弘前大学coi研究推進機構 日本オープンイノベー …第号 発行日令和元年月1...

第89号 発行日:令和元年6月19日 発行者:医学研究科広報委員会 印 刷:やまと印刷株式会社 題字 前弘前大学長 遠藤正彦氏筆 使1面 :弘前大学 COI「第一回日本オープンイノベーショ ン大賞内閣総理大臣賞」を受賞 2面:「むつ下北地 域医療学講座」の設置にあたって/医学研究科長・ 医学部長寄稿、教授就任の挨拶 3面:教授就任の 挨拶/山上の光賞を受賞して 4面:Young Asian Doctors Case Report Awardを受賞して/弘前大学 学生表彰/ SD章授与式 5面:医学科学位記伝達 式/卒業生進路状況 6面:ベスト研修医賞選考会  7面:研究室研修優秀発表賞/8面:青森県知事と 新入生との懇談会/世界自閉症啓発デー記念イベン トin弘前を終えて/若手教員・医師だより 9面関連病院勤務報告 10 面:学生だより/青森あずま し温泉紀行 11 面 :留学だより/写真コラム 12 面 海外臨床研修を体験して 13 面:研究室紹介 生体 構造医科学講座/神経解剖・細胞組織学講座、胸部 心臓血管外科学講座 14 面:部活動紹介 水泳部、 山岳部、グリーン・キャンパス・クラブ 15 面:テ レビに出演して/書籍のおしらせ 16 面:人事異動 Forbes JAPAN Tom Kelley 受賞の様子 左藤副大臣から表彰状を受ける 受賞者によるパネルディスカッションの様子 受賞者一同の最前列にて

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  • 第89号発行日:令和元年6月19日

    発行者:医学研究科広報委員会

    印 刷:やまと印刷株式会社題字 前弘前大学長 遠藤正彦氏筆

    を契機に、さらにオープン

    イノベーションを繰り広げ

    ていくということが我々に

    求められた使命である」と

    今後へ向けての熱意を語り

    ました。

     

    続いての審査公表では選

    考委員を代表して各務茂夫

    選考委員会主査から、弘前

    大学COIの取組にかかる

    実際の成果について紹介が

    あり、併せて「(弘前大学

    COIの取組は)産学官

    民、市民というものが入る

    ことによってより多様なス

    テークホルダーが介在する

    形でのプロジェクトという

    ことで、我が国の次なるス

    テージの模範となるべき

    オープンイノベーションプ

    ロジェクトと感じた」との

    講評をいただきました。

     

    弘前大学COIでは今後

    もさらに社会課題の解決の

    ため邁進していきます。最

    後になりましたが、この場

    をお借りして、COIの取

    組にお力をいただいている

    学内・外の先生方はじめご

    関係の皆様、参画機関・企

    業の皆様、すべての皆様の

    御支援に心からあらためて

    感謝を申し上げたいと思い

    ます。誠にありがとうござ

    いました。

    1面:弘前大学COI「第一回日本オープンイノベーション大賞内閣総理大臣賞」を受賞 2面:「むつ下北地域医療学講座」の設置にあたって/医学研究科長・医学部長寄稿、教授就任の挨拶 3面:教授就任の挨拶/山上の光賞を受賞して 4面:Young Asian Doctors Case Report Awardを受賞して/弘前大学学生表彰/ SD章授与式 5面:医学科学位記伝達式/卒業生進路状況 6面:ベスト研修医賞選考会 7面:研究室研修優秀発表賞/8面:青森県知事と新入生との懇談会/世界自閉症啓発デー記念イベントin弘前を終えて/若手教員・医師だより 9面:関連病院勤務報告 10面:学生だより/青森あずまし温泉紀行 11面:留学だより/写真コラム 12面:海外臨床研修を体験して 13面:研究室紹介 生体構造医科学講座/神経解剖・細胞組織学講座、胸部心臓血管外科学講座 14面:部活動紹介 水泳部、山岳部、グリーン・キャンパス・クラブ 15面:テレビに出演して/書籍のおしらせ 16面:人事異動

     

    平成三十一年三月五日

    ㈫、弘前大学COIは東京・

    虎ノ門ヒルズで開催された

    内閣府等主催「第一回 

    本オープンイノベーション

    大賞」の表彰式において、

    最高賞である「内閣総理大

    臣賞」を授与されました。

     「日本オープンイノベー

    ション大賞」は産学連携、

    大企業とベンチャー企業と

    の連携、自治体と企業の連

    携など、組織の壁を超えて

    新しい取組に挑戦する

    「オープンイノベーショ

    ン」の模範的なプロジェク

    トを政府(内閣府等)が表

    彰するもので、模範となる

    ような取組、社会インパク

    トの大きい取組、持続可能

    性のある取組、併せてロー

    ルモデルとして関係機関が

    連携して積極的な水平展開

    をしている取組をその表彰

    の対象としています。

     

    審査の項目は連携の「目

    的(社会的ニーズ等への貢

    献)」「内容(先導性・独創

    性)」「効果(客観的な効果

    と持続可能性)」で、選考

    委員会委員は、池井戸潤氏

    (作家)、入山章栄氏(早稲

    田大学大学院経営管理研究

    科早稲田大学ビジネスス

    クール准教授)、各務茂夫

    氏(東京大学教授産学競

    争推進本部イノベーション

    推進部長)、谷本有香氏

    (Forbes JAPA

    N

    副編集長)、

    Tom

    Kelley

    氏(IDEO

    共同経営者)、向井千秋氏

    (東京理科大学特任副学

    長・宇宙飛行士)の六名と

    なっています。

     

    弘前大学COIは、二〇

    〇五年から地域事業として

    丁寧に集めた健康ビッグ

    データをオープンにして予

    兆法・予防法などを開発す

    るスキームを形成。経済効

    果など金額にみる効果のみ

    ならず、県民の健康への価

    値観のシフトにも大きく貢

    献するとして、その取組が

    大きく評価され、栄えある

    第一回の最高賞である「内

    閣総理大臣賞」を受賞しま

    した。

     

    三月五日㈫には虎ノ門ヒ

    ルズの会場にて、表彰式に

    先立ち記念シンポジウムが

    開催されました。

     

    受賞者によるパネルディ

    スカッション「大学から見

    たオープンイノベーショ

    ン」においては中路特任教

    「第一回 

    日本オープンイノベーション大賞 

            内閣総理大臣賞」を受賞

    授が登壇し、COIの課題

    や戦略的な取組について、

    特に岩木健康増進プロジェ

    クトなどについて熱のこ

    もった説明をし、また受賞

    に甘んじることなく大学と

    していかに変わっていける

    のかという将来的な展望に

    ついて講演しました。同「企

    業から見たオープンイノ

    ベーション」では弘前大学

    COI社会実装統括(花王

    ㈱エグゼクティブ・フェ

    ロー)の安川拓次氏が登壇

    し、弘前大学COIを核に

    各企業が「アンダーワン

    ルーフ」のもと、横に連携

    を広げている状況や成果に

    ついて詳しく説明しまし

    た。

     

    表彰式では、内閣府の左

    藤章副大臣が主催者を代表

    し挨拶しました。COIか

    らは中路特任教授と私、村

    下が登壇し、表彰状とトロ

    フィーの授与を受けまし

    た。また、中路特任教授は

    十二賞十四受賞者のすべて

    の受賞者を代表してスピー

    チを行い、「名誉ある受賞

    弘前大学COI

    弘前大学COI研究推進機構

    教授/COI副拠点長(戦略統括)  

    村 

    下 

    公 

    受賞の様子

    左藤副大臣から表彰状を受ける

    受賞者によるパネルディスカッションの様子

    受賞者一同の最前列にて

  • 医学部ウォーカー第 89 号令和元年 6月 19 日

    「むつ下北地域医療学講座(一部事務組合

    下北医療センター)」の設置にあたって

    むつ下北地域医療学講座 

    教授 

    福 

    田 

    眞 

    寄附講座 

    弘前大学からむつ市ま

    で、約百五十㎞。ほぼ、弘

    前市から盛岡中心部までの

    距離と同じです。弘前市内

    からむつ病院まで、多くの

    診療科の先生方が、早朝あ

    るいは前日にむつ市まで

    「診療応援=外勤」に行っ

    ています。常勤医を配置で

    きない事情について聞き取

    り調査を行ったところ、各

    診療科、様々でした。医師

    不足を筆頭にあげる診療科

    が多かった一方で、移動利

    便性の低さも大きな要因で

    あると感じました。弘前市

    からむつ市まで、車ですと

    二時間四十分、電車ですと

    最短で四時間もかかります

    (弘前駅→東京駅の移動に

    要する時間と同じ)。むつ

    下北地域への移動利便性向

    上策として、下北半島縦貫

    道(約六十八㎞)の建設が

    進められていますが、全線

    開通の目途は立っていませ

    ん。

     

    むつ総合病院は、むつ下

    北地域の中核病院であり、

    そこで働く医師のほとんど

    は弘前大学出身者です。同

    病院は、平成二十二年十二

    月 

    弘前大学大学院医学研

    究科および弘前大学医学部

    附属病院と弘前大学専門医

    養成病院ネットワークに関

    する協定を締結しており、

    医学研究科および附属病院

    には、専門医養成を通した

    地域医療への貢献が求めら

    れてきたところであります。

     

    しかしながら、先の聞き

    取り調査にあるような事情

    によって、むつ下北地域唯

    一の中核病院であるむつ総

    合病院がその役割を十分に

    果たし得るだけの医師の配

    置が行われていない現状に

    あります。近隣にクリニッ

    クや診療所が少ないため

    に、患者さんが当該病院に

    集中しており、外来診察の

    待ち時間は長時間に及び、

    患者サービスの低下のみな

    らず、医師の過重労働の原

    因にもなっています。

     

    むつ市長およびむつ病院

    長のほか、病院職員の皆さ

    んからの強い要請を受け

    て、今回の「むつ下北地域

    医療学講座」が誕生しまし

    た(自治体間の寄附講座と

    しては六番目となる)。寄

    附講座の設置期間は三年の

    予定で、消化器内科、循環

    器・腎臓内科、内分泌代謝

    内科および整形外科から専

    任の講師(二名)・准教授(二

    名)を配置します。遠方に

    ある医療過疎地域に対する

    医療支援のあり方に関する

    研究を行うとともに、むつ

    下北地域をフィールドとし

    て各診療科が臨床研究、疫

    学研究を実施します。ま

    た、設置期間内に常勤医師

    の増員(消化器内科、循環

    器・腎臓内科、整形外科)

    と診療科の新設(内分泌・

    代謝内科)を実現し、地域

    医療の充実と地域住民の健

    康福祉の向上に寄与したい

    と考えています。

    急がば回れ

    医学研究科長 

    若 

    林 

    孝 

     

    平成が終わり、令和の時

    代を迎えました。昭和の最

    後の一日となった一月七日

    は私の誕生日であり土曜日

    であったと記憶しています

    が、研究室で学位論文を書

    いていました。それから三

    十年の間に時代は変わりま

    した。国家公務員は完全週

    休二日制となり、無給医と

    いうものがなくなり、大学

    院生が増え、マッチングが

    始まり、新専門医制度が導

    入されました。今回は「急

    がば回れ」をキーワードに

    教育と研究について述べて

    みたいと思います。

     

    今年の第百三回医師国家

    試験において弘前大学は新

    卒者の合格率が九八・三%

    であり、国立大学ではトッ

    プの成績を記録しました。

    しかし、この快挙は一朝一

    夕にしてなったものではあ

    りません。高合格率の要因

    の一つとして、「一年次か

    らしっかりと勉強するこ

    と」を意識してきたことを

    挙げたいと思います。医学

    教育センターの佐々木IR

    部門長の解析によれば、医

    学科六年間の成績と最もよ

     

    この度平成三十一年四月

    一日付で脳神経内科学講座

    教授を拝命いたしました。

     

    ちょうど十年前に弘前大

    学神経内科から青森県立中

    央病院に移動し、臨床の第

    一線の場で働けたことは私

    にとって大きな財産となり

    ました。大学では脳卒中の

    診療からしばらく離れてい

    たのですが、県病で脳卒中

    ケアユニットを開設する時

    期に責任者となったことが

    縁で、県病が脳卒中診療の

    中核病院として機能するよ

    うになった姿を見届けられ

    たことは、何よりの喜びで

    す。私が何をしたというわ

    けではなく、一緒に働いて

    く相関するのは一年次の成

    績であることが判明してい

    ます。逆に入学試験の成績

    はあまり参考になりませ

    ん。入学して新しい土地で

    一人暮らしを始め、生活も

    乱れず、一年間しっかりと

    勉強できた学生は、その後

    も順調に育ってゆく確率が

    高いのだと考えられます。

    最近、医学科の学生が卒業

    時までに修得しておくべき

    能力(アウトカム)として

    六六項目からなる卒業時コ

    ンピテンシーを定めまし

    た。同時に各学年のアウト

    カムも定めました。学生一

    人一人の成長の度合いを見

    定めながら、必要な修正を

    行う評価(形成的評価)が

    くれた人たちの成果である

    ことは言うまでもありませ

    ん。また難病診療体制につ

    きましても、地域の中核自

    治体病院の先生や青森県の

    協力を頂き、少しずつでは

    ありますが整備を進めるこ

    とができました。認知症の

    初期診療体制の整備につい

    ては、これからというとこ

    ろで移動となってしまいま

    したが、後任の先生がより

    素晴らしいものを作り上げ

    てくれると思っています。

    県病の脳神経内科には十年

    間に新たに六人の医師が参

    加してくれました。臨床だ

    けでなく基礎研究まで一緒

    に行う機会を得たことは、

    まさに私にとって生きがい

    でもありました。このよう

    に今まで多くの方々の協力

    をいただきましたこと、こ

    の場をお借りして感謝申し

    上げます。

     

    脳神経内科は実に広大な

    領域です。診療の場では、

    医 学 研 究 科 長医 学 部 長 寄 稿

    求められています。

     

    研究面では最近、複数の

    若手教授から基礎研究の推

    進に力を注ぐべきであると

    の声がありました。この問

    題は日本の医学界全体の課

    題でもあるのですが、私自

    身も以前から危惧していま

    した。特効薬はないのです

    が、少なくとも学内的に意

    識を高めるためにも、今年

    度から基礎研究フォーラム

    (仮称)を立ち上げること

    にしました。学内には多数

    の研究者がいますので、が

    ん、心血管疾患、脳科学、

    ゲノム医学など、テーマを

    変えて一年に一度はフォー

    ラムを開催し、基礎研究の

    充実と若手研究者の育成を

    進めたいと考えています。

    臨床医が研究に使える時間

    が減っているという現実は

    ありますが、若手医師の

    キャリアアップには、専門

    医の取得と大学院における

    研究は車の両輪となる重要

    なものです。研究者の育成

    に時間を要することは今も

    昔も変わりません。あまり

    効率を求めず、結果に一喜

    一憂せず、じっくりと継続

    してゆくことが肝要である

    と思います。

    脳卒中を始めとする救急疾

    患から、在宅治療までおこ

    なう慢性疾患まで幅広く、

    また多くの啓発活動や医療

    資源の基盤整備など多くの

    社会的活動も要求され、医

    療行政との関わりも深い分

    野です。さらに研究に至っ

    ては、近年の進歩が著しい

    分野ではありますが、まだ

    未知に充ち満ちていて、知

    的好奇心をそそる分野で

    す。それだけにとてもやり

    がいのある分野であること

    は、私のささやかな経験か

    らではありますが、間違い

    ありません。しかしながら

    青森県には脳神経内科医は

    少なく、十分な脳神経内科

    医療を提供できているとは

    言えません。私への第一の

    宿題は、脳神経内科の魅力

    を学生や研修医の先生たち

    に余すことなく伝えるこ

    と、そして当地域で脳神経

    内科医をより多く育成する

    こと、だと思っています。

    初代松永宗雄先生から脈々

    と受け継がれる神経学への

    情熱を引き継ぎ、診療・教

    育・研究に邁進しようと思

    います。これからもご指

    導、ご支援を賜りますよう

    お願い申し上げます。

    教授就任に際してのご挨拶

    脳神経内科学講座 

    教授 

    冨 

    山 

    誠 

  • 医学部ウォーカー第 89 号 令和元年 6月 19 日 

    この度、筑波大学医学医

    療系 

    教授(筑波大学附属

    病院、茨城県地域臨床教育

    センター、循環器統括局

    長)として四月一日より赴

    任しました。筑波大学卒業

    後、筑波に在籍したのは研

    修医の六年間だけで、しか

    もそのうち約半分は大学以

    外での研修でした。筑波を

    離れてから約三十年経ち、

    その間筑波エキスプレスが

    開通し、つくば市(私がい

    た頃は桜村でしたが)も大

    いに変貌を遂げていること

    に今驚かされています。

     

    筑波大学は当初から医学

    部とは呼ばず医学専門学群

    と称し、いわゆる六年一貫

    の医学教育(筑波方式)を

    行い、国家試験の合格率も

    高く注目を集めました。現

    在は平成十六年に新たな筑

    波方式として改正され、国

    際基準に基づく医学教育分

    野の認証を受けています。

    講義が中心だった全カリ

    キュラムから問題解決能力

    を養うことに重点を置い

    て、体験型のプログラムを

    充実するように変遷を遂げ

    ています。医学の知識量が

    膨大になったことで全てを

    授業形式で教えることは難

    しく、弘前で授業をしてい

    た時も同様に感じていたこ

    とを思い出します。また、

    医学の進歩は目覚ましく、

    特に変化の激しい臨床の領

    域では数年で治療方針がま

    るっきり異なるようなこと

    は珍しくありません。全て

    を教えることが重要ではな

    いと思います。基本的な考

    え方や基礎となる事項は授

    業形式が良いかもしれませ

    んが、それを展開させ、ど

    のようなことが分からなけ

    ればならないか、どこまで

    が現時点で分かっているこ

    となのかなど自分で考え

    る、自分で対応できるよう

    な問題解決能力を養うこと

    が必要で、医学部の教員は

    それをサポートすることが

    重要であると思います。

     

    こちらに来て心臓血管外

    科の入局者は隔年に一人程

    度で医学生の外科医離れは

    筑波でも深刻なようです。

    筑波の心臓血管外科は私た

    ちの頃から研修医でも術者

    にする習慣があり、今でも

    変わらないようですが、初

    期臨床研修医は外科に魅力

    を感じなくなっているよう

    です。ここ数年弘前は毎年

    必ず心臓外科志望者がいま

    教授就任に際してのご挨拶

    筑波大地域医療教育センター 

    教授 

    鈴 

    木 

    保 

    したが、弘前大学の胸部心

    臓血管外科の厳しいけれど

    も若手でも術者ができると

    いう体制を構築していただ

    いた福田幾夫先生の御尽力

    のおかげだと思います。今

    後は弘前での経験を生か

    し、医学教育と若手の教育

    に役立てるよう頑張ってゆ

    きたいと思っています。

     

    弘前の桜、りんご、夏場

    の過ごしやすさは素晴らし

    いことでした。弘前大学で

    の十七年間、先生方、看護

    師、臨床工学士、臨床検査

    技師、事務、その方々に色々

    とお世話になったことに対

    してこの場を借りて御礼申

    し上げます。

     

    平素より岩手医科大学の

    研究事業および臨床業務に

    ご理解とご協力を賜り、大

    変お世話になっております

    ことに感謝を申し上げま

    す。私、前田哲也(まえだ

    てつや)と申します。平成

    五年に弘前大学を卒業し、

    武部和夫教授の主宰する第

    三内科に入局して臨床を開

    始すると同時に、松永宗雄

    教授のご指導の下、脳神経

    疾患研究施設臨床神経部門

    の大学院生として研究を開

    始しました。多くの臨床経

    験を積ませて頂き、臨床視

    点に基づく基礎研究で学位

    を頂きました。当学へ赴任

    して三年が過ぎ、四年目の

    春になる今年、岩手医科大

    学医学部内科学講座神経内

    科・老年科分野の教授を拝

    命いたしました。母校であ

    る弘前大学でお世話になっ

    た諸先生方、現在もお世話

    になっている諸先生方に

    は、これまでのご指導に改

    めまして心より感謝を申し

    上げます。今回、寄稿の機

    会を賜り、大変光栄に存じ

    ます。

     

    岩手医科大学神経内科・

    老年科は初代の東儀英夫教

    授が一九八二年に開設さ

    れ、二〇〇三年に二代目の

    寺山靖夫教授へと引き継が

    れました。約四十年に渡っ

    て本州最大の県土を有する

    岩手県の医療圏を、脳卒

    中、認知症、神経変性疾患、

    神経免疫疾患、頭痛・てん

    かんなどの神経疾患の臨床

    診療と関連する基礎研究を

    精力的に行なってきまし

    た。神経学は脳神経系のあ

    らゆる疾患を対象としてお

    り、その病態は極めて多彩

    です。臨床経過も超急性期

    から慢性期まで全経過に関

    わる幅広い疾患が含まれ、

    治療については可能なもの

    からいわゆる難病も多いこ

    とが特徴です。当教室の臨

    床力や研究力を維持し、さ

    らに発展させることが私に

    与えられた使命と身の引き

    締まる思いでおります。

     

    三年前、生来初めて赴任

    した岩手県でしたが、当教

    室には苦もなくスムーズに

    溶け込むことができまし

    た。それは教室を主宰され

    ていた寺山靖夫教授はじ

    め、教室の先生方やスタッ

    フの皆様のおかげに他なり

    ません。神経疾患に対する

    真摯で研究心をもった姿勢

    や、フレンドリーな雰囲気

    がとても魅力的な教室で

    す。岩手医科大学は今年、

    矢巾町に新病院を移設いた

    しますが、新たな病院と

    なっても、当教室の気風を

    維持しつつ気概ある教室員

    と共に取り組んで、臨床研

    究、基礎研究、さらに地域

    医療にもしっかりと貢献し

    て参ります。弘前大学の諸

    先生方のお力添えも賜りな

    がら取り組んで参りたいと

    考えておりますので、どう

    ぞよろしくお願い申し上げ

    ます。

     

    医学部で医学部長を務め

    られ、十年にわたり弘前大

    学学長を務められた遠藤正

    彦名誉教授が、日本病院協

    会、全日本病院協会、セル

    ジーン株式会社の共催によ

    る「山上の光賞」(さんじょ

    うのひかり賞)(研究部門)

    を受賞されました。今年度

    は、医師部門二名、研究者

    部門一名、保健部門一名、

    ボランティア部門一名、公

    衆衛生部門一名の計六名が

    受賞された中でのご受賞で

    す。「山上の光賞」は日本

    の健康・医療・医学分野に

    おいて素晴らしい活躍を

    し、よりよい社会を築くこ

    とに貢献している八十歳以

    上の方々を顕彰するプログ

    ラムで、今年で第五回を迎

    えます。本賞は高齢を迎え

    てなお、その豊富な経験、

    知性、そして知識を駆使し

    ながら、後に続く世代の歩

    むべき道を照らす「山上の

    光」として活躍を続けてお

    られる方々を顕彰するもの

    です。審査においても、そ

    のご活動が「山上の光」と

    して次の世代の啓発に繋

    がっていることを重視する

    ということが記載されてお

    り、遠藤先生の研究が脈々

    と弘前大学に息づいている

    ことも受賞に貢献したと言

    えます。関係各位のご努力

    に感謝し、お祝いを述べさ

    せていただきたいと思いま

    す。

     

    受賞に至った遠藤先生の

    ご業績を述べさせていただ

    きますと、まずは生化学、

    特に糖鎖工学を専門として

    学部学生や大学院生の教育

    に長年ご尽力してきたこと

    が挙げられます。その研究

    の過程で、プロテオグリカ

    ンに関する三種のエンド型

    の糖鎖分解酵素を世界で初

    めて発見し、これを基にプ

    ロテオグリカンやヒアルロ

    ン酸の糖鎖の酵素的組み換

    えや人工合成という糖鎖工

    学の道を独自に拓かれまし

    た。また、4-

    メチルウンベ

    リフェロン(4-M

    U

    )にヒア

    ルロン酸合成阻害効果を介

    した抗腫瘍効果があること

    を発見されました。特に、

    アスベストなどへの暴露に

    よって生じる悪性中皮腫は

    ヒアルロン酸合成が盛んで

    あること、4-M

    U

    はこれに

    効果的であることを発見し

    ました。学

    長退任後も

    4-MU

    の抗

    腫瘍効果

    (特にすい

    臓がん)の

    研究を寄附

    講座で続け

    られ、今な

    お糖鎖工学

    の客員研究

    員として後

    進のご指導

    を続けてお

    られます。

    がん免疫療

    法を発見し

    た本庶佑先

    生がノーベ

    ル賞をとら

    れました

    が、遠藤先

    生はがん免

    疫療法に続

    く次世代の「がん間質を標

    的にした抗腫瘍療法」の先

    駆者の一人です。4-M

    U

    関する研究は本学の宝であ

    り、医療の基礎研究として

    今後においても取り組んで

    いくべきものと考えられま

    す。

     

    受賞式は令和元年五月二

    十一日㈫に東京のパレスホ

    テルにおいて行われまし

    た。会場には四百名ほどの

    各界を代表される方々が集

    い、共催者代表の他、安倍

    総理大臣や根本厚生労働大

    臣などが祝辞を述べられま

    した。医学部長、学長など

    の公務で忙しい中、コツコ

    ツと研究を続けこのような

    賞を受賞されたことは弘前

    大学の一教員として誠に誇

    りであり、まさに「山上の

    光」として後に続く我々の

    道を照らしています。この

    場をお借りし、弘前大学全

    教員とともに改めて受賞の

    喜びを分かち合いたいと思

    います。

    教授就任に際してのご挨拶

    岩手医科大学神経内科・老年科 

    教授 

    前 

    田 

    哲 

    遠藤正彦先生

      「山上の光賞」受賞に際して

    糖鎖工学講座 

    教授 

    伊 

    東   

  • 医学部ウォーカー第 89 号令和元年 6月 19 日 

    第四十五回日本マイクロ

    サージャリー学会におい

    て、Y

    oung Asian D

    octors Case Report A

    ward

    を受賞

    いたしましたのでご報告い

    たします。

     

    日本マイクロサージャ

    リー学会は国内の学会です

    が、二〇二〇年に第五回ア

    ジア太平洋マイクロサー

    ジャリー学会が日本で開催

    されるため、今回アジア各

    国から多くの先生が招待さ

    れておりました。その中

    で、新しい企画として

    「Young A

    sian Doctors Case

    Report Aw

    ard Session

    」が

    開催され、そのSession

    発表させていただく機会を

    頂戴いたしました。

     

    発表者は、中国二名、タ

    イ、シンガポール、韓国、

    インド、日本から各一名の

    合計七名でした。私は、

    「Reconstruction for huge

    defect after wide excision

    of sarcoma on back, using

    combination flap of free

    latissimus dorsi m

    usculocu -taneous and local transposi-tion flaps: A

    case report.

    というタイトルで、整形外

    科腫瘍班との合同手術の症

    例を発表いたしました。症

    Young Asian Doctors Case

    Report Award

    を受賞して

    例は、背部の巨大な軟部悪

    性腫瘍の広範切除術後に対

    側の広背筋皮弁を行った症

    例です。遊離広背筋皮弁の

    予定でしたが、欠損が大き

    いこと、切除範囲が棘突起

    を越えて対側におよんだこ

    とから、皮弁の底部を一部

    連続させた状態で対側に移

    動させ、動脈吻合も行いま

    会長の五谷寛之先生、座長の柿木良介先生、清川兼輔先生、Asian Doctors と。

    附属病院 

    整形外科 

    助教 

    上 

    里 

    涼 

    第45回日本マイクロサージャリー学会

     

    弘前大学では、研究活動

    や課外活動で活躍した学生

    団体および学生を、毎年表

    彰しています。平成三十年

    度弘前大学学生表彰式が、

    平成三十一年三月七日に、

    文京町キャンパスの大学会

    館にて行われました。今年

    度は医学科からは、[表]

    に示した一団体および五名

    (個人)が表彰を受け、佐

    藤敬学長から、学生一人一

    人に表彰状と記念品が贈ら

    れました。佐藤学長から

    は、お祝いの言葉ととも

    に、一層の研鑽への期待が

    述べられました。

     「よい医師」とはどんな

    医師でしょうか?知識や技

    術はもちろんのことです

    が、科学的な探求心(リサー

    チマインド)も重要です。

    医学科では、三年生が「研

    究室研修」で研究活動の一

    端を経験しています。これ

    教育委員会委員 

    今 

    泉 

    忠 

    (脳血管病態学講座 

    教授)

    平成30年度

    弘前大学学生表彰

    をきっかけに、学生も積極

    的に研究活動にも取り組ん

    した。発表後は、光嶋勲先

    生(広島大学国際リンパ浮

    腫治療センター教授)か

    ら、「皮弁のサイズが大き

    いため、遠位部を切離した

    ら一部壊死していたと思い

    ます。皮膚を連続させたこ

    とは良い判断でした。私な

    ら、動脈をもう一本探して

    保険をかけたかもしれませ

    ん。」とコメントを頂戴い

    たしました。

     

    私が発表することが決

    まった後、会長の五谷寛之

    先生に私の本当の年齢が漏

    れ、「Y

    oung Doctor

    」の基

    準年齢を四十五歳に引き上

    げていただいたと伺ってお

    平成31年度 

    SD章授与式

    学務委員長 

    鬼 

    島   

    (病理生命科学講座 

    教授)

     

    平成三十一年度SD

    (Student Doctor

    章授与式

    が、平成三十一年二月二十

    八日に基礎大講堂にて挙行

    されました。授与式では新

    五年次学生(三十一年度

    百十一名)が、医の倫理に

    従って行動することを誓う

    ことで、臨床実習(bed

    side learning, BSL

    )を開始

    するという大きな意義があ

    ります。臨床実習では、医

    療現場で患者さんの前に立

    たせていただくことの責任

    の重さと、診療行為を通じ

    て医学を学ばせていただく

    ことへの感謝の念を持ちな

    がら、医療チームの一員と

    して真摯に行動することが

    求められています。

     

    本学におけるSD章授与

    式は、加藤博之教授(総合

    診療医学講座)の発案で、

    平成十七年度から始まり、

    今回で十五回目となります。

    さらに平成二十六年度から

    は、共用試験(Com

    puter Based T

    esting CBT,

    および

    Ob

    jective S

    tructu

    red Clinical Exam

    ination OSCE

    の合格者に対して、全国統

    一質保証システムの一環と

    して、全国医学部長病院長

    会議がSD認定証を付与す

    ることとなりました。つま

    り、SD章は、臨床実習生

    の身分証(ID)であると

    同時に、臨床実習を開始す

    るための必要な知識と技能

    を身につけた証でもありま

    す。

     

    授与式では新五年次学生

    全員がBSLユニフォーム

    としての白衣姿で臨みまし

    た。初めに若林孝一医学部

    長と学務委員長

    の挨拶があり、

    次いで福田眞作

    附属病院長訓示

    の後、新五年次

    学生代表の田澤

    宏龍君に附属病

    院長からSD章

    が授与されまし

    た。授与式には

    学生がOSCE

    でお世話になっ

    た模擬患者の

    ります。〝Y

    oung

    の響き

    で、発表を承諾してしまっ

    たところもありますが、実

    際の外国人発表者は明らか

    に私よりもY

    oung

    でした。

     

    今回の発表に際しまして、

    たくさんのご協力をいただ

    きました主治医である大鹿

    周佐先生、小野浩弥先生、

    また、ご指導いただきまし

    た石橋恭之教授、藤哲名誉

    教授にこの場をお借りして

    深く御礼申し上げます。こ

    れからも、一例一例の症例

    に向き合い、治療法を熟考

    していきたいと思います。

    でくれることを期待してい

    ます。また、弘前大学医学

    部医学科では、勉学はもち

    ろんのことですが、豊かな

    人間性の涵養も重要なこと

    と考えています。その観点

    からも、学生の課外活動を

    推奨していますし、学友会

    や医学部

    同窓会の

    鵬桜会とも協力して、支援

    しています。

     

    今後も、弘前大学医学部

    医学科の学生のみなさん

    が、学業および課外活動の

    両面で充実した大学生活を

    送ってくださることを期待

    しています。

    [表] 平成30年度学生表彰を受けた医学科の団体と学生

    <団体>医学部ラグビー部  第61回東日本医科学生総合体育大会 準優勝<個人>木村紗也佳(3年) 研究論文がJournal of Immunology (IF=4.539) に掲載

    藤本 智朗(1年) 平成30年度東北学生柔道体重別選手権大会          -90kg級 優勝

    横山理久斗(1年) 第61回東日本医科学生総合体育大会空手道男子          個人 形 優勝

    岩渕 那海(1年) 第61回東日本医科学生総合体育大会          ソフトテニス女子 個人戦 準優勝

    市沢 歩美(4年) 第61回東日本医科学生総合体育大会          ソフトテニス女子 個人戦 準優勝

    方々や附属病院関係者も参

    加され、SD章を授与され

    る学生を温かく見守ってく

    ださる姿が印象的でした。

    最後に、新五年次学生代表

    が以下の「弘前大学医学部

    臨床実習生の誓い」を宣誓

    しました。

    「弘前大学医学部臨床実習

    生の誓い」

    臨床実習生の一人として医

    療の現場に参加するに際

    し、

    1.私は、人類への奉仕に

    自分の人生を捧げるこ

    とを誓います。

    2.私は、学び得た医学知

    識をもとに、良心と尊

    厳をもって医学の務め

    を果たします。

    3.私は、生命の始まりか

    ら人命を最大限に尊重

    し続けます。また、人

    間性の法理に反して医

    学の知識を用いること

    はしません。

    4.私は、患者の健康を私

    の第一の関心事としま

    す。

    5.私は、私への信頼のゆ

    えに知り得た患者の秘

    密を、たとえその死後

    においても尊重しま

    す。

    6.私は、私を教え導く人

      々に尊厳と感謝の念を

    (次ページへ続く)

  • 医学部ウォーカー第 89 号 令和元年 6月 19 日

    で、臨床実地問題に重点が

    置かれるなどの変更が行わ

    れました。内容も臨床推論

    力を評価する実践的問題が

    増えています。皆さん、よ

    く勉強され、臨床実習を通

    じて実地臨床能力を高めた

    らには医師国家試験合格の

    直後でもあり、会場内は笑

    顔の花が咲いていました。

    なお、今回の医師国家試験

    合格率は九八・三%(一一

    六/一一八)であり、全国

    八十大学中第三位、四十二

    国立大学中の堂々第一位と

    なりました。

     

    伝達式では、若林孝一医

    学部長が卒業生一人一人と

    固い握手をかわしながら、

    学位記の伝達が行われまし

    た。会場を埋め尽くした卒

    業生に加えて、保護者やご

    来賓の方々、さらには教育

    指導にあたった教員も、新

    たな門出の喜びを卒業生と

    共有しました。伝達式の後

    半では、若林医学部長から

    挨拶があり、社会全般から

    常に質の高い医療が期待さ

    れている現状の下、地域医

    療の担い手であり、かつ世

    界をリードするようなプロ

    フェッショナルとして実力

    を発揮していただきたい旨

    が強調されました。西澤鵬

    桜会理事長からは、同窓会

    の輪は全国に広がっている

    ことなどのご紹介がありま

    した。会場には金屏風と見

     

    平成三十一年三月二十二

    日午後三時三十分から基礎

    大講堂において、平成三十

    年度学位記(医学士)伝達

    式が、佐藤敬学長ならびに

    西澤一治鵬桜会理事長ご列

    席のもとで行われました。

    今回、医学部医学科の卒業

    生は百十八名であり、地域

    定着枠(AO入試入学、前

    期日程定着枠入学、学士編

    入試青森県枠)を中心とし

    た半数以上の卒業生が青森

    県内で臨床研修を行い、弘

    前医療圏での活躍が期待さ

    れています。多くの学生が

    勉学の苦労を乗り越え、さ

    事な花が添え

    られ、男子卒

    業生の凛々し

    いスーツ姿、

    女子卒業生の

    華麗な袴姿、

    着物姿も加わ

    り、厳粛な中

    にも華やかな

    雰囲気のもと

    で、式が終了

    しました。

     

    学位記伝達

    式後の午後七

    時からホテル

    ニューキャッ

    スルにおい

    て、医学部医

    学科第六十五

    回卒業記念謝

    恩会が開催さ

    れました。集

    合写真撮影後は、謝恩会幹

    事による明快な司会で開幕

    しました。若林医学部長、

    佐藤学長の祝辞があり、福

    田眞作病院長による乾杯の

    音頭がありました。会が始

    まると、各先生を囲み勉学

    やクラブ活動の想い出を振

    り返ったり、今後の進路に

    ついて語り合ったりと、

     

    まずは朗報からです。第

    百十二回医師国家試験の結

    果が公表され、本学新卒者

    の合格率は九八・三%(一

    一六/

    一一八)でした。全

    国第三位、国立大第一位の

    好成績です。卒業生諸君の

    検討を讃えたいと思いま

    す。ちなみに、全体ならび

    に国立大学新卒者合格率は

    それぞれ九二・四%、九三・

    四%、また全国一位と二位

    は自治医大(一〇〇%)、

    順天堂大(九九・二%)で

    した。

     

    昨年から出題数が四百題

    に減り、試験日程が二日間

    に短縮されました。一方

    努力が結果に結びついたも

    のと思います。

     

    次に、卒業生の進路状況

    について報告します。青森

    県内の病院に勤務された割

    合は四五%で例年同様でし

    た。本年度の特徴は青森以

    外の東北地方への勤務が減

    少し、関東圏の病院に勤務

    した卒業生の割合が一〇%

    ほど増加しました。入試制

    度の変更や地域枠制度の定

    着、新専門医制度の導入が

    背景要因かと思われます。

    医学科学位記伝達式

    平成30年度学

    務委員長 

    鬼 

    島   

    (病理生命科学講座 

    教授)

    卒業生は限られた時間を惜

    しむように過ごしていまし

    た。会の途中では、卒業生

    有志による余興、恒例と

    なった学長・医学部長・学

    務委員長とのジャンケン大

    会、附属病院長によるクイ

    ズなどで、会場は大いに沸

    き、あっという間の二時間

    が経ちました。最後に教授

    やご来賓の先生方が壇上に

    登り、卒業生から花束が贈

    られ、謝恩会の幕が閉じら

    れました。

     

    一学年全員が集合する機

    会は、多分これが最後では

    なかろうと思います。弘前

    大学医学部医学科卒業とい

    う誇りを背負い、これから

    も切磋琢磨して、全国で活

    躍してくれることを願うも

    のです。

    後援会のご案内会長 石戸谷 忻 一

     弘前大学後援会では、学生の学業、課外活動への助成、学生の進路指導に必要な助成等学生生活の多岐にわたる分野の助成を行っております。つきましては、何卒本会の趣旨にご賛同頂きまして、各位の格別のご高配、ご支援を賜りますよう、切にお願い申し上げます。 なお、入会方法等の詳細については、弘前大学総務部総務広 報 課(Tel:0172-39-3012、E-mail:[email protected])までご連絡いただくか、弘前大学後援会ホームページ(http://www.hirosaki-u.ac.jp/kouen/index.html)をご覧ください。

    弘前大学

    捧げます。

    7.私は、私の自由意志に

    基づき名誉にかけてこ

    れらのことを厳粛に誓

    います。

     

    なお、この「誓い」を常

    に心に留めて臨床実習に臨

    むよう、付与されたSD章

    の裏には、「誓い」が印刷

    されています。SD章授与

    式の目的を十分に理解し

    て、五年次から始まる臨床

    実習に真摯に取り組んでほ

    しいと思います。

    (前ページより)

    第113回医師国家試験結果ならびに

    平成30年度卒業生の進路状況

    学務副委員長  袴 田 健 一

    (消化器外科学講座 教授)

    H26 ~ H30 卒業生進路状況H26年度卒業生進路 H27年度卒業生進路 H28年度卒業生進路 H29年度卒業生進路 H30年度卒業生進路人数 % 人数 % 人数 % 人数 % 人数 %

    青森県 59 51.3% 50 41.3% 57 47.1% 56 41.2% 53 44.9%北海道 6 5.2% 6 5.0% 2 1.7% 3 2.2% 3 2.5%青森県以外の東北地方 9 7.8% 19 15.7% 14 11.6% 15 11.0% 9 7.6%東京以外の関東地方 8 7.0% 21 17.4% 16 13.2% 27 19.9% 25 21.2%東京都 14 12.2% 4 3.3% 11 9.1% 4 2.9% 10 8.5%中部 5 4.3% 7 5.8% 5 4.1% 14 10.3% 9 7.6%近畿以西 5 4.3% 7 5.8% 4 3.3% 6 4.4% 7 5.9%国試不合格・その他 9 7.8% 7 5.8% 12 9.9% 11 8.1% 2 1.7%

    合計 115 100.0% 121 100.0% 121 100.0% 136 100.0% 118 100.0%

    医師国家試験合格者 108 93.9% 116 95.9% 109 90.1% 125 91.9% 116 98.3%

  • 医学部ウォーカー第 89 号令和元年 6月 19 日

    ベスト研修医賞選考会

    平成30年度

    卒後臨床研修センター長 

    加 

    藤 

    博 

    (総合診療医学講座 

    教授)

     

    平成三十年度ベスト研修

    医賞選考会が平成三十一年

    二月二十二日十八時より、

    医学部臨床小講義室で開催

    された。ベスト研修医賞は

    平成十六年度から始まった

    卒後臨床研修必修化に合わ

    せて本学に創設された賞で

    あり、今回で十五回目を迎

    える。当日は、臼谷真理先

    生、木村温子先生、蓮井研

    悟先生(五十音順)の三名

    の研修医が、「ここがポイ

    ント! 

    研修医の心がけ」

    と題し、自分が研修生活の

    中で重視してきた事につい

    て、一人八分間ずつスピー

    チを行なった。聴

    衆は学生および教

    職員で、スピーチ

    のあと参加した学

    生諸君による投票

    が行なわれた。投

    票の結果、蓮井研

    悟先生が平成三十年度ベス

    ト研修医に選ばれた。引き

    続き附属病院内の弘仁会食

    堂で表彰式が行われ、蓮井

    先生に賞状、トロフィー、

    記念品が贈られた。その他

    にも各種特別賞として、今

    年度コメディカルスタッフ

    から最も高い評価を受けた

    臼谷先生に「ベストパート

    ナー賞」、研修医が提出す

    べき各種症例レポートを最

    も頑張って書き上げた木村

    先生に「レポート大賞」、

    この一年間の研修医向け各

    種セミナーの出席率が最高

    であった蓮井先生に「セミ

    ナー賞」が贈られた。さら

    に事務方からも、研修関係

    の事務手続きに今年最も迅

    速かつ正確に協力してくれ

    た鈴木幸雄先生に、感謝の

    意を込めて「グッドレスポ

    ンス賞」が贈られた。五年

    ベスト研修医賞選考会で研修医の発表に聞き入る参加者たち。 ベスト研修医賞の投票を行なう学生諸君。

    弘仁会食堂を会場に行われたベスト研修医賞表彰式。

    生から恒例となった「ベス

    ト指導医賞」の発表が本年

    も行われるとともに福田病

    院長から金一封も贈られ、

    会場は大いに盛り上がっ

    た。学生二十名以上に教職

    員を加え総勢五十~六十名

    の参加者があり、教職員、

    研修医、学生がみな、この

    一年の思い出について心ゆ

    くまで語り合い、会は盛会

    裏に終了した。

     

    本賞の本学独自のユニー

    クな特徴は、最終選考を学

    生が投票により行なうこと

    であり、このことは教育上

    大きな意味を持っている。

    「Teaching is learning

    」と

    いう言葉があるように、研

    修医にとって学生を指導す

    ることは重要な学びとも

    なっている。一方、研修医

    から学ぶ学生は、同時に研

    修医に対する格好の評価者

    ともなり得る。医師の育つ

    過程には、このような双方

    向に作用する〝人と人との

    きずな〟が不可欠である。

    これからも本賞が、人と人

    との結びつきを大事にする

    本学の文化の醸成に貢献で

    きれば幸いである。

    ベスト研修医賞を受賞して

    二年次 

    蓮 

    井 

    研 

     

    平成三十一年二月二十二

    日、平成三十年度弘前大学

    医学部附属病院ベスト研修

    医賞選考会が医学研究科臨

    床小講義室で開催され、ご

    指導頂きました先生方、実

    習で関わりましたたくさん

    の学生の皆さんにご参加頂

    きました。当日は、卒後臨

    床研修センター運営委員会

    で選出頂きました臼谷真理

    先生、木村温子先生と共に

    「ここがポイント! 

    研修

    医の心がけ」というテーマ

    で、研修生活の中で重視し

    てきた事柄を、十分間ずつ

    スピーチさせて頂きまし

    た。三者三様、研修中の悩

    みや学生の皆さんにとって

    有益な情報、今後の意気込

    みを盛り込んだスピーチと

    なり、改めて苦楽を共にし

    た同期と歩んだ研修生活を

    振り返る貴重な機会となり

    ました。私自身、学士編入

    で前大学では、ES細胞や

    iPS細胞を用いた増殖分

    化機構を研究する発生学と

    細胞の腫瘍化を専門として

    いました。同時期に、故日

    野原

    重明先生の終末期医

    療の普及をテーマにした医

    学部講義を受講する機会が

    あり、がん患者さんのサ

    ポートを通して臨床、ベッ

    ドサイドの魅力に引き寄せ

    られ、弘前大学医学部へ学

    士編入致しました。四年生

    の研究室研修では、遠藤正

    彦先生の研究室で膵がんの

    微小環境と糖鎖工学に関す

    る研究に携わる機会に恵ま

    れ、難治性腫瘍、消化器が

    んを専門にしようと決意し

    ました。初期研修中も内

    科、腫瘍に関連する分野を

    中心にローテ―ト致しまし

    た。将来は、消化器血液膠

    原病内科、腫瘍内科ともに

    学び消化器内科ベースの腫

    瘍内科医を目指すこととな

    りました。すでに大学病院

    での後期研修がスタートし

    ていますが、初期研修でお

    世話になった先生方から多

    大なサポートを頂き、改め

    て人と人のつながりの大切

    さを痛感し感謝する毎日で

    す。今後は、これまで学ん

    できたことを後輩の皆さん

    に還元し、弘前大学を盛り

    上げていきたいと考えてお

    ります。研修中お世話にな

    りました皆様に改めて感謝

    申し上げます。

    最優秀指導医賞を受賞して

    原   

    裕太郎

    (附属病院 

    医員 

    消化器外科,乳腺外科,甲状腺外科)

     

    消化器外科学講座の原裕

    太郎と申します。

     

    最優秀指導医賞を受賞さ

    せていただいて、非常に嬉

    しく思います。共に診療に

    あたることができ、現六年

    生達に感謝の気持ちを抱い

    ております。

     

    昨年度春、四年目の医師

    になり、学生の頃以来の大

    学に戻ってまいりました。

    久しぶりに病棟に行くと、

    BSLの学生達が緊張した

    面持ちで立っており、数年

    前の自分達を思い出しまし

    た。同時に、臨床一年目の

    彼らも数年後には、一人前

    の医師となり患者さんを

    救っているのだなと想像す

    ると嬉しい気持ちになりま

    した。

     

    僕は消化器外科医なの

    で、もちろん消化器外科の

    専門的な内容についても指

    導いたしましたが、臨床一

    年目の彼らに臨床医として

    基本的なことを伝えたいと

    いう思いで指導に当たりま

    した。患者さんとの接し

    方、話し方、診療の中でプ

    ロブレムが起きた時の考え

    方、検査の目的など、自分

    が諸先輩方に指導いただい

    たことを伝えるよう努力い

    たしました。そして、なに

    より患者さんが良くなると

    嬉しいということ、そのた

    めにいい仕事をしようして

    いることが伝わっていれば

    嬉しいです。

     

    診療には少しの楽しさと

    笑顔も大切と思っているの

    で、ピリピリせずゆるくふ

    わりとしたスタイルをとっ

    ているつもりでいます。も

    ちろん、配下に置かれた後

    輩達の指導の場面では、愛

    情を込めて進撃の巨人と化

    します。

     

    また、学生指導に当たる

    ことで自分自身の知識の整

    理にもなりました。処方な

    り、検査なり、手術におけ

    る一手なり、すべてに意図

    があることであり、それを

    シンプルに説明できるよう

    心がけました。

     

    困っている患者を救う気

    持ちと力を持った臨床医が

    ひとりでも多く生まれるこ

    とを期待しています。自分

    たちができる最高の指導を

    後輩達に紡いでいき、より

    良い医療を患者さんに提供

    できればと思います。あり

    がとうございました。

    最優秀指導医賞を受賞して

     

    髙 

    安   

    (附属病院 

    助教 

    内分泌内科,糖尿病代謝内科)

     

    最優秀指導医賞をいただ

    き、心より感謝申し上げま

    す。学生のみなさんに忖度

    なしに選んでもらっての受

    賞は、教育に携わる一医師

    として最高の栄誉と考え、

    誇りに思います。率直に

    言って、教員にとって教え

    ることは義務ですし、学生

    にとっては教育を受ける権

    利があり、またそれは医師

    になるために必要な義務で

    もあります。個人の理解や

    興味、好みが介在してその

    授受に積極性や円滑さの差

    が出ることもありますが、

    一貫して自分の専門である

    内分泌学について理解して

    もらいたいと思って指導し

    た結果と、本当にうれしく

    思います。

     

    今日の医療は日進月歩で、

    様々な研究から evidence

    が生まれて検査、診断、治

    療が変化、改定され蓄積さ

    れています。国家試験対策

    の参考書をみても、自分が

    学生のときとは比べものに

    ならないvolum

    e

    に驚きま

    す。情報は日々更新され、

    多様な媒体を経て簡単に得

    られる世の中になりました

    が、学生も医師もその山に

    埋もれながら、必要なもの

    だけを抽出しなければなり

    ません。H

    umanity

    を考え

    る指導については少しおい

    ておきますが、教育面では

    指導医の責務として、医学

    生が医師になるために必要

    な知識やスキルを取捨選択

    してどのように伝えるべき

    かを常に意識するようにし

    ています。とかく、日本の

    受験社会を生きてきた我々

    は、start

    とgoal

    、原因と結

    果、病名と治療のように、

    最初の点と最後の点、問い

    と答えを覚えようとするだ

    けで、その過程が重要であ

    ることを忘れがちです。過

    程に「なぜ?」を挟み込み、

    「考えること」を加えるこ

    とで、忘れていても、知ら

    なくても、起点と終点の両

    端にたどり着けるのです。

    さらに、「問うて考える」

    ことは新たな idea

    や革新

    にもつながります。これは

    診療と研究双方に通じるこ

    とを自分自身実際に経験し

    ていますので、己の向上の

    ためにも意識しながらなぜ

    なぜの毎日を送っていま

    す。実習中にもそのように

    接し、伝えているつもりで

    す。学生のみなさんは国家

    試験に合格することが目標

    ではなく、その先にある医

    師として生きる自分につい

    て「問うて考え」ながら実

    習し、誇りを持てる選択が

    できれば、そして私にその

    手助けができれば冥利につ

    きます。もちろん、その見

    据えた先に内分泌内科・糖

    尿病代謝内科があって一緒

    に仕事ができれば、なおう

    れしく思います。

     

    最後に提案です。自分の

    指導や熱意が伝わり、学生

    諸君からの気持ちがもらえ

    ることは非常にうれしく、

    motivation

    になることは間

    違いありません。臨床実習

    を通しての選考だけではな

    く、基礎実習、授業を通し

    て指導いただいた基礎医学

    講座の先生方にも時期を違

    えてこのような機会があっ

    て然るべきと思います。ぜ

    ひご検討よろしくお願いい

    たします。

  • 医学部ウォーカー第 89 号 令和元年 6月 19 日

    平成30年度

    研究室研修優秀発表賞

    脳血管病態学講座 

    教授 

    今 

    泉 

    忠 

     

    平成三十年度後期の「研

    究室研修」では、例年通り、

    三年次学生全員が医学研究

    科の各講座のいずれかに配

    属され、十月から二月はじ

    めまで研修を行いました。

    そして、平成三十一年二月

    六日の午前午後、七日・八

    日の午後に臨床大講義室で

    発表会を行ないました。発

    表は、学生一人あたりの持

    ち時間は六分(発表四分、

    質疑応答一分三十秒)で、

    英語の口演とし「医学英語

    Ⅲ」の単位認定を行いまし

    た。英語で発表することに

    ついては、賛否色々なご意

    見もいただいていますが、

    百人以上の前で英語で口演

    するということは、とても

    よい経験と考えています。

    また、セクションごとに三

    名の教員が審査を行い、平

    均点の上位三名(表)が優

    秀発表賞に選ばれました。

     

    坂井南子さんは麻酔薬の

    抗うつ作用について、井上

    貴子さんは皮膚疾患の遺伝

    子異常について、畠中大維

    さんは人工的に作成する3

    D血管組織についての発表

    でした。三名とも、研修の

    内容をよく理解

    し、自分の言葉で

    発表していたこと

    が高く評価された

    のだと思います。

    四月十八日に、医

    学部長室で授賞式

    が行われ、若林孝

    表 平成30年度研究室研修優秀発表賞受賞者(指導講座)

    坂 井 南 子(麻酔科学講座)井 上 貴 子(皮膚科学講座) 畠 中 大 維(神経解剖・細胞組織学講座) (発表順)

    一医学部長から三名の学生

    に優秀発表賞の賞状と副賞

    の図書カードが贈呈されま

    した。若林学部長からは、

    医師になってからも是非研

    究に携わる機会を持ってほ

    しい、と励ましの言葉が述

    べられました。また、指導

    教員の方からも暖かいコメ

    ントをいただきました。三

    名の今後のますますのご活

    躍を期待します。

     

    一方、発表会では、教員

    が用意した原稿をただ棒読

    みしただけと見受けられた

    発表や、目的・方法・結果・

    考察・まとめの組み立てが

    きちんとなされていない発

    表もありました。研究室研

    修や発表会のありかたにつ

    いては、議論のあるところ

    ではありますが、限られた

    時間の中でより充実した研

    修や発表会になるよう、改

    善していきたいと思ってい

    ます。

     

    学生諸君の大部分は将来

    臨床医として活躍すること

    と思いますが、一時期、研

    究活動に従事することが、

    臨床医としての力量を高め

    てくれることは確かです。

    医師免許の取得・初期研修

    修了の後には、後期研修の

    一環として弘前大学大学院

    医学研究科に進学し、一度

    は研究に取り組んで下さる

    ことを期待しています。「博

    士号」は「専門医」ととも

    に医師のキャリア上の重要

    な「一里塚」と思います。

     

    最後に、学生を指導して

    いただいた教員ならびに審

    査を担当して下さった教員

    の方々、また、支えて下さっ

    た学務グループの皆さん

    に、御礼申し上げます。

    優秀発表賞を受賞して

    医学科四年生 

    坂 

    井 

    南 

    (指導講座

    麻酔科学講座)

     

    この度は、研究室研修優

    秀発表賞をいただき、誠に

    ありがとうございます。ご

    指導賜りました、麻酔科学

    講座の二階堂義和先生には

    心より感謝申し上げます。

     

    私は、「ケタミン抗うつ

    作用の中枢神経系作用機序

    の検討」をテーマに研修さ

    せていただきました。

     

    ケタミンは静脈麻酔薬と

    して広く使われています。

    そして近年、低用量ケタミ

    ンには抗うつ作用があるこ

    とがわかりました。ケタミ

    ンが抗うつ薬として優れて

    いる点として、短時間で効

    果が現れること、治療抵抗

    性のうつ病にも効くことが

    挙げられ、すでに臨床試験

    も行われています。しか

    し、ケタミンがどのように

    して抗うつ作用を発揮する

    のかについては、ほとんど

    わかっていません。

     

    これまでの報告で、うつ

    病患者の死後の内側前頭前

    野では、早期応答遺伝子の

    一つである、Arcの発現

    低下がわかっていました。

    そこで私たちは、「うつモ

    デルマウスの内側前頭前野

    でのArcの発現低下が、

    ケタミンによって改善する

    のか」について検討しまし

    た。

     

    実験のほとんどは、弘前

    大学医学部附属動物実験施

    設で行いました。マウスの

    扱いに慣れることから始ま

    り、ケージ交換などで毎回

    マウスと接することで、

    social interaction test

    いった行動実験も手伝うこ

    とができるようになりまし

    た。また、免疫染色や実験

    データの解析方法といっ

    た、基礎研究に必要な手法

    も一から教えていただきま

    した。そして、研究発表に

    向けて、研究結果をスライ

    ドにまとめる際には、学会

    発表に即した、グラフや図

    の書き方や英語表現を教え

    ていただきました。研修の

    終盤では、自分一人で実験

    や解析などができるように

    なり、四ヶ月間でこんなに

    成長できるんだと嬉しく思

    いました。

     

    今回取り組んだ基礎研究

    が積み重なって、やがて患

    者さんのもとへ届くと考え

    ると、これが研究の楽しさ

    であろうと感じます。

     

    最後に、毎回親身に指導

    してくださった二階堂先

    生、発表に向けてアドバイ

    スをいただきました麻酔科

    学講座の方々に、改めて御

    礼申し上げます。

    平成30年度後期研究室研修

    優秀発表賞を受賞して

    医学科四年生 

    井 

    上 

    貴 

    (指導講座

    皮膚科学講座)

     

    この度は研究室研修優秀

    発表賞にて表彰をしていた

    だき、誠にありがとうござ

    います。ご指導いただいた

    中野創先生、松井彰伸先生

    はじめ、皮膚科学講座の先

    生方、実験室の方々、事務

    の方々に心より感謝申し上

    げます。いつも講座の一員

    のように暖かく接していた

    だき、本当にありがとうご

    ざいました。

     

    私の研究テーマは「家族

    性晩発性皮膚ポルフィリン

    症の遺伝子診断」でした。

    ポルフィリン症はヘム合成

    経路で働く酵素の活性低

    下・欠損によってポルフィ

    リンやその前駆物質が蓄積

    する疾患です。その中でも

    晩発性皮膚ポルフィリン症

    は蓄積した物質が光線にさ

    らされることで細胞毒性を

    発揮し光線過敏症を呈する

    疾患です。弘前大学皮膚科

    学講座では多くの遺伝性皮

    膚疾患について遺伝子診断

    を行なっています。日本に

    おける晩発性ポルフィリン

    症の症例はそのほとんどが

    後天性のものですが、今回

    携わらせていただいたのは

    常染色体優性遺伝を示す家

    族性晩発性皮膚ポルフィリ

    ン症の症例でした。家族性

    晩発性皮膚ポルフィリン症

    はヘム合成経路に不可欠な

    酵素をコードする遺伝子の

    変異に加え、アルコールや

    薬物などの増悪因子を持つ

    ことにより症状が表れる症

    例が報告されています。遺

    伝子解析によって本疾患の

    診断がつくことにより遺伝

    や発症を抑えられる可能性

    があり今回そのような研究

    に携われたことを大変嬉し

    く思っております。

     

    今回の研究室研修で学ん

    だことは多くあります。一

    つ一つの実験的手技を丁寧

    かつ正確に遂行することは

    研究の基本であること。科

    学的な視点から色々な疑問

    を持ち続けること。基本的

    な疑問・質問を恐れずに聞

    く姿勢。そして周囲との人

    間関係を大切にすることが

    研究の大切な要素の一つで

    あることを講座の方々から

    学ばせていただきました。

    今後もこの経験を生かし医

    師となった際にも、科学者

    としてのリサーチマインド

    を忘れずに邁進していきた

    いと考えております。最後

    にこのような貴重な経験を

    させていただき、研究室研

    修に関わった皆様方に心よ

    り感謝申し上げます。

    研究室研修の優秀発表賞を受賞して

    医学科四年生 

    畠 

    中 

    大 

    (指導講座

    神経解剖・細胞組織学講座)

     

    この度、研究室研修の優

    秀発表賞に選出していただ

    き、誠にありがとうござい

    ます。本研修においてご指

    導いただきました、浅野先

    生、下田先生をはじめ、神

    経解剖・細胞組織学講座の

    先生方には大変御世話にな

    りました。深く感謝申し上

    げます。

     

    私は、「ASCを主体と

    したヒト三次元人工脈管組

    織の作製と構造解析」とい

    うテーマで研修させていた

    だきました。再生医療の分

    野で注目を集めているAS

    Cを用いた実験・解析を中

    心に研究を進め、最後の研

    究室研修の発表時において

    は、ASCを主体としたヒ

    ト人工脈管組織の脈管の変

    化に特に注目したスライド

    発表を行いました。

     

    研修期間、浅野先生から

    様々なことを幅広く指導し

    ていただきました。初め

    は、実験や研究の見学から

    始まりました。実際に染色

    している様子や、組織切片

    を作製する様子、マウスに

    ヒト人工組織を移植する様

    子など、さまざまな実験や

    解析のやり方を教えていた

    だきました。一通り見学が

    終わると、先生指導のも

    と、実際に手を動かして実

    験や解析を行いました。組

    織切片を作り、HEやトル

    イジンブルーなどによる染

    色や免疫染色を行い、その

    染色されたプレパレートを

    顕微鏡で観察し、実際に

    データを取ってPC等によ

    り解析するという一連の作

    業を経験させていただきま

    した。研修が終盤にかかる

    と、発表スライドの作り方

    や発表の仕方、論文形式の

    実践的なレポートの書き方

    を学び、先生からのアドバ

    イスや添削など貰いながら

    作業を進めることができま

    した。浅野先生からは、一

    人の研究生として最初から

    最後まで丁寧にご指導いた

    だきました。本当に感謝い

    たします。

     

    普段のオムニバスの講義

    形式では見えない、先生方

    の研究者としての一面が見

    れたこと、そして、実際に

    研究に触れられたことは自

    分にとって貴重な体験でし

    た。浅野先生、下田先生を

    はじめとした神経解剖学・

    細胞組織学講座の先生方、

    研究でお忙しい中丁寧にご

    指導いただけたこと、改め

    てですが感謝申し上げま

    す。また、今回優秀賞を受

    賞できたこと、とても光栄

    であり嬉しかったです。こ

    のような研究室研修という

    機会を設けていただき、本

    当にありがとうございまし

    た。今後もこの貴重な経験

    を活かして、医学の勉強に

    勤しみます。

  • 医学部ウォーカー第 89 号令和元年 6月 19 日

    青森県知事と

    新入生との懇談会

    学務委員長 

    鬼 

    島   

    (病理生命科学講座 

    教授)

     

    現在、三村申吾青森県知

    事と弘前大学医学部医学科

    学生との懇談会は年二回行

    われています。春は新入生

    を対象に、秋は五年生を対

    象としたものです。この懇

    談会がスタートしたのは平

    成十七年四月であり、その

    後、十四年にわたり連続し

    て開催されています。今回

    は平成三十一年四月十日に

    医学部基礎大講堂で、医学

    科新入生全員が出席して実

    施されました。県側からは

    三村知事に加え、有賀玲子

    健康福祉部長、山中朋子医

    師確保対策監、齋藤和子保

    健医療対策監、小川克弘良

    医育成支援特別顧問らが出

    席し、佐藤学長・若林医学

    部長の列席のもとで行われ

    ました。

    第7回世界自閉症啓発デー

    記念イベントin弘前を終えて

    子どものこころの発達研究センター 

    特任准教授 

    栗 

    林 

    理 

     

    二〇〇七年十二月十八日

    の国連総会において、毎年

    四月二日を「世界自閉症啓

    発デー」とすることが決議

    されました。わが国におい

    ては、毎年四月二日から八

    日までを「発達障害啓発週

    間」として、自閉スペクト

    ラム症をはじめとして、発

    達障害についての正しい理

    解の啓発に取り組む活動が

    全国各地で行われていま

    す。

     

    弘前においても、二〇一

    六年の第四回世界自閉症啓

    発デーより、弘前市の協力

    を得て、旧市立図書館のブ

    ルーライトアップが実現し

    ました。翌二〇一七年度か

    らは、弘前市の提案で弘前

    城天守閣のブルーライト

    アップが実現し、本年度も

    見事に天守閣がライトアッ

    プされました。

     

    二〇一九年四月一日に

    は、青森県立弘前第一養護

    学校の高等部が旧青森県立

    岩木高等学校の校舎に移転

    となりました。高等部の生

    徒たちがより街中で学校生

    活を送ることとなり、今ま

    で以上に弘前市民一人一人

    が発達特性を有する生徒た

    ちと今後どのように向き

    合っていくのかを考える必

    要があると感じていまし

    た。そこで、今年度の記念

    イベントは、発達障害をよ

    り理解できるような講演会

    を企画することにしまし

    た。四月二日の午後六時よ

    り、弘前大学医学部コミュ

    ニケーションセンターに

    て、松本敏治先生(教育心

    理支援教室・研究所 

    ジュマルつがる代表、元弘

    前大学教育学部教授)から

    『自閉スペクトラム症

    のコミュニケーション

    支援~「自閉症は津軽

    弁を話さない」研究か

    ら見えてきたことばと

    コミュニケーションの

    関係~』というテーマ

    で、ご講演をしていた

    だきました。松本先生

    は、自閉スペクトラム

    症の人が津軽弁だけで

    なく方言全般を使用し

    たがらない理由につい

    て、方言のもつ社会的

    機能(心理的距離調整

    機能)を十分に理解で

     

    懇談会の初めに三村知事

    からは「青森県の目指す医

    療の姿」と題した講演があ

    りました。地域を支える保

    健・医療・福祉一体化シス

    テムの実践で、青森県の平

    均寿命・健康寿命いずれも

    が大きく伸びてきており、

    短命県脱出に向けて大きく

    前進していると力説されま

    した。弘前大学と連携した

    県の取り組みとして、⑴

    医療従事者の育成・定着、

    ⑵医療機能の集約・連携強

    化、⑶がん・脳卒中対策の

    強化、⑷地域を支える医療

    システムの構築の四点が実

    践されていることや、「良

    医を育むグランドデザイ

    ン」に基づいて医師が学ぶ

    環境を整えていることが示

    されました。弘前大学医学

    部・関係医

    療機関・青

    森県地域医

    療支援セン

    ターが連携し、地域医療を

    志す医師のキャリアアップ

    をサポートしてゆくことが

    強調されました。

     

    知事の講演の後は、県ス

    タッフも加わり、学生との

    活発な意見交換がありまし

    た。今回は、入学したばか

    りの新入生が対象とあっ

    て、盛り上がりに欠く会に

    はならないかというのは杞

    憂であり、学生からは地域

    の医療崩壊の危機が語られ

    たり、尊敬する知事に握手

    を求めたりと、会場は大い

    に沸きあがりました。

     

    現在、青森県からの寄附

    講座として総合地域医療推

    進学講座が設置されてお

    り、超高齢化や新・専門医

    制度を踏まえ、弘前大学を

    起点とし県内の大小医療機

    関を循環する本県オリジナ

    ルの地域循環型医師育成シ

    ステムに関する総合的な研

    究を通じて、地域医療の充

    実に寄与することを目指し

    ています。これに基づき、

    新入生の多くが卒業後に青

    森県に定着し、大学が担う

    教育・研究機能の一翼を

    担ってくれることを期待し

    ています。

    きていないこととの関連を

    指摘されていました。講演

    後は、参加者から多くの質

    問が出され、活発な討議が

    なされました。

     

    引き続き、弘前城天守ブ

    ルーライトアップ記念式が

    行われ、会場で現場から送

    られてきたブルーライト

    臨床と研究と私

    附属病院 

    麻酔科 

    助教 

    中 

    井 

    希紫子

    若手教員・医師だより

     「臨床と研究…うーん、

    (やったこともないのに)

    研究は苦手だしなぁ、私は

    臨床医としてバリバリ頑張

    るぞ。」

     

    十数年前、教室に仲間入

    りしたばかりの私はそう

    思っていました。麻酔科学

    の面白さに魅了されて選ん

    だ道だったにもかかわら

    ず、最初は日々臨床現場で

    目の前のことをこなすこと

    で精いっぱいでした。そん

    なフワフワした私に、臨床

    研究に携わるチャンスを下

    さった廣田教授。研究と言

    えば動物実験が主体だった

    時代で、「毎日の臨床の中

    での研究。こんな研究もあ

    るんだなぁ」と驚きまし

    た。幼稚でお恥ずかしいの

    ですが、そんなふうにして

    臨床研究に携わり始めまし

    た。研究を進めていく中

    で、「こうしたらもっと良

    いのでは」などと色々考え

    ながら臨床に関わることの

    面白さを知りました。あん

    なに研究に対して気後れし

    ていた自分が、気づけば一

    生懸命取り組んでいたわけ

    です。そして私は指導医の

    先生に恵まれました。今、

    年をとってわかったことで

    すが、後輩と研究や仕事を

    していて、自分でやってし

    まった方が早くて楽なこと

    があります。後輩がやるの

    を待って、それを一緒に見

    直して、次につなげる。そ

    の姿勢には、膨大な時間と

    労力が必要です。私の指導

    医は、私にまず考えてみな

    さい、書いてみなさいと言

    いました。そしてその後、

    疑問解決のためにいつもた

    くさんの時間を割いてくれ

    ました。今になって、それ

    がどれだけ大変なことで

    あったかがわかります。抱

    えている仕事量も膨大で

    あったはずなのに。改めて

    尊敬の念を抱くとともに、

    指導医の先生の後ろ姿が今

    の私の財産です。

     

    臨床医でありたい医師こ

    そ、研究に携わったことが

    あるという経験が必要で

    す。私たちは、日常の中で

    困難な症例に出会ったり大

    きな疑問にぶつかった時、

    同じ経験をした人や同じ疑

    問をもった人たちがいない

    かと論文を探します。そし

    て論文を読むとき、自分で

    研究に携わったことがある

    という経験が生きてきま

    す。私自身、研究に携わっ

    てから論文の読み方が非常

    に変わったと実感したのを

    覚えています。

    (次ページへ続く)

    アップされた弘前城天守の

    写真をみて、最後に会場に

    て記念撮影をし、記念イベ

    ントは終了となりました。

     

    今年度の世界自閉症啓発

    デーも、学生ボランティア

    の皆様の他、多くの方々の

    ご協力を得て無事に終える

    ことができました。今後

    も、この国が目指す障害の

    ある方々が自らの持つ能力

    を存分に発揮できる『共生

    社会』の実現へ向けて、我々

    の活動が微力ながらも役立

    つようにと願っています。

  • 医学部ウォーカー第 89 号 令和元年 6月 19 日 

    現在私は、麻酔科医と母

    親の二足のわらじをはき、

    相変わらず綱渡りのような

    日々を送っています。毎日

    先輩後輩に助けられてばか

    りで、心から感謝の気持ち

    でいっぱいです。やるべき

    (前ページより)

    医師だより

    皮膚科学講座 

    助教 

    是 

    川 

    あゆ美

    若手教員・医師だより

     

    こんにちは、皮膚科学講

    座の是川あゆ美と申しま

    す。

     

    テーマは何でも良いよう

    でしたので、昨年六月に第

    五回東アジア皮膚科学会

    (5th EAD

    C

    )へ参加のため

    中華人民共和国の奥地にあ

    る〝昆明〟という都市を訪

    れたことを書かせていただ

    きます。

     

    私は学会で訪れるまで昆

    明について全く知らない

    し、聞いたこともありませ

    んでしたので、出発前に

    色々インターネットで調べ

    ました。昆明(英語:

    Kunm

    ing

    )は雲南省の省都

    で、隣はすぐベトナムで

    す。また、シャングリラの

    24 公益

    [email protected]

    公益社団法人 青森医学振興会

    地域の病院で研修して

    関連病院勤務報告

    青森市民病院 

    泌尿器科 

    細 

    越 

    正 

     

    現在、青森市民病院で泌

    尿器科医として勤務してい

    る細越