米軍施設についての法的側面からのアプローチ - …...2018/08/09  · 2013...

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2013 8 回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成 25 年度 Vol. (通算 121 号) 米軍施設についての法的側面からのアプローチ 平成 25 12 横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当) 編集・発行

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Page 1: 米軍施設についての法的側面からのアプローチ - …...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

2013第8回マニフェスト大賞

「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

平成 25年度 Vol.9 (通算 121号)

米軍施設についての法的側面からのアプローチ

平成25 年12 月

横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当)

編集・発行

Page 2: 米軍施設についての法的側面からのアプローチ - …...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

第Ⅰ章 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P1

第Ⅱ章 米軍施設の設置に至った経緯等(連合国による占領)

1 ポツダム宣言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P2

2 サンフランシスコ講和条約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3

第Ⅲ章 日米安全保障条約

1 旧安保条約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4

2 新安保条約

(1)新安保条約の締結(旧安保条約の失効) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P5

(2)新安保条約の特徴(旧安保条約からの変更点) ・・・・・・・・・・・・・・・・P6

第Ⅳ章 日米地位協定

1 意義等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P9

(1)外国軍隊の法的地位 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P9

(2)関連する合意等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… P9

2 重要条項と問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P10

(1)用語の定義(第1条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P10

(2)施設・区域の提供・返還・共同使用(第2条) ・・・・・・・・・・………P10

(3)施設・区域の管理権(第3条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・………P11

(4)返還時の義務・補償(第4条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P11

(5)米軍構成員等の出入国(第9条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P12

(6)刑事裁判権(第 17 条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P13

(7)民事請求権(第 18 条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P17

(8)経費の分担(第 24 条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P21

(9)日米合同委員会(第 25 条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P21

(10)改正(第 27 条)、有効期間(第 28 条) ・・・・・・・・・・・・・・・・……P22

コラム駐留軍用地特措法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P23

3 「運用改善」について

(1)1995 年(平成7年)合意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P24

(2)1995 年(平成7年)合意以後の動き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P24

コラム村雨むらさめ

橋ばし

事件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P26

第Ⅴ章 条約の法的位置付け等について

1 条約の定義等

(1)国際法の領域における「条約」について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P28

(2)条約と行政協定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P28

2 条約と国内法の関係

(1)条約と国内法秩序の関係に関する考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P30

(2)条約の国内的実施に関する方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P30

(3)条約と憲法・法律との優劣関係(条約の国内法上の効力の位置付け) P31

3 条約の違憲審査

(1)条約は裁判所による違憲審査の対象に含まれるか ・・・・・・・・・・……P33

(2)砂川事件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……P34

資料(日米安全保障条約(P38)・日米地位協定(P42))

目 次

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横浜の都市形成史の中で、いわゆる「横浜の五重苦」といわれたもののひとつに、

戦後の米軍による占領・接収がありました。市の中心部や港湾施設などを広範囲に

接収され、市の都市機能はほとんど麻痺するに至りました。

市内の占領・接収面積は、最大で 1,200 ヘクタールに及び、1952 年(昭和 27

年)に米国サンフランシスコ市で締結された講和条約発効後も、112 の施設が米

軍に提供されていました。

本市では、1950 年(昭和 25 年)に制定された「横浜国際港都建設法」に基づ

く都市計画を契機に、接収解除運動を展開する機運が高まりました。

本市会においては、1966 年(昭和 36 年)に「横浜市会接収解除促進実行委員

会」が設置されたことを始まりとして、現在の「基地対策特別委員会」の設置に至

り、米軍施設の早期全面返還の促進等を図るための議論や活動を続けてきており、

近年は、米軍施設の返還、跡地利用の促進及び市民の基地負担の軽減に関し、国に

対し、継続して「横浜市内米軍施設に関する要望書」を提出しています。

しかし、今なお市内には6箇所約470ヘクタールに及ぶ米軍施設が存在し、市民

生活に多大な負担をかけるとともに、まちづくりにも大きな制約を与えています。

そこで、本号では、今後の基地対策を議論する上での参考としていただくことを

目的として、主権国日本の中に米軍施設が存在する法的な根拠である、「日米安全保

障条約」や「日米地位協定」の内容を御紹介するとともに、これらの国家間の合意

である「条約」一般について、その法的な位置付けなどについて解説します。

第Ⅰ章 はじめに

十二天の家族ハウス前のバス通り

(1953 年(昭和 28 年)頃)(本牧地区)

→米軍関係者専用のバス

写真:生駒實

P.X.映画館等~米軍専用~

(1953 年(昭和 28 年)頃)(本牧地区・

現在の山手警察前)

写真:生駒實

【横浜開港 150 周年記念事業 みんなでつくる横濱写真アルバム 市民が記録した 150 年】

http://www.yokohama-album.jp/

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第Ⅰ章 はじめに
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≪本市の米軍基地対策に関する主な経過≫

昭和 36 年 3.31 横浜市会接収解除促進実行委員会設置

39 年 5.21 神奈川県基地関係県市町連絡協議会結成(現:神奈川県基地関係県市連絡協議会)

44 年 3.27 横浜海浜住宅地区(1号地区)、山手住宅地区の返還を日米合意

6.30 横浜兵員クラブ返還

11.23 根岸競馬場地区返還

46 年 2.17 富岡倉庫地区(一部)返還

47 年 2.9 山手住宅地区返還、8.25 岸根兵舎地区返還

57 年 3.31 横浜海浜住宅地区、新山下住宅地区、根岸住宅地区(一部)返還

60 年 5.31 横浜市会接収解除促進特別委員会設置

平成6年 4.1 横浜冷蔵倉庫返還

16 年 5.28 基地返還促進特別委員会設置

17 年 5.30 基地対策特別委員会設置

17 年 12.14 小柴貯油施設返還

21 年 5.25 富岡倉庫地区(全部)返還

第2次世界大戦中の 1945 年(昭和 20 年)7月 26 日、ベルリン郊外のポツダ

ムで、米国、英国及び中華民国が、日本に対して共同宣言(ポツダム宣言)を発し

ました。

同年9月2日、日本は、日本軍全軍の無条件降伏やポツダム宣言の忠実な履行を

主な内容とする休戦協定(事実上の終戦協定)を締結したことにより、連合国の占

領下に置かれることになりました。

この占領については、日本の中央政府の存在は認めつつも、その主権(※)の行

使等について連合国(実態は米国)による監督・制限を受けるという、間接施政方

式が取られました。

第Ⅱ章 米軍施設の設置に至った経緯等(連合国による占領)

1 ポツダム宣言

※ 国家の主権とは

国際法上の主権の意義については、様々な視点からの解釈がなされていますが、一般的に

は、次の2つの要素からなるものと説明されています。

【領域主権】 国家が自国領域内ですべての人と物を排他的に支配し得る権力

(対内的主権)

【独 立 権】 一国が他国の支配に属さない地位を保持する権力(対外的主権)

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1951 年(昭和 26 年)9月8日、日本はサンフランシスコ市において、米国、

英国、仏国など西側諸国との間の講和条約に署名し、同講和条約は翌年4月 28 日に

発効しました(正式名称:日本国との平和条約(昭和 27 年条約第5号)。以下「サ

ンフランシスコ講和条約」といいます。)。

サンフランシスコ講和条約の締結により、国際法上、日本と連合国との間の戦争

状態が終結し、日本は主権を回復しました(沖縄、小笠原群島等を除く。)。

一方で、日本と米国との間では、次の第Ⅲ章で御説明するとおり、「日本国とアメ

リカ合衆国との間の安全保障条約」が締結され、サンフランシスコ講和条約第6条

(a)ただし書が適用されることとなった結果、連合国の軍隊のうち米軍だけは、同

条(a)本文の適用を受けず、日本駐留を続行することになりました。

○ポツダム宣言(※口語訳)

第7項 そのような新しい秩序が建設され、また日本国の戦争遂行能力が破壊されたこ

とが証明されるまでは、連合国の指定する日本国の領土内の諸地点は、ここで指示す

る基本的目的の達成を担保するため、連合国が占領するものとする。

第 12 項 前記の諸目的が達成され、かつ日本国国民の自由に表明する意思にしたがい平

和的傾向をもち、かつ責任ある政府が樹立されたときには、連合国の占領軍はただち

に日本国より撤退するものとする。

第 13 項 われわれは日本国政府がただちに全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、かつそ

の行動における同政府の誠意について、適当かつ充分な保障を提出することを要求す

る。これ以外の道を日本国が選択した場合、迅速かつ完全な壊滅だけが待っている。

2 サンフランシスコ講和条約

○サンフランシスコ講和条約

第6条

(a)連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、かつ、

いかなる場合にもその後90日以内に、日本国から撤退しなければならない。ただし、

この規定は、1又は2以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結

されたもしくは締結される2国間もしくは多数国間の協定に基く、又はその結果とし

ての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。

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第Ⅱ章 米軍施設の設置に至った経緯等
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サンフランシスコ講和条約の締結日と同日、日本と米国の代表は、サンフランシ

スコ市内のプレシディオ陸軍基地に場所を移し、「日本国とアメリカ合衆国との間の

安全保障条約(昭和 27 年条約第6号)」(以下「旧安保条約」といいます。)に調印

しました。

既に御説明したとおり、旧安保条約は、サンフランシスコ講和条約第6条(a)た

だし書に規定する「1又は2以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の

間に締結されたもしくは締結される2国間(略)の協定」に該当し、米軍の日本駐

留の根拠となりました。

上記の第3条の規定に基づき、「日米行政協定」(正式名称:日本国とアメリカ合

衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定。)が締結されています(1952

年(昭和 27 年)4月 28 日発効)。

これにより、米軍により接収されていた財産は、同協定第2条による提供財産に

切り替えられることになり、この際に、岡崎国務大臣とラスク米国国務次官補との

間で取り交わされた岡崎・ラスク交換公文(※)に基づいて設置された予備作業班

では、以下の内容の切替方針が合意されました。

1 旧安保条約

第Ⅲ章 日米安全保障条約

○旧安保条約

(駐留軍の使用目的)

第1条 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び

海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国

は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、

並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国に

おける大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与

えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために

使用することができる。

(行政協定)

第3条 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件

は、両政府間の行政協定で決定する。

(効力終了)

第4条 この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の

維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安

全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも

効力を失うものとする。

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(1) 新安保条約の締結(旧安保条約の失効)

1960 年(昭和 35 年)1月 19 日、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協

力及び安全保障条約(昭和 35 年条約第6号)」(以下「新安保条約」といいます。)

が新たに発効したことに伴い、旧安保条約は失効しました。

新安保条約第6条は、旧安保条約を引き継ぎ、米軍が

・ 「日本国の安全に寄与」

・ 「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与」

することを目的として、日本国内の施設・区域を使用することができる旨を規定

するとともに、これらの使用及び米軍の地位については、「日米行政協定に代わる

別個の協定及び合意される他の取極により規律される」と規定しています。

○日米行政協定

第2条

1 日本国は、合衆国に対し、安全保障条約第1条に掲げる目的の遂行に必要な施設及び

区域の使用を許すことに同意する。(略)「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運

営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。

○岡崎・ラスク交換公文に基づき設置された予備作業班による財産切替方針(概要)

・原則として、陸、空軍は都市地域外に駐留することとし、海軍はおのおのの使命に合致

した最小限の港湾地区に集中すること。

・継続使用される特定の財産を決定するに際しては、以前、日本軍により使用されていた

財産並びに日本政府所有の他の財産を使用することにつき優先的配慮を払うこと。

・学校、図書館等に使用されていた公共財産は、可及的速やかに返還すること。

2 新安保条約

※ 交換公文とは

国家間の明示的合意を示す条約の一種で、一方の国が一定の意思を示す書簡(往簡)を相手

国に渡し、相手国がその意思を了解する旨の書簡(返簡)を返すという形式を採ることによっ

て、当事国間の合意を図るものです。

交換公文の形式が採られるのは、主要な条約の補足、条約解釈に関する了解、技術的性質を

有する事項の解釈、実施細目を定める場合などが典型的ですが、交換公文だけで国家間の合意

を形成する場合もあります。

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第Ⅲ章 日米安全保障条約
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上記の新安保条約第6条に規定する「別個の協定」が、次章で御説明する「日

米地位協定」であり、この「日米地位協定」が米軍の日本駐留についての実質的

な内容を規定しています。

(2) 新安保条約の特徴(旧安保条約からの変更点)

旧安保条約との比較において、新安保条約の特徴としては、

があげられますが、ここではこれらのうち、①、③、⑤について御説明します。

ア 米国の日本防衛義務の明確化

旧安保条約では、日本における米軍駐留の目的は、極東における国際の平和と

安全の維持に寄与することであり、日本防衛については、「他国の教唆・干渉によ

る日本国内の内乱・騒擾の鎮圧」及び「外部からの武力攻撃に対する日本の安全

に寄与すること」が規定されたにすぎませんでした(4ページ 旧安保条約第1条参照)。

つまり、日本は米軍に国内の施設・区域を提供する義務を負うのに、日本の防

衛については在日米軍は法的義務を負わないという片務的な関係にありました。

新安保条約では、米国の日本防衛義務が明文化され、形式上は相互防衛体制が

根拠づけられたといわれています(新安保条約第3条、第 5 条)。

ただし、相互防衛といっても、

という限定が付されています。

○新安保条約

(施設、区域の供与)

第6条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与

するため、アメリ力合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区

域を使用することを許される。

前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952年2月

28日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づ

く行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律さ

れる。

① 米国の日本防衛義務の明確化

② 国際連合との関係の明確化(国際憲章、決議等との整合の確保)

③ 在日米軍の配置等の重要な変更等に係る事前協議制の導入

④ 米軍駐留目的のうち内乱条項(他国の教唆・干渉による日本国内の内乱等の鎮圧)の削除

⑤ 条約期限の設定

・日本又は在日米軍に対する武力攻撃への対処に限定されること

・共同防衛行動が「自国の憲法上の規定・手続に従って」行われること

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イ 在日米軍の配置等の重要な変更等に係る事前協議制の導入

新安保条約の締結と同時に交わされた、岸内閣総理大臣とハーター米国国務長

官との間の書簡文(「条約第6条の実施に関する交換公文」(岸・ハーター交換公

文))では、次の内容が盛り込まれ、在日米軍の配置等の重要な変更等については、

日本政府との事前協議を要することとされました。

なお、上記の岸・ハーター交換公文の事前の協議については、藤山外務大臣と

マッカーサー米国大使との間で交わされた口頭による了解事項(藤山・マッカー

サー口頭了解)として、国会で答弁がなされています。

○新安保条約

(自衛力)

第3条 締約国は、個別的及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助

により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件とし

て、維持し発展させる。

(武力攻撃に対する措置)

第5条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武

力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の

規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。(以下省

略)

○藤山・マッカーサー口頭了解(第61回国会衆議院外務委員会(昭和44年3月14日)に

おける愛知揆一外務大臣答弁)

日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解し

ている。

1 「配置における重要な変更」の場合

陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は

一機動部隊程度の配置

2 「装備における重要な変更」の場合

核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設

3 わが国から行なわれる戦闘作戦行動(条約第5条に基づいて行なわれるものを除

く。)のための基地としての日本国内の施設・区域の使用

○条約第6条の実施に関する交換公文(岸・ハーター交換公文)

合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更

並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定に基づいて行なわ

れるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府

との事前の協議の主題とする。

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第Ⅲ章 日米安全保障条約
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ウ 条約の有効期限の設定

旧安保条約では、条約の有効期限について、日米両国の政府が認めた場合は、

その効力を失うものとされていました。

新安保条約では、この点が改められ、調印後 10 年間が経過した後は、一方の締

約国が条約を終了させる意思を通告してから1年後に条約は終了することが規定

され、条約の有効期限が明記されました。

しかし、実際には、有効期限経過後も、自動延長が繰り返され、今日に至って

います。

○旧安保条約

(効果終了)

第4条 この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の

維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安

全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも

効力を失うものとする。

○新安保条約

(有効期間)

第10条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めを

する国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時

まで効力を有する。もっとも、この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約

国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場

合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後1年で終了する。

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5ページ(第Ⅲ章2(1))で御説明したように、在日米軍駐留の具体的な内容に

ついては、新安保条約第6条に基づき、「日米地位協定」(正式名称:「日本国とアメ

リカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに

日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和35年条約第7号)」)において

規定されています。

(1) 外国軍隊の法的地位

国際法上、一国家は他の国家の主権に服さないという「主権平等原則」が認め

られており、国家の機関である軍隊及びその構成員等が外国に駐留する場合も、

駐屯地外又は公務外で行われた行為を除き、原則として、駐在国の領土主権に服

さないと解釈されています。

一方で、第2次世界大戦後の平時における友好国への軍隊の駐留については、

当事国間の合意に基づくものであることから、原則として駐在国の領域主権が及

ぶことを前提とした上で、当事国間の合意及び国際慣習法によって、駐在国の領

域主権の行使が例外的に排除される場合が定められるとの解釈が一般的となりま

した。

日米地位協定や NATO 協定(軍隊の地位に関する北大西洋条約当事国間の協定

(1951 年(昭和 26 年)6月 19 日発効))は、このような考え方に基づき締結

されたものです。

(2) 関連する合意等

日米地位協定は、多種多様な事項に関する原則を定めています。これらの細則

については、「日米地位協定合意議事録」(日本国全権委員及び米国全権委員が日

米地位協定の交渉において到達した了解事項の記録。以下「合意議事録」といい

ます。)や協定締結の際に交わされた「交換公文」、さらには、本協定締結以後に

生じた事態等に対処するため設置された日米合同委員会(日米地位協定第 25 条。

21 ページ参照)の協議を経た合意によって定められています。

細則

第Ⅳ章 日米地位協定

1 意義等

日米合同委員会の合意

日米地位協定

日米地位協定合意議事録 交換公文

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第Ⅳ章 日米地位協定
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日米地位協定は、全28条から成り、在日米軍による施設・区域の使用のあり方

や日本における米軍の法的地位について規定しています。以下では、重要な条項と

それぞれの問題点を御紹介します。

(1) 用語の定義(第1条)

日米地位協定が適用される米軍の構成員と軍属(米軍が使用を許された日本国内の施

設・区域で働く米国籍を有する文民(非軍人))、それらの家族について定義しています。

(2) 施設・区域の提供・返還・共同使用(第2条)

第1項(a)において、米国が新安保条約第6条に基づき日本国内の施設・区域

使用権を有することを明記しています。

(施設及び区域の許与、決定、返還、特殊使用)

第2条

1(a)合衆国は、相互協力及び安全保障条約第6条の規定に基づき、日本国内の施設

及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第25条に定める合

同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。「施設及び区域」には、当該施

設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。

((b)省略)

2 日本国政府及び合衆国政府は、いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再

検討しなければならず、また、前記の施設及び区域を日本国に返還すべきこと又は新

たに施設及び区域を提供することを合意することができる。

3 合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったと

きは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要

性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。

(軍隊構成員、軍属、家族の定義)

第1条 この協定において、

(a) 「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国

の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。

(b) 「軍属」とは、合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用さ

れ、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(略)をいう。(略)

(c) 「家族」とは、次のものをいう。

(1) 配偶者及び21才未満の子

(2) 父、母及び21才以上の子で、その生計費の半額以上を合衆国軍隊の構成員又は

軍属に依存するもの

2 重要条項と問題点

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【問題点】

・ 第2項は、「合衆国政府は…施設及び区域を日本国に返還すべきこと…を合意

することができる」と規定しており、米国の意向次第により、日本国内の施設・

区域使用の無制限の継続が可能となりかねないこと。

・ 第3項は、「合衆国は、施設及び区域の必要性を…たえず検討することに同意

する」と規定しているが、米国側の実質的な義務を定めたものではなく実効性

に疑義があること。

(3) 施設・区域の管理権(第3条)

米軍の施設・区域に対する排他的管理権を定めています。

【問題点】

・ 施設・区域内では、環境汚染等が発生したとしても、日本側による調査等が

困難なため、結果的に、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)等の環境保

全に関する日本の法令が事実上適用されない事態が生じるおそれがあること。

(4) 返還時の義務・補償(第4条)

米国が日本国内の施設・区域の返還時に原状回復義務を負わないことを明記し

ています。

(施設及び区域内外の管理)

第3条

1 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため

必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警

護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍

隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施

設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の

範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政

府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。

(施設及び区域の返還、原状回復、補償)

第4条

1 合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当

たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又

はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。

2 日本国は、この協定の終了の際又はその前における施設及び区域の返還の際、

当該施設及び区域に加えられている改良又はそこに残される建物若しくはその他の

工作物について、合衆国にいかなる補償をする義務も負わない。

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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【問題点】

・ 返還される区域・施設内に汚染物質や不発弾などが残っていたとしても、こ

れらの除去に要する費用は日本側が負担することとなること。

※ 外務省の運用指針といわれている「日米地位協定の考え方」(以下「協定の考え方」とい

います。)では、第1項は、第2項において日本側が施設・区域に加えられている改良、残さ

れる建物その他の工作物に対しいかなる補償の義務も負わない(=これらに残存価値があっ

た場合でも米国に補償金を支払う義務を負わない)という規定と対応するものであり、その

ことで互いの権利義務の均衡を図っていると説明されています。

(5) 米軍構成員等の出入国(第9条)

米軍構成員等の出入国について定めた規定です。この規定に基づき、米軍構成

員は、出入国に際して旅券(パスポート)も査証(ビザ)も必要とされず、住民

票も作成されません。

【問題点】

・ 日本政府は、米軍構成員等の氏名、居住地、人数を把握できないこと。

・ 米軍構成員が日本で犯罪を行った場合において、当該被疑者の出国の際に日

本政府が関与できないこと。

(米軍人、軍属及びその家族の出入国)

第9条

2 合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外され

る。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関

する日本国の法令の適用から除外される。ただし、日本国の領域における永久的な居

所又は住所を要求する権利を取得するものとみなされない。

「日米地位協定の考え方」とは

2004 年(平成 16 年)1月、沖縄県の地方紙「琉球新報」は、「秘 無期限」と付し、外務

省により日米地位協定の解釈運用の指針として作成されたとする「日米地位協定の考え方」と題

された文書を掲載しました。

その後、国会において、その存否、公開等について政府に対して質問が行われた際、政府は

「日米地位協定の考え方」の保有を否定しつつ、1980 年代に作成された「日米地位協定の考

え方・増補版...

」については保有を認めるに至りました。

この「増補版」については、政府は米国との信頼関係が損なわれるおそれあること等を理由

として開示を拒否していますが、琉球新報社が独自に入手したとされるものが書籍(琉球新報社

編「外務省機密文書 日米地位協定の考え方・増補版」(㈱高文研))として発行されています。

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(6) 刑事裁判権(第 17条)

第 17 条は、刑事裁判権について規定しています。

刑事事件の裁判管轄権については、犯罪実行地である国が、領域主権に基づい

て行使することが、国際法上の原則とされていますが(属地主義)、第2次世界大

戦後は、平時に外国に駐留する軍隊については、軍隊の派遣国と駐在国との間で、

軍隊の法的地位等について定める協定を締結し、両国の裁判管轄権の配分を定め

るなど、派遣国の裁判管轄権を認めることが一般的となっています。

在日米軍の法的地位等を定めた日米地位協定においても、第 17 条で米国の裁判

管轄権を認めており、この規定が、米軍構成員が罪を犯しても日本の司法権の下

で罰することができない最大の原因になっています。

特に問題となる条項として、日米両国の裁判権が競合する場合を規定した第3

項、日本が裁判権を行使すべき事件の被疑者の身柄引渡しについて規定した第5

項、さらに、両国の警察権の行使について規定した第 10 項を御紹介します。

ア 第3項(裁判権の帰属)について

米軍構成員等が犯罪を行った場合の裁判権の帰属の基準は、次のように規定さ

れています(第 17 条第2項(56 ページ))

米国法令上犯罪とされ、かつ、

日本の法令によっては処罰できない行為

米軍当局が専属的裁判権を有する

(第 17 条第2項(a))

日本の法令上犯罪とされ、かつ、

米国法令によっては処罰できない行為

日本当局が専属的裁判権を有する

(第 17 条第2項(b))

(刑事裁判権)

第17条

3 裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。

(a)合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判

権を行使する第一次の権利を有する。

(i)もっぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもっぱら合衆国軍隊の他

の構成員若しくは軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若

しくは財産のみに対する罪

(ii)公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪

(b)その他の罪については、日本国の当局が、裁判権を行使する第一次の権利を有する。

(c)第一次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、できる限

りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。第一次の権利を有

する国の当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合におい

て、その他方の国の当局から要請があったときは、その要請に好意的考慮を払わなけ

ればならない。

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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上記の場合以外の、両国の刑事裁判権が競合する場合に関する規定が第3項の

規定です。

(ア) 公務執行中の作為等から生ずる罪

公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪については米国が第一次裁判権を有

します(第 17 条第3項(a)(ⅱ))。

公務か否かの認定を誰が行うかが重要な問題となりますが、合意議事録では、

公務認定は原則として米軍の指揮官又は指揮官に代わるべき者が行う旨が合意さ

れています。

「協定の考え方」では、公務の認定が一次的に指揮官に委ねられているのは、

事件解決の迅速性という要請を考慮したものであると説明されています。

(イ) 第一次裁判権の不行使

第一次裁判権を有する側の当局は、他方の側がその権利の放棄を特に重要と認

めた場合において、その他方の側の当局から要請があったときは、その要請に好

意的考慮を払わなければなりません(第 17 条第3項(c))。

第 17 条第3項(c)に関して、合意議事録では、

① 日本側が第一次裁判権を放棄した事件

② 公務中の犯罪で日本又は日本国民に対して犯されたものに係る事件

に関する裁判は、原則として日本において、犯罪現場から適当な距離内で、直ち

に行う必要があり、日本の当局代表者は、その裁判に立ち会うことができる旨が

合意されています。

当該規定により、米国は、上記①②の事件については、被疑者を日本国外に連

れ出した上、米国で裁判することはできないこととなります。

○日米地位協定合意議事録(1960年(昭和35年)1月19日合意)

第17条 3(a)(ii)に関し、

合衆国軍隊の構成員又は軍属が起訴された場合において、その起訴された罪がもし

被告人により犯されたとするならば、その罪が公務執行中の作為又は不作為から生じ

たものである旨を記載した証明書でその指揮官又は指揮官に代わるべき者が発行し

たものは、反証のない限り、刑事手続のいかなる段階においてもその事実の十分な証

拠資料となる。

○日米地位協定合意議事録(1960年(昭和35年)1月19日合意)

第17条 3(c)に関し、

1 裁判権を行使する第一次の権利の放棄に関する相互の手続は、合同委員会が決定す

るものとする。

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【問題点】

・ 米軍指揮官の証明書のみで「公務執行中」と認定され、この認定の過程に日

本側は関与することができないこと。

イ 第5項(被疑者の拘禁)について

日本が裁判権を行使すべき米軍構成員等である被疑者の拘禁は、その者の身柄

が米国の手中にあるときは、日本により公訴が提起されるまでの間、米国が引き

続き行います(第 17 条第5項(c))。

「米国の手中にあるとき」とは、米国の刑事手続の下、米国に拘禁されている

場合のみならず、被疑者が、米軍が使用を許された日本国内の施設・区域内に逃

げこんだりした場合なども含み、より広い意味で身柄が米国に拘束されていれば

足りると解されています。

第 17 条第5項(c)に関して、合意議事録は次のように規定しています。

○日米地位協定合意議事録(1960年(昭和35年)1月19日合意)

第17条 5に関し、

1 日本国の当局は、日本国が裁判権を行使する第一次の権利を有する事件について、合

衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で合衆国の軍法に服するものを犯人

として逮捕したときは、その犯人を拘束する正当な理由及び必要があると思料する場

合を除くほか、当該犯人を釈放し、合衆国の軍当局による拘禁にゆだねるものとする。

(刑事裁判権)

第17条

5(a)日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構

成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕及び前諸項の規定に従つて裁判権を行

使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。

(b)日本国の当局は、合衆国の軍当局に対し、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又は

それらの家族の逮捕についてすみやかに通告しなければならない。

(c)日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、

その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの

間、合衆国が引き続き行なうものとする。

2 日本国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を放棄した事件の裁判及び

(a)(ii)に定める罪で日本国又は日本国民に対して犯されたものに係る事件の裁判

は、別段の取極が相互に合意されない限り、日本国において、犯罪が行なわれたと

認められる場所から適当な距離内で、直ちに行なわなければならない。日本国の当

局の代表者は、その裁判に立ち会うことができる。

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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※ 第 17 条第5項の趣旨について、「協定の考え方」では、①食事・寝具などの風俗習慣の

違い、②米軍側が拘束しても逃亡のおそれがないこと、③米軍側の拘束は日本側による公訴

提起までの間という暫定的なものに過ぎないこと等の理由によるものと説明されています。

【問題点】

・ 米軍構成員等が行った犯罪について、日本が第一次裁判権を有する場合でも、

公訴提起までは米国による被疑者の拘禁が可能なため、日本が当該被疑者の逮

捕・取調べを行えず、当該被疑者の起訴が困難となるおそれがあること。

※ 実際、過去に、米軍当局に被疑者の身柄を移したところ被疑者が米国に帰国してしまっ

たという事例があります。

ウ 第 10項(警察権の行使)について

2004 年(平成 16 年)8月 13 日、沖縄に駐留する米海兵隊の大型輸送ヘリ

が沖縄国際大学構内に墜落し炎上する事故が起こりましたが、その事故現場は、

米軍が使用を許された日本国内の施設・区域ではない通常の民間地域であったに

もかかわらず、米軍に封鎖・占拠され、日本の警察権は行使できませんでした。

日米地位協定では、米軍による警察権行使が認められるのは、原則として米軍

の施設・区域内に限られると規定されていることから(第 17 条第 10 項(a))、そ

もそも、米軍の施設・区域外で、米軍は警察権を行使する権限を有するのかどう

かが問題として認識されました。

日米地位協定では、例外的に施設・区域外での警察権の行使が認められる場合

がありますが(第17項第10項(b))、「日本国当局との取極に従うことを条件とし、

かつ、日本国当局と連絡して」行わなければならず、その警察権の範囲も「合衆

国軍隊の構成員間の規律・秩序の維持のため必要な範囲内」に限定されています。

(刑事裁判権)

第17条

10(a)合衆国軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は、第二条の規定に基づき使用

する施設及び区域において警察権を行なう権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、

それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当

な措置を執ることができる。

(b)前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局と

の取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、

その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に

限るものとする。

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このようなヘリの墜落事故は米軍構成員間の規律・秩序の維持とは関連を認め

難く、上記条項を米軍の対応の根拠とすることは困難といえます。

しかし、警察権に関する本条とは別に、「日米合同委員会合意」では、米国の軍

用機が施設・区域外の私有財産に墜落・不時着した場合において、事前承認を受

ける暇がないときは、救助作業等のため、当該財産に立ち入ることができるとさ

れており、米軍の対応は、この規定に基づき行われたものと解されています。

ただし、上記条項によったものであるとしても、事故発生直後はともかく、緊

急の消火活動等が終了し、機体の爆発や再燃の危険性がなくなった後においても

事故現場周辺を占拠・封鎖し続けた点は問題が残るという意見もあります。

(7) 民事請求権(第 18条)

第 18 条は、米軍構成員等の行為等により損害が生じた場合における民事請求権

に関する規定です。ここでは、日本側が請求権の主体であり、かつ、被害者が一

般の日本国民である場合に、特に問題となる第5項の内容を御紹介します。

※ 自衛隊等が使用する国有財産又は自衛官が損害を受けた場合(公務中の場合に限る。)は、

原則として民事請求権は放棄することとされ(第 18 条第1項、第4項(59、60 ページ))、また、

その他の国有財産が損害を受けた場合は、両国の政府間の合意によって選定される仲裁人

(日本人の司法関係者)の裁定に委ねられることになっています(同条第2項(59 ページ))。

ア 費用の分担

○第17条に関連する日米合同委員会合意

刑事裁判管轄権に関する事項

第10 その他警察権に関する事項

(4)合衆国の軍用機が合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある公有若しくは私有

の財産に墜落又は不時着した場合において事前の承認を受ける暇がないときは、適当

な合衆国軍隊の代表者は、必要な救助作業又は合衆国財産の保護をなすため当該公有

または私有の財産に立ち入ることが許される。(以下省略)

(民事請求権)

第18条

5 公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しくは被用者の作為若しくは不作為又は合衆国

軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で、日本国において日

本国政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権(略)は、日本国が次の

規定に従つて処理する。

(a)請求は、日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従つて、

提起し、審査し、かつ、解決し、又は裁判する。

((b)から(d)まで省略)

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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公務執行中の米軍の行為等によって損害を受けた場合は、「日米地位協定の実施

に伴う民事特別法(昭和 27 年法律第 121 号)」に基づき、両国の責任割合如何

にかかわらず、一旦は日本政府が賠償金を支払い、その後、米国が自国負担分を

日本側に支払うという仕組みがとられていますが、この両国の負担割合を定めた

規定が第 18 条第5項です。

上記の「公務執行中」であるかどうか等について争いがある場合は、両国の政

府間の合意によって選定される仲裁人(日本人の司法関係者)が裁定することと

なっています(第 18 条第8項参照(62 ページ))。

【問題点】

・ 「公務執行中」と認定された場合は、日本側に原因が全く存在しない場合で

も、日本が賠償金を分担(損害額の 25%)することとされていること。

※ 第 18 条第5項の趣旨について、「協定の考え方」では、

① 米軍は日本の防衛に寄与するため日本に駐留しているところ、米軍の公務中の行為

○日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び

区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法

(昭和 27年法律第 121号)

(国の賠償責任)

第1条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基き日本国内

にあるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍(以下「合衆国軍隊」という。)の構成員

又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えた

ときは、国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた

場合の例により、国がその損害を賠償する責に任ずる。

第2条 合衆国軍隊の占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置

又は管理に瑕疵があつたために日本国内において他人に損害を生じたときは、国の占

有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があつ

たために他人に損害を生じた場合の例により、国がその損害を賠償する責に任ずる。

(e)(a)から(d)まで及び2の規定に従い請求を満たすために要した費用は、両当

事国が次のとおり分担する。

(i)合衆国のみが責任を有する場合には、裁定され、合意され、又は裁判により決定

された額は、その25パーセントを日本国が、その75パーセントを合衆国が分担する。

(ii)日本国及び合衆国が損害について責任を有する場合には、裁定され、合意され、

又は裁判により決定された額は、両当事国が均等に分担する。損害が日本国又は合

衆国の防衛隊によって生じ、かつ、その損害をこれらの防衛隊のいずれか一方又は

双方の責任として特定することができない場合には、裁定され、合意され、又は裁

判により決定された額は、日本国及び合衆国が均等に分担する。

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による損害は、(個々の構成員等の故意・過失による場合であっても)新安保条約の

運用との関連で生じたものであり、

② 請求権の処理を接受国である日本の法律に従って行うことに鑑み、受入国としても

一部を負担することが公平な額の決定に資することとなる(=受入国も一部負担とな

れば、額の決定も合理的なものとなる)

等の理由によるものと説明されています。

イ 判決の執行手続

第5項(f)は、在日米軍の構成員等の公務執行中の行為から生ずる事項に関す

る裁判の判決は強制執行することができない旨を定めています。

【問題点】

・ 公務執行中に日本国民に損害を負わせた米軍構成員等の個人に対して民事裁

判を提訴することは妨げられないが、仮に勝訴したとしても、判決の強制執行

(当該構成員の給与差押え等)が認められず、被害者の救済の実効性に欠ける

こと。

(民事請求権)

第18条

5 公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しくは被用者の作為若しくは不作為又は合衆国

軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で、日本国において日

本国政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権(略)は、日本国が次の

規定に従つて処理する。

(f)合衆国軍隊の構成員又は被用者(日本の国籍のみを有する被用者を除く。)は、そ

の公務の執行から生ずる事項については、日本国においてその者に対して与えられ

た判決の執行手続に服さない。

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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<参考>在日米軍の飛行訓練騒音と米国の責任

9ページ(1(1)「外国軍隊の法的地位」)で御説明したとおり、国際法上の「主権平

等原則」により、国家の機関である軍隊及びその構成員等が外国に駐留する場合、駐在

国の領土主権に服さないことから、当然、民事裁判権にも服さないと解釈されています。

この点に関連する裁判例として、「横田基地夜間飛行差止等請求事件」の最高裁判決を

御紹介します。この事件では、住民の騒音被害の原因である、米軍機の夜間の離発着訓練

を、日本の民事裁判権が及ばない外国国家の「主権的行為」として、請求が却下されまし

た。

【最高裁判所第二小法廷 平成 14年4月 12日判決】(横田基地夜間飛行差止等請求事件)

○ 在日米軍の横田飛行場(東京都福生市)周辺の住民が、在日米軍機の夜間飛行訓練

により騒音被害を受けているとして、米国を被告として、夜間の離発着の差止め及び

損害賠償を請求した事件

前記規定(※日米地位協定第 18 条第5項)は、外国国家に対する民事裁判権免除に関

する国際慣習法を前提として、外国の国家機関である合衆国軍隊による不法行為から生

ずる請求の処理に関する制度を創設したものであり、合衆国に対する民事裁判権の免除

を定めたものと解すべきではない。

外国国家に対する民事裁判権免除に関しては、いわゆる絶対免除主義が伝統的な国際

慣習法であったが、国家の活動範囲の拡大等に伴い、国家の私法的ないし業務管理的な

行為についてまで民事裁判権を免除するのは相当でないとの考えが台頭し、免除の範囲

を制限しようとする諸外国の国家実行が積み重ねられてきている。しかし、このような

状況下にある今日においても、外国国家の主権的行為については、民事裁判権が免除さ

れる旨の国際慣習法の存在を引き続き肯認することができるというべきである。本件差

止請求及び損害賠償請求の対象である合衆国軍隊の航空機の横田基地における夜間離発

着は、我が国に駐留する合衆国軍隊の公的活動そのものであり、その活動の目的ないし

行為の性質上、主権的行為であることは明らかであって、国際慣習法上、民事裁判権が

免除されるものであることに疑問の余地はない。したがって、我が国と合衆国との間で

これと異なる取決めがない限り、上告人らの差止請求及び損害賠償請求については被上

告人に対して我が国の民事裁判権は及ばないところ、両国間にそのような取決めがある

と認めることはできない。

以上によれば、本件訴えは不適法であり、これを却下すべきものとした原審の判断は、

結論において是認することができる。論旨は採用することができない。

※ 米国の軍用機の飛行訓練騒音に関する損害賠償請求については、18 ページの日米地位協定の実

施に伴う民事特別法に基づき、日本を被告とした訴訟では、住民側の請求が認容された事例が複数

見られます。これを受けて、日本側は、住民に支払った賠償額について、米国に対し、日米地位協

定第 18 条第5項に基づく負担割合を請求していますが、米国はこれに応じていない状況です。

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(8) 経費の分担(第 24条)

第2項において日本側の分担経費を定め、第1項において日本側の分担経費を

除く米軍の維持に伴う経費を米国側負担としています。

第2項の規定は必ずしも明確とはいえませんが、この点について、1973 年(昭

和 48 年)、日本政府は、「政府として、その運用について原則として代替の範囲を

超える新築を含むことのないよう措置する」との見解を示しました。

しかし、1978 年(昭和 53 年)以降、米軍の住宅・隊舎等の生活関連施設の

建設を中心とした代替の範囲を超える施設・区域の新たな提供が開始されました

(これに要する経費に関する予算は、通称「思いやり予算」と呼ばれています。)。

「思いやり予算」は、当初の代替施設建設費から、在日米軍の構成員とその家

族の生活改善施設(この中にはエアロビクス教室、ビリヤード場、映画館等が含

まれていました。)、作戦施設ともいうべき滑走路や戦闘機格納庫の建設費まで、

徐々に負担範囲が拡大されていきました。

(9) 日米合同委員会(第 25条)

(経費の分担)

第24条

1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところ

により日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担を

かけないで合衆国が負担することが合意される。

2 日本国は、第2条及び第3条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権(飛行

場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)を

この協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、

施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。

(合同委員会)

第25条

1 この協定の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政

府と合衆国政府との間の協議機関として、合同委員会を設置する。合同委員会は、特

に、合衆国が相互協力及び安全保障条約の目的の遂行に当たつて使用するため必要と

される日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう。

2 合同委員会は、日本国政府の代表者一人及び合衆国政府の代表者一人で組織し、各

代表者は、一人又は二人以上の代理及び職員団を有するものとする。合同委員会は、

その手続規則を定め、並びに必要な補助機関及び事務機関を設ける。合同委員会は、

日本国政府又は合衆国政府のいずれか一方の代表者の要請があるときはいつでも直ち

に会合することができるように組織する。

3 合同委員会は、問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その

問題をそれぞれの政府にさらに考慮されるように移すものとする。

-21-

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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日米地位協定の運用を担う協議機関である「日米合同委員会」の設置を定めた

規定です。

日米地位協定が締結されてから、これまで 1000 回を超える委員会が開催され

ており、在日米軍への日本国内の施設・区域の提供や返還など、日米地位協定の

運用に関するあらゆる事項を協議内容としています。

議長は日米が交互に務めており、日本側は外務省北米局長、米国側は在日米軍

副司令官らが政府代表として出席します。

【問題点】

・ 合同委員会における協議内容は、実際には協定本文の規定の運用に重大な影

響を与える事項であるもかかわらず、協議は非公開である上、決定事項の公開

も義務付けられていないこと。

(10) 改正(第 27条)、有効期間(第 28条)

日米両国の政府は、日米地位協定のいずれの条項についても、いつでも改正を

要請することができることとされており、また、新安保条約の有効期間内でも、日

米両国の政府が合意すれば日米地位協定を終了することが可能です。

(改正)

第 27 条 いずれの政府も、この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請す

ることができる。その場合には、両政府は、適当な経路を通じて交渉するものとする。

(合意の終了)

第 28 条 この協定及びその合意された改正は、相互協力及び安全保障条約が有効である

間、有効とする。ただし、それ以前に両政府間の合意によって終了させたときは、こ

の限りでない。

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コラム 駐留軍用地特措法

正式名称:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び 区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等

に関する特別措置法(昭和 27 年法律第 140 号)

「駐留軍用地特措法」は、新安保条約第6条及び日米地位協定第2条に基づき、

日本側に義務付けられた、在日米軍への用地等の提供のため制定された特別措置法

です。

在日米軍への用地等の提供に当たっては、日本政府が地主等と賃貸借契約を締結

し、使用権原を取得した上で、米軍に引き渡すのが通常ですが、本法は、賃貸借契

約に応じない地主等を想定し、防衛大臣が「駐留軍の用に供するため土地等を必要

とする場合において、その土地等を駐留軍の用に供することが適正且つ合理的であ

る」と認める場合は、土地収用法の規定を適用して、地主等の意思にかかわらず強

制的に使用等の権原を取得することができることとされています。

1972 年(昭和 47 年)の復帰後、基地用地の3割以上が国有地以外の土地であ

った沖縄県では、用地提供を拒否する地主等から返還請求がなされ、実際に本法が

適用されるケースが見られるようになりました。

有名な「沖縄県知事署名等代行職務執行命令訴訟(※)」においては、本法の合憲

性等が問題となりましたが、最高裁判所は、砂川事件判決(35 ページ参照)を引用

して、新安保条約が合憲であることを前提に、憲法上、条約の誠実遵守義務を負う

国が、条約上の義務を履行するために必要かつ合理的な範囲で私有財産を使用・収

用することは、私有財産を公共のために用いることにほかならないとして、本法は

憲法に違反するとはいえないと判断しました(最高裁判所大法廷 平成8年8月 28

日判決)。

(※ 用地使用等の認定申請に必要となる土地調書等への署名押印を地主等が拒否したため、国

が、県知事に対し、上記署名等を代行すべき旨を命令したところ、これが執行されなかった

ため、上記署名等の代行事務の執行を求めた事件(地方自治法(平成 11 年法律第 87 号に

よる改正前のもの)第 152 条の2の職務執行命令訴訟))

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日米地位協定は、第 27 条の規定にかかわらず、1960 年(昭和 35 年)の締結

以後、一度も改正されておらず、同協定の問題点については、日米合同委員会合意

による「運用改善」という形で対処されてきました。

協定の改正を行わず、運用改善で対処している理由について、日本政府は「その

時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの

考えの下、運用の改善に努力しているところである」と説明しています。

ここでは、これまでの日米合同委員会による運用改善の経緯を御紹介します。

(1) 1995年(平成7年)合意

1995 年(平成7年)に沖縄で起きた米軍構成員による少女暴行事件の際、沖

縄県警による身柄の引渡し要請に対して、米軍は地位協定第 17 条第5項(c)(15

ページ)を理由にこれを拒んだため、米軍に対する反発が高まりました。

これを受け、同年 10 月 25 日の日米合同委員会では、殺人や強姦などの特定の

場合に被疑者の起訴前の身柄引渡しを可能とする運用改善を行うことで合意しま

した。この 1995 年(平成7年)合意は、日米地位協定に基づく刑事裁判手続に

ついて、運用改善がなされた最初の事例です。

(2) 1995年(平成7年)合意以後の動き

ア 2004年(平成 16年)口頭合意

上記の 1995 年(平成7年)合意以後、実際に起訴前の引渡しが行われた事

例もありましたが、放火など、同合意に明記されていない罪の事件については、

米軍側が起訴前の引渡しを拒否するケースもありました。

そのため、同合意で、起訴前の引き渡しについて十分な考慮を払うとした「そ

の他の特定の場合」の文言の明確化が問題となりました。

2004 年(平成 16 年)には、「日本政府が重大な関心を有するいかなる犯罪

も排除するものではなく、日本政府が個別の事件に重大な関心がある場合には、

○刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意(1995 年(平成 7年)10月 25日)

1 合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある

被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払

う。合衆国は、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が

合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。

2 日本国は、同国が一にいう特定の場合に重大な関心を有するときは、拘禁の移転に

ついての要請を合同委員会において提起する。

3 「運用改善」について

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同文に基づき拘禁の移転を要請することができる」旨が日米合同委員会におい

て口頭で確認されました。

この口頭合意については、殺人、強姦以外の強盗や放火なども起訴前の身柄

引渡しの対象となり、引渡し対象が拡大したとの評価がある一方、具体的な罪

名が示されず、また引き渡すかどうかは依然、米国側の裁量に委ねられたまま

であり、大きな改善につながる保証はないとの指摘もありました。

イ その他の合意

2004 年(平成 16 年)の口頭合意の後も米軍構成員等による犯罪は相次い

だため、日米両国の政府は、米軍の施設・区域外に居住する者について米国が

日本に情報提供することや、公務中に犯罪を犯した軍属について米国側は刑事

訴追するか否かを決定し日本側に通告すること、飲酒後の自動車運転による通

勤を公務として扱わないことなどについて合意しました。

アメリカン家族ハウス~エリア1~

(1953 年(昭和 28 年)頃)(本牧地区)

→接収中の本牧小学校校庭にて米軍が運動中。

写真:生駒實

【横浜開港 150 周年記念事業 みんなでつくる横濱写真アルバム 市民が記録した 150 年】

http://www.yokohama-album.jp/

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第Ⅳ章 日米地位協定 
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コラム 村雨むらさめ

橋ばし

事件

時はベトナム戦争中の 1972 年(昭和 47 年)8月5日、場所は横浜市内での出来

事です。相模原市内の米軍相模原補給廠では、ベトナム戦争で破壊されたり故障した

りした米軍戦車や兵器を修理して、再びベトナムに送り出す作業が行われていました。

その日も修理を終えた米軍戦車が、大型トレーラーに載せられて横浜港桟橋で待つ

輸送船に陸送されていました。ところが、大型トレーラーが横浜港のノース・ドック

(神奈川区瑞穂町、鈴繁町、千若町2丁目)につながる村雨橋の手前に差し掛かった

ところで、市民団体などによって行く手を阻まれてしまいます。

この事件について、「横浜市会の百年」には、次のような記述があります。

「代議士時代『安保五人男』の一人と異名をとった飛鳥田市長は、改正された車両制

限令中の制限を超える大きさの車両が市道を通る際には市長の許可が必要であるとい

う項目に着目し、この戦車輸送を阻止する作戦を考えた。戦車の輸送経路には約 500

メートルの市道部分が含まれていたが、このうち重量制限 46.9 トンの村雨橋をM48

型戦車が越えることに通行許可を与えず、強行された輸送に対しては、市民、労組員、

社会党員などを動員して大衆ピケをはって実力でこれを阻止する構えを見せた。

8月5日午前0時 50 分、村雨橋でM48 型戦車を積んだ5台のトレーラーはピケ隊

に行く手を阻まれた。市長自身もその場に駆けつけ、2日間睨み合いは継続した。その

後、戦車は相模原補給廠に引き返した。安保条約と国内法の関連や外交問題にまで問題

は発展し、政府は対応に苦慮したすえ、アメリカ軍車両等を車両制限令の適用除外とす

る政令改正を行ない、11 月8日に戦車輸送は再開された。」

○ 車両制限令(昭和 36 年政令第 265 号)

(緊急自動車等の特例)

第 14 条 道路交通法(昭和 35 年法律第 105 号)第 39 条第1項に規定する緊急

自動車及び災害救助、水防活動等の緊急の用務又はその他の公共の利害に重大な

関係がある公の用務のために通行する国土交通省令で定める車両並びに日本国と

アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国内にあるアメ

リカ合衆国の軍隊の任務の遂行に必要な用務のために通行する当該軍隊の車両

で、道路の構造の保全のための必要な措置を講じて通行するものについては、こ

の政令の規定は、適用しない。

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JR東神奈川駅

村雨橋

United States Army

Yokohama North Dock Gate1

(米軍施設 横浜ノース・ドック

1番ゲート)と記載された看板

村雨橋周辺の地図・写真

横浜ノース・ドック施設内

1954 年開業のバー StarDust

撮影日 平成 25 年 11 月 21 日

撮影者 中村正一、藤倉真美

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【横浜市地形図複製承認番号 平25 建都計第9044 号】
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これまで、サンフランシスコ講和条約から日米地位協定に至るまで、複数の国際

上の合意について御紹介しましたが、ここでは、そもそも「条約」が、国際法の領

域上又は日本の法制上どのように定義されているかなどについて御紹介します。

(1) 国際法の領域における「条約」について

国家と国家(又は国際機関)との間の国際法上の関係を規律する文書による合意

は、条約(treaty,convention)、憲章(chapter)、規約(convenant)、協定(agreement)、

取極(arrangement)、交換公文(exchange of notes)、議定書(protocol)、声明

(declaration)など、様々な名称が付されていますが、国際法の領域においては、す

べて「条約」という位置付けとなります(文書によらない口頭の約束を除く。)。

(2) 条約と行政協定

日本国憲法は、条約の締結権を内閣に与え、その承認権を国会に与えるとともに

(第 73 条第3号)、条約を誠実に遵守すべきことを義務付けています(第 98 条第

2項)。

第Ⅴ章 条約の法的位置付け等について

○条約法に関するウィーン条約(1969 年5月 23日調印)

(用語)

第2条

1 この条約の適用上、

(a) 「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によって規

律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する2以上の文書によ

るものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。

※ 条約法に関するウィーン条約

条約の締結、効力発生、解釈、無効、終了、運用停止等に関して従来から行われてきた国際慣習を法典

化した条約で、1969 年(昭和 44 年)5月にウィーンで作成されました。

1 条約の定義等

○日本国憲法

第 73 条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

(2) 外交関係を処理すること。

(3) 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経る

ことを必要とする。

第 98 条

2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必

要とする。

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ところで、日本の法令上の用語としての「条約」は、上記の憲法第 73 条第3号に

よる国会の承認を経たものを指すこととされており、国会の承認を経ずに、内閣の

外交処理権限(憲法第 73 条第2号)の一環として締結されたもの(=「行政協定」)

は含まれません。

この意味での「条約」と「行政協定」とを合わせて、日本の法令上は「国際約束」

という用語が用いられています。

4ページで御紹介した、旧安保条約に関する「日米行政協定」については、かつ

て、国会の承認を経ていない点が問題とされましたが、最高裁判所は、日米行政協

定は既に国会の承認を経た旧安保条約第3条の委任の範囲内のものであり、国会の

承認を経なかったからといって違憲無効であるとは認められないと判断しています

(最高裁判所大法廷 昭和 34 年 12 月 16 日判決(砂川事件))。

その後、国際約束に対する国会の承認の要否については、1974 年(昭和 49 年)、

当時の大平外務大臣の答弁により、次のような一定の基準が示されています(大平

三原則)。

≪国会の承認を要する国際約束≫

内容

①法律事項を含む

国際約束

国際約束の締結により、新たな立法措置が必要となるもの又は

既存の法律を変更せず維持する必要があるもの

(例:日米地位協定、沖縄返還協定など)

②財政事項を含む

国際約束

国際約束の締結により、既に予算又は法律で財政措置が認めら

れている以上に財政支出義務が発生するもの

(例:在日米軍駐留経費負担特別協定など)

③政治的に重要な

国際約束

国際約束の発効のために批准(注)を要するもの

(例:日中平和友好条約など)

(注)批准とは?

全権委員(全権委任状を所有し、国際会議等の外交交渉に派遣される委員)が

署名した条約を、条約締結権限を与えられた者が確認し同意すること。

国際約束に対する国家の意思表示の形式として最も重いもの。

○外務省設置法(平成 11年法律第 94号)

(所掌事務)

第4条 外務省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

(4) 条約その他の国際約束の締結に関すること。

(5) 条約その他の国際約束及び確立された国際法規の解釈及び実施に関すること。

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第Ⅴ章 条約の法的位置付け等について 
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<参考>条約の締結に対する民主的統制(議会の関与)について

条約の締結権は、歴史的に見ると、一般的に国家元首又は行政権に専属していた時代

がありましたが、1788 年に発効した米国憲法において、条約締結に上院の出席議員の

3分の2の同意を必要とする旨の規定が設けられて以降は、外交の民主的統制の観点か

ら、条約の締結に議会の関与を認める方式が一般化していきました。

しかし、国が締結する全ての条約を議会で承認することは、機動的な外交処理を妨げ

る上、議会の能力的にも限界がありました。そこで、多くの国では、議会の承認を経ず

に、政府が自らの権限に基づき締結することができる合意(「行政協定」、「行政取極」)

が多用されることとなりました。

日本においても、年間 300 件程度の「国際約束」が締結されていますが、そのうち

国会承認条約は 20~30 件程度といわれています。

(1) 条約と国内法秩序の関係に関する考え方

条約が専ら国家間の対外関係のみを規律し、国内法と無関係な場合には、条約と

国内法との抵触は生じません。

しかし、条約の規律対象が多様化し、国民の権利義務やその他の国内法制と関連

する事項が条約に含まれるようになってくると、両者が矛盾抵触する場合(国内法

上は適法な行為だが条約に違反するケースや、条約上の義務を履行しようとすると

国内法が障害となるケースなど)、どちらを優先適用すべきかという問題が生じます。

この点については、様々な見解が対立していますが、両者が矛盾抵触する場合で

あっても、いずれかが直ちに無効となるわけではなく、当該国家には、条約に抵触

する内容の国内法の改廃等の調整措置を講ずることが求められる(当該措置を講じ

ない場合は、国際法上の国家責任を追及される)、と解釈する立場が、現在では有力

となっています。

(2) 条約の国内的実施に関する方法

国家が締結した条約をどのような方式によって国内法秩序に組み入れるかは、

当該各国の国内法によって決定される問題です。

日本では、条約内容を国内法として作り変える(変型する)ことを要せず、条

約内容をそのままの形で国内法の一部として受容し、当然に国内法上の効力を認

めるという方式(受容方式)が採用されていますが、条約の中には、一般的な努

力義務や国内法上の立法義務を定めたものもあり、すべての条約の規定内容が自

動的に国内で直接適用されるわけではありません。

2 条約と国内法の関係

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第Ⅳ章で御紹介した「日米地位協定」も、規定内容が自動的に国内で直接適用

可能な程度に明確なものではないものもあるため(国際法上「自動執行

(self-executing)性」を欠くといわれます。)、次のような特別法の制定等を待

って、初めて日本国内での実施が可能となります。

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

の実施に伴う刑事特別法(昭和 27 年法律第 138 号)

米国軍隊が使用する施設又は

区域に不法侵入した場合等の

刑罰や刑事手続について規定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

の実施に伴う民事特別法(昭和 27 年法律第 121 号)

米国軍隊の構成員等が、職務中

に日本国内で違法に他人に損

害を加えた場合等は、国家賠償

法等に従い、日本国がその損害

を賠償することについて規定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

の実施に伴う地方税法の臨時特例に関する法律(昭和 27 年法律第 119

号)

米国軍隊の一定の土地、家屋、

物件、所得、行為及び事業等に

ついて地方税法の特例を定め

た規定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律(昭和 27 年法律第 110 号)

米国軍隊の用に供する国有財

産の管理及び処分について特

例を定めた規定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道

路運送法等の特例に関する法律(昭和 27 年法律第 123 号)

米国軍隊等に対する道路運送

法等の適用除外を定めた規定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

の実施に伴う電波法の特例に関する法律(昭和 27 年法律第 108 号)

米国軍隊の用に供する無線局

について電波法の特例を定め

た規定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和 27 年法律第 140

号)

米国軍隊の用に供する土地等

の使用又は収用について規定

(23 ページのコラム参照)

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基

づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航

空法の特例に関する法律(昭和 27 年法律第 232 号)

米国軍隊が使用する航空機や

その運行従事者について航空

法が適用除外となることにつ

いて規定

日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に

関する法律(昭和 28 年法律第 246 号)

米国軍隊等による特定の行為

により事業者に経営上の損害

が生じた場合は日本国がその

損失を補償することについて

規定

※ 上記は、日米地位協定に関する国内法の代表例で、すべてを網羅したものではありません。

(3) 条約と憲法・法律との優劣関係(条約の国内法上の効力の位置付け)

上記のようにして、ある条約に国内法上の効力が認められた場合、その条約に対

して、国内法上どのようなレベルの法的効力が認められるか(= 憲法や法律との上

下関係はどうなるか)が問題となります。

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第Ⅴ章 条約の法的位置付け等について 
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ア 条約と憲法の効力関係

日本国憲法には、条約に国内法上どのようなレベルの法的効力を認めるかにつ

いて具体的に規定した条項は存在しておらず、第 98 条第2項において「これを誠

実に遵守することを必要とする。」との規定があるだけです。

そこで、かつては、条約が憲法に優位すると考える条約優位説と、憲法より劣位

にあると考える憲法優位説とが対立していました。

条約優位説 憲法優位説

条約の誠実遵守義務

(憲法第98条第2項)

との関係

左記義務に実効性を持たせる

ためには、条約の執行を妨げる

国内法の成立は否定されるべ

き。

左記義務は有効に成立した条

約の国内法的効力を認め、その

遵守を強調したもので、条約と

憲法の効力関係を規定したもの

ではない。

憲法の最高法規性・

違憲審査制(憲法第

98条第1項・第81条)

との関係

左記条項において条約が除外

されていることは、憲法は条約

との関係で必ずしも最高法規で

ないことを示している。

左記条項において条約が規定

されていないからといって、憲

法に対する条約の優位が導き出

されるわけではない。

内閣の条約締結権

(憲法第73条第3号)

との関係

左記権能は条約締結の手続を

定めたものであり、条約の効力

の根拠を定めてはいない。

左記権能は憲法により認めら

れた国家機関の権能に過ぎず、

その根拠となる憲法自体を変更

できるものではない。

憲法制定当初は、明治憲法末期の条約軽視に対する反省と国際協調主義の徹底の

視点から、学説としては条約優位説が有力だったといわれています。

しかし、現行の日本国憲法においては、条約優位説によった場合、憲法改正のた

めの要件(第96条)が、条約批准のための要件(第61条、第60条第2項)よりも

厳格に定められているにもかかわらず、憲法に抵触する内容の条約を批准すること

○日本国憲法

第 98 条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び

国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必

要とする。

○日本国憲法

第 73 条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

(3) 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経る

ことを必要とする。

第 81 条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないか

を決定する権限を有する終審裁判所である。

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を通じて、実質的に憲法改正と等しい効果が認められることになるという重大な問

題点があったため、現在では、憲法優位説が通説となっています。

ただし、この憲法優位は、憲法と一般的な条約との原則的関係に止まり、第Ⅱ章

で御説明した、ポツダム宣言の履行等を内容とする休戦協定やサンフランシスコ講

和条約のような国家形成的な基本条約(= 憲法を実施する前提となるような取決め)

については、憲法優位の原則を超えた特別な効力を認める見解が支配的です(日本

政府も同様の見解です。)。

イ 条約と法律等の効力関係

日本国憲法においては、条約の誠実遵守義務(第 98 条第2項)が定められている

ことに加え、条約の締結に国会の承認を必要とすること(第 73 条第3号)から、条

約が法律に優位すると考えられています。

また、法律より下位の命令や規則等については、条約が優先することが明治憲法

以来の実務慣行として定着しています。

(1) 条約は裁判所による違憲審査の対象に含まれるか

通説である、条約は憲法より劣位であるとする憲法優位説に立つと、裁判所は、

ある条約についての合憲性の審査を行うことができるかどうかの問題が生じます。

3 条約の違憲審査

○日本国憲法

第 96 条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発

議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票

又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を

成すものとして、直ちにこれを公布する。

第 60 条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところに

より、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決

した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて 30日以内に、議決しないときは、

衆議院の議決を国会の議決とする。

第 61 条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。

○日本国憲法

第 81 条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないか

を決定する権限を有する終審裁判所である。

※ 条文上は、違憲審査権の行使の主体として最高裁判所のみが規定されていますが、下級裁判所も同様に

違憲審査権を行使することができるものと解釈されています(最高裁判所 S25.2.1 判決)。

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第Ⅴ章 条約の法的位置付け等について
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肯定説(違憲審査の対象に条約が含まれる) 否定説(違憲審査の対象に条約は含まれない)

・ 条約は国内法として通用するため、その国

内法としての側面については、憲法第 81

条の「法律」に準じるものとして考えるべ

き。 (※ 人権保障を侵害するような内容の条約についての

み対象に含まれるとする考え方もあります(部分的

肯定説)。)

・ 条約は憲法第 81 条の列挙事項から除

外されている。

・ 国家間の合意という特殊な性質を有

し、極めて政治的な内容を持つものが

多い。

(2) 砂川事件

条約が裁判所による違憲審査の対象に含まれるかどうかが争われた代表的な裁

判例として、「砂川事件」を御紹介します。

ア 事件の概要

1957 年(昭和 32 年)、国が、米軍の使用する東京都の立川飛行場を拡張す

るための測量を始めた際に、反対デモ隊が基地内に立ち入ったため、対象者7

名が旧安保条約第3条に基づく刑事特別法違反として起訴された事件です。

イ 第一審判決及び跳躍上告

東京地方裁判所は、1959 年(昭和 34 年)3月 30 日、日本が旧安保条約

により米国軍隊の駐留を許容していることは、日本の指揮権の有無や米国軍隊

の出動義務の有無にかかわらず、憲法第9条第2項前段によって禁止されてい

る戦力の保持に該当し、米国軍隊は憲法上その存在を許されないとした上で、

違憲の駐留米軍を保護法益として国民に軽犯罪法による刑罰(立入禁止場所への立

入りに対する拘留・科料(同法第1条第 32 号))より重い刑罰(1年以下の懲役等)を

科す上記刑事特別法は、憲法第 31 条違反で無効であるから被告人は無罪と判断

しました(この判決は、裁判長の名前をとって「伊達判決」といわれています。)。

この判決を不服とした検察側は、高等裁判所への控訴を省略し、最高裁判所

へ「跳躍上告」(刑事訴訟法第 406 条)を行いました。

※ 検察側が跳躍上告を行った背景には、翌年に旧安保条約の見直しを控えていた当時の

政治的な状況があったという意見もあります。

○刑事訴訟法(昭和 23年法律第 131 号)

第 406 条 最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合

であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について

は、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審とし

てその事件を受理することができる。

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ウ 上告審判決

1959 年(昭和 34 年)12 月 16 日、最高裁判所大法廷は、旧安保条約が高

度の政治性を有することを理由として違憲審査を行わず、第一審判決を破棄し、

事件を差し戻しました(このような理由で司法審査を回避する理論は「統治行

為論」といわれています。)。

一方で、条約については、「一見極めて明白に違憲無効であると認められない

限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のもの」と判断しており、条約も違憲審

査の対象となり得ることを前提として認めたものと解されています。

本件安全保障条約は、(略)主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係

をもつ高度の政治性を有するものというべきであつて、その内容が違憲なりや否やの法

的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自

由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、

純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のも

のであり、従つて、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の

司法審査権の範囲外のものであつて、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内

閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有す

る国民の政治的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。そして、このこ

とは、本件安全保障条約またはこれに基く政府の行為の違憲なりや否やが、本件のよう

に前提問題となつている場合であると否とにかかわらないのである。

(略)よつて、進んで本件アメリカ合衆国軍隊の駐留に関する安全保障条約およびその

3条に基く行政協定の規定の示すところをみると、右駐留軍隊は外国軍隊であつて、わ

が国自体の戦力でないことはもちろん、これに対する指揮権、管理権は、すべてアメリ

カ合衆国に存し、わが国がその主体となつてあたかも自国の軍隊に対すると同様の指揮

権、管理権を有するものでないことが明らかである。

(略)果してしからば、かようなアメリカ合衆国軍隊の駐留は、憲法9条、98 条2項お

よび前文の趣旨に適合こそすれ、これらの条章に反して違憲無効であることが一見極め

て明白であるとは、到底認められない。

○刑事訴訟規則(昭和 23年最高裁判所規則第 23号)

(跳躍上告・法第 406条)

第 254 条 地方裁判所(略)がした第一審判決に対しては、その判決において法律、

命令、規則若しくは処分が憲法に違反するものとした判断又は地方公共団体の条例

若しくは規則が法律に違反するものとした判断が不当であることを理由として、最

高裁判所に上告をすることができる。

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第Ⅴ章 条約の法的位置付け等について
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<参考>統治行為論について

「統治行為」とは、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、

法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の

性質上、司法審査の対象から除外される行為」をいいます。

そもそもこのような考え方が認められるかどうかについては議論があるところです

が、現在のところ、統治行為論を採用して司法審査を回避した最高裁判所の判決は、

上記の砂川事件判決と、次の苫米地(とまべち)事件判決の2件に止まっています。

【最高裁判所大法廷 昭和 35年6月8日判決】(苫米地事件)

○1952 年(昭和 27 年)に第3次吉田内閣が行った衆議院の解散が違憲無効である

として、当時の衆議院議員であった苫米地氏が任期満了までの歳費を請求した事件

わが憲法の三権分立の制度の下においても、司法権の行使についておのずからある

限度の制約は免れないのであつて、あらゆる国家行為が無制限に司法審査の対象とな

るものと即断すべきでない。直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行

為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律

上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判

断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判

断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。こ

の司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政

治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にか

んがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制

約と理解すべきものである。

「統治行為」のほか、裁判所の審査に適さず、司法権による審査の範囲外と解釈さ

れている事件には、次のものがあります。

憲法が明文で

認めたもの

・議員の資格争訟の裁判(第 55 条)

・裁判官の弾劾裁判(第 64 条)

国際法で定め

られたもの

・国際法上の治外法権(外交特権等)

・条約による裁判権の制限(日米地位協定第 17 条・第 18 条等)

憲法の解釈上

の限界

・国会又は各議院の自律権に属する行為(懲罰、議事手続等)

・行政機関の自由裁量に属する行為

・団体(地方議会、大学、政党、宗教団体等)の内部事項に関する行為

※表:『憲法(第2版):伊藤真試験対策講座5』((株)弘文堂)より引用。表中の記述は、一部、加筆

修正

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資料

日米安全保障条約(新安保条約)(38 ページ)

日米地位協定(42 ページ)

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参考文献

『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』前泊博盛 編著(創元社)

『戦後史の正体:1945-2012』孫崎享 著(創元社)

『日米同盟の正体』孫崎享 著(講談社)

『在日米軍地位協定』本間浩 著(日本評論社)

『外務省機密文書 日米地位協定の考え方・増補版』琉球新報社 編(高文研)

『在日米軍』梅林宏道 著(岩波書店)

『憲法(第5版)』芦部信喜 著、高橋和之 補訂(岩波書店)

『憲法Ⅱ 第5版』野中俊彦、中村睦男、高橋和之、高見勝利 著(有斐閣)

『国際法(全訂補正版)』島田征夫 著(弘文堂)

『国際法(第2版)』(有斐閣)

『別冊ジュリスト 憲法判例百選(第5版)』(有斐閣)

『増刊ジュリスト 憲法の争点』(有斐閣)

『横浜市会の百年:市政 100 周年開港 130 周年 記述編』横浜市会百年史刊行委

員会、横浜市会事務局 著(横浜市会百年史刊行委員会)

『法令用語辞典(第9次改訂版)』吉国一郎ほか 編(学陽書房)

「駐留米軍と主権免除の原則」(長尾英彦『中京法学 38 巻 3・4 号』)

「日米同盟をめぐる諸課題と今後の展望」(外交防衛調査室・課『調査と情報 ISSUE

BRIEF 第 664 号』)

「日米安保条約の事前協議に関する『密約』」(松山健二『調査と情報 ISSUE BRIEF

第 672 号』)

「日米地位協定の運用改善の経緯:米兵等の容疑者の身柄引渡しをめぐって」(山本

健太郎『調査と情報 ISSUE BRIEF 第 766 号』)

「条約の国会承認に関する制度・運用と国会における議論:条約締結に対する民主的

統制の在り方とは」(中内康夫『立法と調査 第 330 号』)

「法制レポート」は、「市会ジャーナル」の特別編として、議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として、議会局政策調査課(法制等

担当)が編集・発行しているものです。

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平成23年10月発行

横浜市会議会局政策調査課

TEL671-3099

平成 25年 12月3日発行

横浜市会議会局政策調査課

(担当:中村 正一、藤倉 真美)

TEL 045-671-3099

市会ジャーナル(PDF版)について

本冊子のPDF版は、横浜市会情報システムに掲載しておりますので、

御活用ください(バックナンバーも掲載しています。)。

市会ジャーナル 平成 25年度 Vol.9 <特別編・法制レポート⑪>

<法制レポート バックナンバー>

① 地域主権改革関連3法案について(22 年度 vol.4)

② 議会と首長の関係~「首長の専決処分」について~(22 年度 vol.7)

③ 住民訴訟と議会の議決による権利放棄について~裁判例を中心に~(22 年度 vol.11)

④ 議会の議決権について~議決事件と、その根拠~(23 年度 vol.3)

⑤ 政策立案のポイント~政策づくりの過程と条例の意義~(23 年度 vol.6)

⑥ 地域主権改革一括法の全体像(23 年度 vol.11)

⑦ 政務調査費の使途について~近年の判例の動向~(24 年度 vol.1)

⑧ 議員派遣について~裁判例の動向~(24 年度 vol.10)

⑨ 地方公共団体の債権管理について(24 年度 vol.15)

⑩ 地方公共団体の条例制定権について(25 年度 vol.5)