前立腺癌の密封小線源治療のための線源位置の同定この方法によって、複数の方向から得られたx...
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前立腺癌の密封小線源治療のための線源位置の同定
野田 祐樹*1 乳井 嘉之*2 尾川 浩一*1 *1 法政大学大学院工学研究科
*2 東京都立保健科学大学放射線科
前立腺癌の新しい治療法では、I-125 線源を 50~80 個程度、前立腺内に永久刺入して治療が行われる。
この治療において投与線量の正しい分布を得るためには、線源の位置を正しく測定する必要がある。と
ころが、一般の X 線画像や超音波画像からでは、正確な線源位置を得ることができない。そこで、本研
究では、限られた方向からの投影データから線源位置を正確に求める方法を考案し、実験によって有効
性を検証した。 1. はじめに 前立腺癌の治療法の一つである密封小線源治療では、
針や粒状容器に密封された放射性同位元素を放射線源と
して使い、前立腺に直接刺入して治療が行われる。一般
の密封小線源治療の場合、放射線源を一時的に体内に挿
入し、治療が終了すると抜去するが、この治療法では粒
状線源(シード線源とよばれる)を多数用い、これを前
立腺内に留置したままにすることが行われる。密封小線
源治療における一般的な治療計画では、線源の位置を 2枚の X 線フィルムを参照してコンピュータに入力する。
しかし、上記の治療法では 50~80 個の線源が用いられる
ため、2枚の X 線フィルムで各シード線源の位置を特定
することは非常に困難である。線源の位置を決定するの
に X 線 CT 画像を使用することも考えられるが、線源が
金属のため高い X 線の線吸収値となり、アーチファクト
が発生し、この様な方法は現実的でない。本論文では、
少数の投影データ(X 線画像)から統計的再構成手法を
用いて、放射線源の正確な位置を得る方法を検討した。
一般に ML-EM( maximum likelihood-expectation maximization)と MAP-EM(maximum a posteriori - expectation maximization)などに代表される逐次近
似手法は、投影データの数の制限があっても、比較的画
質の優れた画像を再構成できる。このうち MAP-EM 法で
は、画像を平坦化するような先験的な情報を組み込むこ
とによって統計的なノイズを抑えることができるため、
ML-EM 法より高質な再構成画像を得ることができる。
本研究では、MAP-EM 法を用いて、多数のシード線源の
位置を正確に取得する。 2. 画像再構成
ML-EM 法では、再構成画像から実測投影データと同
じ計算投影データが得られる確率を最大にするように画
素の更新をするのに対して、MAP-EM 法は再構成の対象
となる画像についての先見的な知識(事前確率)と ML解の和を最大にするように画像を推定する。事前確率と
しては画像の滑らかさを表す関数を用いるのが一般的で
ある。ここで用いる記号の定義を Table 1 に示し、画像
と投影データの関係を Fig.1 に示す。このように記号を
定義すると、MAP-EM 法における n+1 回目の再推定式
は(1)式のようになる。
Fig.1 Geometry
Table 1 Notation
i j Ii Jj Pi cij
λj Ri
投影番号 画素の番号 投影 i に関わる画素の集合 画素 j が関わっている投影の集合 投影 i で測定される実測投影データ 画素 j から放出された光子が検出器 i で
検出される確率 画素 j の画素値 投影経路 i で計算から求めた投影データ
1
( )1 j
j
nj ij in
j n ni Jj i
ij ni J j
c PU R
c
λλ
λβ λ
+
∈
∈
=∂
+∂
∑∑
(1)
i
n ni ij j
j IR c λ
∈
= ∑ (2)
ここで、 ( )U ⋅ は注目する画素が、その近傍から受ける影
響を表すエネルギー関数であり、βはエネルギー関数の
利き具合を調節するためのパラメータである。エネルギ
ー関数は、注目画素 j と近傍画素 lの画素値の差r
j lr λ λ= − (3)
とポテンシャル関数 ( , )V r δ を用いると次式のように表
すことができる。
( ) ( , )j
j jll N
U w V rλ δ∈
= ∑ (4)
ここで、 jN は画素 j の近傍画素の集合を表し、 jlw は画
素 ,j l 間の重み係数である。この値としては画素 ,j l 間の
距離の逆数とした。また、δ はポテンシャル関数の正規化
定数で、注目する画素が近傍から受ける影響の度合を調
節するパラメータである。ポテンシャル関数は 1 次微分
関数が r δ= において最大値を持つ、以下の関数を用いた。
2 2
( , ) 16( / )(3 ( / ) )
V r rr r
δ δδ
∂=
∂ + (5)
この方法によって、複数の方向から得られた X 線画像を
再構成し、その画像から線源の位置情報を得ることが可
能になる。 3. 実験と結果
提案する手法の有効性を検証するため RANDO ファン
トム(The Phantom Laboratories, Inc.) を用いた実験を
行った。このファントム(Fig. 2)は人体とほぼ同一の吸収
係数を持つ材質で構成されており、ファントム内には骨
の構造も人体同様に作られている。ファントムは、多数
の断面ユニット(厚さ:2.5cm)から構成されており、各
断面には thermoluminescence dosimeter (TLD) 素子
を挿入するためのいくつかの穴がある。我々は前立腺の
場所にあるの穴に模擬線源をおいた。模擬線源は、長さ 2 mm、直径 1mm の through-hole pin (Sn: 95.5 %, Fe: 3.8 %, Cu: 0.7 %)である。各断面ユニットの穴の数に制限
があるので、ユニット #28 に 6 つの模擬線源を、ユニッ
ト #29に 3つの模擬線源をおいた。Fig.3に示すように、
RANDO ファントムを回転テーブルの上に置き、CR 装置 (Konica Reguis Model 150) とイメージングプレートを
用いて投影データの収集を行った。撮影条件は 80-95 kVp、50 mAs、 220-400 mA で体の厚さに応じて変化さ
せた。線源-画像間距離は 100cm である。データは 10°ごとに 18 方向から撮影し、そのうちのいくつかを用いて
画像の再構成を行った。得られたデジタル画像のサイズ
は 1430 × 1722 pixel で空間解像度は 175 × 175 µ m/pixel である。データ収集のジオメトリを Fig.4 に示
す。Fig.5 には 3 方向の投影画像を示す。撮像方向によっ
て、模擬線源が明瞭に見える場合と見えない場合がある
ことがわかる。次に、この画像にローパスフィルタした
画像を、原画像から差し引くことで線源部分のコントラ
スト強調を行い、画像再構成のための投影データとした。
ローパスフィルタのカーネルは 5× 5 で、重みは全て 1/25である。Fig. 6は MAP-EM による再構成画像の3次元
表示である。使用したパラメータは、δ=10、β=200、反
復回数は 10 回である。RANDO ファントムの場合、投影
画像には骨や周囲の組織の影響で線源の再構成画像には
雑音がのるが、提案した方法ではその量はわずかで位置
情報を取得するための大きな妨げにはならない。
Fig. 2 RANDO phantom and source positions
Fig. 3 Data acquisition system
Fig. 4 Geometry of data acquisition system
RPO (right posterior oblique position) LPO (left posterior oblique position)
RANDO phantom
IP(imaging plate)
Rotatable table
LPO 60deg
LPO 30deg
0deg
RPO 60deg
RPO 30deg X-ray tube
X-ray
(a) LPO 0deg. (正面像)
(b) LPO 40drg.
(c) LPO 90deg.(側面像) Fig. 5 Projection images
(a) 18 views
(b) 7 views
(c) 6 views
(d) 5 views Fig. 6 Three-dimensional display of a reconstructed image
4. 考察とまとめ
前立腺は骨盤、大腿骨によって取り囲まれており、シ
ード線源のコントラストは周囲の骨のような高コントラ
スト臓器に大きく影響をうける。実験の結果は適切な投
影角を選ぶことにより模擬線源のコントラストを向上さ
せ、正確な線源の位置情報を得ることができることが明
らかになった。つまり、人体側面から得られた投影デー
タは体厚と骨格の関係で、線源のコントラストが極端に
低下するが、より前面側から撮影した画像は、これらの
影響が少ないので、こちら側のデータを採用することで
コントラストの改善を図り、再構成画像の S/N を向上さ
せることができる。実験において、18 投影から徐々に投
影数を減らしていき、18、7、6、5 の時の結果を Fig.6 に
表示したが、投影数 5 ではノイズが急激に増加した。線
源の中心座標の位置精度は 2pixel 程度である。現在のと
ころ、投影数 6、および 7 程度での再構成が有効であると
思われる。角度の選択は投影数 7 のとき (LPO 20, 40, 60 deg. RPO 20, 40, 60 deg.,0 deg)であり、6 では RPO60deg.を減らし、5 ではさらに LPO20deg.を減らした。
今後の課題としては従来の血管造影装置での臨床実験
や線源位置の抽出における閾値の最適化などがあげられ
る。また、ノイズの消去のしかたをうまく考え 5 投影で
も可能になるように工夫する必要もある. 参考文献 [1] H.H. Holm, J.F. Pedersen, H. Hansen, I. Stroyer
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キーワード. 前立腺癌、小線源治療、MAP-EM、シード線源
Summary.
Reconstruction of I-125 seed sources for prostate implantation
Yuki Noda*1 Yoshiyuki Nyui*2 Koichi Ogawa*1 *1 Graduate School of Eng., Hosei Univ., Tokyo, Japan
*2 Tokyo Metropolitan University of Health Sciences, Tokyo, Japan
Recently, permanent implantation of I-125 seeds into a prostate gland is performed for the treatment of a prostate cancer. In order to make an accurate treatment planning, we have to obtain seed positions accurately. The proposed method uses six X-ray films of a seed implanted prostate gland. With the help of a statistical image reconstruction method we could obtain the three dimensional seed positions correctly. The validity was verified by the phantom experiment.
Keywords. prostate cancer, brachytherapy, MAP-EM, seed source