π
=23π +
√3 となります。
4.2 問題 4の解答
(1) (u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | − 1 ≤ u ≤ 1, −1 ≤ v ≤ 1}
第 12 回解答 21
� �y
x2
1
12
0
図 7: 問題 3(7)の積分範囲 D。� �� �
u
v
1
1
x
y
1
1
� �です。 また、(x, y) を (u, v) にする変換のヤコビアンが
det
(1 11 −1
)= −2
ですので、(u, v) を (x, y) にする変換のヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣ 1−2
∣∣∣∣ = 12
です。以上より、∫∫D
(y2 − x2)2dxdy =∫∫
E
(uv)212dudv =
12
(∫ 1
−1
u2du
)(∫ 1
−1
v2dv
)=
12
23
23
=29となります。
(2) (r, θ) に関する積分範囲 E として、たとえば
E = {(r, θ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ 2π}
をとることができます。ヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣∣det
(cos θ −r sin θ
sin θ r cos θ
)∣∣∣∣∣ = r
第 12 回解答 22
となります。よって、∫∫D
(x2 + y2)dxdy =∫∫
E
((1 + r cos θ)2 + (1 + r sin θ)2
)rdrdθ
=∫ 1
0
(∫ 2π
0
(2r + 2r2(cos θ + sin θ) + r3
)dθ
)dr =
∫ 1
0
2π(2r + r3
)dr =
52π です。
(3) (u, v) に関する積分範囲 E は、例えば
E = {(u, v) | u ≥ 0, v ≥ 0, u + v ≤ 1}
を選べます。 また、ヤコビアンの絶対値は、� �
O
y
x1
1 √x +
√y = 1
O
v
u1
1
� �∣∣∣∣∣det
(2u 00 2v
)∣∣∣∣∣ = |4uv| = 4uv
となります。以上より、∫∫D
x2dxdy =∫∫
E
u44uvdudv =∫ 1
0
4u5
(∫ 1−u
0
vdv
)du
=∫ 1
0
4u5
[v2
2
]1−u
0
du = 2∫ 1
0
(u5 − 2u6 + u7)du =184
となります。
(4)√
x +√
y ≤ 1 に x = r cos4 θ と y = r sin4 θ を代入すると、
√r cos2 θ +
√r sin2 θ =
√r ≤ 1
となります。よって、(r, θ) に関する積分範囲 E は、例えば
E ={
(r, θ)∣∣∣ 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π
2
}を選ぶことができます。 また、ヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣∣det
(cos4 θ −4r cos3 θ sin θ
sin4 θ 4r sin3 θ cos θ
)∣∣∣∣∣ = 4r cos3 θ sin3 θ
第 12 回解答 23
� �
O
y
x1
1 √x +
√y = 1
O
θ
r1
π2
� �です。以上より、∫∫
D
x2dxdy =∫∫
E
(r cos4 θ)24r cos3 θ sin3 θdrdθ = 4(∫ 1
0
r3dr
)(∫ π2
0
cos11 θ sin3 θdθ
)
= 414
∫ π2
0
(112
12 cos11 θ sin θ − 114
14 cos13 θ sin θ
)dθ
=[− 1
12cos12 θ +
114
cos14 θ
]π2
0
=112
− 114
=184
となります。
(5) (u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | 1 ≤ u ≤ 2, 0 ≤ v ≤ 1} = [1, 2] × [0, 1]
となります。 また、ヤコビアンの絶対値は� �
21
1
0 21
1
0
2
x
y
u
v
� �∣∣∣∣∣det
(1 − v −u
v u
)∣∣∣∣∣ = |u| = u
となります。以上より、∫∫D
x2 + y2
(x + y)3dxdy =
∫∫E
(u − uv)2 + (uv)2
u3ududv =
∫∫E
(1 − 2v + 2v2
)dudv
=(∫ 2
1
1du
)(∫ 1
0
(1 − 2v + 2v2
)dv
)=
23となります。
(6) (u, v) に関する積分範囲 E は
E ={
(u, v)∣∣∣ π
6≤ u ≤ π
3, 0 ≤ v ≤ π
6
}
第 12 回解答 24
� �
O
y
x
y = x2
y = x2 + π6
y = −2x + π3
y = −2x + π6
O
v
uπ3
π6
π6
� �となります。 また、(u, v) を (x, y) に変換する逆変換のヤコビアンは
det
(2 1
−2x 1
)= 2(1 + x)
なので、(x, y) を (u, v) に変換する変数変換のヤコビアンは
12(x + 1)
です。以上より、∫∫D
(x + 1) cos(2x − x2 + 2y)dxdy =∫∫
E
(x + 1) cos(u + v)1
2|x + 1|dudv
=12
∫ π6
0
(∫ π3
π6
cos(u + v)du
)dv =
12
∫ π6
0
(sin(v +
π
3
)− sin
(v +
π
6
))dv
=12
(− cos
(π
6+
π
3
)+ cos
(π
6+
π
6
)+ cos
(0 +
π
3
)− cos
(0 +
π
6
))=
2 −√
34
となります。
(7) (u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | 1 ≤ u ≤ 2, 1 ≤ v ≤ 3}
です。 また、逆変換のヤコビアンは� �
O
v
u
3
1
1 2 O
y
x
y = x
y = 3x
xy = 2xy = 1
� �det
(y x
− yx2
1x
)= 2
y
x= 2v
第 12 回解答 25
ですので、元の変換のヤコビアンは12v
となります。以上より、∫∫D
y2ex2y2dxdy =
∫∫E
uveu2 12|v|
dudv =12
(∫ 2
1
ueu2du
)(∫ 3
1
1dv
)=
12
[12eu2]21
(3 − 1)
=e4 − e
2となります。
4.3 問題 5の解答
(1) (これは、変換が問題 4の (5)と全く同じであり、積分範囲もとても似ています。)(u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | 0 < u ≤ 1, 0 ≤ v ≤ 1} = [1, 2] × [0, 1]
となります。 また、ヤコビアンの絶対値は� �
21
1
0 1
1
0 x
y
u
v
� �∣∣∣∣∣det
(1 − v −u
v u
)∣∣∣∣∣ = |u| = u
となります。以上より、∫∫D
ey−xy+x dxdy =
∫∫E
e2v−1ududv =(∫ 1
0
udu
)(∫ 1
0
e2v−1dv
)=
12
(12e1 − 1
2e−1
)=
14
(e − 1
e
)となります。
(2) (u, v) に関する積分範囲 E は
E ={
(u, v)∣∣∣∣ 0 ≤ u − v
2≤ u + v
2,
u − v
2≤ 1 − u + v
2, v = 0
}= {(u, v) | 0 ≤ u ≤ 1, 0 < v ≤ u}
となります。 また、(x, y) を (u, v) にする変換のヤコビアンが
det
(1 11 −1
)= −2
第 12 回解答 26
� �
O
v
u1
1
O
y
x
y = 1 − x
y = x
� �なので、逆変換のヤコビアンの絶対値は ∣∣∣∣ 1
−2
∣∣∣∣ = 12
です。以上より、∫∫D
1√x2 − y2
dxdy =∫∫
E
1√uv
12dudv =
∫ 1
0
(∫ u
0
12√
uvdv
)du =
∫ 1
0
[√v
u
]u
0
du
=∫ 1
0
1du = 1 となります。
(3) (u, v) に関する積分範囲を求めるために、変換 u = xy, v = x2 + y2 を x と y について解きま
しょう。
v + 2u = x2 + 2xy + y2 = (x + y)2, v − 2u = x2 − 2xy + y2 = (x − y)2
ですので、まず v + 2u ≥ 0 かつ v − 2u ≥ 0 でなければなりません。しかし、u = xy ≥ 0 かつv = x2 + y2 ≥ 0 ですので、v + 2u ≥ 0 は成り立っています。よって、v ≥ 2u が必要であること
が分かります。その上で、0 ≤ x ≤ y に注意して二つの式の両辺の平方根をとると
√v + 2u = x + y,
√v − 2u = y − x
となります。これを解いて
x =√
v + 2u −√
v − 2u
2, y =
√v + 2u +
√v − 2u
2
となります。ここまでで、0 ≤ x ≤ y という条件は満たされているので、残るは 0 ≤ xy ≤ 1 という条件です。u = xy ですから、その条件は 0 ≤ u ≤ 1 に対応します。以上より、
E = {(u, v) | 0 ≤ u ≤ 1, 2u ≤ v}
と取れることが分かりました。
(x, y) を (u, v) にする変換のヤコビアンが
det
(y x
2x 2y
)= 2(y2 − x2) = 2
((√v + 2u +
√v − 2u
2
)2
−(√
v + 2u −√
v − 2u
2
)2)
= 2√
v2 − 4u2
第 12 回解答 27
� �
O
v
u
v = 2u
1 O
y
x
xy = 1
y = x
� �ですので、(u, v) を (x, y) にする変換のヤコビアンの絶対値は
12√
v2 − 4u2
です。
以上を使って積分を計算しましょう。まず∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy =
∫∫E
v
1 + v2
12√
v2 − 4u2dudv
=12
∫ 1
0
(∫ ∞
2u
v
1 + v2
1√v2 − 4u2
dv
)du
(☆)
となります。v での積分において t = v2 と置換すると、∫ ∞
2u
v
1 + v2
1√v2 − 4u2
dv =12
∫ ∞
4u2
11 + t
1√t − 4u2
dt
となります。さらに s =√
t − 4u2 と置換すると、∫ ∞
4u2
11 + t
1√t − 4u2
dt =∫ ∞
0
11 + s2 + 4u2
1s2sds = 2
∫ ∞
0
11 + 4u2 + s2
ds
となります。さらにさらに r = s√1+4u2 と置換すると、∫ ∞
0
11 + 4u2 + s2
ds =∫ ∞
0
11 + 4u2
11 + r2
√1 + 4u2dr =
[1√
1 + 4u2tan−1 r
]∞0
=π
2√
1 + 4u2
となります。これを式 (☆)に戻すと、∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy =
π
4
∫ 1
0
1√1 + 4u2
du
となります。u = 12 sinhw と置換すると、
12
sinhw =ew − e−w
4= 1
を満たす w は ew = 2 +√
5、すなわち w = log(2 +
√5)ですので、∫ 1
0
1√1 + 4u2
du =∫ log(2+
√5)
0
1√1 + sinh2 w
(12
sinhw
)′
dw
=12
∫ log(2+√
5)
0
1cosh w
cosh wdw =12
log(2 +
√5)
第 12 回解答 28
となります。これで、やっと答えにたどりつきました。∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy =
π
8log(2 +
√5)です。
(4) (θ, φ) についての積分範囲 E を探しましょう。
まず、x や y についての条件を考える前に、sin や cos の周期性を利用して、(θ, φ) を探す範囲をできるだけ狭めてしまいましょう。
sin も cos も周期 2π であることから、0 ≤ θ < 2π および 0 ≤ φ < 2π の範囲で考えれば十分で
す。しかも、sin(θ ± π)cos(φ ± π)
=sin θ
cos φ
sin(φ ± π)cos(θ ± π)
=sinφ
cos θ
なので、(θ, φ) を探す範囲を、たとえば [0, 2π] × [0, π] に狭めることができます。さらに、
sin(θ + π)cos φ
=sin(π − θ)cos(π − φ)
sin φ
cos(θ + π)=
sin φ
cos(π − θ)
なので、(θ, φ) を探す範囲は [0, π] × [0, π] で十分です。次に x と y についての条件を考えましょう。
x が 0以上であることから、
sin θ が正のときは cos φ も正 (9)
でなければならず、
sin θ が負のときは cos φ も負 (10)
でなければなりません。(sin θ = 0 のときは cos φ は正でも負でもかまいません。)同様に y が 0以上であることから、
sinφ が正のときは cos θ は正 (11)
でなければならず、
sinφ が負のときは cos θ は負 (12)
でなければなりません。(sin φ = 0 のときは cos θ は正でも負でもかまいません。)[0, π] × [0, π]においては sin θ も sinφ も 0以上ですので、条件 (10)と条件 (12)を満たす (θ, φ) は存在しません。また、条件 (9)は
θ = 0, π =⇒ 0 < φ <12π
であり、条件 (11)は
φ = 0, π =⇒ 0 < θ <12π
です。よって、ここまでで (θ, φ) の範囲は[0, π
2
]×[0, π
2
]まで狭まりました。
x ≤ 1 は sin θ ≤ cos φ となります。cos φ = sin(
π2 − φ
)であり、今 0 ≤ θ ≤ π
2 および
0 ≤ π2 − φ ≤ π
2 なので、sin θ ≤ cos φ は
θ ≤ π
2− φ すなわち θ + φ ≤ π
2
と同値です。
y ≤ 1 は x ≤ 1 において θ と φ を入れ替えた条件ですので、やはり θ + φ ≤ π2 となります。
第 12 回解答 29
� �
θ
φ
π2
π2
O x1
1
y
O� �θ + φ = π
2 となる (θ, φ) はすべて (x, y) = (1, 1) に写ります。よって、(θ, φ) に関する積分範囲E として
E ={
(θ, φ)∣∣∣ 0 ≤ θ, 0 ≤ φ, θ + φ <
π
2
}をとれることが分かりました。 なお、x = 1 または y = 1 で (1, 1) ではない (x, y) に写る (θ, φ)は存在しませんが、そのような (x, y) の全体は測度 0で重積分の値に影響しません。さて、ヤコビアンの絶対値を計算すると、∣∣∣∣∣det
(cos θcos φ
sin θ sin φcos2 φ
sin θ sin φcos2 θ
cos φcos θ
)∣∣∣∣∣ = 1 − sin2 θ sin2 φ
cos2 θ cos2 φ= 1 − x2y2
となります。よって、求める重積分は∫∫D
11 − x2y2
dxdy =∫∫
E
11 − x2y2
(1 − x2y2)dθdφ =∫∫
E
1dθdφ =12
π
2π
2=
π2
8となります。
4.4 問題 6の解答
(1) ここでは、まず x で積分し、次に y で積分し、最後に z で積分するという順序の累次積分で
計算してみます。他の順序での計算は自分でやってみてください。∫∫∫D
xy5z7dxdydz =∫ √
2
0
(∫ z
0
(∫ y
0
xdx
)y5dy
)z7dz =
∫ √2
0
(∫ z
0
[x2
2
]y
0
y5dy
)z7dz
=12
∫ √2
0
(∫ z
0
y2y5dy
)z7dz =
12
∫ √2
0
[y8
8
]z
0
z7dz =116
∫ √2
0
z8z7dz
=116
[z16
16
]√2
0
=√
216
(16)2= 1
(2) ここでは、まず x で積分し、次に y で積分し、最後に z で積分するという順序の累次積分で
計算してみます。他の順序での計算は自分でやってみてください。∫∫∫D
ex+y+zdxdydz =∫ log 2
0
(∫ z
0
(∫ y+z
0
exdx
)eydy
)ezdz =
∫ log 2
0
(∫ z
0
[ex]y+z
0eydy
)ezdz
=∫ log 2
0
(∫ z
0
(e2y+z − ey
)dy
)ezdz =
∫ log 2
0
[12e2y+z − ey
]z
0
ezdz
=∫ log 2
0
(12e4z − 3
2e2z + ez
)dz =
[18e4z − 3
4e2z + ez
]log 2
0
=58
第 12 回解答 30
(3) ここでは、まず z で積分し、次に y で積分し、最後に x で積分するという順序の累次積分で
計算します。他の順序での計算は自分でやってみてください。(計算できない順序もあるかもしれ
ません。) ∫∫∫D
e(1−x)3dxdydz =∫ 1
0
(∫ 1−x
0
(∫ 1−x−y
0
dz
)dy
)e(1−x)3dx
=∫ 1
0
(∫ 1−x
0
(1 − x − y)dy
)e(1−x)3dx =
∫ 1
0
[(1 − x)y − y2
2
]1−x
0
e(1−x)3dx
=12
∫ 1
0
(1 − x)2e(1−x)3dx =12
[−1
3e(1−x)3
]10
=e − 1
6
(4)積分範囲が原点を中心とした球体ですので、極座標 x = r sin θ cos φ, y = r sin θ sinφ, z = r cos θ
を利用して計算してみましょう。極座標変換で D に写る範囲 E として、例えば
E = {(r, θ, φ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π, 0 ≤ φ ≤ 2π }
を選んでみます。ヤコビアンは
det
sin θ cos φ r cos θ cos φ −r sin θ sin φ
sin θ sinφ r cos θ sinφ r sin θ cos φ
cos θ −r sin θ 0
= r2 sin θ
です。よって ∫∫∫D
x2dxdydz =∫∫∫
E
(r sin θ cos φ)2 r2 sin θdrdθdφ
=(∫ 1
0
r4dr
)(∫ π
0
sin3 θdθ
)(∫ 2π
0
cos2 φdφ
)となります。 ∫ 1
0
r4dr =[r5
5
]10
=15∫ π
0
sin3 θdθ =∫ π
0
(sin θ − sin θ cos2 θ
)dθ =
[− cos θ +
13
cos3 θ
]π
0
=43∫ 2π
0
cos2 φdφ =∫ 2π
0
1 + cos 2φ
2dφ =
[θ
2+
14
sin 2φ
]2π
0
= π
ですので、 ∫∫∫D
x2dxdydz =415
π です。
4.5 問題 7の解答
(1) ガンマ関数の定義式で t = s2 と置換すると、
Γ(x) =∫ ∞
0
e−ttx−1dt =∫ ∞
0
e−s2s2(x−1)2sds = 2
∫ ∞
0
e−s2s2x−1ds
となります。これに x = 12 を代入すると Γ
(12
)= 2
∫∞0
e−s2ds となります。
第 12 回解答 31
(2) 極座標変換で
D := [0,∞) × [0,∞) = {(x, y) | x ≥ 0, y ≥ 0}
に写る範囲として
E := [0,∞) ×[0,
π
2
]={
(r, θ) | r ≥ 0, 0 ≤ θ ≤ π
2
}をとることができます。よって、(∫ ∞
0
e−x2dx
)2
=(∫ ∞
0
e−x2dx
)(∫ ∞
0
e−y2dy
)=∫
D
e−x2−y2dxdy =
∫E
e−r2rdrdθ
=(∫ ∞
0
re−r2dr
)(∫ π2
0
1dθ
)=[−1
2e−r2
]∞0
[θ]π
2
0=
π
4となります。
(3) (1)の解答で示した等式
Γ(x) = 2∫ ∞
0
e−s2s2x−1ds
と、演習第 10回問題 8で示してもらった等式
B(x, y) = 2∫ π
2
0
sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ
と、(2)で使った E から Dへの極座標変換を使うと次のように計算できます。t = r cos θ, s = r sin θ
と変換します。
Γ(x)Γ(y) =(
2∫ ∞
0
e−s2s2x−1ds
)(2∫ ∞
0
e−t2t2y−1dt
)= 4
∫D
e−s2−t2s2x−1t2y−1dsdt
= 4∫
E
e−r2 (r2x−1 sin2x−1 θ
) (r2y−1 cos2y−1 θ
)rdrdθ
=(
2∫ ∞
0
r2x+2y−1dr
)(2∫ π
2
0
sin2x−1 θ cos2y−1 θ
)dθ = Γ(x + y)B(x, y)
(4) その 1 e の肩に乗っている 2次式を平方完成すると、
3x2 − 2xy + 3y2 = 3(x − y
3
)2
+83y2
となります。そこで、
u =√
3x − 1√3y, v =
2√
2√3
y
と変数変換しましょう。この変換で xy 平面と uv 平面は 1対 1にもれなく対応しているので、u,v についての積分範囲も uv 平面全体です。また、xy 平面から uv 平面への変換のヤコビアンが
det
( √3 − 1√
3
0 2√
2√3
)= 2
√2
ですので、uv 平面から xy 平面への変換のヤコビアンは 12√
2です。以上より、∫∫
R2e3x2−2xy+3y2
dxdy =∫∫
R2eu2+v2 1
2√
2dudv =
12√
2
(∫ ∞
−∞eu2
du
)(∫ ∞
−∞ev2
dv
)=
π
2√
2
となります。
第 12 回解答 32
その 2 その 1とほとんど同じですが、平方完成にもっと一般性のある方法を利用して解いてみましょう。e の肩に乗っている 2次式は、行列の積を利用して
3x2 − 2xy + 3y2 =(
x y)( 3 −1
−1 3
)(x
y
)と書くことができます。この 2次正方行列は対称行列ですので、直交行列で対角化できます。固有方程式は
det
(λ − 3 1
1 λ − 3
)= λ2 − 6λ + 8 = (λ − 2)(λ − 4)
ですので、固有値は 2と 4です。つまり、
tP
(3 −1
−1 3
)P =
(2 00 4
)となる直交行列 P があります。(tP は P の転置行列です。)そこで、(
x
y
)= P
(u
v
)という変換を積分に施しましょう。P がこの変換のヤコビ行列であり、直交行列の行列式は 1か−1 なので、ヤコビアンの絶対値は 1です。また、
3x2 − 2xy + 3y2 =(
x y)( 3 −1
−1 3
)(x
y
)=(
u v)
tP
(3 −1
−1 3
)P
(u
v
)
=(
u v)( 2 0
0 4
)(u
v
)= 2u2 + 4v2
となっています。よって、∫∫R2
e−3x2+2xy−3y2dxdy =
∫∫R2
e−2u2−4v2dudv =
(∫ ∞
−∞e−2u2
du
)(∫ ∞
−∞e−4v2
dv
)となります。一般に a > 0 に対し、s =
√at と置換することで、∫ ∞
−∞e−at2dt =
1√a
∫ ∞
−∞e−s2
ds =√
π
a(♯)
ですので、 (∫ ∞
−∞e−2u2
du
)(∫ ∞
−∞e−4v2
dv
)=
π
2√
2となります。
(5) e の肩に乗っている 2次式を平方完成する方法でももちろんできますが、ここでは (4)その 2の方法で解きましょう。e の肩に乗っている 2次式は、行列の積を利用して
3x2 + 3y2 + 5z2 + 2xy − 2yz − 2zx =(
x y z) 3 1 −1
1 3 −1−1 −1 5
x
y
z
と書くことができます。この 3次正方行列は対称行列ですので、直交行列で対角化できます。固有方程式は
det
λ − 3 −1 1−1 λ − 3 11 1 λ − 5
= λ3 − 11λ2 + 36λ − 36 = (λ − 2)(λ − 3)(λ − 6)
第 12 回解答 33
ですので、固有値は 2と 3と 6です。つまり、
tP
3 1 −11 3 −1
−1 −1 5
P =
2 0 00 3 00 0 6
となる直交行列 P があります。そこで、 x
y
z
= P
u
v
w
という変換を積分に施しましょう。P がこの変換のヤコビ行列であり、直交行列の行列式は 1か−1 なので、ヤコビアンの絶対値は 1です。また、
3x2 + 3y2 + 5y2 + 2xy − 2yz − 2zx =(
x y z) 3 1 −1
1 3 −1−1 −1 5
x
y
z
=(
u v w)
tP
3 1 −11 3 −1
−1 −1 5
P
u
v
w
=(
u v w) 2 0 0
0 3 00 0 6
u
v
w
= 2u2 + 3v2 + 6w2
となっています。よって、(1)の式 (♯)により∫∫∫R3
e−3x2−3y2−3z2−2xy+2yz+2zxdxdydz =∫∫∫
R3e−2u2−3v2−6w2
dudvdw
=(∫ ∞
−∞e−2u2
du
)(∫ ∞
−∞e−3v2
dv
)(∫ ∞
−∞e−6w2
dw
)=
√π
3
6
となります。 □
(4)と (5)は次のように一般化されます。A を正定値 n 次対称行列とします。(「正定値」とは固有値が全て正であることと同値です。)そ
して、
QA(x1, x2, . . . , xn) =(
x1 x2 · · · xn
)A
x1
x2
...xn
と定義します。このとき∫
· · ·∫∫
Rn
e−QA(x1,x2,...,xn)dx1dx2 · · · dxn =
√πn
det A
が成り立ちます。
証明も (4)の解答その 2や (5)の解答と全く同様です。ぜひ証明を完成させてみてください。