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1 Copyright 2018 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 『富士通総研 FRI 経済研ワークショップ』 災害を乗り越えるレジリエントな地域連携の輪 ~輪中(わじゅう)から現代 BCP まで~ ―2018 年 1 月 30 日 富士通総研会議室にて開催― 主旨説明 富士通総研 経済研究所 上級研究員 上田遼 巨大な災害に対応するためには、一企業、一自治体の取り組みでは十分ではなく、「地域連携」 が重要との認識は共通化している一方で、それを広げていく上では様々な壁が存在します。こう した壁を克服し、連携を実現し、それをさらに高めて広げていく「レジリエントな輪」の形成が 重要となります。そこで、歴史的な輪中から現代の BCP(事業継続計画)まで横断的に議論し、 時代や地域など表面上の違いを乗り越えて応用するための共通項を考えたいという想いで、本ワ ークショップを企画致しました。 世界的な潮流は「マルチステークホルダー防災」。これは、国・自治体だけでなく企業や地域の 誰もがリスクを理解し、強化と被災後の改善に取り組み、「Build Back Better」を繰り返す。そ れを科学技術、政策、社会文化の 3 つの柱で行う、という流れになっています。 道路や工業用水、ガスなどのインフラは一方の停止が他方に影響を及ぼすことから、防災の輪 を広げる際に、全体最適を考慮した順序で連携できるような合意形成が鍵となります。特に東京 では、社会システムが複雑化しており、大きな災害によってインフラが途絶しがちです。東京で もこれまで、防災隣組やお互いさま BC 連携、代替生産協定などの取り組みは行われてきました が、産業防災で先行するのは愛知・名古屋です。このように、国土強靭化から地方の強靭化とい う流れもあります。 そこで本ワークショップでは、名古屋大学減災連携研究センターの福和先生に、多様な地域の ステークホルダーを集めた場づくりや、研究会を通じて連携の齟齬が生み出す壁の解消、真実を 語る「本音」の交流、歴史・リスクのアーカイブなどの取り組みについてお話いただきます。 冒頭の「Build Back Better」とは、一般的に言われるように「被災前よりも良くする」だけで なく、歴史の良い知恵を現在に再構築するという意味も含まれると私自身は考えます。愛知・名 古屋、三重にはかつて「輪中(わじゅう)」という、堤で囲んで水害から中の生業を守る生活防災 の知恵がありました。地域防災の原型として、下本先生にそうした輪中の歴史をご紹介いただき、

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『富士通総研 FRI 経済研ワークショップ』

災害を乗り越えるレジリエントな地域連携の輪

~輪中(わじゅう)から現代 BCPまで~

―2018 年 1 月 30 日 富士通総研会議室にて開催―

■主旨説明 富士通総研 経済研究所 上級研究員 上田遼

巨大な災害に対応するためには、一企業、一自治体の取り組みでは十分ではなく、「地域連携」

が重要との認識は共通化している一方で、それを広げていく上では様々な壁が存在します。こう

した壁を克服し、連携を実現し、それをさらに高めて広げていく「レジリエントな輪」の形成が

重要となります。そこで、歴史的な輪中から現代の BCP(事業継続計画)まで横断的に議論し、

時代や地域など表面上の違いを乗り越えて応用するための共通項を考えたいという想いで、本ワ

ークショップを企画致しました。

世界的な潮流は「マルチステークホルダー防災」。これは、国・自治体だけでなく企業や地域の

誰もがリスクを理解し、強化と被災後の改善に取り組み、「Build Back Better」を繰り返す。そ

れを科学技術、政策、社会文化の 3 つの柱で行う、という流れになっています。

道路や工業用水、ガスなどのインフラは一方の停止が他方に影響を及ぼすことから、防災の輪

を広げる際に、全体最適を考慮した順序で連携できるような合意形成が鍵となります。特に東京

では、社会システムが複雑化しており、大きな災害によってインフラが途絶しがちです。東京で

もこれまで、防災隣組やお互いさま BC 連携、代替生産協定などの取り組みは行われてきました

が、産業防災で先行するのは愛知・名古屋です。このように、国土強靭化から地方の強靭化とい

う流れもあります。

そこで本ワークショップでは、名古屋大学減災連携研究センターの福和先生に、多様な地域の

ステークホルダーを集めた場づくりや、研究会を通じて連携の齟齬が生み出す壁の解消、真実を

語る「本音」の交流、歴史・リスクのアーカイブなどの取り組みについてお話いただきます。

冒頭の「Build Back Better」とは、一般的に言われるように「被災前よりも良くする」だけで

なく、歴史の良い知恵を現在に再構築するという意味も含まれると私自身は考えます。愛知・名

古屋、三重にはかつて「輪中(わじゅう)」という、堤で囲んで水害から中の生業を守る生活防災

の知恵がありました。地域防災の原型として、下本先生にそうした輪中の歴史をご紹介いただき、

ワークショップ要約 20180130 災害を乗り越えるレジリエントな地域連携の輪

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現代防災との接点について議論したいと思っています。

また、現代の輪中というべき実例として100社を超す企業が立地している三河湾の明海地区で、

住民を守り、さらには、事業継続、外部アクセスへの道路改善などの実践的な取り組みをされて

いる古海所長に先進事例をご紹介いただきます。

連携の活動を進める時には、意識、文化や価値、環境条件など様々な壁が一対一ではなく複雑

に絡み合って存在しますが、それらをどう乗り越えられるのか。「現代における輪中の共創」をテ

ーマに、いわば「多分野間のマルチステークホルダー」のご登壇者の皆様と共通項を考えてみた

いと思います。

■基調講演

『多様な連携で総力を結集し地域強靭化を! 』

名古屋大学減災連携研究センター 教授 福和伸夫 氏

名古屋は地産地消で、比較的独立している「輪中」っぽい地域です。そのような地域で多様な

連携によって総力を結集させ強靭化するために、どのような活動をしているかをお話します。た

だ、その前に、今という時代について少し復習してみたいと思います。

宇宙が誕生して 137 億年。太陽や地球ができて 46 億年。パンゲア(超巨大大陸)が分裂し始

めて 2 億 5000 万年。6500 万年前にも隕石がぶつかり、恐竜をはじめとして生物が大絶滅しま

した。78 万年前に地軸が反転し、7300 年前に破局噴火が起こっています。これらが起これば、

私たち日本人は死に絶えますが、抗いようのない災害なので、諦めも必要で、おそらく強靭化の

相手ではありません。

最後の富士山の噴火から 311 年。それなりに心配だと思いますが、それを言うと東京に住めな

くなって具合が悪いので、皆、言わないことになっています。南海トラフ巨大地震から 74 年。

富士山噴火、南海トラフ地震は、近い将来に必ずやってきます。私たち日本人は逃げられません

が、私たちの意識次第で克服することができる災害です(たとえば、東京から逃げ出せばいい)。

強靭化のターゲットを考えるときには、あきらめる問題と何とか頑張って克服する問題を分けな

いといけません。

◆見たくない状況を直視せよ

現在の我々の社会は、外力が高まる中で抵抗力を失っています。科学と技術を使って法律ギリ

ギリまでコストダウンすることが散見されます。この場合、建物は災害に弱く、安全に関する裕

度がない社会になっているのです。一方、1000 兆円を超える国の借金があり、災害に対応する

リソースが足りない時代を迎えています。私たち人間や社会の「生きる力」も弱まり、生き抜く

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力や助け合いの力を失っています。本来は、社会は自分たちの力で守るものですが、公への依存

が甚だしく、公と私のバランスが崩れています。ゆえに、今こそひと昔前に戻って、共に生きて

いく社会にしないといけません。

こうしたことを考えるのは自己反省を迫られるのでつらいものですが、見たくないことを教え

てくれるのが、2016 年に公開されヒットした怪獣映画です。官邸の危機管理能力が不足してい

ることを示す場面、東京から大脱出する場面など、過去の大震災で起きたことをベースにした、

優れた防災映画となっています。福島原発事故の 5 日間を描いた映画でも、国土強靭化が議論さ

れる出発点となった出来事を思い起こすのに役立ちます。原発事故調査委員会の委員長を務めた

畑村洋太郎さんは最終報告書に「見たくないものは見えない。見たいものが見える」と書いてい

ます。この言葉は、ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』に出てくるものですが、強靭化を考え

るための最も大事なキーワードだと思います。

◆災害の歴史を学ぶ必要がある

歴史を振り返ると、見たくないことが起こっています。1550 年前の時代に起きた地震・噴火

とよく似ています。越中・越後地震、富士山噴火、阿蘇山噴火、播磨・山城地震、貞観地震、開

聞岳噴火。私たちも、中越地震、中越沖地震、能登半島、神戸の地震、東日本の巨大地震が起き

ました。九州でも、口永良部島、桜島、新燃岳と噴火をしています。対比させると、1500 年前

とそっくりに見えます。ただし現代の科学ではこれらは説明できていないので、胡散臭い話かも

しれません。でも、過去に起きたことはこれから起きてもおかしくない。科学でわかっていない

ことも、過去の経験に基づいて防災対策をしたほうが得だと、私は考えています。

和歌、日本三代実録、方丈記などにも災害の教訓が記されていますが、今は専門分化されてい

るため、地震学を勉強する人は歴史や日本文学を余り勉強しません。一方、歴史学を勉強する人

は地震の勉強をしません。昔の社会のほうが、裾野の広い富士山のように幅広く物事を捉えられ

る人が多かったように思います。

それから、私たちは人物が歴史を変えていると考えがちですが、たぶん人物が出てくるために

は何らかの理由があります。おそらく、災いによる社会の混乱が影響していると思うのです。た

とえば、大河ドラマで扱う時代はつねに地震の活動期と重なります。2018 年は西郷隆盛の話で

すが、西郷が活躍し始める前に、東海、南海、江戸直下で地震が起こり、とてもやっていられな

い状況でした。2016 年の真田幸村の話でも、天正地震や慶長伏見地震が描かれました。南海ト

ラフ地震が起きれば、西日本は地震の活動期となり、社会が疲弊する。そのときに若者が出てき

てドラマ性のある物語ができる、というわけです。明治以降も、濃尾地震、三陸地震、関東地震

などが起こって社会や経済が混乱し、戦争へと突入しました。戦後の 40 年間は、三大都市を襲

う地震がなかったおかげで、高度成長を遂げて現代があるのです。

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◆南海トラフ巨大地震に備える

南海トラフ地震の地震発生確率は、今後30年間で70~80%。そこまで追い込まれているのに、

そのことを本気で考えている人がどのくらいこの国にいるのかが心配されます。対策に使える時

間はまだ残っているはずですから、私たちはどういう生き方をすべきか、社会のありようをそろ

そろ考え直す必要があると思います。

残念ながら、僕たちは地震や火山のことをほとんどわかっていません。それがあの 3.11 の反

省です。自然のことは十分にわかっていないことを前提に、自然との折り合いのつけ方を考えな

いといけないのに、わかったふりをして科学と技術を使って徹底的にコストダウンのために安全

性を法律ギリギリまで削る。そういう現代の社会がいいのでしょうか。

日本は、プレート運動と火山の活動でつくられた山々が季節風を受け止め、たくさんの雨と雪

が降るので、世界でも稀に見る水の豊かな国になりました。自然の営みの中で、私たちは素晴ら

しい恵みを受け取ったわけですが、当然ながら災害だらけの国でもある。そのことを日本人がち

ゃんと考えているのか。欧米と同じような場所に住んでいると勘違いしていないか。その意味で

は、昔の「輪中」に立ち戻ることは極めて重要です。

南海トラフ地震の被害予想は、最悪 32 万人、220 兆円、240 万棟。日本の人口変遷を見ると、

700 万人だった時代に鎌倉地震が起きて、2 万 3000 人が死んでいます。今の人口に換算し直す

と昔の関東地震や南海トラフ地震の死者は数十万人になります。32 万人は過大ではなく、関連死

を含めれば 100 万人になってもおかしくありません。被害額 220 兆円といえば、国家予算の 2

倍以上です。神戸の地震や東日本大震災でもそうでしたが、復興には失った金額の倍はかかるの

で、400 兆円が必要になる――これはどう考えても負担しきれません。

◆愛知を基点に日本を救う活動をする

日本は製造業で儲けた金でサービス業を維持しています。ということは、日本の製造業の中心

地である愛知、静岡、三重を襲う東海地震は、この国がとっても具合の悪いことになると予感さ

せます。財政力指数のトップ 65 で 1 を超える地域を抜き出してみると、愛知県下の市町村が多

くを占めます。こうした市町村にリードしてもらうしか、この国を救う道はないと、僕は勝手に

考えています。

そこで 5 年前につくったのが「西三河防災減災連携研究会」です。この源は、地域を愛する力

と、地域を救うためのやる気と連携力、地域が好きなる源泉の歴史と文化と伝統。そして、みん

なが動くように働きかける物語力が大事だと感じています。

7 年前に産業界の要請でつくったのが、私のいる減災連携研究センターです。3 つの会社が寄

付金を出してくれて、10 人程度を雇用しました。産業界(20 社)や自治体(17 市町村)からの

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派遣で、40 人くらいの研究員が集まって、本音で語るようになると、夢のような世界が始まりま

した。その後、西三河 9 市 1 町が手を携え、トヨタグループも参加し、産学連携が始まりました。

2018 年 1 月に豊田市で行ったワークショップでは、20 メートルを超える巨大地図を作り、4

つのプロジェクターでプロジェクション・マッピングして、どのように津波が攻めてきて浸水す

るか、どの会社がどこにあるか、主要な工場や発電所がある場所はどうなるかを示しました。あ

らゆる立場の人たちが一緒に見ることによって、問題意識を共有化することができます。

◆都合の悪い事実を隠してはいけない

連携を図る試みの中で、本当のことを言わないと社会は動かないことに気づき、「ホンネの会」

をスタートさせました。入会資格は、自分の組織の具合の悪いことを洗いざらい話すこと。そこ

で話したことは外に公開してはいけない。議事録もとらない。嘘をつかないことになっています。

現在、約 70 組織の方々が集まって月 1 回、ホンネトークをしています。これを 3 年以上続けた

結果、いろいろな問題点が見えてきました。サプライチェーン内の連携、地域内の連携、業界内

の連携というように集団的防災対策をしないと、個社の取り組みでは無理であるという結論に至

ったのです。

BCP 作成状況を調べてみると、全体の 99.7%を占める中小企業はほとんどできていないことも

わかりました。ここは国などが後押しする必要があります。超大企業の中にも産業の全体像を俯

瞰的に見えている人がいませんでした。そこで 2017 年 6 月に産官学で「あいち・なごや強靭化

共創センター」を作りました。これにより、大規模地震対策特別法の見直し、強靭化や地域の問

題、科学技術の災害情報システム整備などでそれなりの役割を果たせるようになっています。ホ

ンネを話し、地域連携できる場と支えがあるからこそ、他ではできない一歩が始まったのです。

私たちの活動の中で大切にしているのは、自由、地道、地元を大事にする「3J」。頭を使って、

汗をかいて、愛を育む「3A」。良いプレイヤーを作り、良いプランを作り、良いプロダクトを創

り出す「3P」。しっかりとアンテナを張り、分析し、答えを出す「3An」です。これらを合わせる

と、「三男坊がやるべき JAPAN」となります。長男の東京、次男坊の関西地区と異なり、三男坊

の中部は親に大事にされず、道路も空港も港湾も国に頼らず、独自にやってきました。実はこれ

は強靭化の基本で、自立心を育むことが大事です。強靭化は後ろ向きに見がちですが、前向きに

考えれば、災い転じて福となすものです。そして強靭化戦略こそが、世界に対して日本が貢献で

きる、最も喜ばれる輸出だと思います。

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『輪中にみる地域防災の原型と今日の地域防災 』

日本福祉大学 非常勤講師 下本英津子 氏

我々は災害に直面するたびに連携や地域防災が必要だと言うのですが、日常生活に追われるな

かで危機感は薄れてしまうものです。一方、歴史的に見ると、恒常的におこなわれてきた地域防

災の事例を確認することができます。その 1 つである「輪中」は、水害が多発する地域で、輪型

堤防で一定空間を囲ってその中で生活する環境を指します。また輪型堤防の中で水害から財産を

守る共同体という定義もあり、地域防災の典型例と見ることができます。

◆輪中に見る地域防災の原型

たとえば、木曽川、長良川、揖斐川が入り組んでいた木曽三川の下流域では、堤防を築く技術

の成熟と、新田開発の機運の高まりを受けて、17 世紀以降に大掛かりな輪中の開拓が行われまし

た。その結果、新田が増えた一方で、河道が固定されたことで遊水地が減少し、洪水が起こりや

すくなりました。水田稲作のために水を利用しつつも、洪水を防がなくてはならないという環境

のもとで、水制御が輪中の住民の大きなテーマとなったのです。

岐阜県大垣市の輪中 A の場合、集落は微高地に集中し、耕地はほぼ全域が水田でした。家ごと

に井戸があり、生活用水とする一方で、灌漑用水には地下水、隣接集落から流れてくる「おたれ」、

農業用水などを共同で利用します。共用の水源から水路に水を引き入れ、輪中内の田んぼを徐々

に水で満たす方法なので、必然的に、灌漑は輪中全体での水制御の形をとります。田んぼの場所

によって水を得るのには時間差が生じるため、時には小競り合いも起こるのですが、当人同士の

話し合いでコンフリクトを解決するスタイルがとられていました。また農業用水などの水源確保

には、隣接集落との調整も必要です。

水防の面でみてみると、家単位では、事前対応として、土を盛って住居の高さを上げる、避難

するための水屋をつくる、舟を用意しておくなどの方法があります。そして増水時には、二階部

分に財産を揚げる「水かたづけ」や炊飯などの対応をしていました。輪中単位では、平時には防

災訓練や輪中内の水路の掃除が、増水時には堤防警護などが行われ、いずれも全戸出動が基本と

なっています。また、「輪中根性」という閉鎖性を示す言葉がある一方で、堤防強化や改修工事に

向けて、輪中同士が共闘する必要があるため、実際には、隣接する集落単位や流域単位で協議す

る連携の仕組みもありました。

すなわち輪中では、水制御という形で水利用と水防が密接につながっており、さらにそれは家、

輪中、流域という単位が切り離されることなく結びついて機能していたのです。

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◆水の風土が育んだ技術

輪中には、緻密な水制御の技術があるだけでなく、伝承や祭礼など、豊かな水の文化が伝えら

れています。たとえば、かつての決壊ポイントに水神をまつる神社があったり、井戸には水神が

住んでいるという伝承が残っていたり、水との関わり方の数だけ、それぞれに伝承や祭礼が形成

されています。おそらく日常生活で水に接する中で、人間の技術では対応できない部分を「水の

神様」と表現したのだろうと思います。これは哲学的に言うと、私たちは自分と客観的な自然環

境を切り離して生きているのではなく、主体的にものと関わりながら生きていることを示してい

ます。哲学者の和辻哲郎やベルクは、それを「風土」と呼ぶのですが、環境としての水(H2O)

ではなくて、風土としての水(水神)という発想です。そう考えると、輪中における水制御の技

術は、風土的な世界と、実際に水を制御する機能的で物質的な世界が一体化した「ヴァナキュラ

ーな技術(土着の技術)」であると言えます。これは専門家によって提供される現代科学技術のア

ンチテーゼでもあるのですが、生活の中に埋め込まれた、自律的かつ互酬的な関係性の中で生ま

れてくる技術を指します。

輪中における水防は経験実証的に形成された水制御の一環であり、日常の延長線上にある。だ

からこそ輪中住民は、自分を成立させている基盤を認識して、家と輪中と隣接集落との連携を運

命共同体と見なす感覚のもとで地域防災を実践することができたのでしょう。

しかしその一方で、輪中が衰退していったのも事実です。明治時代の初めに木曽三川は分離さ

れました。上水道や農業用水が整備されて水害が減り、個人でできることが増えて、稲作離れが

進んだことで、場所からも解放された。水制御を中心とした運命共同体の紐帯は必要がなくなり、

輪中は解体されたのです。

◆今日の地域防災

ここで現在に目を向け、現在の地域防災と輪中との違いを検討したいと思います。たとえば愛

知県の A町は、住民の自主防災組織率は 100%であるうえ、行政と区との合同防災訓練が行われ、

行政と学校には包括協定が結ばれるなど、先進的な活動地域に見えます。しかし、形式としては

整っていても、住民からは形骸化やマンネリ化の問題が常に聞かれますし、行政と住民の関係も、

トップダウンの構図から離れられずにいます。

輪中と比べると、今日の地域防災では、場所の持つ意味が非常に衰退しています。住む場所や

職業を自由に選択できる時代で、ICT も進んでいるため、私たちが生きていく上で大地との関係

が非常に薄くなっているのです。そこで行われる実践や技術は、専門家や行政から提供される画

一的な方式です。情報として入ってきて、頭では理解しているけれども、自分の経験や実感を伴

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わないため、形骸化し、自発性が失われていく。技術発展によって災害が減少し、非日常のもの

となっているため、無関心になり、防災の話に拒否反応を示す人も多いのです。

そのような私たちが連携するために決定的に足りないのが、運命共同体を形成する求心的なも

のです。その意味では、現代の日本で地域防災はかなり難しいと言わざるをえませんが、核とな

る産業をベースに日常的につながり、ライフラインの連携などに結び付けていけば、「現在の輪中」

を再興できるという可能性もあると思っています。

『明海自治会・企業連携防災の取り組み』

株式会社デンソー 豊橋製作所 所長 古海盛昭 氏

デンソーはトヨタ自動車刈谷南工場として発足しました。その後分社し、現在は自動車関連だ

けでなく、生活関連や産業機器などの分野で 200 種類を超える製品を製造しています。事業所は

西三河に集積し 9 拠点あります。その 1 つが私の所属する豊橋製作所であり、三河湾の埋め立て

地である明海地区に立地し、1200 名が働いています。明海地区には花王、トピー、セキスイハ

イムなど多種多様な業種の 100 社を超える工業団地があります。豊橋市の約半分のシェアを占め

る工業出荷額 5400 億円、従業員約 1 万人を超えるポテンシャルのある重要な地域です。

◆固有の防災リスクと企業連携の防災活動

南海トラフを震源とした大地震が愛知県で発生すると、理論上最大モデルの予測では、津波浸

水が約 3 万 5000 ヘクタール(ディズニーランドの 350 倍)。建物は 38 万 2000 棟が全壊消失。

避難者は 113 万人、帰宅困難者が 93 万人、死者は 2 万 9000 人。こうした被害から、我々の従

業員、あるいは、明海地区の従業員を何としてでも守りたいという想いで、防災活動に取り組ん

できました。

明海地区は堤防の外にある「堤外地」で、地盤高が防潮堤よりも低いうえ、堤内地につながる

橋が壊れると、完全に陸の孤島になってしまうリスクがあります。また、本来は住民が住まない

地域とされているため、公的サービスが手薄で、避難所、救護所、医療機関、救急体制もありま

せん。

こうした中で、我々は 4 つの目標をつくりました。1 つ目は、死亡者ゼロ。工業団地内に救護

所を設置したうえで、公的支援を求めようと考えています。2 つ目は情報伝達。陸の孤島になっ

ても、市役所あるいはインフラ事業者と情報共有できるようにすること。3 つ目に、橋や道など

のインフラの事前整備。4 つ目は意識の問題です。域内 100 社のうち 7 割で BCP が策定されて

いないため、個社のレベルアップ、防災力の向上が必要です。

企業には従業員に対する安全配慮義務があり、器材の転倒防止、避難計画の策定、避難物資の

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備蓄は BCP に含まれています。BCP 作成は、ステークホルダーからの信用信頼、ブランドイメー

ジや競争力を高めるほか、取引先などパートナーと良い関係をつくるうえで不可欠になっていま

す。

ただし、個社の取り組みだけでは限界があるため、地域で連携した共助、さらには行政と連携

する公助も必要です。そこで地域内で防災連絡会議をつくり、市役所と連携するプラットホーム

を整備。こうした活動決定機関を通じて、対策を進めているところです。

◆取り組み事例の紹介

活動事例の 1 つが救護所の設置です。市役所からデータをもらい、津波が来ない高所にある、

液状化しない、防災本部を含めたスペースが確保できる、みんなが逃げ込める中間地であるなど、

条件に合う場所を探し出し、ヘリポート、避難所、救護所を作るためのプランを作りました。こ

れは簡単にできたものではなく、プラットホームの中でメンバーが話し合い、その後で、豊橋市

地域強靭化検討会議、豊橋市長との意見交換会を経て、豊橋市の防災会議で予算を組んでいただ

いたことで前進しました。その後、この救護所を使って明海地区全体の防災訓練を行いましたが、

こうした活動で個社の意識も変わってくるはずです。

第 2 の事例として、明海地区と豊橋市役所、そして、明海地区とインフラ事業者との間で情報

伝達訓練を行いました。市役所との訓練では、大規模震災が発生した後、時間を区切ってどのよ

うな情報をキャッチボールすべきかを考えました。たとえば、2 時間後には建物の倒壊、火災発

生、有害物の流出の有無、道路の陥没や液状化などの情報を共有する。3 時間後には、救護所の

開設や重篤患者数、医師派遣の要請。5 時間後には、幹線道路や橋梁の破損状況を確認し、帰宅

困難者の帰宅支援を行うという想定でやりとりしました。

一方、ガス、電気、水道などのインフラ事業者、国交省や市役所の関係者を交えた訓練では、

自治会防災本部の中に電気班、工水班、道路班、ガス班を置き、明海地区の状況について情報を

集約したうえで、インフラ事業者に連絡するという体制をつくりました。

こうした訓練を通じて、通話時間や性能面で MCA 無線の限界、全体の情報を集約して伝えるこ

との大切さ、豊橋市に明海地区の人間をリエゾン(災害対策現地情報連絡員)派遣する必要性な

どがわかりました。さらに、インフラ復旧活動には、資材を送り込む前線基地を用意しなくては

ならない。電気は送信設備だけでなく各企業の受信設備の耐震性や防水性を確認し、水やガスの

地域内の系統を把握しておく必要がある、といった課題も見つかりました。さまざまな情報や反

省点が見つかったのは大きなメリットだったと思います。

我々は道路に関する取り組みも行っています。これは明海地区だけでは限界があるため、隣の

田原臨海と幹線道路改善連絡会を作り、国交省担当局、愛知県、豊橋市の支援を得ながら、道路

のアクセス向上や橋梁の耐震対策について改善提案をまとめました。国交省や財務省に要請した

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ところ、1つずつ課題をつぶしていくことになり、堤外地から堤内地に向けた幹線道路につなが

る「命の道 1.2km」の整備などが始まっています。

明海地区の中で、このような連携が進んでいるのは、一企業では限界があるからです。それぞ

れの地域に固有のリスクを把握し、自分たちの従業員を守るために企業がどう対応するかを考え

ていくことが必要だと思います。

■パネルディスカッション

~地域連携の共創ー壁を乗り越え「輪」を広げるために~

【パネリスト】

・名古屋大学減災連携研究センター 教授 福和伸夫 氏

・日本福祉大学 非常勤講師 下本英津子 氏

・株式会社デンソー 豊橋製作所 所長 古海盛昭 氏

【モデレーター】

・富士通総研 経済研究所 上級研究員 上田遼

上田: ここまでのご講演で、多くの示唆と共にたくさんの共通項が見出されたと思います。たと

えば、連携のプロセスで言えば、輪中が「家」から「輪中集落」「流域全体」へと発展し

たプロセスと、明海地区での個社から企業連携、地域全域のアクセス改善に至ったプロセ

ス。あるいは、AR(拡張現実)によってリスクを認知することと、自然を水神として擬

人化して畏敬の念をもって自然と接してきたこと。間を取り持つための、「本音」や水と

いった媒体。そのような共通項も念頭に、3つほどトピックを議論させていただきます。

◆ 輪の形成―コンフリクトを乗り越えて、多様なステークホルダーを巻き込み、運

命共同体をつくる

上田: コンフリクトを乗り越えて、「輪中」で運命共同体ができた大きな要因はどこにあるとお

考えですか?

下本: 災害の種類が関係してくると思います。何十年に 1 回起こる大地震と違って、水害は毎年

何度も経験するので、実感を伴って日常の行動につながるところが大きな特徴です。

上田: 頻度に加えて、コンフリクト解消のための仕組みもあったように感じました。納得してコ

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ンフリクトが解消されて「運命共同体」になるためには、何が起こるか?のリスクの理解

とどうすればよいか?のシステムの理解が両方必要で、それが生活の中で自然にできてい

たのだと思いました。現代の輪中とも言える明海地区の場合、企業間で連携する際にどの

ような壁がありましたか?

古海: 企業間の立場の違いや、どのようにイニシアチブをとるかが壁になりそうですが、実は地

域全体の防災力向上という観点では、企業間の利害はまったく関係ないのです。個社では

できない広域的な取り組みを自治体がするという安心感があるし、私自身も防災会長とし

て自治会から活動を一任されているので、リーダーシップがとりやすいですね。

上田: 福和先生は広域で運命共同体をつくる際に「ホンネの会」という活動をされたそうですが、

「ホンネ」に着目された狙いはどこにありますか?

福和: 日本という単位で考えるのと、中部地域、愛知県、豊橋市、明海地区、さらには輪中とい

う単位で考えることは、基本的に全部同じです。小さな単位であれば、より顔が見える関

係で、その中で完結して取り組めますが、それだけでは解決しないので、単位を大きくし

なくてはならない。その際に大事なのが、同じ舟に乗って同じものを共有しているという

感覚を持つことです。

名古屋には、自分たちでやろうという素地があり、みんな地域への愛着を持っています。

特に製造業は、その地域に根付いた従業員が必要であり、基本的に地域と運命共同体にな

らざるを得ません。人任せにして互いにもたれ合うのではなく、本当のことを言って事前

に対策をとらなければ、終わってしまうのです。さらにトヨタグループがこけると、この

地区だけでなく、日本がこけてしまう。しかし、ホンネを話すには、圧倒的な信頼関係が

必要です。そこで、お酒を飲みながら、少人数で腹を割って話し合うところから始め、少

しずつ人数を増やしました。企業の人やメディア関係者も巻き込みながら、互いに本当の

ことを知り合って全体がうまく動くようにするとともに、1 人 1 人が全体に対して責任を

持とうということで活動しています。

◆輪の維持について―事業継続計画や訓練を維持、発展させるために

上田: 輪中文化には、「水神」に代表されるように、風土や自然感の中に恐れが取り込まれてい

ました。「見たくないもの」を遠ざけずに、直視し続けられた背景はどこにありますか?

下本: 輪中では、日常的に水と関わっています。水が豊かな土地だから米がたくさんとれるので

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すが、それが行きすぎると災害になる。そこはあくまでも日常の延長線上にあります。見

たくないものというのではなく、自分たちには水の全部がわかるわけではないという感覚

はあるものの、それを遠ざけるという発想は出てこなかったのだと思います。遠ざけるよ

うになったのは、国の事業として河川を分離させて、防災政策が地域住民の活動から離れ

ていった結果だと思います。

その後、輪中が衰退していったことからわかるように、地域共同体で、全戸が仕事を休ん

でも輪中堤防を守らなければならないという慣習は、今の時代には現実的ではありません。

ただし、大きな震災などを経て、私たちは自然環境とどう関わりながら生きていくかが問

われる時代になってきました。それを考えるときには、歴史や文化、輪中などの中に財産

となる要素があるので、それらを学びながら取捨選択していく必要があると思っています。

上田: 時代は変わっても、とりわけ「水神」のように人をいさめてくれる、信頼される人格は必

要だと思いました。「輪の維持」という点について、明海地区では、日常の訓練を形骸化

させずに続けるために何を意識していらっしゃいますか?

古海: 今はまだ準備を整えているところで、情報伝達訓練にしても、一部の役員メンバーだけで

なく、全企業のメンバーに広げていかなくてはなりません。防災訓練を行うことで反省点

が出てきて、それを次の防災訓練に生かすことで、防災力が高まっていきます。そこに何

とか到達したいという思いで今、取り組んでいるところです。

上田: 福和先生が行われたワークショップでは、大空間でのプロジェクション・マッピングや

AR(拡張現実)を活用されていました。見たくないものを見せるうえで有効な方法だと

感じましたが、こうした技術はどのように役立てられるとお考えですか?

福和: 人間は最初に「えっ」と思わないと何事も始まりません。その後で、理解させて、それが

賦に落ちたら自分事となる。そのために、その人を巻き込み、決断させて、行動に結び付

ける。そのステップを全部後ろから支えるような技術が必要だと感じています。

前回のワークショップでは、多くの人に同時にその場でハッとしてもらうために、巨大地

図を使う技術を考えました。被害データを見せて納得してもらい、自分の家や工場を見せ

るなどして我が事にしていく。こうした仕掛けには、技術を駆使するといいと思います。

後は人間関係をつくり、引っ張ってくれる人がいれば回るようになります。どんな地区に

も、やる気満々で茶目っ気のある人がいるので、そういう人探しをすべきでしょう。

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上田: 技術を駆使して災害空間を作ることで、災害自体を日常として体験しているような感覚に

なりました。そういう災害と非日常との間の埋め方もあるのではないかと思いました。

ここまでで、概念的な整理になりますが、「輪中」には生業などのコアが輪の中心にまず

あって、①自分自身のシステムや環境のリスクに対する理解がまずできて、その上で②内

部と外部それぞれに必要なつながりが構築され、ここまでは一般の連携ですが、今のよう

なシステムを包絡しながら発展させるためには、③現実を非日常にまで「拡張」すること

(本音や AR の気づきであれ、畏敬の文化であれ、土地という領域であれ)が必要なのだ

と理解しています。これらのプロセス全体によって、輪が一層上の連携に「拡がる」のだ

と思います。

◆輪の広がり―取り組みを広げていくための社会的課題・イニシアチブ

上田: 最後に、輪を広げていくために何が必要か、ご提言をお願いします。

古海: 輪を広げていくためには、1 人でも多くの人が災害に対する危機感を持つことです。自分

の企業のリスクをしっかり把握して、従業員を守るために何をしたらいいかを明確にする。

そうすると、自分たちの限界がわかるので、輪が広がっていくと思うのです。特に、中小

企業は防災の準備ができていないので、強制的に査察をするようなやり方も含めて、防災

体制を作り直していくことが大事だと思います。

下本: 輪中や地域防災が盛んな地域には、中心となって動いているキーパーソンがいます。何か

特殊な能力があるわけではなく、ただ自分の人生の中で一歩を踏み出すと決めて、そのた

めに尽力できる人です。そういった方が増えていけばいいと、心から思っています。

福和: 時間的・空間的スケールで多層性を持って考える力を身に着ける癖をもう一度取り戻すこ

とが何よりも大切です。今は、身近なことを瞬間的に乗り越えることに、みんな力を注ぎ、

そこで最大効率をするので、部分最適化しています。そうではなくて、一歩後ろに引いて、

全体を見る俯瞰性が必要です。長い目で見て、1 人ずつが将来を考え直すことが防災の出

発点だという気がしています。

上田: これは将来の展望ですが、輪中の歴史にみたように、どこでも同じ近代技術が、かつての

連携の文化を失わせてきた、という問題の提起がありました。富士通では人主体の技術イ

ノベーションに取り組んでいます。たとえば、すべての人が個人端末を持ち、お互いに避

難先を見える化することでお互いに避難を支援する。このように現代の新しい輪の形の共

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創のための媒体として、ICT を今後も考えていきたいと思っています。