物理学(1学期):流体力学、電 磁気、波動、量子力学 · –心電図...
TRANSCRIPT
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物理学(1学期):流体力学、電磁気、波動、量子力学
藤崎弘士(物理学教室)
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これまでやったこと
• 力学 –ニュートン方程式
• 一定の力のときの運動
• 速度に比例する摩擦のあるときの運動
• 単振動(テイラー展開、オイラーの公式)
• 減衰振動(一般的な微分方程式の解き方)
• 強制振動(共振、共鳴現象)
–エネルギー保存則 • 運動エネルギー+位置エネルギー=一定
• 一般には線積分として位置エネルギーは定義される
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これからやること
• 流体力学 • 電磁気学(おもに電気) • 波動(短めに) • 量子力学入門
• 力学でやり残していること
– 角運動量、トルク ニュートン方程式から出る – 2体問題(惑星の運動) – 質点系の運動(基準振動) – 剛体の回転運動(コマの運動)
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流体力学
:密度場
マクロな大きさ
ミクロな大きさ
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密度場
• 水
– ほとんど変化しない
– 密度場:一定と思ってよい
– ただし、イルカは水中の音波を使う
• 空気
– ちょっと変化する
– 疎密波が生じる
– 音波、超音波
• 波動現象
• 波動方程式で記述される
コウモリ
イルカ
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速度場
• 流体をかき混ぜると、速度場が生じる
– 場所によって速度が違う
• 速度場の例
– 水道の水
– 海の黒潮
– 竜巻、台風
– 血流
:速度場
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コヒーレントラグラジアン多様体
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圧力場
• 圧力は熱力学、もしくは統計力学の概念 – 2学期にやる
– 小さな分子が不規則にぶつかることで圧力は生じる
• 基本的に等方的 – 小さい体積を考えるかぎり、圧力の方向に偏りはない
– 何メートルも場所を変えたら変化する! • 圧力場
– たとえば大気圧は高いところでは小さくなる
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• 空気の重さを面積で割ったもの
• ただし、密度も上空で変わる
大気圧
:圧力場
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• 空気の重さを面積で割ったもの
• ただし、密度も上空で変わる
• だいたい 8000 m で半分の密度になる
• それから計算すると、、、
大気圧
:圧力場
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• 空気の重さを面積で割ったもの
• ただし、密度も上空で変わる
• だいたい 8000 m で半分の密度になる
• それから計算すると、大気圧は 1m2あたり10 トンの力 – 105 Pa = 105 N/m2
• 空気の密度は 1.3 Kg/m3 として計算
大気圧
:圧力場
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血圧
• 10 cm 腕を上下させると
• 105 Pa=760 mmHg だから、だいたい 7.6 mmHg
• どのように血圧を測るか? – 乱流を聞く!
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粘性
• 粘性の定義
• 粘性の値(Pa・s)
– 空気: 1.8 x 10-5
– 水: 8.9 x 10-4
– マヨネーズ: 8
– ピッチ:2.3 x 108
せん断応力 (shear stress)
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ピッチドロップ実験
• 非常にねばっこい物質 – ほとんど固体
• 1927年に実験開始 – 1938(1滴目) – 1947 – 1954 – 1962 – 1970 – 1979 – 1988 – 2000 – 2014(9滴目)
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ストークスの摩擦(粘性)
正確な値は
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流体力学の法則
• ニュートン方程式を使って導き出される – ナビエ・ストークス方程式
• しかし、いろんな近似が入っていて、そんなに厳密なわけではない
• しかし、驚異的に流体現象を記述する – 層流に関してはかなり分かってきている
– 乱流に関しては数値計算をするしかない • いろんな統計法則はある • 非常に経験的
層流
乱流
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ベルヌーイの定理
流線に沿ったエネルギー保存則から導かれる:粘性が無視できる場合
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トリチェリの定理
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マグヌス効果
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ハーゲン・ポワズイユの公式 粘性が非常に大きい場合
流束:単位時間あたり流れる体積
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乱流
• 乱流はレイノルズ数で(ざっくりとは)判定できる
• レイノルズ数が1000以上だと乱流
– 大動脈など
• 細胞内だと乱流になることはまずない
– 低レイノルズ数の世界
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電磁気学
• 電磁気学 – 電気(E,D)の話
– 磁気(H,B)の話 • 二つは統合される
– マクスウェル方程式
• なぜ電磁気? – ありふれている
• 体の中にも電気(信号) – 心電図
• タンパク質、DNAなども電荷をもっている
• 電化製品、医療機器など、もれなく電気(磁気)を使う
• 電波であふれている – 携帯、ラジオ、テレビ
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クーロンの法則
• 電気の元である、電荷(charge)の間に働く力
• 逆2乗の法則 – 万有引力と同じ
• 粒子間に沿って働く – 中心力
• 同じ符号の電荷のときは斥力、異なる符号の電荷のときは引力になる
• 力はベクトルなので、いくつか電荷があれば、力もそれらの合成になる
F = kq1q2
r2
q1
q2r
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電場(電気場)
• q に注目して、そこに働く力だけを考える – つまり、q 以外の電荷によって及ぼされる力
• その力を qE と書いたときのEのことを電場と呼ぶ
• 電場もベクトルであり、場所によって変化する
• 電荷から電場が出ているとイメージすることができる電気力線
F = kqq2
r2= qE
q
q2qE
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電場はベクトル場である
q1
q
1q
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電気力線の性質
• 電荷が正なら外向きに矢印を引く
– 負のときは内向き
• 電気力線は決して交わらない
• 電荷の密度に比例するように本数を決める
– 電気力線が密なところは電場が強い
– ガウスの法則
q2q
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電気力線の例
異符号の電荷がある場合 同符号の電荷がある場合
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ガウスの法則
• 電場と電荷の間の関係
• もっとも簡単には – 「総量Qの電荷から出る電気力線の数は 4 π k Q本」と表現
– これの意味は何か?
• 数学的には – 「電場をある閉曲面に沿って面積分すると、その値が 4 π k Q になる」
– これの意味は何か?
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ガウスの法則の例:1つの電荷
• 面積分
– あるベクトル量と表面の微小面積ベクトルとの内積を取って、面内で積分
– いまの場合それは
– 半径 r の面で積分すると
– これが 4 π k Q と等しいので
E(r)dS E(r)4pr2
E(r)4pr2 = 4pkQ
dS
2( )4E r r
2( )4 4E r r kQ
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ガウスの法則の例:1つの電荷
• 面積分
– あるベクトル量と表面の微小面積ベクトルとの内積を取って、面内で積分
– いまの場合それは
– 半径 r の面で積分すると
– これが 4 π k Q と等しいので
E(r)dS E(r)4pr2
E(r)4pr2 = 4pkQ
dS
2( )4E r r
2( )4 4E r r kQ E(r) = kQ
r2
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ガウスの法則の例: 平面に広がった電荷
• 図のような円柱を考える
• 電場は面に垂直方向
• 対称性から面 (x,y) に沿っては変わらない
• ガウスの法則から
( ) ( ) 4E z A E z A k A
( ) 2E z E k
Z 方向
( ) ( )E z E z
E(z)
面の電荷密度 を σ とする 電荷
( )E z
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ガウスの法則の例: コンデンサ
• 正電荷の平面と負電荷の平面でサンドイッチにしたもの
• 内部の電場は1平面に電荷があるときの2倍
• 外の電荷は0になる – 2つの平面からの電場が打ち消しあうため
4E k 一定の電場
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電位(静電ポテンシャル)
• 力学における位置エネルギーと同様に定義できる – 静電ポテンシャルとも呼ばれる
– 電場の線積分で定義
• コンデンサで考えると一定の電場だから、、、
• よって、V(x) = E x
• これは重力の位置エネルギー(m g x)と形式上同じ
( ) ( )V E d r r rE
Ex
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静電容量(キャパシタンス)
• コンデンサにたまる電荷を q を電圧 V で割って定義
• コンデンサの場合
– q = σ A
• 電圧は
– V = E d = 4 π k σ d
• よって
– C = q/V = A/(4 π k d)
4
AC
kd
電荷によらず、 形状のみによる
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電流
• 電圧(電位)をかけると電流が流れる – 電池につなぐ
• 細かく見ると、電子やイオン(電荷)の流れ – 金属の中だと電子
– 細胞内だとイオンやプロトンなど
• ある一定の速度で動いていると思ってよい – なぜ?
dQI qnSv
dt
v
:n
:S
電子密度 [1/m3]
断面積 [m2]
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オームの法則
• ストークスの摩擦と同じで速度に比例した摩擦力が働く – これが電気抵抗のもと
– ただし、その起源はストークス摩擦とは異なる
• ある程度時間が経つと、一定の速度になる(終端速度)
• それを使って電流を書き直す
• オームの法則
dvm mv qE
dt
qEv
m
1
qEI qnS E
m
VV
R
V RI
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電気回路:直列接続
• 電圧降下
– 電流が抵抗を流れると、電圧(電位)が下がると考えることができる
• 電圧降下と起電力は釣り合う
1 1 2 2, V R I V R I
1 2 1 2( )V V V R R I
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電気回路:直列接続
• 電圧降下
– 電流が抵抗を流れると、電圧(電位)が下がると考えることができる
• 電圧降下と起電力は釣り合う
1 1 2 2, V R I V R I
1 2 1 2( )V V V R R I 1 2R R R
抵抗を直列につなぐと、 実効的な抵抗は
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電気回路:並列接続
• キルヒホッフの法則
– 電流は一定
– 電荷は一定
• 分岐している回路の場合、ある2点間の電圧降下はどちらの分布で考えても同じ
1 2I I I
1 2V V V
-
電気回路:並列接続
• キルヒホッフの法則
– 電流は一定
– 電荷は一定
• 分岐している回路の場合、ある2点間の電圧降下はどちらの分布で考えても同じ
1 2I I I
1 2V V V
1 2
1 2
1 2
1 1
V VI I I
R R
VR R
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電気回路:並列接続
• キルヒホッフの法則
– 電流は一定
– 電荷は一定
• 分岐している回路の場合、ある2点間の電圧降下はどちらの分岐で考えても同じ
1 2I I I
1 2V V V
1 1 1
1 2R R R
抵抗を並列につなぐと、 実効的な抵抗は
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血流への応用(生理学)
血流を Q が電流 I に対応 抵抗 R が粘性 η に対応 コンデンサは大動脈の弾性に対応する(らしい)
心臓
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神経パルスへの応用(神経生理学)
-
イオンチャネル
( ) log ( )RT
V x xZF
(in) 4 mM
(out) 155 mM
- 98 mV
ネルンストの電位の式(2学期にやる)
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神経パルスへの応用(神経生理学)
-
パッチクランプ法
-
磁場(磁気場)
• 電流もしくは磁石(スピン)によって生じる場
• 電場と比べると、基本的に弱い力
• 生体内ではあまり(ほとんど)働いていない
• 医療機器としては – 核磁気共鳴イメージング(MRI) • プロトンのスピンを測る
– 脳磁図(MEG) • 脳内の電流を測る
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フレミングの法則:ローレンツ力
• 実験事実として、電流に磁場をかけると、それらの向きに垂直に力をうける – フレミングの法則
– 磁場の実験でやる
• 電流が電子からできていることを考えると、これは電子がそういう力を受けるということ – ローレンツ力
– 比電荷の実験でやる
F I B
q F v B
電子に分けると
ベクトルの外積
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ビオ・サバールの法則
• 任意の線に沿って電流が流れたときに、その周りに生じる磁場を記述する法則
• かなりややこしいので特別な場合だけ覚えておけばよい – 直流電流(r だけ離れたところの磁場)
– 円電流(半径 a の中心の磁場)
– ソレノイド内部の磁場
33
( ) ( )
4 | |V
H d
j r r r
rr r
2
IH
r
2
IH
a
H nI
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MRI (magnetic resonance imaging)
• 前の授業でやったように共鳴の原理を用いる
• この場合、振動しているのは人体内の水素のスピン(小さい磁石)
• それが磁場を書けると回転する=振動数をもつ
• その振動数にマッチする交流磁場を外からかける(外場) – 共鳴するとエネルギーを吸収し、その後放出する
d
dt
SH S
スピンの運動方程式
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波動に関するあれこれ 光とは何か?
電磁波
波動のもつ性質
屈折・回折現象 光ファイバー
X線回折実験
干渉現象 ヤングの実験 実験あり
量子効果 光電効果 実験あり
X線
ドブロイ波(電子も波である)
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光とは何か? 光=電磁波の一種
可視光
赤外光
紫外光
X線
ガンマ線
波動方程式に従う 速度=光速度
1秒間に地球を7回り半進む
これより速い速度はない! 相対性理論が正しければ。
最近は間違った実験があったが。。
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可視光の波長
1 mm の1万分の1くらい (分子の大きさ=1mmの百万分の1くらい)
nm=10-9 m
光の波長は非常に小さいので、普通は 波動性は見えない波動性とは?
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波動のもつ性質 干渉(interference)
波は重なり合う 波動方程式の線形性から
屈折(refraction) 屈折率の違うところにだ
と波の速度は違う 波は屈折率の違うところ
で曲がる
回折(diffraction) 波は広がっていく 障害物があっても越えて
いく
しかし、光はだいたいまっすぐ進むと思っていい 幾何光学(光を線として
扱う)
//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0f/Interference_of_two_waves.svg//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cc/Pencil_in_a_bowl_of_water.svghttp://en.wikipedia.org/wiki/File:Wavelength=slitwidthspectrum.gif
-
視角と視力
( /180)d D
ランドルト環 視力: 1/ (60 )V
:視角
1/ 60 視力=1.0
5 m 1.5 mm
-
脱線 腕を伸ばして親指を見ると、その視角はだいたい2度
( /180)d D
180 2cm 1802.3
50cm 3.14
d
D
-
脱線 腕を伸ばして親指を見ると、その視角はだいたい2度
遠くから人が近づいて:指一本の大きさになったら?
( /180)d D
180 2cm 1802.3
50cm 3.14
d
D
180 1.6m 1802.3
m 3.14
d
D x40mx
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波動のもつ性質:屈折
1 1 2
2 2 1
sin
sin
v n
v n
スネルの法則 (電磁気学から導かれる)
1.00
1.33
1.47 ~ 1.92
2.42
n
屈折率: 空気(真空)
水
ガラス
ダイヤモンド
//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cc/Pencil_in_a_bowl_of_water.svg
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波動のもつ性質:屈折
医学的応用:光ファイバー(胃カメラなど)
全反射:光がファイバーからもれない!
//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/90/Flexibles_Endoskop.jpg
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波動のもつ性質:屈折
医学的応用:目の仕組み
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波動のもつ性質:回折 指向性の強い波(平面
波)を点状の障害物に当てる
球面波という、球面上に広がる波になる
池に石を落すと円状の波ができるのと同じ
数学的には、振動波動の授業のノート参照
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Wavelength=slitwidthspectrum.gif
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波動のもつ性質:回折
藤崎など、日医大医会誌 2012年8月
X線回折実験
X線
結晶
イメージ
タンパク質(酵素)の構造(どういう 原子の並びになっているか)が分かる!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Cliche_de_laue_principe.svghttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:X-ray_diffraction_pattern_3clpro.jpg
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波動のもつ性質:干渉 数学的には単純!
重ね合わせの原理
ヤングの実験
光の波長が分かる スリットに関する情報が
分かる X線回折実験だと結晶の
原子間の相対距離が分かる
1 2
( , )
( , ) ( , )
u t
u t u t
r
r r
1( , )u tr
2 ( , )u tr
-
たとえば。。
20.5 λ
21.0 λ
20.0 λ
22.0 λ
スリットからの距離の差が 波長の整数倍なら明るい (建設的な干渉)
スリットからの距離の差が 波長の半整数倍なら暗い (破壊的な干渉)
//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0f/Interference_of_two_waves.svg//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0f/Interference_of_two_waves.svg
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波動のもつ性質:干渉
トーマス・ヤング
sind m
距離 S2 H が波長の整数倍 なら明るい(建設的な干渉)
m:整数
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回折格子
d
sind m m:整数 l
x
ヤングの実験と同じ条件が 成り立つ
コントラストがヤングの実験 のときよりはっきりしている
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光は波動、しかし、、、 光の量を少なくしていくと。。。
つぶつぶになる 粒子 光子(フォトン)と呼ぶ
光子は量子遷移によって生み出される
光子
電子
光の放射
光子
電子
-
光は波動、しかし、、、 光の量を少なくしていくと。。。
つぶつぶになる 粒子 光子(フォトン)と呼ぶ
光子は量子遷移を引き起こす
光の吸収
光子
電子
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光子の性質:プランクの式 1900年にプランクはこう考えた。。
,
/
E hf
p h
エネルギー
運動量
振動数
波長
プランク定数 ノーベル物理学賞(1918)
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光子
電子
光の放射の場合
光子
電子
3 232 ,
E Ef
h
3E
2E
1E 2 121 ,
E Ef
h
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光電効果:アインシュタインの式 金属に光を当てると
P.Lenard らの実験
光子の振動数がある値以下だと 電子は飛び出さない
光子の振動数がある値以上だと 電子は飛び出す
光の強さには関係ない W
hf
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光電効果:アインシュタインの式
21
2mv hf W
W
hf
hf
21
2mv
W
ノーベル物理学賞(1922)
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電子も実は波動:ドブロイの式
,
/
E hf
p h
/ ,
/
f E h
h p
左辺:粒子的描像 左辺:波動的描像
ノーベル物理学賞(1929)
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ドブロイの式の使い方
101.2 10 [m]2
h h
p meV
21
2eV mv 2p mv meV
100 [V]V
Å
で電子を加速したら
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X線発生の原理
-
X線発生の原理
,eV hf
c
f
10
[kV]
hc
eV V
1 kV ~ 1000 kV 0.01 ~ 10 Å
(商用の電源の10倍から1万倍の電圧)
Å