岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 ·...

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Page 1: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

内   

1.2019年度上期の回顧

⑴ 

日本経済は緩やかな回復を継続

⑵ 

県内経済も緩やかな回復の動き

① 

個人消費は一部で足踏みながら持ち直しの動き

② 

住宅投資は前年を下回る

③ 

設備投資も前年比マイナス

④ 

公共投資もマイナス傾向が続く

⑤ 

生産活動は持ち直しの動き

⑥ 

野菜の金額は安値相場から前年割れ

⑦ 

水揚げ数量は前年を上回るも金額はマイナス

⑧ 

観光地の入込み客数は前年を上回る

⑨ 

求人倍率は引き続き高水準

2.2019年度下期の展望

⑴ 

日本経済は弱い伸びに留まる

⑵ 

県内経済は足踏みの状況

① 

個人消費は一進一退の動き

② 

住宅投資は弱い動き

③ 

設備投資は前年を下回る見通し

④ 

公共投資は弱含み

⑤ 

生産活動は持ち直しの動き

⑥ 

雇用情勢は改善の動きが鈍化

⑶ 

本県における出生数減少に係る分析

岩手県内経済2019年度上期の回顧と下期の展望

岩手経済研究 2019年10月号 16

経済解説

Page 2: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

要約

● 2019年度上期の日本経済をみると、生

産が弱い動きとなったほか、輸出も米中貿易

摩擦の影響などから弱含みで推移したものの、

個人消費や設備投資は持ち直しの動きとなる

など、全体としてみれば緩やかな回復の動き

となった。

● 県内経済についても、全国と同様に緩やか

な回復の動きが継続する展開となった。

● 公共投資は前年の復興道路工事などの反動

から弱含みで推移したほか、住宅投資も主力

の持家のほか貸家などもマイナスで推移し、

全体として前年を下回る水準となった。

● 一方、個人消費は小売業主要業態販売額が

足許では減少したものの乗用車新車登録台

数は増加基調で推移し、また、生産活動も窯

業・土石などがマイナス基調となったが食料

品や電子部品・デバイスはプラスとなるなど、

いずれも持ち直しの動きとなった。さらに、

雇用情勢も有効求人倍率が75カ月連続で1倍

超となるなど労働需給が引き締まった状況が

継続した。

● 設備投資は生産性向上に向けた投資などは

あるものの、前年の反動などから製造業と非製

造業のいずれもマイナスになったとみられる。

● 下期の日本経済については、情報化関連な

どの設備投資が増勢を維持するほか、雇用情

勢がタイトな状況を受けて所得環境も改善基

調になるとみられる。また、消費税増税につ

いては引き上げ幅が2%と小幅なうえ飲食料

品への軽減税率やキャッシュレス決済に対す

るポイント還元などの負担軽減措置が取られ

ることなどから個人消費も堅調なものとなる

見込みである。しかし、住宅投資はマイナス

となり、海外経済の減速などから輸出の増勢

が鈍化するとみられ、全体としては弱い伸び

に留まると予想される。なお、海外経済につ

いては、米中貿易摩擦などに伴って両国の減

速感が強まるほか、欧州においても生産や輸

出にかげりがみられるなか、英国のEU離脱

問題の今後の動向にも注意したい。

● 県内経済については、生産活動は持ち直し

の動きとなるが、住宅や公共投資が弱い動きと

なるほか個人消費も一進一退になるとみられ、

全体として足踏みの状況が続くと予想される。

● 本県の出生数の回復にあたっては出産適齢

女性人口と有配偶率がポイントとなり、就業

機会の拡大や出産・育児に係る実効性のある

施策が展開されることが期待される。

1.2019年度上期の回顧

⑴日本経済は緩やかな回復を継続

2019年度上期の日本経済をみると、生産

に弱い動きがみられたほか輸出も米中貿易摩擦

の影響で中国経済が減速したことなどから弱含

みで推移したものの、個人消費や設備投資は持

ち直しの動きとなった。また、内閣府の景気動

向指数では4月の一致指数の基調判断が前月に

続いて「悪化を示している」になったことで景

気後退局面入りとの見方が出たが、後述する19

年4~6月期の国内総生産(GDP)の動きを

みると、引き続き緩やかな回復の動きの途上に

あると判断される。

19年4~6月期の国内総生産(GDP)は、

実質成長率が前期比0・3%(年率換算1・3%)

増となり、3四半期連続のプラス成長となった。

内訳をみると、外需は輸入の増加などからわ

ずかながら成長を押し下げたものの、内需が前

期比0・6%増の高い伸びとなった。また、景

気実感に近いとされる名目GDPは同0・3%

増(年率換算では1・1%増)と、実質と同様

に3四半期連続のプラスとなった(次頁図表1)。

需要項目別にみると、中国など海外経済の減

速などを背景に輸出が前期並みとなった一方で

輸入が同1・7%増となったことから外需の寄

与度は0・3%減と2四半期ぶりのマイナスと

17 岩手経済研究 2019年10月号

岩手県内経済2019年度上期の回顧と下期の展望

経済解説

Page 3: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

図表1 実質GDP(需要項目別、季節調整値)年・期

項目前 期 比 (%)

2018/4~6 7~9 10~12 19/1~3 4~6

実 質 G D P0.5 △�0.5 0.4 0.5 0.3

【1.9】【△�1.9】【1.8】【2.2】【1.3】国 内 需 要 0.5 △�0.3 0.8 0.1 0.6民間最終消費支出 0.3 △�0.1 0.4 0.0 0.6民 間 住 宅 △�1.8 0.8 1.3 0.8 0.1民 間 企 業 設 備 3.0 △�2.8 3.0 △�0.2 0.2民 間 在 庫 品 変 動(△�0.1)(0.2)(0.0)(0.1)(0.0)公 的 需 要 △�0.2 △�0.1 0.4 0.2 1.3公的固定資本形成 △�1.4 △�1.8 △�1.2 1.5 1.8

純 輸 出 (0.0)(△�0.2)(△�0.4)(0.4)(△�0.3)輸 出 0.8 △�2.1 1.2 △�2.0 0.0輸 入 0.8 △�1.2 3.6 △�4.3 1.7

名 目 G D P 0.2 △�0.5 0.4 1.0 0.3注 【 】は前期比年率換算、( )は寄与度資料:内閣府「四半期別GDP速報(2次速報値)」2019年9月公表

図表2 個人消費関連諸指標(販売額は全店舗ベース)年月

項目前年同期(月)比

2019/1~3 4~6 7 8% % % %

小 売 業 主 要 業 態 2.4 2.9 △� 3.4 −専門量販店販売額 3.4 5.1 △� 3.4 −家電大型専門店 1.2 8.5 △�13.6 −ドラッグストア 6.9 8.1 0.8 −ホームセンター △� 1.3 △� 0.9 △� 3.3 −

百貨店・スーパー販売額 1.1 0.6 △� 5.1 −百 貨 店 販 売 額 0.9 △� 2.1 △� 6.3 −スーパー販売額 1.1 1.3 △� 4.8 −

コンビニエンスストア販売額 2.8 2.7 △� 1.4 −乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 △� 6.3う ち 普 通 車 0.4 2.2 8.3 △� 7.9う ち 小 型 車 2.1 1.0 0.7 △� 4.7

軽乗用車販売台数 4.1 4.9 △� 6.0 19.9資料:東北経済産業局、県自動車販売店協会、県軽自動車協会

状判断指数は41・0と前回(47・8)に比べ6・

8ポイント低下し、景況感の分かれ目とされる

50を5期連続で下回ったほか、先行きも41・8と

前回(48・3)に比べ6・5ポイント低下した。

ラグビーワールドカップの開催による経済波及

効果への期待がある一方で消費税増税前の駆け

込み需要の動きが乏しいほか消費マインドの冷

え込みが感じられ、さらに、米中貿易摩擦に伴

う受注の減少などが景気判断を押し下げた。

① 個人消費は一部で足踏みながら持ち直しの動き

個人消費は、小売業主要業態販売額は足許で

はマイナスとなったが上期前半は堅調な動きと

なり、乗用車新車登録台数もプラス基調で推移

するなど、全体としてみると持ち直しの動きと

なった。

景況判断指数(BSI)がプラス1・1と3四

半期ぶりに改善し、10~12月期の見通しはマイ

ナス0・4とややマイナスとなるものの、20年

1~3月期はプラス1・7と再び改善する見通

しとなっている。

⑵県内経済も緩やかな回復の動き

2019年度上期の県内経済は、公共投資は

前年の復興道路工事など大型工事の反動から弱

含みで推移したほか住宅投資も主力の持家のほ

か貸家などもマイナスとなった。一方、生産活

動は完成車の一部車種の需要に一服感がみられ

た輸送機械や窯業・土石などがマイナス基調と

なったが、主力の食料品が増加したほか電子部

品・デバイスもプラスで推移するなど持ち直し

の動きとなった。また、個人消費も持ち直しの

動きとなったほか、雇用情勢も引き続き有効求

人倍率が高い状況が続くなど、全体的に緩やか

な回復の動きが継続する展開となった。

当研究所が19年7月に実施した岩手県内企業

景況調査によると、全産業の業況判断BSIは

マイナス24・6と前回調査(4月)を1・9ポ

イント下回り2期連続の悪化となった。製造業

は一部の業種で改善の動きとなったものの全体

では依然としてマイナス基調であるほか、非製

造業も悪化の度合いが強まり厳しい景況感が続

く状況となった。また、同時期に行ったいわて

景気ウオッチャー調査でも景気の実感を示す現

なった。一方、改元に伴う大型連休による旅行

などサービス消費に加えて耐久消費財なども増

加したことなどから個人消費が同0・6%増と

なったほか設備投資も2四半期ぶりの増加と

なった。また、住宅投資はやや勢いを欠いたも

ののプラスを維持し、公共投資も前期に続いて

堅調な動きとなった。

このように4~6月期の国内総生産は、外需

の寄与度がマイナスとなり成長を押し下げる形

となったものの、個人消費や企業の設備投資は

堅調な動きとなるなど内需は拡大しており、引

き続き緩やかな景気回復が続いていることを示

している。また、7~9月期については、9月

11日発表の法人企業景気予測調査(内閣府・財

務省)において、大企業全産業の景況感を示す

岩手経済研究 2019年10月号 18

Page 4: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

図表3 新設住宅着工年月

項目着工戸数 前年同期(月)比2019/4~7 4~6 7 19/4~7

戸 % % %総 計 2,764 △�10.3 △�21.5 △�13.4利用関係別

持     家 1,545 △� 3.1 △� 0.2 △� 2.3貸     家 934 △�19.0 △�43.5 △�27.0給 与 住 宅 10 △�77.5 − △�75.0分 譲 住 宅 275 △� 3.7 △�14.6 △� 5.5

資料:県建築住宅課

図表4 建築物着工(民間、非居住用)主な用途区分 工事費予定額 床面積

2019/4~7 前年同期比 19/4~7 前年同期比百万円 % ㎡ %

農 林 水 産 業 2,686 9.9 35,887 △�10.2鉱 業 ・ 建 設 業 954 53.5 7,971 83.5製 造 業 4,395 △�96.2 20,790 △�92.5運 輸 業 178 △�15.4 2,106 △�43.3卸 ・ 小 売 業 4,348 △�11.4 23,305 △�37.8飲 食 店・ 宿 泊 業 4,928 116.1 18,849 81.4医 療 ・ 福 祉 用 25 △�66.7 181 △�65.3教 育・ 学 習 支 援 業 4,069 27.8 13,523 △� 2.4その他のサービス業 1,105 △�80.1 7,311 △�66.5非 居 住 用 合 計 27,061 △�80.6 152,676 △�64.2注 主な用途区分を記載しており合計と一致しない資料:図表3に同じ

図表5 公共工事請負額(前払金保証対象、岩手県内工事分)年月

発注者2019/4~8

工事請負金額 前年同期比百万円 %

国 39,889 △�29.4独 立 行 政 法 人 等 2,807 △�89.6

県 92,548 △�12.1市 町 村 55,367 △�29.9そ の 他 9,646 119.9合 計 200,260 △�26.4注 四捨五入のため合計は一致しない資料:東日本建設業保証㈱岩手支店

などでプラスとなったものの、食料品や木材・

木製品などがマイナスとなり、同11・3%減と

なった。また、非製造業も運輸業や小売業は増

加したものの建設業や卸売業がマイナスとな

り、同5・9%減となった。

なお、民間の非居住用建築物着工の動きをみ

ると、工事費予定額は前年同期比80・6%減と

なり、着工床面積も同64・2%減と前年を大き

く下回った(図表4)。飲食店・宿泊業などで

大幅な増加となったが、製造業やその他のサー

ビス業などで二桁台のマイナスとなった。

④ 

公共投資もマイナス傾向が続く

公共投資は、防波堤工事や病院新築工事など

はあったものの前年の反動減が大きく、マイナ

持家が5月と6月

は二桁台のプラス

となったが4月の

落ち込み幅が大き

かったことなどか

ら期間全体では前

年水準を割り込ん

だ。また、貸家も

前年の反動からマ

イナスとなり、市

町村別では北上市

や花巻市ではプラ

スとなったものの

盛岡市や大槌町、

陸前高田市の減少が大きなものとなった。また、

分譲住宅も一戸建は増加したがマンションがマ

イナスとなり、弱含みで推移した。

③ 

設備投資も前年比マイナス

民間企業の設備投資は、生産性向上に向けた

投資などはあるものの、前年の工場新設などの

反動から製造業と非製造業のいずれもマイナス

になったとみられる。

当研究所が4月に実施した19年度県内企業設

備投資計画調査によると、全産業の上期計画額

は85億600万円と前年同期比9・6%減と

なった。産業別にみると、製造業は、投資額の

大きい窯業・土石が増加し、金属製品や一般機

械も生産性向上や省エネルギー化に向けた投資

専門量販店販売額は、ドラッグストアが比較

的高い伸びを維持したがホームセンターは天候

不順の影響などから季節商品の動きが鈍くマイ

ナスが続いた。家電大型専門店も4~6月期は

前年に設置工事の遅延がみられたエアコンを早

期に発注する動きが活発となったことなどから

前年を上回ったが7月はマイナスとなった(前

頁図表2)。また、コンビニエンスストア販売額

も上期前半はプラスの動きとなったが足許で前

年割れとなった。さらに、百貨店・スーパー販

売額は、百貨店は主力の衣料品が振るわなかっ

たことなどから前年割れが続き、スーパーも前

半はプラスとなったものの主力の飲食料品が振

るわなかったことなどから足許でマイナスとな

り、全体として弱い動きとなった。

乗用車新車登録・販売台数は、登録車(普通

車・小型車)が8月は減少したものの、前年に

発覚した一部メーカーによる無資格検査問題に

伴う落ち込みの反動のほか、新型車種の投入効

果もありプラス基調が続いた。また、軽乗用車

も7月はマイナスとなったが、足許では二桁台

の増加となるなどプラス基調で推移した。

② 

住宅投資は前年を下回る

住宅投資は、主力の持家のほか、貸家と分譲

住宅もマイナス基調で推移し、全体として前年

を下回る水準となった。

4~7月の新設住宅着工戸数は前年同期比13・

4%減となった(図表3)。利用関係別にみると、

19 岩手経済研究 2019年10月号

岩手県内経済2019年度上期の回顧と下期の展望

経済解説

Page 5: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

図表6 鉱工業生産指数(季節調整値、2015年=100)年月

業種指    数 前期比(%)

2019/1~3 4~6 19/1~3 4~6鉱 工 業 総 合 102.4 104.8 △� 7.1 2.3鉄 鋼 99.6 103.8 △� 9.6 4.2金 属 製 品 104.3 106.4 △� 2.7 2.0は ん 用 機 械 138.9 144.4 △�15.8 4.0生 産 用 機 械 132.1 126.0 5.8 △� 4.6電 子部品・デバイス 77.4 80.8 △�26.1 4.4情 報 通 信 機 械 96.6 106.6 △� 5.6 10.4輸 送 機 械 102.6 100.8 △� 9.9 △� 1.8窯 業 ・ 土 石 94.9 89.8 △� 5.9 △� 5.4化 学 84.2 114.7 10.9 36.2プ ラ ス チ ッ ク 製 品 130.5 125.8 0.0 △� 3.6パ ル プ ・ 紙 86.7 89.6 △�16.3 3.3繊 維 85.7 85.4 △�12.8 △� 0.4食 料 品 93.0 98.5 △� 0.3 5.9注 4~6月は速報値による資料:県調査統計課

図表7 JA全農いわて共販野菜出荷状況年月

品目

2019年4月~8月 前年同期比数量 金額 単価 数量 金額 単価

t 百万円 円 % % %キ ュ ウ リ 6,324 1,544 244 △� 1.5 △�23.7 △�22.5ピ ー マ ン 3,312 1,306 394 12.4 △�11.6 △�21.4キ ャ ベ ツ 10,470 839 80 18.7 △� 0.5 △�16.1ト マ ト 3,163 747 236 9.1 △�20.2 △�26.9ホ ウ レ ン ソ ウ 989 533 538 △� 5.5 △�14.5 △� 9.5レ タ ス 4,234 479 113 4.0 △� 3.9 △� 7.5ミ ニ ト マ ト 922 442 480 19.3 △�20.5 △�33.3サ ニ ー レ タ ス 1,157 261 226 9.4 1.0 △� 7.7そ の 他 5,218 1,461 280 △� 1.6 △� 9.5 △� 8.0合 計 35,789 7,613 213 7.3 △�13.8 △�19.7注 1.単価は1㎏当たり2.四捨五入のため合計は一致しない場合がある

資料:JA全農いわて

期比7・3%増となった。一方、出荷金額はキュ

ウリやホウレンソウは数量減に加え安値相場と

なったことから二桁台のマイナスとなり、ピー

マンやキャベツなども数量は増加したものの単

価下落を補えず、全体では同13・8%減となっ

た(図表7)。

また、東北農政局の19年産水稲の作柄状況(8

月15日現在)によると、本県の作柄は田植期以

降概ね天候に恵まれ、初期成育が順調であった

ことなどから、県全体では同日段階において3

年連続の「やや良」となった。

た。食料品は水産缶詰が引き続きサバ缶を中心

に堅調な生産となったほか、ブロイラー加工品

もプラスで推移し、1~3月期の小幅マイナス

のあと4~6月期はプラスに転じた。

⑥ 

野菜の金額は安値相場から前年割れ

農業は、JA全農いわての共販野菜出荷状況

(4~8月)をみると、数量ではキュウリやホ

ウレンソウなどが低温や日照不足の影響でマイ

ナスとなったものの、キャベツやトマトなどは

生育が順調であったほか前年の反動からプラス

となり、ピーマンも作付面積が増加したことな

どが寄与して前年を上回るなど全体では前年同

ス傾向が続いた。4~8月の前払金保証対象公

共工事の請負額累計は、2002億6000万

円で前年同期比26・4%減となった(前頁図表

5)。発注者別にそれぞれ国は防波堤工事やトン

ネル工事、県はふ頭用地埋立工事、市町村は病

院新築工事などの大型工事があったものの、前

年の道路工事や海岸災害復旧工事などの反動か

らいずれもマイナス基調で推移し、独立行政法

人等も前年を大きく下回る水準が続いた。

⑤ 

生産活動は持ち直しの動き

生産活動は、輸送機械や窯業・土石などがマ

イナス基調で推移したが、主力の食料品が増加

したほか電子部品・デバイスもプラスとなり、

全体として持ち直しの動きとなった。4~6月

期の鉱工業生産指数(季節調整値)は104・

8で、前期比2・3%増となった(図表6)。

主な業種をみると、輸送機械は一部の車種の需

要に一服感がみられたことなどから1~3月期

に続いて4~6月期もマイナスとなった。また、

窯業・土石もセメントは堅調な生産となったも

のの生コンやコンクリート製品が弱い動きとな

り弱含みとなったほか、生産用機械も金型は堅

調であったものの輸出向けの半導体製造装置な

どが振るわず4~6月期は減少した。一方、電

子部品・デバイスは足許でプラスとなったほか、

鉄鋼は銑鉄鋳物が産業用機械向けと日用工芸品

向けのいずれも一進一退となったが線材が増加

傾向となったことなどから全体ではプラスとなっ

岩手経済研究 2019年10月号 20

Page 6: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

図表8 主要6港の水揚状況項目 2019/4~8 前年同期比

数量 金額 単価 数量 金額 単価t 百万円 円 % % %

サ バ 類 9,491 639 673 56.9 48.9 △� 5.1ブ リ 4,195 616 1,468 47.5 33.4 △� 9.5タ コ 類 491 302 6,153 20.1 △� 8.6 △�23.9マ ダ ラ 910 255 2,805 △�51.6 △� 6.6 93.1スケトウダラ 2,386 178 746 317.4 453.3 32.6ス ル メ イ カ 357 169 4,718 △� 0.3 △� 2.8 △� 2.5コ ウ ナ ゴ 167 164 9,822 179.4 171.8 △� 2.7貝 類 3,458 153 442 △� 0.9 △� 5.0 △� 4.1そ の 他 6,403 1,035 1,616 △� 0.4 △� 0.5 △� 0.1合 計 27,859 3,510 1,260 6.5 △� 9.9 △�15.4注 1.四捨五入により合計が一致しない場合がある2.主要6港は久慈、宮古、山田、大槌、釜石、大船渡

資料:�県水産技術センター

図表9 主要観光地入込み客数年月

観光地2017/4~7 2018/4~7 2019/4~7

前年比 前年比 前年比千人 % 千人 % 千人 %

小 岩 井 農 場 156 2.3 148 △�4.7 167 12.2盛岡手づくり村 161 1.5 150 △�6.8 155 3.4龍 泉 洞 75 28.2 68 △�9.4 107 56.5えさし藤原の郷 52 △�2.4 55 4.8 65 19.6合� � � � � � � � 計 444 5.0 422 △�5.1 494 17.2注 1.前年比は前年同期比増減率2.四捨五入のため合計は一致しない場合がある

資料:当研究所調べ

図表10 雇用関係指標年月

項目2019年

1~3月 4~6月 7月有 効 求 人 倍 率(季調値、倍) 1.44 1.41 1.36新 規 求 人 倍 率(季調値、倍) 1.97 1.88 1.84新 規 求 人 数(原数値、人) 11,815 10,186 10,984前 年 同 期(月)比(%) △� 0.2 △� 5.8 △� 0.7

新 規 求 職 者 数(原数値、人) 6,461 5,884 5,066前 年 同 期(月)比(%) △� 1.4 △� 3.6 5.0

正社員有効求人倍率(原数値、倍) 0.89 0.85 0.89前年同期(月)差(ポイント) 0.03 △�0.01 △�0.03

注 新規求人数、新規求職者数は月平均資料:岩手労働局

下回ったものの75カ月連続の1倍超となり、連

続1倍台の過去最長記録を更新した。また、新

規求人倍率も1・84倍と引き続き高い水準を維

持したほか、正社員有効求人倍率も1~3月期

の0・89倍から4~6月期はやや低下したもの

の7月は再び0・89倍となった。雇用情勢は改

善基調にやや一服感がみられるものの引き続き

需給がタイトな状況が続いた(図表10)。

また、7月の新規求人を主な業種別にみると、

医療福祉は施設の新規開設などに伴ってプラス

となったほか建設業も内陸部を中心に増加し

た。一方、製造業は前年の反動でマイナスとな

り、宿泊・飲食サービス業なども前年を割り込

んだ。

に個人客が好調な動きとなり、盛岡手づくり村

は教育旅行が減少したもののその他の団体客や

個人客がプラスとなった。また、龍泉洞は県外

からのツアーの団体客などが増加し、えさし藤

原の郷もライトアップと桜の見ごろが重なった

ほか台湾や香港などの外国人旅行者が増加した

ことなどから二桁台のプラスとなった。なお、「盛

岡さんさ踊り」の人出は、期間を通じて好天に

恵まれたことなどから約149万人となり、こ

れまで最多であった15年の約139万人を上回っ

て過去最多となった。

⑨ 

求人倍率は引き続き高水準

雇用情勢は、労働需給状況を表す有効求人倍

率(季調値)が7月は1・36倍と4~6月期を

⑦ 

水揚げ数量は前年を上回るも金額はマイナス

漁業は、県内主要6港の水揚状況(4~8月)

をみると、数量は、マダラが前年の反動から大

幅なマイナスとなったが、サバ類やブリなどが

二桁台のプラスとなったほかスケトウダラも著

しい増加となり、2万7859トンで前年同期

比6・5%増となった。一方、金額は、サバ類

やブリが大幅な増加となったが、タコ類が安値

相場となったほか、マダラは単価が上昇したも

のの数量減を補えず、全体では35億1000万

円で同9・9%減となった(図表8)。

岩手県漁連がまとめた19年産養殖ワカメ共販

実績(5月末実績)によると、数量は1万72

7トンで前年同期比21・9%減、金額は32億4

100万円で同3・3%増となった。なお、県

水産技術センターによると19年度の秋サケの回

帰予測尾数は312万尾と震災前5年間の平均

値(836万尾)に比べ62・7%減となる見込

みであり、サンマについても、水産研究・教育

機構の予報によると漁期を通じた来遊量は前年

を下回る見通しとなっている。

⑧ 

観光地の入込み客数は前年を上回る

主要観光地の入込み客数(4~7月)は、49

万4千人で前年同期比17・2%増と10連休と

なったゴールデンウイーク中の入込みが寄与し

たことなどから二桁台のプラスとなった(図表

9)。小岩井農場は前年に入場料を一部で無料と

したことの反動はあったものの関東地方を中心

21 岩手経済研究 2019年10月号

岩手県内経済2019年度上期の回顧と下期の展望

経済解説

Page 7: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

財の価格高騰を招くことから米国自身の経済に

も悪影響が及ぶものといえる。実際に、8月に

は米国の債券市場において長期金利が急激に低

下して景気後退の予兆とされる長短金利の逆転

が発生した。これは、07年6月以来12年ぶりと

なるもので米国経済に対する先行き不安が市場

から示されたこととなる。トランプ政権は財政

支出の拡大などにより景気の底入れを図ってい

くとみられるが、今後は成長の減速が鮮明にな

ると見込まれる。

また、中国経済は、個人消費の動きが弱いも

のとなっているほか設備投資も低水準で推移し、

米国との貿易摩擦により輸出も大きく落ち込む

など減速が続いている。今秋には建国70周年を

迎えることなどから、景気の底割れを回避する

ため政府は減税やインフラ投資促進などの政策

的なてこ入れを展開していくとみられるが、米

国との貿易摩擦に収束の兆しがみられず引き続

き減速局面が続くとみられる。

欧州経済は、個人消費は雇用・所得環境の改

善などから底堅い動きとなっているが、自動車

を中心に生産や輸出は低調なものとなっている。

ただし、政府による財政支出の拡大やユーロ安

などから景気後退は避けられると予想される。

なお、英国のEU離脱問題については、同国で

離脱延期法案が成立したことから10月末での「合

意なき離脱」は回避されるとみられるが、今後

のEU側との交渉の行方などは見通せず、依然

下回った。失業率が低位で推移するなど雇用環

境は堅調であるほか賃金の伸びがプラスを維持

しており所得環境も良好なものとなっているこ

とから個人消費は底堅い動きとなっているもの

の、輸出の悪化や設備投資の減速が響いた。中

国との貿易摩擦については、6月に開催された

米中首脳会談を経て通商交渉が再開されたこと

を受けて対中関税の発動はひとまず回避された

かにみられたが、8月に入って米国のトランプ

大統領は第4弾の追加関税について発表し、9

月に発動した。対象となる品目のうち携帯電話

やコンピュータ、衣料品などは12月まで延期と

なったが、これまで発動された第3弾までの2

500億ドルに対する追加関税と合わせると米

国は中国からの輸入品のほぼすべてに対して追

加関税を課すこととなる。さらにトランプ大統

領は前述の2500億ドルに対する税率を10月

に25%から30%に引き上げることも発表し、事

態は泥沼化の様相を呈している。米中貿易摩擦

は米国が対中国の巨額の貿易赤字を問題視し、

中国による知的財産保護の問題や技術移転の強

要などにおいても進展がみられないことから制

裁関税を発動したものであるが、単なる二国間

の貿易問題に留まらず、世界における経済ある

いは政治などの覇権争いの様相を呈しており、

事態は長期化することが懸念されている。また、

対中制裁は貿易コストのアップを通じた輸入価

格の上昇へと直結し、企業の調達コストや消費

2.2019年度下期の展望

⑴日本経済は弱い伸びに留まる

日本経済については、情報化関連や人手不足

の深刻化を背景とした省力化関連などがけん引

して設備投資は依然としてプラス傾向が継続す

るとみられ、また、労働需給もタイトな状況が

続くほか所得環境も改善基調を維持していくも

のとみられる。また、消費税増税に伴う個人消

費の動向については、今回の増税については引

き上げ幅が2%と小幅であるうえ、飲食料品へ

の軽減税率やキャッシュレス決済に対するポイ

ント還元などの措置が講じられることから、本

稿執筆時点で2019年7~9月期のGDPは

不明であるが個人消費の大きな駆け込み需要が

みられない半面で増税後の落ち込みもそれほど

顕著なものにはならないと見込まれる。一方、

住宅投資がマイナスに転じるとみられ、また、

米中貿易摩擦に伴う両国経済の減速や半導体需

要の調整などで輸出も弱含みになることが予想

されるほか生産面にもその影響が波及すること

も懸念され、全体としては成長を継続するもの

の弱い伸びに留まると予想される。

海外経済についてみると、米国経済は引き続

き拡大を続けているものの足許では力強さをや

や欠いている。19年4~6月期の実質GDPは

前期比年率2・0%増と前期を1・1ポイント

岩手経済研究 2019年10月号 22

Page 8: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

図表11 2019年度改訂日本経済の見通し(実質ベース、%)

調査機関 実質GDP 個人消費 住宅投資 設備投資 公共投資 輸出等 輸入等政 府 0.9 0.9 0.6 2.5 2.6 0.5 2.3み ず ほ 総 合 研 究 所 0.6 0.3 △�3.2 1.0 3.3 0.3 0.6第 一 生 命 経 済 研 究 所 0.7 0.5 △�0.8 1.3 4.1 △�0.7 0.5大 和 総 研 0.8 0.7 0.6 1.1 3.4 △�1.9 △�0.2ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 0.6 0.4 △�0.3 1.3 4.0 △�1.6 △�0.0三 菱 総 合 研 究 所 0.8 0.8 △�1.0 0.9 4.4 △�1.8 0.3日 本 総 合 研 究 所 0.8 0.6 0.6 1.3 1.9 △�0.9 0.2日 本 経 済 研 究 セ ン タ ー 0.6 0.5 △�1.4 1.6 2.2 △�1.0 0.9三菱UFJリサーチ&コンサルティング 0.7 0.6 △�2.2 0.8 3.1 △�0.4 0.4

8機関平均 0.7 0.6 △�1.0 1.2 3.3 △�1.0 0.3注 1.�政府は2019年7月29日公表の「令和元(2019)年度内閣府年央試算」による2.各調査機関は2019年9月の発表による

などマインドの悪化が危惧される結果となった。

② 

住宅投資は弱い動き

住宅投資は、年度累計でみるとすべての利用

関係別でマイナスとなり、持家や分譲住宅は比

較的小幅に留まっているものの、貸家は二桁台

の減少となっている。今後は、北上市や花巻市

における貸家などで引き続き底堅い動きが期待

されるが、消費税増税が下押し圧力となり、総

じてみれば弱い動きになると見込まれる。

③ 

設備投資は前年を下回る見通し

企業の設備投資は、製造業はプラスとなる一

方で非製造業は減少し、全体としてはやや前年

同期を下回ると予想される。

当研究所が4月に実施した県内企業設備投資

計画調査によると、下期の設備投資計画額は前

年同期比1・8%の減少となっている。製造業

では金属製品と窯業・土石が高い伸びとなるこ

となどから同22・1%増となっている。一方、

非製造業はサービス業が減少するほか小売業も

二桁台のマイナスとなり、全体では同31・4%

減となっている。

④ 

公共投資は弱含み

公共投資は国の予算は前年を上回るものの県

は普通建設事業費が二桁台のマイナスとなるこ

となどから弱含みで推移するとみられる。東北

地方整備局の19年度予算をみると、総額は1兆

4億7400万円で前年比10・4%増、うち東

日本大震災特別会計は4017億1400万円

全体としては底堅い動きになると見込まれる。

公共投資については18年度第2次補正予算の執

行が進んでいくほか、19年度予算においても国

土強靭化対策が盛り込まれており、増加傾向が

続くとみられる。

なお、民間の主要経済調査機関の見通しによ

ると、実質成長率は単純平均で0・7%のプラ

ス成長となっている(図表11)。

⑵県内経済は足踏みの状況

こうした日本経済の流れの中で、県内経済は、

生産活動は持ち直しの動きとなるものの住宅や

公共投資が弱い動きとなるほか個人消費も一進

一退になるとみられ、全体として足踏みの状況

が続くと予想される。

① 

個人消費は一進一退の動き

個人消費は、引き続き労働市場が逼迫してい

ることなどを背景に雇用・所得環境の改善が続

いている一方、消費税増税による消費マインド

の悪化も予想され一進一退の動きになるものと

みられる。

5人以上規模の事業所の名目賃金指数(現金

給与総額)をみると、2018年4月から6月

の平均値は前年同期比0・6%増となり増勢が

継続している。一方、当研究所が7月に実施し

た「いわて景気ウオッチャー調査」によると、景

気の先行き判断指数が41・8と前回(48・3)を

6・5ポイント下回るなど、増税後の買い控え

として予断を許さない状況が続いている。

こうしたなか日本経済に目を移すと、住宅投

資はすでに増勢が鈍化しており、今後はマイナ

スに転じる公算が強いほか、輸出も足許では情

報通信関連などで底入れの兆しがあるものの全

体としては弱含みで推移するとみられる。また、

日米貿易交渉は両国の首脳会談によって原則合

意に達したが、具体的な品目や税率の決定は今

後の交渉次第であり、内容の妥結までにはなお

曲折がある可能性は残る。

家計部門では、消費税増税により消費マイン

ドが低下するとみられるが、引上げ幅が小幅であ

るほか、キャッ

シュレス決済

に対するポイ

ント還元など

の効果を家計

が実感するこ

とによりマイ

ンドの落ち込

みが緩和され

ていくと予想

され、また、駆

け込み需要は

限定的で増税

後の落ち込み

も顕著なもの

にはならず、

23 岩手経済研究 2019年10月号

岩手県内経済2019年度上期の回顧と下期の展望

経済解説

Page 9: 岩手県内経済 2019年度上期の回顧と下期の展望 · 乗用車新車登録・販売台数 2.4 2.8 0.1 3.7 乗用車新車登録台数 1.2 1.5 3.9 6.3 うち普通車

本県の出生数減少の要因について分析したい。

出生数を「女性人口」「出生率」「有配偶率(結

婚している人の割合)」「有配偶者の出産率」に

分けると左の式が成り立つ。こ

の式を基に、国勢

調査などによる197

5年(昭和50年)と2

015年(平成27年)

の女性人口や有配偶率

のデータを用いて両年

における出生数に係る

分析を試みた。具体的

な算出方法は、201

5年の出産適齢女性人

口(15歳~49歳)や出

生率などが1975年

と変わらないと仮定し

たときの出産数から実

際の2015年の出生数を差し引くことで、そ

れぞれの影響度合いを算出した(次頁図表12)。

結果をみると、本県の2015年の出生数は

1975年に比べて1万3306人の減少と

なっており、要因別では出産適齢女性人口の減

少が全体の42・1%を占め最も高いものとなっ

ている。また、出生率の変化の中では女性の有

配偶率の変化が24・9%となり、出産率の変化

の割合を大きく上回っている。つまり、本県の

出生数の回復にあたっては「出産適齢女性人口

機械は完成車において一部の車種でモデルチェ

ンジが予定されていることなどから増加してい

くものと予想され、生産用機械も国内の設備投

資需要はプラスで推移すると見込まれるほか、

半導体関連の生産能力の増強などから増加傾向

が続くとみられる。さらに、食料品も水産缶詰

は需要が根強く今後も堅調な生産が続くほか、

ブロイラー加工品もモモ肉の相場が一時の軟調

な状況から脱するなど需給が引き締まっており、

全体では底堅い動きが続くと予想される。

⑥ 雇用情勢は改善の動きが鈍化

有効求人倍率や新規求人倍率は引き続き1倍

台を維持しているものの足許ではやや落ち込ん

でおり、企業の厳しい景況感などを背景に今後

は改善の動きが鈍化するとみられる。

⑶本県における出生数減少に係る分析

「岩手県人口移動報告年報」によると、20

18年10月1日現在の本県の人口は124万5

22人となり、前年に比べ約1・4万人の減少と

なった。人口の増減における主な要因としては転

入や転出などの社会増減と出生や死亡による自然

増減があり、17年10月から18年9月までの一年

間の動きをみると、社会減が5200人、自然

減が9665人となり人口減少の影響としては

自然減の方が大きいことが分かる(近年の動向

については本誌巻末の「経済統計指標」を参照)。

そこで、ここでは国勢調査などのデータを基に

で同3・1%増と復興を推進する港湾整備事業

のほか国土強靭化の緊急対策として治水事業な

どの対応が進められることから前年を上回った。

一方、県の19年度の一般会計当初予算は総額9

355億200万円と前年比1・9%減となり、

東日本大震災後の24年度以降では最小規模となっ

た。このうち、普通建設事業費は震災対応分を

含め1847億7100万円と漁港の整備など

は増加したが道路や住宅関連が大幅な減少とな

り、全体では同10・7%減となった。

⑤ 生産活動は持ち直しの動き

生産活動は、電子部品・デバイスが弱含みと

なるほか窯業・土石などは一進一退の動きとな

るものの、主力の輸送機械が完成車においてモ

デルチェンジが予定されていることからプラス

基調になると予想されるほか、生産用機械も生

産能力増強を背景に増加し、食料品も堅調な生

産になると見込まれることから引き続き持ち直

しの動きになるとみられる。

電子部品・デバイスは新たな車載向け半導体

部品などの生産はあるものの民生品向けの海外

需要が振るわないことなどから弱含みで推移し、

窯業・土石は引き続き東京都やその周辺地域に

おける都市再開発などのプラス要因がある一方

で、復興道路工事や県南地域の大型工場建設の

反動のほか県の一般会計当初予算案では公共工

事関連はマイナスとなっていることなどから一

進一退の動きになると予想される。一方、輸送

注 符号の定義は以下のとおりtBi:t年におけるi歳女性による出生数 tFi:t年におけるi歳有配偶女性人口tPi:t年におけるi歳女性人口

岩手経済研究 2019年10月号 24

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図表12 本県の出生数減少の要因分析項   目 減少数 割合 内   容 算 出 方 法

1 出産適齢女性人口の変化 5,598 42.1% 2015年の女性人口が1975年と変わらないと仮定した場合の出生数−2015年の実際の出生数

2 出 生 率 の 変 化 4,714 35.4%2015年の出生率(有配偶率×有配偶女性の出産率)が1975年と変わらないと仮定した場合の出生数−2015年の実際の出生数

⑴ 女性の有配偶率の変化 3,315 24.9% 2015年の有配偶率が1975年と変わらないと仮定したときの出生数−2015年の実際の出生数

⑵ 有配偶女性出産率の変化 1,017 7.6%2015年の有配偶女性の出産率が1975年と変わらないと仮定した場合の出生数−2015年の実際の出生数

⑶ ⑴ と ⑵ の 重 複 部 分 382 2.9% ⑶=2−(⑴+⑵)

左記のとおり3 1 と 2 の 重 複 部 分 2,994 22.5% 1975年の出生数−2015年の出生数−(1+2)

合     計 13,306 100.0% 1975年の出生数−2015年の出生数注 式においては、1975年は「75」、2015年は「15」と表示資料:総務省「国勢調査」、岩手県保健福祉部「衛生年報」「保健福祉年報」

的な取組みが展開されることが期待される。

次に、国勢調査によって女性の有配偶率をみ

ると、1975年は68・8%であったが、20

15年は50・0%となり、近年の動きでみても

05年が54・2%、10年が51・5%と着実に低下

している。岩手県では今年度から10年間にわた

る「いわて県民計画」を策定し、その政策推進

プランの中で、安心して子供を産んで育児がで

きる環境を作るため、妊娠・出産・子育ての時

期において切れ目のない支援体制の構築などを

進めていくとしている。具体的には、県や市町

村、民間等が連携して結婚サポートセンターを

設置しマッチング支援や結婚情報の提供等を促

進するほか、妊娠・出産などについての総合的

な支援を行う子育て世代包括支援センターの設

置を進めていくものである。地域の経済活性化

や賑わいのあるまちづくりなど地方創生を進め

ていくためには定住人口を確保していくことが

重要であり、同計画に基づいた施策が着実に展

開されることがその実現につながるといえる。こ

れまでも本県の企業への就職支援や結婚や育児

をしやすい環境の構築に向けた施策はとられて

きたところであるが、産学官の知恵を集めた本

県産業や企業の周知に向けた取組みのほか、「い

わて県民計画」に基づいた実効性のある施策が

展開されることなどにより、出生数の低下傾向

に一定の歯止めがかかることを期待したい。

(地域経済調査部長 

沢田 

茂)

の維持あるいは増加」と「有配偶率の上昇」が

ポイントになることが分かる。

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によっ

て2018年の本県女性の社会増減を5歳階級

別にみると、社会減の合計3083人のうち、15

~19歳が857人(27・8%)、20~24歳は12

74人(41・3%)となり、両者で社会減全体

の約7割を占めている。このうち15~19歳につ

いては、高校を卒業して大学などに進学する時

期であるが、本県の進学者数と大学等の定員な

ど規模の関係から他都道府県へ流出することは

やむを得ない。また、大学等の定員が満たされ

ているという前提に立てば、本県の進学者が他

都道府県へ流出する分は他都道府県から進学者

が流入しており、例えば、本県に新たな大学が

立地することなどがなければこの年齢階級にお

ける現行水準の社会減は不可避のものといえる。

また、20~24歳については大学等を卒業して

就職する時期にあたり、この年齢階級の社会減

が最も大きなものとなっている。県内には、本

誌で連載している「我が社のイチオシ」にみら

れるように商品やサービスのほか技術面におい

ても特徴ある企業が数多くあるが、当該年齢層

への認知が浸透していないことが要因のひとつ

と考えられる。都会生活への憧れや大企業の安

定感といったイメージを変えることは短期的に

は難しいものの、本県の産業や個別の企業の若

者への周知に向けた産学官が一体となった継続

25 岩手経済研究 2019年10月号

岩手県内経済2019年度上期の回顧と下期の展望

経済解説