産学連携に関する 平成22年度予算 -...

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Vol. 6 No. 3 特別号 2010 2010年3月特別号 http://sangakukan.jp/journal/ Journal of Industry-Academia-Government Collaboration 文部科学省 研究成果をイノベーション創出につなげる 農林水産省 農林水産・食品産業分野の競争的資金制度等について 経済産業省 研究開発と人材育成の側面からの支援 環境省 各地域の環境保全活動を後押し 科学技術振興機構 さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援 2 タイプが始動 産学連携に関する 平成 22 年度予算

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Page 1: 産学連携に関する 平成22年度予算 - JST...さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構

Vol.6 No.3 特別号 2010 2010年3月特別号

http://sangakukan.jp/journal/

Journal of Industry-Academia-Government Collaboration

●文部科学省 研究成果をイノベーション創出につなげる●農林水産省 農林水産・食品産業分野の競争的資金制度等について●経済産業省 研究開発と人材育成の側面からの支援●環境省 各地域の環境保全活動を後押し●科学技術振興機構 さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動

産学連携に関する平成22年度予算

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http://sangakukan.jp/journal/産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 20102

CONTENTS

●巻頭言 技術力と産業集積力を基盤としたシリコン・クラスターの挑戦 佐々木 元 ............... 3

●特集

産学連携に関する平成22年度予算●文部科学省 研究成果をイノベーション創出につなげる 文部科学省 研究振興局 研究環境・産業連携課 ................. 4

●農林水産省 農林水産・食品産業分野の競争的資金制度等について 農林水産省 農林水産技術会議事務局 研究推進課 産学連携室 ................. 8

●経済産業省 研究開発と人材育成の側面からの支援 経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進課 ................. 11

●環境省 各地域の環境保全活動を後押し 環境省 総合環境政策局 総務課 環境研究技術室 ................. 14

●科学技術振興機構 さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援 2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構 イノベーション推進本部 産学連携展開部 事業調整担当 ................. 16

 

●イベント・レポート ベンチャーフェアJapan2010 JapanVentureAwards2010 新事業に果敢に挑む経営者を表彰       ................. 18

●イベント・レポート 第 2回 コーディネータネットワーク筑波会議 情報を共有できるコーディネータの存在       ................. 20

●イベント・レポート ソーシャルビジネス・メッセ 初の全国規模の見本市       ................. 21

●産学官連携ジャーナル 注目記事       ................. 22

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●産学官連携ジャーナル

http://sangakukan.jp/journal/

佐々木 元(ささき・はじめ)

九州半導体イノベーション協議会 会長 日本電気株式会社 特別顧問

3 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

◆技術力と産業集積力を基盤としたシリコン・クラスターの挑戦九州半導体イノベーション協議会(SIIQ)は、経済産業省が進める産業クラスター計画の推進組織として、九州地域における半導体・FPD関連産業の振興を目的に、2002年5月に設立されました。設立以来、半導体関連企業が集積する九州の強みを活かして産学官の濃密なネットワークを形成し、イノベーション創出の環境整備を図ってまいりました。特に2007年度からは会費制度を導入して自立化を図り、新たなビジネスの創出とそれを支える技術の創造、人材育成とアライアンス形成に注力して、産学のシーズ、ニーズに即したビジネスに直結する事業を展開することによって、九州を中心とした産学官関係者の皆さまから高い評価を頂き成果を挙げていると自負しております。大手ユーザー企業の工場内等で地場企業の製品、技術をPRするチャレンジ・マーケット企業内覧会は、2007年からの8回の開催により、出展社数延べ266社、来場者数2,005名、商談の成約件数は実に351件に上ります。また、次世代半導体製造人材の発掘と確保を目的に、学部・修士課程の学生が半導体製造プロセスの現場を体験する企業連携型人材育成事業「IKKAN」は、昨年11月に日刊工業新聞社主催の第4回ものづくり連携大賞特別賞を受賞いたしました。現在、わが国の半導体産業は、応用分野である電子機器のライフサイクルの短寿命化とLSIの低価格化の要請に加えて、メモリーを中心とする規模のビジネスでは価格競争などの激しい国際競争に直面している状況であると認識をしております。今後、SIIQにおきましては、参画メンバーが厳しい状況を乗り越えさらなる飛躍を成し遂げるため、九州における半導体産業の発展戦略となる新たな成長ビジョンを策定し、次のステップへかじを切ることが重要であると考えております。具体的には、アジア市場への地理的優位性を背景に、設計から製造、部品、材料などすそ野の広い関連産業の集積を強みとして、アジア市場へのアクセス機能を向上させることができると思います。さらに、産学官の強固なネットワークを活かした新たなビジネスモデルの構築を目指すとともに、これからの成長産業である環境、医療、福祉などの分野において社会的課題を解決する技術の創造を半導体技術の活用を通じてチャレンジし、新たな市場の創出と企業の競争力強化へとつなげていきます。そのためには、国や研究支援機関との連携をこれまで以上に強めながら、同時に技術革新のための未来への投資を的確かつ積極的に図っていくことが必要であると考えます。SIIQとしては、輝かしい九州、そして日本の将来のために技術と市場の両面から貢献していく所存であります。

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産学官連携は、大学等における研究成果をイノベーション創出につなげていくための重要な手段である。しかしながら、世界規模の深刻な経済不況の影響等を受け、その活動をめぐる状況は厳しい局面を迎えつつある。そのような中、平成21年12月に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」では、イノベーション創出のための制度・規制改革、知的財産の適切な保護・活用や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性化につなげる取り組みの推進がうたわれている。また同年11月には、文部科学省科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会において「第四期科学技術基本計画の策定に向けた重要事項(審議のまとめ)」が取りまとめられており、産学官連携の推進に関する今後の重要課題に関する検討・審議の結果が報告されている。これらの観点を踏まえ、研究環境・産業連携課では、産学官連携の推進に係るこれまでの取り組みを一層推進するとともに、新たなフェーズに向けたその深化を図るため、平成22年度に以下の施策を実施する。

1.産学官連携のさらなる推進◆大学等における産学官連携機能強化(図1)大学等の研究成果を効果的に社会につなぐため、国際的な産学官連携活

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図1 大学等産学官連携自立化促進プログラム

文部科学省 研究振興局研究環境・産業連携課

http://sangakukan.jp/journal/4 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

文部科学省研究成果をイノベーション創出につなげる

特集● 産学連携に関する平成22年度予算     

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動や特色ある産学官連携活動の強化、産学官連携コーディネーター配置等の支援により、大学等が産学官連携活動を自立して実施できる環境の整備を図る「イノベーションシステム整備事業【大学等産学官連携自立化促進プログラム】〔26億円〕」*1を実施する。

◆大学等の研究成果の特許化支援・利活用促進独立行政法人科学技術振興機構(JST)において、特許の海外出願支援や産学のマッチングの場の提供等の各種施策により、大学等の研究成果の技術移転活動や知的財産活動に対する専門的な支援を行う「技術移転支援センター事業〔23億円〕」を実施する。

◆大学等の成果を活用した 産学共同研究推進のための総合的支援大学と企業とのマッチング段階から本格的な共同研究開発段階に至るまで、課題ごとに最適なファンディング計画を設定し、大学等の研究成果を実用化につなぐための産学共同研究を総合的に支援する「研究成果最適展開支援事業(A-STEP)〔166億円〕」*2(JST)を実施する。特に、平成22年度は、研究の初期段階にあたる技術シーズにおける小規模の産学連携活動を支援する「探索挑戦ステージ」を創設するとともに、起業意欲のある若手研究者による大学発ベンチャー創出に向けた研究開発の支援スキームを開始する。

◆イノベーション加速に向けた 産学共創による研究開発力の強化産学による基礎研究基盤強化や技術開発基盤強化のための研究開発、革新的な基礎研究成果を基にした産学による大規模な研究開発など、特にイノベーションを加速する効果の高い産学による取り組みを支援する「産学イノベーション加速事業〔62億円〕」*3(JST)を実施する。

2.新たなフェーズに向けた産学官連携の深化昨今のオープンイノベーションの進展等に伴い、わが国の産学官連携が新たなフェーズを迎える中、産学双方のスパイラルな連携・発展を目指す新たな連携体制の構築や、「知的財産推進計画2009」等を踏まえたわが国の知的財産政策のさらなる推進が求められている。そのため、研究環境・産業連携課では、平成22年度に以下の新規施策を実施する。●産学共創基礎基盤研究(図2)文部科学省では、今後、産学連携を基礎研究にまで拡大して産業界が抱える課題の解決に資する知見の創出を支援するとともに、知見を共有するための産学の緊密な対話を促す「共創の場」(「知」のプラットフォーム)の構築を推進することとしている。そのため、平成22年度は、「産学イノベーション加速事業【産学共創基礎基盤研究】〔3億円〕」において、産業界における技術課題解決の加速や、産業界の視点・知見のフィードバックによる大学等の基礎研究の活性化を図る。

http://sangakukan.jp/journal/5 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

*2:平成21年度まで実施の「産学共同シーズイノベーション化事業」「独創的シーズ展開事業」

「若手研究者ベンチャー創出推進事業」および「地域イノベーション創出総合支援事業」(いずれもJST事業)の既存支援分を本事業に統合し、さらに研究の初期段階シーズの調査を実施する

「探索挑戦ステージ」を創設。

*3:平成21年度まで実施の「先端計測分析技術・機器開発事業」および「戦略的イノベーション創出推進事業」(いずれもJST事業)を産学の連携によりイノベーションを包括的かつ加速度的に促進する観点から統合し、さらに新規施策「産学共創基礎基盤研究」を追加して発展的に再編したもの。

*1:平成21年度まで実施の「産学官連携戦略展開事業」を地域における組織的連携の強化と地域の主体性を重視する観点から再設計したもの。

〔関連施策〕「イノベーションシステム整備事業【地域イノベーションクラスタープログラム】

〔121億円〕」:優れた研究開発ポテンシャルを有する地域の大学等を核とした産学官共同研究を実施し、産学官の網の目のようなネットワークの構築により、イノベーションを持続的に創出する世界レベルのクラスターと小規模でも地域の特色を活かした強みを持つクラスター形成を図る。

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●科学技術コモンズ(図4)大学等における知的財産活動の進展により、大学等が保有する特許件数は増加しているが、その一方で、利用率は向上していない(図3)。そのため、大学等や企業等が保有する特許について、研究目的に限り無償開放し、関連する科学技術情報も併せて収集・公開する「科学技術コモンズ〔2.3億円〕」の運用を「技術移転支援センター事業」内で実施する。これにより基礎

新たな共同研究やベンチャーなどの創出新たな共同研究や

ベンチャーなどの創出

新たな共同研究やベンチャーなどの創出

<参加大学等>

○産学連携の範囲を基礎研究領域まで拡大し、産学の対話の下、産業競争力の強化及び大学等の基礎研究の活性化を図る。○産業界の技術課題の解決に資する基礎研究を大学等が行い、産業界における技術課題の解決を加速するとともに、産業界の視点や知見を基礎研

究での取組にフィードバックし、大学等の基礎研究を活性化。○大学等の基礎研究費及び研究実施中の産学の対話を行う「共創の場」運営をJSTが支援。

概 要

産業界

基礎研究活性化基礎研究活性化基礎研究活性化基礎研究活性化基礎研究活性化基礎研究活性化基礎研究活性化

産業競争力強化産業競争力強化産業競争力強化産業競争力強化産業競争力強化産業競争力強化産業競争力強化

産学の対話を踏まえ技術課題及び採択大学を決定

技術課題を提案

大学等

学術的知見を提供

<参加企業> 産業界の策定したイノベーションロードマップの実現に向けた研究開発を推進

2 μm2 μm

WS等への参加

・WS等への参加・新たな応募

関係府省との連携

独自に製品化

技術課題の解決技術課題の解決技術課題の解決

要素技術開発 企業化開発 商品化・普及

企業では対応できない、基盤的な知に立ち返った基礎研究を推進技術課題の解決に寄与し、総体的に産業界を支援

WS

基礎研究

[1120] off1 cm

0.600.400.330.300.240.170.160.130.11

0.100.09[µs]

参加

参加 総体的に産業界を支援研究成果活用、人材交流

開発成果活用、人材育成

【共創の場】

平成22年度予算案:300百万円【新規】

産学イノベーション加速事業

【産学共創基礎基盤研究】 〔JST〕

(研究費等)2技術課題×10機関程度×30百万円程度×1/2=300百万円

<支援期間>1技術課題につき10年程度各大学等当たり1~2年程度(参加大学等は適宜改選)

<支援額> 1技術課題につき300百万円程度/年(※初年度は半年分)

<新規採択>技術課題数:2程度(1技術課題当たり10機関程度の大学等が参加)

図2 産学共創基礎基盤研究

図3 教育機関(大学等)・TLO等の国内における特許権所有件数及びその未利用率の推移

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度

未利用件数

利用件数

(件)

79.1% 85.3% 77.6%

78.3%

82.1%

【教育機関(大学等)・TLO等の国内における特許権所有件数及びその未利用率の推移】

※ 教育機関等の「特許権所有件数」は、全出願件数に占める教育機関等からの出願割合から、特許登録件数に占める教育機関等の所有件数を算出、未利用率は教育機関等へのアンケート調査の結果に基づいて算出されており、共有特許も含まれるデータ

出典:特許庁「知的財産活動調査(平成18年度、平成19年度、20年度)」に基づく

http://sangakukan.jp/journal/6 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

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研究の活性化を図るとともに、産業界による大学等の知的財産の活用を促進し、知的財産の新たな価値の発掘につなげる。

〔(参考)科学技術振興のための基盤の強化〕先端的な研究開発施設・設備・機器や知的基盤等は、基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般を支える重要な技術基盤である。研究環境・産業連携課では、これらの効果的な利用や戦略的な整備を図るため、大学等の保有する先端的な研究開発施設等を外部利用に開放(共用)するための経費(運転経費、技術支援員の配置等)を支援する「先端研究施設共用促進事業〔14億円〕」等を実施する。

※〔 〕内は平成22年度予算案額

大学や企業等が保有する特許権等を研究に限って相互に無償開放する「リサーチ・パテントコモンズ」を構築する。また、加入のインセンティブとなる支援を行う。さらに、関連する科学技術情報を併せて提供し、特許等に限らない広範な

「知」の利活用も促進し、全体を「科学技術コモンズ(仮称)」として運用する。

オープンイノベーションの進展を踏まえ、大学等が保有する特許等の基礎研究における利用を開放すること等により、特許等が制約とならない研究環境を提供し、特許等の活用促進及び研究活動の活性化を図る。また、この枠組みを産業界にも開放し、これら特許等の利用価値の発掘を促進する。

目 的 概 要

大学

特許・論文など「知」の提供

大学・企業等から提供された特許について、研究目的の特許無償利用のルールを設定し、権利に縛られない自由な研究活動を確保。

パテントコモンズ内に重点分野を複数設けるとともに、当該分野に関連する科学技術情報(特許マップ等)をあわせて公

開。

企業

アカデミアが有する「研究の自由」の確保

オープンイノベーションのリソースとして活用

<大学における課題>・産学連携を推進するための研究成果の特許化の推進が、自由な研究活動や特許化された研究成果の多様な活用の支障とならない枠組みが必要。

<企業における課題>・大学等の特許は、ある程度追加的な研究を進めた上でなければ、事業上の利用価値を判断するのは難しい。特許に関連する科学技術情報への容易なアクセスの確保も必要。

科学技術コモンズ

特許・論文など「知」の提供

<コモンズの効果>・基礎研究段階での特許利用を無償開放することで、特許化された研究成果を活用した研究を促進し、研究活動を活性化。

<コモンズの効果>・特許や関連する科学技術情報を研究において自由に活用し、特許

等の利用価値の発掘、イノベーションの創出を促進。

<リサーチ・パテントコモンズ>・事務局として、ルール作りや契約関係、リスト化等を担当・大学へのインセンティブ支援の実施等・重点分野の特許マップやポートフォリオ形成支援

<科学技術情報関連>・J-GLOBALなどを活用した関連科学技術情報の提供・WS開催やWeb掲示板など交流の場を設定・重点分野の技術マップ等の作成

<リサーチ・パテントコモンズ>

利便性向上

【科学技術コモンズ】平成22年度予算案 : 231百万円※

平成21年度予算額 : 231百万円※

※21年度まで実施した「良いシーズをつなぐ「知」の連携システム「つなぐしくみ」」を発展的に再編。

技術移転支援センター事業

〔JST〕

図4 科学技術コモンズ

http://sangakukan.jp/journal/7 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

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農林水産省では、産学官連携による研究開発の推進手段として、基礎・応用段階(技術シーズの開発)に対応した「イノベーション創出基礎的研究推進事業」(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター〈以下、生研センター〉が運営)、開発・実用化段階(実用技術の開発)に対応した「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」(本省農林水産技術会議事務局が運営)の2本の事業を実施している。平成22年度の予算では「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」において、従来の研究タイプの一部を再編するとともに新たな研究タイプを新設した。また、農林水産・食品産業分野のコーディネーターを地域に配置し、共同研究の参画機関を増加させるため「地域における産学連携支援事業」を開始する予定である。

◆「イノベーション創出基礎的研究推進事業」の概要 (平成22年度予算の概算決定額:60億円)目  的:農林水産・食品産業等におけるイノベーションにつながる革新

的な技術シーズの開発および開発された技術シーズを実用化に向けて発展させるための研究開発

実施主体:大学、独立行政法人、公立試験研究機関、民間企業等の研究者または研究グループ

研究課題の募集期間:平成22年1月25日(月)~2月12日(金)

技術シーズ開発型 発 展 型

1.イノベーション創出基礎的研究推進事業

3.民間実用化研究促進事業(組替・拡充)

現場実証支援型研究(再編)

農林水産省が実施

生研センターが実施

4.地域における産学連携支援事業(新規)

研究領域設定型研究

緊急対応型調査研究

機関連携強化型研究(新設)

2.新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(組替)

技術実証目的基礎 応用 実用化

農林水産省が実施

農林水産省が所管する主な競争的資金制度等農林水産省が所管する主な競争的資金制度等

競争的資金等

研究支援

生研センターが実施

農林水産省が所管する主な競争的資金制度等

農林水産省農林水産技術会議事務局研究推進課 産学連携室

http://sangakukan.jp/journal/8 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

農林水産省農林水産・食品産業分野の競争的資金制度等について

特集● 産学連携に関する平成22年度予算     

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① 技術シーズ開発型理工系を含む研究者の独創的なアイデア、基礎研究の成果を基に、イノベーションにつながる新たな技術シーズを開発する基礎研究(目的基礎研究)。

研究期間:5年以内研 究 費:7千万円以内/年(国際共同研究を含む場合は8千万円以内/年)また39歳までの若手研究者を支援する「若手育成枠」を設定。

研究期間:原則3年以内(2年以内の延長が可能)研 究 費:3千万円以内/年

② 発展型技術シーズ開発型やほかの研究制度で開発された技術シーズを実用化に向けて発展させるための研究開発。

研究期間:3年以内研 究 費:6千万円以内/年(国際共同研究を含む場合は7千万円以内/年)また研究開発ベンチャー育成を支援する「ベンチャー育成枠」を設定。

研究期間:原則2年以内(1年間の延長が可能、なお、研究に先立ち1年間のFSを実施して、選抜された課題が対象)

研 究 費:3千万円以内/年(FSは5百万円以内)

◆「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」の概要 (平成22年度予算の概算決定額:62億円)目  的:産学官の研究勢力を結集し、幅広い分野の技術シーズを活用し

つつ、農林水産・食品産業等の施策の推進や地域活性化に資する現場の技術的課題の解決に向けた実用技術を開発

実施主体:公立試験研究機関、独立行政法人、大学、民間企業、生産者等で構成される研究グループ

研究課題の募集期間:本事業では下記の4つの研究タイプを設定しており、①と②については平成22年2月1日(月)より2月19日(金)の間に募集。③については平成22年3月15日(月)より3月31日(水)の間に募集。④については必要に応じてその都度募集。

① 研究領域設定型研究行政部局や地域からの要請等に基づき、農林水産政策の推進上の重要性・緊急性が高いものとして、あらかじめ農林水産省が設定した研究領域に基づく研究開発

研究期間:原則3年以内研 究 費:原則5千万円以内/年平成22年度は、次の5つの研究領域を設定

・競争力強化のための生産システムの改善・新たな可能性を引き出す新需要の創造・地域農林水産資源の再生と生態系保全・食品産業の競争力強化と農林水産物・食品の輸出拡大・温室効果ガス排出削減のための省エネルギー・新エネルギー対策

http://sangakukan.jp/journal/9 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

具体的な内容については、   農林水産省・http://www.s.affrc.go.jp/

docs/research_fund/2010/fund_2010.htm

・http://www.s.affrc.go.jp/docs/tyoutatu.htm

および生研センター・http://brain.naro.affrc.

go.jp/tokyo/のホームページを参照。

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② 現場実証支援型研究(従来の現場提案型研究を再編)地域に由来する技術シーズの活用や地域の課題の解決による、地域の活性化に資する研究開発

研究期間:原則3年以内研 究 費:原則3千万円以内/年

③ 機関連携強化型研究(新設)地域の研究資源の利用効率を向上させる研究開発

研究期間:原則3年以内研 究 費:5千万円以内/年

④ 緊急対応型調査研究農林水産分野における災害の発生や突発的な事象等の緊急課題に対応した調査研究

研究期間:年度内研 究 費:1千万円以内

◆「地域における産学連携支援事業」の概要 (新規:平成22年度予算の概算決定額:2億円)農山漁村に存在する豊富な資源を活用し、新産業の創出を促すため、農林水産・食品産業分野の高度な専門知識を有するコーディネーターを全国に配置し、地域における産学連携活動を一体的に支援する事業。平成22年2月18日(木)より3月19日(金)の間に委託先を公募し、平成22年4月より事業を開始する予定。

http://sangakukan.jp/journal/10 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

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経済産業省 産業技術環境局大学連携推進課

わが国の経済は依然として厳しい状況にあり、大きな転換期のただ中にいる。中長期的にも環境や資源の制約、人口の制約という大きな問題が立ちはだかっており、わが国はイノベーションを原動力として「課題解決型国家」を目指していく必要がある。昨年末に閣議決定した新成長戦略(基本方針)においても、イノベーションの推進を新たな戦略の中心的な柱の1つとして位置付けており、産学連携の推進が非常に重要とされている。

そのような観点から経済産業省では平成22年度予算案に研究開発と人材育成という側面から産学連携予算を盛り込んでいる。

研究開発の観点では、先端的な技術を有する企業が、大学や公的研究機関の設備等を活用して行う、実用化に向けた共同研究に対する支援、地域の産学連携の中心として活動する技術移転機関等が行う、大学等から産業界への技術移転や外国特許の取得等に対する支援を予算に盛り込んでいる。

人材育成の観点では、産業界のニーズと教育の現場とを結び付けた実践的な人材育成プログラムの開発・実証、次世代産業の担い手となる人材を産学官が連携して雇用・育成し、企業への就業を促進する取り組みに対する支援を予算に盛り込んでいる。

これら産学連携施策の着実な実施を通じて、「知恵」と「人材」のあふれる国を目指し、経済と産業の一層の発展に努めていく。

◆中小企業等の研究開発力向上および実用化推進のための 支援事業 (平成22年度予算案:9.0億円)先端的・独創的な優れた技術シーズを持ちながら事業化に至っていない

企業が、大学・公的研究機関が持つ高度な知見・技術・設備等の資源を有効活用し、企業のみでは対応することができない高度な技術課題の解決等の事業化に向けた共同研究・実証を行うプロジェクトについて支援する。

超微小押し込み硬さ試験機の開発

既存の製品を(独)産総研との共同研究によって高度化してリニューアル発売

顧客層の拡大・売上額の飛躍的増加

中小企業が開発した硬さ試験機

+産総研の数値モデル解析技術による性能評価

(株式会社エリオニクス)

http://sangakukan.jp/journal/11 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

経済産業省研究開発と人材育成の側面からの支援

特集● 産学連携に関する平成22年度予算     

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◆創造的産学連携体制整備事業 (平成22年度予算案:2.7億円)産学連携に係る高度な知識・経験を有する人材が、TLO等産学連携の結

節点となる機関において、地域産業界や研究機関等との密接な産学連携体制を構築するとともに、産学のリソースを元にした研究開発から事業化までの計画の企画・立案およびその実施等を支援することにより、大学と社会との連携・協働の促進および研究開発型中小企業等の競争力を強化し、地域社会の活性化を図る。

◆産業技術人材育成支援事業 (平成22年度予算案:14.3億円)

○ 人材育成に係る産業界のニーズと実際の教育との間のミスマッチの解消や横断的・制度的課題、業種別課題の解決を図る観点から、大学と産業界との対話を促し、当該対話を踏まえた実践的な人材育成プログラムの開発と定着を図る。

○ 地域の技術者等と教育界の連携により工業高校における技術教育の充実を図る。また、将来のイノベーションを担う理系、特に工学系人材を増やすことを目的に、小中高校における職業観教育の充実を図る。

大学

自治体

大学

大学専門人材

企業

企業

企業

経済団体

TLO

TLO

産学官連携拠点を中心とした、専門人材による広域的・戦略的な産学連携活動

中核大学

TLO等

産学官連携拠点

【経済産業省】

対話、連携対話、連携(ミスマッチの解消や横断的・制度的課題、業種別課題の解決に取り組む)

【文部科学省】連携

開発 実施

産学連携による実践的な人材育成プログラム

連携・支援 連携・支援

http://sangakukan.jp/journal/12 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

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◆中小企業等の次世代の先端技術人材の育成・雇用支援事業(平成22年度予算案:3.7億円)産学官の共同研究を取りまとめる機関が、ポスドク・離職中の企業技術

者等を、研究人材(高度な研究開発を行う人材)、研究支援人材(高度な実験・装置の運用等を行う人材)として雇用し、これらの人材に対して、共同研究プロジェクトへの従事等、実践的な教育を実施し、企業の現場で即戦力として活躍できる人材を育成する。また、人材育成の取り組みを通じて、共同研究先企業等への就業も支援する。

地域の産業支援財団 等

博士卒、修士卒、

ポスドク人材

学士レベル人材

研究支援人材(実験、試験設備の運用専門人材等)の雇用・育成

研究人材を雇用・育成

経済産業省

補助金

就業

共同研究

研究開発型研究開発型企業企業 等等

OJTの実施

当該地域に集積しつつある次世代産業分野の中小企業

地域における次世代産業分野の創出、発展に貢献

http://sangakukan.jp/journal/13 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

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環境省では平成22年度に、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比25%削減するという目標に向けた「25%削減目標の達成と豊かな暮らしの実現に向けた社会の変革」をはじめとし、「生物多様性の保全と持続可能な利用による自然共生社会の実現に向けて」「循環型社会づくりに向けて」「安全・安心な社会づくりに向けた環境保全の取組」を併せた4つの視点から、持続可能な社会を構築するための施策を強力に推進することとしている(図1)。

環境省における平成22年度科学技術関係予算案では、総額約380億円となっており、前年度に比べ約30億円の増となっている(図2)。

農林水産省が所管する主な競争的資金制度等

環境省 総合環境政策局 総務課環境研究技術室

25%削減目標の達成と豊かな暮らしの実現に向けた社会の変革

循環型社会づくりに向けて

・25%削減に向けた社会・経済の取組

・国民とともに取り組む社会の変革

・新しい課題を踏まえた国民の安全・安心の基礎となる環境管理

持続可能で豊かな社会への変革

・現地の環境管理能力を育て持続可能な開発を実現する戦略的な国際協力

・COP10の成果につながる施策の展開

・生物多様性の恵みを実感できる国立公園等の実現

・人といきものが共生する自然保護管理等の実現

・循環産業の育成等を通じた3Rの戦略的高度化

・地域循環顕の形成やアジアにおける適切な循環の確保

・安全・安心な廃棄物処理・リサイクルの推進

・「子どもの健康と環境」を始めとした化学物質対策

・水俣病を始めとする公害健康被害者対策等

平成22年度 環境省重点施策

安全・安心な社会づくりに向けた環境保全の取組

生物多様性の保全と持続可能な利用による自然共生社会の実現に向けて

総額 350億円 → 380億円 対前年比8.6%増

1.科学技術・公害防止等の調査研究等の推進(科学技術振興費) 213 億円 →242 億円

○競争的研究資金(一般会計) 69 億円 → 70 億円

・環境研究総合推進費 51 億円 → 53 億円

(地球環境研究総合推進費と環境研究・技術開発推進費の統合)

・循環型社会形成推進科学研究費補助金 18 億円 → 17 億円

○地球環境保全等に係る試験研究費(いわゆる一括計上予算) 10 億円 → 8 億円

○環境政策基盤の整備 21 億円 → 22 億円

○環境省所管の科学技術関係機関の充実(独立行政法人への運営費交付金等) 113 億円 → 143 億円

2.一般会計中のその他の科学技術関係費 42 億円 → 36 億円

3. 特別会計(エネルギー対策特別会計)中の科学技術関係費 95 億円 → 101 億円

・地球温暖化対策技術開発等事業(競争的研究資金) 38 億円 → 50 億円

(矢印左側:平成21年度、 右側:平成22年度予算案)

平成22年度 環境省科学技術関係予算案(概要)

図1

図2

http://sangakukan.jp/journal/14 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

環境省各地域の環境保全活動を後押し

特集● 産学連携に関する平成22年度予算     

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地域における科学技術に関する取り組みとして、環境省では、環境保全に関する意欲と能力あふれる豊富な人材を活かし、各地域の環境保全活動の輪を全国に広げ、力強く後押しすることにより、地域が持つ本来の力が十分に発揮された元気な地域社会の実現を目指している。具体的な取り組みとしては、まず、平成19年度より開始した「地域の産学官連携による環境技術開発基盤整備モデル事業」が挙げられる。本事業では、地方環境研究所が中核となり、モデル地域の技術シーズを活かした産学官連携による地域の環境問題解決と、地場産業振興を同時に図り、モデル地域における成果、産学官連携の手法等をマニュアルとして取りまとめ、全国に情報発信し地域活性化の一助とするものである(図3)。平成22年度予算案では41百万円の規模で事業を推進することとしている。

また、優先的に研究開発するべき環境技術分野を特定し、国立試験研究機関、独立行政法人および民間企業等から環境研究・技術開発課題を公募し、研究開発等に要する費用を助成し研究開発の推進を図る環境研究・技術開発推進費(競争的資金)に取り組んでおり、特に地域の独自性・特性を活かした研究開発を支援するため「地域枠」を設けているところである。平成22年度よりこの環境研究・技術開発推進費は地球環境総合研究推進費と統合し、新たに「環境研究総合推進費」として既存の各推進費の枠をまたがる分野横断的な研究等を促進していくが、これまでと同様に「地域枠」を設け、地域の公的試験研究機関等が連携を図り実施する共同研究プロジェクト等を促進していくこととしている。平成22年度新規課題の募集については、昨年11月に公募を締め切っており、「地域枠」で9件の公募があった。現在、課題採択に向けての調整等を行っており、本年7月ごろに新規採択課題の公表を行うこととしている。以上のとおり、環境省では、平成22年度にこれらの取り組みを含め、地域での産学官連携の取り組みに対し、継続的に支援していくこととしている。

■ 地域の産学官連携による環境研究・技術開発の基盤整備– 都道府県に設置されている地方環境研究所等、

貴重な環境研究資源を活用

• 産学官連携による地域の環境保全促進

• 地域の技術の活用・普及

• 地域の環境研究機関の活用・能力強化

地域の大学

民間研究機関

地環研

○地域における環境研究・

技術開発体制強化

○地域における人材育成

地域がフィールド

地域社会との連携

地域の産学官連携による環境技術開発基盤整備モデル事業

平成22年度予算案 41百万円(平成21年度 41百万円)

図3

http://sangakukan.jp/journal/15 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

Page 16: 産学連携に関する 平成22年度予算 - JST...さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構

独立行政法人科学技術振興機構(JST)では、大学等の研究成果の実用化に向けた、総合的な支援を実施している。今回は、企業との実用化に向けた本格的な共同研究開発を長期にわたりシームレスに実施できる公募事業について解説する。

平成22年度は、平成21年度に既存事業を再編、公募窓口を一本化し新制度として始動した「研究成果最適展開支援事業(A-STEP)」の「フィージビリティスタディ(FS)」ステージに「探索タイプ(仮称)」を新設するほか、「本格研究開発」ステージにも新たに「若手起業家タイプ」を設置する。また、同じく平成21年度に立ち上げられた「戦略的イノベーション創出推進事業

(S-イノベ)」は、「産学共創基礎基盤研究」などを加え「産学イノベーション加速事業」として再編される。

◆研究成果最適展開支援事業<A-STEP>A-STEP*1 は「フィージビリティスタディ(FS)」と「本格研究開発」の2つの

ステージから構成される。FSステージには、大学等における研究成果の中に潜在しているシーズ候補を企業の視点から掘り起こし企業ニーズにつながるシーズとしての可能性を検証する「シーズ顕在化タイプ」と、シーズを基とした起業の可能性を検証する「起業検証タイプ」がある。

平成22年度は大学等の研究成果を技術移転へ方向付けるとともに、そのすそ野を広げるため、FSステージに企業との共同研究につながる可能性があるシーズ候補を探索する「探索タイプ(仮称)」を新たに設置し、フィージビリティスタディの支援を充実させる(図1)。また、FSステージ等で顕在化されたシーズをもって産と学との実用化に向けた本格的な研究開発を支援する 本 格 研 究 開 発 ステージに、起業意欲のある若手研究者がベ ン チ ャ ー 企 業 の創出に資する研究開発を実施するとともに、起業家へのキャリアパス形成を促進することを目的とした「若手起業家タイ

大学等の研究成果を企業へ開発委託【企業に開発費を配分】<委託開発型>(成功した場合開発費を返還)・研究開発費:2000百万円まで ・期間:7年まで

<中小・ベンチャー開発型>(売上の一部を実施料として回収)・研究開発費:300百万円まで ・期間:5年まで

<創薬開発型> (売上の一部を実施料として回収)・研究開発費:1000百万円まで ・期間:5年まで

実用化挑戦タイプ

大学等と企業の共同研究をグラント(出し切り)で支援

【大学等と企業双方に研究費を配分】・研究開発費:20百万円まで ・期間:2年まで

ハイリスク挑戦タイプFSステージ

・研究の初期段階シーズの調査(連名企業が無い場合も可)【大学等に研究費を配分】・金額:調整中・期間:調整中

探索タイプ(仮称)・研究成果の実用化可能性の検証

・ベンチャー設立可能性の検証

【大学等と企業双方に研究費を配分】・金額:10百万円程度まで(予定)・期間:1年間

起業検証タイプ

シーズ顕在化タイプ

ベンチャー設立に向けた大学等での研究を支援【大学等に研究費を配分】・研究開発費:150百万円まで(+側面支援経費15百万円)・期間:3年まで

起業挑戦タイプ

起業意欲のある若手研究者の研究を支援【大学等に研究費を配分】・研究開発費:45百万円まで・期間:3年まで

若手起業家タイプ

平成22年度新設

大学等と企業の共同研究をマッチングファンドで支援【大学等と企業双方に研究費を配分】(企業は支援額と同額を支出)・研究開発費:200百万円まで ・期間:4年まで

シーズ育成タイプ

本格研究開発ステージ

研究成果の企業化

各ステージに申請

大学等の研究成果

公募窓口

図1 平成22年度研究成果最適展開支援事業(A-STEP)

独立行政法人 科学技術振興機構 イノベーション推進本部産学連携展開部事業調整担当

http://sangakukan.jp/journal/16 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

*1:所掌部イノベーション推進本部産学連携展開部A-STEPについて:http://www.jst.go.jp/a-step/

科学技術振興機構さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し新規事業と新設支援2タイプが始動

特集● 産学連携に関する平成22年度予算     

Page 17: 産学連携に関する 平成22年度予算 - JST...さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構

プ(研究開発費最大4,500万円、期間最長3年)」が組み込まれる。

◆産学イノベーション加速事業平成21年度までの「戦略的イノベーション創出推進事業(S-イノベ)」と

「先端計測分析技術・機器開発事業」、そして平成22年度の新規施策「産学共創基礎基盤研究」を統合し「産学イノベーション加速事業」として再編し、新産業の創出を図る(図2)。「戦略的イノベーション創出推進(S-イノベ)*2 」では、JSTの戦略的創造研究推進事業等から生み出された優れた研究成果を基に、技術の重要性やイノベーション創出の可能性等の視点から重点的に推進すべきテーマを設定し、テーマに沿った研究課題を公募する。そして、産学の研究者から構成されるチームが応募し、テーマごとに複数の研究チームを採択することでコンソーシアムが形成され、研究成果の共有等を図りながら実用化を目指した大規模(1テーマ年間5億円程度)で長期的(最長10年)な研究開発を推進し、新産業を生み出す核となる技術を開発しイノベーションの創出を図る。平成21年度は、以下4つのテーマで公募・採択が行われ研究開発が開始された。

1. iPSを核とする細胞を用いた医療産業の構築2. 有機材料を基礎とした新規エレクトロニクス技術の開発3. フォトニクスポリマーによる先進情報通信技術の創出4. 超伝導システムによる先進エネルギー・エレクトロニクス産業の創出

また、「先端計測分析技術・機器開発 *3」は、わが国の将来の創造的・独創的な研究開発を支える基盤の強化を図るため、産学連携による開発チームを編成し、先端計測分析技術・機器およびその周辺システムの開発を推進する。さらに、平成22年度は、産学の対話のもと産業界の技術課題の解決に資する基礎研究を大学等が行い解決を加速するとともに、産業界の視点や知見を大学等における基礎研究での取り組みにフィードバックし基礎研究の活性化を目指す「産学共創基礎基盤研究 *4」を新たに設置する。

【平成21年度】

戦略的イノベーション創出推進事業(S-イノベ)

先端計測分析技術・機器開発事業

【平成22年度】

産学イノベーション加速事業

(1)戦略的イノベーション創出推進(S-イノベ)(2)先端計測分析技術・機器開発(3)産学共創基礎基盤研究 ※H22年度新規施策

図2 産学イノベーション加速事業

http://sangakukan.jp/journal/17 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

*2:所掌部イノベーション推進本部産学基礎基盤推進部(予定)S-イノベについて:http://www.jst.go.jp/s-innova/

*3:所掌部イノベーション推進本部産学基礎基盤推進部(予定)先端計測分析技術・機器開発について:http://www.jst.go.jp/sentan/

*4:所掌部イノベーション推進本部産学基礎基盤推進部(予定)

Page 18: 産学連携に関する 平成22年度予算 - JST...さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構

http://sangakukan.jp/journal/18 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)は2月2日(火)〜4日(木)、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて行われた「ベンチャーフェア Japan 2010*1」の中で、「Japan Venture Awards 2010」を開催した。Japan Venture Awardsは今年で10周年を迎え、「Rise to the Challenge〜高い志と自立する力を〜」をテーマに新しい事業で日本に貢献している経営者たちを表彰した。

◆Japan Venture Awards(JVA)とはJVAは、中小機構の事業である「創業・ベンチャーフォーラム」の一環と

して、新たな事業の創出・育成を促進することを目的に行う表彰制度である。有識者によって構成されたJVA審査委員会が、事業の新規性や革新性、経営者の意欲や経営方針などをもとに審査し、今年は14名の受賞者が選ばれた(写真1)。

◆JVA2010開催結果概要表彰に先駆けて登壇した中小機構の前田正博理事長は、日本の厳しい経

済状況に触れ「こういうときこそ柔軟な発想と高い志を持つ起業家が出ることを望む」と語るとともに、受賞者にエールを送った。

経済産業大臣賞を受賞したのはスターウェイ株式会社代表取締役社長の竹本直文氏。繰り返しの使用に耐える省資源・環境対応型の梱包(こんぽう)材の開発とRFID(微少な無線チップ)を活用した効率的な輸送サービスが評価された。受賞者の詳細は表1の通りである。

表彰式の後に行われたシンポジウムでは、ソフトブレーン株式会社創業者の宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏が「ニッポンを元気にするベンチャースピリット」を語った。宋氏は「日本の製品やサービスは世界でも最も優れている。だが、ものづくりに注力しすぎて、モノの価値を伝えることを怠っている。モノを通じて価値を提供し、それを世界に対してアピールすることが重要だ」と指摘した。

その後のパネルディスカッシ ョ ン で は、 宋 氏 を は じ め、日本ベンチャーキャピタル協

ベンチャーフェア Japan 2010日時:2010年2月2日(火)   〜2月4日(木)会場:東京国際フォーラム   (東京都・千代田区)主催:独立行政法人    中小企業基盤整備機構

*1:ベンチャーフェアJapan中小機構は、ビジネスを展開する上で絶対必要なヒト(人材)、モノ(製品)、カネ(資金)、情報

(市場)、技術などを獲得するビジネスマッチングの「場」や「機会」を提供している。「ベンチャーフェアJapan」もその1つであり、中小・ベンチャー企業の販路・事業連携先の開拓を支援することを目的として開催している。企業から寄せられるニーズを背景に、開催12回目となった今年は196社が出展。創業して第一歩を踏み出すときから、ビジネスを軌道に乗せ飛躍していく過程では、さまざまな経営資源を積み重ね、経営基盤を強化する必要がある。中小機構では、ビジネスチャンスの創造と事業拡大を今後も支援していく。

写真1 Japan Venture Awards 2010の受賞者たち

ベンチャーフェア Japan 2010

Japan Venture Awards 2010新事業に果敢に挑む経営者を表彰

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http://sangakukan.jp/journal/19 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

会会長の呉雅俊氏、東証アカデミーフェローの藤野英人氏、株式会社メガオプト代表取締役会長兼社長の和田智之氏がベンチャー企業の志と自立する力をテーマに語り合った。藤野氏は「事業を成功させるポイントは、人に対する理解をどれだけ深めることができるか、そしてあきらめないことに尽きる」と語った。

全体を通して、厳しい経済情勢を感じさせない、活気のある3日間であった。

昨年末の野村総合研究所の調査リポートでは、「自らで事業を起こしたい」という意欲が、1997年以降低下を続けているとある。

しかし、JVA2010を見る限りでは、ベンチャーマインドの芽は確実に育っていると感じた。

今回のJVA2010とベンチャーフェア2010が、ベンチャーマインドを喚起するキッカケとなり、また中小・ベンチャー企業を勇気づけるものであったことを願う。

(古内 里佳:独立行政法人中小企業基盤整備機構 新事業支援部 創業・ベンチャー支援課 兼 産学官連携推進課)

授賞名 企業名 表彰ノミネート者 設立 都道府県 所在地 事業概要

経済産業大臣表彰 スターウェイ(株) 代表取締役社長

竹本 直文 氏(たけもと なおふみ)1999年12月 東京都 港区浜松町1-18-13

高桑ビル7階

省資源/環境対応型の梱包材の開発提供およびRFIDを梱包材に活用した輸送サービス

中小企業庁長官表彰創業部門 (株)メールdeギフト 代表取締役

社長白形 知津江 氏

(しらかた ちづえ) 2007年2月 静岡県 静岡市葵区紺屋町3-10中島屋ビル6階

eメールでギフトを贈るメールdeギフトの開発・運用(メルアドだけで送付可能、もらった人がギフトや受け取り日を選べる)

中小企業庁長官表彰ベンチャー部門 (株)メディヴァ 代表取締役

社長大石 佳能子 氏

(おおいし かのこ) 2000年6月 東京都 世田谷区用賀2-32-18-301 医療機関の経営コンサルティング、代理運営ほかヘルスケアサービス

創業・ベンチャーフォーラム推進委員会

委員長賞創業部門

(株)jig.jp 代表取締役社長

福野 泰介 氏(ふくの たいすけ) 2003年5月 東京都

新宿区新宿2-5-12FORECAST新宿AVENUE 10階

携帯電話でPCサイトを閲覧できるアプリケーションの企画・開発・販売

創業・ベンチャーフォーラム推進委員会

委員長賞ベンチャー部門

(株)悠心 代表取締役社長

二瀬 克規 氏(ふたせ かつのり) 2007年7月 新潟県 三条市東裏館2丁目13-15 液体・粘体高速充填機を中心とし

た、包装・荷造機械の製造・販売

特別賞(環境特別賞)

ハウジングオペレーション(株)

代表取締役社長

石出 和博 氏(いしで かずひろ) 1997年5月 北海道 札幌市中央区北4条

西21丁目2-1フジタビル

住宅の施工・販売(環境配慮型循環型資材の流通、サービス、メンテナンスを活用した建築:「HOP住宅」)

特別賞(地域貢献特別賞) (株)かめあし 代表取締役 成田 光秀 氏

(なりた みつひで) 2003年4月 青森県 弘前市下湯口村元182-3安全・安心・生産者の顔が見える、青森県産品の直販ポータルサイト“かめあし商店”の運営

特別賞(モノづくり特別賞) (株)TRINC 代表取締役

社長高柳 眞 氏

(たかやなぎ まこと) 1991年2月 静岡県 浜松市西区大久保町748-37 工場の静電気・ホコリ除去装置の開発

特別賞(IT特別賞) (株)ネクステージ 代表取締役

社長傍島 祥夫 氏

(そばじま さちお) 2001年9月 埼玉県 さいたま市大宮区桜木町1-10-2

認証技術を利用した電子決済システムの開発、提供

特別賞(第二創業特別賞) (株)ニシエフ 代表取締役

社長堀井 淳 氏

(ほりい あつし) 1999年12月 山口県 下関市豊北町大字粟野4238番地

FRP船ならびに関連製品の製造販売、FRP成形品の製造販売

特別賞(社会貢献特別賞) (株)ステムセル研究所 代表取締役

会長大野 典也 氏

(おおの つねや) 1999年8月 東京都 港区新橋5-22-10松岡田村町ビル

ステムセル(造血系幹細胞)の受託管理事業(さい帯血バンク)ほか

特別賞(IT特別賞) 三三(サンサン)(株) 代表取締役

社長寺田  親弘 氏

(てらだ ちかひろ) 2007年6月 東京都 千代田区四番町4番地日本染色会館4階

『Link Knowledge(名刺のデータ化をもとに、営業管理、顧客管理を実現)』の企画・開発・販売

特別賞(社会貢献特別賞)

ミュージックセキュリティーズ(株) 代表取締役 小松 真実 氏

(こまつ まさみ) 2001年11月 東京都 千代田区丸の内1-1-31口5〜10万円程度でできるマイクロインベストのプラットホームサービス提供

特別賞(環境特別賞)

(株)ルネッサンス・エナジー・リサーチ

代表取締役社長

岡田 治 氏(おかだ おさむ) 2004年7月 大阪府

大阪市中央区高麗橋1-7-7-2810号ザ・北浜タワー28階

コンパクトかつエネルギーコスト低減を安価に提供できるCO2分離膜の開発、提供

表1 Japan Venture Awards 2010受賞者一覧

Page 20: 産学連携に関する 平成22年度予算 - JST...さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構

http://sangakukan.jp/journal/20 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

産学官連携ジャーナル2009年6月号では、産学官連携による内発型の産業振興の可能性を探って、「つくばの目覚め」と題して、茨城県、つくば市および地域の大学などの産学連携の取り組みを紹介した。これらは、第1回コーディネータネットワーク筑波会議(2008年12月3日)等でも注目されていたが、本年1月27日、第2回コーディネータネットワーク筑波会議で、その後の動きをフォローした。

前回に比較して相当に進んだ内容であったが、本稿では、特に元気な声を発信していた第3部の『産学官・農商工連携で、筑波発信「チョウザメ・キャビア」を産業へ』にある地元民間からの2つの声をご紹介する。

株式会社フジキンの平岡氏は「ながれのことならお任せ」の企業ミッションの下、ワシントン条約の規制対象魚種となったチョウザメ資源を確保するために、つくばの西部工業団地でチョウザメ・キャビア養殖事業に挑戦している実態を紹介。本事業を産業として成長させるための課題として、中小企業が求める産学官連携の必要性を、その方策として、全国の研究諸機関に対するアクセスの分かりやすさとフォーカルポイントに対する具体的なコンタクトの支援を訴えられた。その中で、最近、つくば地域において顕在化しつつある、①情報を共有できるコーディネータの存在 ②農商工連携や「にっぽんe物産市」などを通した地域間連携のネットワークの有効性、を指摘された。

つくば未来経営コンサルティング事務所の横田氏は、農商工連携によるつくばでの産業事例の経験を基に、地域の活性化、人の活性化を推進すべく、首都圏の巨大マーケットを対象に、つくば地域において諸研究機関、大学、農業、商工業からなる連携体を組成し、それを持続させることにより将来のつくば発の新産業を形成したい旨決意を表明された。

いずれも、地元民間からの生の声であり、今後の内発的な振興が注目される。

        (藤井 堅:東京農工大学大学院             技術経営研究科 非常勤講師)

第2回コーディネータネットワーク筑波会議日時:2010年1月27日(水)会場:農林ホール   (茨城県・つくば市)主催:筑波研究学園都市交流協

議会

【主な開催プログラム】第1部:�つくば市の民間企業からみた独法研究

機関等との産学官連携 「�つくば市の民間企業に対するアンケート結果のご紹介」

   農林水産省 奈良百合子氏第2部:�産学官連携に関する海外の先進事例、

日本の現状および筑波変革への提案 「�企画紹介および海外の産学官連携の先進事例から学ぶ “公的研究セクターのイノベーション・モデル”」

   (財)日本産業技術振興協会 大沢吉直氏 「�米国産学共同研究センターの活動と日本・つくばへの示唆」

   (株)富士通総研 西尾好司氏 「�フランス・グルノーブル地域の産学連携と地方自治体の役割」

   (独)産業技術総合研究所 小笠原敦氏 「日本の産学連携の現状」   経済産業省 谷明人氏 「�日本の大学等における産学連携の実態と意識動向」

   文部科学省 長野裕子氏第3部:�産学官・農商工連携で、筑波発信「チョ

ウザメ・キャビア」を産業へ 「�西部工業団地にあるバルブ機器メーカー、(株)フジキンが取り組むチョウザメ・キャビア養殖産業への挑戦」

   (株)フジキン 平岡潔氏 「�農商工連携で起こる産業事例とつくばでの可能性」

   �つくば未来経営コンサルティング事務所横田透氏

第2回 コーディネータネットワーク筑波会議

情報を共有できるコーディネータの存在

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http://sangakukan.jp/journal/21 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

高齢者・障害者の介護、共働き支援、青少年・生涯教育、まちづくり、地域起こしなどさまざまな社会的課題の解決に、ボランティア主体ではなく、ビジネスとして取り組む活動が注目されている。「ソーシャルビジネス」と呼ばれ、新たな産業・雇用の創出、地域活性化の重要な担い手になると期待されている。

3月4日、東京・原宿のイベントホール「ベルサール原宿」でソーシャルビジネスの日本初の全国規模見本市「ソーシャルビジネス・メッセ」が開かれた。各地から日本を代表する約70の事業者と15余りの地域協議会・自治体などが集い、ステージやブースでのPR、情報交換を行った。「第2回ソーシャルビジネス全国フォーラム」という位置付けだが、第1回の同フォーラムは勉強会だけで、第2回の今回、見本市形式にした。主催はソーシャルビジネス推進イニシアティブ *1 と経済産業省。同省は2007年度から本格的にその振興を進めている。

◆交流の成果を活動に生かす出展した事業者は以下のように多岐にわたる。いくつか紹介する。【子育て支援・女性支援など】

・看護職による妊産期支援の有限会社キュアリンクケア【中間支援組織など】

・創業ノウハウから先進事例、経営のポイントまで学べるNPO法人ひらかた市民活動支援センター

・北海道産品に付加価値を付けて地域活性化を目指す起業家を支援するNPO法人旭川NPOサポートセンター

【地域資源の活用など】・閉校した小学校校舎を活用して地域活性化を進める鮎の風実行委員会【豊かな食事など】

・在来品種「姫とうがらし」の加工食品のNPO法人てっちりこ【環境保全・エコツアーなど】

・錦江湾奥の環境保全を進めるNPO法人くすの木自然館【福祉・海外の問題解決など】

・健康教室・介護予防運動教室のNPO法人コーチズ・フェアトレード商品のフェアトレードカンパニー株式会社

NEC、資生堂、オリンパス、東京ガスなどの大手企業や、京都産業、立教、法政、明治学院の各大学なども出展した。「多くの人を知り、ほかの団体・事業者のノウハウも学ぶことができ、自分たちの活動に生かせる」と出展者、参加者には好評だった。

ただ、地域のソーシャルビジネス事情については、「国、自治体の財政難から助成が少なくなり、新たに事業を起こすのが難しくなっている」という声が多かった。支援組織は「事業者からの相談で多いのは資金についてのもの」と語る。本格的なビジネスと呼べるものはまだ一握りだが、こうした催しを通じて事業者の経営力が高まり、ソーシャルビジネスの社会的認知度が向上することを期待したい。     (本誌編集長:登坂 和洋)

ソーシャルビジネス・メッセ第2回ソーシャルビジネス全国フォーラム日時:2010年3月4日(木)   13:30〜17:00会場:ベルサール原宿   (東京都・渋谷区)主催:ソーシャルビジネス推進   イニシアティブ   経済産業省

*1:ソーシャルビジネス関係者が協力して行う全国規模での活動等の在り方の検討・提言を行う場として平成20年度に設立。ソーシャルビジネス事業者、学識者、企業、金融機関、中間支援機関、経済団体、関係府省で構成されている。

ソーシャルビジネス・メッセ

初の全国規模の見本市

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http://sangakukan.jp/journal/22 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

2009.4.15〜5.14 ——————————————・特集:熱い「水」技術とビジネスの課題

海外水循環システム協議会設立の狙い中村裕紀(2009年4月号)

・特集:熱い「水」技術とビジネスの課題東工大発ベンチャー企業 エレクトラ太陽光を利用した低消費電力の淡水化装置松永栄一(2009年4月号)

・特集:熱い「水」技術とビジネスの課題 低圧で従来の 10 倍長持ちする水処理膜新谷卓司(2009年4月号)

2009.5.15〜6.12 ——————————————・巻頭記事:簡潔、スピード、透明性

京都大学 産官学連携で攻勢登坂和洋(2009年5月号)

・連載:若手研究者に贈る特許の知識 基礎の基礎 第 4 回 外国で特許を取る秋葉恵一郎(2009年5月号)

・特集:熱い「水」技術とビジネスの課題海外水循環システム協議会設立の狙い中村裕紀(2009年4月号)

2009.6.13〜7.14 ——————————————・特集:産学官連携の新たな挑戦

インタビュー 細野秀雄・東京工業大学教授材料科学の “新大陸” を発見研究にオール・オア・ナッシングはあり得ない細野秀雄(2009年6月号)

・連載:工学部離れは本当か?(前編)「工学部離れ」という錯覚

濱中淳子(2009年6月号)

・特集:産学官連携の新たな挑戦成長力強化のための高度人材の活用−平成 21 年度補正予算案のポイント−文部科学省 科学技術・学術政策局 基盤政策課

      研究振興局 研究環境・産業連携課

(2009年6月号)

2009.7.15〜8.14 ——————————————・特集:多芸多才 繊維の素顔

国立大学唯一の「繊維学部」信州大学はなぜ守り続けているのか白井汪芳(2009年7月号)

産学官連携ジャーナル 注目記事・イベント・レポート:第 8 回産学官連携推進会議

オープンイノベーション促進型の連携モデルを探る(2009年7月号)

・連載:工学部離れは本当か?(後編)工学部進学を選ぶ高校生は誰か濱中淳子(2009年7月号)

2009.8.15〜9.14 ——————————————・特集:問われる「医」応える「医」

工学、薬学系等の技術者向け「医学」公開講座〜イノベーション起こす東京女子医大の医工融合教育〜岡野光夫・小林 純(2009年8月号)

・特集:問われる「医」応える「医」鹿児島県指宿で産学官連携の “医療・健康都市”プロジェクト〜 2011 年春から九州初のがん粒子線治療〜本田知章(2009年8月号)

・『産学官連携の「質」の向上方策に関する調査研究』の概要谷口邦彦(2009年8月号)

2009.9.15〜10.14 —————————————・英科学誌 Nature が映し出す日本の力

松尾義之(2009年9月号)

・特集:「起業」の心得 炎のベンチャー経営③バイオエタノールは「エネルギーの地産地消」戦略鈴木繁三(2009年9月号)

・特集:「起業」の心得 平成 20 年度「大学発ベンチャーに関する基礎調査」から得られるもの藤川 昇(2009年9月号)

2009.10.15〜11.13 ————————————・連載:産学連携による高度理系人材育成(上)

統計から見る博士課程卒業者の就職状況技術系産業で確実に増加府川伊三郎・百武宏之(2009年10月号)

・巻頭記事:日本の iPS 研究:総力戦に備えたクロスセクションの組織づくりが急務 〜直近 1 年を振り返って〜横関智一(2009年10月号)

・特集:「起業」の心得 炎のベンチャー経営③バイオエタノールは「エネルギーの地産地消」戦略鈴木繁三(2009年9月号)

Page 23: 産学連携に関する 平成22年度予算 - JST...さまざまなフェーズの産学連携支援を目指し 新規事業と新設支援2タイプが始動 独立行政法人科学技術振興機構

http://sangakukan.jp/journal/23 産学官連携ジャーナル Vol.6 No.3 特別号 2010

2009.11.14〜12.14 ————————————・特集:問われる「医」応える「医」

鹿児島県指宿で産学官連携の” 医療・健康都市”プロジェクト〜 2011 年春から九州初のがん粒子線治療〜本田知章(2009年8月号)

・特集:「起業」の心得 炎のベンチャー経営③バイオエタノールは「エネルギーの地産地消」戦略鈴木繁三(2009年9月号)

・巻頭記事:世界の水問題とナノテクノロジー輪郭を現し始めた水危機と技術の使命今田 哲(2009年11月号)

2009.12.15〜2010.1.14 —————————・特集:日本初− 2 つの物語

「合成 1 号」ビニロンの工業化−先駆的な産学連携事業−梶谷浩一(2009年12月号)

・連載:産学連携による高度理系人材育成(下)求められるのは、企業が育成できない人材−博士の好循環に向けて府川伊三郎(2009年12月号)

・特集:日本初− 2 つの物語インタビュー 九州工業大学特任教授 山川 烈氏理系初のマネジメント教育 誕生秘話−起業率日本一への道−山川 烈(2009年12月号)

2010.1.15〜2.12 —————————————・連載:高齢社会対策で日本は世界のリーダーになれる

産学連携から見るシニアビジネス(上)アンチ・エイジングからスマート・エイジングへ村田裕之(2010年1月号)

・特集:希望の低炭素社会低炭素社会づくり研究開発戦略革新的環境エネルギー技術の開発と社会システムの変革谷 広太(2010年1月号)

・巻頭記事:大型産学官連携プロジェクト成功のカギ事業期間中に企業主導のシナリオをどう描く医・薬・工と産をつなぐ医療用次世代ナノキャリアの示唆木村俊作・谷田清一(2010年1月号)

2010.2.13〜3.12 —————————————・特集:実用化への志と喜び−語り継ぐ昭和の産

学連携アモルファス合金 官の支援「委託開発」で大企業と連携増本 健(2010年2月号)

・特集:実用化への志と喜び−語り継ぐ昭和の産学連携ピッチ系炭素繊維 哲学を持った研究と企業の優秀なキーマンとの出会い大谷杉郎(2010年2月号)

・特集:問われる「医」応える「医」鹿児島県指宿で産学官連携の “医療・健康都市”プロジェクト〜 2011 年春から九州初のがん粒子線治療〜本田知章(2009年8月号)

※ 産学官連携ジャーナルの発行日(原則毎月15日)から次の発行日までの1カ月単位で、アクセス件数の多い記事をリストアップした。

産学官連携ジャーナル2010年3月特別号2010年3月24日発行

問合せ先:JST産学連携担当 要、登坂〒102-8666東京都千代田区四番町5-3TEL :(03)5214-7993FAX :(03)5214-8399

(月刊) 編集・発行:独立行政法人 科学技術振興機構(JST)イノベーション推進本部 産学連携展開部産学連携担当

編集責任者:藤井 堅 東京農工大学大学院 技術経営研究科 非常勤講師Copyright ○2005 JST. All Rights Reserved.c