『cop9における市民ムーブメント及びドイツ先進事例の調査視 … ·...
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『COP9 における市民ムーブメント及びドイツ先進事例の調査視察』の報告
2008 年5月 19~30 日、世界各国及び関連機関や NGO 等から 7,000 人以上が参加した「生物多様性条
約第9回会議(COP9)」が、ドイツのボン市で開催されました。また、都市と生物多様性を議題とした
「国際市長会議」も、COP9 会場近くで開催されました。
私たちの協会は、名古屋市からの依頼により、職員の方々と市が任命した“なごや生物多様性アドバ
イザー”の3名と一緒に、これらの会議に参加しました。
また、会議に先立ち、ドイツにおける持続可能な地域づくり先進事例の案内も行いましたので、これら
の様子をご報告します。
その1 COP9 会場の内と外
その2 COP9 関連行事
その3 カールスルーエ市のまちづくり
その4 BUND ベルリン支部訪問
その5 自然の庭“エコラウベ”
その6 ジーベンゲビルゲ自然公園
「生物多様性条約締約国会議」
生物多様性条約は気候変動枠組条約と一緒に、1992 年の地球サミットでつくられた条約です。2008
年 7 月現在、日本を含む 190 ヶ国及び欧州共同体(EC)がこの条約に加盟し、世界の生物多様性を保全
するための具体的な取組を検討します。
条約加盟国による会議は2年に 1度開催されており、今回は9回目の会議でした。
「国際市長会議」
自治体首長や専門家等 36 カ国 153 名が参加し開催されました。出席者からは、生物多様性が文化・
社会の多様性にも深く関係していることや、生物多様性と気候変動問題との関連性、資源管理と生態系
保全を自治体の優先施策として推進するべきである等、積極的な意見が続きました。
その1 COP9 会場の内と外
会場内では各国の代表者たちが、2002 年にハーグで開催された COP6 で採択された「2010 年目標」(2010
年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標)の達成に向け、各課題の進捗状況及び
今後如の取組強化などについて、熱心に討論していました。また、26 日には会場内の別室で、サイドイ
ベント「都市と生物多様性」が開かれ、谷本正憲石川県知事、松原武久名古屋市長らが生物多様性に関
する取り組みを紹介していました。
会議場周辺では、「生物多様性プラザ」ステージでトークショーや映像上映、夜には音楽演奏など
が行われていました。テントでは、行政機関・NGO・企業などさまざまな人々が、来場者に生物多様性
保全の取り組みを説明していました。
◎ 会議場の中のようす
◎ 会議場の外のようす
その 2 COP9 関連行事
①森のフォーラム
ボン中央駅近くの大聖堂前広場ではドイツ森林保護同盟が、「森のフォーラム」を実施していま
した。「森のフォーラム」は、街ゆく市民に森の生物多様性について伝えるため、広場にブナの森
に重点をおいたドイツの森の生物多様性を紹介する展示です。展示スペースの中に木のベンチを並
べ、団体スタッフが「緑の教室」と称した授業を行ったそうです。
②市民の庭公開
ボンのあるライン地方では、庭づくりに力を入れている個人宅が数多くあります。COP9 開催中、世
界からのお客様をもてなすため公開された中から4カ所の庭を見学しました。
広大な庭園から、街なかの緑のオアシス的な庭やタウンハウスの小さな庭まで、多彩で独創性に富
んでいます。極力、在来植物を用いた庭づくりをしているところもあり、まさしく市民による生物多
様性の保全活動と言えました。
その 3 カールスルーエ市のまちづくり
カールスルーエ市は、バーテンビュルテンベルク州の北西に位置する人口約 28 万人の中型都市。
市内の公園にある高台から街を眺めると緑の広がりが地図上の計画通りに配置されているのが分か
ります。市内には、自然地域や農地だけでなく、街なかの至る所にビオトープ空間が広がっており、
それらがネットワークするように配置されています。壁面や屋上の緑化、クラインガルテンなど、市
民レベルのものから、市の緑地システムの骨格になっている河川における自然復元や鉄道、道路開発
にともなうビオトープ整備という行政レベルのものまで、実に多様な取り組みでした。本当に、自然
と共存したすばらしいまちです。
カールスルーエ市の住宅には中庭が多くつくられています。コンクリートで覆われた、ともする
と殺風景な空間になりがちな中庭を住民(市民)の工夫や努力によって緑豊かなビオトープ空間にな
っています。中庭の緑化は、生物多様性の保全や都市気候の安定に貢献するうえ、住みやすい環境づ
くりにも役立つとともに、住民同士のコミュケーションの場にも一役買っているのです。
その 4 BUND ベルリン支部訪問
「ドイツ環境自然保護連盟」(通称 BUND)はドイツ 大の環境 NGO で、1975 年に「BNUD ドイツ自
然・環境保護連盟」として発足しました。BUND は、ベルリンを本部に全 16 州に州事務所を、さらに各
市町村に地域事務所を構えています。会員数 39 万人で、年間 1,300 万ユーロ(約 17 億 6,000 万円)
の会費や寄付を集め、多くのプロジェクトを実施しているそうです(2005 年データ)。活動の範囲は
自然環境保護だけでなく、再生可能エネルギー、エコロジー税制改革、遺伝子組み替え問題や脱原子
力発電などにおよび、成果を挙げています。
今回は、失われた樹木を回復するための市民や企業を巻き込んだ市と NGO による取り組みとして
の、「樹木の里親制度」について説明を受けるとともに、実際に植林された場所を訪ねました。
その 5 自然の庭“エコラウベ”
エコロジカルなクラインガルテンとガーデンハウスがセットになっているエコラウベの特徴は、一般
のクラインガルテンとは異なり、園芸種や外来種による植栽は行わず、在来種のみを使った自然の庭づ
くりです。
区画内に建っているガーデンハウスは全て木造で、屋根の上はもちろん緑化されています。電気の使用
も不可(冬場の電灯用ソーラーパネルは可)で、利用するエネルギーは全て再生可能なものという徹底
ぶり。水生植物を用いた自家浄水装置、雨水を利用した貯水タンクや貯水池もみられます。地盤固めの
ためのコンクリートの使用も必要 低限のポイントのみに限られています。
その 6 ジーベンゲビルゲ自然公園
ボンから南東に約 30km に位置するジーベンゲビルゲ自然公園は、面積は 48km2と小さいが、1923 年
にドイツにあるユーネブルグハイデに次いで、2番目に古い自然保護地帯です。1957 年には自然公園に
指定され、1971 年にはヨーロッパから自然公園として認定されました。中世にケルン大聖堂建築のため
にこの地域の岩山が削られたが、自然や景観の破壊を危惧したボン市民が、1876 年にこの地域の砕石工
事を中止させたそうです。これは 19 世紀の半ばに、既に自然を守る運動があったことを示します。ち
なみに、ジーベンゲビルゲとは、“7つの丘陵地”という意味です。
敷地内に、自然公園ハウスや自然保護博物館がありました。