経営ビジョンと連動した...

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経営ビジョンと連動した 人事賃金制度の設計ポイント Contents 1│経営戦略・経営ビジョンと連動した人事賃金制度の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2│職務・役割・業績ベースの賃金制度設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3│業績向上に軸を置いた人事考課制度の構築 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4│業績と連動した賞与制度を導入する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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Page 1: 経営ビジョンと連動した 人事賃金制度の設計ポイント経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント 5 企業経営情報レポート [役割等級フレーム]

経営ビジョンと連動した 人事賃金制度の設計ポイント

Contents

1│経営戦略・経営ビジョンと連動した人事賃金制度の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2│職務・役割・業績ベースの賃金制度設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3│業績向上に軸を置いた人事考課制度の構築 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4│業績と連動した賞与制度を導入する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

企 業 経 営 情 報 レ ポ ー ト

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 1

>>>経営戦略から展開する人事賃金制度

経営戦略を軸として経営管理の全体像を表したのが下図である。

「経営理念」や「経営ビジョン」といった「あるべき姿」と経営環境分析に基づく「現

状の姿」を基に「事業ドメイン」すなわち、自社がどのような事業分野に取り組むのかを

決定する。

あるべき姿を具体的に目標として表し、そのギャップをどのように埋めるかを全体レベ

ルで捉えたのが基本戦略である。この基本戦略を基に部門ごとあるいは部門に共通する機

能ごとに戦略を立てていく。各々の戦略をどのように実行していくか、内容と時間、担当

を割り当てて経営計画を作成する。この計画をもとに日々の業務を遂行していく上で、計

画との乖離を把握し調整していくのが業績管理システムである。この一連の流れを繰り返

すことによって長期、中期、単年度、日々の業務といったスパンでの管理が可能となるの

である。

経営戦略・経営ビジョンと連動した人事賃金制度の

方向性 1

経営理念経営ビジョン

事業ドメインの明確化

基本戦略

部門別・機能別戦略

経営計画

業績管理システム

経営管理ピラミッド

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 2

次に重要なことは、経営戦略、事業戦略、機能別戦略を構築することである。組織は戦

略に従い、人事賃金制度は戦略を達成するための手段となる。

①企業戦略

多くの事業部を抱えている多角化企業は、ここの事業における戦略を考えるだけで

はなく、企業全体としての舵取りを考えなければならない。例えば、どんなビジネ

スに参入すべきかを検討したり、事業のポートフォリオ(組み合わせ)や経営資源

の有効配分を検討したりする。これが企業戦略である。

②事業戦略

事業戦略は、個々の事業分野における戦略のことをいう。標的とする市場や競合相

手が企業戦略より鮮明に見えてくるので、それらを分析し、具体的にその市場のニ

ーズを満たす方策や競合相手との差別的優位性の構築方法などを検討することがで

きる。

③機能別戦略

機能別戦略とは、事業戦略をさらに事業部の各部門に落とし込んだものであるとい

える。例えば営業部、総務部、購買部などの職能分野ごとの戦略である。

本社

企業戦略

事業部A

事業部B

事業部C

営業部

購買部

総務部

事業戦略

機能別戦略

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 3

>>>経営ビジョンと連動した制度の方向性を決定する

新たな人事賃金制度を構築する際にまず考えるのは、「何に対して賃金を払うか」を決定

することである。また、社員がやる気を起こす動機付けとして人事賃金制度が機能するた

めにはどうしたらよいかを検討する。

経営サイドから見た賃金決定の枠組みには以下の種類が考えられる。人事賃金制度と自

社で重要な賃金支給の軸を照らし合わせて方向性を決定することが望ましい。場合によっ

ては2種類の複合型の人事賃金制度となる場合もありえる。

賃金決定の要素として考えられるものは「属人要素(年齢、学歴)」「能力」「職務」「成

果」「役割・責任」などである。

職 種 内 容

総合決定給

社長が下記の能力を総合的に判断して賃金決定する。中小企業に

多く見られる。

①社内の序列

②世間相場

③自社の支払能力

柔軟に賃金決定できるというメリットがある反面、社長の顔色だ

けをうかがうイエスマンが増えるなど弊害も大きい。

職務給

職務の市場価値をはかって賃金を決めようとする方式。欧米で採

用されている。

「職務=賃金」となるため、属人的要素で昇給は発生しない。

逆に人事異動による職種転換によって賃金がアップダウンする

ことになるので、人事異動が困難になるデメリットがある。

職能給

職務遂行能力に応じて賃金を決定する。現在、日本の主流となっ

ている賃金制度。

従来の日本の雇用形態にマッチしていたが、環境変化により機能

不全に陥りつつある。軌道修正が必要。

役割給・責任給

役割と実力で賃金を決定する。期待される役割に対し、どれだけ

実力を発揮したかで賃金決定するため、合理性・納得性が高い。

役割の明確化と達成度基準設定が必要となる。

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 4

>>>役割と直結した等級制度の設計

賃金制度の枠組みを決定した後は等級制度を設定する。等級制度とは社員をいくつかの

階層に区切ることであり、社員の成長ステップをランク付けすることでもある。どの人事

賃金制度を採用するかによって等級制度も変わるが、基本的には等級の概念を「等級フレ

ーム」でまとめ、等級要件の詳細を記述書で決定することになる。

各等級の定義を明確にできるかどうかが重要なポイントとなる。職能資格制度が年功化

してしまった大きな要因として、職能等級フレームの等級定義のあいまいさが挙げられる。

明確に等級の違いを定義できなければ無理に細分化すべきではない。

[等級フレーム設計プロセス]

職務・役割・業績ベースの賃金制度設計 2

何に対して賃金を支払うか決定

社員のランク分けの軸を決定

大きな階層に分ける

それぞれの階層をさらに細分化する

細分化された階層の違いを定義する

等級フレームへの落とし込み

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 5

[役割等級フレーム]

職種・職位 階 層 等級 役 割 等級定義

一般職 総合職 専門職

(総合職)

会社の基幹事業、中枢機能の統括責任者として経

営陣の意思決定を補佐し、担当部門の中長期的な

業績と成長性を確保する。

部 長

6 部門統括

(専門職)

業界内において際立った技術レベルを有し、担当

部門の中長期的な技術向上に貢献できる。

次 長

マイス

ター

(総合職)

会社の方針を掌握し、担当課の任務に照らして最適

な組織目標を設定・実行し、その業績達成に必要な

精度環境を整備し、期間業績を確保する。

課 長

管理職

5 課内統括

(専門職)

社内最高レベルの技術を有し、貴社の業績に貢献

するとともに、専門部門の技術向上に貢献できる。

課 長

代 理

エキス

パート

(総合職)

上司を補佐しながら、自己及び担当部門の仕事の

任務・目標を設定し、同僚と問題意識を共有しなが

ら計画的に成果を実現する。

係 長 チーフ

中間

指導職 4 業務推進

(専門職)

高度な専門知識と技術を要し、担当部門の業績に

貢献し、後輩の技術指導養成を行う。

3 上級業務

担当

判断を伴う上級業務を担当する。各人の役割に基

づいて職場に基づいて職場をリードし、下級者の模

範となって成果を実現する。

係長補 係長補

2 中級業務

担当 応用を伴う業務を担当し、自己完結できる。 主 任 主 任

実務職

1 初級業務

担当

(一般職)

上司の指示に従い、業務を担当する。 - -

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 6

>>>職務・役割・業績ベースの賃金制度を設計する

賃金制度を設計する際には、「何に対して賃金を支払うか」という方針を基本として検討を進める。

賃金の構成要素をどのように組み直すかも検討が必要である。賃金の構成の組み合わせとしては以下の

ようなイメージとなる。

[賃金構成の組み合わせイメージ]

基本給

属人部分

勤続給

年齢給

非属人部分

能力給

職務給

成果給

役割給

賞 与 固定部分 業績連動部分

手 当

家族手当

属人部分

住宅手当

非属人部分

役職手当

職種別手当

都市手当

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 7

>>>基本給について

基本給は賃金制度の根幹をなす部分である。したがって基本給決定の枠組みをどうする

かは非常に重要な点となる。

前記のイメージどおり「属人部分」と「非属人部分」の組み合わせとするのか、「非属人

部分」だけとするのかも検討が必要である。

これまでの賃金制度の主流は「並存型職能給」であった。すなわち「年齢給」「勤続給」

といった属人要素と「職能給」という非属人要素の組み合わせである。

しかしながら今日、非属人部分であるべき職能給までが年功という属人要素によってほ

ぼ決定されてしまっているという問題に直面している。

したがって、基本給は属人要素を排除した非属人要素だけで構成されるもののほうが望

ましいといえる。業種や社員の年齢構成によっても適する基本給の軸は異なるが、「役割」

を中心に基本給を決定することが今日の社会環境に適していると考えられる。

[基本給を決定する際のポイント]

●基本給には属人要素をいれず、並存型ではなく一本化する。 ●属人的要素は手当でカバーする

次に基本給ピッチについて。

まず考えなくてはならないのは、「定期昇給」という概念が本当に必要かということであ

る。基本給ピッチを設定するということは基本的に「定期昇給あり」と考えることになる。

社員に対して自分の将来設計をある程度見せる意味では「定期昇給」すなわち「賃金表」

「モデル賃金」は大きな意義を持つ。

しかし経営サイドからすると不安定な企業業績と定期昇給の概念は相反するものとなる。

賃金表を作成するか、しないかがひとつの検討ポイントとなる。

基本給ピッチをどの水準に設定すべきかについては一概に決められないが、企業の支払

い能力、現状の基本給ピッチ、同業他社との比較、生計費への配慮を考慮した上で決定す

ることになる。

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 8

賃金表を設計する場合は以下のような段階号俸表を使用する場合が多い。

【賃金表(段階号俸表)】

5 号俸昇給

1等級 2等級 3等級 4等級 5等級 6等級標準滞留年数 8 3 3 4 9 15標準年齢 18 26 29 32 36 45習熟昇給 3,500 4,000 4,500 5,000 5,500 5,500昇格昇給 ------- 0 0 0 0 0

1号俸 149,500 177,500 189,500 203,000 223,000 272,5002号俸 150,200 178,300 190,400 204,000 224,100 273,6003号俸 150,900 179,100 191,300 205,000 225,200 274,7004号俸 151,600 179,900 192,200 206,000 226,300 275,8005号俸 152,300 180,700 193,100 207,000 227,400 276,9006号俸 153,000 181,500 194,000 208,000 228,500 278,0007号俸 153,700 182,300 194,900 209,000 229,600 279,1008号俸 154,400 183,100 195,800 210,000 230,700 280,2009号俸 155,100 183,900 196,700 211,000 231,800 281,30010号俸 155,800 184,700 197,600 212,000 232,900 282,40011号俸 156,500 185,500 198,500 213,000 234,000 283,50012号俸 157,200 186,300 199,400 214,000 235,100 284,60013号俸 157,900 187,100 200,300 215,000 236,200 285,70014号俸 158,600 187,900 201,200 216,000 237,300 286,80015号俸 159,300 188,700 202,100 217,000 238,400 287,90016号俸 160,000 189,500 203,000 218,000 239,500 289,00017号俸 160,700 190,300 203,900 219,000 240,600 290,10018号俸 161,400 191,100 204,800 220,000 241,700 291,20019号俸 162,100 191,900 205,700 221,000 242,800 292,30020号俸 162,800 192,700 206,600 222,000 243,900 293,40021号俸 163,500 193,500 207,500 223,000 245,000 294,50022号俸 194,300 208,400 224,000 246,100 295,60023号俸 195,100 209,300 225,000 247,200 296,70024号俸 195,900 210,200 226,000 248,300 297,80025号俸 196,700 211,100 227,000 249,400 298,90026号俸 197,500 212,000 228,000 250,500 300,00027号俸 198,300 212,900 229,000 251,600 301,10028号俸 199,100 213,800 230,000 252,700 302,20029号俸 199,900 214,700 231,000 253,800 303,30030号俸 200,700 215,600 232,000 254,900 304,40031号俸 201,500 216,500 233,000 256,000 305,50032号俸 234,000 257,100 306,60033号俸 235,000 258,200 307,700

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 9

一方賃金表を作成しない場合は、毎年個別に基本とする昇給額を決定し「昇給マトリッ

クス」により等級別・評価別の昇給額を決定することになる。経営側にとっては優れてい

る賃金管理スタイルである反面、社員にとっては将来設計の描きにくい賃金体系となるの

で、社員のモラルダウン、定着率の低下などに対して別の配慮が必要となる。

【昇給額の比率配分】

【昇給額の実額配分】

昇給原資ありの場合(%ベース)S A B C D

30% 6等級 200% 170% 140% 0% -140%25% 5等級 180% 155% 130% 0% -130%20% 4等級 160% 140% 120% 0% -120%15% 3等級 140% 125% 110% 0% -110%10% 2等級 120% 110% 100% 0% -100%10% 1等級 110% 100% 90% 0% -90%

分布 2.5% 22.5% 60.0% 15.0% 0.0%

昇給原資ありの場合(金額ベース) 5,000 円S A B C D

6等級 10,000 8,500 7,000 0 -7,0005等級 9,000 7,750 6,500 0 -6,5004等級 8,000 7,000 6,000 0 -6,0003等級 7,000 6,250 5,500 0 -5,5002等級 6,000 5,500 5,000 0 -5,0001等級 5,500 5,000 4,500 0 -4,500分布 2.5% 22.5% 60.0% 15.0% 0.0%

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 10

また、定期昇給の保証をしないとしても、ベースとする昇給金額の目安は設定し、モデ

ル賃金をシミュレーションしておくことは大切である。

>>>手当について

手当についても賃金制度の見直しと合わせて整理統合をしたほうがよい。

先に基本給は極力俗人的な要素は排除したほうがよいと説明した。その代わり、手当で

属人要素をカバーする。属人的手当として存続させたほうがよいものは「家族手当」「住宅

手当」程度である。非属人手当については、役職手当、その他に残業見合い分の手当、職

務そのもののつらさに対する手当は必要であろう。

Aモデル Bモデル等級 在級年数 満勤続年数 基本給 ピッチ 等級 在級年数 満勤続年数 基本給 ピッチ1 1 0 155,000 - 1 1 0 155,000 -1 2 1 160,000 5,000 1 2 1 159,500 4,5001 3 2 165,000 5,000 1 3 2 164,000 4,5001 4 3 170,000 5,000 1 4 3 168,500 4,5001 5 4 175,000 5,000 1 5 4 173,000 4,5001 6 5 180,000 5,000 1 6 5 177,500 4,5002 1 6 185,500 5,500 1 7 6 182,000 4,5002 2 7 191,000 5,500 2 1 7 187,000 5,0002 3 8 196,500 5,500 2 2 8 192,000 5,0002 4 9 202,000 5,500 2 3 9 197,000 5,0002 5 10 207,500 5,500 2 4 10 202,000 5,0002 6 11 213,000 5,500 2 5 11 207,000 5,0003 1 12 219,250 6,250 2 6 12 212,000 5,0003 2 13 225,500 6,250 2 7 13 217,000 5,0003 3 14 231,750 6,250 3 1 14 222,500 5,5003 4 15 238,000 6,250 3 2 15 228,000 5,5003 5 16 244,250 6,250 3 3 16 233,500 5,5003 6 17 250,500 6,250 3 4 17 239,000 5,5004 1 18 257,500 7,000 3 5 18 244,500 5,5004 2 19 264,500 7,000 3 6 19 250,000 5,5004 3 20 271,500 7,000 3 7 20 255,500 5,5004 4 21 278,500 7,000 4 1 21 261,500 6,0004 5 22 285,500 7,000 4 2 22 267,500 6,0004 6 23 292,500 7,000 4 3 23 273,500 6,0004 7 24 299,500 7,000 4 4 24 279,500 6,0005 1 25 307,250 7,750 4 5 25 285,500 6,0005 2 26 315,000 7,750 4 6 26 291,500 6,0005 3 27 322,750 7,750 4 7 27 297,500 6,0005 4 28 330,500 7,750 5 1 28 304,000 6,5005 5 29 338,250 7,750 5 2 29 310,500 6,5005 6 30 346,000 7,750 5 3 30 317,000 6,5005 7 31 353,750 7,750 5 4 31 323,500 6,5006 8 32 361,500 7,750 5 5 32 330,000 6,5006 9 33 369,250 7,750 5 6 33 336,500 6,5006 10 34 377,000 7,750 5 7 34 343,000 6,500

役定6 11 35 384,750 7,750 役定5 8 35 349,500 6,5006 12 36 392,500 7,750 5 9 36 356,000 6,5006 13 37 400,250 7,750 5 10 37 362,500 6,5006 14 38 408,000 7,750 5 11 38 369,000 6,5006 15 39 415,750 7,750 5 12 39 375,500 6,5006 16 40 423,500 7,750 5 13 40 375,500 0

Page 12: 経営ビジョンと連動した 人事賃金制度の設計ポイント経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント 5 企業経営情報レポート [役割等級フレーム]

経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 11

人事考課制度は社員に対する会社のメッセージである。社員に対して求めるものが人事

考課制度の中に盛り込まれ、社員に伝えられなければならない。等級ごとに何を強く求め

るかを検討し人事考課制度を決定する。下記のような表を作成し整理するとよい。

20 歳代 30 歳代 40 歳代 50 歳代

管理職 能力+部門の

成果

部門の成果+

部下育成

部門の成果+

後継者育成

中間管理職 能力+チーム

の成果 チームの成果 チームの成果 チームの成果

一般職 態度+能力 能力+個人の

成果 個人の成果 個人の成果

評価の要素としては以下の項目から選択し設計する。

[評価の要素]

●態 度(情意)

仕事に対する取り組み姿勢。若年層には必要。

●能 力

本人が保有している能力。職能要件の明確化が必要。

●成 果(成績)

仕事の量(スピード)、質(正確さ)という一般的な項目から、個別に成果測定要素

(売上、粗利等)を設定し測定する場合もある。

●コンピテンシー

仕事ができる人材の行動特性を抽出し比較を行う。最近注目されている評価手法。

人事考課制度は企業の業績向上につながるものでなくては意味がない。ここでは業種ご

とに業績評価をどのように行ったらよいか例を挙げてみた。

>>>製造業の場合

製造業の職種は、製造部門と管理部門に分けられる。製造部門は個々人の業績、成果の

業績向上に軸を置いた人事考課制度の構築 3

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 12

測定は困難である。したがって業績評価を組み立てる際には、チーム単位、工場単位の業

績が主体となる。要素としては「生産性向上」「コストダウン」「ミス削減」「納期」といっ

たものが代表的である。

また、個人ごとの技術については、比較的短期間で向上がストップしてしまう職務内容

も少なくない。したがって賃金は「職務」に対して支払われるべきであり、職務分析が重

要になる。

製造部門 管理部門

業績評価単位 チーム / 工 場 全 社

業績評価基準

生産性

品質向上

納 期

経常利益

個人評価基準 職 務

コンピテンシー

目標管理

コンピテンシー

>>>卸売業のポイント

卸売業については、一般的に営業部門、仕入部門、管理部門が中心になる。多くの卸売

業では、営業部門を主体に置いて賃金制度を組み立てることになる。営業所長や営業部長

といったマネージャー職は売上高、粗利が業績責任として挙げられる。また重要な指標と

して売掛金回収や在庫管理が挙げられる。また業績指標は以下の3つの基準で考える選択

肢がある。

①目標、予算に対する達成度

②前年(あるいは過去)実績に対する伸張度

③業績や指標の絶対額

製造部門 管理部門

業績評価単位 部 門 / 個 人 全 社

業績評価基準

売上高

粗 利

売掛金回収

在庫回転率

経常利益

個人評価基準

売上高

粗 利

売掛金回収

コンピテンシー

目標管理

コンピテンシー

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 13

>>>小売業のポイント

小売業は店舗の規模にもよるが、店舗管理者、販売職、バイヤー、スーパーバイザー、

管理部門で構成されます。店舗の業績は、店長とパート社員の活用による部分が大きい。

特に店長の能力により業績が左右される。店長にどこまで責任と権限を与えるかが戦略上

重要になる。理想的には、営業利益まで責任を持つと同時にほとんどのコストをコントロ

ールできる権限を与えることが望ましいといえる。また業績評価について、一番職員数が

多い販売職については個人業績を把握するのは難しいのが実態である。したがって業績評

価は店舗単位となる。

販売職 バイヤー スーパーバイザー 管理部門

業績評価単位 店 舗 担当商品 担当店舗 全 社

業績評価基準

売上高

粗 利

人事売上高

在庫回転率

売上高

粗 利

売上高

粗 利

人事売上高

在庫回転率

売上高

粗 利

個人評価基準 職 務

コンピテンシー

売上高

粗 利

新商品開発

コンピテンシー

売上高

粗 利

人事売上高

在庫回転率

情報提供

コンピテンシー

目標管理

コンピテンシー

>>>建設・不動産業のポイント

建設・不動産業は扱う商品が高額になるため、業績のブレも大きくなる傾向にある。営

業職に関しては実力の格差が顕著に表れます。賃金体系は営業部門の個人業績を中心に組

み立てることになる。設計などの技術職は能力レベルを判定するための基準、工事の現場

担当者については、物件ごとの目標収益の達成度を判定できるシステム作りがポイントで

ある。

また、建設といっても、一般住宅、請負い工事など事業の中心をどこにおいているかに

よってそれぞれの特徴がでる。営業職に関しては、月例給に個人業績連動の仕組みを取り

入れることも有効であろう。

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 14

営業部門 設計部門 工事部門 管理部門

業績評価単位 部 門

個 人 全 社

部 門

個 人 全 社

業績評価基準

売上高

粗 利

件 数

売上高

粗 利 粗 利

売上高

粗 利

個人評価基準

売 上

粗 利

コンピテンシー

能 力

工法改善

コンピテンシー

粗 利

コンピテンシー

目標管理

コンピテンシー

【一般的な人事考課表事例】

日常の服務規律の遵守度合い。定められた諸規則、諸規程、さらには上司の指示を守った程度のことを言う。職場での申し合わせ事項も含む。

* *B10

C8

D6

* *B10

C8

D6

* *B10

C8

D6

自分に与えられた守備範囲を守ろうという意欲、姿勢 の度合い。 自分の役割や立場を自覚し、自分に期待され、求められているものを全力を傾注して果たそうという態度、行動のことをいう。

*A10

B8

C6

D4

*A10

B8

C6

D4

*A10

B8

C6

D4

チームの一員として、他人の守備範囲をカバーする行動の度合い。仕事や目標を達成するため、上司、同僚、後輩といった人たちと協力しあい、仕事に取り組もうとする態度、行動のことをいう。

*A10

B8

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D4

*A10

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*A10

B8

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改善提案、職務拡大、自己啓発など、「今または現状以上に」といった意欲と、姿勢の度合い。困難な状況の中でも、敢えてチャレンジしようとする姿勢。

*A10

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D4

*A10

B8

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*A10

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上司から指示された仕事の出来映え、仕事の内容の充実度、正確性、信頼性、効果性、効率性の評価。

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D2

S10

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上司から指示された仕事を遂行した度合い。達成率、増減率、時間、期限等の評価。

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下位者の知識、技能の向上、または動機付け、意識向上の成果の度合。

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当人が格付けされている、あるいは、組織における位置付けに対し、期待し、求められる知識・技能の充足度。

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情報の取捨選択能力、情報比較、識別評価統合・整合し,状況に適合した仕事の手段、方法を決めたり、また、変化への適切な対応処理ができる。

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S10

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担当する仕事の目的を達成する為に、その方法、手段を効果的に立案し、とりまとめ、展開しうる能力。

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S5

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仕事を進める上で、他人と折衝し、自分の意図、考えを相手に説明し、理解納得させる力。

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【特記事項】

1次考課者

成 績 考 課

能  力  考  課

中間指導職 昇格・昇給用氏           名 所    属所      属

被考課者

対象期間 平 成 年 月 日 ~ 平 成 年 月 日

計 点計 点 計 点

指導・育成・監督

知 識 ・ 技 能

企 画 力

人 事 考 課 表

判 断 力

折 衝 力

仕 事 の 量

情   意   考   課

規 律 性

考 課 要 素

考 課 項 目

責 任 性

2次考課者

協 調 性

積 極 性

仕 事 の 質

自己評価 1次考課 2次考課定            義

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 15

【コンピテンシーを活用した人事考課】

グレード

夏季賞与用

10

配点

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10

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10

10

10

10

10

16 年度

10

10

10

10

10

10

10

10

C群・対人

(顧客

)・営業

10

10

相手の限界、今後の行動パターンをおおよそ予測している

顧客拡大力現在の顧客に、新商品やサービスを新たに提案し、顧客の売上・利益を拡充できる

B群・変化行動・意思決定

顧客維持力 現在の顧客と友好な関係を維持できる力

新規開拓力 新しい顧客を増やす力

準備不足でもまずは行動している

傾聴力 注意深く、相手の身になって話を聞く

プレゼンテーション力伝えようとしている内容を、的確かつ説得力を持って表現している

10

条件交渉力 組織を代表して社外の人と接し、協力・理解を取りつける

親密性/ユーモア親しみやすく話しやすい/ポジティブなユーモアのセンスがある

第一印象最初に会って1分以内の、他人に対して好印象を与える本人の言動

タイムリーな決断不十分な情報、スケジュールのもとでも素早く決定している

チャレンジ性 斬新なテーマや、高い目標に果敢に取組んでいる

素直さ 相手の意見や指摘をまずは受け入れる

自己革新(啓発)

自己の足りない部分や知識・技能を、自ら積極的に受け入れている

リスクテイク失敗の可能性があっても、思いきって可能性のあることに冒険を試みる

柔軟志向 状況変化に効果的に対処している

自立志向個人的な責任から逃げず、難しい仕事を任されても一人で平気である

10

10

一流のビジネスマンとして恥ずかしくない立ち振る舞いをしている

A群・自己の成熟性

所属

自己評価 1次考課 2次考課

考課対象期間月 日~ 月 日

仕事や他人に対して、まじめで真心がこもっている

困難な状況にあっても、落ち着いて物事に動じない

慎重さ メリット・デメリットを考え、注意深く行動する

徹底性 一度決めたことは、途中で投げ出さず何度でも繰り返して行う

ビジネスマナー

物事をすみずみまで気をつけ、きちんとしている

平成

考課要素

氏名

人事考課表

被考課者

考課項目定    義

冷静さ

誠実さ

几帳面さ

行動志向

人物評価

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 16

【目標管理型人事考課表】

* *B15

C12

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* *B15

C12

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* *B15

C12

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*A15

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*A15

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*A15

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*A15

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S5

A4

B3

C2

D1

2次考課 最終決定

チームの一員として、他人の守備範囲をカバーする行動の度合い。良好な人間関係を維持しながら、チームプレイに取り組もうとする態度、行動のことをいう。

改善提案、職務拡大、自己啓発など、「今または現状以上に」といった意欲と、姿勢の度合い。困難な状況の中でも、敢えてチャレンジしようとする姿勢。

人 事 考 課 表

情   意   考   課

規 律 性

考 課 要 素

考 課 項 目

責 任 性

協 調 性

積 極 性

所      属

被考課者

対象期間 平 成 年 月 日 ~ 平 成 年 月 日

一般職用氏           名 所    属

個 別 目 標

小計(60点満点)

ウェイト(%)

1次考課 2次考課 最終決定

1次考課者

定            義

日常の服務規律の遵守度合い。定められた諸規則、諸規程、さらには上司の指示を守った程度のことを言う。職場での申し合わせ事項も含む。

自分に与えられた守備範囲を守ろうという意欲、姿勢の度合い。 自分の役割や立場を自覚し、自分に期待され、求められているものを全力を傾注して果たそうという態度、行動のことをいう。

2次考課者

1次考課

成 績 考 課

小計(40点満点) ①の合計    点② ②の合計÷(ウェイト×5点 合計)×40          点

期賞与用

備考

ウェイト×点数

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 17

人件費を流動化、変動費化させるもっとも有効な手段が賞与である。業績賞与制度を導

入することによって、総額人件費管理に活用するとともに、社員のモチベーション喚起に

も活用することができる。

>>>業績賞与の類型

業績連動型賃金制度の組み立て方には大きく分けて2種類ある。

月例給、賞与とも変動させる方法と賞与のみを業績連動化する方法である。

>>>業績賞与の類型

全社業績、部門業績、個人業績を月例給与、賞与ともに反映させる方法。

月例給与には個人別の業績を反映し、賞与には全社、部門、個人業績を反映させる。営

業職の業績給、あるいは業績手当などになる。給与への業績反映期間は毎月、あるいは3

ヶ月単位が妥当。あまり変動する幅を大きくすると社員の定着率が低下する可能性を含ん

でいるので変動額への配慮が必要。

<業績手当例>

S A B C D E F

部 長 160,000 140,000 130,000 120,000 110,000 100,000 80,000

次 長 120,000 105,000 97,000 90,000 83,000 75,000 60,000

課 長 80,000 70,000 65,000 60,000 55,000 50,000 40,000

係 長 53,000 47,000 43,000 40,000 37,000 33,000 27,000

月例給与に業績連動を取り入れることが向く業種は、卸売業、不動産販売業、自動車販売業など個人

業績の測定しやすい業種。

業績と連動した賞与制度を導入する 4

業績連動型賃金制度 月例給・賞与反映型

賞与単独反映型

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 18

>>>賞与単独反映型の場合

賞与だけで業績、評価との連動性を確保する手法。一般的にはこの手法を取り入れ、冬

期賞与、あるいは決算賞与で調整する。 オーソドックスで業績との整合性を取りやすい手法としては、経常利益(あるいは営業利

益)連動方式が上げられる。 年度利益計画で目標とする労働分配率を決定し、その配分の仕組み作りをすることにな

る。

考え方の基本は、目標とされる経常利益が達成されなければ当初設定した労働分配率に

よる総額人件費を算出し上限値とすることにある。

目標経常利益が達成された場合は、超過した部分の利益を株主、会社、社員、税金で4

分割するのがよい。

これは月例給に個人業績を反映させる場合でも採用することになる。

<総額人件費のイメージ>

目標経常利益達成時の人件費予算枠

経常利益達成率 80%の場合は付加価値×適

正労働分配率で総額人件費決定

経常利益達成率 120%の場合は超過部分 20%を 4 分

割する

株主 会社 税金 社員

月例賃金原資 賞与原資 +α

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 19

[事例検討]

(当初予算)

目標売上 10 億円(社員数 30 名)

目標付加価値 3 億円(付加価値率 30%)

目標経常利益 5,000 万円(経常利益率 5%)

総額人件費予算 1 億 5,000 万円(労働分配率 50%)

(パターン 1 目標未達時)

売上見通し 9 億円

付加価値見通し 2 億 5,000 万円(付加価値率 28%)

経常利益見込み 4,000 万円(経常利益率 4.5%)

冬期賞与 =総額人件費(2億 5,000 万円×労働分配率 50%=1億 2,500 万円)

-年間月例給与(1,000 万円×12=1 億 2,000 万円)

-夏期賞与支給額(1,000 万円)

=-500 万円(冬期賞与なし、当初予算 2,000 万円)

(パターン2 目標達成時)

売上見通し 11 億円

付加価値見通し 4 億円(付加価値率 36%)

経常利益見込み 6,000 万円(経常利益率 5.5%)

冬期賞与 =総額人件費{当初予算 1億 5,000 万円+(1,000 万円÷4)

=1 億 5,250 万円}

-年間月例給与(1,000 万円×12=1 億 2,000 万円)

-夏期賞与支給額(1,000 万円)

=2,250 万円(1人当り 75 万円、当初予算 2,000 万円)

>>>業績費連動・個人評価のみを賞与に反映する方法

a)人事考課の最終評語で支給月数を決定

最も基本的な賞与決定方式です。個々の人事考課結果によって賞与の支給月数を決定す

る方式。評価制度を初めて導入する場合には、この方式でスタートするのが一般的である。

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 20

S評価 A評価 B評価 C評価 D評価

+0.2 ヶ月 +0.1 ヶ月 基準月数 -0.1 ヶ月 -0.2 ヶ月

2.2 ヶ月 2.1 ヶ月 2.0 ヶ月 1.9 ヶ月 1.8 ヶ月

月例給与が 200,000 円とすると実際の支給額は以下のようになります。

評価による支給月数の差は、0.2ヶ月程度までの等差でスタートしても問題ないであろう。

基本給が 200,000 円で、評語ごとの差を 0.1 ヶ月とすると以下のようになる。

S評価 A評価 B評価 C評価 D評価

+0.2 ヶ月 +0.1 ヶ月 基準月数 -0.1 ヶ月 -0.2 ヶ月

440,000 420,000 400,000 380,000 360,000

基本給が 200,000 円で、評語ごとの差を 0.2 ヶ月とすると以下のようになる。

S評価 A評価 B評価 C評価 D評価

+0.4 ヶ月 +0.2 ヶ月 基準月数 -0.2 ヶ月 -0.4 ヶ月

480,000 440,000 400,000 360,000 320,000

b)価部分を総評価点で配分する

賞与 = 基本給×●ヶ月×{(評価非反映部分●%)+評価反映部分(100-●%)}

例えば、評価非反映部分が 70%とすると、評価反映部分は 30%となる。

社員平均 35 歳、平均基本給 300 千円で、支給月数3ヶ月とすると上記計算式に当てはめ

て固定的賞与部分と評価反映部分を算出した場合、次のようになる。

●社員平均固定的賞与部分 300 千円×3ヶ月×70% = 630 千円

●社員平均評価反映部分 300 千円×3ヶ月×30% = 270 千円

総原資は 270 千円×人数となる。

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経営ビジョンと連動した人事賃金制度の設計ポイント

企業経営情報レポート 21

仮に社員数 100 名とすると、評価反映部分の総原資は 27,000 千円。

全員の人事考課結果の総点数が 8,000 点(平均 80 点)、Aさんの人事考課結果が 50 点だ

とするとAさんに配分される評価反映部分の賞与額は以下のとおりとなる。

[人事考課結果が 50 点のAさんの場合]

27,000 千円÷8,000×50 = 168,750 円

評価結果が 90 点のBさんの場合は以下のとおりです。

[人事考課結果が 90 点のBさんの場合]

27,000 千円÷8,000×90 = 303,750 円

この方式は1点あたりの単価を決定し個人の持ち点を掛け、評語や等級に関係なく配分

するため、下位等級者でも点数が高ければ賞与総額は相対的に大きくなる可能性がある。

場合によっては等級ごとに素点に対して係数を掛ける場合もある。