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『建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計』 6章(pp.152~162, 193)の修正版 * 差し替え用としてご利用ください。 このままプリントアウトすると用紙サイズは A4 です。 本書と同じ用紙サイズ B5 での出力を希望の場合は、印刷のプロパティで原稿サイズを「B5に変更(出力用紙サイズは「原稿サイズと同じ」)してからプリントアウトしてください。

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『建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計』

6章(pp.152~162, 193)の修正版

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-152- 第Ⅰ編 動的相互作用を考慮した応答解析

6章 杭基礎の応答評価

6.1 杭支持建物の地震応答解析モデル

杭基礎で支持された建物の耐震性を評価する際には,上部構造は勿論のこと,地震時における杭

体の地震時挙動を正確に把握する必要がある.図 6.1.1 はこれらを評価するための解析モデルであり,

上部構造と杭基礎の応答解析をそれぞれ別々に行う「分離型モデル」と,杭と上部構造を一体とし

てモデル化して応答解析を行う「一体型モデル」がある.

分離型モデルでは, 初に上部構造モデルに群杭の水平地盤ばねと回転地盤ばねを取り付けた SR

モデルで応答解析を行う.次に,杭基礎-地盤のみをモデル化した解析モデルに,建物から基礎部

に伝達する慣性力と表層地盤の地盤変形を入力して杭応力を算定する.このような杭応力の評価法

は応答変位法と呼ばれている.一方,一体型モデルでは,上部構造の応答と杭応力を同時に評価で

きる.

本章では,上部構造の応答と杭応力を独立して評価できる利便性を鑑み,前者の分離型モデルの

利用を念頭に,地盤ばねの評価法や杭応力評価法について解説する.

杭支持建物の応答解析を行う際に,重要となる項目は以下の通りである.

① 杭と杭との相互干渉により生じる「群杭効果」

② 杭の深さ方向に分布させる「杭周地盤ばね」

③ 杭頭位置における「群杭全体の地盤ばね」

④ 杭基礎の「基礎入力動」

⑤ 地震時に生じる「杭応力」

ばね水平地盤

建物

回転地盤ばね 自由地盤

ばね杭周地盤

建物慣性力

自由地盤

ばね杭周地盤

建物

回転地盤ばね

(a) 分離型モデル (b) 一体型モデル

図 6.1.1 杭支持建物の地震応答解析モデル

(応答変位法)

(SR モデル)

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6章 杭基礎の応答評価 ―153―

①の群杭効果は,杭基礎の地盤ばね評価における大きな特徴の 1 つであり,6.2 節でその特性と評

価法を紹介する.実際の耐震設計への適用を踏まえ,6.3 節では②,③の地盤ばねについて,6.4 節

では④の基礎入力動について詳述する.6.5 節では⑤の地震時に発生する杭応力の評価法を,6.6 節

では杭周地盤ばねと杭体に非線形性を考慮した杭応力の評価法を記述する.

6.2 地盤ばねの群杭効果

6.2.1 群杭効果とは

群杭の杭頭を剛接合した基礎盤を水平方向に静的に戴荷した力を P ,その際の杭頭変位を 0u と

すると,群杭の杭頭位置における水平地盤ばね定数 HGK は次式で表される.

0uPK HG = (6.2.1)

群杭の水平地盤ばねは,一本の杭で評価した単杭の

水平地盤ばね HSK を杭本数倍した値に比べ小さくな

る.これは図 6.2.1 に示すように,群杭中の 1 本の杭が

変形すると周辺地盤にも変形が生じ,それにより他の

杭も変形するため,群杭では単杭に比べより小さな力

で変形させることができるためである.これは群杭効

果として知られており,群杭の杭本数を pN とすると,

水平地盤ばねの群杭係数 Hβ は式(6.2.2)で定義される.

pHS

HGH NK

K=β (6.2.2)

群杭基礎の地盤ばねの算定にあたっては,群杭効果を適切に考慮することが非常に重要となる.

水平地盤ばねの群杭係数 Hβ は杭間距離や地盤条件などによって変化するが,既往の研究から概ね

pN1 と言われている.これは,例えば 10 列×10 列から構成される 100 本の群杭基礎であっても,

地盤ばね剛性は杭本数 10 本分相当にしかならないことを意味する.

回転方向や上下方向の地盤ばねについても水平方向と同様に群杭効果があり,回転地盤ばねの群

杭係数 Rβ は式(6.2.3),上下地盤ばねの群杭係数 Vβ は式(6.2.4)で定義される.

=+

=pN

iiVSpRS

RGR

xKNK

K

1

2

β (6.2.3)

pVS

VGV NK

K=β (6.2.4)

P

f

u

図 6.2.1 群杭の力の伝達

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-154- 第Ⅰ編 動的相互作用を考慮した応答解析

ここに, RGK :群杭基礎の回転地盤ばね, RSK :単杭の回転地盤ばね, ix :回転中心から各杭ま

での距離, VGK :群杭基礎の上下地盤ばね, VSK :単杭の上下地盤ばね,である.

図 6.2.2(a)に示す杭基礎と 2 層の地盤条件を用いて計算した水平,回転,上下方向の群杭係数の計

算例を,同図(b)~(d)に示す.解析法は薄層法を用いて群杭と単杭の地盤ばねを計算し,式(6.2.2)~

式(6.2.4)により群杭係数を計算した.薄層法は後述するように成層地盤の杭基礎の地盤ばねを厳密

に評価できる手法である.

これらの結果から,いずれの方向でも,杭本数が多くなるにつれ,また杭間距離が短いほど,群

杭係数が小さくなり群杭効果が大きくなる.また回転方向の群杭効果は,水平方向や上下方向に比

べ小さいことが分かる.

群杭効果は,杭径,杭長,杭間距離,地盤剛性などによって異なる.実設計で群杭効果を簡便に

取り入れることができるように,静的加力実験やパラメータ解析に基づく経験式や回帰式が提案さ

れている.以降では,群杭係数を実用的に算定するための評価法を 2 つ紹介する.

6.2.2 群杭係数の評価法-1

(1) 水平方向

水平方向の地盤ばね定数に対する群杭係数の簡便な算定法として,板状住宅のような長辺方向と

短辺方向で杭間距離や杭本数が異なる杭基礎にも適用できる式(6.2.5)と式(6.2.6)を示す1).これらは,

SV =150m/s の半無限一様地盤を対象として,杭本数,杭間距離,杭配列をパラメータとした薄層法

表層地盤厚さ15m

貫入長1m

B=1m

支持地盤

表層地盤せん断波速度VS =150m/s密度ρ=1.5t/m3

ポアソン比ν=0.45杭諸元

EP=2.1 10 kN/m×7

杭間隔S=2m, 4m, 8m(杭間隔比S/B=2, 4, 8)

せん断波速度VS =300m/s密度ρ=1.8t/m3

ポアソン比ν=0.45

・・・

・・・

・・・・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

B

S

S

杭本数 ×NP=2 2, 3 3× × × × 本杭, 4 4, 5 5, 6 6 (a) 杭と地盤の条件

(b) 水平 (c) 回転 (d) 上下

図 6.2.2 群杭係数の計算例

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6章 杭基礎の応答評価 ―155―

によるパラメトリックスタディを行い,長辺方向(X)と短辺方向(Y)のそれぞれに対して群杭係

数 HXβ , HYβ を回帰したものであり,地盤条件が限定されたものである.

( ) ( ) ( ) ( ) ( )0.43 0.540.3 0.74 0.590.4 2 2− −− −

= ⋅ ⋅ ⋅S B S B

HX X YS B N Nβ

(6.2.5)

( ) ( ) ( ) ( ) ( )0.54 0.430.3 0.59 0.740.4 2 2− −− −

= ⋅ ⋅ ⋅S B S B

HY X YS B N Nβ (6.2.6)

ここに,S :杭間距離,B :杭径, BS :杭径に対する杭間距離の比, XN :X 方向の杭本数, YN :

Y 方向の杭本数である. BS は,加振方向の値を用いる.

(2) 回転方向

回転地盤ばねの群杭係数は 1 とする.

1=Rβ (6.2.7)

ただし,大規模群杭の場合には,回転地盤ばねを過大に評価する可能性があるため,後述する評価

法-2 を用いた方がよい.

(3) 上下方向

上下方向の地盤ばね定数に対する簡便な算定式として,杭本数と杭径と杭間距離および杭長のみ

をパラメータとした式(6.2.8)を示す1).これは図 6.2.2(a)に示す杭と地盤の条件を元に,杭長をパラ

メータとした検討を行い,回帰したものである.

( ) ( ){ }45.0005.0log5.0 ++−−= BLBSPV Nβ (6.2.8)

ここに, L :工学的基盤までの杭長(支持層貫入部を除いた杭長), BL :杭長杭径比である.

(4) 薄層法との比較

水平,上下方向の群杭係数の評価法を,薄層法と比較した結果の一例を図 6.2.3 に示す.検討対象

評価式( )S B/ =2評価式( )S B/ =6評価式( )S B/ =10

薄層法( )S B/ =2薄層法( )S B/ =6薄層法( )S B/ =10

評価式( 、 )S B L B/ =2 / =15評価式( 、 )S B L/ =2 /B=30評価式( 、 )S B L B/ =2 / =45評価式( 、 )S B L B/ =8 / =15

評価式( 、 )S B L B/ =8 / =30評価式( 、 )S B L B/ =8 / =45薄層法( )S B/ =2薄層法( )S B/ =8

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 5 10 15 20

Nx=2

群杭

係数

杭本数 NX × N

Y (本)N

XN

Y

NX

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 10 20 30 40

評価 層

群杭係

杭本数 NP(本)

=30

=30

=15

=45

=15

=45

NP

L / B

L / B

L / B

L / BL / BL / B

(a) 水平 (b) 上下 図 6.2.3 群杭係数の評価法-11)と薄層法との比較例

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-156- 第Ⅰ編 動的相互作用を考慮した応答解析

はそれぞれパラメトリックスタディに用いたモデルであり,上下方向は図 6.2.2(a)に示したモデルで

ある.水平方向は SV =150m/s の半無限一様地盤で,杭長は 15m,その他の杭諸元は同じである.評

価法は薄層法とよく対応している.ただし,比較的少ない杭本数での検討結果であることに注意す

る必要がある.

6.2.3 群杭係数の評価法-2

(1) 水平方向

少数本杭から多数本杭に対して提案された評価式を式(6.2.9)~(6.2.11)に示す2).これは杭剛性と地

盤剛性などもパラメータに含めた式である.ただし,杭配置は正方配置を基本としているため,長

辺と短辺の杭本数・杭間隔が著しく異なる場合には適用することが困難となる場合もある.文献3)

では,長辺方向にはそのまま適用し,短辺方向には杭本数を(短辺方向の杭本数)×(短辺方向の

杭本数)として適用することが提案されている.また,評価法-2 は均質な表層地盤と支持地盤から

なる 2 層地盤の検討結果に基づいているため,表層地盤を均質地盤に置き換えて適用する必要があ

る.

aPH N −=β

(6.2.9)

( ){ }5.165519.0 HBfa x ++=

(6.2.10)

( ){ } ( )[ ]( ) 75.02 log416.03.0 SBEEHBf SPx −+=

(6.2.11)

ここに, Hβ :両方向に対する群杭係数, PN :総杭本数, H :支持層以浅の層厚+杭径, PE :杭

のヤング係数,ただし中空の杭の場合は ( )64/4BIE PP π を用いる, SE :表層地盤(均質地盤)の

ヤング係数である.

(2) 回転方向

式(6.2.12)~(6.2.20)に示す評価式2)を用いる.

( ) bPR N −= 9β

(6.2.12)

zfb 2.2= )2.0( ≤zf

(6.2.13)

26.09.0 += zfb )2.0( ≥zf

(6.2.14)

( ) ( ){ }( )SBEEf SPz δλλ −+= 15.0log3.0 (6.2.15)

ここに, λ :表層地盤の応力分担率,δ :杭頭と杭先端の変位比であり,式(6.2.16)~(6.2.20)で

与えられる.式(6.2.15)中の )log( SP EE の値は 3.18 で頭打ちとする2).

( ) ( ){ }LSLSLSLS eedee ββββλ −− −++=− 21 (6.2.16)

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6章 杭基礎の応答評価 ―157―

( ) ( ){ }LSLSLSLS eedee ββββδ −− ++−= 2 (6.2.17)

bSP kAEd ′= β

(6.2.18)

( ) 5.0AES PVS =β (6.2.19)

lSk Vb ′=′

(6.2.20)

ここに, L :支持層貫入部を除いた杭長, A :杭の断面積, AEP :杭の軸剛性, VS :表層地盤

単位深さあたりの鉛直の杭周地盤ばね(式(6.3.34)), bk ′ :支持地盤への貫入部のばね, VS ′ :支持層

地盤の VS (式(6.3.34)中の eG を支持層のせん断剛性 bG に置換),l:杭の支持層への貫入長である.

式(6.2.20)による支持地盤への貫入部のばね bk ′ は,支持地盤への貫入部分側面の影響が大きい場

合のばねとして設定されている3).文献3)には記述されていないが,支持層への貫入が小さい場合に

は,後述する式(6.3.38)による杭先端の上下地盤ばね定数 kbを用いることができる.

(3) 上下方向

式(6.2.21)~(6.2.23)に示す評価式2)を用いる.

cPV N −=β (6.2.21)

zfc 0.2= ( )2.0≤zf

(6.2.22)

26.07.0 += zfc ( )2.0≥zf

(6.2.23)

(4) 薄層法との比較

水平,回転,上下方向の群杭係数の評価法を,薄層法と比較した結果の一例を図 6.2.4 に示す.図

中の群杭係数評価法が式(6.2.9)~(6.2.23)による結果であり,1000 本程度まで薄層法と良く対応して

いることが分かる.なお同図中の□や△は,少数本杭と多本数杭の群杭係数間に成立する「相似則」

を用いる方法4)により多本数杭の群杭係数を求めており,薄層法と精度良く対応している.

6.3 杭基礎の地盤ばねの評価法

SR モデルによる上部構造の地震応答解析を行う際には,基礎底面に付与する水平地盤ばねと回転

地盤ばねを評価する必要がある.群杭全体の地盤ばね算定の過程で,またその後の検討で杭応力を

算定する際に,杭周地盤ばねの評価が必要となる.実用法である限耐法5)では,群杭全体の地盤ば

ねは直接基礎としてコーンモデルによって評価した地盤ばねを適用している.そのため,杭剛性や

杭本数が多い杭基礎では実状と異なってくる.杭基礎の地盤ばねを詳細に評価できる手法として,

薄層法,軸対称 FEM,3 次元 FEM などがある.軸対称 FEM では基礎形状や杭配置を円周上に置き

換える必要があるが,いずれの手法も杭間の相互作用による群杭効果や地盤,基礎条件を詳細に考

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-158- 第Ⅰ編 動的相互作用を考慮した応答解析

慮できる.しかし,これらの詳細法を一般の耐震設計で用いるにはやや難しい.

本節では,実設計への適用を念頭に置いて,杭周地盤ばねや群杭全体の地盤ばねを簡便に評価す

る方法を示す.SR モデルに用いる水平,回転方向の地盤ばねのほか,建物の上下応答に必要な上下

方向の地盤ばねの評価法についても述べる.

6.3.1 水平地盤ばねの算定

(1) 水平方向の杭周地盤ばね

水平方向の杭周地盤ばねの評価方法として,以下の①~③について示す.

①基礎指針6)に基づき地盤の N 値から求めた地盤反力係数 0hk を用いる方法

②波動論に基づき評価される Francis の式7)を用いる簡便法 25)

③薄層法を利用した詳細法

②と③では,3 章の表層地盤の応答解析から求めた等価地盤物性を用いて評価する.

(ⅰ) 基礎指針の地盤反力係数

基礎指針では,N 値に応じて決めた基準水平地盤反力係数 0hk (水平変位 1cm 時の水平地盤反力

係数)を用いて式(6.3.1)~(6.3.4)で地盤ばね定数iCk が与えられる.

L=20m

貫入長1m

杭径B=1m支持地盤Vs2=300m/sγ = 1.8t/m3ν=0.4, h=5%

表層地盤Vs1=100m/sγ = 1.8t/m3ν =0.4, h=5%

杭諸元EP=2.1×106t/m2γ = 2.4t/m3ν =0.167, h=0%

CASE B-1:3×3,5×5,7×7,10×10,20×20,30×30本杭

杭間隔比S/B=2.5,4.0,6.0

(a) 杭と地盤の諸元 (b) 比較結果

図 6.2.4 群杭係数の評価法と薄層法との比較例(評価法-2)

(土方ら 2)から抜粋.ここでは Hβ , Vβ , Rβ を HHα , VVα , RRα と表記している.)

杭諸元 Ep=2.05×107 kN/m2

γ=2.4 t/m3 ν=0.167,h=0%

表層地盤 VS1=100 m/s γ=1.8 t/m3 ν=0.4,h=5%

支持地盤 VS2=300 m/s γ=1.8 t/m3 ν=0.4,h=5%

杭間隔比 S/B =2.5,5.0,6.0 CASE B-1:3×3,5×5,7×7,10×10,

20×20,30×30 本杭

1m

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6章 杭基礎の応答評価 ―159―

4/300

−′⋅⋅⋅= BEkiiih ξα (kN/m3) (6.3.1)

iiNE 7000 = (kN/m2) (6.3.2)

0.6≤BS の場合, 1.015.0 += BSξ

0.6>BS の場合, 0.1=ξ (6.3.3)

( ) ( ){ }iihiihiC HBkHBkk 01105.0 += −− (6.3.4)

ここに, 0h ik :基準水平地盤反力係数, ( )ih Bk 0 :単位厚さあたりの i 層の地盤ばね定数, iH :i

層の層厚, iα :評価法によって決まる定数(N 値を用いる場合は,粘性土が 60,砂質土が 80), iN :

i 層の N 値, B :杭径, B′ :杭径を cm で表した無次元化数値, S :杭間距離である.

基礎指針による地盤ばねは水平変位 1cm の定義であり,非線形性を含んだばね値となっている.

他のばねとの比較は 6.6 節「杭周地盤ばねと杭体に非線形性を考慮した計算」で示すこととする.

また 8 章「試設計例Ⅰ」,10 章「試設計例Ⅲ」で具体的な計算例を示しているので,そちらをご覧

頂きたい.

(ⅱ) Francis の式を用いる簡便法

Francis の式と Gazetas らによる方法8)を参考に,杭周地盤ばね定数と減衰係数を評価する 25).ま

ず,地盤を適当な層厚に分割する.i 層の層厚を iH ,ポアソン比をiSν ,密度を iρ ,せん断波速度

をiSV ,ヤング係数を

iSE ,杭径を B ,杭のヤング係数と断面 2 次モーメントをそれぞれ Epと Ipと

おくと,i層における単杭の単位厚さあたりの水平方向の地盤ばね定数ifSk ,および減衰係数

igSc は,

それぞれ式(6.3.5)と式(6.3.6)で与えられる( fSk は Bkh0 と同じ単位である).

12/14

213.1

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

−=

PP

iS

iS

iSfSi IE

BEEk

ν (Francis の式) (6.3.5)

( )iSiLaigSi VVBc += ρ57.1 (6.3.6)

ここに,iLaV :i 層の Lysmer の波動速度 (

)1(4.3

iS

iSVνπ −

= )

Vesic は図 6.3.1 に示すように,弾性支承梁の理論に基づき,半無限一様地盤上にある無限長の梁

の任意点に荷重を作用させたときの力―変形関係の式を求めている9).Francis は圧縮側となる前面

地盤と引張り側となる後面地盤の両者の抵抗を考慮して 2 倍とすることにより,式(6.3.5)を求めて

いる.また,式(6.3.6)は,杭の振動方向,直交方向に伝播する波動の速度が,それぞれ LaV , SV と

見なし得るという仮定に基づいている. LaV は Lysmer の波動速度で,地表面基礎の上下地盤ばねの

減衰係数の近似式から得られたものである.係数 1.57 は,図 6.3.2 に示すように,直径 B の円形断

面と等価な周長の正方形断面として求められており,薄層法との比較により妥当性が検証されてい

る 25).また,文献 26)では,円形を外接する正方形断面として式(6.3.6)の係数を 2 としているが,こ

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-160- 第Ⅰ編 動的相互作用を考慮した応答解析

の場合についても後述の図 6.3.9 と同様に薄層法と対応することが確認されている.

単杭の各節点に取り付ける水平の杭周地盤ばねのばね定数ifSk ′ ,および減衰係数

igSc′ は,i 層の層

厚を iH ,各節点に隣接する 2 層の支配層厚を乗じることにより,式(6.3.7)と式(6.3.8)で計算される.

{ }ifSiiifSifS HkHkk ⋅+⋅=′−− 1)1(5.0 (6.3.7)

{ }igSiiigSigS HcHcc ⋅+⋅=′−− 1)1(5.0 (6.3.8)

群杭の杭頭での地盤ばねを評価する際には,群杭効果を考慮した杭周地盤ばねを用いるアプロー

チが考えられる 27).式(6.2.2)より,群杭の地盤ばね剛性 HGK と単杭の杭頭の地盤ばね剛性 HSK との

関係は下式となる.

HPHSHG NKK β⋅⋅= (6.3.9)

ここに, PN :杭本数, Hβ :水平方向の群杭係数

いま,弾性支承梁の理論解によれば単杭の杭頭の地盤ばね定数 HSK と杭周地盤ばね定数 Sk (一

様な地盤を仮定したときの単位厚さあたりの地盤ばね定数)の関係として式(6.3.10)が得られる.

( ) 4/34/14 SPPHS kIEK ⋅= (6.3.10)

群杭を一本に集約したモデルを考えた場合,群杭基礎の地盤ばね定数 HGK と群杭全体に付く杭周

地盤ばね定数 Gk の関係も同様に式(6.3.11)で与えられる.

( ) 4/34/14 GPPPHG kIENK ⋅= (6.3.11)

したがって,式(6.3.9)~(6.3.11)より式(6.3.12)が得られる 27).

3/4HPSG Nkk β⋅⋅= (6.3.12)

図 6.3.1 Francis の式の概念図 図 6.3.2 土方らの方法による概念図 25)

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6章 杭基礎の応答評価 ―161―

これを各 i 層で設定した Francis の杭周地盤ばねに適用して,式(6.3.13),(6.3.14)が得られる.

eNkk PifSifG ⋅⋅= , 3/4

He β= (6.3.13)

eNkk PifSifG ⋅⋅′=′ , 3/4

He β= (6.3.14)

なお,減衰係数は群杭効果が小さいとして群杭係数を 1 とし,式(6.3.15),(6.3.16)を適用する 27).

PigSigG Ncc ⋅= (6.3.15)

PigSigG Ncc ⋅′=′ (6.3.16)

ただし,杭が密に配置された場合に減衰係数が過大評価となることを避けるために,基礎底面の

大きさから式(6.3.17)の減衰係数を算定し,小さい方を採用することとする 12).

( )iSXiLaYigBi VBVBc += ρ2 (6.3.17)

ここに, YB :振動直交(Y)方向の基礎幅(見付け幅), XB :振動(X)方向の基礎幅.

これは,図 6.3.2 に示したように,振動方向と直交方向にはそれぞれ LaV , SV の速度で波動が伝

播するため,それぞれに応じた基礎幅を式(6.3.6)に与えたものである.

各節点に取り付ける減衰係数igBc′ は,式(6.3.8)と同様に式(6.3.18)で与える.

{ }igBiiigBigB HcHcc ⋅+⋅=′−− 1)1(5.0 (6.3.18)

以上より,群杭基礎に与える減衰係数は式(6.3.19)で与える.

( )gBigGigi ccc ′′=′ ,min (6.3.19)

(ⅲ) 薄層法

薄層法による評価法は,成層地盤内における杭配置や群杭効果をより厳密に考慮できる詳細法で

あり,実用法や簡便法の検証に用いることができる.以下では,薄層法による群杭の地盤ばねの算

定法について簡単に紹介する.

初に,3 次元成層地盤における薄層法の加振解(i 点を加振した時の j 点の変位)を用いて,群

杭の全節点に対する地盤の柔性マトリックスを求める.加振条件として,リング加振や円内等分布

加振が用いられる場合が多い.逆行列から中実系の地盤の剛性マトリックスを算定後,図 6.3.3 に示

すように,杭と同体積の土柱の剛性マトリックスを差し引くことにより,地盤剛性マトリックス

[ ]PPK が算定される.これに杭剛性を足し合わせれば,群杭と地盤の剛性マトリックスが求められ

る.この地盤剛性マトリックス [ ]PPK は,群杭全体の各質点位置における地盤連成を考慮したフル

マトリックスとなっている.詳細については文献10)などを参考にされたい.詳細法ではこの地盤剛

性マトリックス [ ]PPK をそのまま用いる.

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-162- 第Ⅰ編 動的相互作用を考慮した応答解析

また,杭のモード形を仮定して,群杭全体に対するフルマトリックスを水平地盤ばねとせん断地

盤ばねに縮約する方法もある11).この地盤ばねの算定法の考え方を図 6.3.4 に示す.地盤剛性マトリ

ックス [ ]PPK に対し,同一深さにおける群杭の変位は同一として,等価な 1 本杭の地盤剛性マトリ

ックス [ ]PK を求める.更に [ ]PK に対し,水平とせん断の 2 つの変形モ-ドを与えることにより,

水平地盤ばね [ ]aK とそれを結ぶせん断地盤ばね [ ]bK に集約する.これらの地盤ばねは周波数に依存

した動的な地盤ばねとして得られるため,応答解析では静的近傍の実部の値から地盤ばね定数,虚

部の接線勾配から減衰係数を求める.なお,せん断ばねの減衰は小さいことが分かっているため,

通常減衰係数を 0 としている.

ここに、

n m×

n m×

Kpp

(水平地盤ばねとせん断地盤ばねに縮約)

m

m

Ka =Ka

1

Ka2

Kam

0

0

...

m

m

Kb =□□□

0

0

...□

□ = Kb1

1

-1

-1

:地盤の深さ方向に連成した フルマトリックスm

m

Kp薄層法の加振解

U=1

12

i

m

U=1

Ka = Pi

Ui Kb = Pi

U- Ka

i iPiPi

(水平地盤ばね)

12

i

m

(b) 水平地盤ばねとせん断地盤ばねの算定

(a) 薄層法による地盤ばねの算定

(せん断地盤ばね)

縮約に用いる変位モード

Pile I

2

i-1

i+1

Pile J

m

m

j

(同一レベルで同一変位として縮約)

m

m

Ka m

m

Kb+ :水平地盤ばねとせん断地盤ばね

:群杭の地盤剛性フルマトリックスn:杭本数m:鉛直方向の離散化数

i P Ii

UJj1

1

図 6.3.4 薄層法による地盤ばねの算定法11)

PIi

uJj

薄層法の加振解 地盤土柱の剛性 杭剛性 群杭と地盤の剛性マトリックス

(中実系の地盤の剛性マトリックス)

図 6.3.3 薄層法による群杭の地盤剛性マトリックスの算定

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―193―

参 考 文 献 1) 護雅史・森川和彦:加振方向を考慮した群杭効率の推定式の提案,第 3 回日本地震工学会研究発表会,

pp.416-417,2004 2) 土方勝一郎・今村晃ほか:群杭係数の評価方法に関する研究,日本建築学会構造系論文集,No.476,

pp.57-66,1995 3) 土方勝一郎・成川匡文ほか:杭支持された火力発電所建屋の動的相互作用評価法,日本建築学会構造系

論文集,No.502,pp.39-46,1997 4) 土方勝一郎・柳下文雄・富井隆:群杭係数の相似則に基づく杭基礎の動的インピーダンス評価法,第 9

回日本地震工学シンポジウム,pp.1201-1206,1994 5) 国土交通省建築研究所:改正建築基準法の構造関係規定の技術的背景,2001 6) 日本建築学会:建築基礎構造設計指針,2001 7) Francis, A. J.: Analysis of Pile Groups with Flexural Resistance, J. Soil Mech. and Foundations Div., ASCE,

Vol.90, No.Sm3, pp.1-32, 1964 8) Gazetas, G. and Dobry, R.: Horizontal Response of Piles in Layered Soils, J. Geotech. Engrg. Div., ASCE, Vol.110,

pp.20-40, 1984 9) Vesic, A. B.: Bending of Beams Resting on Isotropic Elastic Solid, J. Engrg. Mech. Div., ASCE, Vol.87, No.EM2,

pp35-53, 1961 10) 日本建築学会:入門・建物と地盤との動的相互作用,1996 11) 宮本裕司・酒向裕司ほか:非線形,液状化地盤における杭基礎の地震応答性状に関する研究,日本建築

学会構造系論文集,No.471,pp.41-50,1995 12) 酒向裕司・宮本裕司:弾性支承梁の理論解を用いた成層地盤中の杭基礎の水平地盤ばねの簡易評価法,

第3回日本地震工学会研究発表会,pp.418-419,2004 13) Chang, Y. L.: Discussion on “Lateral Pile-Loading Test” by Feagin, Trans., ASCE, pp.272-278, 1937 14) Randolph, M. F. and Wroth, C. P.: Analysis of Deformation of Vertically Loaded Piles, J. Geotech. Engrg. Div.,

ASCE, Vol. 104, pp.1465-1488, 1978 15) 地盤工学会:杭基礎の設計法とその解説,1985 16) 泉洋輔・三浦賢治:基礎の耐震設計用地下震度に関する研究,日本建築学会構造系論文集,No.597,

pp.47-53,2005 17) 宮本裕司:基礎の地震荷重と相互作用,2002 年度建築学会大会構造部門(振動)パネルディスカッショ

ン,地震動と地震荷重を繋ぐ-現状と将来の課題-,2002 18) 時松孝次・鈴木比呂子・佐藤正義:地盤-杭-構造物系動的相互作用が杭応力に与える影響,日本建築

学会構造系論文集,No.587,pp.125-132,2005 19) Broms, B.B.: Design of Laterally Loaded Piles, Journal of the Soil Mechanics and Foundations Division, ASCE,

Vol.91, pp.79-99, 1965 20) 酒向裕司・宮本裕司:変動軸力を考慮した杭基礎の地震応答に関する解析的検討,日本建築学会構造系

論文集,No.523,pp.79-86,1999 21) 日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説,1999 22) American Concrete Institute: Building Code Requirements for Reinforced Concrete (ACI-318-89) and

Commentary 23) 日本建築学会:鋼構造塑性設計指針,1975 24) 宮本裕司・酒向裕司・岡安隆:杭支持建物の耐震性能評価に対する検討,日本建築学会構造系論文集,

No.547,pp.59-65,2001 25) 土方勝一郎・柳下文雄・富井隆:群杭の動的インピーダンス簡便評価法,日本建築学会構造系論文集,

No.455,pp.73-82,1994 26) 長谷川正幸:群杭における水平地盤反力係数 khB の実用算定法,清水建設研究報告,Vol.69,pp.37-46,

1999 27) 土方勝一郎・成川匡文ほか:Penzien 型モデルによる多数本杭で支持された杭基礎建屋の地震応答解析法

(その 1)~(その 5),日本建築学会大会学術講演梗概集,B-2,pp.359-368,1999