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ClearSight System Technology Overview はじめに クリアサイトシステムは、心拍出量(CO)、血圧(BP)、及びその他の血行 動態パラメータを非侵襲的(非観血的)かつ連続的に提供する技術です。ク リアサイトシステムは、幅広い領域の手術患者に血行動態最適化のメリッ トを提供することができます。 開発の経緯 非侵襲的技術であるクリアサイトテクノロジーは、過去45年にわたって 開発が進められ、現在ではゴールドスタンダードのモニタリング技術と比 較して同等の精度であることが確認されています(測定精度の項を参照)。 フィンガーカフ技術を用いた指動脈血圧の測定は1970年代初頭に行わ れ、 1980年代初頭には、 Finapres というデバイスに初めて採用されました 1 。こ の時期には、宇宙飛行士が宇宙空間で使用するための専用システムも開発 されています 2 。さらなる技術改良が続けられ、臨床使用が可能となりました。 測定技術 クリアサイトシステムの心拍出量測定は、次の4つの方法に基づいてい ます。 1.ボリュームクランプ法 3 指動脈の血液量の変化に伴う血管径の変化に対し、血管径を一定に 保つように、カフ圧を迅速に調整することで、カフ圧と指動脈血圧を同じ にします。この調整は、 1秒間に1,000回実施され、その結果がリアルタイ ムな血圧波形として認識されます(図1)。 2.フィジオキャル法 4 最適な血管径の設定はフィジオキャル法と呼ばれるキャリブレーショ ンにより定期的に、かつ自動的に行われます。血圧測定時は、無負荷ボ リューム(動脈壁内外の圧較差が生じていない状態の容積)を保つよう に動脈圧に合わせてカフ圧が変動しています。フィジオキャル中は、カフ 圧を何段階かに変化させてプレチスモグラフ(赤外光受光量)を解析し、 無負荷ボリューム径の受光量を求めて最適径を見直しています。フィジ オキャル法は、血管作動薬投与などに伴う血管抵抗の変化や血管緊張 度の変化にも追従して、正確な血圧を表示する手法です。 3. 指動脈血圧波形から上腕動脈血圧波形を再構築 上腕動脈血圧波形から指動脈血圧波形を推測する臨床データに基づ いた関数の逆関数を利用して指の血圧波形から上腕の血圧波形を推測 します(図2)。 4.動脈圧波形解析から心拍出量を算出 クリアサイトシステムは、生理学的な循環モデルに基づいた動脈圧波 形解析法により、 1回拍出量(SV)及び心拍出量を算出します。 1回拍出量=血圧÷抵抗」で表されます。この関係を応用し、「収縮期 血圧波形の面積(PsA)÷インピーダンス Zin)」という方法で1回拍出量 を算出しています。 このため、クリアサイトシステムでは、心拍出量などの血行動態パラ メータを非侵襲的に測定することができます。 測定精度 クリアサイトテクノロジーは、長年にわたって、十分な精度が確認されて います。血圧測定機能については、従来の非観血的動脈圧測定方法及び観 血的動脈圧測定方法と同等の精度を示しています 5,6 。これらの結果、クリア サイトテクノロジーの血圧測定機能は、 AAMI 基準(米国医療器具開発協 会) 7 に準拠しているという結論が得られています。 同様に、クリアサイトテクノロジーによる心拍出量については、熱希釈法 8 経肺熱希釈法 9 、経食道/経胸壁ドップラーエコー法 10,11 、及び再呼吸法 12 などと比較して、パーセンテージエラーは2339%であり、ほぼ同等の精 度が確認されています 8-12 。クリアサイトテクノロジーについては、心拍出量 の絶対値を測定する精度を持っているほか、心拍出量の経時的変化に追 従できることが確認されています 9,10,13 。これらの研究の結果、クリアサイト テクノロジーは、周術期に心拍出量を連続測定するためのモニターとして 適していると結論付けられています 9,13 クリアサイトシステム クリアサイトシステム(図3)は、フィンガーカフ技術を利用した非侵襲的 心拍出量測定装置です。クリアサイトシステムは、 EV1000 クリティカルケ アモニター及びクリアサイトフィンガーカフなどから構成されております。 これらのシステムは次のような特徴があります。 指動脈 赤外光受光部 カフ 赤外光発光部 図1:指にカフを装着したイメージ図(断面図) 図2:指動脈血圧波形から上腕動脈血圧波形を再構築 Finger pressure Brachial pressure

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  • ClearSight System─ Technology Overview ─

    はじめに クリアサイトシステムは、心拍出量(CO)、血圧(BP)、及びその他の血行動態パラメータを非侵襲的(非観血的)かつ連続的に提供する技術です。クリアサイトシステムは、幅広い領域の手術患者に血行動態最適化のメリットを提供することができます。

    開発の経緯 非侵襲的技術であるクリアサイトテクノロジーは、過去45年にわたって開発が進められ、現在ではゴールドスタンダードのモニタリング技術と比較して同等の精度であることが確認されています(測定精度の項を参照)。 フィンガーカフ技術を用いた指動脈血圧の測定は1970年代初頭に行われ、1980年代初頭には、Finapresというデバイスに初めて採用されました1。この時期には、宇宙飛行士が宇宙空間で使用するための専用システムも開発されています2。さらなる技術改良が続けられ、臨床使用が可能となりました。

    測定技術 クリアサイトシステムの心拍出量測定は、次の4つの方法に基づいてい ます。1.ボリュームクランプ法3

     指動脈の血液量の変化に伴う血管径の変化に対し、血管径を一定に保つように、カフ圧を迅速に調整することで、カフ圧と指動脈血圧を同じにします。この調整は、1秒間に1,000回実施され、その結果がリアルタイムな血圧波形として認識されます(図1)。

    2.フィジオキャル法4

     最適な血管径の設定はフィジオキャル法と呼ばれるキャリブレーションにより定期的に、かつ自動的に行われます。血圧測定時は、無負荷ボリューム(動脈壁内外の圧較差が生じていない状態の容積)を保つように動脈圧に合わせてカフ圧が変動しています。フィジオキャル中は、カフ圧を何段階かに変化させてプレチスモグラフ(赤外光受光量)を解析し、無負荷ボリューム径の受光量を求めて最適径を見直しています。フィジオキャル法は、血管作動薬投与などに伴う血管抵抗の変化や血管緊張度の変化にも追従して、正確な血圧を表示する手法です。

    3. 指動脈血圧波形から上腕動脈血圧波形を再構築 上腕動脈血圧波形から指動脈血圧波形を推測する臨床データに基づいた関数の逆関数を利用して指の血圧波形から上腕の血圧波形を推測します(図2)。

    4.動脈圧波形解析から心拍出量を算出 クリアサイトシステムは、生理学的な循環モデルに基づいた動脈圧波形解析法により、1回拍出量(SV)及び心拍出量を算出します。 「1回拍出量=血圧÷抵抗」で表されます。この関係を応用し、「収縮期血圧波形の面積(PsA)÷インピーダンス (Zin)」という方法で1回拍出量を算出しています。 このため、クリアサイトシステムでは、心拍出量などの血行動態パラメータを非侵襲的に測定することができます。

    測定精度 クリアサイトテクノロジーは、長年にわたって、十分な精度が確認されています。血圧測定機能については、従来の非観血的動脈圧測定方法及び観血的動脈圧測定方法と同等の精度を示しています5,6。これらの結果、クリアサイトテクノロジーの血圧測定機能は、AAMI基準(米国医療器具開発協会)7に準拠しているという結論が得られています。 同様に、クリアサイトテクノロジーによる心拍出量については、熱希釈法8、経肺熱希釈法9、経食道/経胸壁ドップラーエコー法10,11、及び再呼吸法12

    などと比較して、パーセンテージエラーは23~39%であり、ほぼ同等の精度が確認されています8-12。クリアサイトテクノロジーについては、心拍出量の絶対値を測定する精度を持っているほか、心拍出量の経時的変化に追従できることが確認されています9,10,13。これらの研究の結果、クリアサイトテクノロジーは、周術期に心拍出量を連続測定するためのモニターとして適していると結論付けられています9,13。

    クリアサイトシステム クリアサイトシステム(図3)は、フィンガーカフ技術を利用した非侵襲的心拍出量測定装置です。クリアサイトシステムは、EV1000 クリティカルケアモニター及びクリアサイトフィンガーカフなどから構成されております。これらのシステムは次のような特徴があります。

    指動脈

    赤外光受光部

    カフ

    赤外光発光部

    図1:指にカフを装着したイメージ図(断面図)

    図2:指動脈血圧波形から上腕動脈血圧波形を再構築

    Finger pressure

    Brachial pressure

  • 232)540(.leT -7328(代)横 浜東 京 6859)30(.leT -0920(代)162)110(.leT -6810(代)札 幌

    622)680(.leT -2440(代) 岡 山

    522)220(.leT -4743(代)仙 台

    242)280(.leT -2425(代)広 島大 阪 0536)60(.leT -6341(代)537)250(.leT -7610(代)名古屋

    182)290(.leT -5414(代)福 岡

    edwards.com/jp東京都新宿区西新宿6丁目10番1号本社:

    製造販売元

    ※記載事項は予告なく変更されることがありますので予めご了承ください。

    © 2016 Edwards Lifesciences Corporation. All rights reserved. EW2016001 1605_1_8000

    製品に関するお問い合わせは下記にお願い致します。

    1. Wesseling KH. A century of noninvasive arterial pressure measurement: from Marey to

    Peňáz and Finapres. Homeostasis 1995;36:2-32. Hughson RL, Shoemaker JK, Blaber AP, Arbeille P, Greaves DK, Pereira-Junior PP, Xu D.

    Cardiovascular regulation during long-duration spacefl ights to the International Space

    Station. J Appl Physiol 2012 Mar;112(5):719-27

    3. Peňáz J. Photoelectric measurement of blood pressure, volume and fl ow in the fi nger. 1973; Dresden 1973. p.104

    4. Wesseling KH, De Wit B, Van der Hoeven GMA, Van Goudoever J, Settels JJ. Physiocal,

    calibrating fi nger vascular physiology for Finapres. Homeostasis 1995;36:67-82

    5. Eeftinck Schattenkerk DW, van Lieshout JJ, van den Meiracker AH, Wesseling KR,

    Blanc S, Wieling W, van Montfrans GA, Settels JJ, Wesseling KH, Westerhof BE. Nexfi n

    noninvasive continuous blood pressure validated against Riva-Rocci/Korotkoff. Am J

    Hypertens 2009 Apr;22(4):378-83

    6. Martina JR, Westerhof BE, van GJ, de Beaumont EM, Truijen J, Kim YS, Immink RV,

    Jobsis DA, Hollmann MW, Lahpor JR. Noninvasive continuous arterial blood pressure

    monitoring with Nexfi n. Anesthesiology 2012 May;116(5):1092-103

    7. AAMI. American national standard for electronic or automated sphygmomanometers.

    Arlington: Association for the Advancement of Medical Instrumentation 2002

    8. Bogert LW, Wesseling KH, Schraa O, Van Lieshout EJ, de Mol BA, van GJ, Westerhof BE,

    van Lieshout JJ. Pulse contour cardiac output derived from non-invasive arterial pressure

    in cardiovascular disease. Anaesthesia 2010 Nov;65(11):1119-25

    9. Broch O, Renner J, Gruenewald M, Meybohm P, Schottler J, Caliebe A, Steinfath

    M, Malbrain M, Bein B. A comparison of the Nexfin® and transcardiopulmonary

    thermodilution to estimate cardiac output during coronary artery surgery. Anaesthesia

    2012 Apr;67(4):377-83

    ・非侵襲的技術と的確な治療方針の決定を支援 術中に変化し続ける患者状態は、迅速な意思決定が必要です。EV1000 クリティカルケアモニターは、選択できる7つの画面を通じて、より視覚的かつ直感的に、血行動態パラメータを提供し、臨床での意思決定を支援します14。

    ・1台のモニターで多機能なデバイス選択 病院や現場によっては、管理用に6~7種類ものモニターを使用する場合があります。EV1000 クリティカルケアモニターは、1つのモニターで低侵襲モードと非侵襲モードを選択することができ、心拍出量及び連続血圧などの血行動態パラメータを提供します。

    臨床応用 術後合併症のリスクがある患者は、周術期における目標指向型輸液療法(GDT)が有効であることが、多くの臨床エビデンスによって実証されています15。術後合併症は手術リスクと患者リスクの双方に起因するため、循環管理が重要です。従来、心拍出量や1回拍出量などのパラメータを用いた血行動態の最適化は、動脈ラインなどの侵襲を伴うことでしか得られませんでした。しかし、術後合併症のリスクがある待機的手術患者のうち、動脈ラインを留置している患者はごく一部に限られています16。 クリアサイトシステムを用いることで、非侵襲的に心拍出量の測定が可能となり、幅広い領域の手術患者においてGDTの実施をサポートします。クリアサイトシステムは、簡便でかつ従来の測定方法と同等の精度が確認されている非侵襲的心拍出量測定装置です。

    参考文献10. Chen G, Meng L, Alexander B, Tran NP, Kain ZN, Cannesson M. Comparison of

    noninvasive cardiac output measurements using the Nexfi n monitoring device and the

    esophageal Doppler. J Clin Anesthesia 2012 Jun 1;24(4):275-83

    11. Van der Spoel AGE, Voogel AJ, Folkers A, Boer C, Bouwman RA. Comparison of

    noninvasive continuous arterial waveform analysis (Nexfi n) with transthoracic Doppler

    echocardiography for monitoring of cardiac output. J Clin Anesthesia 2012 Jun

    1;24(4):304-9

    12. Bartels SA, Stok WJ, Bezemer R, Boksem RJ, van GJ, Cherpanath TG, van Lieshout JJ,

    Westerhof BE, Karemaker JM, Ince C. Noninvasive cardiac output monitoring during

    exercise testing: Nexfi n pulse contour analysis compared to an inert gas rebreathing

    method and respired gas analysis. J Clin Monit Comput 2011 Oct;25(5):315-21

    13. Bubenek-Turconi SI, Craciun M, Miclea I, Perel A. Noninvasive continuous cardiac output

    by the Nexfin before and after preload-modifying maneuvers: A comparison with

    intermittent thermodilution cardiac output. Anesth Analg. 2013 Jun 11

    14. Michard F, Decision support for hemodynamic management: from graphical displays to

    closed Loop systems, Anesth Analg. 2013 Oct;117(4):876-82

    15. Hamilton MA, Cecconi M, Rhodes A, A systematic review and meta-analysis on the

    use of preemptive hemodynamic intervention to improve postoperative outcomes in

    moderate and high-risk surgical patients, Anesth Analg. 2011 Jun; 112(6):1392-402

    16. Maguire S, Rinehart J, Vakharia S, Cannesson M. Respiratory variation in pulse pressure

    and plethysmographic waveforms: Intraoperative Applicability in a North American

    Academic Center. Anest Analg 2011; 112:94-6

    図3: クリアサイトシステムには、クリアサイトフィンガーカフ、EV1000 クリティカルケアモニター、ハートリファレンスセンサー(HRS)及びポンプユニットが含まれている

    販売名:EV1000 クリティカルケアモニター 認証番号:22300BZX00363