新潟県福祉保健部高齢福祉保健課1 新潟県福祉保健部高齢福祉保健課...

14
1 新潟県福祉保健部高齢福祉保健課 平成 平成 平成 平成24 24 24 24年度 年度 年度 年度新潟県小規模多機能型居宅介護 新潟県小規模多機能型居宅介護 新潟県小規模多機能型居宅介護 新潟県小規模多機能型居宅介護 及促進検議 及促進検議 及促進検議 及促進検議 結果 結果 結果 結果概要 概要 概要 概要 1 日場所 平成 24 年 7 30 日()13:30~16:00 とき 新潟 301会議室 2 出席者 (2名) 全国小規模機能型居宅介護事業者連絡会 事務局長 山越 孝 氏 新潟県小規模機能型居宅介護事業者協議会 代 表 小山 剛 氏 (3名) 斎藤内科 (ぴなす) 斎藤 忠雄 氏 ささえあい生協同組合新潟(ささえ愛あやま) 神保 桂子 氏 (福)吉田福祉会 (小規模機能みなみしだ) 佐々 美 氏 市町 (23名) 新潟市介護保険課 高齢者支援課 保健衛生総務課 長岡市介護保険課 長寿はつつ課 三市高齢介護課 新発田市高齢福祉課 糸魚川市福祉事務所 五市高齢福祉課 胎内市市民生課 弥彦住民福祉課 阿賀町保健年金課 出雲崎町保健福祉課 粟島総務課 事業者等 (214名) 小規模機能型居宅介護事業者(66人) その他事業者等(148名) 事務局 (8名) 新潟県福祉保健部高齢福祉保健課 課 長 小林 敬 副参事 小川 子 主 任 山元 々江 他5名 3 概要 (1) あいさつ (県高齢福祉保健課長) (2) 行 政 説 明 ① 地域包括について 事務局か地域包括と新設さた定 巡回随対応型訪問介護看護及び複合型について説明。 新潟県におけ小規模多機能型居宅介護の整備状況と及促進の取組について 事務局か県内の事業所整備状、介護基盤整備臨特例補助金、及び県のこまで の取組について説明。

Upload: others

Post on 17-Feb-2021

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 1

    新潟県福祉保健部高齢福祉保健課

    平成平成平成平成24242424年度年度年度年度新潟県小規模多機能型居宅介護新潟県小規模多機能型居宅介護新潟県小規模多機能型居宅介護新潟県小規模多機能型居宅介護

    サービスサービスサービスサービス普及促進検議普及促進検議普及促進検議普及促進検議 結果結果結果結果概要概要概要概要

    1 日時・場所

    平成 24 年 7 月 30 日(月)13:30~16:00

    ときメッセ 新潟コンベンションセンター 301会議室

    2 出席者

    アドバイザー

    (2名)

    全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会 事務局長 山越 孝浩 氏

    新潟県小規模多機能型居宅介護事業者協議会 代 表 小山 剛 氏

    パネリスト

    (3名)

    斎藤内科クリニック (ケアステーションるぴなす) 斎藤 忠雄 氏

    ささえあいコミュニティ生活協同組合新潟(ささえ愛あわやま) 神保 桂子 氏

    (福)吉田福祉会 (小規模多機能センターみなみよしだ) 佐々木 晴美 氏

    市町村

    (23名)

    新潟市介護保険課

    高齢者支援課

    保健衛生総務課

    長岡市介護保険課

    長寿はつらつ課

    三条市高齢介護課

    新発田市高齢福祉課

    糸魚川市福祉事務所

    五泉市高齢福祉課

    胎内市市民生活課

    弥彦村住民福祉課

    阿賀町保健年金課

    出雲崎町保健福祉課

    粟島浦村総務課

    事業者等

    (214名)

    小規模多機能型居宅介護事業者(66人)

    その他事業者等(148名)

    事務局

    (8名)

    新潟県福祉保健部高齢福祉保健課 課 長 小林 敬

    副参事 小川 智子

    主 任 山元 奈々江 他5名

    3 概要 (1) あいさつ (県高齢福祉保健課長)

    (2) 行 政 説 明 ① 地域包括ケアシステムについて

    ・ 事務局から地域包括ケアシステムと新設された定期

    巡回・随時対応型訪問介護看護及び複合型サービスについて説明。

    ② 新潟県における小規模多機能型居宅介護の整備状況と普及促進の取組について

    ・ 事務局から県内の事業所整備状況、介護基盤整備臨時特例補助金、及び県のこれまで

    の取組について説明。

  • 2

    (3) 講演 「サテライト型事業所」の運営のポイントについて

    (全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会事務局長 山越 孝浩 氏)

    まず、開設時の補助金について県から話があったが、他の多くの都道

    府県は 1,500万円を基準としている中、新潟県は 2,625万円としている。

    来年度は 1,500万円になると思われるため、開設をお考えの方は、今、

    始められた方がよいと思う。

    「サテライト型をやりたいと手を挙げても、保険者がやらせてくれな

    い」などの声を聞き、現在、当連絡会では、全国の市町村に市町村介護保険事業計画につい

    てのアンケート調査を行っている。

    「サテライト型」は、ほとんどの市町村で計画に盛り込まれていない、又は、認知されて

    いない状況にあるようだ。

    市町村の皆さんには、「サテライト型」が創設された意味を、事業者の皆さんには、何を実

    現するために「サテライト型」をやりたいのかを市町村に説明する必要性を、それぞれご理

    解いただきたいと考えている。

    現政権下では、2025年までに全国で 40万人分の小規模多機能型居宅介護をつくるとうた

    っているが、これは 1圏域当たり 250人分に相当し、これを目指して通常の小規模多機能型

    居宅介護を広げていくのは、経営面などにおいて困難な状況にあるということが「サテライ

    ト型」創設の背景にある。

    国に提案した時点では「ライフサポートセンター構想」としていたが、「サテライト型」の

    コンセプトは、利用者がサービスに集約されるのではなく、サービスが利用者のより近くに

    出向くことである。

    経営効率を考えると、大規模にするほどスケールメリットが働くというのが介護保険の仕

    組みだが、併せて、サービス利用者にとって居心地のよい場所や時間を作り出すためには、

    単に定員を増やすのではなく、より身近に出向いていくための拠点を増やしていく、つまり、

    「運営の規模は倍増し、ケアの単位はより小さく、身近に」という考えが盛り込まれている。

    また、これまでの介護観では、できなくなった部分だけを抜き出して支援してきたが、介

    護だけでなく地域生活に焦点を当てた支援をしていくという発想が、今まさに実践されてい

    る小規模多機能型居宅介護のサービスの中身なのではないかと思う。

    賃貸料の高い都市部での事業所確保のため、1軒家は無理でも集合住宅や団地の 1室を確

    保することはできるのではないか。

    経営効率の悪い過疎地でのサービス確保のため、フルセットのサービスでなくてもよけれ

    ば、サービス進出が可能ではないか。

    「サテライト型」の発想は、都市部でも過疎地でも有効である。

  • 3

    国に提案の結果、1本体につき 2ヵ所まで「サテライト型」ができることとなった。

    管理者と看護師とケアマネは本体と兼務できるため、比較的、楽に開設することができ、

    経営効率を上げることができる。

    「サテライト型」の定員の上限は、登録 18人、通い 12人、宿泊 6人である。

    ケアマネでなくとも計画作成担当者になれるなど、条件が緩和されて「サテライト型」を

    つくりやすいようになっている。

    本体と「サテライト型」の距離は概ね 20分と示されているが、20分を守ることが大事な

    のではなく、サービスがない地域にどうやったらサービスをつくることができるかという目

    線で、自治体の方にも柔軟に考えていただきたい。

    ここで、具体的な事例を紹介する。

    福井市の「ほのか」という事業所は、私の知る限り全国で一番早く、平成 24 年 4 月から

    「サテライト型」を開設した。

    もともと小規模多機能型居宅介護を 1ヵ所、小規模デイサービスを 2ヵ所やっていたもの

    を、小規模デイサービスを 2ヵ所とも「サテライト型」に転換したものである。

    転換の理由としては、小規模多機能型居宅介護の側からは、サービス利用回数の調整困難、

    ニーズの増加など、デイサービスの側からは、認知症の利用者のリロケーションダメージの

    解消、デイサービスのサービス費・提供時間等の見直しの影響などがあげられている。

    平成 23年 11月の時点から「サテライト型」への転換について福井市、福井県との話し合

    いを始めていたとのこと。

    実際に移行する際には、要支援の方は包括報酬となるので利用料が高くなってしまう、こ

    れまでのケアマネの理解が得にくく、引き継ぎが難しいといった問題があった。

    また、当初は本体をオールマイティ型、「サテライト型」のひとつを通い中心で重度型、も

    うひとつを通い中心で軽度型というイメージを抱いていたが、実際には利用される方の状態

    によるためイメージどおりにはならなかった。

    将来的には、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、若しくは、複合型サービスの展開も見

    据え、必要であれば事業体を変えながら、地域のニーズに柔軟に対応し、この日常生活圏域

    を「ほのか」が支えていこうと考えているとのこと。

    最後に冒頭の話に戻るが、新潟県内でも市町村格差が広がっているのが実情ではないか。

    市町村の皆さんは、住民サービス向上のための目安として計画を作っているはずであり、住

    民の状況に合わせて計画の見直し、再検討ということも柔軟にお考えいただきたい。厚生労

    働省にも確認したが、「厚生労働省に指導権限はないが、住民や事業所の実情を市町村当局に

    伝えていただきながら、柔軟に計画変更していただけるよう相談を進めていただくとよいの

    ではないか」とのことだった。「サテライト型」や複合型サービスをお考えのところは、利用

    者さんの顔を思い浮かべて、どうやったらそれが実現できるかという発想をもって進めてい

    ただきたい。

  • 4

    (4) パネルディスカッション

    「小規模多機能型居宅介護って、どこまで応えられるの?」

    取組発表①

    (斎藤内科クリニック(ケアステーションるぴなす) 斎藤 忠雄 氏)

    なぜ、介護のプロの前で医者が話をするかというと、通院患者さんからデイ

    サービスなどで幼児扱いされて傷ついたという話を聞き、また、一人暮らしや

    認知症の方がいつまでも地域で暮らせるなんて、厚生労働省の甘い言葉にだま

    されて小規模多機能型居宅介護を始めたからで、おそらく県内で医者が小規模

    多機能型居宅介護をやっているのは私だけだと思う。

    やってみると小規模多機能型居宅介護は経営が難しく、私のところではクリ

    ニックの敷地内で、小規模デイサービスを併設してやっているが、単体でやっ

    ていくのはまったくたいへんである。

    今日のテーマは「小規模多機能型居宅介護って、どこまで応えられるの?」だが、これか

    ら多くの事業所で看取りをしていくために、どうすれば医者を巻き込んでいけるか。

    どんどん医療依存度の高い方が利用されるようになるので怖いと思うが、皆さんは介護の

    プロなのだから、医療処置を覚えるのではなく、どういうときに医療者に伝えるかをいろん

    な勉強会に参加して学んでいけばいいと思う。

    在宅医療には治療とともに介護が必要だが、国は在宅医療という名の下に医師会に丸投げ

    したために、医者は介護を全く知らぬままこれだけ遅れてしまった。

    今年度の医療と介護の同時報酬改定では、医師会を一つの職能団体とみなすという国の方

    針が示され、医者は治療を一生懸命やりなさい、介護は介護の専門職が頑張りなさい、それ

    ぞれの職能団体が頑張るためには連携が必要ですよと言っている。

    今年は在宅医療の幕開けの年であり、国は大きな舵取りをしたわけで、ぜひ、皆さんに小

    規模多機能型居宅介護に取り組んでいただきたいと思う。

    看とりには、病気になったら病院でという常識をパラダイムシフトといって変更しなけれ

    ばならないが、病院から地域へのシフトの中に小規模多機能型居宅介護は位置している。

    ここで、皆さんに小規模多機能型居宅介護の「多」という字の意味を考えていただきたい。

    山口県周防市に「夢のみずうみ村」という 80人規模のデイサービスがあり、ここはバリア

    フリーでなく、バリアアリー(利用中は杖などに頼らず、机や障害物を伝って移動する、食

    事は自分で取りに行くなど)を提唱していて、私のところでも取り入れている。

    上げ膳据え膳にしてしまうとどんどん忘却の世界にいってしまうし、50 人の施設ならば

    流れ作業の方が簡単だろうけれども、小規模・多機能だから流れ作業にはしない。

    多機能の「多」というのは、通い・訪問・宿泊の 3つのサービスという意味だと思われる

    と思うが、基本的にはそれぞれの人の人間らしさ、多様性を表している。

  • 5

    これまで、13人の方を看とり、そのうち 6人ががん患者さんだったが、皆さん、痛みなく

    過ごされ、最期までお酒や季節の行事を楽しまれた。

    スタッフみんなで手を握ってお別れすることで、いわゆる死の教育ができ、スタッフが死

    というものをきちっと受け止めて、普段からどういうケアをしたらいいかというレベルが変

    わってくるので、ぜひ皆さんの事業所でも看取りをして欲しい。

    小規模多機能型居宅介護ってなんなのか、通い・訪問・宿泊が顔なじみの同じスタッフに

    よって行われる、そして地域の中で安否確認を実践できる、すなわち、看取りの場として非

    常に重要な役割があるのではないか。

    そう考え、小規模多機能型居宅介護とサービス付きの住まいを考えていたが、国でも厚生

    労働省と国土交通省が手を組んで「地域包括ケアシステム」を示してきた。

    また、地域包括ケア体制について、医療関係を所管する医政局と介護保険を主管する老健

    局、これまでは厚生労働省内でも連携がとれていなかったが、一緒に地域のシステムをつく

    っていきましょうということになった点で非常に画期的である。

    介護の方では、今後、地域包括支援センターが中心となって、医療と介護が地域ケア会議

    を開催して、行政もどんどん関わってやっていくことになっている。

    在宅医療連携拠点事業は、地域包括支援センターと在宅医療連携拠点が一緒に地域を支え

    る仕組みである。

    私自身もそういうネットワークをやっているが、利用者さんを中心としたネットワークの

    トップを担うのがケアマネであり、ケアマネが優秀でないと成り立たない。

    医療と連携がとれるケアマネと組んで、生活支援ネットワークを構築し、さらにかかりつ

    け医と皮膚科などの専門医がネットワークをつくって関わる仕組みを実践している。

    在宅医療連携拠点事業がうまくいくと、各地にこうしたネットワークができ、連携拠点が

    できてこれをつないでいく、そういった形になっていくのではないか。

    最初にお話ししたように、小規模多機能型居宅介護の皆さんが医療技術を習得するのでは

    なく、25 人登録であれば相当数のかかりつけ医がいるわけで、管理者が先生方に声をかけて

    チームを作ってもらう。

    県内では実例がないが、熊本市で始まっている取組みであり、数人でも先生が集まってく

    れれば、まずは小さな連携チームをつくって支えてもらえばよい。

    最後になるが、自宅から移り住んでサービスを受ける場合、住まいの問題がある。

    一般的なサービス付き高齢者向け住宅は 15 万円から 20 万円もかかってしまうので、生活

    支援のインフォーマルサービスが付属したお年寄りだけの共同住宅で、8 万円くらいでやっ

    ていけるものがつくれればいいなと思っている。

    介護保険というフォーマルなサービスと、インフォーマルなサービスを足していくことが

    地域包括ケアシステムをつくるためには大事だと考えている。

  • 6

    取組発表②

    (ささえあいコミュニティ生活協同組合新潟(ささえ愛あわやま) 神保 桂子 氏)

    市民がみんなでつくった法人ということで、これから話をさせていただく。

    高齢者生活協同組合といって、全国 33 都道府県で活動しているが、平成

    15 年にその連合会から新潟県でもつくらないかという話があった。

    高齢者生協では、「寝たきりにならない、しない」「元気な高齢者がもっと

    元気に」「一人ぼっちの高齢者をなくそう」という 3 つのスローガンを掲げ、

    自助・共助・公助を融合していく形で、また、営利目的ではなく協同労働と

    いって、「みんなで一緒に出資する、みんなで一緒に働く、そして経営にも同

    じく責任を持っていく」という新しい働き方だった。

    これならば、ささえ合う福祉のまちづくりが実現できるのではないかと夢を描いて歩み始

    めた。

    まず、平成 17年 7 月に任意の福祉事業所を開業したが、その際には回覧板を回して、地域

    の方々からずいぶんと支援いただいた。

    誰もが気軽に集えるところであろうと期待してくださったのだと思う。

    約 9 か月間、組合員のボランティアで、デイサービスとショートステイを運営しているう

    ちに関心のある方が集まり、ささえあい生協設立に向けての運動が少しずつ広まって、平成

    18 年 2 月にささえあいコミュニティ生活協同組合新潟として設立に至った。

    24 時間 365 日のサービスであるところに魅力を感じたので、小規模多機能型居宅介護に的

    を絞り、生協設立の約 2ヶ月後に任意の事業所を閉じて「ささえ愛あわやま」を開設した。

    開設に当たって地域の方からいろいろないただき物をしたほか、事業が軌道に乗ってそれ

    までの建物が手狭になったので、運営推進委員や民生委員に相談したところ、物件を探して

    くれ、交渉までしてくれた。

    大家さんも理解があり、家財道具を寄付いただいたほか、10 年ぐらいは賃貸料は不要とし

    てくださり、本当にありがたいことである。

    小規模多機能型居宅介護のサービスは利用者の満足度が高いだけでなく、介護に当たる職

    員も働いていて楽しいということを確信し、組合員からの空き家の提供もあって、順に秋葉

    区に「きたかみ」、江南区に「わりの」を開設となった。

    その後、思いがけないことが起きた。

    「あわやま」を見学された 60 代、70 代の 4 人の主婦グループが、やがて自ら小規模多機

    能型居宅介護「下山」を開設されたのである。

    そのきっかけを伺ってみると、「私自身、年をとったら最初はどこかの施設に入るしかない

    のかなと考えていた。でも、小規模多機能というのがあるのを知って、その考えを止めた。

    この地域にいたい、ずっと自分の家に住んでいたい、それなら元気でいる今、地域のために

  • 7

    何ができるのだろう。そして将来、年を重ねてもずっとこの地域で暮らしたい、そういった

    環境や将来への道を作りたいと思った。」とのことだった。

    私たちも一生懸命お手伝いしたが、4人の女性達は昼も夜も説明会を開いて地域と丁寧に

    関わり、候補地がなかなか決まらずに苦労もされたが、開業資金を集め、市役所への申請を

    こなした。

    「自治会長の応援や民生委員の協力、役所の理解、そういったものが力になった」、また、

    「多世代との交流の中で人はいきいきと生きられるのだから、年齢を超えて安心した暮らし

    ができるようにみんなで協力して住みやすい地域をつくっていきたい」と話しておられた。

    開業後は運営推進委員として協力いただいている。

    その後、新発田市に「ゆう」を開設し、佐渡市の「あいの山」も「下山」を参考に取り組

    んで、よい形で開設できたのではないかと思う。

    「あいの山」では、土地の提供者がみつかり、「あわやま」の視察、地域の説明会、ヘルパ

    ー講座の開講などを経て、出資金・協力金も集めた。

    また、佐渡市の協力もいただき、市主催の講演会も盛大に行われた。

    ささえあい生協の小規模多機能型居宅介護の特徴は、「協同労働を実践していく場」である

    ことで、公平で民主的な運営を心がけている。

    60代、70代の職員もおり、年齢が高くても体力に応じた仕事ならいくらでも可能だとい

    うことを実感している。

    事業所の近辺から職員を雇用すると好都合なことも多く、また、1つの事業所で 20数名の

    雇用が担保されるということもあり、積極的に開設してきた。

    開業資金の内訳は資料のとおりだが、「あわやま」の開業資金はほんの 135万円、開業後

    必要な 500万円を組合債で何とか用意したが、1年半後には全額を返済し、今に至っている。

    (事業所の日常について、写真を用いて紹介)

  • 8

    取組発表③

    ((福)吉田福祉会(小規模多機能センターみなみよしだ) 佐々木 晴美 氏)

    地域の中で自分らしく生活したいという利用者をスタッフと一緒に支

    えている日々の実践を発表する。

    吉田福祉会は旧吉田町を中心に事業を展開しており、旧吉田町をおお

    まかに南北に分けて 2ヵ所の小規模多機能型居宅介護を開設している。

    現在、中心部にもう 1ヵ所開設予定であり、この秋には小学校区に 1

    ヵ所ずつ小規模多機能型居宅介護ができることとなる。

    「みなみよしだ」は平成 18年 4月に開設し、翌年には定員 6人の小さなグループホーム

    を併設した。

    登録者とごく近所の希望者を対象に状態に合わせた形態の配食弁当を配っており、登録者

    には安否確認を兼ね、また、必要に応じて食事介助を行っている。

    他の事業所もグループホームと配食サービスの併設である。

    定員は、登録 24名、通い 12名、宿泊 7名で、現在は男性 7名、女性 17名が登録。

    現在の利用者の介護度は、要介護3以上の中重度者が全体の 4分の 3を占めているが、こ

    の中で特養入所を申し込んでいるのはごく数人で、みなさん、在宅で生活をしたいというご

    希望で関わらせていただいている。

    近年の利用回数を比較すると、訪問の回数が着実に増えている。

    平成 24 年 6 月の平均は、通いで定員を超過しているが、ニーズに合わせたサービス提供

    をしているので、朝来て、ご飯を食べると帰られる方や、自宅改修などやむを得ない事情の

    方のため、延べ人数では定員を上回ったものである。

    平成 22 年と 23 年登録解除の状況を比較すると、23 年には亡くなられて介助となった方が

    3 名おり、自宅で亡くなられた方が 2 名、退院を目前に亡くなられた方が 1 名である。

    また、医療を選択し、入院によって登録解除となる方が 1名だけだが少なくなった。

    入所については著変ないが、グループホームを併設しているので、環境を変えずにグルー

    プホームへの入居が可能となっている。

    可能な限り住み慣れた自宅で自分らしく暮らしたいという希望があり、自分らしい生活っ

    て何なんだろうと考えると、自分で考えて自分で行動する、結果、いきいきとした暮らしが

    できるのではないか。

    ここで、事例を紹介したい。

    認知症で一人暮らし、以前、発表したときには要介護1だったが、要介護 2 に進行した方。

    薬の飲み忘れがあり、食事が作れないため、栄養に大きな偏りが出ている。

    近くのコンビニでパンをたくさん買うが、買ったことを忘れてしまうので、部屋の隅やタ

  • 9

    ンスの引き出しからパンがたくさん出てくる。

    洗濯ができず、季節に合わせた衣類が選べない、猛暑になってからもガスストーブがつい

    ていたことがあるなど、季節や時間の感覚がない。

    朝 7時に迎えに行き「みなみよしだ」で朝食を摂り、内服してもらう。

    薬は朝 1回にしてもらって着実に飲めるようにしている。

    家で好きなことをしていたいので、朝食後に自宅に送るが、お昼にお弁当を持っていくと

    「おはよう」と言って起きてきて、お昼だと伝えると、「朝だと思ってた」と。

    午後 3時に見守りに伺うが、ゴミが溜まるとドラム缶で燃してしまい、ご近所からの苦情

    となるため、弁当容器が溜まらないように容器を回収し、一緒に室内を掃除して、ゴミは「み

    なみよしだ」に持ち帰っている。

    「みなみよしだ」で入浴し、季節に合わせた衣類の提供と洗濯をしている。

    次に、パーキンソン病で要介護3、同居家族がいるが、病気の進行とともに薬の効果のあ

    る時間が短くなってきたと感じている方。

    庭を散策したり、好きなことがしたいが、急に全く動けなくなるため、そういうときに必

    要なサービスを受けることで、自宅での生活が継続できている。

    自宅で急に動けなくなった場合は、携帯電話で「みなみよしだ」に連絡をもらう。

    最近は夜、眠るサイクルになったが、以前は夜も伺っていた。

    介護者の負担を泊まり利用で軽減しながら、在宅生活が継続できている。

    最後に、多発性脳梗塞で一人暮らし、要介護 4の方。

    這って生活するのがやっとの状態であり、食事の準備も、排泄もできないが、よそに泊ま

    りに行くのは嫌だと言う。

    自宅では、地域の方が一日何回も声をかけてくれ、昨年、「みなみよしだ」の登録者で要介

    護 5だった奥さんをこの家で看とられた。

    生活全般を支えることで、自宅での生活が継続できている。

    朝・昼・夕・夜に食事・排泄のお手伝いに伺うが、お昼と夕食は弁当を持参し、食べるこ

    とは自分でできるので、食べ終わったら容器を箱に入れる片付けはしてもらっている。

    また、「おとなりさんコール」といって、コールボタンを押すと電話回線で通話できるもの

    があり、それを使って日中夜間とも随時の訪問をしている。

    訪問するとご近所の方いらして、私たちの関わらない時間帯のことを教えてくれる。

    入浴の時だけ通い、入浴後は家に帰るが、「近所の友達も高齢だ、やっとうちに遊びに来る

    のに自分が家にいないと申し訳ない」というご本人の気持ちを尊重している。

    私たちが訪問すると、ご近所の方が「どうしたー?いたかねー?」と声をかけてくださり、

    ご利用者が「寄って、いきなせやー」と声をかける。

    中重度になると通いの時以外は外出しないという人もいるが、通いの時間を見計らって近

  • 10

    所の方がおうちのそばで待っていて、「元気そうで何よりだね」と声をかけてくださる。

    当たり前の暮らし、今までの暮らしが継続できる喜びを持ちながら生活するお手伝いをさ

    せていただくのが小規模多機能型居宅介護の役割だと思っている。

    ご利用者が料理などを教え育てた若い職員の退職に当たり、「娘を嫁に出すみたいだ」と話

    され、職員と利用者を超えた関係性ができていたと実感した。

    地域の行事にはこちらから入れてもらうことが多かったが、今年初めて、地域の花植えに

    自治会から声をかけて呼んでいただいた。

    また、地域の方だけでなく、何かあれば燕市に相談し、助言や協力をいただいている。

    私たちがご利用者を支えられるのも、地域や皆さんから支えてもらっているからであり、

    地域に私たちがお返しできること、花植えや草刈り、クリーン作戦などにご利用者と一緒に

    出て行きたいと考えている。

    現在はグループホームに入居された方だが、小規模多機能型居宅介護を使って一人暮らし

    をしていたとき、いつも通っていた道が工事で通れなくなったことをきっかけに、地域との

    関わりができない、迷子になるといったことを地域の方が教えてくれた。

    地域から情報をもらいながらやってきたが、できることが少なくなってしまい笑顔が消え

    てきたので、グループホームへの入居となった。

    グループホームでもご希望があれば最期まで対応させていただいている。

    看取りを経験したことで、スタッフの人を見る目が養われたと感じている。

    先ほどご紹介した要介護5のおばあさんは、ほとんど通うことができなかったが、訪問し

    たスタッフの報告から、私にも状況がよくわかった。

    今回、小規模多機能が 3ヵ所となることで、さらに地域を絞って訪問しやすくなると思う。

  • 11

    意見交換・質疑

    (コーディネーター 新潟県小規模多機能型居宅介護事業者協議会 代表 小山 剛 氏)

    【小山】

    最初に簡単なまとめから入るが、まず、こんなに大勢

    の方が小規模多機能型居宅介護に興味をもたれているこ

    とに感慨無量である。

    「地域包括ケアシステム」を提唱し、小規模多機能型

    居宅介護の創設に関わってきた。

    2025年、いわゆる団塊世代が 75歳を迎える年に向け

    た日本の社会保障政策の中身に、中学校区に2ヵ所、中

    学校区は概ね1万人のことを指すので5,000人に1ヵ所必要という数字が示されているのに、

    整備率はまだまだそんなに多くない。

    そういった状況が続いてきた中で、今日これだけの人数が小規模多機能型居宅介護に興味

    を持たれているというのは、すごいことと改めて感心している。

    もう一つの大きな流れとして、斎藤先生が紹介された在宅医療連携拠点事業の意味合いを

    しっかりおさえるべきである。

    6月半ばに国の認知症プロジェクトチームから認知症施策の方向性が示されたが、ケアの

    流れを変えなければいけない、在宅医療・在宅介護・地域の人たちの見方、そういったもの

    を中心に見直しが必要とされている。

    これまでの反省から、自宅からグループホーム、グループホームから病院へ移って亡くな

    るというのでなく、最初から現在の生活のある場所で診断を受けて、必要なサービスの提供

    を受けると書いてある。

    その一翼を担っているのが間違いなく小規模多機能型居宅介護であり、政策も変わってき

    ているというのが現実である。

    在宅で死ぬというのは非常に大きな課題で、看とるサービスがないとできないが、小規模

    多機能型居宅介護も、医療をふまえた複合型サービスも、24時間の訪問看護も介護もある。

    そうした生活を守る側の仕組み、或いは医療を守る側の仕組みをみんな統合して、全体で

    看ていくと看れるんじゃないか、そうしないと病院から退院できない。

    8 割強のお年寄りが病院でなくなっている今、1 万人の世界で使っている介護保険は 6 億

    円(そのうち要介護者は 400 人で、その半分が重度)だが、かたや医療費は 29 億円超であ

    る。

    その原因は病院で亡くなるからであり、在宅で亡くなるという話は、医療保険にも大きく

    絡む話でもあり、大きな見直しを行っている理由なんだろうと思っている。

    小規模多機能型居宅介護は生活の連続性をみるというのが原点にあり、比較的軽いレベル

    から最期までというという支え方もあるし、病院からの退院者をみるという方法もあるが、

    根本的には利用者がどうされたいかである。

  • 12

    もう一つ意識改革がないのは、最期は必ず家族が看ると誰もが思っているらしいこと。

    働いていれば、顔を出すことはできるが、仕事を休んで日常的な介護は無理である。

    だからこそ、定額制の介護や看護ができているわけだし、小規模多機能型居宅介護や複合

    型サービスがあって、中心でドクターが判断するという仕組みが連携する。

    そして、一人でも住める住宅をつくるというのがサービス付き高齢者向け住宅の考え方で

    あり、そういった状況が一気に進んでいる中で、重要なキーパーソンが小規模多機能型居宅

    介護だと思っている。

    【小山】

    斎藤先生が 1万人いると日本の社会が変えられる

    と思うのだが、医師との連携のポイントはあるか。

    【斎藤】

    小規模多機能型居宅介護や地域包括支援センター

    が中心となって、顔の見える関係をつくっていくこ

    とが大事であり、心ある先生をつかまえて、ひとり

    ずつ増やしていく。

    【小山】

    連携には、お互いの力量が並び、共通言語が通用する必要があると思うが、介護は医療の、

    医療は介護の勉強をしていかないとならないのではないか。

    【斎藤】

    私自身の「にいがた在宅ケアねっと」でも訪問看護、ヘルパー、薬局などみんな一緒に勉

    強会をしているが、そういったことがとても大事なのではないかと思う。

    【小山】

    介護報酬は介護だけの対価なので、神保さんのところの設備投資を抑えて地域の資源を活

    用するというのは適切な方法だと思う。

    生協の組合員でなくともサービス利用できると思うが、その辺のバランスはどうなってい

    るのか。

    【神保】

    利用者の半数くらいは組合員になってほしいと県から指導は受けているが、365日 6年間

    サービス利用されていても組合員でない方もいる。

    【小山】

    佐々木さん発表の在宅死の事例について、開業医の先生の関わりについて教えて欲しい。

  • 13

    【佐々木】

    私たちが関わる以前からのお付き合いの開業医と訪問看護が関わり、ご家族の行き来が困

    難だったので、私たちでも支えきれない時間は地域の方や家政婦さんをお願いした。

    そういったチームで、何かあるごとに先生の診察に合わせてみんなが集まって話し合いを

    繰り返した。

    【会場】

    理念に共鳴して開設したが、経営状態がたいへん厳しい。

    皆さんの事業所の収支はどうか。

    【斎藤】

    実は、借入をしてボーナスを支払った。

    通いの定員を遵守し、原則連泊はしないという基準でやっていくと、登録は 21 人くらい

    が限界で 25人まで伸ばせない。

    重ねて、医療依存度が高いと入院となってしまうケースも多いため。

    【神保】

    6 事業所のうち、私が担当している「あわやま」は順調に収支が上向いてきたが、これは

    職員全員のコスト感覚がないとできないことである。

    例えば、泊まりがいないと涼しい顔はできず、2 人か 3人泊まりがあると安心する。

    運営推進会議で諮った上で、長期の泊まりの方も受け入れているが、現在は 3 人ほどの方

    が連泊である。

    しかし、他の事業所で地域の理解が得られず、町内会にも入れてもらえないところは苦戦

    している。

    【佐々木】

    グループホームを併設し、職員の兼務可能となってから収支が上向いたと聞いている。

    現在は、中重度者が多いのでそれほど厳しいということはないと思うが、平成 24年 4 月か

    らグループホームの夜勤者が 1 ユニット 1人必置となったので、収支に影響が出てくると思

    われる。

    【小山】

    私は社会福祉法人の立場なので、非課税団体は事業性をつくって、社会の皆さんが理解し

    て利用される段階まで引っ張る責務があると思っているが、新潟県では社会福祉法人ではな

    い方が頑張られるのでたいへんなところもあると思う。

    地域密着型サービスは、地域のニーズに基づいた地域の計画で、必要なサービス量が決ま

    っているので、後から「お金になりそうだから」と参入できるものではない。

    最初に風を切ってゴールを目指すのか、後からついてきてゴールテープもないところに追

    いやられるのか、わからないけれどもどちらを選ぶのかはニーズに基づいてやるべきだろう

  • 14

    と思っている。

    最後に山越さんからまとめをしていただく。

    【山越】

    斎藤先生からお話があったところをまとめに換えさせていただく。

    通い定員は、国のQ&Aでは一時的に超えることはかまわないとなっていて、緊急利用や、

    夏祭りのような一度に集うことに意義がある催しのような場合が該当する。

    佐々木さんが工夫を紹介されていたが、要望に応えるのではなくて、ニーズ(必要性)に

    目を向けると、8 時間の通いではなくて、入浴のため午後 2 時間だけの方や、午前中家族が

    不在の間だけの方もいる、平均が定員を超えるのはそういう理由だというお話だった。

    延べ人員では定員超過だが、同時に利用した最大数は定員までに収めるというような工夫

    の仕方もあるので、単に家族の要望どおりにサービスを提供するのは、ある意味ケアマネと

    しての工夫がないということ。

    毎日通わせて欲しいという要望の中に、必要性を読みとくのがいわゆるケアマネジメント

    で、そこで知恵をどれだけだせるのかという視点、それをどうコーディネートできるのかと

    いう発想が大切。

    次に、連泊はダメという話があったが、解釈通知にも法令にもどこにも書いていないこと

    で、小規模多機能型居宅介護については泊まりの上限は一切ない。

    泊まらせっぱなしがいいという意味ではないが、佐々木さんが最後にお話しされたグルー

    プホームに入居された事例だが、あの方がグループホームに入居せずに小規模多機能型居宅

    介護に泊まり続けていても、もちろん問題ない。

    「みなみよしだ」の中で培ってきた人間関係を活かしながら支援できれば、夜の何時間か

    をどこで寝るかはたいした問題ではないわけで、泊まるという夜間の過ごし方を、一日の流

    れの中でみたときに、その方の何を大切にするのかを考えることがポイント。

    そう考えると、地域包括ケアというのは、本人が真ん中にいて、その本人に合わせてサー

    ビスを提供する側が変わっていく、そこが小規模多機能型居宅介護の強みであり、本来、制

    度に求められている役割なのではないか。

    我々は制度が示されるとそれに合わせるのが役割だと考えがちだが、そうではなくて本人

    のために制度が変わっていくことが求められている。

    小規模多機能型居宅介護は、外国から輸入してきた仕組みではなく、草の根的に始まって

    いる取組や社会福祉法人の先行投資をあらためて形にしたもので、実践ありきである。

    そう考えて、あまり殻に閉じこもるのではなくて、のびのびとしながら、目の前の利用者

    のために、国や県や市を変えていくことができるのか、皆さんの合意形成の下に進めるとい

    うことが大切なのではないかと思う。

    【小山】

    ここで終了としたいと思うが、次に会うときには、事業者仲間として会えることを楽しみ

    にしている。