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月面極域探査ミッション SACLAR: Selenology and Aerogel-using Capture of Lunar Aqueous-altered Regolith 第6回探査ミッション立案スクール Sep. 8, 2018 (神戸大学CPS) チーム:月兎(GET) 朝倉・田澤・田中・荷見・松岡

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Page 1: CPS Web Site - 月面極域探査ミッションmosir/pub/2018/2018-09-03/10...2018/09/03  · ミッション要求 Chandrayaan M3 によるIR反射ス ペクトル (Li+ 2017, LPSC)

月面極域探査ミッションSACLAR: Selenology and Aerogel-using

Capture of Lunar Aqueous-altered Regolith

第6回探査ミッション立案スクール

Sep. 8, 2018 (神戸大学CPS)

チーム:月兎(GET)

朝倉・田澤・田中・荷見・松岡

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大目標

月・地球の進化を明らかにする

• 理学的見地:月の水の由来• 地球と関係する場合:月と地球の起源に制約できる• 地球と無関係な場合:月がたどった独自の進化を垣間

見ることができる

• 工学的見地:資源としての月の水• 月・深宇宙探査用資源として、月の水の利用が検討さ

れている

先行する探査では極域における水氷の存在が示唆されている

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ミッション要求

Chandrayaan M3

によるIR反射スペクトル (Li+ 2017, LPSC)

純氷(77K)

Faustini(SP)

Ice-less

月極域の (1) 氷の存在、(2) 氷の起源を明らかにする

(1) 極域内の氷の存在:先行探査では確定していない• 温度的に存在できないのでは?• 水のスペクトル特徴が見えている• レーザー反射率が高い領域=氷?

↑赤外分光と中性子分光で

情報が得られる

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ミッション要求

(1) 極域内の氷の存在:先行探査では確定していない• 温度的に存在できないのでは?• 水のスペクトル特徴が見えている• レーザー反射率が高い領域=氷?

↑赤外分光と中性子分光で

情報が得られる

Lunar Prospector 中性子分光器によるH量の見積もり(Lawrence+ 2006, JGR)

NP

SP

月極域の (1) 氷の存在、(2) 氷の起源を明らかにする

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ミッション要求

(2) 氷の起源の候補• 月からの脱ガス• 彗星からの供給• 太陽風の水素による水分子生成

D/Hは赤外分光でも明らかにできるが,それ以外は地球上での分析が必要

同位体比から起源を制約可能

D/H, 14N/15N, 13C/12C etc

D/H-15N/14N ダイアグラム上の太陽系天体の分布Sarafian+ 2014, Science

彗星

太陽

地球

OH伸縮:3μmOD伸縮:4μm

月極域の (1) 氷の存在、(2) 氷の起源を明らかにする

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探査対象

Shackletonクレーター(南極域)

D=20km, d=3km

• 永久影を有する• 温度的には氷が存在できない(かぐや)• 分光学的に水の特徴を確認(チャンドラ

ヤーン・M3)• レーザー反射率の高い領域を確認(LRO)

地表面直下に氷の層が存在?水蒸気の流れがある?

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システム要求

ミッション要求

(1)氷の存在

(2)氷の起源

システム要求

SysR1 赤外反射スペクトル観測器

SysR2 中性子スペクトル観測器

SysR3 サンプルリターン(SR)と地上での同位体測定

SR手法(SysR3)について更に詳細に検討

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SRの困難

困難:Shackletonクレーターの永久影環境水氷が存在する可能性があるが…× 可視光で対象や障害物が見えない× 太陽光発電ができない× きわめて低温で機器に障害が生じうる

SRの要求:着陸せずにサンプル採取をしたい

これらの条件から、着陸と採取が困難となる

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SRに関連したシステム要求

着陸せずにサンプル採取をしたい

インパクタを落下させ、その放出物を軌道上で採取する

SysR3a インパクタ落下地点を確定させるSysR3b エジェクタからのSRSysR3c エジェクタカーテンを観察するSysR3d 放出されるガスを観察する

どの起源でも岩石にOH結合が生じたと期待できる→氷ではなく熱条件の緩い水和鉱物をサンプル対象とする• 月脱ガス:地熱による水質変成• 彗星衝突:衝突加熱水質変成• 太陽風:岩石表面でのOH基形成

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システム定義

赤外観測 近-中間赤外広帯域レーザー(LOLA(13.2kg, 33W)を改良)(SysR1) 3, 4μmバンドカメラ

近赤外ー中間赤外分光計(M3を改良, 8kg, 20W))

中性子観測 中性子分光計(MESSENGER-NS, 3.9kg, 6W)(SysR2)

SRメイン機器 インパクタ-軌道サンプラ-カプセル系(Stardustのサンプラ)(SysR3b) 軌道制御系

軌道観測系(LIDAR, LOLA(13.2kg, 33W))

エジェクタカーテン観測(SysR3c) 「赤外観測」と同様(+地上観測(南半球高緯度の望遠鏡))

ガス観測 ガスサンプラ(SysR3d) イオン検出器(Kaguya-PACE, 16kg)

落下地点決定 レーダー反射測定器(Chandrayaan-MiniSAR, 8.1kg, 50W)(SysR3a) その他「赤外観測」「中性子観測」と同様

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赤外観測&レーザー観測機器

近-中間赤外広帯域レーザーによるスポット群スポットを3μm(OH伸縮),4μm(OD伸縮)バンドカメラで撮像

L:LIDAR光源併用I:近赤外-中間赤外分光計光源併用

L

I

2.3km

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ミッション概要

月周回軌道投入重量の見積もり

ΔV1 GTO

36000km

320000km 60000km

ΔV2

ΔV1 [km/s] 0.77

ΔV2 [km/s] 0.73

1. H3ロケットを用いてGTOに6.5tのペイロードを

投入

2. ΔV1の加速で月遷移軌道に投入

3. ΔV2の減速で月周回軌道に投入

Isp = 310 s のエンジンを用いたとすると・・・

3.97ton のペイロードを月周回軌道に投入できることがわかった。

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ミッション概要

インパクタの軌道変更インパクタ

オービタ

オービター

ΔV

軌道変更後の近点を通過する際に軌道変更を行う。

ΔV = 1.2km/s

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衝突シーケンス

54°

ΔV = 11m/s

インパクタを遠点で減速して月に衝突させる。

11m/sの減速を行うことで親機の近点付近で

54°の衝突角を実現できることがわかった。

ミッション概要

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オービタの設計

ミッション機器

機器 重量 [kg] 消費電力 [W]

近‐中間赤外広帯域レーザー 13.2 33

3,4㎛バンドカメラ 6 -

近赤外‐中間赤外分光計 8 20

中性子分光計 3.9 6

イオン検出器 16 ‐

レーダー反射測定器 8.1 50

サンプラ 7 ‐

帰還カプセル 50 ‐

インパクタ(推進系含む) 520 ‐

合計 632.2 109

バス機器重量SELENEのミッション機器・バス機器を参考にSACLARの

バス機器重量は1700kg(推薬1100kg)とする。

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サンプル回収器エアロゲルでエジェクタを回収Stardustのサンプラーを応用

• 全体の面積 1 m2

✓ それぞれ:r=0.21m, S=0.14m2

• エアロゲルの厚さ 1cm

• 総質量

カプセル ふた

Stardustのエアロゲルサンプラ

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イオン検出器

エアロゲル

イオン検出器

イオン

ダスト

イオン検出器でクレーターから放出された揮発性物質を検出する

かぐやに搭載されたイオン検出器(PACE)

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Sample return概略図

Impactorを衝突させて、人工的にクレーターを形成舞い上げられたejectaをorbiterが捕獲、カプセルにて地球へ持ち帰る

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Ejectaの回収

・高度10kmにsampleはどの程度あるのか

・より多くのsampleを採取するために、高度10kmでのsampleの面密度が最も大きくなる時にオービターがカーテンを通過するようにする

衛星が通過する10kmでのejectaカーテンの面密度を考える

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◉通過面の面密度が最大になるのはどんな時?

衝突後、ejectaカーテンが形成速度分布に従って速度の大きいejectaから10kmに到達

・速度が低すぎる…高度10kmまで達しない・速度が高すぎる…sampleの数密度が低い

→月重力下で高度10kmまで十分通過できるejectaの中で、低速のejectaを狙う

v~270(m/s)のejectaが10kmまで上昇した時を想定

サンプル回収量の概算 (1)

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𝑉𝑒(𝑣)

𝑅3~0.32

𝑣

𝑔𝑅

−1.22

parameter

Impactorの質量𝑚𝑝 500(kg)

Impactorの衝突速度 𝑣𝑝 3000(m/s)

形成クレーターの半径 𝑅 ~14(m) (∵スケーリング則から計算)

エアロゲルの表面積 𝑆 1.0(m2)

Ejecta物質の密度 𝜌 3.0(g/cm3)

Ejectaの体積 𝑉 6.55×10-14(m3)

・以下のparameterで計算

𝑉𝑒(𝑣):速さ𝑣以上の速度のejectaの総体積

・重力支配域でのejectaの破片速度の式は次のように与えられる

サンプル回収量の概算 (2)

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𝛿𝑉𝑒 𝑣0 + 𝛿𝑣; 𝑣0 =𝜕𝑉𝑒𝜕𝑣

∙ 𝛿𝑣

= −0.39𝑅3

𝑔𝑅−1.22 𝑣

−2.22 ∙ 𝛿𝑣

高度10kmと10km+1mの速度差を計算v=270(m/s)での速度分布を適用

この時、高度10km~10km+1mにある

・sample粒子の個数 ~ 1.2×1012(個)・カーテンの通過面の数密度 ~ 1.8×107(個/㎡)

質量に直すと、一回の通過で約4g採取できる!

サンプル回収量の概算 (3)

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シールド設計・ejectaによる損傷を防ぐシールドを考える

《安全性の概算》

・Stardust計画のWhipple Shieldsを採用予定~1(cm3)の衝突物は防ぐことが可能

・ejecta粒子の平均サイズ 〜6.6×10-8(cm3)

・ejecta粒子の大きさが全て1(cm3)であると仮定→通過面の数密度は~1(個/m2)→1(cm3)級のejecta粒子が1%あったとしても、衝突確率は~1%

☆以上の議論から、十分なシールド効果が期待できる

Whipple shields

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サンプルの解析手法

地上では同位体顕微鏡で解析• 物質中の微細な同位体の組成分布を観

測できる

惑星間粒子 Benaventa のδ17O image(幅9μm)(Floss & Stadermann 2003, LPSC)

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サクセスクライテリア

超低空からの極域クレーター撮像 Minimum

中性子分光・赤外反射分光測定 Minimum

インパクタの着弾 Minimum

エジェクタカーテンの分光学的観測 Full

エジェクタの採取 Full

サンプルリターン Full

クレーター形成後の継続的観測 Extra

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まとめ

• 月極域の物質のSRを行うミッションを立案した

• 日陰の制約を緩和するサンプリング手法を検討した

• SRに加え、氷の存在をサポートするようなリモートセンシング観測の組み合わせを提案した

• 天体に直接着陸しないSRは今後の探査へ広く応用できる技術だと考えられる

エンケラドゥスのプルーム 準惑星ケレスの永久日陰

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おしまい