[特集]trcポスターセッション2014 Ⅶ-6:分子量だ …...gpc/ft-ir...

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20東レリサーチセンター The TRC News No.120(Feb. 2015) 1.はじめに Gel Permeation Chromatography( 略称 GPC、別称 Size Exclusion Chromatography:SEC) 法は平均分子 量・分子量分布を求める手法として広く認識されてお り、高分子材料の劣化解析等に役立っている。また、多 角度光散乱検出器 (MALS) 、動的光散乱検出器 (DLS) 粘度検出器(VISCO) 、赤外分光光度計(FT-IR)と接 続することにより、分子量のみならず、溶液中での分子 サイズ、分岐度解析および共重合体の組成分布解析が可 能となる。本稿では、GPCと各種検出器を用いて得られ た分析事例を紹介する。 2.GPC法における検出器 GPC用検出器 1︶ としては、示差屈折率検出器(RI) 紫外可視吸収検出器(UV)などの濃度検出器が広く知 られており、分子量分布が得られる。前項に示した検出 器等を濃度検出器と併用することにより、分子量分布に 加えて様々な情報を得ることができる1) 3.GPC-MALS-DLSによる溶液中分子サイズ測定 検出器にMALSを用いることにより分子サイズ回転 半径Rgを求められるが、測定できる分子サイズは約20 nm ~である。一方、GPC-MALS-DLSでは、数nmオー ダーの分子サイズ流体力学的半径Rhを測定すること が可能である。図1に単分散のポリエチレンオキサイド (PEO)の測定例を示す。MALSから得られる絶対重量 平均分子量(Mw)に加え、約2nmRhが求まっているこ とが分かる。 なお、GPC法が適用できない溶媒条件溶媒種、溶液 濃度、pH、塩濃度、温度等ではバッチ式DLS(DLS 単独での測定により分子サイズの推定・比較が可能で ある。 例として、レジストポリマーを各種溶媒に溶解し、バッ チ式DLSで分子サイズを測定した結果を図2に示す。 PGME、乳酸エチル中では他の溶媒よりも分子サイズが 若干大きくなっており、良溶媒であるとみなすことがで きる。 4.GPC-MALS-VISCOによる分岐高分子の測定 GPC-MALS-VISCO測定では、MALSから絶対分子量 が、VISCOから極限粘度ηが得られ、Mark-Houwink plot(MH plot)が作成できる。Mark-Houwink plotは分 子量に対して極限粘度をプロットした、ポリマー種とそ [特集]TRCポスターセッション2014 Ⅶ-6:分子量だけじゃないGPC! -サイズ、分岐、組成分布- 材料物性研究部 吉田 具弘 材料物性研究部 木南 冴子 MALS: Multi Angle Light Scattering detector DLS: Dynamic Light Scattering detector VISCO: Viscometer G P C - M A L S - D L S (多角度光散乱検出器 -動的光散乱検出器) DLSはバッチ式でも使用可能 絶対分子量 R (回転半径) R h (流体力学的半径) G P C - M A L S - V I S C O (多角度光散乱検出器 -粘度検出器) 絶対分子量 R R h 極限粘度 分岐度 G P C / F T - I R (赤外分光光度計) 混合物ピークの切り分け 組成分布 表1 各手法と得られる情報 5 1 0 1 RI Intensit(A.U.) Retention time (min) 1 2 3 4 5 10 20 R h (nm) 10 2 10 3 10 4 10 5 Molecular Weight Mw: 重量平均分子量 5 1 0 1 RI Intensit(A.U.) Retention time (min) Mw 3930 Mw 21300 MW RI R h MW 1 2 3 4 5 10 20 R h (nm) 10 2 10 3 10 4 10 5 Molecular Weight P E O R h Mw: 重量平均分子量 図1 GPC-MALS-DLSにより得られた単分散PEOの絶対 分子量と流体力学的半径 0.1 1 10 100 0 20 40 60 Intensity (%) R h (nm) PGME: 1-メトキシ-2-プロパノール 0.1 1 10 100 0 20 40 60 PGMEA PGME 乳酸エチル シクロヘキサノン γ-ブチロラクトン Intensity (%) R h (nm) PGME: 1-メトキシ-2-プロパノール 図2 バッチ式DLSによる各種溶媒中レジストポリマーの 分子サイズ測定結果 ●Ⅶ-6:分子量だけじゃないGPC !-サイズ、分岐、組成分布-

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Page 1: [特集]TRCポスターセッション2014 Ⅶ-6:分子量だ …...GPC/FT-IR は、各溶出時間における赤外吸収スペ クトルを連続的に測定することにより、分子量情報

20・東レリサーチセンター The TRC News No.120(Feb. 2015)

1.はじめに

 Gel Permeation Chromatography( 略 称GPC、 別 称Size Exclusion Chromatography:SEC)法は平均分子量・分子量分布を求める手法として広く認識されており、高分子材料の劣化解析等に役立っている。また、多角度光散乱検出器(MALS)、動的光散乱検出器(DLS)、粘度検出器(VISCO)、赤外分光光度計(FT-IR)と接続することにより、分子量のみならず、溶液中での分子サイズ、分岐度解析および共重合体の組成分布解析が可能となる。本稿では、GPCと各種検出器を用いて得られた分析事例を紹介する。

2.GPC法における検出器

 GPC用検出器1︶としては、示差屈折率検出器(RI)、紫外可視吸収検出器(UV)などの濃度検出器が広く知られており、分子量分布が得られる。前項に示した検出器等を濃度検出器と併用することにより、分子量分布に加えて様々な情報を得ることができる(表1)。

3.GPC-MALS-DLSによる溶液中分子サイズ測定

 検出器にMALSを用いることにより分子サイズ(回転

半径Rg)を求められるが、測定できる分子サイズは約20 nm~である。一方、GPC-MALS-DLSでは、数nmオーダーの分子サイズ(流体力学的半径Rh)を測定することが可能である。図1に単分散のポリエチレンオキサイド(PEO)の測定例を示す。MALSから得られる絶対重量平均分子量(Mw)に加え、約2nmのRhが求まっていることが分かる。

 なお、GPC法が適用できない溶媒条件(溶媒種、溶液濃度、pH、塩濃度、温度等)ではバッチ式DLS(DLS単独での測定)により分子サイズの推定・比較が可能である。 例として、レジストポリマーを各種溶媒に溶解し、バッチ式DLSで分子サイズを測定した結果を図2に示す。PGME、乳酸エチル中では他の溶媒よりも分子サイズが若干大きくなっており、良溶媒であるとみなすことができる。

4.GPC-MALS-VISCOによる分岐高分子の測定

 GPC-MALS-VISCO測定では、MALSから絶対分子量が、VISCOから極限粘度[η]が得られ、Mark-Houwink plot(MH plot)が作成できる。Mark-Houwink plotは分子量に対して極限粘度をプロットした、ポリマー種とそ

[特集]TRCポスターセッション2014

Ⅶ-6:分子量だけじゃないGPC!-サイズ、分岐、組成分布-

材料物性研究部 吉田 具弘材料物性研究部 木南 冴子

MALS: Multi Angle Light Scattering detector DLS: Dynamic Light Scattering detector VISCO: Viscometer

手法 得られる情報

GPC-MALS-DLS

(多角度光散乱検出器

-動的光散乱検出器)

※DLSはバッチ式でも使用可能

絶対分子量

Rg(回転半径)

Rh(流体力学的半径)

GPC-MALS-VISCO(多角度光散乱検出器

-粘度検出器)

絶対分子量

Rg、Rh

極限粘度

分岐度

GPC/FT-IR(赤外分光光度計)

混合物ピークの切り分け

組成分布

手法 得られる情報

GPC-MALS-DLS

(多角度光散乱検出器

-動的光散乱検出器)

※DLSはバッチ式でも使用可能

絶対分子量

Rg(回転半径)

Rh(流体力学的半径)

GPC-MALS-VISCO(多角度光散乱検出器

-粘度検出器)

絶対分子量

Rg、Rh

極限粘度

分岐度

GPC/FT-IR(赤外分光光度計)

混合物ピークの切り分け

組成分布

表1 各手法と得られる情報

5101R

I In

tensi

ty(A

.U.)

Retention time (min)

Mw 3930Mw 21300

MWRI

Rh

MW

1

2

3

4

5

10

20

Rh

(nm

)

102

103

104

105

Mole

cula

r W

eig

ht

試料:単分散PEO

Rh

Mw: 重量平均分子量

5101R

I In

tensi

ty(A

.U.)

Retention time (min)

Mw 3930Mw 21300

MWRI

Rh

MW

1

2

3

4

5

10

20

Rh

(nm

)

102

103

104

105

Mole

cula

r W

eig

ht

試料:単分散PEO

Rh

Mw: 重量平均分子量

図1 GPC-MALS-DLSにより得られた単分散PEOの絶対分子量と流体力学的半径

0.1 1 10 1000

20

40

60 PGMEA PGME 乳酸エチル シクロヘキサノン γ-ブチロラクトン

Inte

nsi

ty (

%)

Rh (nm)

PGME: 1-メトキシ-2-プロパノール

0.1 1 10 1000

20

40

60 PGMEA PGME 乳酸エチル シクロヘキサノン γ-ブチロラクトン

Inte

nsi

ty (

%)

Rh (nm)

PGME: 1-メトキシ-2-プロパノール

図2 バッチ式DLSによる各種溶媒中レジストポリマーの分子サイズ測定結果

●Ⅶ-6:分子量だけじゃないGPC !-サイズ、分岐、組成分布-

Page 2: [特集]TRCポスターセッション2014 Ⅶ-6:分子量だ …...GPC/FT-IR は、各溶出時間における赤外吸収スペ クトルを連続的に測定することにより、分子量情報

東レリサーチセンター The TRC News No.120(Feb. 2015)・21

の溶媒固有のものであり、プロットの傾きからポリマーの分岐度などを推察することができる。直鎖および分岐ポリジメチルシロキサンについて、Mark-Houwink plotを作成した例を図3に示す。

 図3において、分岐高分子は分子量約10万以上の高分子量領域で直鎖高分子よりも傾きが小さい。同一分子量の直鎖高分子より極限粘度が小さいため、分岐していると判断される。 次に分岐度解析を行った。直鎖および分岐高分子それぞれの同一分子量における極限粘度[η]l および[η]brの比から︵1︶式により分岐パラメータgbを算出し、︵2︶式に示す4官能ランダム分岐理論の式2︶から1分子あたりの分岐点数λMを求めた。

  

ロットした、ポリマー種とその溶媒固有のものであ

り、プロットの傾きからポリマーの分岐度などを推

察することができる。直鎖および分岐ポリジメチル

シロキサンについて、Mark- Houwink plot を作成し

た例を図 3 に示す。

図 3 直鎖および分岐高分子の Mark-Houwink plot 図 3 において、分岐高分子は分子量約 10 万以上の

高分子量領域で直鎖高分子よりも傾きが小さい。同

一分子量の直鎖高分子より極限粘度が小さいため、

分岐していると判断される。 次に分岐度解析を行った。直鎖および分岐高分子

それぞれの同一分子量における極限粘度[]l および

[]br の比から(1)式により分岐パラメータ gb を算出

し、(2)式に示す 4 官能ランダム分岐理論の式 2)から

1 分子あたりの分岐点数M を求めた。 (1) (2) ここで、(1)および(2)式中の b は分岐高分子において

0.5 から 1.5 の値をとり、本試料については分岐構造

をランダムと仮定、b = 1.5 として解析した。 絶対分子量と 1 分子あたりの分岐点数の関係を図

4 に示す。分子量が高くなるにつれて分岐点数が単

調増加しているのが分かる。

図 4 λM vs. Molecular Weight

5. GPC/FT-IR による組成分布解析

GPC/FT-IR は、各溶出時間における赤外吸収スペ

クトルを連続的に測定することにより、分子量情報

と化学構造情報を併せて得られる手法である。特定

波数のスペクトル強度の時間変化から、混合物ピー

クの切り分けや共重合体の組成分布解析が可能であ

る。 図 5に GPC/FT-IRによるスチレン/アクリロニトリ

ル(ST/AN)共重合体の組成分布解析例を示す。

図 5 GPC/FT-IR による共重合体の組成分布解析

スチレン骨格の一部であるベンゼン環の吸収波数

(698cm-1)とニトリル基の吸収波数(2242cm-1)におけ

るスペクトル強度比の時間変化から、組成分析の解

析を行った。AN 重量分率は NMR による平均組成を

基に見積った。溶出時間(分子量)によって、AN の重

量分率が変化しているのが分かる。 GPC/FT-IR では、上記のような例の他に、共重合

体中の特定ポリマー成分のみの分子量分布測定も可

能である。 6. まとめ 本稿では、分子量測定にとどまらない GPC の活用

方法を紹介した。様々な検出器との組み合わせによ

り、ポリマーの詳細な解析が可能である。

7. 参考文献 1) 長谷川博一, The TRC NEWS, 116, 29 (2013). 2) B. H. Zimm and W. H. Stockmayer,

J. Chem. Phys. 17, 1301–1314 (1949). ■吉田 具弘(よしだ ともひろ) 材料物性研究部 材料物性第 1 研究室

趣味:子供との鉄道旅行

■木南 冴子(きなみ さえこ) 材料物性研究部 材料物性第 1 研究室 趣味:旅行

2/12/1

34

61

MMg b λ

π

λ

l

brbg][][

103 104 105 106 107 1081

10

100

1000

直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

mL/

g)

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

試料:ポリジメチルシロキサン

103 104 105 106 107 1081

10

100

1000

直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

mL/

g)

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

103 104 105 106 107 1081

10

100

1000

直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

mL/

g)

Molecular Weight

直鎖 MH plot

103 104 105 106 107 1081

10

100

1000

直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

mL/

g)

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

試料:ポリジメチルシロキサン

16 18 20 22 24 26 28 30

0

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200

300

0

5

10

15

20

25

30

35

40

UV

Inte

nsi

ty (

A.U

.)

Retention Time (min)

AN

(w

t%)

UV

AN重量分率(GPC/FT-IR)

平均組成 AN = 28.6 %(NMR)

AN

重量

分率

(%)

16 18 20 22 24 26 28 30

0

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200

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AN重量分率(GPC/FT-IR)

平均組成 AN = 28.6 %(NMR)

AN

重量

分率

(%)

105 106 1070

10

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M

Molecular Weight

M :1分子あたりの分岐点数

105 106 1070

10

20

30

M

Molecular Weight

M :1分子あたりの分岐点数

︵1︶ 

  

ロットした、ポリマー種とその溶媒固有のものであ

り、プロットの傾きからポリマーの分岐度などを推

察することができる。直鎖および分岐ポリジメチル

シロキサンについて、Mark- Houwink plot を作成し

た例を図 3 に示す。

図 3 直鎖および分岐高分子の Mark-Houwink plot 図 3 において、分岐高分子は分子量約 10 万以上の

高分子量領域で直鎖高分子よりも傾きが小さい。同

一分子量の直鎖高分子より極限粘度が小さいため、

分岐していると判断される。 次に分岐度解析を行った。直鎖および分岐高分子

それぞれの同一分子量における極限粘度[]l および

[]br の比から(1)式により分岐パラメータ gb を算出

し、(2)式に示す 4 官能ランダム分岐理論の式 2)から

1 分子あたりの分岐点数M を求めた。 (1) (2) ここで、(1)および(2)式中の b は分岐高分子において

0.5 から 1.5 の値をとり、本試料については分岐構造

をランダムと仮定、b = 1.5 として解析した。 絶対分子量と 1 分子あたりの分岐点数の関係を図

4 に示す。分子量が高くなるにつれて分岐点数が単

調増加しているのが分かる。

図 4 λM vs. Molecular Weight

5. GPC/FT-IR による組成分布解析

GPC/FT-IR は、各溶出時間における赤外吸収スペ

クトルを連続的に測定することにより、分子量情報

と化学構造情報を併せて得られる手法である。特定

波数のスペクトル強度の時間変化から、混合物ピー

クの切り分けや共重合体の組成分布解析が可能であ

る。 図 5に GPC/FT-IRによるスチレン/アクリロニトリ

ル(ST/AN)共重合体の組成分布解析例を示す。

図 5 GPC/FT-IR による共重合体の組成分布解析

スチレン骨格の一部であるベンゼン環の吸収波数

(698cm-1)とニトリル基の吸収波数(2242cm-1)におけ

るスペクトル強度比の時間変化から、組成分析の解

析を行った。AN 重量分率は NMR による平均組成を

基に見積った。溶出時間(分子量)によって、AN の重

量分率が変化しているのが分かる。 GPC/FT-IR では、上記のような例の他に、共重合

体中の特定ポリマー成分のみの分子量分布測定も可

能である。 6. まとめ 本稿では、分子量測定にとどまらない GPC の活用

方法を紹介した。様々な検出器との組み合わせによ

り、ポリマーの詳細な解析が可能である。

7. 参考文献 1) 長谷川博一, The TRC NEWS, 116, 29 (2013). 2) B. H. Zimm and W. H. Stockmayer,

J. Chem. Phys. 17, 1301–1314 (1949). ■吉田 具弘(よしだ ともひろ) 材料物性研究部 材料物性第 1 研究室

趣味:子供との鉄道旅行

■木南 冴子(きなみ さえこ) 材料物性研究部 材料物性第 1 研究室 趣味:旅行

2/12/1

34

61

MMg b λ

π

λ

l

brbg][][

103 104 105 106 107 1081

10

100

1000

直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

mL/

g)

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

試料:ポリジメチルシロキサン

103 104 105 106 107 1081

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直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

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Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

103 104 105 106 107 1081

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直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

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Molecular Weight

直鎖 MH plot

103 104 105 106 107 1081

10

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直鎖高分子の粘度式

[] = 1.35×10-2M 0.69

[] (

mL/

g)

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

試料:ポリジメチルシロキサン

16 18 20 22 24 26 28 30

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UV

Inte

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A.U

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Retention Time (min)

AN

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平均組成 AN = 28.6 %(NMR)

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AN重量分率(GPC/FT-IR)

平均組成 AN = 28.6 %(NMR)

AN

重量

分率

(%)

105 106 1070

10

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M

Molecular Weight

M :1分子あたりの分岐点数

105 106 1070

10

20

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M

Molecular Weight

M :1分子あたりの分岐点数

︵2︶ 

ここで、︵1︶および︵2︶式中の b は分岐高分子において0.5から1.5の値をとり、本試料については分岐構造をランダムと仮定、b =1.5として解析した。 絶対分子量と1分子あたりの分岐点数の関係を図4に示す。分子量が高くなるにつれて分岐点数が単調増加しているのが分かる。

5.GPC/FT-IRによる組成分布解析

 GPC/FT-IRは、各溶出時間における赤外吸収スペクトルを連続的に測定することにより、分子量情報と化学構造情報を併せて得られる手法である。特定波数のスペクトル強度の時間変化から、混合物ピークの切り分けや共重合体の組成分布解析が可能である。 図5にGPC/FT-IRによるスチレン/アクリロニトリル(ST/AN)共重合体の組成分布解析例を示す。

 スチレン骨格の一部であるベンゼン環の吸収波数(698cm︲1)とニトリル基の吸収波数(2242cm︲1)におけるスペクトル強度比の時間変化から、組成分析の解析を行った。AN重量分率はNMRによる平均組成を基に見積った。溶出時間(分子量)によって、ANの重量分率が変化しているのが分かる。 GPC/FT-IRでは、上記のような例の他に、共重合体中の特定ポリマー成分のみの分子量分布測定も可能である。

6.まとめ

 本稿では、分子量測定にとどまらないGPCの活用方法を紹介した。様々な検出器との組み合わせにより、ポリマーの詳細な解析が可能である。

7.参考文献

1)長谷川博一,The TRC NEWS, 116, 29(2013).2) B. H. Zimm and W. H. Stockmayer, J. Chem. Phys. 17,

1301–1314(1949).

■吉田 具弘 (よしだ ともひろ)

 材料物性研究部 材料物性第1研究室

 研究員 趣味:鉄道旅行

■木南 冴子 (きなみ さえこ)

 材料物性研究部 材料物性第1研究室 趣味:旅行

103 104 105 106 107 1081

10

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直鎖高分子の粘度式

[ ] = 1.35×10-2M 0.69

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

試料:ポリジメチルシロキサン

103 104 105 106 107 1081

10

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直鎖高分子の粘度式

[ ] = 1.35×10-2M 0.69

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

103 104 105 106 107 1081

10

100

1000

直鎖高分子の粘度式

[ ] = 1.35×10-2M 0.69

Molecular Weight

直鎖 MH plot

103 104 105 106 107 1081

10

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1000

直鎖高分子の粘度式

[ ] = 1.35×10-2M 0.69

Molecular Weight

直鎖 MH plot

分岐 MH plot

試料:ポリジメチルシロキサン

[η] (

mL/

g)

η

図3 直鎖および分岐高分子のMark-Houwinkplot

105 106 1070

10

20

30

Molecular Weight

:1分子あたりの分岐点数

105 106 1070

10

20

30

λ :1分子あたりの分岐点数

M

λ

M

図4 λMvs.MolecularWeight

16 18 20 22 24 26 28 30

0

100

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300

0

5

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UV

Inte

nsi

ty (A

.U.)

Retention Time (min)

UV

AN重量分率(GPC/FT-IR)

平均組成 AN = 28.6 %(NMR)

16 18 20 22 24 26 28 30

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Retention Time (min)

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平均組成 AN = 28.6 %(NMR)

AN重

量分

率(%)

図5 GPC/FT-IRによる共重合体の組成分布解析

●Ⅶ-6:分子量だけじゃないGPC !-サイズ、分岐、組成分布-