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国立大学法人九州大学
財務部決算課
2011年10月1日
国立大学法人会計基準の特徴について
(会計基準版)
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国立大学法人会計基準は国立大学法人の特性を踏まえて、企業会計原則とは異なる次のような特徴があります。
・国立大学法人会計基準(以下「基準」という。)に従って処理
⇒ 企業会計原則に準拠しているが,一部の特徴的な会計処理が組み込まれている。
(主な具体例)
1.減価償却費に対応する収益が見込まれない場合
→ 特殊な減価償却(①見返勘定で損益均衡、②損益外計算) 「基準」第78, 84
2.運営費交付金の措置が明らかな場合
→ 退職給付引当金及び賞与引当金は非計上 「基準」第85,86
3.運営費交付金、授業料、使途特定寄附金など
→ 受領した際に負債計上、業務実施に従い収益化 「基準」第78,82
4.剰余金のうち、文部科学大臣の繰越承認を受けられた部分のみが目的積立金となる
→ 次年度以降一定の目的のための使用が可能 法人法第35条,参考「基準」第71
特性別に類型化すると次頁のとおり
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Ⅰ 独立行政法人と共通の特性(企業会計原則との相違点)
① 公共的な性格から利益の獲得が目的ではなく独立採算を前提とせず、国から財源措置がある
② 建物整備は国が決定し予算措置される等、大学単独の判断で意思決定が完結しない場合がある
③ 利益配当の獲得を目的として出資する資本主を制度上予定せず、利益が配当されることはない
A 運営費交付金債務
基準に従い収益化
B 費用、収益順に記載
C 資産見返勘定で均衡化
A 現物出資
B 施設費等
C 減価償却費損益外計算
A 原則的には損益均衡
B 剰余金の繰越承認を受けて、目的積立金となり、内部使用が可能
Ⅱ 独立行政法人とは異なる特性(独立行政法人会計基準との相違点)
① 教育・研究の実施 ③ 同種事務事業
(法人間における一定の統一的取扱い)
② 自己収入
(学生納付金、附属病院収入等)
B 目的別費用科目
ex.教育、研究、診療等 B 病院は対応収益があり、減価償却は費用計上
B セグメント情報開示
C 基礎となる資産科目
ex.図書、美術品・収蔵品
A 運営費交付金、授業料債務は原則期間進行基準で収益化 A 会計処理の統一
選択可能性の排除
A 授業料、寄附金の負債計上
C 固定性配列法
■ Ⅰ - ① ( A 、 C ) 、 ③ ( A ) 関連
① 公共的な性格から利益の獲得が目的ではなく独立採算を前提とせず、国から財源措置がある
▼経営成績ではなく運営状況を明らかにするための損益計算 ▼中期計画に沿って通常の運営を行った場合、運営費交付金等の財源措置が行われる業務についてはその範囲において損益が均衡するような損益計算の仕組み ● 運営費交付金は受領時に負債として計上し,基準に従い収益化 ● 資産見返勘定で均衡化(減価償却費と同額の収益を計上して均衡させる方法) ・ 資産取得時に運営費交付金債務から資産見返負債に振替 ・ 減価償却費が発生した際に,同額を収益化し,収支は均衡 (自己収入、借入金、外部資金間接経費は対象外、→附属病院は原則対象外)
1.減価償却費に対応する収益が見込まれない場合
→ 特殊な減価償却(①見返勘定で損益均衡)
「基準」第78
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● 資産見返勘定で均衡化(パターン例:10億円の機械器具,耐用年数5年)
・ 運営費交付金受領時 借方:現金及び預金(資産) 10 ⇒① 貸方:運営費交付金債務(負債)10 ⇒②
・ 資産取得時 借方:固定資産(資産)10 ⇒③ 貸方:現金及び預金(資産) 10 ⇒④ 借方:運営費交付金債務(負債) 10 ⇒⑤ 貸方:資産見返負債(負債) 10 ⇒⑥
・ 減価償却時 借方:減価償却費(費用) 2 ⇒⑦ 貸方:減価償却累計額(資産△) 2 ⇒⑧ 借方:資産見返負債(負債) 2 ⇒⑨ 貸方:資産見返戻入(収益) 2 ⇒⑩
借方(費用) 貸方(収益)
貸借対照表 (略:B/S) 損益計算書 (略:P/L)
借方(資産) 貸方(負債純資産)
1年目期末日
減価償却費
2
資産見返戻入
2
資産見返負債
8
固定資産
10 減価償却累計額
△2 (⑥-⑨)
(③)
(⑧) (⑦) (⑩)
プラスマイナス0
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・ 減価償却時 借方:減価償却費(費用) 2 ⇒⑦´ 貸方:減価償却累計額(資産△) 2 ⇒⑧ 借方:資産見返負債(負債) 2 ⇒⑨ 貸方:資産見返戻入(収益) 2 ⇒⑩ ´
5年目期末日
2年目~ 5年目 仕訳は毎年同じ
2年目期末日
借方(費用) 貸方(収益)
貸借対照表 (略:B/S) 損益計算書 (略:P/L)
借方(資産) 貸方(負債純資産)
減価償却費
2
資産見返戻入
2
資産見返負債
6
固定資産
10 減価償却累計額
△4 (⑥-⑨累計)
(③)
(⑧累計) (⑦´) (⑩ ´)
減価償却費
2
資産見返戻入
2
資産見返負債
0
固定資産
10 減価償却累計額
△10 (⑥-⑨累計)
(③)
(⑧累計) (⑦´)
3年目~ 4年目 省略
※正確には残存価格1円
(⑩ ´)
■ Ⅰ - ② ( B 、 C ) 関連
② 建物整備は国が決定し予算措置される等、大学単独の判断で意思決定が完結しない場合がある
▼ 現物出資・施設費で取得した資産 ⇒減価部分は運営費交付金の算定対象外 更に,資産の更新は、国から必要な措置あり ⇒減価償却に相当する額は資本価値の減少と考えるべき ⇒損益計算上の費用には計上せず、資本剰余金を減額
(その減価に対応すべき収益の獲得が予定されていないものと して特定された資産に限る。 →基本的には病院は対象外)
● 損益外の減価償却処理(費用も収益も発生させない方法) ・ 資産取得時に預り施設費から資本剰余金に振替 ・ 減価償却時に相当額を資本剰余金から減額(損益外減価償却費累計額)
1.減価償却費に対応する収益が見込まれない場合
→ 特殊な減価償却(②損益外計算)
「基準」第84
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● 損益外の減価償却処理(パターン例: 30億円の建物,耐用年数30年)
借方(費用) 貸方(収益)
貸借対照表 (略:B/S) 損益計算書 (略:P/L)
借方(資産) 貸方(負債純資産)
資本剰余金
30
固定資産
30 減価償却累計額
△1
(③)
(⑧)
(⑥) 損益外減価償却累計額
△1 (⑦)
な し
・ 預り施設費受領時 借方:現金及び預金(資産) 30 ⇒① 貸方:預り施設費(負債) 30 ⇒②
・ 資産取得時 借方:固定資産(資産)30 ⇒③ 貸方:現金及び預金(資産) 30 ⇒④ 借方:預り施設費(負債) 30 ⇒⑤ 貸方:資本剰余金(純資産) 30 ⇒⑥
・ 減価償却時 借方:損益外減価償却累計額1 ⇒⑦ 貸方:減価償却累計額(資産△)1 ⇒⑧ (純資産△)
1年目期末日
プラスマイナス0
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30年目期末日
2年目~ 30年目 仕訳は毎年同じ
2年目期末日
借方(費用) 貸方(収益)
貸借対照表 (略:B/S) 損益計算書 (略:P/L)
借方(資産) 貸方(負債純資産)
固定資産
30 減価償却累計額
△2
(③)
(⑧累計)
固定資産
30 減価償却累計額
△30
(③)
(⑧累計)
・ 減価償却時 借方:損益外減価償却累計額1 ⇒⑦ 貸方:減価償却累計額(資産△)1 ⇒⑧ (純資産△)
な し
な し
資本剰余金
30 (⑥) 損益外減価償却累計額
△30 (⑦累計)
資本剰余金
30 (⑥) 損益外減価償却累計額
△2 (⑦累計)
3年目~ 29年目 省略
※正確には残存価格1円
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2.運営費交付金の措置が明らかな場合
→ 退職給付引当金及び賞与引当金は非計上
「基準」第85 賞与引当金に係る会計処理
1. 賞与のうち、運営費交付金に基づく収益以外の収益によってその支払財源が手当されることが予定されている部分については、「第17 引当金」により賞与引当金を計上する。
2. 賞与に充てるべき財源措置が翌期以降の運営費交付金により行なわれることが、中期計画等で明らかにされている場合には、賞与引当金を計上しない。(以下略)
「基準」第86 退職給付に係る会計処理
1. 退職給付債務のうち、運営費交付金に基づく収益以外の収益によってその支払財源が手
当されることが予定されている部分については、「第35 退職給付引当金の計上方法」により退職給付引当金を計上する。
2. 退職給付債務について、次の要件に該当する場合には退職給付引当金は計上しない。
(中略) (1) 退職一時金(役員及び教職員の退職時に支払われる退職手当をいう。)については、
退職一時金に充てるべき財源措置が運営費交付金により行われることが、例えば中期計画等で明らかにされている場合 (以下略)
引当金とは? (「基準」第17 ) 1. 将来の支出の増加又は将来の収入の減少であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当該金額を引当金として流動負債又は固定負債に計上するとともに、当期の負担に帰すべき金額を費用に計上する。
「基準」第78 運営費交付金等の会計処理
1. 国立大学法人等が運営費交付金を受領したときは、相当額を運営費交付金債務として整理
するものとする。運営費交付金債務は、流動負債に属するものとする。また、当該年度に係る授業料を受領したときは授業料債務として、運営費交付金債務同様に整理する。
2. 運営費交付金債務及び授業料債務は、中期目標の期間中は原則として業務の進行が期間
の進行に対応するものとして収益化を行うものとする。なお、他の方法により収益化することがより適当であると認められる場合には、当該方法により収益化することができる。
3.運営費交付金、授業料、使途特定寄附金など
→ 受領した際に負債計上、業務実施に従い収益化
「基準」第82 寄附金の会計処理
国立大学法人等が受領した寄附金については、次により処理するものとする。
(2)寄附者がその使途を特定した場合又は寄附者が使途を特定していなくとも国立大学法人等が
使用に先立ってあらかじめ計画的に使途を特定した場合において、寄附金を受領した時点では寄附金債務として負債に計上し、当該使途に充てるための費用が発生した時点で当該費用に相当する額を寄附金債務から収益に振り替えなければならない。
○運営費交付金債務の収益化の基準 (国立大学法人会計基準注解「以下 <注> という。」) <注55>
期間進行基準 : 時の経過に伴い業務が実施されたとみなして運営費交付金債務を収益化する基準
業務達成基準 : 業務の実施に伴い運営費交付金債務を収益化する基準(例:プロジェクト研究) 費用進行基準 : 特定の支出のために運営費交付金が措置されている場合に、支出額に応じて
運営費交付金債務を収益化する基準(例:退職給付)
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国立大学法人法第35条による準用: 独立行政法人通則法第44条(利益及び損失の処理) <読み替え後>
国立大学法人は,毎事業年度,損益計算において利益を生じたときは,前事業年度から繰り越した損失をうめ,なお残余があるときは,その残余の額は,積立金として整理しなければならない。ただし,第3項の規定により同項の使途に充てる場合は,この限りでない。
2 国立大学法人は,毎事業年度,損益計算において損失を生じたときは,前項の規定による積立金を減額して整理し,なお不足があるときは,その不足額は,繰越欠損金として整理しなければならない。
3 国立大学法人は,第1項に規定する残余があるときは,文部科学大臣の承認を受けて,その残余の額の全部又は一部を国立大学法人法第31条第1項の認可を受けた中期計画の同条第2項第6号の剰余金の使途に充てることができる。
4.剰余金のうち、文部科学大臣の繰越承認を受けられた部分のみが目的積立金となる
→ 次年度以降一定の目的のための使用が可能
損益計算上の利益(剰余金)があれば、 →
① 前年度からの欠損を補てんし、
② 残額があれば原則、積立金として赤字の補てんにのみ使用可能となるが、
③ 文部科学大臣の承認を受ければ、中期計画に定める剰余金の使途の範囲内において、国立大学法人の裁量により、例えば教育研究の質の向上などに充てることが可能
目的積立金を使用して費用が発生した場合には、その同額を取り崩し、損益計算書に目的積立金取崩額として振り替える。目的積立金で固定資産を取得した場合には、資本剰余金に振り替える。
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