基礎看護学実習Ⅰ実習指導案 · 基礎看護学実習Ⅰ実習指導案...

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基礎看護学実習Ⅰ実習指導案 ~がんばれ大鳴門!金メダルを目指して!!!~ 若山 聡美 今川 洋子 江戸 かおり ○安東 彩 佐々木 佳代 下原 佐知子 基礎看護学講師 木野 綾子 Ⅰ.はじめに 基礎看護学実習Ⅰは、学生にとって初めての臨地実習であり、不安や期待が大きい。学内で学んだ 知識・技術・態度を実際の看護場面で統合させることにより、看護の基礎能力を養うための実習であ る。失敗や気付き、喜びが看護への関心、実習への意欲に作用し、看護観の形成にも大きな影響を与 えると考える。そのため、指導者は学生のレディネスや個別性を考慮し、スムーズに実習に臨める環 境を整える必要がある。学生の心理的な面をサポートしながら目標を達成し、看護の魅力を感じ学習 意欲を高め今後の臨地実習につながるように実習指導案を作成した。 Ⅱ.仮説校の設定 学校名:徳島県立よしのがわ看護専門学校 3 年課程 1 学年 40 1.教育理念 県民に安全で安心な保健医療サービスを提供できるよう幅広い能力と豊かな人間性を形成し、 看護の発展に貢献できる人材育成を目指します。 2.教育目的 生命の尊さを理解し、看護の専門職として必要な知識・技術・態度の教授に努め、地域社会に 貢献できる看護の実践者を育成します。 3.教育目標 1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として理解する能力を養う。 2)あらゆる健康状態や生活の場に応じた看護を科学的根拠に基づき実践できる基礎的能力を養う。 3)保健・医療・福祉チームの一員としての看護の役割を理解し、連携・協働できる能力を養う。 4)多様化する価値観を認識し、専門職として倫理に基づいた看護を実践することができる。 5)専門職として生涯にわたって継続的に自己研鑽できる姿勢を培う。 4.臨地実習の目的・目標 1)目的 人間を統合された存在として捉え、学習した知識・技術・態度を実践を通して看護場面に適応 する能力を養う。 2)目標 (1)個別性に応じた看護過程が展開できる。 (2)看護を科学的に実践するために必要な能力を養う。 (3)保健・医療・福祉チームの一員として自らの果たす役割を理解する。 (4)看護実践を通して自らの看護観を培う。 (5)看護専門職としての責任を自覚し、倫理観に基づいて行動できる能力を養う。

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基礎看護学実習Ⅰ実習指導案

~がんばれ大鳴門!金メダルを目指して!!!~

若山 聡美 今川 洋子 江戸 かおり

○安東 彩 佐々木 佳代 下原 佐知子

基礎看護学講師 木野 綾子

Ⅰ.はじめに

基礎看護学実習Ⅰは、学生にとって初めての臨地実習であり、不安や期待が大きい。学内で学んだ

知識・技術・態度を実際の看護場面で統合させることにより、看護の基礎能力を養うための実習であ

る。失敗や気付き、喜びが看護への関心、実習への意欲に作用し、看護観の形成にも大きな影響を与

えると考える。そのため、指導者は学生のレディネスや個別性を考慮し、スムーズに実習に臨める環

境を整える必要がある。学生の心理的な面をサポートしながら目標を達成し、看護の魅力を感じ学習

意欲を高め今後の臨地実習につながるように実習指導案を作成した。

Ⅱ.仮説校の設定

学校名:徳島県立よしのがわ看護専門学校 3 年課程 1 学年 40 名

1.教育理念

県民に安全で安心な保健医療サービスを提供できるよう幅広い能力と豊かな人間性を形成し、

看護の発展に貢献できる人材育成を目指します。

2.教育目的

生命の尊さを理解し、看護の専門職として必要な知識・技術・態度の教授に努め、地域社会に

貢献できる看護の実践者を育成します。

3.教育目標

1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として理解する能力を養う。

2) あらゆる健康状態や生活の場に応じた看護を科学的根拠に基づき実践できる基礎的能力を養う。

3)保健・医療・福祉チームの一員としての看護の役割を理解し、連携・協働できる能力を養う。

4)多様化する価値観を認識し、専門職として倫理に基づいた看護を実践することができる。

5)専門職として生涯にわたって継続的に自己研鑽できる姿勢を培う。

4.臨地実習の目的・目標

1)目的

人間を統合された存在として捉え、学習した知識・技術・態度を実践を通して看護場面に適応

する能力を養う。

2)目標

(1)個別性に応じた看護過程が展開できる。

(2)看護を科学的に実践するために必要な能力を養う。

(3)保健・医療・福祉チームの一員として自らの果たす役割を理解する。

(4)看護実践を通して自らの看護観を培う。

(5)看護専門職としての責任を自覚し、倫理観に基づいて行動できる能力を養う。

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5.基礎看護学実習Ⅰの目的・目標

1)目的

受け持ち患者の基本的ニードを理解して日常生活援助ができる。

2)目標

(1)受け持ち患者およびその家族とコミュニケーションを図ることができる。

(2)受け持ち患者が入院することによって起こる非日常性が理解できる。

(3)受け持ち患者のニードを把握できる。

(4)受け持ち患者のバイタルサインが測定できる。

(5)受け持ち患者の日常生活援助(清潔・排泄・食事)が指導者とともに実施できる。

(6)体験を通して看護の魅力を発見できる。

Ⅲ.実習指導計画

1.科目:基礎看護学実習Ⅰ

2.実習単位:1 単位 45 時間(うち 9 月に見学実習 10 時間終了している)

3.学習進度:基礎分野、専門基礎分野、看護学概論、基礎看護技術をすべて終了している

4.実習期間:平成 25 年 2 月 19 日(水)~2 月 25 日(火)の 5 日間 土日は除く

5.実習時間:8 時 30 分~12 時 30 分(12 時 30 分~13 時 30 分休憩)

13 時 30 分~16 時 30 分(15 時 30 分~16 時 30 分カンファレンス・記録)

6.対象学生

学生グループメンバー 1年生 1グループ 4名

学生名 年齢 性別 性格・背景

大鳴門オ オ ナ ル ト

橋子キョウコ

19 歳 女 素直。内向的。

成績は普通。

祖イ

谷ヤ

すだち 19 歳 女 積極的。コミュニケーションとるのは得意。

成績はやや劣っている。

穴吹アナブキ

鮎男ア ユ オ

19 歳 男 まじめで誠実。周囲がみえず突っ走るタイプ。

成績は優秀。

蒲生ガ モ ウ

田ダ

岬ミサキ

25 歳 女 リーダー的存在。社会経験あり。世話好きで姉御肌。

成績は普通。

7.指導対象学生:大鳴門橋子の背景

家族は両親と兄の 4 人暮らし。趣味はお菓子作り。時々グループメンバーにお菓子を振る舞っ

ている。遅刻・欠席はない。志望動機は看護師の資格が欲しかったから。

8.実習病院概要

1)実習場所 徳島県立よしのがわ病院 脳神経外科病棟 40 床

2)看護方式 チームナーシング+受け持ち制

3)指導体制 看護師長、副師長、実習指導者 2 名(ただし、実習指導者は交代勤務のため

不在の日もある)日々の指導は患者の担当者が行う

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4)週間予定

月 入浴介助(女性) 回診・処置/毎日

清拭/毎日

リハビリ/月~金

入浴/毎日(9~17 時)

火 シーツ交換・リハビリカンファレンス

水 手術日

木 入浴介助(男性)

金 退院支援カンファレンス・NST

5)病棟日課

8:30 申し送り

9:00 検温 情報収集 点滴

10:00 看護ケア(清拭 処置 回診)

12:00 昼食(食事介助 服薬介助)

13:00 病棟カンファレンス

14:00 検温 看護ケア

16:00 申し送り

6)受け持ち患者設定

氏名:阿波ア ワ

オドリさん 78 歳 女性 身長 148cm 体重 55kg BMI25

疾患名:ラクナ梗塞 既往歴:高血圧 糖尿病(内服治療中)

家族構成:夫 80 歳との二人暮らし 近所に娘家族が住んでいる

性格:明るくて話好き

職業:主婦

嗜好:喫煙/20 歳頃より毎日 10 本 アルコール/毎日ビール 350ml

趣味:阿波踊り

入院までの経過:日課の阿波踊りの練習をしようとしたところ、右上下肢の脱力感としびれを感

じる。様子をみていたが症状改善しないため同日夫に連れられ受診。頭部 CT

と MRI で ラクナ梗塞と診断され入院となった。

治療経過:入院後 1 週間点滴治療を行い、現在点滴は終了し内服治療中(プラビックス、ノルバ

スク、ベイスン、ガスター)

現在の状況:入院 9 日目 脳梗塞の後遺症は右上下肢の麻痺あり(3/5MMT) 右利き

言語障害なし 退院に向けてリハビリ中

血圧、血糖は内服薬にてコントロール良好

ADL:食事/スプーンを使い左手で摂取 食べこぼしあり

総義歯 嚥下障害なし セッティング・配下膳必要 糖尿病食

更衣/一部介助

移動/車椅子への移乗・移動ともに介助必要

排泄/介助でポータブルトイレ使用

清潔/一部介助で清拭(毎日)、月曜日は入浴介助(シャワー浴)

環境/4 人部屋 同室者との関係は良好

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Ⅳ.指導方針

1.教材観

基礎看護学実習Ⅰは、専門分野実習の基礎と位置づけられ、各看護学の実習に先だって行われる

初めての実習である。基礎分野、専門基礎分野、看護学概論、基礎看護技術が終了した1学年の後

期に、見学実習を終え初めての受け持ち患者に対し、援助を行う実習となる。見学実習では、患者

の入院環境や、看護・治療の実際を見学し、基礎看護学実習Ⅰの行動について学生がイメージでき

るようにした。同時に、入院患者との会話をする場面を設定した。

本実習は5日間という短い期間であるが、学内で学んだ看護技術をもとに、患者やその家族と会

話をするような対人関係の技術や、一人の受け持ち患者を通して患者のニードを把握し、必要に応

じた日常生活援助技術が経験できることを目指す。

また、行った看護に対する患者の反応から看護が楽しい、看護師になりたいという気持ちが高ま

ることを願っている。

本実習の目的・目標を達成するために、受け持ち患者の選定に以下を考慮した。

1)初めての実習なので受け持ち患者を同性とする。

2)言語的コミュニケーションがとりやすい。

3)運動機能障害があるが、健康レベルは回復期で病態的に複雑ではない。

4)日常生活において介助が必要である。

以上のことから同意の得られた阿波さんを受け持ち患者とした。

2.学生観

近年の若者は、核家族化により他世代との交流が減少していることや、パソコンなどの普及によ

り、相手の気持ちに共感したり、自己の心理を伝える事が不得手である。

本学生(大鳴門橋子)は、もとより内向的な性格で、他者とのコミュニケーションには少し不安

がある。また、親が先回りして身の回りのことを行っており、自分で行う機会や体験も少ない。そ

のような背景が看護技術の能力にそのまま影響すると考えられる。

学校では成績は普通で、学内演習はまじめに取り組んでいた。見学実習では、かなり緊張し、患

者や看護師とコミュニケーションがあまり図れていなかった。

グループのチームワークは良好である。

3.指導観

本実習は初めての実習であり、看護師を目指す学生にとって看護を体験する初めての機会である。

看護の楽しさや喜びを体験し、看護への関心を持たせる大切な時期である。同時に、今後の学習へ

の取り組み姿勢にも影響を及ぼす。学内で学んだ看護技術をもとに、患者やその家族と会話をする

ような対人関係の技術や、一人の受け持ち患者を通して患者のニードを把握し、必要に応じた日常

生活援助技術が経験できることを目指す。また学生に対して看護師のモデルとなれるように指導者

としても常に努力をする。

今回の実習では初めての患者を受け持ち、学生の緊張度も高く不安が強い。そのため病棟に馴染

めるよう学生への声掛けや緊張をほぐすような笑顔、スタッフへ学生を紹介し、スタッフへの橋渡

しや協力体制を作るなど学生を迎える雰囲気作りが必要である。そのことが不安を和らげ、スムー

ズに実習に臨めるよう指導者が環境を整えることにつながると考える。

本実習の指導にあたり留意したいことは次の通りである。

1)受け持ち患者とのコミュニケーションがスムーズに図れるように、必要に応じてきっかけ作

りなどの助言・指導をする。

2)受け持ち患者の情報収集をし、ニードが把握できているか記録物で確認・指導する。

3)受け持ち患者に必要な看護ケアの手順を事前に学習してくるよう指導する。

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4)日常生活援助は、指導者と共に実施させる。

5)受け持ち患者の反応・変化を学生とともに喜び、共感する姿勢を示し、看護に魅力を感じと

れるように働きかける。

Ⅴ.実習指導計画

1.週案

指導目標 指導内容(学習内容) 指導方法・留意点

毎日

1日目

1.実習の場に応じ

た服装、身だしな

み、挨拶ができる

1.生活の場として

の病棟の特徴が理

解できる

1)学校で定められた看護衣

2)看護衣・靴は清潔なもの

3)腕時計やアクセサリーは外す

4)爪は短く切り滑らか

5)化粧は薄化粧

6)髪の毛は襟につかない長さで、長い場

合は束ねる

7)頭髪の色は規定の範囲

8)男性はひげを剃る

9)元気な声で挨拶

10)自己紹介(初日のみ)

病棟の特徴を踏まえたオリエンテーションを

する

1)自己紹介

2)受け持ち患者紹介

3)病棟スタッフの紹介

4)医師、薬剤師、理学療法士、作業療法

士、言語聴覚士など他職種の紹介

5)避難経路・災害時の対策

6)病棟・病室の構造・設備・特徴・物品の

位置

7)入院患者の特徴(病名・症状・治療・

処置)

8)病棟の週間予定・日課

9)電子カルテの見方

10)報告の仕方

11)感染防止の必要性(スタンダードプリ

コーション・医療廃棄物の処理方法)

12)ナースコールの取り扱い

13)個人情報保護

・実習の場に応じた身だしな

みができていない場合は指

導する

・病棟内を学生と共に見学し

説明する

・学生とともに受け持ち患者

のもとへ行き、紹介を行い同

室者にも挨拶する

・学生の緊張に対してスタッ

フ全員が学生を迎える気持

ちで温かい雰囲気を作る

・学生の理解を確認しながら

説明する

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2~4日目

5日目

2.受け持ち患者の

全体像が把握でき

1.看護の基本技術

が実施できる

2.受け持ち患者の

状態に応じた方法

で日常生活の援助

が実施できる

1.リハビリカンファ

レンスに参加できる

2.実習の学びを振

り返り、自己評価が

できる

1)患者を理解するために情報収集する

(カルテ、観察)

2)疾患の理解

3)現在の症状・治療・経過

4)精神的・社会的特徴

5)発達課題

6)1 日の生活リズム

7)入院前の生活

1)バイタルサイン測定の見学

2)バイタルサインの測定・報告

3)看護物品の正しい取り扱い

4)安全、感染予防について理解

1)環境の調整

2)清潔の援助

・入浴

・清拭

・陰部洗浄

・更衣

・洗髪

・手浴

・足浴

・口腔ケア

3)食事の援助

4)排泄の援助

・ポータブルトイレ

・トイレ

5)活動と休息の援助

6)シーツ交換

1)それぞれの職種が専門性を発揮して協

働でしていることを気づかせる

1)カンファレンスは学生が主体的になって

運営できる

2)他の学生と体験を共有する

・個人情報の取り扱いについ

て説明する

・カルテからの情報収集の方

法を指導する

・コミュニケーションを用いた

情報収集の方法を指導する

・事前学習を確認する

・バイタルサイン測定時の留

意点について発問する

・安全安楽にバイタルサイン

測定ができているか確認す

・受け持ち患者の環境整備

の注意点について説明する

・受け持ち患者に合った援

助方法を計画し、事前学習

ができているか確認する

・実習当日の患者の状態に

合わせ、実習内容を調整す

・受け持ち患者の安全・安

楽・自立を目指し、日常生活

の援助を指導者と実施する

・学生の達成度に応じて一

人でできるように支援する

・プライバシーに配慮されて

いるか確認する

・使用物品の後片付けがで

きているか確認する

・学生が司会・書記ができる

よう配慮する

・学生に実習を振り返らせ、

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3)看護の魅力を自分の言葉で表現でき

4)実習の自己評価ができる

5)基礎実習Ⅱに向けて今回の学んだこと

をどのように活かしていきたいか、今後

の課題を明らかにできる

6)記録物の期限を守る

困ったことや喜びを問いかけ

・活発な意見交換ができるよ

うな雰囲気作りをする

2.日案(2 月 20 日 第 2 日目)

学習目標

1)受け持ち患者とコミュニケーションがとれる。

2)バイタルサインの測定を一人で実施し、報告できる。

3)指導者とともに清拭・更衣・洗髪介助ができる。

4)食事場面を観察し、明日実践する看護について考えることができる。

5)受け持ち患者のニードに基づいて必要な日常生活援助を列挙することができる。

6)受け持ち患者に必要な看護の実際を見学し、個別性に気づくことができる。

時間 行動計画 指導内容 指導方法・留意点

8:30

9:00

申し送り

1 日の行動計画を発

環境整備しながら

コミュニケーショ

ンを図る

1)申し送りの意味、聞く態度

2)申し送りの内容から現在の受け持

ち患者の状態を把握

スタッフの前で大きな声ではっきりと

行動計画を発表

1)安全・安楽・清潔な環境整備の注

意点

・ベッドメーキング

・ベッド柵の位置、ベッドの高さ

・床頭台・オーバーテーブルの位

・履物の位置

・ナースコールの位置

・ポータブルトイレの位置

2)コミュニケーション

・言葉づかい

・声の大きさ

・話しかける姿勢・態度

・傾聴する姿勢・態度

・分かりやすい言葉

申し送りから現在の受

け持ち患者の状態を把

握しているか確認する

行動計画が大きな声で

はっきりと発表できて

いるか、適切であるか確

認し、足りないところは

助言する

・安全・安楽・清潔な環

境整備の注意点が理解

できているか確認する

・患者にとって望ましい

環境とは何かを考えさ

せる

・訪室時には同室者へも

挨拶でき、配慮するよう

指導する

・受け持ち患者や家族を

尊重した適切な言葉遣

いができるよう助言す

・受け持ち患者の話を切

らずに傾聴できている

か注意する

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バイタルサインの

測定・報告

一般状態の観察

指導者とともに安全・安楽なバイタル

サインの測定

・体温・脈拍・血圧・呼吸数の正し

い測定方法・留意点

・体温・脈拍・血圧・呼吸数の正確

な測定

・測定の結果を報告

*病室にて

バイタルサインを測定し、ナースステ

ーションに戻る。

*ナースステーションにて

・バイタルサインを測定

することをわかりやす

い言葉で説明している

か確認する

・体温・脈拍・血圧・呼

吸数測定時の留意点に

ついて発問する

・留意点をもとにバイタ

ルサインが測定できて

いるか確認し指導する

・右片麻痺があることを

考慮し、バイタルサイン

が測定できているか確

認する

・情報が不足している場

合は助言し、再度情報収

集を促す

バイタルの測定を

させてください。

バイタルってなんで?

血圧や脈拍を測らせてください。

あぁ、ほういう意味で!

バイタルの報告をします。

体温は…(以下省略)。

さっき看護師さんがバ

イタルは健側で測るよ

うに指導してくれたか

ら注意しよう。

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10:00

全身清拭・陰部洗

浄・更衣

1)清拭・陰部洗浄・更衣の目的

2)清拭・陰部洗浄・更衣の手順

3)安全・安楽の必要性

4)プライバシーや保温の必要性

5)清拭・更衣を一連で実施する場合

の留意点

・袖を脱ぐときは左から脱ぐ

・着るときは右から袖を通す

・患者のできることを見極め介助

する

*大鳴門が受け持ち患者のパジャマを

健側から着させていた

・受け持ち患者に清拭を

することを説明してい

るか確認する

・学生が物品の準備を

し、不足がないか確認す

・清拭タオルの温度を確

認し、適切でなければ助

言し、調整させる

・全身状態を観察しなが

ら実施できているか確

認する

・右片麻痺があることを

考慮し、衣類の着脱がで

きているか確認する

・安全・安楽が配慮でき

ているか確認する

・プライバシーや保温に

留意しているか確認し、

出来ていない場合は気

付くよう指導する

さっき指導したことに気

をつけてできたわね。

あたたた…。

バイタルという言葉が伝わりませ

んでしたが、昨日の看護師さんが

言ってたのを思い出して、言い直

しました。

そうね、わかりやすい言葉

で言い直せていたわね。

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回診見学

リハビリ見学

排泄介助

ポータブルトイレ

への移動

と、慌てて全部介助してしまった。

診察の介助

他職種との関わりの理解

1)指導者の援助を見学

2)ポータブルトイレへの移乗可能な

環境

・ポータブルトイレの位置

・ベッドの高さ

・患者の姿勢の安定

受け持ち患者と医師と

のやりとりから、患者の

病気についての理解状

況を確認する

他職種との関わりが受

け持ち患者を通して理

解できるか確認する

指導者がどのような点

に注意して援助を行っ

ていたか確認する

はい、すみません。

では右手を通しますね。次は左

手です。

ボタンも留めますね。

慌てなくていいよ。

右手から袖を通してあ

げてね。

大鳴門さんの患者さんに何

かしてあげたいと思う気持

ちは素晴らしいと思う。でも

阿波さんにもできることは

なかったかな。

うちボタンくらい留めれる

んでよ。

あっ!!

左手は動くんでした。

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11:50

昼食介助見学

・麻痺側の手足の位置

・羞恥心への配慮

3)排泄物の後片付け

1)食事時の環境調整

・セッティング

・食事時の体位

・オーバーテーブルの上の整頓

・エプロンの着用

・手の清潔

2)服薬介助

3)観察

・食事の摂取状況

・食事摂取量

4)口腔ケア

・義歯の取り扱い方法

5)下膳

*昼食後、ナースステーションにて

・指導者とともに患者

名・食種の間違いがない

か確認する

・受け持ち患者の昼食介

助時に必要な援助が理

解できているか確認す

・指導者がどのような点

に注意して援助を行っ

ていたか確認する

何か気付いたことは

あったかな。

なんか阿波さんのだけ

食器が違ってました。

よく気がついたわね~!

どうして形が違うかわか

る?

すくいやすいからだと

思います。

そうね。阿波さんは右に

麻痺があるから、利き手

ではない左手で食べや

すくするためよね。

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12:30

13:30

休憩

バイタルサインの

測定と報告

一般状態の観察

車椅子への移乗介

助見学

バイタルサインを測定・報告

1)車椅子への移乗可能な環境を整え

・車椅子の位置

・ベッドの高さ

・車椅子のストッパー

2)移送方法

・振動が少なく安全に移送

・段差・スロープの昇降について

の留意点

・午前の検温の項目に準

じ、必要時サポートでき

るよう傍で見守る

・午前のバイタルサイン

を参考に正常・異常の判

断をさせる

・指導者がどのような点

に注意して援助を行っ

ていたか確認する

看護師さんて患者さんの

そんなところまで考えて

いるんだ!

看護師さんてすごいなぁ。

患者さんが食べやすいように

患者さんの立場に立って考え

ているんですね。

明日大鳴門さんにでき

ることは何があるかな。

配下膳、セッティング、

食事前に手を拭きます。

そうね、

明日やってみようね!

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洗髪介助

1)指導者とともに洗髪を実施

・目的・方法・必要物品

・環境に配慮

・安全・安楽に配慮

・病状に配慮し疲労を与えないよ

う短時間で実施

・湯の温度

・プライバシーの保護や保温

・後片付け

*洗髪中

指導者はそっと阿波さんの顔を拭く。

学生は洗髪を再開する。

*部屋へ移動中

・安全・安楽を最優先し

て実施出来ているか確

認する

・援助が一方的でないか

コミュニケーションが

とれているか確認する

・反応をみながら援助が

できているか確認する

・湯の温度が適切である

か確認する

ひゃ~!

あっごめんなさい!

お顔にかかってしまい

ました。

びっくりしただけやけ

ん、いけるでよ。

怒られる…。

阿波さん、

ごめんなさいね。

さっぱりして気持ちよ

かったわ。ありがとう。

… 。

…。

おしっこがしたくなって

きたわ。

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排泄介助

トイレへの移乗介

助見学

1)患者の姿勢の安定

2)麻痺側の手足の位置

3)羞恥心への配慮

・指導者がどのような点

に注意して援助を行っ

ていたか確認する

そうだ、私だってポータ

ブルトイレよりトイレで

するほうがいいなぁ。

じゃあ急いで部屋へ

帰りましょう。

阿波さんをトイレにお連れ

してもいいですか。

(指導者に質問)

どうしてそう思ったの?

大部屋のポータブルトイレよ

りトイレのほうが落ち着ける

と思ったからです。

阿波さんの立場に立っ

て考えられたわね!

じゃあトイレに行って

みましょう。

でも部屋まで遠いし、

トイレに行ったらあかんかなぁ。

トイレ連れてってくれるん~。

ありがとう!

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15:30

ベッドへの移乗介

助見学

学生カンファレン

記録

1)ベッドの高さ

2)車椅子の位置

3)患者の姿勢の安定

4)麻痺側の手足の位置

5)車椅子のストッパー

1)一日の行動の振り返り

2)目標達成できたか

3)グループ内で話し合い、視野を広

げられるように関わる

4)疑問があれば話し合う

5)明日への方向づけ

6)実施した内容・指導された内容を

話し合う

*カンファレンスにて

・指導者がどのような点

に注意して援助を行っ

ていたか確認する

・一日の行動を振り返

り、自分の目標が達成で

きたか確認する

・達成できていない項目

については明日の行動

目標に入れる

・翌日の実習に向けての

情報提供と事前学習を

促す

・学生が記録時間を確保

できるよう配慮する

初めての洗髪はどう

だった?

次からはそこに注意してできる

といいわね。

阿波さんの反応はどうだった?

「さっぱりして気持ちよかっ

た。ありがとう。」と言ってくれ

ました。

それを聞いてどう

思いましたか?

顔にお湯をかけてしまったし、

時間もかかりました。

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16:30

実習終了の挨拶

スタッフへも声をかけ、

挨拶ができる雰囲気作

りをする

Ⅵ.考察

臨地実習において、基礎看護学実習Ⅰは専門分野実習の基礎に位置づけられており、看護への関心

を持たせる大切な時期である。初めて患者を受け持ち、基本技術や日常生活援助技術の実践を通して、

看護の目的・方法を統合して学ぶことを目的に実施する。今後の実習への意欲を高めるためにも、看

護の魅力を発見し、看護の喜びが実感できるような指導案作りに取り組んだ。

日程を設定するにあたり、基礎看護学実習は初めての実習であることを踏まえ、月曜日に始まるこ

とは避けた。臨床は、実習を受け入れやすい環境を整えることができる。また、学校が実習に送り出

す準備をすることができる。

近年の若者は、核家族化により他世代との交流が減少していることや、パソコンなどの普及により、

相手の気持ちに共感し、自己の心理を伝えることが不得手である。

大鳴門は、生活体験が乏しく内向的な性格でコミュニケーションが苦手であるため、明るく、話し

好きでコミュニケーションが取りやすい阿波さんが受け持ち患者に最適ではないかと考え選定した。

バイタルサインを測定した場面では、「バイタル」という専門的な言葉で説明してしまったが、前日

に見学した場面を思い出し、わかりやすい言葉で言い直すことができた。前日の指導者と患者のやり

とりから学生が間違いに気づけたことは、指導者が良い役割モデルとなることができたためと考える。

清拭の場面では、病態生理は理解できていたが、緊張と何かをしてあげたいという気持ちが強すぎ

て、不必要な援助まで行ってしまった。しかし、指導者の助言により、患者ができることを援助する

ことで患者の残存機能を低下させることに繋がるということに気付くことができた。その結果、昼食

介助の見学場面では、患者のニーズに気付き、自分ができることは何かを考えることができた。また、

受け持ち患者の日常生活援助を通して、相手の立場に立つという視点に気付くことができ、排泄介助

の場面に活かすことができた。

洗髪の援助では、大鳴門が失敗してしまったと思ったことに対して、指導者があたたかく見守りフ

ォローしたことで、落ち着いて援助を続けることができた。指導者は大鳴門が自分の行動を振り返り、

気持ちが言語化できるよう心がけて支援してきた。その結果、自分ができなかったことを、失敗とし

て考えるのではなく、次の課題として捉えることができた。そして、大鳴門は阿波さんから「ありが

とう」と言ってもらえたことで、達成感と看護することの喜びを知ることができた。

私たち指導者は、学生のレディネスや個別性を考慮し、看護の先輩として、学生の心理的な面をサ

ポートしながら、看護の楽しさ、すばらしさを伝え、そして、適切な看護が提供できる看護師へと導

喜んでもらえてうれし

かったです!

失敗したけど阿波さん喜ん

でくれたし…

看護ってすばらしい…!!

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いていかなければならないと考える。学生と共に学び、自己の看護観を見つめ直すことで指導するこ

との楽しさや難しさを改めて実感することができた。

Ⅶ.おわりに

今回、この講習で学生指導について学び、実際に実習指導案を作成したことで臨地実習のあり方や、

実習指導者の役割、学生との関わりの大切さを学ぶことができた。今後、この講習で学んだこと活か

し、学生の良き役割モデルとなり、後輩となる看護師の育成に貢献したい。

謝辞

今回、実習指導案を作成するにあたり、ご多忙の中、ご指導・ご助言いただきました徳島県立中央

病院の木野綾子先生をはじめ、講義していただいた諸先生方、担当していただいた看護協会の方々に

深く感謝いたします。

参考文献

・田島桂子:看護学教育評価の基礎と実際,医学書院,2011

・川島みどり:学生のためのヒヤリ・ハットに学ぶ看護技術,医学書院,2008

・荒添美紀:看護展望,2009.1 増

・川島みどり監修:実践看護技術学習支援テキスト,基礎看護学,日本看護協会出版,2003

・佐藤みつ子,宇佐美千恵子,青木康子:看護教育における授業設計,第 4 版,医学書院,2011

・川村佐和子,志自岐康子,松尾ミヨ子:ナーシング・グラフィカ⑱基礎看護学-基礎看護技術,メディカ

出版,2004

・佐藤みつ子:看護学実習指導シリーズ③成人看護学実習指導案の作成と展開,リフレ出版,2003

・三妙律子:臨地実習指導者のための実習指導計画書作成マニュアル,学研,2001

・犬塚久美子:ひとりで学べる基礎看護技術 Q&A,看護の科学社,1998

・箕浦とき子,高橋恵:看護職としての社会人基礎力の育て方,日本看護協会出版会,2013

・奥山美奈:新人・若手・学生 やる気と本気の育て方,日総研出版,2010