管路の構造設計 - mydns.jp実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計 3 1...

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1 研修 「パイプラインコース」テキスト 管路の構造設計 南綿屋町米穀店

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Page 1: 管路の構造設計 - MyDNS.JP実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計 3 1 はじめに かんがい用パイプラインは地中に埋設されるのが普通である。したがって、その設計、

1

研修 「パイプラインコース」テキスト

管 路 の 構 造 設 計

南綿屋町米穀店

T O T O

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

2

目 次

1 はじめに ..................................................................................................................... 3

2 土圧について .............................................................................................................. 3

2.1 溝形の場合 .............................................................................................................3 2.2 突出形の場合 ..........................................................................................................4 2.3 土圧公式に関するトリビア(TRIVIA)........................................................................9

3 管体横断方向の設計...................................................................................................11

3.1 横断方向に生ずる曲げモーメント........................................................................ 11 3.2 スパンクラー式について ......................................................................................14 3.3 たわみ量計算式のトリビア(TRIVIA)......................................................................18

4 構造計算例について...................................................................................................20

5 パイプラインの浅埋設工法について ..........................................................................22

5.1 浮上の検討 ...........................................................................................................22 5.2 浅埋設工法について .............................................................................................22 5.3 ジオテキスタイル材料の選定 ...............................................................................23

6 まとめ........................................................................................................................24

このテキストの注意使用上の注意

このテキストで使われている「基準書」及び「技術書」とは、農林水産省制定の土地改

良事業計画設計基準「パイプライン」(平成 10 年 3 月制定)の「基準書」及び「技術書」を

指しています。

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

3

1 はじめに

かんがい用パイプラインは地中に埋設されるのが普通である。したがって、その設計、

施工にあたっては土質的工学的諸問題を避けて通る事はできない。 周知のように、土の工学的性質は非常に複雑であるため埋設管にかかる土圧の問題一つ

取り上げても埋設の仕方や埋戻し土の種類、締固の程度等によって著しく変化する厄介な

しろものである。したがって式中のパラメーターの選択についても、現地の土質、地形、

地質状態や施工技術の程度を熟知している現場の第一線の技術者の判断に委ねられる事が

多い。 そのためには各種の式がどのようにして導かれ、式中のパラメーターがどのような意味

を持っているか等のことについて技術者が深い理解を持っていることが必要である。 設計基準には最終的に得られた式しか与えられていないので以下に、どのような考えに

基づいてそれらの式が導かれたかという点について説明したい。勿論紙面が非常に限られ

ていることから、基本的なものについてのみ触れることにする。また、筆者の理解不足な

どにより、とんでもない記述の誤りなどがあるかもしれないので、その際は読者各位から

の御教示を伏して請うところです。

2 土圧について

2.1 溝形の場合 図 1 で溝の中にある埋戻し土の矩形要素の力の釣り合いを考えてみる。

土の単位体積重量を w、側土圧係数

を K、埋戻し土と原地盤との間の摩擦

係 数 を μ ’ と す る と 、 な お

φµµ tan=≈′ とする。 土の粘着力を無視すると、釣り合い

は、左辺に矩形要素に対して上方に作

用する力、右辺に下方に作用する力と

すると、

( )12 LwBdhVdhBVKdVV +=′++ µ

となる。両辺を dh で除して整理すれば、

( )22 LwBBVK

dhdV

=′+ µ

を得る。この微分方程式を 0=h で

H dh

h

B

Dc

v

v+dv kv/B

Kμvdh/B

図 1 溝形の場合の力

の作用状況

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

4

0=V という境界条件の下で解けば、

( )32

12

2 L

′−

=′−

µ

µ

KewBV

BHK

となる。管頂では Hh = であるから、

( )42

1 2

2

2 LBwCdK

ewBVBHK

o ⋅⋅=

′−

=′−

µ

µ

ただし、µ

µ

′−

=′−

KeCd

BHK

21

2

である。

(1) 不とう性管の場合の鉛直土圧強度 不とう性管では、管はほとんどたわまないので、その両側の土は(埋め戻しのとき、よく

締め固めなければ)沈下するから、(4)式で示す全荷重が管に作用すると考える。したがって、

管頂部における水平面の単位面積あたりに作用する鉛直土圧強度 Wv は、

( )52

Lcc

ov D

BwCdDV

W ⋅⋅==

となり、即ちパイプライン技術書の(9.3.1)式となる。 (2) とう性管の場合の鉛直土圧 管側方の土が沈下すると同時に管自体もたわむ

...から、とう性管には全荷重 V のうち管幅

分しか作用しないと考える。したがって Wv は、

( )61LBwCd

DBD

VWc

cov ⋅⋅=⋅⋅=

となり、技術書の(9.3.10)式となる。

2.2 突出形の場合 (1) 不とう性管の場合の鉛直土圧強度 ある地盤に不とう性管を敷設してその上に盛土をした場合、図2に示すように、管直上

の土柱よりその両側の土柱は重いので、より大きく沈下する。両者に相対的なズレが生じ

る。その際、管直上の土柱を下方に引きずり込むような摩擦力(,ネガティブ・フリクション

と呼ばれる)が作用する。前出の(1)式と同様に考えて(摩擦力の方向は逆である)、

( )72 LdhDwVdhDVKdVV c

c

⋅⋅+=−+ µ

両辺を dh で除して整理すると

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5

( )82 Lcc

DwDVK

dhdV

⋅=− µ

となる。 管頂上の土柱とその両側の土との相対的ズレは管頂より上部に行くにしたがって少なく

なり、ある高さ He でズレはゼロとなる(この高さの水平面を「等沈下面」と呼ぶ。…図2

参照)。 盛土高さH<Heの場合は土柱の相対的ズレが盛土表面まで及ぶ。これを「完全突出状

態」と呼ぶ。このときは(8)式の境界条件は h=0 で V=0 となるから、この条件下でこの式を

解いて、h=H とすれば、管頂上に作用する全鉛直土圧は、

( )92

1 2

2

2Lcc

DHK

co DwCK

eDwVc

⋅⋅=−

⋅⋅=

µ

µ

となる。ただし、µ

µ

KeC

cDHK

c 21

2

−=

である(技術書(9.3.6)式)。

一方、土柱の相対的ズレが盛土表面まで及ばない場合(H>He)は、「不完全突出状態」

と呼ぶ。このときは(8)式の境界条件は h=0 で V=w・Dc(H-He)である。この条件下で

Sm+Sg

盛土表面

Dc Dc Dc

Dc Sf+dc

Sf Sg

h

V+dv Kv/Dc

Kμ(B/Dc)dh

h=0 H-He

He

H

pDc

下向きに作用

する摩擦力

摩擦面

盛土後

盛土後臨界面

盛土前臨界面

盛土前原地盤

盛土後原地盤

等沈下面

図 2 突出形の場合の力の作用状況と

変形状態

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6

(8)式を解けば、

( )102

1 22

2L

−+

−⋅=

cc

DhK

c

e

c

DHK

c eDH

DH

KeDwV

µµ

µ

管頂部の位置ではh=Heであるから、管頂部に作用する鉛直土圧は

( )112

1 22

2

2Lcc

DhK

c

e

c

DH

K

co DwCeDH

DH

KeDwV c

c

e

⋅⋅=

−+

−⋅=

µµ

µ

したがって、管頂部における水平面の単位面積に作用する鉛直土圧強度 Wv は、

( )122

Lccc

cc DwCD

DwCWv ⋅⋅=

⋅⋅=

となる(技術書(9.3.7)式)。ただし、q cc

e

DhK

c

e

c

DH

K

o eDH

DH

KeC

µµ

µ

22

21

−+

−=

である。

(2) とう性管の場合の鉛直土圧 この場合は管頂がたわむため管頂上の土柱がその両側の土柱より多く沈下する。すなわ

ちこの場合も両者の間に生じるズレが(1)の不とう性管の場合と逆になるため、管頂上の土

柱に対してその両側の土から上向きに摩擦力が作用する。このような状態を「溝状態」と

呼ぶ。 この場合の管頂上の土柱中の土の矩形要素に作用している力の釣り合いを考えると、

( )132 LdhDwVdhDVKdVV c

c

⋅+=++ µ

となり、(1)式とほとんど同じとなる(B の位置に Dc が入っている点が違うだけ)。 この場合も、土柱の相対的ズレが盛土表面まで及んでいるか否かで「完全溝状」と「不

完全溝状」に分かれる。 (9)式と(10)式を導いたときと同様の境界条件の下でそれぞれの場合の全土圧式を求める

と、 (完全溝状の場合(技術書(9.3.14)式)

( )142

1 22

2Lcc

DHK

co DwCK

eDwV ⋅⋅=−

⋅=−

µ

µ

(不完全溝状の場合(技術書(9.3.15)式)

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7

( )152

1 22

2L

−+

−⋅=

−−

c

ecDH

K

c

e

c

DhK

c eDH

DH

KeDwV

µµ

µ

管頂部に作用する全荷重はh=He とおいて、

( )162

1 22

2

2Lcc

DH

K

c

e

c

DH

K

co DwCeDH

DH

KeDwV c

ec

e

⋅⋅=

−+

−⋅=

−−

µµ

µ

となる。したがって管頂部における水平面の単位面積当たりに作用する鉛直土圧強度 W は、

ccc

ccv DwC

DDwC

W ⋅⋅=⋅⋅

=2

である。

(3) Heの求め方 (11)、(16)式中のHeは下記のようにして求める。 管直上の土柱を考える(図2参照)。これらの土柱の全幅は3Dc であるから、その全重量

による荷重は 3H・w・Dc となる(奥行きは単位長さ)。一方管頂幅に作用する全土圧は、

突出形の場合は、Cc・w・Dc2であるから、管両側の土柱下に作用する全荷重は、

( )173 2Lccc DwCDwH ⋅⋅−⋅⋅

となる。また、図2に示す等沈下面から深さ h の点において、両側の土柱部に作用してい

る荷重は、 ( ) ( )1832 LVDwhHHV ce −⋅+−=′

ここでVは管頂上の土柱中の、等沈下面から深さhの点において作用している力で、(10)式、(11)式で表される。 この、左右両側の土柱中に発生しているヒズミεは、土の平均弾性係数をEとすると、

等沈下面から深さhの点で、

( )19LED

V

c ⋅=ε

である。 したがって等沈下面から管頂までの長さHeの左右の土柱の全変形量λ’は、(18)式から

V’を求めて(19)式に代入して、h について積分することによって得られる。すなわち、 ( ) ( )∫∫∫

−⋅⋅+−

=′

=⋅=′ ee H ce

c

H

c

Hdh

VDwhHHED

dhED

Vdh000

202

31Lελ

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(20)式中の V は(10),(15)式で表されるもので、hの関数であるからhで積分することができ

る。一方、管頂上部の土柱中に発生するヒズミεは、

EDV

c

である。したがって、管直上部の土柱の全沈下量λは、

( )∫ ∫== e eH H

c

dhED

Vdh0 0

21Lελ

この V も(10)、(15)式で表されるものである。ここで図2に示すように 盛土荷重による原地盤の沈下量=Sg

〃 管底の沈下量=Sf 〃 管頂の凹み量=dc 〃 管側方の管突出高(p・Dc)の範囲の土の沈下量=Sm

とすれば、等沈下面と原地盤面との間の土柱の全沈下量は、管直上でも、その左右両側で

も等しい筈であるから

gmcf SSdS ++′=++ λλ

よって、

( ) ( )cfgm dSSS +−+=′− λλ

両辺を Smで除したものをrsdとおけば、 ( ) ( ) ( )22L

m

cfgm

msd S

dSSSS

r+−+

=′−

=λλ

これを変形して、 ( )23Lmsd Sr ⋅=′− λλ

このrsdを沈下比と呼ぶ。不とう性管では一般に 0>′− λλ となるから 0>sdr であり、と

う性管では一般に 0<′− λλ となるから 0<sdr となる(技術書、図9.3.8参照)。 図2に示す臨界面の位置での盛土荷重による応力は(17)式を管両側の土柱幅で除して、

( )252

3 2

LEDp

DDwCDwH

S c

c

cccm

⋅⋅

⋅⋅−⋅⋅=

(20)、(21)式の積分を実際に行った結果を(25)式とともに(23)式に代入すれば、

( )262

13

21

321

21

2

22

Lmc

sdc

e

cc

eDH

K

c

e

c

sd

c

esd

cc

DH

K

DHpr

DH

DH

DH

Ke

DH

DHpr

DHpr

DH

DH

KKe

c

e

c

e

⋅⋅±=⋅⋅−⋅

⋅±

±

⋅±

−±

±−

±

µ

µµ

µ

µ

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9

となる。ここで不とう性管(不完全突出状)の場合は±又はmの符号の上側をとり、と

う性管(不完全溝状)の場合は下側をとる。すなわち、技術書の(9.3.7)式及び(9.3.16)式で

ある。 このように、He は必要な諸元を与えれば求められるが、計算は二分割法や挟み撃ち法な

ど方程式を解く数値解析のテクニックが必要となるので、技術書の図 9.3.8(a)~(c)などに示

すように予め計算したもので便宜を図っている。

(4) 逆突出形の場合 技術書 P273に説明する逆突出形とは、原地盤中を掘削し管を埋設した後にその上に盛

土を行う場合である。例えば、水田のパイプラインの工事後、圃場整備など盛土される場

合が想定される。土圧公式の誘導は前述の突出形などと同様である。

(5) 水平土圧について 水平土圧は、管の横断面に発生する曲げモーメントを低減する働きをする。

(a) 不とう性管の場合 不とう性管の場合はランキンの土圧公式を使用する。

( )27LhwkPh ⋅⋅= ここに、Ph: 埋戻し面又は盛土面から深さhの点で管体側壁に加わる水平土圧

k:ランキンの主働土圧係数 ( ) ( )φφ sin1sin1 +−=k w:埋戻土又は盛土の単位体積重量

(b) とう性管の場合 とう性管に鉛直荷重が作用すれば、管はたわむ

...ため土の反発力のようなものによる土圧

が発生する。スパンクラーの公式はこのことを示している。すなわち、管側面中央部が水

平方向に左右それぞれ 21X∆ だけたわめば、管側中央部に働く水平荷重強度 P1は、

( )282

1 11 L

XRe

FP

∆⋅′

⋅=

ここに、F:変形遅れ係数 e’:基礎材の反力係数(kN/m2) R:管厚中心半径

2.3 土圧公式に関するトリビア(trivia)

以上、パイプラインの構造設計のうち土圧にかかる諸公式について説明してきた。加え

て以下に述べるような事項を踏まえて現場での設計・施工を考えてみるのも興味深いと思

われるので、トリビアとして紹介する。 (1) マーストンの鉛直土圧公式では、例えば(1)式の誘導、土柱側面に働くせん断力を

考慮しているが、粘着力の影響を無視している。これはマーストン(この公式を考

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

10

えた人)が述べているが、降雨や地下水位の影響などにより粘着力は長期的に見る

と低下するということから考慮しない形になっている。また、実際の施工において

も、埋戻しは砂などの材料が使われるので、せん断力は土柱側面に働く鉛直土圧に

比例すると考えるのが妥当であろう。 (2) 管頂部に作用する鉛直土圧は溝形の場合、溝幅が広くなると、例えば(5)式(或い

は技術書(9.3.1)式)によって計算される値は、突出形の(9)式(或いは技術書(9.3.2)式)(9)よりも大きくなる。したがって、技術書 P270 及び P272 にあるような取

扱となる。 (3) 側土圧係数 K としてランキンの主働土圧係数を使い、また、摩擦係数μについて

も土の内部摩擦角により求めている。つまり内部摩擦角により下表のような結果を

得られる。つまり、内部摩擦角の小さい土で埋め戻した方が側土圧が大きくなる。

しかしながら、経験的には粒度分布のよい砂で締め固めた方が内部摩擦角は大きく

なり側土圧が期待できると思われるので、多少矛盾しているかもしれない。

(4) とう性管の水平たわみは変形遅れ係数や反力係数に影響されている。そのような

観点から技術書 P293~P301 の記述を読むと興味深い。以前の設計基準ではアメリ

カ開拓局の基準を準用していたが、我が国の現場条件や土質と一致しないため、実

測値より解析した結果、技術書の(9.4.13)式などを得たものである。

内部摩擦角とKの関係φ 0 15 20 25 30K 1.000 0.589 0.490 0.406 0.333

Kμ 0.000 0.158 0.178 0.189 0.192

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11

3 管体横断方向の設計

3.1 横断方向に生ずる曲げモーメント 埋設管の管種選定においては管の横断面に発生する最大曲げモーメント(自由支承は管

底部、固定支承はアーチの固定部)から使用する管の必要強度や管厚を算出する方法と、

とう性管のようにたわみ率から必要管厚を求める方法がある。ただし、とう性管の場合に

はたわみと応力の両方について許容値以下でなければならない。 最大曲げモーメントの算定式は技術書の表 9.4.1 及び 9.4.2 に示されているが、ここでは

自由支承の場合のその原形となった式を説明する(余り意味がないが、任意の設計支持角

について設計をしたい時に役立つかもしれない)1。 (1) 鉛直等分布荷重 図3(a)に示すように、管頂部水平面の単位面積当りに作用する鉛直荷重が W であり、管

底部の支持角が 2θであるとき、底面に作用する反力は W/sinθ、管中心線から反時計回

りに角Xの点に作用する曲げモーメントは次式で得られる。ただし、管底部を座標XYの

原点をとる。また、管底部に作用する不静定力の曲げモーメントをMo、軸力をToとす

1 とう性管の場合、スパンクラーの水平土圧理論との整合性と設計の簡略化

......のため基礎の施

工支持角を 360°として統一し、その設計支持角を土質により決定しているので、任意の設

計支持角を取るケースはありえないと思われる。

R

θ θ

x

w

w/sinθ

R

x

X

Y

R(1-cos x)

Mo

To

(a) (b)図3 鉛直等分布荷重が作用する場合の荷重作用状

態(a)と曲げモーメントの検討(b)

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

12

る。

( )29

sin2sincoscos

31

2sin

83

2sincos

43

sin41

21

222

1

LRWK

xxWRM

⋅⋅′=

−⋅−−+

++=

θθ

πθθθθ

θθ

π

曲げモーメントは管底部で最大となるので x=0 とおいて

( )30cos31

2sin

83

2sincos

43

sin41 2

11 Lθπ

θθθθθ

θπ

−−+

++==′ KK

(2) 管内水重

{

}

( )312cossin

2sin

2cos

sin4sin

6cos

121

4sinsin

4cos

83

sin8

22

22

23

2

LRwK

xxxxxx

RwM

o

o

⋅⋅=

+++−

+−+−+

⋅=

θπ

θθθθπθθ

θ

x=0 とおいて

( )326

cos125

4sinsin

4cos

83

sin8

2

2 Lθθθθπϑ

θθ

−++−+=K

θ θ

θπ

sin2Rwo ⋅⋅

X To Mo

( )αθ −⋅ xP cos

( )αθ −⋅ xR cos

( )αcos1+⋅⋅= RwP o

図4 管内水重による荷重の分布状態(a)と曲げ

モーメントの検討(b)

(a) (b)

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13

(3) 管自重

{

}

( )333

cos65

2sinsin

2cos

43

sin421

3

2

3

LRWK

RWM

d

d

=

−+

+−+

=

θ

θθθπθ

θθ

π

{ } ( )343

cos65sin

2cos

43

sin421 2

3 Lθθπθ

θθ

π−+−+=K

(4) 管側の水平土圧(不とう性管)

( ) ( )35146.0104.0 2214 LRPPM ⋅+−=

(5) 管側の水平土圧(とう性管)

鉛直荷重や管自重、水重によって発生する水平たわみをΔXとすると、管側部の水平土

圧の最大値Phは次式で表される。

( )362

LX

RePh

∆⋅′

=

水平土圧反力の分布を中心角2βとして管底に発生するモーメントは、

β

β

β

β

2X

RePh

∆⋅′

=P2

P1

不とう性管 とう性管

図6 側面水平荷重の分布状態

θ θ

Wd=管の単位長さ当

りの重さ

θsin2RWd

図5 管自重による荷重の分布状態

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14

( )37

sin32cossin

87

sin16cossin

2sin1621

25

22

25

LRPK

RPM

h

h

⋅⋅=

+++−⋅⋅= βββββββ

βββ

π

( )38sin32cossin

87

sin16cossin

2sin1621

22

25 Lββββ

ββββ

ββπ

+++−=K

技術書 P272 では、土圧分布は管体側面に管中心 100°の範囲で放物線上に発生するとして

いるので、β=50°であるから、 166.05 =K である。

3.2 スパンクラー式について とう性管のたわみに対する検討にはスパングラー(Spanglar)の修正式に管内水重、管体の

自重および活荷重等を考慮して補正した式(技術書 (9.4.9a)、(9.4.9b)及び(9.4.9c)式)を

利用する。この式に使われる、K、Ko、Kp の係数については技術書の表-9.4.7 に示されて

いるが、その係数の誘導について説明する。この説明も前述のものと同様、余り実際の計

算では利用しないものである。 なお、以下の説明では、変形遅れ係数 F については省略しているので留意されたい。

(1) 埋設管中央部(水平変位を求めようとする点)の水平方向に荷重 P を作用させた時の

曲げモーメント Castigliano の定理2に

よって水平変位を求める

ため、図7の C 点にP=

1なる水平力を加えたと

きの任意の曲げモーメン

トM を求める。 図7(b)に示すように、

水平力 P が作用したとき

の D 点における曲げモー

メント 1M は、 x=0~π/2radianでは、

2 構造力学において不静定構造物の解法によく使われる定理。構造物の1点に作用する荷重

P の方向の変位は、構造物のひずみエネルギーU を P について偏微分したものに等しい

(Castigliano の第一定理)。また、P を不静定構造物の不静定反力、不静定断面力のように

P 自体が仕事をしないようにとれば、ひずみエネルギーは P にに関して極小となる

(Castigliano の第二定理又は最小仕事の原理)。

A

B

P P

C C

P

D

R x

2P

Mo ( )xR cos1−

図7 円管の水平変位を求めるための説明

(a) (b)

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

15

( ) ( )39cos121 LxPRMM o −−=

x=π/2~πradian では、

( ) ( ) ( )40cos12

coscos121 LxPRMxPRxPRMM oo +−=−−−=

管底部においては回転角 i は 0 であるから、管材の弾性係数をE、管軸方向を軸とし、管単

位延長当りの管壁の断面二次モーメントをIとすると、

∫ ∫ =∂∂⋅

⋅=⋅⋅

∂∂

⋅=π π

0 01

111 01 Rdx

MM

MIE

dxRMM

EIM

ioo

(39)、(40)式から、 11 =∂∂

oMM

であるから、

( ) ( ) RdxxPRMRdxxPRMRdxMiEI ooo ∫∫∫

+−+

−−=⋅=⋅

ππ

ππ

2

201 cos1

2cos1

2

これより、

−=∴=+−

ππππ 21

20

2PRMPRPRM oo

よって、x=0~π/2 では、この Mo を(39)式に代入して

−=

π2cos

21 xPRM

P=1 とおいて、

( )412cos2

L

−=

πxRM

x=π/2~πでは(40)式に代入して

+−=

π2cos

21 xPRM

P=1 とおいて、

( )422cos2

L

+−=

πxRM

(2) 土圧、上載荷重による鉛直荷重のみが作用した場合のたわみ計算式 前出の図 3 において、角 x の点に作用する曲げモーメントは、管底部に作用する不静定

力の曲げモーメントをMo、軸力をToとすれば(θは管底の支持角)、 x=0~θの範囲では、

( ) ( )43sinsin2

cos1 22

LXRWxRTMM oo ⋅⋅

−−⋅−=θ

x=θ~π/2の範囲では、

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

16

( ) ( )44sin21sincos1 2 L

−⋅−−⋅−= θxRWxRTMM oo

x=π/2~πの範囲では、

( ) ( ) ( )45sin12

sin21sincos1 2

22 LxWRxWRxRTMM oo −−

−−−⋅−= θ

曲げモーメントによる歪エネルギーを

( )∫ ⋅⋅=π

0

2

462

LdxREI

MU

とすれば、Castigliano の定理を使い管底部に作用する Mo と To は、以下のように求めら

れる。

( )472

sin83

2sincos

31cos

43

sin41 22 L

−+

+−+=θθθθθ

θθ

πWRM o

( )48cos3

2 Lθπ

WRTo −=

鉛直荷重によって埋設管の横断面に発生する曲げモーメントMによる点C(図 7-(a)参照)

の水平方向移動量′∆ 11X は、埋設管の右半分のみについて考えたとき、Castigliano の定理

により(ただし、曲げモーメントによる歪エネルギーをUとおく)、

( )∫ ⋅⋅=

′∂=′∆

=

π

00

11 49LdxREIMM

PU

XP

(29)式に示すように (又は、 (43)式に (47)、 (48)式を代入して )、 x=0~θでは、

( )50sin2

sincoscos31

2sin

83

2sincos

43

sin41 2

22 L

−⋅−−+

++⋅=

=

θθθθθθ

θθ

πxxRW

MM a

また、x=θ~π/2では、(47)、(48)式を(44)式に代入して、

( )51sin83coscos

31

2sincos

43

sin41 22 L

−+

⋅−++⋅=

=

xxRW

MM b

θθθθθ

θπ

x=π/2~πでは、(47)、(48)式を(45)式に代入して、

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

17

( )52sin21

81coscos

31sin

21cos

43

sin41 222 L

−−

⋅−⋅++⋅=

=

xxRW

MM c

θθθθθ

θπ

これらを(49)式に代入すると

( )53125

2cos3

sin2sin

6sin

21

2cos2

2cos2

2cos2

42

4

20

2

11

LRWKWR

RdxxRMRdxxRMRdxxRM

XEI

cba

⋅⋅=

−+

⋅++−=

+⋅−

−⋅+

−⋅=

′∆⋅

∫∫ ∫

πθ

θπθ

πθθθ

πππππ

θπ

θ

ただし、中括弧の中を K とおいている。 (3) 管内水重のみが作用した場合のたわみ計算式 詳細な誘導は省略して結果だけ示す。

管内水重によって生ずる水平方向移動量を′∆ 12X とおくと、

( )544

cos3sin42

sin42

sin21 5

25

12

LRWKRW

XEI

ooo ⋅⋅=

⋅+

⋅++−−=

′∆⋅

θθ

θθθπθπ

ただし、中括弧の中を Ko とおいている。 (4) 管体自重のみが作用した場合のたわみ計算式 詳細な誘導は省略して結果だけを示す。

管内自重によって生ずる水平方向移動量を′∆ 13X とおくと、

( )55sin2

sin6

cos23

2sin

21 424

13

LRWKRW

XEI

ppp ⋅⋅=

+−+−⋅⋅=

′∆⋅

θθθπθπθθ

ただし、中括弧の中を Kp とおいている。 (5) 水平荷重のみが作用した場合のたわみ計算式 詳細な誘導は省略して結果だけを示す。 水平荷重が放物線状に図6(b)に示すよう分布したときの水平直径の移動量 21X∆ とおく

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実践技術研修「パイプライン」管路の構造設計

18

と、

( )56061.03

21 LEI

RXeX ⋅∆⋅′=∆

ただし、 X∆ は鉛直荷重、管内水重及び管体自重により生じるたわみ量。 (6) スパングラーの式

鉛直荷重、管内水重及び管体自重により生じるたわみ量′∆ 1X (水平方向の直径の変化量)

は、(53)、(54)、及び(55)式の変化量から

( )572

2

454

1312111

LEI

RWKRWKRWK

XXXX

ppoo ⋅⋅+⋅⋅+⋅⋅⋅=

′∆+′∆+′∆⋅=′∆

さらに、水平荷重による終局的な変化量 1X∆ ,は、

( ))58(061.0

2 31

4542111

LEI

RXeEI

RWKRWKRWK

XXX

ppoo ⋅∆⋅′−

⋅⋅+⋅⋅+⋅⋅⋅=

∆−′∆=∆

(58)式から 1X∆ を求めると

( ) ( )59061.0

23

454

1 LReEI

RWKRWKRWKX ppoo

⋅′⋅+

⋅⋅+⋅⋅+⋅⋅⋅=∆

となり、技術書(9.4.9b)式となる。

3.3 たわみ量計算式のトリビア(trivia) (1) Wp と Wd の取り扱い

たわみ量計算式の(59)式又は技術書(9.4.9b)式で取り扱う Wp は、技術書の表現では、「管

体の単位面積当たりの重量(長さ方向 1cm の環片から円周方向に 1cm の間隔で切り取った

ものの重量)とされている。 一方、埋設管の横断面に生じる最大曲げモーメントを求める場合の(33)式又は技術書の表

9.4.2 で取り扱う Wd は管長 1cm 当りの管体重量とされている。同じ基準の中でいささか不

統一となっている。つまり、Wp と Wd の関係は、 pd WRW ⋅= π2 となることに注意して計

算しなければならない。

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19

(2) 内水圧による復元効果 技術書(9.3.参 6)式で管内水圧の復元効果を考慮したたわみ量の計算式が紹介されている。

これは、内圧の作用により管の扁平が戻ることからたわみ量が軽減することはあり得る(実際にもそうである)。しかし、とう性管ではたわみ量と同時に管厚の計算も行うので、その

際に使う最大曲げモーメント Mb の計算式を表せば次のようになる。

( ) ( ) ( )602061.0

166.0061.033

513

321 L

RHKReEIReWKKRIEWKRWKWRK

M dob ⋅⋅+′+

⋅′⋅−+⋅⋅⋅+⋅+⋅=

ここで、H は内圧の応力である。 また、内圧の効果を 100%考慮するかどうかは、技術書の記載のとおりである。

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20

4 構造計算例について

以上、管水路の構造設計、特に横断方向に関する事項について、設計基準の背景となっ

ている事柄について述べた。 これらの事項を踏まえて、設計基準の手法により鋼管の構造計算を行った結果を示す。 設計条件は表1に示すとおりで、基本的な条件は変えず締固め区分Ⅰのケースと締固め区

分Ⅱのケースについて行

った。 この計算結果より、締

固め区分Ⅱで締め固めた

方が、深い土被りまでよ

り大きな許容内水圧が得

られること、また、たわ

み率は低く抑えられるこ

とがわかる。 その理由としては反力

係数が大きくとることが

でき、結果管体に働く曲

げモーメントが軽減され

るからであろう。また、表1 鋼管の構造計算例

締固区分Ⅰ 締固区分Ⅱ設計条件布設条件 オープン掘削 オープン掘削管頂溝幅(m) 4.400 4.400管心溝幅(m) 2.900 2.900地下水 あり あり現地盤の土質 粘性土 粘性土基礎材 砂質土 砂質土埋戻土の内部摩擦角(度) 30.000 30.000埋戻土の単位体積重量(kN/m3) 18.000 18.000設計支持角(度) 90.000 90.000基礎材の締固め区分 Ⅰ Ⅱ基礎材の締固め度 90.000 95.000自動車荷重 T-14 T-14舗装区分 舗装 舗装鋼管の管材 SM490 SM490管径(m) 1.500 1.500管厚(m) 0.0120 0.0120許容引張応力度(N/mm2) 208.000 208.000反力係数e'(kN/m2) 2700.000 3600.000

管種選定図(管径1500m/m, 管厚12mm,鋼管)

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

0.6 1 1.4 1.8 2.2 2.6 3 3.4 3.8土被り(m)

許容

内水

圧(M

pa)

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

たわ

み率

(%)

許容内水圧 締固区分Ⅰ

許容内水圧 締固区分Ⅱ

たわみ率(%) 締固区分Ⅰ

たわみ率(%) 締固区分Ⅱ

図8 構造計算の結果

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21

締固め区分Ⅱを採用すれば、設計たわみ率が4%となるので、より薄い管厚でより深い土

被りまでもたせることができる。 実際の施工を踏まえれば締固め区分Ⅱの適用は難しいとは思われるが、このような特徴

のあることを踏まえ、設計施工にあたる必要がある。また、基礎材を吟味して、粒度分布

のよい砂質土を利用すれば、設計支持角が120°をとれることがあるので、その場合も

設計上では有利に働く。

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22

5 パイプラインの浅埋設工法について

5.1 浮上の検討 埋設深を決める際に、管体空虚時に管路が浮上しない土かぶりを検討を次式(技術書

(9.1.1))により行う。

( ){ } ( )611

4

2

Lo

pcoc

wwDDwSD

H−

⋅−−⋅⋅

⋅≥

γπ

ここで、H:管路が浮上しないための最小土かぶり(m)、D:管の内径(m)、Dc:管の外径(m)、S:安全率(1.2 とする)、γp:管材の単位体積重量(tf/m3又は kN/m3)、wo:水の単位体積重

量(tf/m3又は kN/m3)、w:埋戻し土の飽和単位体積重量(tf/m3又は kN/m3)、である。 さて、埋戻し土の飽和単位体積重量 18kN/m3として、管の外径 2.704m、内径 2.6m、管

材の単位体積重量 20 N/m3 の FRPM 管を埋設する場合の最小土かぶりを求めると、

H=3.18m となる。 このような場合、もし土かぶりを浅くできた場合には管材料費や工期縮減などのメリッ

トがあると思われる。

5.2 浅埋設工法について 以上のようなことから、ジオテ

キスタイルによる埋設管の浅埋設

工法3が新技術として開発され近

年広く利用されている。工法とし

ては図 9 に示すもので、管体上部

にジオテキスタイル(主としてジ

オグリッド)を包み込むように敷

設し、管体及び側部の土(図 9 のハ

ッチした部分)の重量を利用して

浮上に対抗しすることにより、浮

上に対する最小土かぶり深さを低

減させるものである。 また、管側部の上部の土重につ

いては、実測結果などから、50%見込むものとして計上するものと

する。

3 農業農村整備事業品質確保・向上対策事業 平成 15年度 新技術等普及マニュアル(案) 、社団法人 土地測量設計技術協会

Dc

B

D

図 9 設計断面

H

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23

浮上に対する安全性の検討は以下のとおりである。 (1) 抵抗力 W の計算

( ) ( ) ( )awwD

DBHBDW oc

cc .6242

1 2

L−⋅

⋅−⋅+⋅+⋅⋅= π

(2) 管自重 Wp の計算

( )bDD

W pc

p .624

22

Lγπ ⋅⋅−

=

(3) 浮力 U の計算

( )cwDU oc .624

2 L⋅⋅=π

(4) 浮上に対する安全率 S の計算

( )dU

WWS p .62L

+=

このような検討から、前述のケースでは、ジオテキスタイルの幅 3.7m とすると、最小土

かぶり 1.68m を得ることができる。ただし管継ぎ手部にジオテキスタイルを敷設できない

場合は、その補正を行う必要がある。

5.3 ジオテキスタイル材料の選定 引張強度

ジオテキスタイルの材料の選定にあたっては管の浮上に対して所要の引張強度を有して

いることである。ジオテキスタイルに発生する引張力は、浮上に対するパイプ直上部の土

重(Wx)とパイプ自重の総和と浮力との差により判断されるが、通常は浮力が大きいので引

張力が生じる。 (1) 常時においてジオテキスタイルにかかる引張荷重 P の計算

{ } ( )aLLWWSUP px .63

211 L⋅

⋅−−⋅=

ここで、Wx:管体直上の土重(tf/m3又は kN/m3)、L1:ジオテキスタイルの敷設長さ(m)、L:管の一本あたりの延長(m)、である。

(2) 地震時においてジテキスタイルにかかる引張荷重 Ps の計算

{ } ( )bLLWUP p .63

211 L⋅

⋅−=

地震時には、液状化等により管直上の土重が作用せず、最大では浮力相当の引張荷重が作

用するものと考える。また、安全率は 1.0 とする。 これらの結果から必要な強度を有する材料を選定するものとする。

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24

伸びひずみ

伸びひずみについては、引張り応力が作用している時に伸長するようでは管の浮上に抵

抗できないため、なるべく伸びの少ない材料を選定することが必要である。また、地震時

には管上部の土重が働かないこと想定しているので、許容伸び率は、常時作用する引張荷

重に対してよいものと考える。

その他

○ クリープ強度: 長期にわたり荷重がかかつた場合に強度が低下して破断が起こることもあるので、クリ

ープ限度強度により設計強度を検討するものとする。 ○ 耐久性

耐候性、耐薬品性、耐寒・耐熱性についても確認する。 ○ 耐衝撃性 材料に砕石を使用して転圧した場合に、損傷又は破断により強度が低下しないことが必

要である。 ○ 施工性 材料は設計された形状に折り曲げることができ、管体によくフィットしなければならな

い。また、砕石の大きさを考慮した目合いを選定する。

6 まとめ

パイプラインの構造設計について、要約すれば概ね以下の事項を把握して設計施工に取

り組むことが必要であると感じている。 1) 我々が使っている設計基準は、各種の理論や経験に基づいた事柄を要約集成した

もので、それは大したものであるが、また、半面、現場で遭遇する各種の条件変

化に対処するためには、必ずしも設計基準で十分ではない。 2) 当然のことながら、設計と施工は表裏一体となっているが、特にとう性管では基

礎材の締め固めについては充分に配慮する必要がある。それは、スパングラー式

の誘導などで述べたとおりの土の反力により水平土圧が生じ、そのことにより管

のたわみが影響を受けているからである。そのような点から、現地での施工にあ

たり十二分に留意することと同時に現地の地質条件などを踏まえて構造設計を行

わなければならない。 3) 反力係数を計測から求める方法は有効であるが、得られたデータについてはデー

タのばらつき、施工管理の状態を等の条件を十分吟味して評価しなければならな

い。

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25

また、蛇足であるが、近年は限界状態設計法に基づく信頼性設計法( 狭義の性能設計と考

えられる)、或いは構造性能、使用性能、耐久性能などを踏まえた設計(広義の性能設計と考

えられる)を意識せざるを得ない。したがって、現行の設計法で用いられる個々の要素が、

構造物の安全性についてどのような役割を果たしているかなどについて正確に理解し、性

能設計の手法を確立することが重要となっている。そのような観点から、このようなテキ

ストにより構造設計について理解を深めることが必要ではないかと思っている。