c.marlowe の imagery (その2) : tamburlaine the great part ii...

17
Hokkaido University of Education Title C.Marlowe � Imagery (�2) : Tamburlaine the Great Part II �Author(s) �, Citation �. �. A, �, 15(2): 85-100 Issue Date 1964-12 URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/3780 Rights

Upload: others

Post on 25-Jul-2020

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

Hokkaido University of Education

TitleC.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II の場

Author(s) 渡部, 一雄

Citation 北海道学芸大学紀要. 第一部. A, 人文科学編, 15(2): 85-100

Issue Date 1964-12

URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/3780

Rights

Page 2: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

北海道学芸大学紀要(第一部A)第15巻

 

第 2号

          

北海

 

学芸大学紀要

 

第ー部A) 昭和39年12月

C. Marlowe

 

 

lmagery (その2)

”rα粥る”“の”e 坊eGγ卿≠’’Partllの場合 -

  

  

  

北海道学芸大学釧路分校外語外交研究室

Kazuo wA′‐PANABB; C.Marlowごslmagery(11)

 

一 0n”rα擁通”γZの7zf2Z力fzCγβの“ Partll

 

先に述べた1)“rα粥る“γZの”8物eGγ如か’の Partlに引き続いて, Partllを同様な方法で

分折解明し, その芸術的価値を追求しようというのが, この度の主たる目的である. この作品は

周知の通り,1588年の春頃,ChristopherMarlowe の手によって創作されたものである.

             

 

ギリシヤ・ローマ悲劇の影響

 

・ ギリシャ・ローマ的依拠, (或は, 参照としたと考えられるもの.)

 

1.i,28.

    

Polypheme… …ovid. MetanL XIII.772. 任. 及び XIV.167. ”.

 

1.i.42.

    

Europe mounted on herbull.……ovid.Metam.,11.836.任.及び VI.104.

 

1.iii.38-9.

  

Pygmaliodsivorygirl…10.ovid.Metam,,X.243,任. 及び 1.588.任,

 

1.vi,16.

    

infernaIJove……ovid.Her.XI.103-4, Metam,,VI.430.

 

1.vi.33,

   

.For・Boreas (Partl.1.ii.205. にもあり) ……ovid.Tristia.,111.x.

 

1.vi.36-7.

   

Stones…turnedto mーen-.DeucalionandPyrrhainN[etam.,1.318.任.

 

11.iv.114.

 

 

Janugtemple doors… …Janus を戦の神にしたのは作者の創作,

 

111.ii.40.

    

Bellona……ovid.Metam.,V.155,Fast.VI.201. Virgil,Aen.,VIII.703.

 

IV.i.111‐118. Here,Jove‐…・・特に Aristotelianlogicの影響を受けている個所.

 

IV.iii,1.

   

YepamperedjadesofAsia!……ovid.,IX.238.『こ類似.

 

IV.iii.32‐8.

  

o thouthatswayest2)… …ovid.,N1etam., V.385. ”.

 

IV.iii,121,

   

Selinus……Virgil.Aen,,111.705,

 

IV.iii.122,

   

Herycina.↓…,ovid,N[etam.,V‐.363. Her,,XV.57. Am.,11.10,11.

  

V.i.77.

    

Saturnia……Virgil.Aen.,1.23. 及び ovid,Metam,,IV.464,

 

V,iii.59.

   

Atlas-…これは, 世界ではなく天空と全星座を双肩に担う巨人(Titan) で

        

ある, 作者の独創的なもの,

 

V.iii.240.

   

Hippolytus……Virgil.Aen.,VII.761.

 

この様に,Par[11 においては, ovid の作品の影響を非常に大きく受けている. これは,多分

作者が Cambridge 在学中,ovid の

 

A“のγBSを翻訳をしたので, その影響を受けたものだと考

-S5

 

「 .‐・ . ▲ .

Page 3: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

えられる.1594年の Marlowe と Nashe の合作悲劇“rゐe71γαgBdyo′DZαo,Q”e勤 o′Cの効αg〆

には, ovid と同様, いや, それ以上に, Virgil作“Ae““〆’’の影響を受けていることは興味深

いことである.

 

  

  

 

宇宙観.

  

As whenthe massysubstanceof

 

theearth

  

Quiveraboutthe axle-treeofhea▽en?(1.ii,13)

 

この様に, 「地球という大きな物体が, 天界にある軸のまわりを振動する時のように…」と天

軸の事を考えている. こういった考え方は, Partl の延長でもあり, その後,“Dγ.Fα雄Z硲

創作の時まで続いている.

   

Asarethe

 

e1e]ments,Such

 

are

 

the

 

heavenS,

  

Evenfrolm

 

thennoon

 

untothe

 

imLperial

 

orb,

   

D4utuallyfoldedin

 

each

 

other’s

 

spheres,

  

Andjointly move upon one axeletree

  

Whosetermineister1nedthe worlds widepole;(11,ii.38-42)

 

地球を含めて天空にあるすべての物体は, すべて聯合体をなして, 一つの軸のまわりを廻軸し

ていて, この軸の極端は, 世界の両端と呼ばれる, といった様に, 作者の宇宙観は極めて古く,

中世, 古代人のそれのようであって, 医学の知識と共に, 作者の幼稚な知識の表われだと一般に

考え・られている,

 

しかし, 古典書に依拠し, 大言豪語するためには, こういった imagery の方

が, かえって, 無限の空想の世界に観客を引き入れられるといった, 一種の劇的効果がある事を

作者は既に知っていたのであろう.

 

こういった作者の宇宙観にたいするimagery の中には, Asterism (星座) があって, 作品全

体の骨子ともなっている. すなわち, 主人公 Tamburlaineの運命を支配しているという, con‐

stellationに立脚しているのである.-5星であり, 星運であって, 人の誕生の時における星の位置

配置で, その人の運命が決定されるといった考え方である.

 

第一部では, 主人公がこういった運命の支配下にあって, 神の保護を受け, 幸福な終幕で結ば

れている. 前に述べた様にD, 悲劇的なものは, ほとんどない. ところが,第二部では, この支

配, 保護をふりきって, 反対に, 神, 或は,運命を支配しようとし, 神に挑戦し, 破れる過程が

画かれている.

 

人間の慾望, この場合では, 征服慾といった慾望は無限に, そのとゞまるところを知らない.

人間は結局のところ人間であって, 死ぬ運命にある, という事であるが, こういった気質,気性

人間の慾望を満たすため意志と力を無限に作用させる気質, 気性というものは,その人間が誕生

する時, 星の位置によって定まるというところに悲劇の一要素がかくされているのである.

  

Raise meto matchthefairA1deboran,

  

Abovethethree‐foldastraeism ofheaven,(IV.iii,61-2)

 

(美しい A1deboran に匹敵するように, 私を, 天界にある三重の星座の上に高く, 引き掲げ

てくれ…) とTamburlaineがいう個所がある. この二行の句は, 意味深長なものであって, この

中の A1deboran とは, A1debaran の事であって, その Zodiac(黄道十二宮)の中の第二番日の

 

S6

 

Page 4: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C.Marloweのlmagery(その2)

Taurus(金牛宮) という一等星を,作者は考えていたと推察出来る. これは, 全天空で最も光の

強い星の中の一つであって, 天界の三重の星座の上位にあり, その星座を支配していると考えて

いる. これと匹敵するという事は,主人公が, その星座を支配する事であり,運命を支配する事

を意味するものである.

 

天界において,作者が意識していた事は, 上記の通りであるが, 下界にたいしても, 彼独自の

imagery を抱いていた.

  

Asistheisland wherethe Furies α1ask,

  

Compassed with Lethe,Styx,andphlegethon,(111.ii.12-3)

 

この imagery は,Lethe(忘却の河) と,Styx(よみの国の河) と,Phlegethon(火の河) に

取りまかれ, 目に見えない復しゅうの女神 (A1ecto,Megaera,Tisiphon たちが住んでいる島の

事であって, こういった imagery は ovid,Virgil,Seneca,Cicero,或は叉,Danteの“Dん畑α

CD粥婚姻”から生まれて来ている様に考えられる,

 

勿論,作者 Marloweは ghostというものを認めてはいない. これは, 彼の作品の特色の中の

一つだともい える.

 

そのため,主人公に死が近づいた時, 作者は, 過去の殺りく行為のため主人公を良心的に苦し

めたり, 悩ませたり, 或は反省1後悔させる亡霊を登場させずに,死神を登場させている. こう

いった考え方は,作者が Aristotelian であったからだともい える. こういった着想は Shakes-

peare の作品の中には余り発見出来ない.

  

See, where mLyslave,theugly monsterdeath,

  

Shakingandquivering,paleandwanforfear,

  

Standsaiming atmewithhis murdering dart,

  

VVho賃iesaway atevery glancelgive,

  

And,whenllookaway,Comesstealingon!(V.iii.67-71)

 

(俺の奴隷を見よ, 恐怖で, 青く血の気なく, 震えおの いている酷い巨大な死神を, 奴は,

俺が一瞥するごとに飛んで行く殺りく投槍を持って, 俺を狙って立っているぞ, だから,俺がよ

そ見をすると, その槍が飛んで来るのだ.)

 

こ で, 作者がいおうとしていることは, 彼の奴隷である死神が,Part工で述べた様に, 今迄

は, 主人公の意のま に動いていたのであるが, Partllでは, その死神が, 主なる彼を狙い始

めた, というのである. しかし, 主人公が戦場で殺りくを続けるならば, 死神は主人を狙う事な

く, 主人の死をみのかす, という

 

imagery である. 主人公の臨終の瞬間まで, 過去犯した数多

くの罪悪にたいする良心の珂責などは, みじんもない.

  

作者は, この死神をStyx(三途の河)の渡し守であるCharon と同一視している様な ima-

gery を持っている様だ. 上記の台詞は,次のように続いている.

  

Villain,away,andhietheetothe6eld!

  

lam minearmycometo

 

loadthy

 

bark3)

  

withsoulsofthou≦報nd mangledcarcass鮎,

 

(げすめ, 立ち去れ, 戦場に身をかくせ!

  

俺と俺の軍隊は, お前の小船に,無数に, ずたず

たに切りさかれた死体の魂を積んでやるわ,)

 

これを執筆していた時の作者の imagery の中には, Dante の神曲, 地獄界 (lnferno), 第三

歌に登場する Charon が存在していたにちがいがない. Charon は死者の肉体は乗せずに, その

 

87

 

Page 5: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

魂だけを, その小船に乗せて河を渡すからである.

 

  

  

作者は, Partll で, Virtue,Power, Honour,Beauty という語をどの様な imagery で使用した

かについて考えてみると, 先ず,1.iv,50~51 に次の様な台詞がある.

  

lfthou exeedthybrothers’ worth,

  

Andshinein

 

complete

 

virtue mーore

 

than

 

they,

これは, Part1 と同様, Virtue は Power であり Courage であるといってもよい.

   

Letthedishonourofthe painslfeed

  

ln

 

this mLy mlortal well‐deserved wound

  

EndallmyPenancein mysuddendeath!(11.ia・5ー7)

 

(突然の死を与えて, この死ぬべき運命にあって, 充分受けるに足る傷で現在私があじわって

いるこの恥辱の苦痛をとりさり, 私の苦しい人生を終らせ給え)。この台詞は次の様な sceneに出

て来る, 即ち, Tamburlaine の進軍を知って Natolia の 王 orcanes と Hungaryの王 Sigismund

が攻守同盟を締結する(1.i.及びii). だが,11.i.で,Sigismundは, Natolia軍が Tamburlaine

のために軍を移動したことを知って, 約を破ってその虚をつこうとする.11.ii.で怒った Natolia

の王に討たれ傷ついた, 第二幕, 第三場頭書の,Sigismund 王の台詞である.

 

この台詞の中で使用されている dishonour と は,ignominy であって, あの様に,Christにか

けて誓った同盟を破った事にたいする恥ずべき行為であり, 神に背いた者の当然受けなければな

らない神罰である,

   

villain,resPects

 

thoulrーorethyslavish

  

Lifethan honourofthycounty orthyname?(V.i.10‐1)

この中の honour は恥に重きを置いていて同一範時に入れてもよいものであるが,

  

Now,in de負anceofthat wontedlove

   

yoursacred virtuespour’d uponhisthrone,

  

And madehisstate an honourtotheheavens,(V.iii,10-12)

の中における

 

honour は既に power と同一範時に入るものである, さらに, この中の Virtues

も power・という意味を含んでいる. 最後の Scene で主人公の死亡する時の台詞の中で次の様な

個所がある.

  

Now,eyes,enjoy yourlatest bene t,

  

And,when mーy soulhath virtue

 

ofyoursight,

   

Piercethrough

 

thecol圧in

 

andthe

 

sheet

 

ofgold,

  

And glutyourlongings with a heaven ofjoy.

 

(さあ,まなこよ, 最後の恩恵を享楽してくれ, お前の魂が視力を持った時には, その棺や,

その黄金の布を貫き, 天界のよろこびにひたって, その慾望を満喫してくれ,)

 

この台詞に包含されているものは, 非常に大きなものであって,先ず第一に,作者のimagery

にあるものは, 肉体と, その肉体が持りている感覚は, 精神・魂を妨害するいう, いわゆる,

Stoic のような考え方である.

 

この台詞は, 当時,有名であった旅行者P.valleが愛人の死体を, 愛するがゆえに, 埋葬出来

ずに, 旅行する旅先に, 運び続けていたという話に hintを得てか, 死ぬ時, その, 今迄共に旅

一88

 

Page 6: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C,Marlowe のlmagery(その2)

行して来た愛人 Zenocrate の棺を目の前に運ばせ, 死体を見ながらいう主人公 Tamburlaine の

台詞である.

 

この台詞は,主人公ではなくて, 作者の慾望, 肉体, そして魂に関する概念を明白に表現した

ものにほかならない. すなわち, 人間が快楽を無限に追求するのは, 肉体がそれを求めるのであ

って, 一度, 魂が肉体から離れ自由になり, 別世界で愛人の魂に接し, その愛人を見る視力だけ

をその魂に与えられた時, あらゆるものを貫き, あの世でよろこびにひたる事が出来るという意

味である. その時こそ, 愛人を,Zenocrateを,美を,より秀れた魂で,世俗的な慾望を超越して

徳を通じて,満喫出来るという考え方である. Partllで Zenocrate が死んだ後は, この地上か

ら美が消失し, 主人公を狂った殺りく者に変えてしまったのだ. さらに,Partl においては, 力

・武が美と結合していて, その美とは, 真の力を発揮させ, honour に達するための重要な要素

であったが, Partllでは, この美がなくなり, 力は狂暴性を加えてゆく. そして, その美は,

現世を離れて,別世界に存在しているのである. 作者は, この作品が閉幕した後, 前に述べた様

な魂が, 死後の世界で, 美と結合するのだという余音を残す意企であったと考えられ.る,

 

この様な深遠な意味を内蔵している Virtue は,単なる力, あるいは叉,高潔な徳といったも

の以上の言葉で表現されるものであろう.

 

 

 

 

的 lmagery

 

Partllに表現されている作者の生理的知識の根源は, 4elements

 

と humors

 

にある. 特

に後者は, 主人公が狂乱じみてゆく過程の原因となり, これが悲劇を生む原因となるのであるが

叉, 主人公のそういった体質, 性格を生む要素として,imageryの中心に設定されている.

 

こういった考え方は, ごく archaic な考え方であって, 前に述べた Asterism と同一範噂に入

れてよいものである.

 

彼の imagery によると, 主人公の運命は星の位置で定まり, 慾望, すなわち, 征服慾をいだ

かせたものも, 天の意志であり, 殺りく, 残虐行為を犯させるその性格も, このhumors から生

れたという考え, これが悲劇の主要な役割を果しているということになる.

 

humors とは, 体液であり, thecardinalhumors(四主流) とは, blood,phlegm (粘液),

Choler(黄胆汁), melancholy(=blackcholer,blackbile)(黒胆汁) で, それらの体液の配合

の具合で人の体質や性質が定まると考えられていた, さらに, その配合の具合によって定まる気

質は, 4つに分類され, acholerictemperament 胆汁質 (怒りっぽく激しやすい性質), aphl

egmatictemperament粘液質 (鈍感な, 冷静な, 沈着な性質), a melallcholictemperament

憂うつ質, asanguinetemperament多血質(血色がよく快活な性質) とがある.

 

4elements の中の water は粘液質の体質を生む体液であって,

 

しめっぽさと coldnessを持

ち,airは多血質の体液であって, しめっぽさと,hotness(熱さ, 激烈,激怒, 短気) の素質を

持っている.

   

VVaterand

 

air,beingsymLbolized

 

one,

  

Arguetheir wantofcourageandofwit:(1.iv.23-4)

 

(水と空気が一つに象徴されると, 勇気と才智に欠ける.)

上記水と空気とが,一つのものとして表わされた場合, 平衡が破れ, しめっぽさが多くなり,

じめじめして決断力に欠け, 確固不動の性質がなくなり, erceness に欠けるようになる. 作者

 

89-

Page 7: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

は, こういった考えを基礎にして, 勇気と才智に欠けると考えているようだ.

 

Partlでは,elementsという言葉が非常に多く使用されているが,Partllでは, 一個所 (111.

v,.26) にしか使用されていない,,このことは,Partl工では, 主人公の性格にのみ留意していた

という証拠ともなる.

 

こういった体液の平衡を破るものは, 他ならぬ, 神の Virtue である. 神の力であり, 具体的

にいうと, 日光である, と作者は考えている.

 

1reb.D江ay

 

neverday give

 

Virtueto.hiseyes,

      

VVhosesight,comPosedoffuryandof行re

    

Dothsendsuch stern a”ectionstohisheart!(IV.i.175-7)

 

(日よ, 彼の目に徳 (力) を決して与えません様に, 彼の視力は,激怒と炎にもえ上って, 自

分の心に大きな影響力を及ぼす.′)

 

神が, Virtue(徳・力・光) を人間の目に与え, それが強い影響力をもって作用する. その心

を血液や血管 (vein orartier) が養っているという作者の imagery である. その例は, 次の個

所で充分説明出来る.

 

Sor.

 

hday

 

never

 

spirit, Vein

 

orartierfeed,

    

Tilecursedsubstanceofthatcruelheart;

      

But,Wantillg‐lnoisture

 

alldrernorseful

 

blood,

   

Dry up withanger,andconsume withheat!(IV.i.178‐81)

 

このように, 作者の

 

imagery の中では, 天体と生理学とは, 別個に存在していない. こふで

始めて, 次の台詞が完全に理解出来る. これは, Tamburlaine が臨終の床で“Tellme,What

think youofmysicknessllow?“ という質問にたいする医者の答である.

    

工view’d your uriue,andthe hypostasis,

    

Thickandobscure,both makeyourdangergreat;

      

your

 

veins

 

arefullof

 

accidental

 

heat,

    

Wrherebythe moistureofyourbloodisdried:

    

Thehumidum andcalor,whichsomehold

      

lsnot

 

a parcelof

 

theelements,

      

Butof

 

asubstZ1nce

 

mLorediVine

 

al・d pure,

    

lsal1hostcleanextinguishedandspent;

      

VVhich,beingthecause

 

oflife,importsyourdeatll.

      

Besides,lny

 

lord,thisdayis

 

critical,

     

Dangerousto

 

those

 

whosecrlsls

 

ls

 

asyours;

     

your

 

artiers, whiCh alongstthe veinsconvey

      

Ti・elivelyspirits whichthe

 

heatengenders,

      

Are

 

l)arched and

 

void

 

ofspirit,thatthe

 

soLI1,

      

vvanting

 

those

 

organonsby

 

which

 

itnloves,

    

CannotendL1re,byargumentofan・.(V.iii.82-99)

 

(私は, あなたの尿と沈殿物を検査してみましたが,.濁って, 薄黒い,こ・れが●, あなたの危険

を大きくしているのです, あなたの血管は, 思いがけないような高熱で充満しており, そのため

に, 血液の水分が乾いている.

 

90

 

Page 8: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C.Marlowe のlmagery(その2)

ー註, この水分とは, 上記の

 

Water のしめりけのことで, これが乾くと, coldness

 

のみが残

り, 体は冷たくなる, という意味--いくらか残っているしめり,けと暖かさは, 成分の一部分

ではなくて, もっと神聖で, 純粋な実体であるが,、ほとんど全部, もう, なくなり, ついやされ

ています. それが生命の根源であり, 死をもたらすものです. それに, 陛下, 今日は危期の日,あなた様に重体の人には日が悪い. 心臓が作っている生々しい精神-註,Sangulnespiritであり

blood でもある-を静脈にそうて運搬しているあなたの血管は, 乾いて, 空になっている. その

結果, 魂は血によって活動しているので, その血が不足したため,,魂は, あらゆる医術の手をつ

くしても, もう耐えることは出来ません.)

 

この様に, 医者は, その日を見て, 人間の体を診断する一種の占星家であり, 一方,bloodを

生命の根源とも考えている.

 

次に, 作者は, 肉体と精神, すなわち, 肉体と魂とを分離して考え, 子供は肉体的に親から分

離してはいるが, もともと同一のもの, その肉体に, 親の魂を植え付けると, その親が死亡して

も, この世には, 親と同一の人間が残存する, といったimageryを持っているので, 主人公の臨

終の時, その息子である

 

Amyras は次の様にいっている.

  

Yoursoulgivesessenceto our wretchedsubjects,

  

Whose matterisincorporatein yournesh.(V.iii.164‐5)

5 宗

  

  

 

lmagery

 

Partllに包含されている作者 Marlowweの宗教的imagery について述べると, Natolia の

王は回教徒であり, Hungary の王は Christian である. Partl で Tamburlaine

 

に征服され

た Persia の Cosroe は Jove を信じている. 作者はこの作品の中に多くの神を登場させ, 国王

をしてその代表者とし, その宗教に対する作者自身の imagery を, 表現している様に見える.

Partl工に於いては, その対称を Mahammed と Christとに求め, その両者を批判している.

よく例に挙げられる個所ではあるが,Christ批判の個所としては,

  

Then,if

 

there

 

beaChrist,asChristianssay,

  

Butintheirdeedsdenyhim fortheirChrist.(工1.ii.39-40)

 

(それで, もしキリスト信者達が口にしている様に, 万が一, キリストといったものかいて,

しかも, 彼等の行為で, 自分たちの信じるキリストとして彼を認めなかったら) と, キリストの

‐存在を疑ったり, 或は, キリスト信者達の行為の不信を述べている. 行為の不信については, 具

体的に, Hungary の王がキリストの名において誓った攻守同盟を破り Natoliaを攻撃するとい

った筋を創作し(11.i),一方, Mahammetにたいしては, あらゆる教典を焼きすてさせ, 次の様

夢この しっている.

   

1ぬ vainelsee men worship N1aho]ばlet,

   

ndysword hatl・sent millionsofTurkstollell,

   

S1ew

 

allhisPriests,hisKinsl士・en,andhisfriends,

   

Andyetlliveuntouchtbyn{【ahomet:

   

Thereisa Godfull

 

ofrevenging wrath,

   

From

 

whom

 

thethunderandthelighting

 

breaks,

   

vvhosescourge‐lam,andhim will.obey.

  

So,Casane;flingtheminthe6re.

 

(They burnthebooks,)

   

Now, M[ahomet,ifthou

 

llaveany power,

 

91-

Page 9: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

 

Comedownthyselfand work a miracle.(V i.178‐187)

 

(人々は Mahometを崇拝しているが無益だ. 俺のは剣何百万人というトルコ人を地獄に送り

あらゆる

 

Mahometの僧侶, 親族, 友人を殺害したが, 俺は, Mahometの害を受けずに生きて

いるではないか, 復しゅうの怒りにあふれ雷と稲妻を発する・神がいる. 俺は, その神の鞭, その

命令に服従するのだ. だから, Casane

 

よ, その教典を火の中に投げこめ.・一彼等教典を燃やす

一さあ, Mahomet

 

よ, お前に少しでも力があるなら, 自ら降りて来て, 奇跡をおこしてみよ,)

一般にそうだが,

 

こういった劇中人物の台詞を基礎にして, これが作者の神にたいする観念だ

と断定する事は甚だ軽卒な批判である」 彼は, 芸術の第一の目的は「徳を教え, 大衆を導くもの

だ」と考えていたことも推察出来る. 作者は, この様な主人公 Tamburlaine には共鳴していな

い. それで, Mahometの教典を焼きはらったとたん, その主人公は破滅を招き, 死ぬ運命にあ

るという筋を立てている. 主人公ばかりではなく, Christian である

 

Hungary の王も, 相手がMahomet信者という異端者であるから破約しても神に背くものではないとして,. 神を裏切り,トルコ軍を奇襲したため, 死の報酬を受けている.

 

“rγαgZcαZ 猛ぎszoγyof Dγ.Fα硲f硲“ 中の Faustus も同様な過程をえて, 結局は, 悲惨な

死に方をしている. さらに, 最後の台詞は次のように, 教訓的である.

  

onlyto wanderatunlawfulthings,

  

Wrhosedeepnessdoth endcesuchforward wits

  

To

 

practice

 

mーorethan

 

heavenly powerpermits.

 

(道ならぬ事々の深みは, この様に借越な才子の心を誘うものだ. 神様のお許しのない事をし

なさるな.)

 

Tamburlaille は全面的に神を拒定はしていない.Partll・では, 自らearthlygod(1.vi-26)

ともなりi

 

jnvごsl・ighCourt(1.・vi」26) とい・って, 夫界の最高の支配者を,Jove,Zeus,Jupiter

etc, として認めている. Partl における

 

Persia の Cosroe・が常に Jove を口にしていた様に.

そして叉, 一方, Forlhavesworn bysacred Mahomet… (神聖なマホメットに誓ったのだか

ら……) (1,vi.119) といって Tamburlaine は Mahometを神聖化している台詞をも発見出来

る.

                       

      

・‐

 

結局,Part口 において, 作者 Marlowe・の神にたいする

 

inlagery は,・earthlygod を地上の

王と考え,Joveも認め, Mahometをも認め,Christをも認めていて, 更に, Godと Maho・net

とを別個に考えているようだ. その例を挙げると, lf・God or Mahon・etsend anyaid(V.ii,-

11) (若し神か, 或は叉, Mahomet が援助の手をさしのべてくれたら……) といった個所で

ある. そして, この様に神を拒定した者はどの様な終幕になるかを劇化したものだ, と・もい ・え

Z.

 

   

   

事実と作者の独創性について述べると,Part工 の The Prologue で Threaヒeningtheworldwith

high astoundingterms (胆をつぶす様などえらい言葉を使って,

 

この‐世を威嚇する) と述べ

たように, 言葉に対する作者の意識は, その詩形と共に, 先ず第一に, 我々の念頭に置かなけ

ればならない事柄である. これと関連して, 自然を, 叉, 事実を誇張し, 改作し, 着色した, 劇

的効果は勿論のこと, 当時の時代的精神に合致させようとしたところに,,彼の大きな特色の一つ

がある.

 

92

 

Page 10: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C.Marlowe のlmagery(その2)

 

今迄述べて来た問題, すなわち, 古典的なものの影響, 宇宙観, 生理学的, 地理学的, 宗教学

的, 民族学的諸概念, さらに, 力, 美, 思想, 愛情, 特に,,無限を求める心は, ルネッサンス精

神の一大特色であり, SirThomas More,Spenser,Bacon,Sidney,Gilbert,

.Grenvilleなどが追

求したものである.

 

東洋人を先ず取材とした事それ自身, 既に,作者のimageryの中には, 東洋人は野蛮であり,

非文明であり, 殺りくを好むといった底流がある. 歴史的事実, 例えば,Tim日rは婚約者のいる

女性を無理に自分の妻にした事実はないのに, 当時の大衆に受け入れられる様に着色, 改作して

いる. もっとも, こういった考え方は, 作者一人がいだいていたものではないであろうが,

 

Partll で特に着色されている事柄は, Moors(モール人) にたいするそれである.

  

.here

 

prE芙sentthee

 

withtheCrown

 

of Fesse,

  

Andwith an hostofM[oorstrainedtothe war,

  

Whosecoal-blackfaces maketheirfoesretire, (工,vi,15~7)

 

(私は, こ に, Fesse の王冠と, 出陣のため訓練されたモ←ル人の軍隊をお前に与えよう.

そのモール人の石炭の様に黒い顔は敵を退却させ…)

 

とあるのは, 「アジヤの飽食した馬共め!」(Holla,yepamperediadesofAsia!)(IV.iii.1)

と同じ imagery であって, アフリカに住む者は石炭の様に真黒いと考えているのである. 人種

的にいうと, サハラ以北には, いわゆる 「白いアフリカ人」 がいてコ←カソイ ド (白人種) の特

徴の強いエジプト人, モ←ル人, トゥアレグ人などが居る事を全然無視している. モール人は黒

人ではない.

 

先に Timnrの歴史的事実について述べたが1), Partll

 

においては, 既に, 作者の imagery

の中では Timnrの歴史は影が薄くなり, A1exander大王, 或は叉 Trojanstoryが彼の・imagery

の中で, 具体的にいうと第三幕第五場より,closeup

 

して来ている. しかし,両者は人物も時代

も大いに異なるが, カスピ海, 黒海を北に見て, 東はインダス川より, 西は小アジヤを越えてペ

ラまで (A1exandert大王の進軍範囲), といった征服された地域の偉大さ, 及び場所の類似とい

う点に於いて, 彼の imagery は同一のものであったともいふえる. この事は, 既に, Timur,の

歴史は作者にとって, Partllを執筆する頃には, 魅力のなくなったものになったともいえるし

或は叉, Partl で利用出来るものは利用しつくしたともい える.

7 地

  

  

 

lmagery

地理的 imagery を分析してみると, 先ず, Partl で試みた様に, Par[11 でも Asia の問題が

出て来る. こ に出て来る Asia,Asia Minor,Asia Major(V.ii.2etc.), Natolia等は, 作者

にとって同じ様なimagery である様だ,

 

Natolia という言葉は, 工.i.6,1.i.15,11.i.18,11.ii,2,1ロ.v,26, に出て来るが, これ

は Anatolia と同一語源から来ていて, AnatoliaAsiaMinorという譜もあり, WebsterDictio‐

1lary によると, Bosporus の東部の国をさしている様だが, 勿論これは狭意であって,広意では

Asia Minor と同一視出来る場合もある. 作者のこの語に対するimageryは固定したものではな

く, 例えば,111.v.の場合などは, 町の名前であるかの様な印象を与えている. 頭書の Natolia

とは, 黒海と地中海との間の一帯の,広大な高原であるかの様な感を与えるが, 作者は漠然と, 現

在の小アジヤ半島をさしていて,明白な区域範囲はない様だ. もっとも現在 Natoria 高原という

のがあるのでこう推定出来るが,

 

93-

Page 11: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

 

先ず,1.i,に登場する

 

Natolia の王, orcanesは, その Natoliaより遠路約フ百マイル西方に

進軍して来て, Danubiusbanks に居る (1.’i.6‐7)

・, というのだから, 黒海の西方のドナウ川の

ほとりの平原を舞台にして開幕されている事になる. この時の Tamburlaine の位置は, Asiaの

Guyrolfshead の近くに居る (1.i.17) という事になっている. この Guyron とは町の名前で

A1eppo の東北’ Euphrates●」ll(フラテス川) との交わったあたりにあると推定出来る」 ところ

が, すぐ後に登場する Tamburlaine は (1.iv.5),Larissa 高原にいる,

  

Now resttheehereonfair Larissaplains,(1,iv,6)

こ の 一コrissa の平原とは, エジプトとトルコの境にある平原であって, 主人公の地理的移動は非

常に大きいものである.

 

1.i.33では, 作者の imagery は過度に飛躍していて, 当時の観客の, はたして何人が理解出

来たかという事は疑問である. Damubius’sstream,thatrunstoTrebizon,(Trebizonに流れてい

るドナウ川) とそこでは述べているが, Trebizonとはトルコの東北部にあるので, ドナウ川は黒

海を横切ってバツーミの方に流れる事になる. この様な川の流れは実際上不可能な事であるが,

1.iii.85に出て来る TofairNatoliaandtoTrebizon という個所から判断すると, この Trebi-

zon とは Asia Minorの東方で, 遠地という作者のimagery の中にある様である.

 

1.i.46‐48で, Tainburlaine が第一幕に登場する以前に進軍して来たところが出ている.即ち

  

Since Tamburlainehath musteredallhis men,

  

Marchingfrom Cairo northward withhiscamp

  

TO

 

A1exandriaandthefrontiertowns,

 

この事は,Cairo から西北に進軍し, A1exandria に行き, 次に, 前述の A1eppo の東北, その

後南下したという経路が生まれて来る. この遠征図は, A1exander 大王のそれであって, Timur

のそれではない.

 

 

その後,111.iii, で, Theridamas たちは, Balsera,攻撃をちかい,111,iv.でその町の太守が

死亡,IV.iii. で Balsera から

 

Babylon 攻撃に向う. この間,‘・1ロ.v.で Callapinc は A1eppo

にいる. Babylon とは周知の通り, Ninus の妻, Semiramis によって再建された町で, Baby-

lonianempire の中心地であるが,

 

Gov. But,Tamburlaine,inLimnasphaltis’Lake,

    

Therelies moregoldthan Babylonis worth,

    

Wrhich,when thecity wasbesieg’d,工hid:(V.i.115)

 

(だが, タソバレソよ,Limnasphaldsの湖に, この町が包囲された時, 私がかくした Babylon

よりも価値のある黄金があります.)これを全部あげますから命ばかりは助けて・くれと,Governor

が命ごいをする個所がある. この湖はどこにあるかというと,

 

Gov. Underahollow

 

bank,rightopposite

    

Ag司nstthe western gateofBabylon.(V.i.121-2)

更に,

 

Gall, And herelrーay webeholdgreatBabylon,

    

CircledaboutwithLimnasphaltis’Lake(V.・ii.4-5)

 

これから判断しても, 地理学的にこの様な湖は存在していない. Babylon は周知の通り, ュト

フラテス河岸にのぞんだ都市で, 周囲13Kの二重の城壁と堀にかこまれた六つの丘からなってい

る. この都市は, ペルシャによって破壊された後, A1exander大王の手によって復興し, 前三世

 

94

 

Page 12: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C.Marloweのlmagery(その2)

紀までつゞいた歴史を持っている.Partlが Tim日r,Partllが A1exander 大王をimageryに

した事は, これによっても推察出来る.

 

この Babylon

 

より Pereia に Tamburlaine は進軍しようとして,

  

Wrhe1l

 

this

 

isdone, we’1l

 

marchfrom Babylon,

 

And makeour greatesthastetoPersia.(V.i.127-8)

といっているが, 地理的に Persian に行く事は不合理な事であって, Part1と比較した場合,

この Persia は Persepolis でなければならない (1,1.i.37, 及び・1.,11.v.24). 作者はBabylon

にたいする

 

Persia の meterを考慮にしての創作だと考えられる.

 

Partl において,.作者の lmagery では, Damascusが中心都市となっており, 事実歴史上,

この都市は Timar の侵略を受けている. Partll においては, A1exander大王の遠征図に見る

様に東方に伸びていて, Samarkand がその中心都市であって, 次のような台詞を発見する事が

出来る.

 

Tamb. Shallall

 

beloaden withthe martialspoils

\~ewillconvey with usto Persia.

Thenshallmy nativecitySamarcanda.,

Andcrystal wavesoffreshJaertis’stream,

Theprideandbeautyofberprincelyseat,

Befamousthroughthefurth巴5tcontinen鳶;

Fortherelny palaceroyalshallbeplac’d

VVhoseshiningturretsshalldismaytheheavens,

Andcastthefameoflliorl’stowertohell; (1(IV.iii.105一113)

この Samarkand には,事実,歴史上において,A1exander大王が遠征しているし,一方, Timnr

も叉,1370年より1405年までの間, こ に首都をおいている.

 

結局, Partllにおける彼のimageryは, Timnr,A1exander大王の遠征図を頭に画き,John

E1dred(彼は Babylon より A1eppo まで旅行している) の旅行談話を聞き, 或は, r卿αZγ“粥

○γ鰯s

 

718“”γ“粥4), 更に, 0“e房雄4) を見て改作, 着色し, meterを考慮に入れてある場合は

dissyllable,monosyllable のため,Spelling が彼独自のものになっている場合がある.

 

こういった地名的創作の次に, 重要な事は, 三一致の法則を完全に無視しているという事であ

る. 舞台にたいするimageryを大きくするために, 大陸のあちこちに登場人物を配置し, ある時

には, 地理的に矛盾する場合も出て来る.111.iii.1‐3に於いて, 北方に行くのは矛盾していて,

南方に行くのが正しい, といった個所などが挙げられる. 或は叉,A1eppo内に,A1epo,Halep,

A1eb,Halla

 

があるのだから, Halla は A1eppo

 

の内に当然なければならない. その場所は,

A1eppo の東南の区域. これを作者は, Halla と A1epp,o とを同様に考えている(111.v.46)場

合もある. これは Natoliaを, 前に述べた様に, 都市の様に考えているのと同じである.

 

Act 及び Scene

次に, この作品と, 幕及び場との関係を考えてみると,,この作品 ‘‘ α粥る““の解 放eCγeの’’

は4,646行から出来ていて,Partl は2,317行,Partll は2,329行.

Partll はPartl より12行だ

け多いという事になる,Partll のAct.scene の行数は次の通りである.

一95一

Page 13: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

Act

 

l.

SCene1.

   

2,

   

3.

   

4.

   

5,

   

6.

 

 

 

 

 

77

89

16

98

  

Actll.

SCene

 

l.

   

2.

   

3.

   

4.

63′r÷

64″

47″

142″

  

AC七111.

SCene1.

   

2.

   

3.

   

4.

   

5,

80行

158″

63″

91″

172″

  

ActIV.▼’

Scene

 

l,

 

207に÷

   

2.

  

98″

   

3.

 

133″

  

ActV,

SCene1,

   

2.

   

3.

22}行÷

59″

253″

 

上演された当時のことを想像すると, 例えば, Actl,scenev, には, 1分もか らないとい

う事になり, 結局全体としては, scene のよく変る, 騒々しい劇といった感を与える. しかし,

B1ank Verse で書かれているため, 過去上演されていた“G僻みod”〆’の様な単調なものではな

く, 大衆の心を奪う各 scene がスムーズに展開されているので,London において, あの様に観

客の心を引きつけ, 有名になったのだろうと考えられる.

 

なお, Partll の2,329行という行数は,“Goγるod“c“

 

の1,792行よりも長く, 当時の有名な作

品の一つである “刀αリメメα7zdβe効sのβ” の1,920行, 或は叉,“Cα粥るysZs,産物go/Pe寛ぎ〆

’の

1,191行よりも長いが,“r卿 SPα“海ル デαgad夕

“の2,999行, 或は叉,“4γdB〃o′Feり8γsみα‐

粥” の2,402行よりは短い.

 

   

   

 

最後に, この作品を中心とする作者 Marlowe の芸術性について考えてみる. 第一に, 前に述

べた様に, 彼は芸術の目的は徳を教え, 大衆を導くといった根本的態度を持っていた事, 次に今

古類のない自信を持って, 同時代の作品を否定し, この作品こそ悲劇の模範であるという信念に

基礎を置いていた事 (thePrologue 参照), 次に, 同時代及び過去の作品と比較検討したとき彼

の創作法の如何に優れていたかに気付く事である. その中には素材, 詩形, 技巧, 劇的効果, 人

間性, 色彩, 音感, 等, 無限にこの作品から汲みとることが出来る. その間, 忘れてはならない

事は, 行為と所と時の一致に対する反逆である. もっとも, これは,“Goγるad“c’’に始まっては

いるが,Shakespeare にも大きな影響を与えている. いや, E1izabeth 朝演劇全体に, と云って

も過言ではない.

 

作者にとって, 地理的事項でも述べたが, 場所という概念は, さほど重要ではないし, 時につ

いても叉同様な事がいえる. すなわち, 行為が問題であり, その行為者が使用する言語が問題な

のである. 更に, 三一致の法則よりも, 作者にとっては, その主人公の内的, 即ち精神的な問題

を深く追求しようという意企が,Partl

 

より Partll に進むにつれて重要な問題となって来てい

る.

 

実際は, Partll の執筆中, 或は, Timurの歴史上の事実から取材する事柄が, 少なかったの

で, 挿話を使用したのかも知れないが, 結局, Partll は, こういったいくつかの挿話によって

筋が緊密化されたともいいえる.

 

Partl においては, 主人公は, 現実を無視し, 主人公が人間であるという事を無視し, 自分を

神とい>, 人間以上の存在を考えていた. 彼の理想と行為は, 完全に一致し,Partlは happy

end で終っている. 主人公は, 外的にも内的にも非凡であり, 人間としての慾望は,Partlで完

全に満たされたともい える,. しかし, 人間だという現実を無視し, 神に, 運命に挑戦し始めた

頃, 即ち, Partllに入うてから悲劇が芽生えたのである, Partlにおいて同じ様に, 人間であ

るという事を無視し, 自分を神といっても, 理想であり, 希望であり, 「才ある者なら必ず心引

 

96

 

Page 14: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C.Marloweのlmagery(その2)

かれる事柄」 (”Dγ.Fα””“s“ の最後の台詞) であって, 実際に手を出してはいない. 例えば

Mahometの教典を全部焼いてしまう様な行為はしていない.Partlにおいては, 美に守られな

がら, 人間性を保ちつ}理想への適進であるが, Partllにおいては, その美を奪われ, 完全に

狂暴化し, 残酷な scene を展開し, 暗い面を背景にしながら, 強敵への, 即ち, 神への戦であって, Part工 と Partl1 とは, 完全にその次元が異なっているのである. その神も, Joveであり

Christ であり, Mahometであり, 死神でもある. この意味に於いて, Partlは主人公の栄光

への過程であり, Partll は, 現実の世界にお,ける主人公の堕落の過程であり, 死への過程だと

もい える.

 

美のところでも述べたが, 悲劇を生んだ原因, 主人公を堕落へと強いた原因の一つには, 美を

奪われたという事にあって, それ以前は, 人間性を保持している. 例えば, 主人公を攻撃して来

た敵の Theridamas を, 説得力で味方にして流血をさけ (1,1.ii), 或る時は, Persia の国王,Mycetesが戦に敗れて 人さまよい, 王冠をかくそうとしていた時, 主人公は, 正当にその王冠

を奪って見せるといって, 王冠には手をつけない (1,11.iv). 更に叉, Damascus 攻撃で有名な

白, 赤, 黒と変る Tent の件もそうである. 流血をさけ, 三度まで警告を与え, 平和的解決を考

慮している, 主人公の人間性を我々はみのがしてはならない. Egypt のSoldan,王は生捕られて

(1.V.ii), 反対に, 主人公の王者たる風貌と人物に接し, さらに叉, Zenocrate が優遇されて

いることを知って喜びさえしている.

 

Part工1 においては, その様な人間味は何処にも.ないし, 主人公

 

Tamburlaine

 

の股肱と頼む

Theridamasも Techelles,或は, Usumcasaneさえも, 如何に主人公が狂暴な行為をしても, 一

度も忠告してはいない.(Partll では, 敵将であったTheridamas が, Techelles,Usumcasane

以上に Tamburlaine にとっては腹心の臣であるという

 

imageryを作者は表現するために, 先に

(1.V.)Theridamasを登場させ, 次の scene で後者二人を登場させている,)

 

その様な狂暴な行為は, 11.iv.Zenocrate が死んでから予告なしに続行される. 第一に, 主人

公は, 彼女が死んだその町を焼き (11.iV.), 第二に, 戦を怖れる実子長男を自分の手で殺害し,(IV.i.), 第三に捕虜となった二人の王を馬の代用にして戦車を引かせ (IV.iii.), Babylonの市

民をすべて湖に投げ込み (V.i.), 或は, Mahometの教典を全部焼かせたり (V.i,), している.

この様に, 大量虐殺と, 神への挑戦が順次展開されて行き, 最後には神に挑戦したとたんに死床

が待っているのである.

 

次に, 主人公Tamburlaine と scene との関係であるが, Partl工 は全部で21の sceneから成

立していて, 主人公 Tamburlaineが登場する sceneは10であり, 残りの11の sceneには Tam‐

burlaine は登場していない.

 

更に, 開幕後,第四場になって始めて主人公が登場している事は, 非常に興味のあることであ

る. この事は,Partllにおいては, 傍役が重要な意味を持っているという事である, その傍役の

主たるものは4つあって, 第一には, Natolia の国王と, Hungary の国王との争いであって, 宗

教的には, 回教徒とキリスト教徒との戦である. この挿話は,第一幕第 場, 第二場, 更に, 第

二幕第一場,第二場, 第三場と,Partllにおける重要な役割を果している,

 

第二には, Theridamas と Balsera の太守の.未亡人 0lympia との恋であって, 第三幕第四場

第四幕第二場とにおいて展開されている,

 

第三には,Partlにおいて, 主人公に虐待され死亡したトルコ皇帝 Bajazethの息子 Callapine

であって,第一幕第三場, 第三幕第五場, 第五幕第二場に登場, 牢獄をその番人と共に脱走し,

 

97

 

Page 15: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

国王となり, 父の復しゅうのため, 後に, 大軍を率いrて Tamburlaine 攻撃に出陣する.

 

第四には, Tamburlaine

 

自身の三人の息子の挿話である・.

 

これら四つの挿話は, お互いに, 重要な関係を持っているものであって, これらを比較検討し

てみて, 始めて, 作者 Marloweの創作力の偉大さに気付くのである.

 

すなわち, Tamburlaine と彼の愛人 Zenocrate に対応して,.Theridamasと愛人 0lympasを

創作し, 更に, その両将の美であり愛人である

 

Zenocrate と 0lympasを, それぞれこの世から

姿を消させている事である-・地上で我々が現実に追求出来る美とは, 実は, 天国にしかないとい

う作者の imagery を, こ で, 我々は推察出来るのである.

 

第二に, Tan・burlaine の息子 Calyphas と, Tamburlaine が虐殺した国王の息子 Callapine

との対応である. 主人公が如何に栄光の極に達しても, その長男は親の意のま にならず, 主人

公自らの手によって, その長男を殺害するのに対比して, 一方の息子は, 虐殺される直前に脱獄

し, 勇敢にも大軍を率いて父の復しゅうをしようとしている. その時には, 人間 Tamburlaine

は重体で死の床にあるのである.

 

第三には, 神に挑戦する者の二つの例である. Hungary の国王と, Tamburlaine を対応させ

前者は Christにたいする誓約を破棄し, 神を無料1したために, いわゆる, 偽誓の天罪を受けて

死ぬし(ILiii.), 後者は Mahometを無視し, 経文を全部焼却した直後, 死床が待っているので

ある. これら数多くの傍役, 挿話は, 完全無欠であって, 実に驚嘆に値するというほかはない.

 

作者は Prologue で, この作品を悲劇の規範であると大言したが, その悲劇的要素の一つは,

主人公 Tamburlaineの内的葛藤であって,

 

これが当時の多くの演劇と区別されるものである.

先ず, Partllの第一幕第四場で始めて主人公が登場するのであるが, その時には,Part1 とは

全く異なり, 主人公は大きな三人の息子の父親となっていて, 体力的にも,既に衰えをみせてい

て,

  

Wrhen

 

 

am

 

oldandcannot managearms’

  

Bethouthescourgeandterrorofthe world,(1. W.59-60)

 

(わしは, 年老いているから戦えん, 息子よ, お前, 世界の鞭となり恐怖となってくれよ)

 

と Tamburlaine にはふさわしくない事を口にして

 

, 普通の人間となっているが, 一方, ある

時には神に近づき,

   

And proud orcanesof

 

Natolia

   

VVith

 

all

 

hisviceroysshall

 

be

 

so

 

afraid,

  

That,thoughthestones,asat Deucalion’sHood,

   

Vvere

 

turnedto

 

mーen,heshould

 

be

 

overcome.

  

Suchlavish willlmlakeofTurkishblood,

  

Thatjoveshallsendhiswinged messenger

 

Tobid mesheathe myswordandleavethe eld;(1.V1,34-40)

 

(総督たちとーしょにいる Natolia の誇高き orcanes は余り恐れているので, Deucalion の

洪水の時と同様, たと、え石が兵士に生まれ変ったとしても, 打ち負かされてしまうだろう. 俺は

このトルコの血を, そういった手におえない様にするのだから,Joveの神は, 翼ある自分の使者

を送って, 俺に, 剣をおさめて, 戦場から去ってくれというだろう.)ともい〉,ある時は,

  

Thatthis mylife may

 

be

 

asshortto

 

me

  

Asarethedaysofsw氏tZenocrate,(11,IV,36-7)

 

98

 

Page 16: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

C,Marlowe のlmagery(その2)

 

(愛する Zenocrote の命が短かかった様に, 俺のこの命も短いかも知れん.)と急に柔弱にな

る. ところが, 叉, 敵の王orcanes と会見し, ロ論する際に,

  

Villain,theshepherd

’sissue,at whosebirth

  

HeavendidaffordagraciousasPeCt,

 

Andjoin’dthosestarsthatshallbe opposite

  

Even

 

till

 

thedissolutionofthe

 

world,.

  

Andnever meantto

 

mlakeaconqueror

 

sofamousasis mighty Tamburlaine,qll,v.79‐84)

 

(こいつめ, この羊飼いの生まれだって, 俺の誕生にあたっては天の神が仁慈深い御配慮を下

さったのだ. この世が終るまで俺を生かす事に反対し, この偉大なるタソバレソの様に名ある征

服者を決して創らないという星たちをなだめて下さったのだ.)

 

と自分の力を信じたかと思うと, 今度は,

  

Nor

 

alnl

 

madearch‐monarchofthe world,

 

Crowddandinvestedbytl.ehandofJove,(IV,i,150”1)

 

(俺は, jove の神の手によって世界の最高君主になったのでもないし, 王冠を授与され, 権

力を授けられたのでもない.)と, 神を無視し, 次には, 神を敵として,

  

v;′hatdaringgodtor.nLents mybody,thus,

 

Andseekstoconquer might,Tamburlaine?(V.iii.42-3)

 

(俺の肉体を, この様にごう問にかけ, 偉大なるタソバレを征服しようなんて, 何たる大胆不

敵な神だ.)とい ながらも, 人間 Tamburlaineは死出の道にあって, もう再び立つ事は出来な

し・・

       

   

   

     

  

Ah,friends,whatshallldo?lcannotstand.

  

Come,carry meto waragainsttnegods,

  

Thatthusenvy

 

thehealth

 

ofTamLburlaine,

 

(おう,友よ, どうしたらよいだろう?

 

俺は立つ事が出来ん. さあ, このようにタソバレソの

健康をねたんでいる神々と戦うために, 俺をつれて行ってくれ‘)と,

 

こういった精神的な葛藤が, このDrama を悲劇とする一つの大きな要素となっている.

 

T.Kyd作”r廓 SPα諺sた rγαgBdy

“の主人公 Hieronimo の精神的葛藤, 或は叉 ”HIの’2Z-

e‘’’の主人公の復しゅう遷延回避と類似している悲劇的要素でもある.

 

主人公は妻の Zenocraie ばかりでなく, 三人の息子も叉神が創作し,主人公に与えたものと考

えている. だから, 「Jove の神よ, もう一度, 私のいくじのない息子の魂を受け取ってくれ.」

(Jove,receivehisfaintingsoulagain.IV.i.111) という台詞が生まれ, 叉一方,

「joveの神

が私から愛を奪った」(Jovehathsnatched mylovefrom hence,11.IV.107) という台詞をも

見い出せる,

 

この愛人の死は, 主人公をして神に挑戦させると同時に,狂暴にし, 人間は人間であって神で

はないことを知らせるのである. この空しさをうめるために, 或る時は, 柔弱な自分の長男を殺

害し, 或る時は,大量殺りく行為を敢て行なっている.必然を認めなければならないと息子に教

えてはいるもの , 彼自身認めることが出来ず, 人間の行為の空しさ, 現実の空しさを知ってい

ながら, それを率直に見ようとしないところに, 主人公の悲劇が芽生えている. しかし, 事実上

においては, 彼はそれを認め, 現実の有限を知っていたのである, それ故, 三人の息子に力を入

-99

 

Page 17: C.Marlowe の Imagery (その2) : Tamburlaine the Great Part II ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/3780/...Hokkaido University of Education Title C.Marlowe の

  

  

  

れ, 自分の偉業を継がせようと努力しているのである.

 

主人公は, 臨終の時,「俺は夫罪で死なねばならぬ,」(Tamburlaine,thescourgeofGod,mu-

stdie)(V.iii,248) といって他界している,.人間には, いろいろな慾望があり, その中の征服

慾を満すためには, 意志と力が必要だが, 人間性に順応しているものでなければならない, 否定的であってはいけない, というのが, 主人公のみならず, 作者自身の摂理でもあろう. ある意味では, Partl工において, 人間というものは慾望に心を奪われて, 意志と力を作用し, 順次落手する征服にともなって生ずる虚無感, 悲哀感, こういったものを, 作者は, 悲劇的imageryの中

に留意していたともい える.

 

Partllにおける作者の技巧は, 第一に詩形であり, 力強い B1ank verse である.第二には,雄弁術であって, 特に, 111.iv.47‐67 においては, すなわち Theridamasが 0lympasを愛し

彼女を自殺させぬ様, 彼女の美を賞讃し, 愛を表現し, Tamburlaine の偉大さを力説している個

所は,Partllの中で最も作者の意識した個所であると考えられる.

 

第三には, 過去類を見ない様な奇怪な, むしろ grotesque な, 残酷な scene の創作である.これらの scene が完全に大衆の心を奪っている.

 

第四には,.これらの scene の中に, 観客,の気分転換のために,comicalrelief を挿入している

事である. 特に,111.v. において, Tamburlaine らしくなく, Callapineを脱走させた年番を激怒する

 

scene などは, 幼稚にさえ思われる. 一般に彼の comicalreliefの裏面には, 何か暗い影;」がた ゞよっている.

 

第五に, 作品全体にあふれている色彩感である,Partl では, 栄光への道という

 

imagery が

一般に, 赤い色を生み,Partll では, 全体的に黒い, Tamburlaine、は 「B1ackisthe Beauty

ofthe brightestday;」(11.iv.1) とい , 臨終の時にも, 前に述べたように, Tamburlaineの

尿や沈澱物まで黒く変色してしまう.

 

これは現実のこの世の中にたいする作者のimageryであって, 作者にとっては, 現世は暗く,美は, 天国にあるのである. Zenocrate は死んでも, 天国で楽しい生活を永久に送れるという,”Toenterta

・indivineZenocrate” という句を, 一度の台詞の中に, 五度も繰り返している個所

を (11.iv.17‐33), 再度, 我々に思い出させてくれる.

        

(1946.9,19)

  

1)1‘C. Marlowe

 

 

lmagery” - Partlの場合一北海道学芸大学紀要, 昭和39年8月, 第15巻

 

第一部

   

A, 拙稿.

  

2)Hades(P1uto)theBrotherofZeus

 

は下界において絶対的権力を持っているが, 彼の作品では下界の

   

Joveとして登場している. 特色のあるもの.

  

3) この bark については, MermaidSeriesではbackになっているが,oxford版では barke,Bveryman

   

では bark,Methuen版 UNA.EI1is‐Fermor の Textでは bark となっている.

  

4)Boas.”C,Marlowe

”p,98.oxford 版.

  

5) この行数計算は, UNA,BI1is‐Fermor の Methuen 版,”?”加る粥加納e鉱eCだロメ’による.

 

6) Metamり1.318圧,の物話参照,

-100一