為替レートと輸出金額・輸出価格の関係について...産業活動分析(平成25年1~3月期)...
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産業活動分析(平成25年1~3月期)
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為替レートと輸出金額・輸出価格の関係について
24年12月以降、為替レートが円安方向に推移している。一般に、為替レートの変化は、
自国通貨建ての輸出価格が変化することによって、自国通貨建ての輸出金額に直接的に反
映される。また、為替レートの変化の一部が外貨建ての輸出価格に転嫁・還元されれば、輸
出先における価格競争力の変化などを通じて、輸出数量にも影響が及ぶものと考えられる。
企業の想定為替レートを上回る円高が続いた22年8月及び23年8月に経済産業省が実
施したヒアリング調査1によれば、企業からは「採算が合わず、生産レベルを落として受注を絞
り込まざるを得ない状況」、「現在の円高では価格転嫁、円建て取引などもできないため、長
期化すれば、取引量の減少や取りやめになるおそれがある」といった声が挙がっていた。
一方、円高是正が進んだ25年1~3月期には、「円安によって輸出採算性が向上し、価格
競争力が回復している」、「円安になり、今まで止まっていた引き合いやプロジェクトが動き始
めている」といったコメントが聞かれている2。
そこで、本稿では、為替レートの変化と輸出金額及び輸出価格の変化にどのような関係が
あるのかをみるため、以下の分析を行う。
(1)輸出金額の変化を数量要因、品質要因、為替要因、契約価格要因の4つに分解し、
どの要因がどの程度輸出金額の変化に寄与しているのかを把握する。また、輸出金額に占
めるシェアの大きい化学製品、電気機器、輸送用機器及び一般機械の4品目について、品
目別に輸出金額の変化の要因分解を行う。
(2)為替レートの変化の一部は外貨建ての輸出価格にも反映されれば、これが輸出先に
おける価格競争力を変化させることなどにより、輸出数量にも影響を与えるものと考えられる。
そこで、為替レートを説明変数、輸出物価を被説明変数として、輸出物価の為替レート弾性
値(為替レートが1%変化したら輸出物価が何%変化するか)を算出する。
1 「円高の影響に関する緊急ヒアリング」(22年8月公表)及び「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」
(23年9月公表)。 2 「景気ウォッチャー調査」(内閣府) 25年2月調査及び3月調査結果による。内閣府は、円安が持続する中で、
製造業を中心に受注や採算の改善がみられた、としている。
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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(1) 為替レートの推移
為替レート3の推移をドル・円レートでみると(第1図)、14年初めから17年始めまでは
円高方向に推移、以降19年半ばまでは円安方向に推移していたが、その後は円高方
向に転じ、20年10~12月期にはリーマンショックの影響を受けて急速な円高が進んだ。
23年7~9月期には1ドル 77.05 円となって以降はおおむね横ばい圏内で推移してい
たが、24年10~12月期には1ドル 88.67 円(前期比 11.7%の円安)、25年1~3月期
には1ドル 94.75 円(同 4.17%の円安)となり、足下では円安方向に転じている。名目実
効為替レートでみても、ドル円レートと比べるとリーマンショックのあった20年10~12月
期を除いて変化の度合いは小さいものの、ほぼ同様の傾向を示している。
一方、実質実効為替レートでみると、国内と海外の相対価格の変化を反映して、総じ
て円安傾向が強め、円高傾向が弱めに出ている。このため、21年以降はおおむね横ば
い圏内の動きとなっていたが、足下ではドル・円レート、名目実効為替レートと同様に、
円安方向に推移している。
第1図 為替レートの推移
(注)1.日本銀行が公表している実効為替レートは22年基準だが、本稿では、他の統計との比較を容
易にするため、17年=100 となるよう水準を調整している(以下同様)。
2.為替レートのグラフは、上が円安、下が円高になるよう目盛りを設定している(以下同様)。
資料:「実効為替レート」(日本銀行)
3 一国の産業・企業の価格競争力を考える上では、ドル・円レートのような二国間の名目為替レートよりも、実質
実効為替レートを用いるのが一般的とされる。ここで、「実質」為替レートとは、名目為替レートを自国及び競合
国の製品価格(両国のインフレ率)で調整したもの、また、「実効」為替レートとは多数の貿易相手国通貨を貿易
量等のウェイトで加重平均したものである。なお、本稿で用いる実効為替レートを算出する際のウェイトは、第三
国競争(例えば、米国市場における日本車と韓国車の競合など)を加味したものとなっている。伊藤雄一郎、稲
場広記、尾崎直子、関根敏隆(2011)「日銀レビュー2011-J-1 実質実効為替レートについて」(日本銀行)
参照。
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25 年
(17年=100)(円/ドル)ドル・円(中心相場)
名目実効為替レート(右目盛り)
実質実効為替レート(右目盛り)円安
円高
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(2)輸出金額の要因分解
この間の輸出金額(季節調整値)の推移をみると(第2図)、19年までは世界的な景
気拡大などを背景に増加傾向にあったものの、リーマンショックにより20年10~12月期
から大幅に減少した。21年1~3月期に下げ止まったものの、21年10~12月期までは
前年を下回る水準が続いた。22年は横ばいながら前年を上回って推移したものの、そ
の後は東日本大震災直後の23年4~6月期に減少するなど弱めの動きが続き、足下2
5年1~3月期に前期比で3四半期ぶりの増加となった。
第2図 輸出金額(季節調整値)と実質実効為替レートの推移
(注)輸出金額の季節調整値は、直近10年(120か月)分のみが公表されており、毎月更新されるため、
15年4月から25年3月までの値がそろう平成25年3月速報時点のデータを用いている。
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」(日本銀行)
輸出金額の変化は輸出数量の変化と輸出価格の変化に分解することができる4。また、
輸出価格の変化は為替レートの変化、外貨建て価格の変化及び輸出品目の品質の変
化が組み合わさったものと考えられる。そこで、輸出金額の前年同期比を以下の方法で
為替要因、契約価格要因(契約通貨建て価格の変化)、品質要因(輸出品目の品質の
変化)及び数量要因に分けて見てみる。
まず、財務省が作成・公表している貿易統計を用いて、輸出金額指数の前年同期比
を輸出数量指数の前年同期比(数量要因)と輸出価格指数の前年同期比に分解する。
次に、輸出価格指数を日本銀行が作成・公表している企業物価指数の輸出物価指数
(円ベース)で除した値を品質指数とし5、輸出価格指数の前年同期比を品質指数の前
4 「貿易統計」(財務省)では、円建ての輸出金額指数、円建ての輸出価格指数及び輸出数量指数が公表され
ている。 5 輸出物価指数は、品質が一定の商品の価格変動をとらえる指標であるため、品質調整を行うことにより、品質
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(17年=100)(17年=100)
輸出金額
実質実効為替レート(右目盛り)
円
高
円
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年
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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年同期比(品質要因)と輸出物価指数(円ベース)の前年同期比に分解する。さらに、輸
出物価指数(円ベース)を輸出物価指数(契約通貨ベース)6で除した値を為替指数とし、
輸出物価指数(円ベース)の前年同期比を為替指数の前年同期比(為替要因)と輸出
物価指数(契約通貨ベース)の前年同期比(契約価格要因)に分解する。以上をまとめ
ると、輸出金額指数の前年同期比は、数量要因、品質要因、為替要因及び契約価格
要因の4つに分解できる。
要因分解の結果をみると、リーマンショックの影響により輸出金額が大幅に減少した
期間(20年末から21年末まで)は、輸出数量の減少寄与が大きく、次いで為替要因、
契約価格要因が減少に寄与している。一方、品質要因は増加方向に寄与している(第
3図)。
また、リーマンショックの影響が一巡し、前年同期比で増加に転じた22年1~3月期
から23年1~3月期をみると、数量要因の増加寄与が最も大きく、契約価格要因、品質
要因の寄与は相対的に小さい。逆に、為替要因は引き続き減少方向(輸出金額の前年
比とは逆向き)に寄与しており、リーマンショック後の反動増による数量要因の増加寄与
が落ち着いた23年4~6月期以降も、同程度の幅の減少寄与が継続している。
直近の2四半期(24年10~12月期及び25年1~3月期)をみると、為替要因は増加
方向に寄与している。24年10~12月期は、為替要因、品質要因以外は減少に寄与し
ており、特に数量要因の減少寄与が大きいことから、輸出金額は前年同期比で減少と
なったものの、25年1~3月期は為替要因の増加寄与が拡大した一方、その他の要因
の寄与は相対的に小さかったことから、輸出金額は前年同期比で3四半期ぶりに増加
に転じている。
の変化による価格変動が除かれている。一方、輸出価格指数は、輸出額を取引数量で除した平均単価から求
めているため、品質の変化による価格の変動や、取引数量全体に占める高付加価値製品の構成比の変動も含
まれている。このため、品質指数の推移をみることにより、輸出品の品質の変化を把握することができる。ただし、
輸出価格指数と輸出物価指数は、対象商品群の範囲や指数算式等が一致していないため、両指数の乖離幅
が全て品質変化を表すものではないことに留意する必要がある。 6 企業物価指数では、契約通貨建て価格(円建て契約のものは円建て価格)をそのまま指数化した輸出物価
指数(契約通貨ベース)と外貨建ての調査価格を円価格に換算した上で指数化した輸出物価指数(円ベース)
が公表されている。なお、24年12月時点での輸出物価指数の契約通貨別構成比は、円が 38.6%、ドルが
51.4%、ユーロが 6.7%、その他が 3.3%となっている。
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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第3図 輸出金額指数の要因分解(17年=100)
前年同期比、寄与度(%、%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
要因別の寄与度の方向性と大きさを比較しやすくするため、各四半期の要因別寄与
度を景気局面ごとにまとめて単純平均してみると(第4図)、第14循環の景気拡張期(1
4年4~6月期から20年1~3月期まで)では数量要因の増加寄与が総じて大きく、次い
で品質要因が増加に寄与している。一方、為替要因は、15年から17年前半までは減
少寄与、17年後半から19年半ばまでは増加寄与となっており、全体を均してみると寄
与度はほぼゼロとなっている。
また、第14循環の景気後退期(20年4~6月期から21年1~3月期まで)においては、
品質要因、契約価格要因は上昇に寄与したものの、数量要因及び為替要因の減少寄
与がともに大きく、輸出金額は大幅な減少となっている。
第14循環以降(21年4~6月期以降)は、引き続き主に品質要因が上昇に寄与し、
数量要因の寄与は僅かな上昇へと転じたものの、為替要因の減少寄与が相対的に大
きく、輸出金額の増加率の平均は小さなものにとどまっている。
次に、方向性にかかわらず、要因別寄与度の絶対的な大きさを比較するため、各四
半期の要因別寄与度の絶対値の平均をとってみる(第5図)。これをみると、12年から直
近25年1~3月期までの期間において、輸出金額への寄与が平均して最も大きかった
のは輸出数量要因、次いで為替要因であることが分かる。
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為替要因 契約価格要因
品質要因 輸出数量要因
輸出金額指数
年
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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第4図 景気局面ごとの要因別寄与度の平均 第5図 要因別寄与度(絶対値)の平均
(%ポイント) (%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
同様の方法で、輸出金額に占めるシェアが大きく、おおむね対応する輸出物価指数
のデータが得られる品目について、輸出金額の前年同期比を要因分解した結果は以
下のとおりである。
化学製品は、契約価格要因の寄与が相対的に大きい(第6図)。これは、原材料であ
る原油やナフサなどの資源価格の変動が製品価格に直接的に影響を与えやすいため
とみられる。
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輸出数量要因 品質要因 契約価格要因 為替要因
6.7
-14.0 輸出数量要因, 0.3
3.3
4.6 2.6
契約価格要因, -0.1
契約価格要因, 1.2
契約価格要因, 0.3
為替要因, 0.0
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第14循環(拡張局面) 第14循環(後退局面) 第14循環以降
為替要因 契約価格要因 品質要因 輸出数量要因
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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第6図 化学製品の輸出金額指数の要因分解(17年=100)
前年同期比、寄与度(%、%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
景気局面ごとの要因別寄与度をみると(第7図)、第14循環の拡張局面及び第14循
環以降でともに契約価格要因が最も大きく寄与しており、特に、第14循環以降におい
て輸出金額全体と比べて平均的に高めの伸びとなった要因となっている。
また、要因別寄与度の絶対値の平均をみても(第8図)、輸出金額全体と異なり、12
年以降の期間において、輸出金額の変化に対して契約価格要因の影響が最も大きく、
輸出数量要因は2番目となっていることが分かる。
第7図 景気局面ごとの要因別寄与度の平均 第8図 要因別寄与度(絶対値)の平均
(%ポイント) (%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
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為替要因 契約価格要因
品質要因 輸出数量要因
輸出金額指数
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輸出数量要因 品質要因 契約価格要因 為替要因
7.3
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輸出数量要因, 4.1
品質要因, -1.4
8.7
品質要因, -1.0
8.4
-8.9
5.6
為替要因, -1.4
-8.2
為替要因, -3.5
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第14循環(拡張局面) 第14循環(後退局面) 第14循環以降
為替要因 契約価格要因 品質要因 輸出数量要因
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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次に、電気機器は、品質要因が相対的に大きくほとんどの期間で上昇方向に寄与し
ている一方、契約価格要因はほぼ一貫して低下方向に寄与している(第9図)。これは、
同品目には半導体等電子部品など技術開発による品質向上の大きな情報化関連の輸
出財が多く含まれており、品質を固定してみた場合、価格の下落が大きいためと考えら
れる7。
第9図 電気機器の輸出金額指数の要因分解(17年=100)
前年同期比、寄与度(%、%ポイント)
(注)要因分解には「電気・電子機器」の輸出物価指数を用いている(第10、11図も同様)。
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
各四半期の要因別の寄与度を景気局面ごとにみると(第10図)、輸出金額全体と比
べ、いずれの局面においても品質要因の増加寄与、契約価格要因の低下寄与が大き
いものの、前者が後者を常に上回っている。
また、要因別寄与度の絶対値の平均をみると(第11図)、輸出数量要因に次いで品
質要因が輸出金額への影響が最も大きかったことが確認できる。
7 ただし、輸出価格指数の電気機器にはパーソナルコンピューター、外部記憶装置などの電算機類は含まれ
ていない。
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為替要因 契約価格要因
品質要因 輸出数量要因
輸出金額指数
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産業活動分析(平成25年1~3月期)
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第10図 景気局面ごとの要因別寄与度の平均 第11図 要因別寄与度(絶対値)の平均
(%ポイント) (%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
輸送用機器は、数量要因が非常に大きく、契約価格要因の寄与は総じて小さい(第1
2図)。これは、輸送用機器の変動への寄与が大きい乗用車の販売数量は、単価が高く
耐用年数も長いため、景気の動向に左右されやすいことによると考えられる。また、輸送
用機器は他の品目と比べて東日本大震災の影響によるとみられる輸出金額の減少が
顕著にみられる。
第12図 輸送用機器の輸出金額指数の要因分解(17年=100)
前年同期比、寄与度(%、%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
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輸出数量要因 品質要因 契約価格要因 為替要因
6.9
-24.6 輸出数量要因, 1.2
8.1
9.8 7.2
-6.0
-5.7
-4.4
為替要因, -0.9
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為替要因, -2.7
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第14循環(拡張局面) 第14循環(後退局面) 第14循環以降
為替要因 契約価格要因 品質要因 輸出数量要因
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為替要因 契約価格要因
品質要因 輸出数量要因
輸出金額指数
年
産業活動分析(平成25年1~3月期)
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要因別寄与度を景気局面ごとに平均してみると(第13図)、特に第14循環の景気後
退期における輸出数量要因及び為替要因の低下寄与が大きい。一方、第14循環以降
では輸出数量要因が増加寄与となっているが、これはリーマンショックや東日本大震災
による輸出数量の落ち込みが大きかった分、その反動が大きめに出ているためと考えら
れる。
また、各四半期の要因別寄与度の絶対値の平均をみると(第14図)、輸出数量要因
の影響が最も大きく、次いで影響の大きい為替要因を大きく上回っていることが分かる。
第13図 景気局面ごとの要因別寄与度の平均 第14図 要因別寄与度(絶対値)の平均
(%ポイント) (%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
一般機械は、総じて輸送用機器と近い動きとなっており、数量要因が非常に大きく、
契約価格要因の寄与は総じて小さいのは同様である。一方、13年後半や19年、20年
前半などにおいて、輸送用機器と比較して品質要因の寄与がやや大きいようにみえる。
これは、一般機械には受注品などで個別商品の品質(能力や生能)に大きなばらつきが
あるとみられる原動機や半導体等製造装置などが含まれることも影響している可能性が
ある8(第15図)。
8 これに加え、輸出価格指数の一般機械にはパーソナルコンピューターなどが含まれているなど輸出価格指数
と輸出物価指数の対象商品群が異なることによる影響も考えられる。
0
2
4
6
8
10
12
14
輸出数量要因 品質要因 契約価格要因 為替要因
8.8
-30.1
4.8
品質要因, 0.7
2.8
品質要因, 1.6
契約価格要因, 0.0
契約価格要因, 4.2 契約価格要因, 2.2 為替要因, 0.6
-10.5
為替要因, -3.0
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
第14循環(拡張局面) 第14循環(後退局面) 第14循環以降
為替要因 契約価格要因 品質要因 輸出数量要因
産業活動分析(平成25年1~3月期)
- 11 -
第15図 一般機械の輸出金額指数の要因分解(17年=100)
前年同期比、寄与度(%、%ポイント)
(注)要因分解には「はん用・生産用・業務用機器」の輸出物価指数を用いている(第16、17図も同様)。
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
次に、要因別の寄与度を景気局面ごとの平均をみると(第16図)、これも輸送用機器
と似たような寄与度の大きさとなっているが、いずれの局面においても為替要因の寄与
は一般機械の方が僅かに小さくなっている。
また、各四半期の要因別寄与度の絶対値の平均をみても(第17図)、いずれの要因
も輸送用機器とほぼ同様の影響の大きさとなっているが、一般機械の方が品質要因の
影響がやや大きく、契約価格要因、為替要因の寄与がやや小さくなっている。
第16図 景気局面ごとの要因別寄与度の平均 第17図 要因別寄与度(絶対値)の平均
(%ポイント) (%ポイント)
資料:「貿易統計」(財務省)、「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
-80
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
Ⅰ
└
Ⅱ
12
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
13
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
14
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
15
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
16
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
17
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
18
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
19
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
20
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
21
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
22
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
23
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
└
Ⅱ
24
Ⅲ
年
Ⅳ
┘
Ⅰ
25
為替要因 契約価格要因
品質要因 輸出数量要因
輸出金額指数
年
0
2
4
6
8
10
12
14
輸出数量要因 品質要因 契約価格要因 為替要因
5.4
-24.8
5.8
3.9
品質要因, -0.3
品質要因, 2.0 契約価格要因, -0.4
契約価格要因, 4.2 契約価格要因, 1.2
為替要因, 0.2
-7.6
為替要因, -2.4
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
第14循環(拡張局面) 第14循環(後退局面) 第14循環以降
為替要因 契約価格要因 品質要因 輸出数量要因
産業活動分析(平成25年1~3月期)
- 12 -
(3)輸出価格の為替レート弾性値
(2)では、輸出金額の変動を要因別に寄与度分解することにより、為替要因と数量要
因のそれぞれの寄与の大きさを示したが、実際には、為替レートの変化は、主に外貨建
ての輸出価格の変化(価格競争力の変化)を通じて、輸出数量にも影響を与えるものと
考えられる9。
まず、実質実効為替レートと輸出物価指数(契約通貨ベース)の12年以降の推移を
比べてみると(第18図)、両者は連動している様にみえるものの、契約通貨ベースの輸
出物価の変化は実質実効為替レートの変化に比べて非常に小さいことがわかる。そこ
で、以下では、為替レートの変化が外貨建ての輸出価格10にどの程度転嫁・還元される
のかを試算してみる。
第18図 実質実効為替レートと輸出物価指数(契約通貨ベース)の推移
(注)日本銀行が公表している輸出物価指数は22年基準だが、他の統計指標との比較を容易にする
ため、17年=100 となるよう水準を調整している(以下同様)。
資料:「実効為替レート」、「企業物価指数」(日本銀行)
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)が22年に実施したアンケート調査11によれ
ば、為替変動を現地での販売価格、あるいは輸出先への販売価格に反映させる頻度と
して、「3ヶ月に一度」と回答した日本企業の海外現地法人が 19.7%、「半年に一度」が
9 為替レートの変化が輸出数量に影響を与えるその他の経路として、採算性が改善(悪化)することによって、企業が輸出先での広告宣伝費や販売促進費などを増額(減額)し、輸出数量が増加(減少)する、といったこと
が考えられる。また、より長期的には、収益の増加(減少)によって、①企業が設備投資や研究開発、人材獲得
により競争力を強化することが容易(困難)になること、②企業が生産拠点を海外に移転したり、国内に回帰した
りすることにより、国内の生産体制が変化すること、などが輸出数量に影響する可能性がある。 10 輸出数量指数は円ベースの指数であるため、輸出物価指数(契約通貨ベース)を用いる。 11 伊藤 隆敏、鯉渕 賢、佐藤 清隆、清水 順子(2011)「RIETI ディスカッション・ペーパー11-J-070 貿易
ネットワークにおけるインボイス通貨選択と為替リスク管理:『平成 22 年度日本企業海外現地法人アンケート調
査』結果概要」(RIETI)
80
90
100
110
120
130
80
90
100
110
120
130Ⅰ└Ⅱ12
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ13
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ14
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ15
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ16
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ17
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ18
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ19
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ20
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ21
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ22
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ23
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ└Ⅱ24
Ⅲ
年
Ⅳ┘Ⅰ25
(17年=100)(17年=100)
輸出物価指数(契約通貨ベース)
実質実効為替レート(右目盛り)
円
安
円
高
年
産業活動分析(平成25年1~3月期)
- 13 -
19.9%、「1年に一度」が 31.3%であった。これを踏まえ、1~4四半期前の実質実効為
替レートを説明変数、輸出物価指数(契約通貨ベース)を被説明変数とした以下の単純
な推計式で実質実効為替レートの係数(∑ )を推計することにより、契約通貨建て輸出
物価の為替レート弾性値(為替レートが1%変化したら輸出物価が何%変化するか)を
試算した。
∑
: 期の輸出物価指数(契約通貨建て)、 : 期の実質実効為替レート
推計期間:昭和56年1~3月期~平成25年1~3月期
推計結果によれば、輸出物価(契約通貨ベース)の為替レート弾性値(∑ )は 0.30 と
なった1213。これは、実質実効為替レートが1%円高(円安)となった場合、契約通貨建て
輸出物価は 0.30%上昇(低下)することを意味しており、為替変動の全てではなく一部
(3割程度)が輸出物価に転嫁・還元されることを示している。例えば、10%の円高局面
においては、輸出品の契約通貨建て価格が3%程度上昇する一方、円換算した輸出価
格は差引きで7%程度低下することから、輸出先における価格競争力が低下すると同時
に円ベースの採算性・収益性も悪化することとなる14。逆に、10%の円安局面において
は、契約通貨ベースの輸出価格が3%程度低下し輸出競争力が増すのに加え、円換
算した輸出価格が7%上昇するため円ベースでの収益も改善する。
このように、為替レートの変化の一部は契約通貨建ての輸出価格に反映されるため、
為替変動は輸出先での価格競争力にも影響を与えると考えられる。
12 ただし、為替レート弾性値の推計値は説明変数や推計期間によって異なるため、推計結果は幅をもってみる
必要がある。例えば、「政策課題分析シリーズ5 為替変動の輸出物価への影響分析」(内閣府)によれば、輸
出物価指数の変動を被説明変数、名目実効為替レート、国内企業物価指数及び世界の消費者物価指数の変
動を説明変数として推計した結果、輸出物価指数の「為替転嫁率」(為替レートの変動が輸出価格の変動に転
嫁される率)は1980年代には概ね30%程度であったものが、90年代は10%程度まで低下している。また、
「日本経済2011-2012」(内閣府)によれば、輸出物価を名目実効為替レートで説明するモデルで推計した
結果、1980年代から2000年頃までは、輸出物価指数の為替弾性値はおおむね 0.4 程度となっている。 13 なお、リーマンショック後の20年10~12月期~21年7~9月期の4期間は、実質実効為替レートの上昇幅が極めて大きく、輸出物価の変化の方向性とも異なっていることから、同期間を除いて推計を行ったところ、ほ
ぼ同様の結果(0.30)となった。 14 ただし、為替レートの変化による採算性・収益性への影響は、原燃料や中間財となる輸入品の調達コストの
変化も合わせて考慮する必要がある。
産業活動分析(平成25年1~3月期)
- 14 -
(4)まとめ
本稿では、為替レートの変化と輸出金額及び輸出価格の変化との関係について分析
を行った。
輸出金額の前年同期比を数量要因、品質要因、為替要因及び契約価格要因の4つ
に分解すると、数量要因は、リーマンショック前の景気拡張期における輸出金額の増加
及びその後の景気後退期における輸出金額の減少にともに最も寄与している一方、為
替要因はリーマンショックを含む景気後退期に数量要因に次ぐ減少寄与となっており、
その後の期間でも総じて減少に寄与した唯一の要因となっている。寄与度の絶対値の
平均で比べると、数量要因の影響が最も大きいものの、為替要因の影響はそれに次ぐ
大きさとなっている。
また、品目別にみると、輸出金額全体と比べて、①化学製品では契約価格要因の寄
与が大きい、②電気機器では品質要因の増加寄与及び契約価格要因の減少寄与がと
もに大きい、③輸送用機器、一般機械では数量要因の寄与が特に大きく、契約価格要
因の寄与が小さい、といった特徴がみられる。一方で、①リーマンショック前の景気拡張
期における輸出金額の増加及びその後の減少にはいずれも数量要因が大きく寄与して
いる、②リーマンショックを含む景気後退期及びその後の期間において、為替要因が継
続的に減少に寄与している、③寄与度の絶対値の平均でみると、総じて数量要因の影
響が大きい、といった点はいずれの品目でもおおむね共通している。
次に、為替レートの変化が外貨建ての輸出価格にも反映されれば、価格競争力の変
化を通じて輸出数量にも影響を与えると考えられるため、輸出物価の為替レート弾性値
(為替レートが1%変化したら輸出物価が何%変化するか)を試算した。1~4四半期前
の実質実効為替レートを説明変数、輸出物価指数(契約通貨ベース)を被説明変数とし
て推計した結果によれば、輸出物価の為替レート弾性値は 0.30 となった。つまり、円高
(円安)局面においては、為替変動のうち3割程度は契約通貨建ての輸出価格に転嫁
(還元)され、輸出先における価格競争力を低下(強化)させる一方、残りの7割程度は
契約価格に転嫁(還元)していないため円換算した輸出価格を低下(上昇)させ、収益
を悪化(改善)させることを示唆している。
24年12月以降、為替レートの円安方向への動きが続いていることから、外貨建ての
輸出価格への還元によって海外市場における価格競争力が強化され、輸出数量の増
加に寄与することが期待される。