好中球を活性化し関節リウマチ等の...

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1 好中球を活性化し関節リウマチ等の 治療薬につながるペプチド 群馬大学大学院 工学研究科 応用化学・生物化学専攻 教授 若松 長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 バイオサイエンス学科 准教授 向井秀仁

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  • 1

    好中球を活性化し関節リウマチ等の治療薬につながるペプチド

    群馬大学大学院 工学研究科応用化学・生物化学専攻

    教授 若松 馨

    長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部バイオサイエンス学科

    准教授 向井秀仁

  • 2

    想定される用途

    好中球の浸潤によって起こる以下の障害の予防・治療・診断• 脳梗塞,心筋梗塞に伴う障害• 劇症肝炎• 糖尿病性足病変• 関節リウマチ• 床ずれ• Ⅰ型糖尿病

  • 3

    (血管内)

    ケモカインインターロイキン8 など

    補体由来因子C5aなど

    ?

    好中球etc.

    死細胞

    アポトーシス細胞

    侵入微生物ネクローシス細胞

    他炎症発生部位

    好中球の生体反応:・炎症箇所への浸潤・遊走・過酸化物の産生(殺菌)、分解酵素の分泌貪食、炎症性ケモカインの産生

    好中球とは

    • 免疫細胞である白血球のひとつ• 侵入した微生物や異物・細胞破壊生

    成物を検出・除去する

    (組織内)

  • 4

    好中球が引き起こす問題

    血流が途切れてダメージを受けた組織に,再び血液が流れ込むと,血液中の好中球が組織に入り込んで組織を破壊する(虚血再還流障害).• 心筋梗塞,脳梗塞• 劇症肝炎• 床ずれ

    自己免疫疾患で組織に入り込んで組織を破壊する.• 関節リウマチ• Ⅰ型糖尿病

  • 5

    研究背景

    好中球(白血球の一種)を刺激し,呼び寄せる未知の因子が生体内に予め用意されていることが予想されていた.

    その因子を同定すれば,好中球の過剰な反応による種々の病気を予防したり,治療できる可能性がある.

    ブタの心臓からペプチド性因子を2つ同定した(6年かかった).他にも多く存在するが,同じやり方ではラチがあかない.

    遺伝子の情報を利用する新しい方法を考案し,40以上の因子を新たに同定した.

  • 6

    ( TSK CM-2SW )

    Analytical RP-HPLC

    ( C2/C18 )

    ( Vydac C18 )

    PAG 1-B II(F12) peak

    Analytical RP-HPLC

    Analytical RP-HPLC

    ( Develosil C4 )

    Analytical RP-HPLC

    Analytical RP-HPLC( Develosil C18)

    ( Develosil C18)

    PAG1-I-c2

    Cation exchange HPLC

    ブタ心臓 (13.2 kg)100℃, 10 min

    Precipitation by 60% Acetone

    Pellet

    SP-Sephadex C-25

    (pH5.0 )

    Sephadex G-25

    PAG 1 PAG 2 PAG 3

    Preparative RP-HPLC( ODS 120Å YMC )

    2M Pyridine - AcOH2M Pyridinefraction ( P ) fraction ( PA )

    1 M AcOH - 20 mM HCl

    Supernatant( Crude extract )

    Mitocryptide-2 Mitocryptide-1

    1M AcOHfraction ( A )

    Mukai, H., et. al. J. Biol. Chem., 283, 30596, (2008),Mukai, H., et al., J. Immunol., 182, 5072, (2009).

    膨大な手間と時間(6年間)が必要だった.

    好中球活性化ペプチドの抽出・精製

    酸処理

    アセトン沈殿

    イオン交換クロマト

    ゲル濾過クロマト

    逆相HPLC

    イオン交換HPLC

    逆相HPLC

  • 7

    B

    C

    A

    好中球活性化ペプチドは単離・構造決定したもの以外にも多数存在する.

    好中球活性化ペプチドの精製過程

  • 8

    新技術の基となる研究成果・技術

    1. 好中球を活性化するペプチド51種・MCT-1:

    Leu-Ser-Phe-Leu-Ile-Pro-Ala-Gly-Trp-Val-Leu-Ser-His-Leu-Asp-His-Tyr-Lys-Arg-Ser-Ser-Ala-Ala

    ・MCT-2:formyl-Met-Thr-Asn-Ile-Arg-Lys-Ser-His-Pro-Leu-Met- Lys-Ile-Ile-Asn

    ・他に49種 → 全体を 「マイトクリプタイド」 と命名「ミトコンドリアの蛋白質の中に隠れている機能性ペプチド」 の意

    1. 好中球を活性化するペプチドを予測するソフトウェア

  • 9

    ●mitocryptide-3

    20

    40

    00

    40

    80

    mitocryptide-5

    20

    40

    40

    80

    010 1000.01 0.1 1

    0

    mitocryptide-4

    10

    40

    80 30

    20

    000

    Pept id e [

    ent)

    遊走

    活性(△)

    βヘキソサ

    ミニダーゼ分泌

    刺激活

    性(●)

    同定した好中球活性化ペプチドによる遊走およびβヘキソサミニダーゼ分泌刺激活性

    • 低濃度のペプチドは好中球を炎症部位へ引き寄せる(△).

    • ペプチドの濃度が高くなると,好中球は動かなくなる(△).

    • 高濃度のペプチドがあると,好中球は分解酵素を分泌する(●).

    合目的的!!

  • 10

    従来技術とその問題点

    ケモカインは好中球を活性化することが分かっているが,それだけでは好中球の活性化を説明できない.• サイトカインは新たに合成される必要があるので,効果を発揮する

    のに時間がかかるが,好中球は迅速に活性化されている.

    • 他にも因子があるハズだが,未知.• 未知の因子がわかれば,種々の病気の治療・診断につながる.

    どのような蛋白質が生体内でできるかは遺伝子から予測しやすいが,機能性ペプチドの生成は予測が困難.• 生体内では膨大な種類のペプチドができる.• 機能がある断片なのか,単なる分解物(ゴミ)なのかの判別が困難.

  • 11

    DNA

    mRNA

    前駆体蛋白質

    転写

    翻訳

    プロセッシング酵素

    蛋白質分解酵素による切断

    成熟蛋白質・生理活性ペプチド

    蛋白質と生理活性ペプチドの生合成

    「活性を持たない」断片ペプチド

  • 12

    好中球活性化ペプチドの予測方法

    タンパク質データベース (Swiss-Prot, ver. 50)↓

    ヒトのミトコンドリアタンパク質 (441種)の抽出↓

    限定分解酵素による切断予測および残基数の限定

    絞り込み(正味の電荷が+2以上,両親媒性ヘリックス形成など)↓

    予測ペプチドの化学合成と活性評価(遊走活性,βヘキソサミニダーゼ分泌活性)

  • 13

    新技術の特徴・従来技術との比較

    マイトクリプタイドは,虚血後再び血液が流れた時にすぐに起きる好中球活性化を説明できる.• 細胞内に予め用意されているので.• 組織の損傷後に生産されるケモトカインでは説明できない.• 専用の受容体も存在する.

    → これをターゲットにすると治療・予防薬や診断薬が開発できる可能性が高い.

    好中球を活性化するペプチドを迅速に,数多く,高い確率で予測できる.• 従来は予測方法が存在しなかった.

  • 14

    想定される業界

    開発品目(@製薬企業,食品企業)• 治療薬• 予防薬• 診断薬• トクホ

    利用場所• 病院・医院• 介護施設• 被災地

  • 15

    実用化に向けた課題

    関節リウマチなどの炎症部位にマイトクリプタイドがどの程度存在するかを定量する必要がある.

    好中球の移動(ケモタキシス)は既存のマイトクリプタイドで阻害(脱感作)することができるが,好中球からの炎症性物質の放出をブロックする化合物の開発が必要(リードはある).

    マイトクリプタイドの「受容体」の更なる同定.

  • 16

    応用が可能な種々の可能性

    マイトクリプタイド類似物を使って好中球を脱感作(不活性化)することによって:• 脳梗塞,心筋梗塞に伴う障害の予防・治療.• 劇症肝炎の治療• 関節リウマチや床ずれの予防・治療.

    体の中のマイトクリプタイドを定量することによって:• 関節リウマチの早期診断.

  • 17

    企業への期待

    組織に含まれるマイトクリプタイドの定量系の開発に協力いただきたい.

    介護・QOL系への応用に興味のある企業の意見をお聴ききしたい.

  • 18

    本技術に関する知的財産権

    • 発明の名称 :免疫細胞刺激活性を有する機能ペプチド

    • 出願番号 :PCT/JP2007/068970• 公開番号 :WO2008/038766• 特許番号 :US-7893199• 出願人 :国立大学法人群馬大学• 発明者 :向井秀仁,若松 馨

  • 19

    産学連携の経歴

    • 2010年~米国Cambridge Isotope Laboratories社と共同研究

  • 20

    お問い合わせ先

    群馬大学TLO

    TEL 0277-30-1171~1175

    FAX 0277-30-1178

    e-mail [email protected]