『筆使いと字形を知ろう「元気」』 ·...
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光村チャンネル「わたしの授業」
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4年 『筆使いと字形を知ろう「元気」』
―のびのびと力強く書きぞめをしよう「元気な子」―
設定の趣旨
書写の学習は、従来、手習いといわれるように、書塾で行なわれるような個人的な指導(添削)と
時間をかけての練習が中心であった。しかし、学校においては、週に1時間という限られた学習時間
の中で、しかも、道具の準備や後片付けに時間を割かれるため、個々に対応すること(添削の時間の
確保)が困難である。また、クラスの実態としては、書塾などによる体験格差も大きく、意欲や書写
力の差も歴然としていることが多い。そのため、コンクールや書き初め大会などの行事に合わせて、
集中的に指導する教員も見られるのが現状であり、ともすれば、作品主義に落ち込み、書塾の指導と
変わらなくなってしまうこともある。毛筆書写で学習した文字の基本を硬筆にも生かし、日常的に使
えるようにするのが、学校での書写学習のねらいである。一斉指導の中でどのようにそうしたねらい
を達成していくのか、有効な指導法を探りたい。 この実践では、「筆使いと字形の達人になろう」と児童に投げかけ、一斉学習の中でパソコン・実物
投影機・プロジェクター・ビデオカメラなどの視聴覚機器を活用し、基本点画の筆使いと字形の整え
方をしっかり理解させ、のびのびと力強く書き初めをすることをねらいとした。
【単元について】 第 4 学年における書写学習では、第 3 学年の基本的な点画の筆使いを一層充実させるとともに、画
の長さや方向、組み立て方に気をつけながら、字形を正しく整えて書くことが求められている。そこ
で、「筆使いと字形の達人になろう」と投げかけ、児童の意識化を図った。 4年生では、はじめに「3年生での学習(光)」をふり返り、3 年生で学習してきたこと(字形を整
えて書くこと、文字の大きさや配列に注意をすること、筆使いや文字の組み立て方に注意すること)
を更に深めることを確認した。そして、これまでに「点画の接し方交わり方(口、田、虫)」「画間を
知ろう(自由、里)」「筆順と字形の関係(左右)」で字形の整え方や組み立て方を、続いて「画の長さ
と方向(麦、力走)」では「横画」を少し右上がりに書くことや、ニつの「左払い」の方向に注意して
書くことがポイントであることを学んだ。 本単元では、更に筆使いと字形を確かめて、のびのびと力強く書くことが、大切なポイントとなる
ことを学ぶ。また、「前単元(ゆず)」で学習した平仮名の筆使い、文字の中心にも気をつけて書くこ
とが大切であることを学ばせたい。 中でも本題材の「元気」の字形と筆使い(そり・曲がり・はね)「な」の筆使い(結び)と字の中心
と大きさは、特に大切なポイントであることをしっかり理解させたい。
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【児童の実態】 本学級 4 年生(21名)は、約 8 割の児童が「書写の授業が楽しい」と感じている。書塾は近くに
なく、週1回の公民館での習字教室に3名の児童が通っている。準備や片づけの煩雑さから毛筆を苦
手と感じる児童も見られるが、書写学習への意欲は高く、コンクールでの入賞も多い。「楽しい」と答
えた児童の多くは、筆使いがうまくなったこと、字形を整えて書くことで字が美しくなることに気づ
いたことをその理由として挙げている。 しかし、日記や連絡帳、作文など日常に目を向けると、書写の時間で時間を十分とっているときは
丁寧に書けているが、「面倒だ。」「早く終わらせたい。」という意識からか、学習したことが生かされ
ていない児童が、特に男子に多い。
指導の目標
○筆使い、字形の整え方、字配りについて進んで調べようとする。 【関心・意欲・態度】
○筆使い、字形のいろいろな要素について既習事項を元に理解することができる。 【知識・理解】
○試し書きを見て、自分の課題を見つけることができる。 【知識・理解】
○課題解決のために自分なりに、練習プリントや練習の場(水書・ビデオ・パソコン)を選び、個人
やペアで練習することができる。 【技能】
○字配りに注意して毛筆でかきぞめ用紙に「元気な子」を書くことができる。 【技能】
指導の計画(3時間)
次 時 学習活動 指導上の留意点と評価規準(○) 1 1 ・筆使いの基本、字形の整え方について既
習事項を振り返る。 ・試し書きをし、手本と比べて自分の課題
を設定する。 ・実物投影機で範示を見る。 ・課題解決のためにプリントを使って練習
したり、字形の透明シートで確かめた
り、ビデオ、パソコンで動画を確認し練
習に取り組む。(元気) ・試し書きと練習後の作品を見比べ、自分
なりに評価して次の時間の課題を設定
する。
・基本点画の筆使いを動画で見せたり、字形に
ついて既習の学習を想起させたりして課題
を立てさせる。 ・課題を意識させるため、試し書きと手本を見
比べ、直したい事柄を赤ペンで試し書きに書
き込む。 ○筆使い、字形の整え方について留意事項を調
べようとしている。 【関心・意欲・態度】 ○筆使い、字形の整え方を理解している。 【知識・理解】 ○筆使い、字形に注意して毛筆で「元気」を書
いている。 【技能】
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2 ・自分の課題を確認して練習に取り組む。 ・書き初めに向けて平仮名「な」と「子」
の練習をする。 ・「元気な子」を書き初め用紙に練習する。 ・まとめ書きの中から作品を選び、自己評
価を書いて提出する。 ・次時は、書き初めの作品を仕上げること
を知る。
・自分の課題は何なのかを意識しながら練習さ
せる。 ・「な」の筆使い、字の中心と大きさに注意し
て練習させる。 ○「元気な子」の字配りについて理解している。
【理解】 ○前時に書いた作品とまとめ書きを見比べて
よくなったところや次のめあてを確認して
いる。 【関心・意欲・態度】 ○練習の場や用紙を適切に判断し、まとめ書き
の作品を書いている。 【技能】
2 3 ・課題を意識しながら「元気な子」の練習
をする。 ・ていねいに名前の練習をする。 ・学校の書きぞめ大会に向けて意欲を高め
る。
○1・2時の学習を振り返り、自分の課題を意
識しながら練習している。 【関心・意欲・態度】 ○字配り、文字の中心、名前の位置に注意して
書いている。 【技能】
第3次 2時間 学校行事「新春書きぞめ大会」
【第1時の学習活動】 ○筆使いの基本、字形の整え方について既習事項を振り返る。 ○試し書きをし、手本と比べて自分の課題を設定する。 ○課題を意識化するため、試し書きと手本を見比べ、試し書きで直したい部分に赤ペンで書き込みを
する。 ○実物投影機で範示を見る。 ○課題解決のためにプリントを使って練習したり、字形の透明シートで確かめたり、ビデオ、パソコ
ンで動画を確認したりしながら練習に取り組む。(元気) ○「元」の4画目「曲がり」の筆使いと、「気」の4画目「そり」の筆使いの違いを確認するため、朱
墨を筆の先に付けて書いてみる。 【課題別の場の設定】 ・「曲がり」「そり」の確認の場 ・透明シートで字形を確認する場 ・ビデオ、パソコンで動画を見る場
○まとめ書きをする。名前を書いて提出する。 ○試し書きと練習後の作品を見比べ、自分なりに評価して次の時間の課題を設定する。
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【第2時の学習活動】 ○書き初めに向けて平仮名「な」と「子」の練習をする。 ○ビデオで「な」と「子」の範示をみる。特に、「な」の筆使い、筆脈に注意をさせる。 ○平仮名「な」の成り立ちについて知る。「奈」が草書から平仮名になった経緯を知り、筆脈の大切さ
を理解する。 ○練習プリントを使い、実物投影機の範示を見ながら一斉に書いてみる。 ○それぞれの場で練習する。 【課題別の場の設定】 ・「な」の筆脈確認の場 ・透明シートで字形を確認する場 ・ビデオ、パソコンで動画を見る場
○「元気な子」を書き初め用紙に練習させる。 ○字配りについて考える。平仮名交じりのときの文字の大きさを思い出す。 ○「な」を少し小さく書くこと、そのために用紙を工夫して折って書くことを知らせる。 ○まとめ書きをして、作品の中でよいものを選び、自己評価を書いて提出する。 ○次時は、書き初めの作品を仕上げることを知る。 【第3時の学習活動】 ○課題を意識しながら「元気な子」の練習をする。 ○ていねいに名前の練習をする。 ○清書を書いて、自己評価をし、提出する。 ○学校の書き初め大会について説明を聞き、意欲を高める。
指導のポイント
○書写の基礎・基本を身につけるために
(実態把握から)児童のノートや作文から集字してみると、「元」も「気」も、字形が裾広がり(台
形)にならず□形に、「な」は三画目から四画目への筆脈が途切れ、最後の「結び」も意識されてい
ないものが多い。「な」については、平仮名の成り立ち「奈~な」に触れながら理解させたい。また、
「元気」の文字の中心も気づきにくく、筆使いも「曲がり」と「そり」で筆をくるくると回して書
く児童もいることが予想されるため、実際に実物投影機などで範示したい。 導入では、集字した「元気な子」を提示しながら、だれの字かなと当てさせたりするなど、楽し
い雰囲気の中で、本時の重点課題である字形や筆使いへの意識を高めていきたい。 ○自ら学ぶ力をつけるために
題材と向き合い、自分で課題を見つけ、解決する力をつけるため、試書と教材文字とを比べて直
したいところを試書に朱筆させ、自分の課題を意識化する経験を積ませたい。また、練習の過程で
も常に自己評価し、課題を意識した練習に取り組ませたい。そのため、チェックシート(自作)を
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活用したい。また、課題解決の場では、練習方法や練習用紙を適切に選択できるように助言をし、
見通しをもって練習に取り組めるようにしたい。 ○学び合う態度を育てるために
練習過程での交流を大切にし、パソコンを利用して課題を確かめたりできるようにし、そのコー
ナーでお互いが筆順や画の長さ・接し方を確かめながら学習するようにさせたい。まとめ書きの場
面でも一斉学習の中で交流し、お互いの伸びを認め合うことによって学び合う態度を育てていきた
い。 ○配慮を要する児童への支援(知的障害児特別支援学級 児童 1名への対応)
意欲的に学習できる時間を少しでも持続できるよう、個別の声かけや全体での賞賛の言葉を多く
していきたい。特に、自分の課題を見つけたり、課題解決の方法を選択したりする場面でのつまず
きが予想されるため、このような場面でのかかわりを大切にしたい。
後記
毛筆書写学習において、点画の基本的な筆使いについては、できるだけ机間指導をして児童の筆を
いっしょに持って指導するよう努めているが、時間的に限界があるため、最近は、パソコン・実物投
影機・プロジェクター・ビデオカメラなどの視聴覚機器を活用した一斉学習で意欲化を図るとともに
字形や筆順の原則をしっかり身につけさせるようにしている。一斉指導においては、ビデオカメラ、
実物投影機は有効である。自作教材(基本点画・字形)を動画で見せたり、実物投影機で実際に範示
し、一斉に書いたりしている。実物投影機は、児童の様子を見ながら動画を提示できるので一斉指導
には特に有効である。最近は、録画できる機能もついているので、今書いたものが繰り返し見られる
利点もある。実際に範示できない場合は、ほとんどの教科書会社がCDでデジタル教材を配布・販売
しているので活用すべきである。 また、今後は、学習時間の確保のためにも、毛筆書写で学習したことを日常の生活に生かすために
も、総合的な学習の時間、特別活動などと組み合わせて総合的な単元構想の中での学習展開を図る必
要がある。なお、この総合的な大単元構想については、平成19年度全国書写書道教育研究大会(香
川大会)の高松市の取り組みが参考になる。
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資料
児童の試し書き 硬筆「元気な子」 児童の試し書き 「元気な子」
実物投影機 パソコン ビデオ プロジェクターは私の必需品
空き教室で学習しているため筆を洗って乾かしている
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曲がりとそりの筆使いを意識した児童
字形を意識した児童
字形を意識した児童
字形・筆使いを意識した児童
試し書き まとめ書き
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透明シート 練習プリント
筆使いのよい児童をビデオで撮影してみんなで見る