経営4回目:調整のメカニズムと組織設計 -...

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経営4回目:調整のメカニズムと組織設計 土屋守章『現代経営学入門』第1章「分業とその調整」 金井寿宏『経営組織』VII「経営組織の設計」 藤本隆宏・クラーク『製品開発力』 *授業資料は下記URLから各自ダウンロードのこと http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/lecture/komaba-keiei/2010.htm

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経営4回目:調整のメカニズムと組織設計

土屋守章『現代経営学入門』第1章「分業とその調整」

金井寿宏『経営組織』VII「経営組織の設計」

藤本隆宏・クラーク『製品開発力』

*授業資料は下記URLから各自ダウンロードのこと

http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/lecture/komaba-keiei/2010.htm

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企業内における「分業に基づく協業」:音楽のアナロジー

ソロ・デュオ・トリオ ・・・ オーケストラ (小、大、合唱付き・・・)

分業: 個人の専門化(楽器別)、集団の専門化(第1バイオリン・・)

階層化 (オーケストラ、弦楽器、第1バイオリン)

調整 → 同期化、 ハーモニー、 オーケストラの個性

手順の事前指示(楽譜)と内面化 (練習、リハーサル)

調整のルールの事前習得 (ジャズ・スタンダードと即興)

作業集団におけるリアルタイムの相互調整 (室内楽タイプ)

専門のリーダーによる調整 (オーケストラの指揮者)

リーダーの階層化 (音楽監督、指揮者、コン・マス、首席奏者)

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古典的な組織原則(あくまでも目安としての経験則)

専門化の原則(specialization):同種の仕事を配分

権限・責任一致の原則 (authority and responsibility)

命令一元化の原則(unity of command): 上司はただ一人

統制範囲の原則: 直接統制できる部下の数に限界

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古典的な組織類型(軍隊のアナロジー)

ライン組織:命令一元化原則を重視

指揮命令系統が一貫。直属の上司(命令・報告)

職能別フォアマン組織:専門化原則を重視。F.テイラー

野球のコーチ制(打撃、守備、走塁・・)

ライン・アンド・スタッフ組織:ライン/職能別Fの欠点克服

ライン ・・・ 命令.報告関係

生産、営業(販売)、購買などの中核機能

スタッフ = 参謀。 ラインを側面支援。助言・助力を行う

本社スタッフ(経営者に)、部門スタッフ(部門長に)

総務、人事、経理、経営企画、調査など

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ライン組織

資料:岸川“経営管理入門”

ライン(命令)

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準備係 速度係 検査係 修繕係 順序・手順係

指図票係

時間・原価係

工場規律係

工場長

テイラーの職能別職長組織計画機能を担当する職長…①順序・手順係、②指図票係、③時間・原価係、④工場規律係現場監督職能を担当する職長…①準備係、②速度係、③検査係、④修繕係の4つに分けた組織

作業者

現場職長

資料:岸川“経営管理入門”

計画室職長

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ライン・アンド・スタッフ組織

ライン(命令)

スタッフ(助言)

資料:岸川“経営管理入門”

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マックスウェーバーの官僚制論(『権力と支配』)

(1)官僚制的規則:責任と権限の明確な配分

(2)命令の一元性(官僚的階層=ハイアラーキー)

(3)書類・文書に基づく職務執行

(4)専門的訓練

(5)フルタイムの職員

(6)規則に基づく職務遂行

官僚制の利点: 正確で迅速な職務遂行

一貫性(気まぐれの排除)

没人格性(情実の排除)

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官僚制批判(逆機能論) と 「学習する官僚制」

マートン:規則遵守(本来は手段)の自己目的化(官僚的パーソナリティ)

セルズニック:TVA(テネシー・バレー開発会社):組織目標の変質

グルドナー:石膏鉱山事務所の例:ルール増殖と低モチベーションの悪循環

「学習する官僚制」としてのトヨタ(アドラー、藤本):

作業標準書の作成と徹底

作業標準書の頻繁な改定

現場のリーダーが改定の主役

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バーナード/サイモン/マーチの組織論(意思決定・問題解決)

意思決定(decision making):行為に先立って、行為案を複数の

代替案から選択すること

限定的な合理性 ・ 満足化原則

問題解決(problem solving)のサイクル:

問題=目標-現実

代替案のサーチ、あるいは設計

結果のシミュレーション

選択・実施・再検討

ルーチン化:サーチとシミュレーションの省略

反論:ゴミ箱モデル

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オープン・システムとしての組織

組織を取り巻くコンテクスト(状況)

(1)環境

(2)プロセス・タスク・技術

(3)戦略と目標

プロセス・タスク・技術

戦 略 ・ 目 標

組織

環 境

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コンティンジェンー(状況適合)組織論

組織の構造を変数O、環境のある属性を表す変数をEとすると、

組織のパフォーマンスはOとEの組み合わせ(fit)によって決まってくる

組織パフォーマンス=f (O,E) (つまり、no one best way.)

組織パフォーマンスの悪い企業は生き残れぬと仮定。あるいは、組織の

“成功例”のみをデータにすると仮定した上で、OをEの関数として示す。

O=g (E)

環境の変数としては外部環境を取る理論(バーンズ・ストーカー、ローレンス、ローシェなど)と、環境と組織とを媒介するタスク、技術など(context)をとる理論(ソシオテクニカル理論など)とがある。

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状況適合理論の系譜

バーンズ/スト—カー:組織構造は環境の不確実性に従う

機械的組織と有機的組織

ローレンス/ローシュ:組織構造は環境の不確実性のパターンに従う

分化に応じた統合

トンプソン:組織構造はタスクの相互依存性に従う

ペロー:組織構造は問題解決のパターンに従う

ウッドワード:組織構造は技術(生産プロセス)のタイプに従う

単純なプロセス、機械生産、プロセス産業

チャンドラー:組織は戦略に従う(成長のための多角化戦略

→事業部製組織)

マイルズ/スノー:集大成を試みる

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Mechanistic組織とOrganic組織(バーンズ・ストーカー)

Burns/Stalkerは、イギリスにおけるviscose rayonメーカー(安定環境)とエレクトロニクス・メーカー(変動)のサーベイから、安定した市場・技術環境にはmechanisticform,変動する不確実な環境にはorganic formが、効果的な成果を生む合理的な組織設計だとういう仮説を示した。

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ローレンス・ローシュ/コンティンジェンシー組織論(1)

Lawrence-Lorsch 『 Organization and Environment』

ローレンス・ローシュは、組織の環境適応の理論を次のように示した。

①オープンシステム・モデル(組織の環境への適応)

②コンティンジェンシー理論(one-best-wayはない)

③分化(differentiation)と統合(integration)の同時追求が

ハイ・パフォーマンスにつながる

環境の分化→組織の分化→統合ニーズ→統合のメカニズム

EM

EP

ED 開発部門(目的・時間意識、対人関係、フォーマル度)

生産部門(目的・時間意識、対人関係、フォーマル度)

営業部門(目的・時間意識、対人関係、フォーマル度)

ローカル適応

統合メカニズム

ヒエラルキーチーム調整役ルールインフォーマル

統合ニーズ

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ローレンス=ローシュのコンティンジェンシー組織論(2)

産業ごとに、環境の変動、多様性が異なり、これに応じて組織の特性も異なる

①コンテナ…安定・同質環境→生産部主導、同質的、集権化、フォーマル

②食品…中間的な例

③プラスチック…変動・多様な環境→R&D ・マーケティング主導、分権化、

インフォーマル

実践的な方策・環境の分化に組織の分化を合わせよ

・タスク分析に基づく組織設計を行え

・組織の分化に合わせて統合メカニズムを設計せよ

・confrontation(建設的な対決)によるコンフリクト解決

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トンプソンのコンティンジェンシー組織論

Thompsonは、組織の環境適応の理論を次のように示す。

① オープンシステム・モデル(タスク環境に組織を適合させる)

② コンティンジェンシー理論(one-best-wayはない)

③ ミクロな組織設計は、活動の相互依存パターンによる

環境→技術(task)構造→組織構造

トップ組織

マネジリアル組織

テクニカル組織

テクニカルコア(安定、相互依存)

アウトプット活動

インプット活動

バッファー、予測、leveling、rationingなど、変動吸収

タスク環境

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①まず、環境の変動は、境界における変動吸収活動(バッファー)によって

吸収されるため、テクニカル・コアは比較的安定している

②テクニカルコアにおける相互依存のパターンが、組織構造のパターンを

規定する

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ローレンス/ローシュとトンプソン理論の比較

Lawrence-LorschとThompsonは、ともに環境組織適合を説くコンティンジェンシー理論だが、Lawrence-Lorschが環境の分化(セグメント化)を強調するのに対して、Thompsonは環境の相互依存の方を強調する。

(タスク)ThompsonタイプLowrence-Lorschタイプ NetworkArea

組織 組織

マッピング マッピング

環境・コンテクストをhomogenious(同質)なareaの集合とみる 環境・コンテクストをネットワークとみる

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ペローのコンティンジェンシー組織論

Perrowは技術を独立変数、組織を従属変数とするコンティンジェンシー理論により、組織の比較分析を試みた。

ここでPerrowは、技術を問題解決のパターンととらえ、問題解決パターンのちがいで分類している:

①ルーチンで処理できない問題の発生頻度(exception多⇔exception少)

②問題に対する代替案サーチの方法

(因果知識があるので→分析的に代替案決定⇔試行錯誤)

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ノンルーチン問題は少し

分析可能(ロジカルサーチ)

エンジニアリング(重機械)

ルーチン(鉄鋼、ネジ)

ノン・ルーチン(宇宙・航空)

クラフト(工芸ガラス)

分析不能(ランダムサーチ)

ノンルーチン問題が多い

フレキシブル集権的

公式・集権的

フレキシブル分権的

分権的

小 大

サーチ必要性

サーチ努力

分析不能(ランダムサーチ)

分析可能(ロジカルサーチ)

ノンルーチン問題が多いノンルーチン問題は少し

問題解決のパターン

組織のパターン

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工程タイプと組織構造の適合(ウッドワード)

Woodward 『Industrial Organization』

Woodwardは南エセックス研究を通じて、組織構造と工程タイプとの間の

コンティンジェンシー関係を発見した。

これによると、一般的な”one best way”は存在しないが、ある特定の工程

タイプに対応するベストの組織がある。

フォーマル組織構造 パフォーマンス工程タイプ(技術)

高いパフォーマンスOrganic組織+低いヒエラルキー

一品生産、小口生産

高いパフォーマンスMechanistic組織、命令の一元化コントロール責任の明確化、ライン・スタッフ組織

大ロット・量産加工組立

Organic組織+高いヒエラルキートップが広いコントロールスパン

装置産業(プロセス工程)

高いパフォーマンス

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マイルズ/スノーのコンティンジェンシー組織論Miles/Snow 『Organization Strategy, Structure and Process』

Miles-Snowは、一連の適合理論の集大成をはかる。すなわち、

環境―組織適合(コンティンジェンシー)

戦略―組織適合(チャンドラー)

製品―工程適合(アバナシー、ヘイズ)

工程技術―組織適合(ソシオテクニカルシステム論)

環境(市場環境)

組織設計(structure)(administrative)

プロセス・技術選択(engineering)

製品-市場戦略(entrepreneurial)

Contingency EnactmentStrategy

SystemStructureSocio-technical

Product-processfit

Strategy-structurefit

(適応サイクル)

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ガルブレイスのコンティンジェンシー組織論:組織設計論の集大成

Galbraithは、組織を情報処理のネットワークであるとした上で、組織設計は

環境の不確実性(情報所要量)の大小に対応して①情報所要量の削減あるいは②情報処理能力の拡充、の何れかを行う形で行われるとした。

(1)情報処理能力の拡充

①ルール、プログラム(アクション自体を制約)

②ヒエラルキーによる例外処理(上司の決定)

③目標設定(アクション自体は従業員自体が選択)

④垂直的情報システム(コンピュータ処理システム)

⑤当事者の直接コンタクト

⑥liaison role(連絡役)

⑦task force(臨時の問題解決チーム)

⑧team(プロジェクトチーム)

⑨統合部門(puroduct managerなど)

⑩マトリクス組織

横断的関係

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(2)情報所要量の削減

・目標レベルを引き下げる(スラック)

・分業度を低くする

・アウトプットの多様性を削減

①スラック・リソース(調整付加資源)

(在庫、能力過剰、目標引き下げなど)

②self-contained tasks (自己完結職務)

(製品別組織など、これによって分業度低減、リソース専用化)

ガルブレイスのコンティンジェンシー理論(つづき)

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1. 規則と手順(プログラム)

3. 目標設定

2. 階層に沿った上申機械的モデル

4. スラック資源の創出

5. 自己充足的課題の創出

7. 水平的関係の創出

6. 垂直的な情報処理システムへの投資

(代替案1) (代替案2)(代替案3)

(代替案4)

情報処理の必要性を低減する代替案

情報処理の必要性を増大する代替案

ガルブレイスの組織設計のモデル 金井『経営組織』日経文庫

(出所) Jay Galbraith, Designing Complex Organizations, Addison-Wesley, 1973, p.15.

(梅津祐良訳 『横断組織の設計』 ダイヤモンド社) 一部変更

4つの代替的戦略

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自動車開発組織の事例:統合型製品の開発は統合的組織を必要とする

情報処理・問題解決としての製品開発プロセス

問題解決サイクルとその調整

オーバーラップ型問題解決

フロントローディング

専門化・内部統合・外部統合

重量級プロダクトマネジャー(開発リーダー)

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分業と調整の方法論

企業内分業の軸: 機能(工程)別、製品別、市場(地域)別、顧客別、…例:商社(地域別と製品別)

例:工程別工場と製品別工場

トンプソン/アレキサンダーのルール:

相互依存性の高いタスクをまとめて分業単位とせよ

1 希少資源の共有(予算を取り合う複数のプロジェクト)

2 一方的な依存関係(○→○)(組立ライン)

3 相互依存的な関係(○⇔○)(自動車の各部品の設計)

タスク分割:相互依存性の小さいところで組織を切り分けよ

仕事(タスク)そのものの切れ目を組織の切れ目とする

例:飛行機の機体とエンジン(ボーイングとGE)(三菱、川重)

反例:フォード・ヨーロッパ(外装と内装、エンジンとTM)

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組織内の調整か、タスクの分割か

企業内分業 ⇔ タスク(仕事)の相互依存性

⇒ 調整の不足 (e.g.、まとまりの悪い製品)

⇒ (1) 組織的調整の強化

(プロジェクト・チーム、プロジェクト・リーダー、他)

(2) タスクの相互依存性の削減

(製品やプロセスのモジュール分割…アーキテクチャのモジュラー化)

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「設計者の発想」のことを「アーキテクチャ」という

部 品

インターフェース

全体機能

サブ機能

インターフェース

部 品

部 品 部 品

製品に要求される機能を、製品の各構造部分(部品)にどのように配分し、部品間のインターフェースをどのようにデザインするか、に関する、基本的な設計思想。

東京大学 藤本隆宏

製品の機能 製品の構造

機能・構造の対応関係

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製品アーキテクチャのタイプ

(1)モジュラー・アーキテクチャ:寄せ集め設計でも機能発揮

(2)インテグラル(統合的)アーキテクチャ:部品最適設計が必要

(a)オープン・アーキテクチャ: インターフェース標準化により、

企業を超えた寄せ集め設計が可能

(b)クローズド・アーキテクチャ: 1社内で基本設計が完結

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クローズド

オープン

インテグラル モジュラー

自動車

オートバイ

小型家電

工作機械

汎用コンピュータ

レゴ(おもちゃ)

パソコン

パッケージソフト

自転車

アーキテクチャの分類

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モジュラー化:相互依存性を削減する試み

複雑なシステムは階層的である(H.サイモン)

「準分解可能性」の概念(H.サイモン)

機能的相互依存性と構造的相互依存性

モジュラー部品(モジュール)=機能完結、構造一体

例:自転車とオートバイ、パソコンと自動車、OSとゲーム

日本企業の得意技、米国企業の得意技

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補論1 マイクロソフトの例天才プログラマーの時代(小説家のアナロジー)

製品の複雑化と組織の分業化(相互依存的ユニットへの分割)

開発リーダー(統合者)の強化

製品のモジュラー化(相互依存性の削減。オブジェクト指向)

Win-Word プロジェクトの混乱→3つの新しい開発アプローチを模索

(1)プロジェクトマネジメントの強化

(2)コンセプト・スペック作成過程の強化

(3)モジュラー的ソフト開発。相互依存性削減

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1:開発技術者の天下:伝説的な技術者。優秀な人材を採用。プレッシャーの高い環境

問題はいつ開発が完了するのか見当がつかぬこと。

2:技術者対マーケティング担当者:

技術者が単独で開発していたのでコンピュータのことをよく知らない

ユーザーにとっては 使いにくかった。そこで80年代半ば、マーケ

ティングの専門家が多数入ってきた。→ 調整が必要に

3:プログラムマネジメントの出現:

プログラムマネジャー(PM)による開発プロジェクトの調整

リーダーシップは技術的リーダー、開発リーダー、プログラム

マネジャー、プロダクトマネジャーに分散

PMはスペックに責任をもつ、しかし強力なリーダーではない。

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Win Word 開発とその問題点:

当初、出荷目標日は85年9月だったが、

実際の出荷はそれより4年以上遅れた(1989年)

(1)製品のフィーチャーが変化し続ける

(2)ゲイツが時々、「アドバイス」をプロジェクトに与える。

その結果プロジェクトの方向の大転換が起こることもあった。

問題は、Win Wordがこれまでのマイクロソフトの製品よりも

ずっと複雑であったこと。

(3)果てしない欠陥(defect)の発見

マイクロソフトの製品は、かなりの時間をかけて、調整作業を

行うことによって良いものに仕上がる。しかし、開発プロセスに

コントロールがきいていない。スペックが常に変わり続けており、

意思決定プロセスが分散化している。そして、際限のない欠陥発見

(defects)からも分かるように、コードが信頼性に欠ける。

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Win Word開発の反省(調整の不足)→どうする?

(i) プログラムマネジャーの役割の強化?(調整力の強化)

(ii) コンセプトやスペックの開発に力を入れる?(事前調整)

(iii) オブジェクト指向のプログラミングを基礎として、

モジュラー性の高いソフトウェア・コードを書く?

(タスク間の相互依存性を弱める)

→スペックとコードの同時開発を許す

「出荷可能な製品を毎日」持つ

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その後のマイクロソフト (クスマノ・セルビー)

・製品が複雑化 → 企業の対応は?

・無計画なソフトウェア開発。複雑な製品。バグの頻発…

・MSの評判は悪かった。開発の遅れ、不良への対応、…etc

マイクロソフトの新しい戦略

(1)技術と営業の両方の分かる人を集める

(2)小さなチームと機能別スペシャリストのマトリックス

(3)製品と標準で競争する

(4)フォーカスする

(5)並行して作る毎にシンクロ化する

(6)学習組織作り

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開発プロセスの改変

・過去の反省から、ソフト開発のやり方を見直した。

・マス・マーケット向きに、常に進化するソフトを作りたい。

・iterative だがstructured な開発プロセスを考えた。

名づけてsynch & stabilize (毎日シンクロ化)

・1984年頃から開発プロセスの構築を始めた。

1984年にテスト部を分離。

・1986年: Postmortem Document

・1989年: "Daily Build 方式(シンクロ&スタビライズ)

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組織と分業(機能別の分業)

1.プログラムマネジャー、プランナー(WPG)- 350人

2.ソフトのデザインエンジニア - 1800人

3.ソフトのテストエンジニア - 1800人(多い)

4.カスタマー・サポート・エンジニア - 2000人

5.マーケティング・セールス委員 - 2500人

6.ユーザー教育、オペレーション、管理部門 - 1000人

7.先行技術開発 - 800人(200人が基礎研究)

8.海外 - 5000人

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事業部制とフィーチャー・チーム(製品別・部品別分業)

事業部ごとに約100人単位の複数のプロダクトユニット(エクセル、ワード、etc) に分かれる。

(例)PM:20人(プログラムマネジャー)デザイン:30人テスト:30人プラン:5人

さらにフィーチャー・チームに分解(モジュール別開発チーム)フィーチャー別に5~6人のチーム5~15のフィーチャーチーム

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モジュール化の成果

1. 大きな製品を小さく分解 → 小さなフィーチャーチームで対応。

2. プロダクト全体のデザインが決まらなくても開発をスタートできる。

3. 大きなチームが小さなチームのように動ける。(パラレル開発、しかし

常にシンクロ化、プログラムを少しずつ安定化させる。問題も連続処理)

4.顧客からのインプット、フィーチャー追加、リードタイムによる競争で

優位

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まとめ:マイクロソフトの開発組織

1. プロジェクトサイズの制限(400人がリミット)

2. 分解可能なアーキテクチャー(フィーチャーのモジュラー化)。

3. 分解可能なプロジェクト・アーキテクチャー

(フィーチャーチームの束。マイルストン別のサブプロジェクト化)。

4. 小さなチーム(それぞれマルチファンクションで自立的。

5人ぐらい)。

5. 少ない数の厳しいルール:コーディネーションとシンクロ化

6. コミュニケーション(1ヶ所で仕事、責任共有、共通語、

官僚制の打破)

7. フレキシビリティ

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補論2 組立ラインの人間化をねらった「自律完結工程」

トヨタ九州の宮田工場(1992年新設)から

(i)ラインを比較的多く(5~12)のセグメントに分ける。標準的にはセグメント約100m、20工程(工程設計)。

(ii)組立エリアを正方形に近くする。(iii)セグメント間に車両バッファー(5台前後)を設ける(iv)各セグメントに相互に関連のある作業群を集める(作業設計)。

それぞれの組立作業サブ・カテゴリーが一つの組(20人程度の作業集団)の中で完結するようにした。

(v) 各組立セグメントの末端に品質確認工程を設置する(vi)各組立ライン・セグメントをできるだけ基本的な作業集団である「組」

(約20人で編成)に対応させる。(vii)各組のリーダー(組長、職長などと呼ばれる)の責任と権限を強化する(viii)組立ライン運営のためのインフラストラクチャー

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組織と技術の相互調整

・ メインの組立ライン(トヨタの場合1000メートル前後のことが多い)を

半自律的な複数のライン・セグメントに分割

・ 各ライン・セグメントが機能的にも物理的にも組織的にも互いにディカップル

されている点

・ いわばフォード型組立ラインの短縮版

・ トヨタ版のソシオテクニカル方式

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成果

・ 新モデルのための組立作業の習熟期間は約半分

・ 新方式になって品質意識が高まった

・ 作業が理解しやすくなった

・ 組立工程全体のダウンタイムが低減

・ 作業者の動機づけは向上

・ 約70%が、自分の仕事が以前よりやりがいのあるものになったと答えている

・ 作業指導者あるいは改善リーダーとしての自分達の仕事に以前より誇りが持てる

ようになった

・ 自律完結組立ラインのコンセプトは、一方における顧客満足(品質、コスト、

納期)と、他方における従業員満足(仕事の意味づけ、誇り、成長している

実感)との 間のバランスの達成