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資源備蓄本部 希少金属備蓄部

企画課 萬 雄太郎 yorozu-yutaro@jogmec.go.jp 部長 上木 隆司 kamiki-takashi@jogmec.go.jp

石油価格とレアメタルの関係

平成２７年８月２８日（金）

平成２７年度(第５回)JOGMEC金属資源セミナー

調査目的

・石油価格(以下WTI価格)が2014年6月以降急落。

・石油産業に使用される鋼材・鋼管には多くの

レアメタルが使用されている。

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希少金属備蓄部は、これら鉄鋼系レアメタルの需要・ 価格への石油価格急落の影響について調査中であり、今回はその一部を中間報告する。

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目 次

１.レアメタル各鉱種と石油価格の関係

２.クロムと石油価格の関係

３.今後の見通し

４.まとめ

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１.レアメタル各鉱種と石油価格の関係

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◎石油産業に使用されるレアメタル

①探鉱・開発

②採取・生産

・掘削リグ、プラットフォーム（Cr 20-23％, Ni18-25％, Mo 5.5-7.5％）

・ドリルパイプ（Cr 10-18％, Ni 0.5-7.0%, Mo 0-2.8％, W 0-1.2%, Cu0-1.5%）

・ケーシング、チュービングパイプ（Cr 13％, Ni 4％, Mo 2％, W 1％）

・ドリルカラー（Cr 16％, Mn 16％, Ni 3%, Mo 1%）

・ビット（W, Co, Ni, Ta, Ti, Cr, Mo）

③輸送 ・ラインパイプ（Cr 12％, Ni 5％, Mo 2％, Ti 0.1%）

・原油タンカー（積載量VLCC:16-32万t, ULCC:32-54万t：Ni, Cr, Mn）

・LNG輸送船（Ni, Cr, Nb）

④貯蔵 ・貯蔵タンク（Ni 6-9%, Mn0.5-0.9%, Si, Mo）

⑤精製 ・ステンレス配管（Cr, Ni, Mn, Mo）

・触媒（脱硫-Mo, Ni, Co、重合-Ti, Pd, Rh、液化-Co, Mo）

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１.レアメタル各鉱種と石油価格の関係

探鉱・開発～生産段階におけるレアメタル

出典:Petro Materials株式会社HP

ドリルパイプ

出典:Petro Materials株式会社HP

出典:Petro Materials株式会社HP

ドリルカラー

Cr, Ni, Mo, W

出典:株式会社ティクスホールディングスHP

ビット

W, Co, Ni, Ta, Ti, Cr,

Mo

出典:新日鐵住金株式会社HP

ラインパイプ

Cr, Ni, Mo,Ti

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出典:富士化工株式会社HP

ケーシングパイプ

Cr, Ni, Mo, W

チュービング

パイプ

出典:JFEスチール株式会社HP

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１.レアメタル各鉱種と石油価格の関係

資源探査衛星

調査・探査

試掘

開発計画・建設

物理探鉱船

掘削リグ

海上生産プラットフォーム

石油

ガス

海底パイプライン

陸上パイプライン 貯油基地

タンカー 生産井の掘削

Cr,Ni,W,Mo等

Cr,Ni,W,Mo等

Cr,Ni,Mo,Ti等

Cr,Ni,Mo,Nb,V,Ti, REE等

Cr,Ni,Nb,Mn等

※上流の探鉱・開発工程で使用される鋼材や特殊鋼用レアメタルが石油価格変動に影響を受け易いものと考えられる。

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１.レアメタル各鉱種と石油価格の関係

海上基礎試錐 予算内訳例（掘削深度4,500m、水深860m）

出典:JOGMEC基礎講座「掘削技術」を基に作成

掘削経費の約50%を占める

資材費の約20%を占める

※基礎試錐予算の約半分はレアメタルを使用した資機材費である

探鉱費（基礎試錐・物理探鉱船）

数～数十億円

探鉱費（掘削リグ）

数十 ～数百億円

施設建設費（プラットフォーム

・パイプライン・陸上貯蔵施設）

数百 ～数千億円

石油ガス市場の中では少額だが、億円単位の鋼材需要がある

区分 小項目 予算額目安

人件費 約0.9億円

掘削リグ 約25億円

小計 約47億円

ビット 約1億円

ケーシングパイプ 約0.9億円・・・

・・・

小計 約9億円

約57億円合計（税抜）

掘削経費

資材費

・・

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１.レアメタル各鉱種と石油価格の関係

各鉱種 月平均価格との相関係数

（R2） 対象期間 年平均価格との相関係数（R2） 対象期間

Ni 0.271 2003年1月～2015年5月 0.372 2003年～2015年(5月）

Cr 0.677 〃 0.772 〃

Co 0.129 〃 0.247 〃

FeMn 0.347 〃 0.539 〃

FeV 0.174 〃 0.213 〃

W 0.564 〃 0.852 〃

・月価格でWTI価格と相関係数の高い鉱種 ①Cr ＞②W

出典:一般財団法人日本エネルギー経済研究所「主要原油の価格推移」、JOGMEC内部資料を基に作成

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・年価格でWTI価格と相関係数の高い鉱種 ①W ＞②Cr＞③FeMn

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Ｃｒ価格変動要因とWTI価格

油価

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Cr価格

２.クロム価格と石油価格の関係

Ni高騰による

Cr系ステンレス

へのシフト

中国需要増

出典:一般財団法人日本エネルギー経済研究所、InvestmentMine、レアメタルハンドブック2014、JOGMEC内部資料を基に作成

南アの電力不安・

異常気象・発電所事故

リーマンショック

米国オバマ大統領就任

航空機産業等の素材在庫調整、中国生産拡大、露メーカーの放出

航空機関連の在庫調整完了

中国需要増

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WTI価格変動要因とCr価格

油価

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Cr価格

２.クロム価格と石油価格の関係

中国やアジアの途上国における石油需要拡大

米国サブプライムローン問題の深刻化

金融緩和

欧州債務危機

リビア内戦開始

巨大ハリケーンカトリーナによる

メキシコ湾油田事故

リーマンショック

米国オバマ大統領就任

イランと西側諸国の対立激化

欧州債務危機再燃

出典:一般財団法人日本エネルギー経済研究所、JX日鉱日石エネルギー「原油価格の推移」、InvestmentMine、レアメタルハンドブック2014、JOGMEC内部資料を基に作成

OPEC諸国減産見送り

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16ｍｂｂｌ/ｄ 世界の石油需給量の推移と見通し

供給量

需要量

３.今後の見通し ◎世界の石油需給は供給過剰状態が継続

出典:IEA「Oil Market Report」より

※世界の石油需要の伸び鈍化に対し、

米国やOPEC諸国の増産により供給過多

⇒当面、石油価格は低水準で推移

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稼働数

米国におけるOil＆Gasの掘削リグ稼働数とWTI価格の推移

Oil

Gas

WTI価格

油価 $/ｂｂｌ

出典:Baker Hughes、一般財団法人日本エネルギー経済研究所を基に作成

『新規油田の探鉱・開発の低下は掘削リグ稼働数減に表れており、掘削リグの余剰が生まれ、掘削リグの価格も安価になっている。』

※しかし、増産継続で日本の対米鋼材輸出は2015年増加⇒対米輸出は掘削管関連≧輸送管関連

３.今後の見通し ◎米国の掘削リグ稼働数は減⇒探鉱・開発は減速なるも 増産⇒そのための掘削管需要増（日本の対米輸出増）

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３.今後の見通し

◎日本の鋼管輸出量は世界計で減、対米は増

出典:貿易統計

※日本の鋼管輸出量： 2008年以降、原油価格に連動

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出典:貿易統計

３.今後の見通し

◎日本の鋼管輸出額：世界計で減、対米は増 13

３.今後の見通し ◎LNG輸出国となる米国⇒増産⇒鋼材・鋼管需要増

出典:U.S. Energy Information Administration「Annual Energy Outlook 2015」

米国の生産コスト低下

⇒増産⇒輸出国に転じる

増産用の石油関連資機材の需要が高まる

2005年から2040年における米国LNG輸出入の4ケース（trillion cubic feet）

輸入

輸出

・日本の対米鋼管の輸出増 ・レアメタル需要下支え

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プロジェクト 輸入国 買主契約数量

（万t）契約期間 備考

東邦ガス 30/年 2017-2037（20年）関西電力 40/年 2017-2037（20年）東京ガス 52/年 2020-2040（20年）

30/年 2022-2038（16年） 三菱商事から購入27/年 2018-2028（20年）

台湾 CPC 80/年 2018-2028（20年）

インドネシア Pertamina 152/年2019-2029（20年）

10年延長オプション付既存契約76万tに76万tを追加

N.A.Woodside

Energy Trading85/年

2019-2029（20年）10年延長オプション付

トレーディング会社であり、輸入国は不明

Endesa 150/年2018-2028（20年）

10年延長オプション付

Iberdrola 76/年2018-2028（20年）

10年延長オプション付Gas Natural

Fenosa150/年

2019-2029（20年）10年延長オプション付

イタリア Endesa(Enel) 75/年2018-2028（20年）

10年延長オプション付Enel向けだが、契約主体はEndesa

フランス EDF 77/年2019-2029（20年）

10年延長オプション付第3トレイン稼働までは38万t

ポルトガル EDP 77/年2019-2029（20年）

10年延長オプション付

CameronLNG

日本

東北電力

三井物産から購入

GDF Suezから購入

スペインCorpusChristiLNG

３.今後の見通し

◎米国産LNGの各国による長契契約状況

米国内の大型開発プロジェクトの進展

⇒米国はLNG輸出国に

◎生産開始までの間に輸送～

貯蔵～精製用の鋼材・鋼管

需要、それに使用される

レアメタル需要をもたらす。

2014年に締結された米国産LNG売買契約および基本合意

出典:一般財団法人日本エネルギー経済研究所「2014年LNG業界重大トピックス」

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４.まとめ

20 ◎クロムをはじめとする鉄鋼系レアメタルは石油の探鉱・開発～生産～

輸送～貯蔵～精製工程用鋼材に必須の素材である。

◎原油価格は当面低水準で推移するものと予想。

クロム価格は原油価格との相関が高い。

⇒世界的に上流工程（探鉱・開発～生産）の鋼材需要は減、

下流工程（輸送～貯蔵～精製）用の鋼材需要は堅調と予想。

※ただし、米国は旧ソ連、サウジに次ぐ産油国となり、更に増産の可能

性もあり、旺盛な上流工程の鋼管等鋼材需要が継続し得る。

◎原油価格低迷（及び、中国経済成長の減速）は、レアメタル需要・価格

にとってマイナスに作用するが、米国はじめ世界の原油増産は石油

産業向け鋼材、ひいてはレアメタル需要の下支え要因となり得る。

ご清聴ありがとうございました。

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