研究レポート 2030年日本における変動型自然エネ …...•...

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研究レポート 2030年日本における変動型自然エネルギーの 大量導入と電力システムの安定性分析 報告者:分山 達也 自然エネルギー財団特任研究員/九州大学エネルギー研究教育機構准教授

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Page 1: 研究レポート 2030年日本における変動型自然エネ …...• 基幹系統モデル(電気学会, 2001)をDIgSILENT 社の系 統解析ソフトウェアPowerFactory上で再構築し、結果の

研究レポート2030年日本における変動型自然エネルギーの大量導入と電力システムの安定性分析

報告者:分山達也自然エネルギー財団特任研究員/九州大学エネルギー研究教育機構准教授

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分析の概要

シナリオ設計Scenario development

需給シミュレーションDispatch modelling

系統モデル分析Grid modelling

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2015 2020 2025 2030

GW Geothermal

BiomassWindSolarHydro

• データベース構築• 発電設備容量の見通し• 自然エネルギーの出力推定

• 周波数安定性の評価• 潮流分析• 変動型自然エネルギーの瞬時供給比率の上昇の影響を評価

• 1日の時間別需給構造評価• 系統モデルで評価する時間断面:snapshotを選定

統合的議論:自然エネルギー導入拡大時の影響と対策

Minimum demandMaximum demand

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シナリオ設計

2030年の2つのシナリオ政府目標シナリオ:長期エネルギー需給見通し水準(太陽光64GW, 風力 10GW)自然エネルギー導入シナリオ:業界目標水準(太陽光100GW, 風力36GW)原子発電ゼロ

図:太陽光発電・風力発電の分布

太陽光, 7.0%

風力, 1.7%

水力, 8.8~9.2%

地熱, 1.1~1.0%

バイオマス, 3.7~4.6%

原子力, 22~20%

LNG, 27%

石油, 3%

石炭, 26%

図:長期エネルギー需給見通し(2015年度)における2030年電源構成

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25

30

35

北海道

東北

東京

北陸

中部

関西

中国

四国

九州

北海道

東北

東京

北陸

中部

関西

中国

四国

九州

政府目標シナリオ 自然エネルギー導入シナリオ

GW 風力 太陽光

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需給シミュレーション2030年の各月の最大/最小需要日における時間別需給構造を計算(SWITCH model*を利用)

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GW

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GW

北海道

東北

東京中部関西四国

九州

中国

北陸

*SWITCH model: Fripp Mathiass 博士(現在ハワイ大学Assistant professor)により開発され、UC Berkeley Renewable & Appropriate Energy Laboratoryを中心に利用されている分散型容量拡張モデル。コストを最小化する各地の需給バランス(地域間融通含む)を計算。

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政府目標シナリオ:代表日の時間別需給構造

変動型自然エネルギーによる瞬時供給比率は最大42%

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4月最大

4月最小

5月最大

5月最小

6月最大

6月最小

7月最大

7月最小

8月最大

8月最小

9月最大

9月最小

10月最大

10月最小

11月最大

11月最小

12月最大

12月最小

1月最大

1月最小

2月最大

2月最小

3月最大

3月最小

GW

揚水発電 水力 太陽光 風力 地熱 バイオマス 石炭 ガス 原子力

図 2030年各月の最大需要日・最小需要日における時間別需給構造(政府目標シナリオ)

※マイナスの方向への伸びは、揚水運転を示している。

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自然エネルギー導入シナリオ:代表日の時間別需給構造

変動型自然エネルギーによる瞬時供給比率は最大72%

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4月最大

4月最小

5月最大

5月最小

6月最大

6月最小

7月最大

7月最小

8月最大

8月最小

9月最大

9月最小

10月最大

10月最小

11月最大

11月最小

12月最大

12月最小

1月最大

1月最小

2月最大

2月最小

3月最大

3月最小

GW

揚水発電 水力 太陽光 風力 地熱 バイオマス 石炭 ガス 原子力

図 2030年各月の最大需要日・最小需要日における時間別需給構造(自然エネルギー導入シナリオ)

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系統モデル分析変動型自然エネルギーの瞬時供給比率の上昇による周波数安定性や潮流への影響を評価

周波数安定性:電力系統の安定性を維持するためには、系統の事故等による周波数の変化を一定の範囲内に抑えることが必要となる。

図:Powerfactoryにおけるバリデーション結果の一例図:電気学会基幹系統モデル(EAST30)

評価方法:• 基幹系統モデル(電気学会, 2001)をDIgSILENT 社の系統解析ソフトウェア PowerFactory上で再構築し、結果の妥当性を確認したうえで、解析を実施。

• 周波数の安定性は、1.5GWの電源脱落後の周波数の低下を0.98 p.u.の閾値(西日本地域で58.8Hz)以上に維持することができるかどうかを確認した。

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系統モデル分析結果①変動型自然エネルギーの瞬時供給比率の上昇に伴い事故時の周波数低下量は拡大するが、風力発電や太陽光発電のFFR:高速周波数応答サービスの利用により、低下量を許容範囲に収めることが可能である。

図:「自然エネルギー導入シナリオ」における西日本での電源脱落(1,500 MW)後の周波数応答(FFRあり/なし)

出典:EGI, Gridlab

Low vRES (S1):8月(最大需用日)7 p.m. / VRE 9.4%mid vRES (S2):8月(最大需用日)1 p.m. / VRE 44.8%High vRES, medium (S2b):7月(最大需用日)1 p.m. / VRE 49.1%High vRES, low load (S3):5月(最小需用日)1 p.m / VRE64.9%

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系統モデル分析結果②

左図 西日本同期エリアにおける周波数低下の評価 右図 東日本における周波数低下とVRES供給比率(600 MW アンシラリー・サービスあり/なし)

高速周波数応答(FFR)サービスを利用することで、変動型自然エネルギーの瞬時供給比率が東日本地域で60%, 西日本で70%程度まで上昇しても、周波数安定性を許容範囲に維持することが可能になる。

出典:EGI, Gridlab

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議論:変動型自然エネルギーの瞬時供給率と出力抑制

変動型自然エネルギーの瞬時供給率が東日本で60%, 西日本で70%を超えた場合、周波数安定性を維持するため出力抑制等の対策が必要となる。この出力抑制量は自然エネルギー導入シナリオで2%未満、さらに年間REシェアが40%(VRE29%)に達しても4%未満と低い水準を維持すると試算される。

自然エネルギー導入シナリオ33% RES (23% VRES)

自然エネルギーのさらなる拡大40% RES (29% VRES)

日本全体*2 東日本 西日本 日本全体*2 東日本 西日本

年間電力需(TWh)*1 916 412 503 916 412 503

太陽光発電(GW) 100 44.7 55.3 125 44.8 80,2

風力発電(GW) 36 24.9 11.1 54 37.5 16.5

SNSP 制約 - 60% 70% - 60% 70%

年間VREシェア(%) 22,1% 28,4% 16,9% 28.9% 34.7% 24.1%

年間REシェア(%) 33,0% 38,9% 28,3% 39.8% 45.2% 35.5%

年間VRE出力抑制(%) 1,8% 3% 0% 3.9% 5.1% 2.5%

表 変動型自然エネルギーの瞬時供給比率の上限値の設定による出力抑制の推計

*1 2013年度データより。*2 沖縄電力エリアを除く。