ふん尿処理のポイント - maff.go.jp...第 Ⅰ 章 ふ ん 尿 処 理 の ポ イ ン ト...
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第Ⅰ章
ふん尿処理のポイント
ふん尿処理のポイント
第Ⅰ章
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1.堆肥化処理
なぜ堆肥化処理するのでしょうか家畜ふん尿はそのままでは廃棄物に過ぎませんが、堆肥化することによって貴
重な有機物資源に生まれ変わります。堆肥化は、最も安価で簡便な家畜ふん尿処理方式といわれています。また、利用や販売を考えれば、良い堆肥を作ることが大切になってきます。良い堆肥の条件として、以下の 3つが上げられます。
①好気性微生物(酸素がないと上手く働かない微生物)がふん尿に含まれる有
機物を分解することによって、ふん尿臭をなくし、水分を減らした汚物感の
ない、取扱い易い堆肥であること
②有機物の分解による 60℃以上の発酵熱で、病原菌や雑草の種子を死滅させた
衛生的で安全な堆肥であること
③有効な土壌改良資材や、作物に害を与えない程度に腐熟が進んだ肥料成分を
有する有機質肥料であること
このような 3つの条件をすべて満たした堆肥は、申し分のない良質堆肥といえ
ます。
堆肥化処理の基本家畜のふんを堆肥にして、有機質肥料として利用することは古くから行われて
おり、何も難しいことではないはずですが、どうしても品質の良い堆肥に仕上がらない、と言った声をよく聞きます。堆肥化にもコツがあります。このコツさえつかめば、たとえシートを使った簡
易な堆肥処理施設でも品質の良い堆肥を作ることができます。良質堆肥を作るためのコツはいくつかありますが、なんといっても水分を適正に調整し、空気を十分に行き渡らせることです。これができれば堆肥化はほぼ成功したようなものです。
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第Ⅰ章
ふん尿処理のポイント
水分の調整はどのように行うか家畜のふんは、そのままでは水分が多すぎるため、おが屑やもみ殻などを用い
て牛ふんでは水分 70%程度、豚ふんや鶏ふんは水分 60%程度に調整します。慣れてくれば、触っただけで大体の水分は見当がつきますが、下記を参考にして水分調整を行ってください。水分 70%は、手で握ると指の間から水がにじみ出る程度です。ですから、握っ
て指の間から水がにじみ出るか、出ない程度に調整してください。または、10 ℓのバケツに 10 ℓすれすれに仕込み堆肥を詰め込み、その重さを
計り 5~ 7kg の重さにしてください。
シートを使った堆肥化処理のポイント
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または、
空気を十分入れるにはどうしたらよいか仕込み堆肥の中に空気が十分入るように被覆シートは通気性のあるものを使用
してください。切り返しの回数を増やしたり、通気装置の設置により堆肥の腐熟が促進され、一般に堆肥の品質が向上しますが、必ず必要というものではありません。
容積重を計る
10ℓバケツ
6kg 程度になるように水分調整する
5~7kg/10ℓ程度にする
仕込み堆肥を10ℓ入れる
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第Ⅰ章
ふん尿処理のポイント
水分を調整し、適度の通気があれば、一般的には堆肥を仕込んで 2~ 3 日のうちに 60℃以上の温度に達します。もし、そのような温度に達しない場合は、水分あるいは通気が適当でないことを意味しますから、水分の再調整あるいは切り返しなどによる通気性の改善が必要です。なお、病原菌等が死滅する温度と時間を示しますので参考にしてください。
病原菌等の死滅の温度と時間大腸菌 :60℃で 20分サルモネラ菌 :56℃で 60分ブドウ球菌 :50℃で 10分クリプトスポリジウム:55℃で 5分雑草の種子 :60℃、2日間でほぼ発芽率ゼロ
堆肥化期間はどのくらいをみたらよいか堆肥化処理のうち、一般に「一次発酵」と呼ばれているものは臭気物質などの
分解し易いものの分解を指し、「一次発酵」が終了しますと発酵初期にみられた高温期は過ぎ、堆肥の温度は気温に近くなってきます。通常 1ヶ月間程度の発酵期間ですが、切り返しや強制通気のない簡易施設の場合はこれよりやや長くかかります。その後、セルロースや、さらに分解し難い木質系のリグニンなどが長い期間をかけて分解していきますが、この分解を「二次発酵」と呼んでいます。分解し難いリグニン等の物質の含有量によって腐熟期間は次のように考えられていますが、堆肥化処理施設の種類等によってもこの腐熟に要する期間は変わりますので、あくまでも目安と考えてください。
堆肥化の期間家畜ふんのみでは 2ヶ月作物残渣の混合では 3ヶ月木質物の混合では 6ヶ月
2.スラリー処理
なぜスラリー処理するのでしょうかスラリーは液肥として農地に還元するわけですが、次のような目的でスラリー
処理します。
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①農地還元の際に悪臭を発生させないように臭気物質を分解すること②スラリー中の有機態窒素をアンモニア等の無機態窒素に分解し、作物に有効な肥料成分にすること
○実際には蓋を設けるなど雨水が入らない構造にすることが必要です。
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スラリー処理の基本単にスラリーを貯留しておくだけでは有機物の分解に非常に長い期間が必要で
す。そこで、貯留しているスラリーに空気を送り込んで有機物の分解を促進させるのが基本になります。① 10 日間以上にわたって、1m³ の貯留槽に対して 1日当たり 30m³ 以上の空気を送り込む(ばっ気)と、有機物の分解が促進され、散布の際の悪臭が抑えられます。
②スラリーをばっ気する際に泡が発生することがありますが、貯留槽の容量に余裕を持たせたり、通気を間欠運転するなどによって、槽外への泡の流出が防げます。
③ふん尿はできるだけ畜舎で固液分離して、固形物の混入が少ないスラリーにする方が、処理が容易になります。
3.汚水浄化処理
なぜ汚水浄化処理するのでしょうか畜舎汚水は、液肥として農地に還元するのがもっとも簡易で低コストです。し
かし、還元する農地がない場合は、次のような目的で浄化処理を行い流域水路に放流することになります。①汚水に含まれている汚濁物質を放流基準を満たすまで、微生物により分解させること
②汚水の着色度を低下させること
簡易汚水浄化処理の基本一般的な汚水浄化は活性汚泥処理法で行われていますが、ここで取り上げた簡
易汚水浄化処理ではおが屑や土壌を用いて汚水を浄化します。この方法では、次のことに注意してください。
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①おが屑のろ過作用を利用したものですので、目詰まりを起こしたり、固形物がろ過されずに素通りしてしまわないように、定期的におが屑の攪拌をする必要があります。
②おが屑が劣化してろ過作用が低下してきたら交換が必要です。③土壌処理槽は、汚濁物質を微生物に分解させるためのものです。汚水量や汚水濃度が高くなると目詰まりしますので、処理能力を超えないようにしてください。
④土壌処理槽が目詰まりを起こした場合は、土壌の表面を耕起したり、土を入れ変えるなどの対策が必要になります。完全に目詰まりしてしまった場合は、全量の土壌交換が必要になります。
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ふん尿処理のポイント
4.使用するシート類の特徴と留意点
ふん尿の簡易処理施設に使用するシート類には、目的によって大きく分けて「被
覆シート」と「遮水シート」の 2種類があります。使用目的に合ったシートを選び、
適切な施工と管理を行うことがポイントです。シート類を使った施設の設置や補
修にはシートの接着が必要となることがありますので、これについても簡単にふ
れておきます。
1)被覆シート被覆シートは、堆積した堆肥の表面に掛けて雨水の浸入や堆肥の流出を防ぐと
ともに、堆肥化に必要な空気を取り入れ、発生する水蒸気や二酸化炭素を逃がす
といった大事な役割があります。
①シートの通気性がもっとも重要で、通気性のないシートを使ったのでは堆肥
化は進みません。
②通気性シートには、穴あきのものがありますが、水がシートの上に溜まると
内部にしみ込みますから、穴あき被覆シートの場合には雨水が滞留しないよ
うに堆肥面の凹凸を少なくし、水が流れるように傾斜をもたせるなどの工夫
が必要です。
2)遮水シート遮水シートは、堆肥盤や汚水貯留槽等の簡易施設で、汚水成分等が地下に浸透
しないために用いるわけですから、以下の点に留意して、水漏れがないようにす
ることがポイントです。
①遮水シートを設置する床面は、遮水シートが破損しないようあらかじめ凹凸
のない平坦な面に成形する必要があります。(礫など床面の突起物をどうして
も除去できない場合は、突起部分を土や砂などで保護する必要があります。)
②遮水シートをふん尿の堆積等の作業時における破損や劣化から守るため、シ
ートの上面を礫を含まない土や砂で保護する必要があります。
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③遮水シートの強度や耐久性、設置にあたっての留意点について、メーカー等
にしっかりと確認を取っておく必要があります。
④処理施設から排汁等を漏らさないため、遮水シートは施設面積に対して縦横
ともに 2m程度広く余幅をとって設置する必要があります。
3)シートの接着方法①接着剤
塩ビ系シートに有効で、ローラーなどで塗布後、数分程度乾かしてシート
同士を貼り合わせます。
②ブチレンテープ
EVA(エチレン酢酸ビニル)シートに有効で、ブチレン製の両面テープで
接着します。
③熱溶着
全てのシートの接着に有効で、市販の工業用ドライヤーを用いてシートを
熱溶着することができますが、ある程度熟練が必要です。
4)シートの定期的な点検について家畜排せつ物法では、ふん尿処理施設の定期的な点検を行うこととされてい
ます。このため、シートの破れなどの破損がないか、定期的に外見上の点検を行う
必要があります。遮水シートについては、埋設されるなどして、外見上の点検が難かしい場合
もありますので、シートの耐用年数を十分に踏まえた上で、適切な時期に施設の更新(遮水シートの再設置など)を行うことが必要となります。